(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081245
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】固体電池及び固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240611BHJP
H01M 50/117 20210101ALI20240611BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240611BHJP
H01M 50/547 20210101ALI20240611BHJP
H01M 50/564 20210101ALI20240611BHJP
H01M 50/571 20210101ALI20240611BHJP
H01M 50/553 20210101ALI20240611BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240611BHJP
H01M 50/11 20210101ALN20240611BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M50/117
H01M50/548 101
H01M50/547 101
H01M50/564
H01M50/571
H01M50/553
H01M10/0562
H01M50/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194722
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】美和 俊之
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 友弘
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011AA10
5H011CC05
5H011EE04
5H029AJ14
5H029CJ24
5H029DJ02
5H029DJ05
5H029EJ01
5H029EJ06
5H029HJ04
5H029HJ12
5H043AA07
5H043AA19
5H043BA20
5H043CA08
5H043CA13
5H043DA02
5H043DA08
5H043DA15
5H043DA16
5H043DA20
5H043HA23D
5H043JA22D
5H043LA02D
5H043LA21D
(57)【要約】
【課題】耐湿性に優れた固体電池を実現する。
【解決手段】電池要素10は、積層された内部電極層である正極層21及び負極層22と電解質層23とを含む積層体20と、その表面20aに設けられるカバー層30とを備え、内部電極層の一部がカバー層30から露出する端面10bを有する。電池要素10の端面10bを覆って内部電極層の一部と接続されるように外部電極層40が設けられ、外部電極層40を覆うように金属皮膜60が設けられる。金属皮膜60は、外部電極層40の縁41から、当該縁41から離間する方向D1に向かってカバー層30の外面10c上を延び、外面10cを部分的に覆う。金属皮膜60が設けられることで、耐湿性が高められる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された内部電極層と電解質層とを含む積層体と、前記積層体の表面に設けられるカバー層とを備え、前記内部電極層の一部が前記カバー層から露出する端面を有する電池要素と、
前記端面を覆い、前記内部電極層の前記一部と接続される外部電極層と、
前記外部電極層を覆い、前記外部電極層の縁から、前記縁から離間する方向に向かって前記カバー層の外面上を延び、前記外面を部分的に覆う第1金属層と、
を含む固体電池。
【請求項2】
前記カバー層は、ガラスを含有する、請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記第1金属層は、Au又はCuを含有する、請求項1に記載の固体電池。
【請求項4】
前記第1金属層は、前記カバー層の前記外面上の、前記外部電極層の前記縁から150μm以上離間した位置まで延びる、請求項1に記載の固体電池。
【請求項5】
前記第1金属層を覆う第2金属層を含む、請求項1に記載の固体電池。
【請求項6】
前記第2金属層は、Ni及びSnを含有する、請求項5に記載の固体電池。
【請求項7】
積層された内部電極層と電解質層とを含む積層体と、前記積層体の表面に設けられるカバー層とを備え、前記内部電極層の一部が前記カバー層から露出する端面を有する電池要素を形成する工程と、
前記端面を覆い、前記内部電極層の前記一部と接続される外部電極層を形成する工程と、
前記外部電極層を覆い、前記外部電極層の縁から、前記縁から離間する方向に向かって前記カバー層の外面上を延び、前記外面を部分的に覆う第1金属層を形成する工程と、
を含む固体電池の製造方法。
【請求項8】
前記第1金属層を形成する工程は、スパッタ法、蒸着法又は無電解メッキ法を用いて前記第1金属層を形成する工程を含む、請求項7に記載の固体電池の製造方法。
【請求項9】
前記第1金属層を覆う第2金属層を形成する工程を含む、請求項7に記載の固体電池の製造方法。
【請求項10】
