(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081246
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】波長変換素子、光源装置、およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240611BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240611BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
G03B21/14 A
G03B21/00 D
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194723
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】横尾 友博
【テーマコード(参考)】
2H148
2K203
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA07
2H148AA18
2K203FA03
2K203FA34
2K203FA44
2K203FA62
2K203GA35
2K203HA08
2K203HA27
2K203KA75
2K203LA04
2K203LA36
2K203MA40
(57)【要約】
【課題】第2光の利用効率に優れる波長変換素子を提供する。
【解決手段】本発明の波長変換素子は、第1波長帯の第1光が入射する第1面と、第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、第1光を第2波長帯の第2光に変換する波長変換層と、第1面に対向して配置され、第1光を透過する第1基板と、第2面に対向して配置され、第2光を透過する第2基板と、を備える。波長変換層と第1基板とは光学的に接触しておらず、波長変換層と第2基板とは光学的に接触していない。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯の第1光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、前記第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する波長変換層と、
前記第1面に対向して配置され、前記第1光を透過する第1基板と、
前記第2面に対向して配置され、前記第2光を透過する第2基板と、
を備え、
前記波長変換層と前記第1基板とは光学的に接触しておらず、
前記波長変換層と前記第2基板とは光学的に接触していない、波長変換素子。
【請求項2】
前記波長変換層と前記第1基板とは、互いに離間し、
前記波長変換層と前記第2基板とは、互いに離間し、
前記波長変換層と前記第1基板との間隔をL1とし、前記波長変換層と前記第2基板との間隔をL2としたとき、
0<L1≦50μm、かつ、0<L2≦50μmである、請求項1に記載の波長変換素子。
【請求項3】
前記第2基板の屈折率は、1.5以上である、請求項1または請求項2に記載の波長変換素子。
【請求項4】
前記波長変換層と前記第1基板との間に設けられ、前記第1光を透過して前記第2光を反射する反射層をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の波長変換素子。
【請求項5】
前記反射層は、前記波長変換層の前記第1面に設けられる、請求項4に記載の波長変換素子。
【請求項6】
前記反射層は、前記第1基板の前記第1面と対向する面に設けられる、請求項4に記載の波長変換素子。
【請求項7】
前記第1基板の熱伝導率は、前記波長変換層の熱伝導率よりも大きく、
前記第2基板の熱伝導率は、前記波長変換層の熱伝導率よりも大きい、請求項1または請求項2に記載の波長変換素子。
【請求項8】
前記波長変換層の前記第1面および前記第2面の算術平均粗さをRaとしたとき、
前記Raは、0<Ra<1μmである、請求項1または請求項2に記載の波長変換素子。
【請求項9】
前記第1基板、前記波長変換層、および前記第2基板のうちの少なくとも一つに熱的に接続される放熱部材をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の波長変換素子。
【請求項10】
請求項1または請求項2に記載の波長変換素子と、
前記波長変換素子に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、
を備える、光源装置。
【請求項11】
請求項10に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換素子、光源装置、およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いる光源装置として、発光素子から射出された励起光を蛍光体に照射した際に蛍光体から発せられる蛍光を利用した光源装置が提案されている。
【0003】
下記の特許文献1に、蛍光体層と、蛍光体層を両面から挟み込む第1ガラス層および第2ガラス層と、を有する積層体を備え、この積層体を回転可能としたプロジェクター用蛍光体ホイールが開示されている。特許文献1には、第1ガラス層、蛍光体層、および第2ガラス層を積層して焼成することにより、これらの3層を一体化でき、蛍光体ホイールの機械的強度を高めることができる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の蛍光体ホイールでは、蛍光体層が2つのガラス層と一体化しているため、蛍光体層の内部で生成された蛍光は、2つのガラス層にそれぞれ入射する。各ガラス層に入射した蛍光は、各ガラス層の面方向に広がって伝播した後、ガラス層から射出される。この場合、蛍光は、元来の蛍光体層の発光領域よりも外側に広がった領域から射出されることになる。その結果、蛍光体ホイールの後段の光学系に入射する蛍光が減り、蛍光の利用効率が低下する、という課題がある。以上、蛍光体ホイールを例に挙げて説明したが、上記の課題は、蛍光体ホイール以外の波長変換素子にも共通する課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の波長変換素子は、第1波長帯の第1光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、前記第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する波長変換層と、前記第1面に対向して配置され、前記第1光を透過する第1基板と、前記第2面に対向して配置され、前記第2光を透過する第2基板と、を備える。前記波長変換層と前記第1基板とは光学的に接触しておらず、前記波長変換層と前記第2基板とは光学的に接触していない。
