(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081253
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】温度センサ
(51)【国際特許分類】
G01K 1/143 20210101AFI20240611BHJP
G01K 7/22 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
G01K1/143
G01K7/22 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194735
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 達雄
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056CA14
2F056QF04
2F056QF07
(57)【要約】
【課題】 熱応答性等の測温特性を向上させることができ、車載用等に好適な温度センサを提供すること。
【解決手段】 被測定物に設置される温度センサであって、感熱素子2と、感熱素子に先端が接続された一対のリード線3と、感熱素子と一対のリード線の先端側とが上面に設置され下面に被測定物に対する設置面を有したベース板4とを備え、一対のリード線が、ベース板上で折り返して曲げられている。また、一対のリード線が、感熱素子を囲んで折り曲げられていることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に設置される温度センサであって、
感熱素子と、
前記感熱素子に先端が接続された一対のリード線と、
前記感熱素子と前記一対のリード線の先端側とが上面に設置され下面に前記被測定物に対する設置面を有したベース板とを備え、
前記一対のリード線が、前記ベース板上で折り返して曲げられていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記一対のリード線が、前記感熱素子を囲んで折り曲げられていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記一対のリード線の折り返された一部が、前記感熱素子の側面に接触していることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記一対のリード線が、導電性の芯線と、
前記芯線を覆う絶縁性被覆部と、
前記絶縁性被覆部よりも熱伝導性が高い材料で形成され前記ベース板上の前記絶縁性被覆部を覆った高熱伝導材料部とを備えていることを特徴とする温度センサ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記感熱素子を樹脂で封止した素子封止部と、
前記ベース板上で前記素子封止部及び前記一対のリード線の先端側を前記素子封止部よりも熱伝導性が低い樹脂で封止する低熱伝導樹脂部とを備えていることを特徴とする温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱応答性を有し、車載用に好適な温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のバッテリー等の温度を測定するために温度センサが用いられている。
例えば、特許文献1には、収納ケースと、収納ケース内に収納されたサーミスタと、サーミスタに接続されるリード線と、リード線に接続される電線と、収納ケースの当接しサーミスタとリード線と電線の一部とを覆った箱状の金属の集熱部材と、集熱部材内のサーミスタ及びリード線を封止するエポキシ樹脂系接着剤とを備えた温度センサが記載されている。
【0003】
この温度センサでは、箱状の金属の集熱部材により、リード部と電線の一部とから空中に放射される熱を極力抑制し、さらに金属の集熱部材により被測定部からの集熱を効率よく行っている。
上記箱状の集熱部材は、サーミスタ収納部の先端面が被測定部の表面に当接する測温面(設置面)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来の上記温度センサでは、金属の集熱部材によって熱応答性を高めているが、やはりリード線及び電線からの排熱によって熱応答性が低下してしまう問題があった。
また、冷蔵庫,エアコン等に使用される温度センサでは、機器自体が破損するほど温度が急激に変化するわけではないため、熱応答性は温度変化に対して一定以上であれば良いが、自動車等では、電動化,大電流化に伴い制御機器等の温度感知の高応答性の向上が求められている。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、熱応答性等の測温特性を向上させることができ、車載用等に好適な温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、被測定物に設置される温度センサであって、感熱素子と、前記感熱素子に先端が接続された一対のリード線と、前記感熱素子と前記一対のリード線の先端側とが上面に設置され下面に前記被測定物に対する設置面を有したベース板とを備え、前記一対のリード線が、前記ベース板上で折り返して曲げられていることを特徴とする。
【0008】