前記第2金属層を形成する工程は、電解メッキ法を用いて前記第2金属層を形成する工程を含む、請求項9に記載の固体電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電池及び固体電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層された内部電極層と電解質層とを含む積層体を電池要素又はその一部として含む固体電池が知られている。
また、内部電極と誘電体層が積層された積層体を含む積層セラミックコンデンサが知られている(特許文献1)。このような積層セラミックコンデンサに関し、積層体の主面に形成される第1の外部電極層と、積層体の内部電極が引き出された端面と当該端面側の第1の外部電極層の先端を含む領域とを覆い且つ逆側の先端を覆わない第2の外部電極層とを備えた外部電極を、積層体に設ける技術が知られている。ここで、外部電極の第1及び第2の外部電極層は、導電性ペーストを用いて形成される。更に、外部電極の第1及び第2の外部電極層の表面に、メッキ膜を設ける技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、固体電池に関し、電池要素として、積層された内部電極層と電解質層とを含む積層体と、積層体の表面に設けられるカバー層とを備え、内部電極層の一部がカバー層から露出する端面を有するものを用い、その端面に、露出する内部電極層の一部と接続される外部電極層を設ける技術が知られている。更に、その外部電極層の表面に、電解メッキ法を用いて、金属層を設ける技術が知られている。
【0005】
しかし、このような技術によって得られる固体電池では、電解メッキ法を用いて外部電極層の表面に設けられる金属層の、電池要素(そのカバー層)との境界又は接点となる部分における被覆性及び密着性が低くなる。そのため、そのような部分が電池要素内部の積層体への水分等の浸入経路となってしまい、十分な耐湿性が得られず、電池要素及びそれを含む固体電池の性能低下を招く恐れがあった。
【0006】
1つの側面では、本発明は、耐湿性に優れた固体電池を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、積層された内部電極層と電解質層とを含む積層体と、前記積層体の表面に設けられるカバー層とを備え、前記内部電極層の一部が前記カバー層から露出する端面を有する電池要素と、前記端面を覆い、前記内部電極層の前記一部と接続される外部電極層と、前記外部電極層を覆い、前記外部電極層の縁から、前記縁から離間する方向に向かって前記カバー層の外面上を延び、前記外面を部分的に覆う第1金属層と、を含む固体電池が提供される。
【0008】
また、1つの態様では、上記のような固体電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
1つの側面では、耐湿性に優れた固体電池を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】固体電池の電池要素の一例について説明する図(その1)である。
【
図2】固体電池の電池要素の一例について説明する図(その2)である。
【
図3】固体電池の外部接続端子の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1及び
図2は固体電池の電池要素の一例について説明する図である。
図1には、固体電池の電池要素の一例の要部斜視図を模式的に示している。
図2(A)及び
図2(B)にはそれぞれ、固体電池の電池要素の一例の要部断面図を模式的に示している。
図2(A)は
図1のP1線に沿った断面模式図であり、
図2(B)は
図1のP2線に沿った断面模式図である。
【0012】
図1並びに
図2(A)及び
図2(B)に示す電池要素10は、後述のような外部電極層等が設けられる前の固体電池の基本構造の一例である。電池要素10は、固体電池の「素体」或いは「電池素体」等とも称される。電池要素10は、積層体20及びカバー層30を備える。
【0013】
積層体20は、
図1並びに
図2(A)及び
図2(B)に示すように、正極層21と、それに対向する負極層22と、それらの間に介在される電解質層23とを有する。積層体20において、正極層21と負極層22とは、電解質層23を挟んで交互に設けられるように、複数層積層される。積層体20において、正極層21と負極層22とは、電解質層23を介して互いに部分的に重複するように設けられる。ここでは一例として、積層体20の最上層及び最下層にも電解質層23が設けられた構成を図示するが、最上層及び最下層には電解質層23が設けられない構成や電解質層23とは異なる別の層が設けられる構成が採用されてもよい。尚、正極層21及び負極層22の一方又は双方を、「内部電極層」とも言う。
【0014】
積層体20の電解質層23は、固体電解質を含む。電解質層23の固体電解質には、例えば、酸化物固体電解質が用いられる。電解質層23の酸化物固体電解質としては、例えば、NASICON(Na super ionic conductor)型(「ナシコン型」とも称される)の酸化物固体電解質の1種であるLAGPが用いられる。LAGPは、一般式Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(0<x≦1)で表される酸化物固体電解質である。このほか、電解質層23の固体電解質には、Li2S(硫化リチウム)-P2S5(五硫化二リン)等の硫化物固体電解質が用いられてもよい。