【0007】
本発明の一つの態様の光源装置は、本発明の一つの態様の波長変換素子と、前記波長変換素子に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、を備える。
【0008】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の光源装置と、前記光源装置からの前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の光源装置の概略構成図である。
【
図3】第1実施形態の波長変換素子の断面図である。
【
図5】波長変換層と基板との間隔と波長変換層の温度との関係を示す図である。
【
図6】第2実施形態の波長変換素子の断面図である。
【
図7】第3実施形態の波長変換素子の断面図である。
【
図8】第4実施形態の波長変換素子の断面図である。
【
図9】第5実施形態の波長変換素子の平面図である。
【
図10】
図9のX-X線に沿う波長変換素子の断面図である。
【
図11】第6実施形態の波長変換素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法の比率などが実際の物と同じであるとは限らない。
【0011】
本実施形態のプロジェクターは、3つの透過型液晶ライトバルブを用いたプロジェクターの一例である。
図1は、本実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、プロジェクター1は、光源装置2と、色分離光学系3と、光変調装置4Rと、光変調装置4Gと、光変調装置4Bと、光合成光学系5と、投射光学装置6と、を備える。光源装置2は、白色の照明光WLを照射する。色分離光学系3は、光源装置2からの照明光WLを、赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離する。光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれは、各色光を画像情報に応じて変調し、各色の画像光を形成する。光合成光学系5は、各光変調装置4R,4G,4Bから射出される各色の画像光を合成する。投射光学装置6は、光合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向けて投射する。
【0013】
光源装置2は、半導体レーザーから射出された青色光のうち、波長変換されずに射出される青色光の一部と、蛍光体による励起光の波長変換によって生じる黄色の蛍光光と、が合成された白色の照明光(白色光)WLを射出する。光源装置2は、略均一な照度分布を有する照明光WLを色分離光学系3に向けて射出する。光源装置2の具体的な構成については後述する。
【0014】
色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aと、第2ダイクロイックミラー7bと、第1反射ミラー8aと、第2反射ミラー8bと、第3反射ミラー8cと、第1リレーレンズ9aと、第2リレーレンズ9bと、を備える。
【0015】
第1ダイクロイックミラー7aは、光源装置2から射出された照明光WLを、赤色光LRと、緑色光LGと青色光LBとが混合された光と、に分離する。そのため、第1ダイクロイックミラー7aは、赤色光LRを透過し、緑色光LGおよび青色光LBを反射する。第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGと青色光LBとが混合された光を緑色光LGと青色光LBとに分離する。そのため、第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを反射し、青色光LBを透過する。
【0016】
第1反射ミラー8aは、赤色光LRの光路中に配置され、第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRを光変調装置4Rに向けて反射する。第2反射ミラー8bおよび第3反射ミラー8cは、青色光LBの光路中に配置され、第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBを光変調装置4Bに導く。第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光LGを光変調装置4Gに向けて反射する。
【0017】
第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路中の第2ダイクロイックミラー7bの後段に配置されている。第1リレーレンズ9aおよび第2リレーレンズ9bは、青色光LBの光路長が赤色光LRの光路長および緑色光LGの光路長よりも長くなることによる青色光LBの光損失を補償する。
【0018】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれは、液晶パネルから構成されている。光変調装置4Rは、赤色光LRを画像情報に応じて変調し、赤色光LRに対応した画像光を形成する。光変調装置4Gは、緑色光LGを画像情報に応じて変調し、緑色光LGに対応した画像光を形成する。光変調装置4Bは、青色光LBを画像情報に応じて変調し、青色光LBに対応した画像光を形成する。光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれの光入射側および光射出側には、偏光板(図示略)がそれぞれ配置されている。
【0019】
光変調装置4Rの光入射側には、光変調装置4Rに入射する赤色光LRを平行化するフィールドレンズ20Rが設けられている。光変調装置4Gの光入射側には、光変調装置4Gに入射する緑色光LGを平行化するフィールドレンズ20Gが設けられている。光変調装置4Bの光入射側には、光変調装置4Bに入射する青色光LBを平行化するフィールドレンズ20Bが設けられている。
【0020】
光合成光学系5は、クロスダイクロイックプリズムから構成されている。光合成光学系5は、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれから射出される各色の画像光を合成し、合成された画像光を投射光学装置6に向かって射出する。
【0021】
投射光学装置6は、複数の投射レンズから構成されている。投射光学装置6は、光合成光学系5により合成された画像光をスクリーンSCRに向かって拡大投射する。これにより、スクリーンSCR上には、拡大されたカラー映像(画像)が表示される。
【0022】
以下、本実施形態の光源装置2について説明する。
図2は、光源装置2の概略構成を示す図である。
図2に示すように、光源装置2は、光源部110と、集光レンズ11と、導光体12と、波長変換素子13と、ピックアップ光学系14と、インテグレーター光学系15と、を備える。
【0023】
光源部110は、レーザー光からなる青色光B1を射出する複数の発光素子110aを有する。発光素子110aは、半導体レーザーから構成される。発光素子110aから射出される青色光B1の第1波長帯は、例えば445nm~465nmの範囲であり、ピーク波長は、例えば455nmである。複数の発光素子110aは、照明光軸100axと直交する一つの平面内においてアレイ状に配置されている。光源装置2から射出される照明光WLの中心軸を照明光軸100axと定義する。発光素子110aの数は、特に限定されない。また、発光素子110aから射出される青色光B1の波長帯は、上記に限定されない。
【0024】
本実施形態の光源部110は、第1波長帯の青色光B1を複数含む光線束からなる青色光Bを波長変換素子13に向けて射出する。本実施形態の青色光Bは、特許請求の範囲の第1光に対応する。
【0025】
集光レンズ11は、光源部110の光射出側に設けられている。集光レンズ11は、凸レンズから構成されている。集光レンズ11は、光源部110から射出される青色光Bを集光して導光体12に入射させる。
【0026】
導光体12は、光入射面12aと、光射出面12bと、側面12cと、を有する。光入射面12aは、集光レンズ11によって集光された青色光Bが入射する端面である。光射出面12bは、光入射面12aとは反対側の端面であって、導光体12の内部を伝播した青色光Bを射出する端面である。側面12cは、光入射面12aおよび光射出面12bに交差する面である。
【0027】
導光体12は、光入射面12aから導光体12の内部に入射する青色光Bを側面12cでの全反射によって伝播させつつ、青色光Bの一部を光射出面12bから射出する。導光体12は、長軸方向に延在するロッドレンズで構成されている。導光体12は、中心軸に直交する断面積が光入射面12aから光射出面12bに向かって変化しない四角柱形状を有する。
【0028】
導光体12は、例えばBK7等のホウケイ酸ガラス、石英、合成石英、水晶、およびサファイア等の透光性部材で構成されている。導光体12は、例えば、第1波長帯の青色光Bの吸収が少ない特性を有する石英で構成される。これにより、導光体12は、青色光Bを効率良く伝播させて波長変換素子13に導くことができる。
【0029】
導光体12に入射した青色光Bは、導光体12の内部を全反射しながら伝播することにより、照度分布の均一性が向上した状態で光射出面12bから射出される。導光体12によって照度分布の均一性が高められた青色光Bは、波長変換素子13に入射する。波長変換素子13は、青色光Bによって励起されることで蛍光Yを生成して射出する。本実施形態の蛍光Yは、特許請求の範囲の第2光に対応する。
【0030】
波長変換素子13に入射した青色光Bの一部は、波長変換素子13を透過して射出される。すなわち、波長変換素子13は、青色光Bの一部と蛍光Yとが合成された白色の照明光WLを射出する。波長変換素子13の構成については後述する。
【0031】
ピックアップ光学系14は、第1レンズ14aと、第2レンズ14bと、を備える。ピックアップ光学系14は、波長変換素子13から射出された照明光WLを略平行化する。第1レンズ14aおよび第2レンズ14bのそれぞれは、凸レンズから構成されている。ピックアップ光学系14を構成するレンズの数は、特に限定されない。
【0032】
インテグレーター光学系15は、第1レンズアレイ120と、第2レンズアレイ130と、偏光変換素子140と、重畳レンズ150と、を備える。第1レンズアレイ120は、ピックアップ光学系14から射出された照明光WLを複数の部分光束に分割する複数の第1レンズ120aを有する。複数の第1レンズ120aは、照明光軸100axと直交する面内においてマトリクス状に配列されている。
【0033】
第2レンズアレイ130は、第1レンズアレイ120の複数の第1レンズ120aに対応する複数の第2レンズ130aを有する。第2レンズアレイ130は、重畳レンズ150とともに、第1レンズアレイ120の各第1レンズ120aの像を光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの画像形成領域の近傍に結像させる。複数の第2レンズ130aは、照明光軸100axに直交する面内においてマトリクス状に配列されている。
【0034】
偏光変換素子140は、第2レンズアレイ130から射出された照明光WLを所定の偏光方向を有する直線偏光に変換する。偏光変換素子140は、反射膜と偏光分離膜と位相差板と(図示略)を備える。
【0035】
重畳レンズ150は、偏光変換素子140から射出される各部分光束を集光して光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの画像形成領域の近傍に重畳させる。第1レンズアレイ120、第2レンズアレイ130、および重畳レンズ150は、波長変換素子13からの光の強度分布を均一にするインテグレーター光学系15を構成する。
【0036】
以下、波長変換素子13について説明する。
図3は、波長変換素子13の概略構成を示す断面図である。
図3に示すように、波長変換素子13は、波長変換層30と、第1基板31と、第2基板32と、反射層33と、を備える。なお、波長変換素子13は、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32を保持する保持部材を備えていてもよい。
【0037】
波長変換層30は、蛍光体を含み、第1波長帯を有する青色光Bを、第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する蛍光Yに変換する。波長変換層30は、青色光Bが入射する第1面30aと、第1面30aとは反対側に位置する第2面30bと、を有する。
【0038】