【0015】
積層体20の内部電極層である正極層21には、正極活物質、導電助剤及び固体電解質が含まれる。正極層21の固体電解質には、酸化物固体電解質又は硫化物固体電解質、例えば、電解質層23に用いられる固体電解質と同種の材料が用いられる。正極層21の正極活物質には、例えば、Li2CoP2O7(ピロリン酸コバルトリチウム、「LCPO」とも言う)等が用いられる。正極層21の導電助剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブ等のカーボン材料、鉄シリサイド等の導電性材料が用いられる。
【0016】
積層体20の内部電極層である負極層22には、負極活物質、導電助剤及び固体電解質が含まれる。負極層22の固体電解質には、酸化物固体電解質又は硫化物固体電解質、例えば、電解質層23に用いられる固体電解質と同種の材料が用いられる。負極層22の負極活物質には、例えば、TiO2(酸化チタン)、Nb2O5(五酸化ニオブ)等が用いられる。このほか、負極層22の負極活物質には、Li3V2(PO4)3(リン酸バナジウムリチウム)、Li4Ti5O12(チタン酸リチウム)等が用いられてもよい。負極層22の導電助剤には、例えば、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、グラフェン又はカーボンナノチューブ等のカーボン材料、鉄シリサイド等の導電性材料が用いられる。
【0017】
固体電池の電池要素10が備える積層体20において、その充電時には、正極層21から電解質層23を介して負極層22にリチウムイオンが伝導して取り込まれ、放電時には、負極層22から電解質層23を介して正極層21にリチウムイオンが伝導して取り込まれる。固体電池の電池要素10では、その積層体20におけるこのようなリチウムイオン伝導によって充放電動作が実現される。
【0018】
図1並びに
図2(A)及び
図2(B)に示す固体電池の電池要素10では、上記のような積層体20の表面20aに、カバー層30が設けられる。カバー層30は、積層体20の内部電極層である正極層21の側面の一部及び負極層22の側面の一部が露出するように、積層体20を覆う。電池要素10は、積層体20の正極層21の側面の一部がカバー層30から露出する端面10aと、積層体20の負極層22の側面の一部がカバー層30から露出する端面10bとを有する(
図1及び
図2(A))。電池要素10の端面10aと端面10bとは、積層体20の電解質層23、正極層21及び負極層22の積層方向と直交する方向(P1線に沿った方向)において対向する位置関係にある。一方の端面10aから露出する正極層21の側面の一部と、他方の端面10bから露出する負極層22の側面の一部とは、電池要素10の外部との電気接続に用いられる。
【0019】
ここでは、カバー層30から積層体20の正極層21の側面の一部が露出する電池要素10の端面10aを、「正極引き出し面」とも言う。カバー層30から積層体20の負極層22の側面の一部が露出する電池要素10の端面10bを、「負極引き出し面」とも言う。尚、正極引き出し面及び負極引き出し面の一方又は双方を、「電極引き出し面」とも言う。
【0020】
カバー層30としては、積層体20に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁性のカバー層30が用いられる。例えば、電解質層23に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁性のカバー層30が用いられる。或いは、電解質層23に用いられる固体電解質、内部電極層の正極層21及び負極層22に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁性のカバー層30が用いられる。尚、カバー層30の絶縁性とは、電池要素10の積層体20におけるリチウムイオン伝導、電子伝導に対する影響が無いか或いは十分に低い性質を言う。積層体20に用いられる固体電解質よりも高い硬度を有する絶縁性のカバー層30には、例えば、ガラス又はセラミックスが用いられる。
【0021】
カバー層30は、積層体20を外力や外気から保護する機能を有する。そのため、カバー層30には、上記のような硬度及び絶縁性を有するほか、水分又は水素や酸素等のガスの透過性が低く、良好な密閉性を実現できるものが用いられる。ガラス又はセラミックスは、これらの性質を併せ持たせることのできる材料の1種であり、積層体20を覆うカバー層30を形成するための材料として好適である。
【0022】
上記のような積層体20及びカバー層30を備える固体電池の電池要素10は、例えば、次のような方法を用いて製造される。
例えば、電池要素10の製造では、予め、内部電極層用、電解質層用及びカバー層用の各ペーストが準備される。
【0023】