波長変換層30は、青色光Bを蛍光Yに波長変換する多結晶蛍光体からなるセラミック蛍光体を含む。蛍光Yが有する第2波長帯は、例えば490~750nmの黄色の波長帯である。すなわち、蛍光Yは、赤色光成分および緑色光成分を含む黄色の蛍光である。波長変換層30は、多結晶蛍光体に代えて、単結晶蛍光体を含んでいてもよい。または、波長変換層30は、蛍光ガラスから構成されていてもよい。または、波長変換層30は、ガラスまたは樹脂からなるバインダー中に多数の蛍光体粒子が分散された材料から構成されていてもよい。このような材料からなる波長変換層30は、青色光Bを蛍光Yに変換することができる。
【0039】
具体的には、波長変換層30の材料は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体を含んでいる。賦活剤としてのセリウム(Ce)を含有するYAG:Ceを例に挙げると、波長変換層30の材料として、Y2O3、Al2O3、CeO3等の構成元素を含む原料粉末を混合して固相反応させた材料、共沈法、ゾルゲル法等の湿式法により得られるY-Al-Oアモルファス粒子、噴霧乾燥法、火炎熱分解法、熱プラズマ法等の気相法により得られるYAG粒子等が用いられる。
【0040】
第1基板31は、波長変換層30の第1面30aに対向して配置され、青色光Bを透過する。第1基板31は、波長変換層30の第1面30aに対向する第3面31cと、第3面31cとは反対側に位置する第4面31dと、を有する。第1基板31の材料は、青色光Bを透過できる透光性を有していれば特に限定されないが、例えばガラス、石英、サファイア、YAG、SiC、ダイアモンド等が用いられる。第1基板31は、波長変換層30から伝達される熱を外部空間に放出する放熱部材としても機能する。
【0041】
第2基板32は、波長変換層30の第2面30bに対向して配置され、蛍光Yおよび青色光Bを透過する。第2基板32は、波長変換層30の第2面30bに対向する第5面32eと、第5面32eとは反対側に位置する第6面32fと、を有する。第2基板32の材料は、蛍光Yおよび青色光Bを透過できる透光性を有していれば特に限定されないが、第1基板31と同様、例えばガラス、石英、サファイア、YAG、SiC、ダイアモンド等が用いられる。第2基板32の材料は、第1基板31の材料と同じでもよいし、第1基板31の材料と異なっていてもよい。第2基板32は、第1基板31と同様、波長変換層30から伝達される熱を外部空間に放出する放熱部材としても機能する。
【0042】
第2基板32の屈折率は、1.5以上であることが好ましい。この構成によれば、蛍光Yが第5面32eから第2基板32に入射する際の屈折角は、第2基板32の屈折率が1.5未満の場合よりも大きくなる。その結果、蛍光Yが第6面32fから射出される際の広がりをより小さくすることができる。または、蛍光Yが第6面32fから射出される際の広がりが第2基板32の屈折率が1.5未満の場合と同等でよければ、第2基板32を厚くできるため、第2基板32の放熱性を高めることができる。この観点から、第2基板32の材料として、屈折率が1.76のサファイア、屈折率が2.4のダイアモンド、屈折率が2.6のSiCなどが好ましく用いられる。
【0043】
第1基板31の熱伝導率は、波長変換層30の熱伝導率よりも大きいことが望ましい。この構成によれば、波長変換層30の熱が第1基板31に伝達された際にその熱を第4面31dから効率良く外部空間に放出することができる。同様に、第2基板32の熱伝導率は、波長変換層30の熱伝導率よりも大きいことが望ましい。この構成によれば、波長変換層30の熱が第2基板32に伝達された際にその熱を第6面32fから効率良く外部空間に放出することができる。
【0044】
反射層33は、波長変換層30と第1基板31との間に設けられている。反射層33は、屈折率が互いに異なる複数の膜が積層された誘電体多層膜で構成され、青色波長帯の光を透過して黄色波長帯の光を反射する。すなわち、反射層33は、青色光Bを透過して蛍光Yを反射するダイクロイック層として機能する。本実施形態の場合、反射層33は、波長変換層30の第1面30aと対向する第1基板31の第3面31cに設けられている。この構成によれば、第1基板31の第3面31cは波長変換層30の第1面30aに比べて平坦性が高いため、所望の特性を有する反射層33を形成しやすい。
【0045】
反射層33は、波長変換層30の第1面30aに設けられていてもよい。この構成によれば、蛍光Yが波長変換層30の第1面30aから外部空間に射出されることなく、反射層33で反射するため、蛍光Yの損失を最小限に抑えることができる。あるいは、反射層33は、他の基板上に形成されて波長変換層30と第1基板31との間に配置されていてもよい。
【0046】
蛍光Yは、波長変換層30に含まれる蛍光体から等方的に発光し、あらゆる方向に向かって進む。そのため、蛍光Yの一部は、波長変換層30の第2面30bから射出され、蛍光Yの他の一部は、波長変換層30の第1面30aから射出される。本実施形態の場合、後述するように、波長変換層30の第1面30aから射出される蛍光Yの量は少ないが、波長変換層30と第1基板31との間に反射層33が設けられているため、波長変換層30の第1面30aから射出される蛍光Yは、反射層33で反射して波長変換層30に再度入射し、波長変換層30の第2面30bから射出される。これにより、光源部110の側に戻る蛍光Yを減らし、蛍光Yの利用効率を高めることができる。
【0047】
波長変換層30と第1基板31とは、光学的に接触していない。また、波長変換層30と第2基板32とは、光学的に接触していない。本明細書における「光学的に接触していない」とは、一方の部材と他方の部材とが一部で物理的に接触しているか否かにかかわらず、一方の部材の内部を進行する光が他方の部材に伝播しないことを意味する。
【0048】
具体的には、波長変換層30と第1基板31とは、互いに離間している。波長変換層30と第2基板32とは、互いに離間している。波長変換層30と第1基板31との間隔をL1とし、波長変換層30と第2基板32との間隔をL2としたとき、0μm<L1≦50μm、かつ、0μm<L2≦50μmの関係を満たすことが望ましい。間隔L1と間隔L2とは、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。上記の数値の根拠については、後で説明する。
【0049】
図4は、波長変換層30の第2面30bを拡大視した断面図である。なお、図示を省略するが、波長変換層30の第1面30aも第2面30bと同様の構成を有する。
通常の光散乱性を有する波長変換層の場合、波長変換層30の第1面30aおよび第2面30bは、高さおよび形状がランダムな凹凸を有する。第1面30aおよび第2面30bの算術平均粗さRaは、一般的に0<Ra<1μmである。したがって、
図4の例で言えば、波長変換層30の第2面30bのうち、相対的に高い凸部の頂部は、第2基板32の第5面32eに接触するが、それよりも低い多くの凸部の頂部は、第2基板32の第5面32eに接触しない。そのため、波長変換層30の第2面30bの一部が第2基板32の第5面32eに物理的に接触したとしても、波長変換層30の第2面30bと第2基板32の第5面32eとの間には空気層が介在する。したがって、波長変換層30と第2基板32とは、光学的に接触していない。
【0050】
本明細書において、間隔L2は、波長変換素子に入射する青色光Bの入射方向に沿う方向において、波長変換層30の第2面30bのうち、最も低い凹部の底部と第2基板32の第5面32eとの間隔である。同様に、間隔L1は、波長変換素子に入射する青色光Bの入射方向に沿う方向において、波長変換層30の第1面30aのうち、最も低い凹部の底部と第1基板31の第3面31cとの間隔である。すなわち、場所によって異なる複数の間隔のうち、最も広い間隔を間隔L1およびL2と定義する。したがって、0μm<L1≦50μm、かつ、0μm<L2≦50μmの関係を満たせば、全ての間隔について、この関係を満たすことになる。
【0051】
本発明者は、第1基板31および第2基板32のそれぞれと波長変換層30とを光学的に接触させないことで、波長変換層30から各基板31,32に伝播する蛍光Yの量を減らせば、蛍光Yの広がりが抑えられ、蛍光Yの利用効率の低下を抑制できることに想到した。ところが、波長変換層30と各基板31,32との間隔が広すぎると、波長変換層30で発生する熱が各基板31,32に伝達されにくくなり、波長変換層30の温度が上昇する場合がある。その結果、波長変換効率が低下する、または波長変換層30が損傷する等の不具合が生じるおそれがある。
【0052】
そこで、本発明者は、波長変換層と基板との間隔の変化に伴う波長変換層の温度の変化を調べるシミュレーションを行った。
図5は、シミュレーション結果を示す図であり、波長変換層と基板との間隔と、波長変換層の温度と、の関係を示すグラフである。グラフの横軸は、波長変換層と基板との間隔(μm)である。グラフの縦軸は、波長変換層の温度(℃)である。
シミュレーション条件として、波長変換層の材料をYAG:Ceとし、基板の材料をサファイアとした。波長変換層と基板との間には、熱伝導率が0.02W/m・Kの空気が介在するものとした。基板を接触させていない状態で波長変換層を発熱源に設定した。
【0053】
図5に示すように、波長変換層と基板との間隔を0μmから大きくすると、波長変換層の温度は140℃から急激に上昇する傾向を示す。波長変換層と基板との間隔を30μm程度にすると、波長変換層の温度上昇が緩やかになる。波長変換層と基板との間隔が50μmを超えると、波長変換層の温度が約185℃で略一定となる。すなわち、波長変換層と基板との間隔が50μmを超えると、波長変換層で発生する熱は基板にほとんど伝達されなくなることが判った。
【0054】
以上のシミュレーション結果から、波長変換層30と第1基板31との間隔L1、および波長変換層30と第2基板32との間隔L2のそれぞれは、0μmよりも大きく、50μm以下とするのが望ましいことが判った。これにより、
図3に示すように、波長変換層30から各基板31,32への蛍光Yの伝播を抑えつつ、波長変換層30で発生する熱Hを各基板31,32に伝達することで波長変換層30の温度上昇を抑えることができる。
【0055】
本実施形態の波長変換素子13は、波長変換層30と第1基板31との間隔、および波長変換層30と第2基板32との間隔を保持するための部材を備えていない。ところが、上述したように、波長変換層30の第1面30aおよび第2面30bの算術平均粗さRaが1μm未満であるから、個別に作製した第1基板31、波長変換層30、および第2基板32を単に積層したとしても、波長変換層30と各基板31,32との間に微小な空気層が介在し、0μm<L1≦50μm、かつ、0μm<L2≦50μmの関係を満たす。これにより、第1基板31および第2基板32のそれぞれと波長変換層30とは光学的に接触せず、波長変換層30から第1基板31および第2基板32のそれぞれに伝播する蛍光Yの量を抑えつつ、波長変換層30の熱Hを第1基板31および第2基板32のそれぞれに伝達させることができる。
【0056】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の波長変換素子13は、青色光Bが入射する第1面30aと、第1面30aとは反対側に位置する第2面30bと、を有し、青色光Bを蛍光Yに変換する波長変換層30と、第1面30aに対向して配置され、青色光Bを透過する第1基板31と、第2面30bに対向して配置され、蛍光Yを透過する第2基板32と、を備える。波長変換層30と第1基板31とは光学的に接触しておらず、波長変換層30と第2基板32とは光学的に接触していない。具体的には、波長変換層30と第1基板31とは、互いに離間し、波長変換層30と第2基板32とは、互いに離間し、波長変換層30と第1基板31との間隔L1、および波長変換層30と第2基板32との間隔L2は、0<L1≦50μm、かつ、0<L2≦50μmの関係を満たす。
【0057】
本実施形態の構成によれば、波長変換層30で生成された蛍光Yの第1基板31および第2基板32への伝播が抑制されるため、波長変換層30から射出される蛍光Yは、各基板31,32の面方向に導光することが少なく、元来の波長変換層30の発光領域から大きく広がって射出されるのを抑えることができる。その結果、波長変換素子13の後段の光学系に入射する蛍光Yの減少が抑えられ、蛍光Yの利用効率を十分に確保することができる。一方、波長変換層30で発生する熱Hが第1基板31および第2基板32に伝達されるため、波長変換層30の温度上昇を抑えることができる。その結果、波長変換効率が低下する、または波長変換層30が損傷する等の不具合を抑えることができる。
【0058】
本実施形態の光源装置2は、本実施形態の波長変換素子13を備えているため、蛍光Yの利用効率に優れる。
【0059】
本実施形態のプロジェクター1は、本実施形態の光源装置2を備えているため、高効率のプロジェクターを実現できる。