内部電極層用のペーストとしては、正極層用及び負極層用の各ペーストが準備される。正極層用のペーストであれば、正極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー、可塑剤、分散剤及び希釈剤を含むペーストが準備される。一例として、正極活物質にLCPO、固体電解質にLAGP、導電助剤にカーボンファイバーを用いたペーストが準備される。また、負極層用のペーストであれば、負極活物質、固体電解質、導電助剤、バインダー、可塑剤、分散剤及び希釈剤を含むペーストが準備される。一例として、負極活物質にTiO2又はNb2O5、固体電解質にLAGP、導電助剤にカーボンファイバーを用いたペーストが準備される。内部電極層用のペーストのうち、正極層用のペーストは、後述のような脱脂及び焼成のための熱処理によって正極層21として形成される材料の一形態である。内部電極層用のペーストのうち、負極層用のペーストは、後述のような脱脂及び焼成のための熱処理によって負極層22として形成される材料の一形態である。
【0024】
電解質層用のペーストとしては、固体電解質、バインダー、可塑剤、分散剤及び希釈剤を含むペーストが準備される。一例として、固体電解質にLAGPを用いたペーストが準備される。電解質層用のペーストは、後述のような脱脂及び焼成のための熱処理によって電解質層23として形成される材料の一形態である。
【0025】
カバー層用のペーストとしては、例えば、ガラス成分を含むガラスペーストが準備される。例えば、600℃付近での焼成により溶融、焼結される、いわゆる低融点ガラスと称されるガラス成分を含むガラスペーストが準備される。カバー層用のペーストは、後述のような脱脂及び焼成のための熱処理によってカバー層30として形成される材料の一形態である。カバー層用のペーストには、焼成後の硬度が、焼成後の電解質層23、正極層21及び負極層22に含まれる固体電解質の硬度よりも高くなるようなものが用いられる。また、カバー層用のペーストには、焼成後の熱膨張係数が、焼成後の電解質層23、正極層21及び負極層22と同程度の熱膨張係数となるようなものが用いられることが好ましい。また、カバー層用のペーストには、焼成後に、焼成後の電解質層23、正極層21及び負極層22との間に良好な密着性が得られるようなものが用いられることが好ましい。カバー層用のペーストには、粒子状Al2O3(酸化アルミニウム)等のセラミックス材料が添加されてもよい。
【0026】
内部電極層用、電解質層用及びカバー層用の各ペーストの準備後、各ペーストを、
図1並びに
図2(A)及び
図2(B)に示したようなカバー層30、電解質層23、正極層21及び負極層22の積層順となるように塗工する。或いは、各ペーストをポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の支持体上に塗工して形成される各シートを、
図1並びに
図2(A)及び
図2(B)に示したようなカバー層30、電解質層23、正極層21及び負極層22の積層順となるように積層する。或いはまた、電解質層用のペーストから形成される電解質層用のシート上に、内部電極層用のペーストである正極層用のペーストを塗工して正極層用のシートを形成し、同様に、電解質層用のシート上に負極層用のシートを形成し、これらを交互に積層し、その外側に電解質層用及びカバー層用のシートを積層する。
【0027】
このような塗工或いは積層後の構造体は、内部電極層用のペーストである正極層用及び負極層用のペースト、又はそれらから形成される正極層用及び負極層用のシートの、各々の側面の一部が露出する端面(上記の端面10a及び端面10bに相当)を有するような構造とされる。そのために、必要に応じ、内部電極層用のペーストである正極層用及び負極層用のペースト、又はそれらから形成される正極層用及び負極層用のシートの、各々の側面の一部が露出するように、裁断が行われる。
【0028】
そして、ペースト中又はシート中のバインダー等の有機成分を除去するための熱処理(脱脂)、及びペースト中又はシート中の固体電解質やガラス等を焼結させるための熱処理(焼成)が行われる。この熱処理により、正極層用のペースト又はシートから正極層21が形成され、負極層用のペースト又はシートから負極層22が形成され、電解質層用のペースト又はシートから電解質層23が形成され、カバー層用のペースト又はシートからカバー層30が形成される。
【0029】
これにより、上記
図1並びに
図2(A)及び
図2(B)に示したような電池要素10、即ち、電解質層23、正極層21及び負極層22を含む積層体20、並びにそれを覆うカバー層30を備え、正極層21及び負極層22の各々の側面の一部が露出する端面10a及び端面10bを有する電池要素10が形成される。
【0030】
電池要素10の、正極層21及び負極層22の各々の側面の一部が露出する端面10a(正極引き出し面)及び端面10b(負極引き出し面)には、露出する正極層21及び負極層22の各々の側面の一部とそれぞれ接続される一対の外部接続端子が設けられる。これにより、電池要素10の正極引き出し面及び負極引き出し面にそれぞれ設けられる外部接続端子を用いて、回路基板等の他の電子部品と電気的に接続することのできる、固体電池が実現される。
【0031】
電池要素10に設けられる外部接続端子は、例えば、電池要素10の端面10a(正極引き出し面)及び端面10b(負極引き出し面)に対し、Ag(銀)等の導電性粒子を含有した導電性ペーストを塗布して焼き付け、更にその表面に、電解メッキ法を用いてNi(ニッケル)やSn(スズ)等の金属を積層することで、形成される。電池要素10の端面10a側及び端面10b側にそれぞれ形成される外部接続端子において、このように導電性ペーストを塗布して焼き付けることで形成される部分を「外部電極層」とも言い、その表面に電解メッキ法を用いて積層される部分を「電解メッキ層」とも言う。例えば、このように電池要素10の端面10a側に外部電極層及び電解メッキ層が形成されて端面10a側の外部接続端子が形成され、端面10b側に外部電極層及び電解メッキ層が形成されて端面10b側の外部接続端子が形成される。