【0060】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図面を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と略同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置の説明は省略する。
図6は、第2実施形態の波長変換素子22の概略構成を示す断面図である。
図6において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0061】
図6に示すように、本実施形態の波長変換素子22は、波長変換層30と、第1基板31と、第2基板32と、反射層33と、放熱部材35と、を備える。
【0062】
放熱部材35は、波長変換層30、第1基板31、第2基板32、および反射層33の周囲を囲むように設けられている。すなわち、放熱部材35は開口部35hを有し、波長変換層30、第1基板31、第2基板32、および反射層33は開口部35hの内側に配置されている。放熱部材35は、第1基板31の第4面31dの周縁部に直接接触する突出部35tを有する。放熱部材35は、突出部35tを介して第1基板31と熱的に接続されている。これにより、波長変換層30の熱Hの一部は、第1基板31から放熱部材35に伝達され、放熱部材35から外部空間に放出される。したがって、放熱部材35は、所定の強度を有し、熱伝導率が高い材料で構成されることが望ましい。放熱部材35の材料として、例えば銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属が用いられる。
【0063】
本実施形態の場合、放熱部材35は、第1基板31と熱的に接続される一方、波長変換層30および第2基板32とは熱的に接続されていないが、この構成に限らず、波長変換層30および第2基板32と熱的に接続されていてもよい。すなわち、放熱部材35は、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32のうちの少なくとも一つと熱的に接続されていればよい。波長変換素子22のその他の構成は、第1実施形態の波長変換素子13と同様である。
【0064】
[第2実施形態の効果]
本実施形態においても、蛍光Yの射出領域の広がりを抑制し、蛍光Yの利用効率を十分に確保することができるとともに、波長変換層30の温度上昇を抑制し、波長変換効率の低下、または波長変換層30の損傷等の発生を抑えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
特に本実施形態の場合、波長変換素子22が第1基板31と熱的に接続された放熱部材35を備えているため、波長変換層30の温度上昇をより効果的に抑えることができる。
【0066】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図面を用いて説明する。
第3実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と略同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置の説明は省略する。
図7は、第3実施形態の波長変換素子23の概略構成を示す断面図である。
図7において、以前の実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0067】
図7に示すように、本実施形態の波長変換素子23は、波長変換層30と、第1基板31と、第2基板32と、反射層33と、放熱部材36と、を備える。
【0068】
第2実施形態と同様、放熱部材36は、波長変換層30、第1基板31、第2基板32、および反射層33の周囲を囲むように設けられている。放熱部材36は、高熱伝導性を有する接合材37を介して、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32と熱的に接続されている。これにより、波長変換層30の熱Hの一部は、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32のそれぞれから放熱部材36に伝達され、放熱部材36から外部空間に放出される。高熱伝導性を有する接合材37として、例えばナノ銀ペースト等が用いられる。放熱部材36は、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32のうちの少なくとも一つと熱的に接続されていればよい。波長変換素子23のその他の構成は、第1実施形態の波長変換素子13と同様である。
【0069】
[第3実施形態の効果]
本実施形態においても、蛍光Yの射出領域の広がりを抑制し、蛍光Yの利用効率を十分に確保することができるとともに、波長変換層30の温度上昇を抑制し、波長変換効率の低下、または波長変換層30の損傷等の発生を抑えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
特に本実施形態の場合、波長変換素子23が波長変換層30、第1基板31、および第2基板32のそれぞれと熱的に接続された放熱部材36を備えているため、波長変換層30の温度上昇をより効果的に抑えることができる。
【0071】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、図面を用いて説明する。
第4実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と略同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置の説明は省略する。
図8は、第4実施形態の波長変換素子24の概略構成を示す断面図である。
図8において、以前の実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0072】
図8に示すように、本実施形態の波長変換素子24は、波長変換層30と、第1基板31と、第2基板32と、反射層33と、放熱部材36と、を備える。
【0073】