【0032】
図3は固体電池の外部接続端子の一例について説明する図である。
図3(A)には、固体電池の電池要素の一端面に外部電極層が設けられた例の要部断面図を模式的に示している。
図3(B)には、固体電池の電池要素の一端面に外部電極層及び電解メッキ層が設けられた例の要部断面図を模式的に示している。
【0033】
ここで、
図3(A)には、電池要素10の端面10a(正極引き出し面)側及び端面10b(負極引き出し面)側にそれぞれ設けられる外部電極層40のうち、一方の端面10bに設けられる外部電極層40のみを図示している。
図3(B)には、電池要素10の端面10a(正極引き出し面)側及び端面10b(負極引き出し面)側にそれぞれ設けられる外部電極層40及びその表面の電解メッキ層50のうち、一方の端面10bに設けられる外部電極層40及びその表面の電解メッキ層50のみを図示している。
【0034】
例えば、電池要素10の端面10bに、導電性ペーストが塗布されて焼き付けられ、
図3(A)に示すように、外部電極層40が形成される。端面10bへの導電性ペーストの塗布は、例えば、ディップ法を用いて行うことができる。
図3(A)に示す外部電極層40は、電池要素10の端面10bを覆う。外部電極層40は、電池要素10の端面10bと、電池要素10の外面10cの一部(電池要素10の端面10b側の端部)を覆うように、設けられる。外部電極層40は、電池要素10の端面10bから露出する、内部電極層である負極層22の側面と接続される。
【0035】
尚、
図3(A)には、電池要素10の一方の端面10b側に設けられる外部電極層40を図示するが、
図3(A)では図示を省略する他方の端面10a側にも同様に、そこから露出する内部電極層である正極層21の側面と接続される外部電極層40が形成される。
【0036】
図3(B)に示すように、電池要素10の端面10b側に設けられる外部電極層40の表面には更に、電解メッキ層50が形成される。電解メッキ層50は、金属層の一形態である。電解メッキ層50には、例えば、Ni層とその上に設けられるSn層との積層膜を用いることができる。例えば、外部電極層40の表面に、電解メッキ法を用いてNi層が形成され、そのNi層の表面に、電解メッキ法を用いてSn層が形成される。
【0037】
尚、
図3(B)には、電池要素10の一方の端面10b側に設けられる外部電極層40とその表面に設けられる電解メッキ層50とを図示するが、
図3(B)では図示を省略する他方の端面10a側に設けられる外部電極層40の表面にも同様に、電解メッキ層50が形成される。
【0038】
これにより、外部電極層40とその表面に設けられた電解メッキ層50とを含む外部接続端子を備えた、
図3(B)に示すような固体電池100が得られる。
図3(B)に示す固体電池100では、外部電極層40の表面に電解メッキ層50が形成されることで、電解メッキ層50を介して固体電池100と他の電子部品とを半田接合によって電気的に接続することが可能になる。電解メッキ層50が形成されることで、固体電池100を他の電子部品と半田接合する際の半田リフロー耐性が高められる。
【0039】
しかし、このように外部電極層40の表面に電解メッキ層50を設ける固体電池100では、電解メッキ層50を形成するための電解メッキ法の原理上、電解メッキ層50の、外部電極層40の縁41が位置する電池要素10の最外層である絶縁性のカバー層30との境界又は接点となる端部70における被覆性及び密着性が低くなる。特に、カバー層30にガラス材料が用いられるような場合には、当該端部70における電解メッキ層50の被覆性及び密着性が低くなり易い。そのため、そのような端部70が、電池要素10内部の積層体20への水分等の浸入経路となってしまい、十分な耐湿性が得られず、電池要素10及びそれを含む固体電池100の性能低下を招く恐れがある。
【0040】
そこで、次の
図4に示すような構成を採用する。
図4は固体電池の一例について説明する図である。
図4(A)には、電池要素の一端面に外部電極層及びそれを覆う金属皮膜が設けられた固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
図4(B)には、電池要素の一端面に外部電極層、それを覆う金属皮膜及び電解メッキ層が設けられた固体電池の一例の要部断面図を模式的に示している。
【0041】
ここで、
図4(A)には、電池要素10の端面10a(正極引き出し面)側及び端面10b(負極引き出し面)側にそれぞれ設けられる外部電極層40及び金属皮膜60のうち、一方の端面10bに設けられる外部電極層40及び金属皮膜60のみを図示している。他方の端面10a側にもこの
図4(A)と同様に、外部電極層40及び金属皮膜60が設けられる。
図4(B)には、電池要素10の端面10a(正極引き出し面)側及び端面10b(負極引き出し面)側にそれぞれ設けられる外部電極層40、金属皮膜60及び電解メッキ層50のうち、一方の端面10bに設けられる外部電極層40、金属皮膜60及び電解メッキ層50のみを図示している。他方の端面10a側にもこの
図4(B)と同様に、外部電極層40、金属皮膜60及び電解メッキ層50が設けられる。
【0042】
図4(A)に示す固体電池1Aは、上記のような積層体20及びカバー層30を備える電池要素10と、その端面10b側に設けられ当該端面10bを覆う外部電極層40とを含む。固体電池1Aは更に、その外部電極層40を覆う金属皮膜60を含む。尚、金属皮膜60を、「第1金属層」とも言う。
【0043】
第1金属層である金属皮膜60は、外部電極層40を覆い、外部電極層40の縁41から、当該縁41から離間する方向D1に向かって、電池要素10のカバー層30の外面10c上を延び、当該外面10cを部分的に覆う。金属皮膜60は、外部電極層40をその縁41まで覆う第1層部分61と、当該第1層部分61と連続し且つ外部電極層40の縁41から方向D1に向かって電池要素10のカバー層30の外面10c上を延びる第2層部分62とを有するとも言える。第1層部分61は、外部電極層40の表面と接する部分であり、第2層部分62は、電池要素10のカバー層30の外面10cと接する部分である。
【0044】
金属皮膜60は、外部電極層40の縁41から方向D1に向かってカバー層30の外面10c上を延びる部分の距離L1、即ち、第2層部分62の距離L1が、好ましくは150μm以上となるように設定される。金属皮膜60の厚さは、例えば、0.5μmから2μm程度の範囲、好ましくは1.1μmから1.4μm程度の範囲に設定される。金属皮膜60には、導電性を有する各種金属材料を用いることができる。金属皮膜60には、例えば、Au(金)やCu(銅)等の材料、AuやCu等を含有する材料が用いられる。金属皮膜60は、1種の材料を用いた単層膜のほか、2種以上の材料を用いた2層以上の積層膜とすることもできる。
【0045】
金属皮膜60は、導電性の外部電極層40の表面と共に、非導電性のカバー層30の外面10cに金属を堆積することのできる各種手法を用いて形成される。金属皮膜60の形成には、例えば、スパッタ法、蒸着法、無電解メッキ法等が用いられる。例えば、上記のようにして形成された電池要素10の、その端面10a及び端面10bにそれぞれ、導電性ペーストを用いて外部電極層40を形成した後、電池要素10のカバー層30の、外部電極層40から露出する外面10cにおける所定の表面領域、即ち、金属皮膜60を形成しない表面領域を、マスキングテープで保護する。そして、外部電極層40の表面、及びマスキングテープで保護されていないカバー層30の外面10cに、スパッタ法、蒸着法、無電解メッキ法等を用いて、金属皮膜60を形成する。金属皮膜60の形成後、マスキングテープは除去される。このような手法が用いられることで、外部電極層40の表面とカバー層30の外面10cの一部とに、
図3(A)に示すように金属皮膜60が形成される。
【0046】
スパッタ法、蒸着法、無電解メッキ法等の手法を用いて形成される金属皮膜60は、電解メッキ法を用いて形成されるものに比べて、カバー層30の外面10cとの密着性が比較的高く、外面10cとの境界又は接点となる端部80における被覆性及び密着性が比較的高くなる。スパッタ法、蒸着法、無電解メッキ法等の手法を用いて形成される金属皮膜60は、カバー層30にガラス材料が用いられるような場合でも、当該端部80における被覆性及び密着性が低くなることが抑えられる。従って、金属皮膜60とカバー層30の外面10cとの境界又は接点となる端部80が、電池要素10内部の積層体20への水分等の浸入経路となることが抑えられ、耐湿性が高められる。金属皮膜60によって耐湿性が高められることで、電池要素10及びそれを含む固体電池1Aの、水分等に起因した性能低下が効果的に抑えられるようになる。
【0047】
外部電極層40の表面にこのような金属皮膜60が形成された固体電池1Aを、金属皮膜60を介して、他の電子部品と半田接合によって電気的に接続するようにしてもよい。この場合は、外部電極層40及び金属皮膜60が、固体電池1Aの外部接続端子として機能する。
【0048】
また、
図4(B)に示す固体電池1Bは、金属皮膜60を更に覆うように電解メッキ層50が設けられた構成を有する。この固体電池1Bのように、金属皮膜60の表面には、電解メッキ層50が設けられてもよい。尚、金属皮膜60を、「第1金属層」とも言い、電解メッキ層50を、「第2金属層」とも言う。
【0049】
第2金属層である電解メッキ層50は、電解メッキ法により、金属皮膜60の全体を覆うように形成される。電解メッキ層50には、例えば、Ni層とその上に設けられるSn層との積層膜を用いることができる。例えば、外部電極層40の表面とカバー層30の外面10cとに形成された金属皮膜60の表面に、電解メッキ法を用いてNi層が形成され、そのNi層の表面に、電解メッキ法を用いてSn層が形成される。電解メッキ層50をこのようなNi層及びSn層との積層膜とする場合、Ni層の厚さは、例えば、3μm程度に設定され、Sn層の厚さは、例えば、5μm程度に設定される。電解メッキ層50が形成されることで、固体電池1Bを他の電子部品と半田接合する際の半田リフロー耐性が高められる。
【0050】
電解メッキ層50の、カバー層30の外面10cとの境界又は接点となる端部70における被覆性及び密着性は、比較的低くなる。しかし、固体電池1Bでは、電解メッキ層50の下層(下地)に、カバー層30の外面10cとの境界又は接点となる端部80における被覆性及び密着性が比較的高い金属皮膜60が設けられる。そのため、たとえ電解メッキ層50とカバー層30の外面10cとの境界又は接点となる端部70に水分等が浸入したとしても、金属皮膜60とカバー層30の外面10cとの境界又は接点となる端部80よりも奥へ水分等が浸入することが抑えられ、高い耐湿性が確保される。金属皮膜60によって高い耐湿性が確保されることで、電池要素10及びそれを含む固体電池1Bの、水分等に起因した性能低下が効果的に抑えられるようになる。