第3実施形態と同様、放熱部材36は、波長変換層30、第1基板31、第2基板32、および反射層33の周囲を囲むように設けられている。放熱部材36は、放熱部材36の側面が波長変換層30、第1基板31、および第2基板32の各側面と直接接触することによって、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32のそれぞれと熱的に接続されている。これにより、波長変換層30の熱Hの一部は、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32のそれぞれから放熱部材36に伝達され、放熱部材36から外部空間に放出される。放熱部材36は、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32のうちの少なくとも一つと熱的に接続されていればよい。波長変換素子24のその他の構成は、第1実施形態の波長変換素子13と同様である。
【0074】
[第4実施形態の効果]
本実施形態においても、蛍光Yの射出領域の広がりを抑制し、蛍光Yの利用効率を十分に確保することができるとともに、波長変換層30の温度上昇を抑制し、波長変換効率の低下、または波長変換層30の損傷等の発生を抑えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0075】
特に本実施形態の場合、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32のそれぞれと放熱部材36とが、接合材等を介することなく、直接接触することで熱的に接続されているため、波長変換層30の温度上昇をより効果的に抑えることができる。
【0076】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、図面を用いて説明する。
第5実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と略同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置の説明は省略する。
図9は、第5実施形態の波長変換素子25の概略構成を示す平面図である。
図10は、
図9のX-X線に沿う波長変換素子25の断面図である。
図9および
図10において、以前の実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0077】
図9および
図10に示すように、本実施形態の波長変換素子25は、波長変換層30と、第1基板31と、第2基板32と、反射層33と、スペーサー38と、を備える。
【0078】
図9に示すように、スペーサー38は、照明光軸100axの方向から見て、矩形枠状の形状を有し、青色光Bを入射させ、蛍光Yおよび青色光Bを射出させる開口部38hが中央に設けられている。なお、スペーサー38は、必ずしも波長変換層30、第1基板31、および第2基板32の全周にわたって設けられていなくてもよく、波長変換層30、第1基板31、および第2基板32の全周のうちの一部に設けられていてもよい。
【0079】
図10に示すように、スペーサー38は、側板部38sと、枠部38wと、を有する。側板部38sは、波長変換層30の側面に接触する。枠部38wは、側板部38sの両端から波長変換層30の第1面30aおよび第2面30bのそれぞれに沿って延び、波長変換層30の第1面30aと第1基板31の第3面31cとの間、および波長変換層30の第2面30bと第2基板32の第5面32eとの間のそれぞれに介在する。枠部38wの厚さtは、50μm以下に設定されている。これにより、波長変換層30と第1基板31との間隔L1、および波長変換層30と第2基板32との間隔L2のそれぞれは、スペーサー38の枠部38wが介在することで、0μmよりも大きく、50μm以下に保持される。スペーサー38の材料は、特に限定されないが、波長変換層30の放熱を促進するため、熱伝導率の高い金属等が用いられることが望ましい。波長変換素子25のその他の構成は、第1実施形態の波長変換素子13と同様である。
【0080】
[第5実施形態の効果]
本実施形態においても、蛍光Yの射出領域の広がりを抑制し、蛍光Yの利用効率を十分に確保することができるとともに、波長変換層30の温度上昇を抑制し、波長変換効率の低下、または波長変換層30の損傷等の発生を抑えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態について、図面を用いて説明する。
第6実施形態のプロジェクターおよび光源装置の基本構成は第1実施形態と略同様であり、波長変換素子の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび光源装置の説明は省略する。
図11は、第6実施形態の波長変換素子26の概略構成を示す断面図である。
図11において、以前の実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0082】
図11に示すように、本実施形態の波長変換素子26は、波長変換層30と、第1基板31と、第2基板32と、反射層33と、スペーサー39と、を備える。
【0083】
スペーサー39は、波長変換層30の第1面30aと第1基板31の第3面31cとの間、および波長変換層30の第2面30bと第2基板32の第5面32eとの間のそれぞれに介在する。スペーサー39は、ギャップ材40を含む接着材から構成される。ギャップ材40は、例えば球状の中空シリカ粒子から構成されている。ギャップ材40の直径dは、50μm以下に設定されている。これにより、波長変換層30と第1基板31との間隔L1、および波長変換層30と第2基板32との間隔L2のそれぞれは、0μmよりも大きく、50μm以下の範囲に保持される。波長変換素子26のその他の構成は、第1実施形態の波長変換素子13と同様である。
【0084】
[第6実施形態の効果]
本実施形態においても、蛍光Yの射出領域の広がりを抑制し、蛍光Yの利用効率を十分に確保することができるとともに、波長変換層30の温度上昇を抑制し、波長変換効率の低下、または波長変換層30の損傷等の発生を抑えることができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0085】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の一つの態様は、上記実施形態および変形例の特徴部分を適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0086】