【0051】
外部電極層40の表面にこのような金属皮膜60及び電解メッキ層50が形成された固体電池1Bを、電解メッキ層50を介して、他の電子部品と半田接合によって電気的に接続するようにしてもよい。この場合は、外部電極層40、金属皮膜60及び電解メッキ層50が、固体電池1Bの外部接続端子として機能する。
【0052】
次に、上記のような構成を有する固体電池1B(
図4(B))に関し、金属皮膜60の距離L1と耐湿性との関係を評価した結果について説明する。
(実施例1)
上記のようにして形成された電池要素10の、その端面10a(正極引き出し面)及び端面10b(負極引き出し面)にそれぞれ、導電性ペーストを用いて外部電極層40を形成した。電池要素10のカバー層30には、ガラス材料を用いた。外部電極層40の形成後、電池要素10のカバー層30の、外部電極層40から露出する外面10cにおける所定の表面領域として、外部電極層40の縁41から、当該縁41から150μm離間した位置までの領域を除いた電池要素10の表面領域を、マスキングテープで保護した。そして、外部電極層40の表面、及びマスキングテープで保護されていないカバー層30の外面10cに、蒸着装置を用いてAuを蒸着し、金属皮膜60を形成した。金属皮膜60の形成後、マスキングテープを除去し、Auの金属皮膜60の表面に電解メッキ法を用いてNi層及びSn層の積層膜を形成し、電解メッキ層50を形成した。これにより、実施例1の固体電池として、外部電極層40の縁41から、当該縁41から離間する方向D1に向かってカバー層30の外面10c上を延びるAuの金属皮膜60の距離L1を、150μmとした、上記
図4(B)のような構成を有する固体電池1Bを得た。
【0053】
(実施例2)
上記のようにして形成された電池要素10の、その端面10a(正極引き出し面)及び端面10b(負極引き出し面)にそれぞれ、導電性ペーストを用いて外部電極層40を形成した。電池要素10のカバー層30には、ガラス材料を用いた。外部電極層40の形成後、電池要素10のカバー層30の、外部電極層40から露出する外面10cにおける所定の表面領域として、外部電極層40の縁41から、当該縁41から350μm離間した位置までの領域を除いた電池要素10の表面領域を、マスキングテープで保護した。そして、外部電極層40の表面、及びマスキングテープで保護されていないカバー層30の外面10cに、蒸着装置を用いてAuを蒸着し、金属皮膜60を形成した。金属皮膜60の形成後、マスキングテープを除去し、Auの金属皮膜60の表面に電解メッキ法を用いてNi層及びSn層の積層膜を形成し、電解メッキ層50を形成した。これにより、実施例2の固体電池として、外部電極層40の縁41から、当該縁41から離間する方向D1に向かってカバー層30の外面10c上を延びるAuの金属皮膜60の距離L1を、350μmとした、上記
図4(B)のような構成を有する固体電池1Bを得た。
【0054】
(実施例3)
上記のようにして形成された電池要素10の、その端面10a(正極引き出し面)及び端面10b(負極引き出し面)にそれぞれ、導電性ペーストを用いて外部電極層40を形成した。電池要素10のカバー層30には、ガラス材料を用いた。外部電極層40の形成後、電池要素10のカバー層30の、外部電極層40から露出する外面10cにおける所定の表面領域として、外部電極層40の縁41から、当該縁41から200μm離間した位置までの領域を除いた電池要素10の表面領域を、マスキングテープで保護した。そして、外部電極層40の表面、及びマスキングテープで保護されていないカバー層30の外面10cに、スパッタ装置を用いてCuをスパッタし、金属皮膜60を形成した。金属皮膜60の形成後、マスキングテープを除去し、Cuの金属皮膜60の表面に電解メッキ法を用いてNi層及びSn層の積層膜を形成し、電解メッキ層50を形成した。これにより、実施例3の固体電池として、外部電極層40の縁41から、当該縁41から離間する方向D1に向かってカバー層30の外面10c上を延びるCuの金属皮膜60の距離L1を、200μmとした、上記
図4(B)のような構成を有する固体電池1Bを得た。
【0055】
(比較例1)
上記のようにして形成された電池要素10の、その端面10a(正極引き出し面)及び端面10b(負極引き出し面)にそれぞれ、導電性ペーストを用いて外部電極層40を形成した。電池要素10のカバー層30には、ガラス材料を用いた。外部電極層40の形成後、電池要素10のカバー層30の、外部電極層40から露出する外面10cにおける所定の表面領域として、外部電極層40の縁41から、当該縁41から70μm離間した位置までの領域を除いた電池要素10の表面領域を、マスキングテープで保護した。そして、外部電極層40の表面、及びマスキングテープで保護されていないカバー層30の外面10cに、蒸着装置を用いてAuを蒸着し、金属皮膜60を形成した。金属皮膜60の形成後、マスキングテープを除去し、Auの金属皮膜60の表面に電解メッキ法を用いてNi層及びSn層の積層膜を形成し、電解メッキ層50を形成した。これにより、比較例1の固体電池として、外部電極層40の縁41から、当該縁41から離間する方向D1に向かってカバー層30の外面10c上を延びるAuの金属皮膜60の距離L1を、70μmとした、上記