波長変換素子、光源装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料などの具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。上記実施形態では、固定型の波長変換素子に本発明を適用したが、回転ホイール型の波長変換素子に本発明を適用してもよい。また、上記実施形態では、青色光の一部を黄色の蛍光に変換し、蛍光と青色光の他の一部とが合成された白色光を射出する波長変換素子の例を挙げたが、この構成に代えて、青色光の全てを黄色の蛍光に変換する波長変換素子であってもよい。
【0087】
上記実施形態では、本発明による光源装置を、液晶パネルを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限定されない。本発明による光源装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。また、プロジェクターは、複数の光変調装置を有していなくてもよく、1つの光変調装置のみを有していてもよい。
【0088】
上記実施形態では、本発明の光源装置をプロジェクターに適用した例を示したが、これに限られない。本発明の光源装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0089】
[本開示のまとめ]
以下、本開示のまとめを付記する。
【0090】
(付記1)
第1波長帯の第1光が入射する第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、を有し、前記第1光を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換する波長変換層と、
前記第1面に対向して配置され、前記第1光を透過する第1基板と、
前記第2面に対向して配置され、前記第2光を透過する第2基板と、
を備え、
前記波長変換層と前記第1基板とは光学的に接触しておらず、
前記波長変換層と前記第2基板とは光学的に接触していない、波長変換素子。
【0091】
付記1の構成によれば、第2光の射出領域の広がりを抑制し、第2光の利用効率を十分に確保することができる。
【0092】
(付記2)
前記波長変換層と前記第1基板とは、互いに離間し、
前記波長変換層と前記第2基板とは、互いに離間し、
前記波長変換層と前記第1基板との間隔をL1とし、前記波長変換層と前記第2基板との間隔をL2としたとき、
0<L1≦50μm、かつ、0<L2≦50μmである、付記1に記載の波長変換素子。
【0093】
付記2の構成によれば、波長変換層の熱を第1基板および第2基板のそれぞれに伝達できるため、第2光の利用効率を十分に確保できることに加えて、波長変換層の温度上昇を抑制し、波長変換効率の低下、または波長変換層の損傷等の発生を抑えることができる。
【0094】
(付記3)
前記第2基板の屈折率は、1.5以上である、付記1または付記2に記載の波長変換素子。
【0095】
付記3の構成によれば、第2光が第2基板に入射する際の屈折角が、第2基板の屈折率が1.5未満の場合よりも大きくなるため、第2光が第2基板から射出される際の広がりを小さくすることができる。または、蛍光が射出される際の広がりが第2基板の屈折率が1.5未満の場合と同等でよければ、第2基板を厚くできるため、第2基板の放熱性を高めることができる。
【0096】
(付記4)
前記波長変換層と前記第1基板との間に設けられ、前記第1光を透過して前記第2光を反射する反射層をさらに備える、付記1から付記3までのいずれか一つに記載の波長変換素子。
【0097】
付記4の構成によれば、波長変換層から第1基板に向けて射出される第2光を反射層で反射させ、波長変換層に戻すことができるため、第2基板から射出される第2光を増やすことができる。
【0098】
(付記5)
前記反射層は、前記波長変換層の前記第1面に設けられる、付記4に記載の波長変換素子。
【0099】
付記5の構成によれば、第2光が波長変換層の第1面から外部空間に射出されることなく、反射層で反射するため、第2光の損失を最小限に抑えることができる。
【0100】
(付記6)
前記反射層は、前記第1基板の前記第1面と対向する面に設けられる、付記4に記載の波長変換素子。
【0101】
付記6の構成によれば、第1基板の第1面と対向する面は波長変換層の第1面に比べて平坦性が高いため、所望の特性を有する反射層を形成しやすい。
【0102】
(付記7)
前記第1基板の熱伝導率は、前記波長変換層の熱伝導率よりも大きく、
前記第2基板の熱伝導率は、前記波長変換層の熱伝導率よりも大きい、付記1から付記6までのいずれか一つに記載の波長変換素子。
【0103】
付記7の構成によれば、波長変換層の熱を第1基板および第2基板のそれぞれから効率良く外部空間に放出することができる。
【0104】
(付記8)
前記波長変換層の前記第1面および前記第2面の算術平均粗さをRaとしたとき、
前記Raは、0<Ra<1μmである、付記1から付記7までのいずれか一つに記載の波長変換素子。
【0105】
付記8の構成によれば、波長変換層を第1基板および第2基板のそれぞれに当接させても、波長変換層と第1基板および第2基板のそれぞれとが光学的に接触しない構成を実現することができる。
【0106】
(付記9)
前記第1基板、前記波長変換層、および前記第2基板のうちの少なくとも一つに熱的に接続される放熱部材をさらに備える、付記1から付記8までのいずれか一つに記載の波長変換素子。
【0107】
付記9の構成によれば、波長変換素子が放熱部材を備えているため、波長変換層の温度上昇をより効果的に抑えることができる。
【0108】
(付記10)
付記1から付記9までのいずれか一項に記載の波長変換素子と、
前記波長変換素子に入射させる前記第1光を射出する発光素子と、
を備える、光源装置。
【0109】
付記10の構成によれば、第2光の利用効率が高い光源装置が得られる。
【0110】
(付記11)
付記10に記載の光源装置と、
前記光源装置から射出される前記第2光を含む光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投射する投射光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【0111】
付記11の構成によれば、高効率のプロジェクターが得られる。
【符号の説明】
【0112】
1…プロジェクター、2…光源装置、4B,4G,4R…光変調装置、6…投射光学装置、13,22,23,24,25,26…波長変換素子、30…波長変換層、30a…第1面、30b…第2面、31…第1基板、32…第2基板、33…反射層、35,36…放熱部材、110a…発光素子、B…青色光(第1光)、Y…蛍光(第2光)。