図4(B)のような構成を有する固体電池1Bを得た。
【0056】
(比較例2)
上記のようにして形成された電池要素10の、その端面10a(正極引き出し面)及び端面10b(負極引き出し面)にそれぞれ、導電性ペーストを用いて外部電極層40を形成した。電池要素10のカバー層30には、ガラス材料を用いた。外部電極層40の表面に電解メッキ法を用いてNi層及びSn層の積層膜を形成し、電解メッキ層50を形成した。これにより、比較例2の固体電池として、上記
図3(B)のような構成を有する固体電池100を得た。尚、固体電池100は、金属皮膜60が形成されていない、上記距離L1が0μmの固体電池に概ね相当するものとも言える。
【0057】
(耐湿性評価)
実施例1-3及び比較例1、2の固体電池について、温度85℃、湿度85%の環境にて所定の動作条件での充放電を行い、それによって得られる充放電カーブに基づき、固体電池に対する湿度の影響の有無、即ち、耐湿性の評価を行った。
【0058】
ここで、充放電カーブの例を
図5に示す。
図5(A)には、湿度の影響が無いと判定される充放電カーブの一例を示している。
図5(B)には、湿度の影響が有ると判定される充放電カーブの一例を示している。
【0059】
図5(A)及び
図5(B)において、グラフ中の矢印は、複数回繰り返される充放電サイクルの進行による充放電カーブの変化の方向を示している。湿度の影響が無いと判定される
図5(A)の充放電カーブに比べ、湿度の影響が有ると判定される
図5(B)の充放電カーブでは、湿度の影響により、充放電サイクルの進行に伴い、充電容量に対する放電容量の比率が小さくなる。更に、
図5(B)の充放電カーブでは、湿度の影響により、充放電サイクルの進行に伴い、
図5(B)の点線枠Q1で囲んだ部分に示すように、放電末期に副反応による容量が発現するようになる。尚、このような副反応による容量の発現は、放電初期から発現する場合もある。
【0060】
図5(A)及び
図5(B)に示すような湿度の影響による充放電カーブの違いに基づき、実施例1-3及び比較例1、2の固体電池について、耐湿性の評価を行った。耐湿性の評価結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
実施例1-3の固体電池について得られる充放電カーブは、
図5(A)に示したような挙動を示した。材料としてAuを用いた金属皮膜60のその距離L1を150μmとした実施例1の固体電池(固体電池1B)、材料としてAuを用いた金属皮膜60のその距離L1を350μmとした実施例2の固体電池(固体電池1B)、及び、材料としてCuを用いた金属皮膜60のその距離L1を200μmとした実施例3の固体電池(固体電池1B)は、表1に示すように、湿度の影響が無い固体電池と判定した(表1では「無」と示す)。
【0063】
一方、比較例1、2の固体電池について得られる充放電カーブは、
図5(B)に示したような挙動を示した。材料としてAuを用いた金属皮膜60のその距離L1を70μmとした比較例1の固体電池(固体電池1B)、及び、金属皮膜60が形成されない比較例2の固体電池(固体電池100)は、表1に示すように、湿度の影響が有る固体電池と判定した(表1では「有」と示す)。
【0064】
表1の結果から、金属皮膜60を、電池要素10のカバー層30の外面10cの、外部電極層40の縁41から150μm以上離間した距離L1の位置まで形成することで、耐湿性に優れた固体電池1Bが実現されることが確認された。従って、耐湿性に優れた固体電池1Bを実現するためには、外部電極層40を覆う金属皮膜60を形成し、その金属皮膜60の、カバー層30の外面10c上における、外部電極層40の縁41からの距離L1を、150μm以上に設定することが好ましいと言うことができる。
【0065】
尚、ここでは金属皮膜60の距離L1を70μmといったように150μm未満に設定したものを便宜上比較例としたが、金属皮膜60の距離L1が150μm未満に設定されるような場合でも、金属皮膜60を設けない場合に比べて、固体電池1Bの耐湿性向上に一定の効果は得られる。また、ここでは固体電池1Bを例にしたが、固体電池1A(
図4(A))についても同様に、金属皮膜60が設けられることで、優れた耐湿性が実現される。
【0066】
また、ここでは金属皮膜60の材料としてAu又はCuを用いる実施例1-3及び比較例1を示したが、金属皮膜60に他の材料を用いた場合にも、湿度の影響について上記同様の結果を得ることができ、上記同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
以上説明したように、外部電極層40を覆い且つその縁41から電池要素10の外面10cの一部上を延びる金属皮膜60を設けることで、耐湿性に優れた固体電池1A、1Bを実現することが可能になる。
【符号の説明】
【0068】
1A、1B、100 固体電池
10 電池要素
10a、10b 端面
10c 外面
20 積層体
20a 表面
21 正極層
22 負極層
23 電解質層
30 カバー層
40 外部電極層
41 縁
50 電解メッキ層
60 金属皮膜
61 第1層部分
62 第2層部分
70、80 端部
D1 方向
L1 距離