この温度センサでは、一対のリード線が、ベース板上で折り返して曲げられているので、リード線がベース板上で真っ直ぐに延在している場合に比べて、ベース板上に延在するリード線が長くなり、リード線の先端側がベース板から受ける熱が多くなることで、感熱素子だけでなくリード線の先端側自体も多く加温される。これにより、リード線の基端側からの排熱が抑制されることで、高い熱応答性が得られ、測温特性が向上し、高精度な温度測定が可能になる。また、リード線を折り曲げる簡易な構造であるため、安価で高精度な温度測定が可能になる。
【0009】
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記一対のリード線が、前記感熱素子を囲んで折り曲げられていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、一対のリード線が、感熱素子を囲んで折り曲げられているので、ベース板から受熱したリード線が、周囲から感熱素子に対しても加温することで、より熱応答性を向上させることができる。
【0010】
第3の発明に係る温度センサは、第1又は第2の発明において、前記一対のリード線の折り返された一部が、前記感熱素子の側面に接触していることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、一対のリード線の折り返された一部が、感熱素子の側面に接触しているので、ベース板から受熱したリード線が、側面から感熱素子に対して直接的に加温することで、より熱応答性を向上させることができる。
【0011】
第4の発明に係る温度センサは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記一対のリード線が、導電性の芯線と、前記芯線を覆う絶縁性被覆部と、前記絶縁性被覆部よりも熱伝導性が高い材料で形成され前記ベース板上の前記絶縁性被覆部を覆った高熱伝導材料部とを備えていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、一対のリード線が、絶縁性被覆部よりも熱伝導性が高い材料で形成されベース板上の絶縁性被覆部を覆った高熱伝導材料部を備えているので、金属膜や熱伝導樹脂テープ等の高熱伝導材料部によってベース板からの熱を効率的に受けることができ、ベース板上のリード線をより加温することができる。
【0012】
第5の発明に係る温度センサは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記感熱素子を樹脂で封止した素子封止部と、前記ベース板上で前記素子封止部及び前記一対のリード線の先端側を前記素子封止部よりも熱伝導性が低い樹脂で封止する低熱伝導樹脂部とを備えていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、ベース板上で素子封止部及び一対のリード線の先端側を素子封止部よりも熱伝導性が低い樹脂で封止する低熱伝導樹脂部を備えているので、低熱伝導樹脂部により、外部からの接触があっても熱が奪われることを防ぐと共に、感熱素子を含む素子封止部及び折り返されたリード線の上方から熱が拡散することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、一対のリード線が、ベース板上で折り返して曲げられているので、リード線の先端側がより加温され、リード線の基端側からの排熱が抑制されることで、高い熱応答性が得られ、測温特性が向上する。また、リード線を折り曲げる簡易な構造であるため、安価で高精度な温度測定が可能になる。
したがって、本発明の温度センサでは、制御対象として特に車載用に好適であり、EV化が進む中、150℃を超える高温使用に対しても対応可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る温度センサの一実施形態において、内部を透視した温度センサを示す斜視図である。
【
図2】本実施形態において、温度センサを示す斜視図である。
【
図3】本実施形態において、内部を透視した温度センサを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る温度センサの一実施形態を、
図1から
図3を参照しながら説明する。
【0016】
本実施形態の温度センサ1は、
図1から
図3に示すように、被測定物に設置される温度センサであって、感熱素子2と、感熱素子2に先端が接続された一対のリード線3と、感熱素子2と一対のリード線3の先端側とが上面に設置され下面に被測定物に対する設置面4aを有したベース板4とを備えている。
上記一対のリード線3は、ベース板4上で折り返して曲げられている。なお、「折り返して曲げられている」とは、リード線3が屈曲して折り返し折り曲げられている場合、湾曲して折り返されている場合、又は円形状や螺旋状に曲がって折り返されている場合等も含む。
【0017】
また、一対のリード線3は、感熱素子2を囲んで折り曲げられている。
本実施形態では、リード線3がベース板4上で2回折り返されて感熱素子2の周りに延在している。
さらに、一対のリード線3の折り返された一部は、感熱素子2の側面に接触している。
一対のリード線3は、導電性の芯線3aと、芯線3aを覆う絶縁性被覆部3bと、絶縁性被覆部3bよりも熱伝導性が高い材料で形成されベース板4上の絶縁性被覆部3bを覆った高熱伝導材料部3cとを備えている。
【0018】
また、本実施形態の温度センサ1は、感熱素子2を樹脂で封止した素子封止部5と、ベース板4上で素子封止部5及び一対のリード線3の先端側を素子封止部5よりも熱伝導性が低い樹脂で封止する低熱伝導樹脂部6とを備えている。
上記素子封止部5は、例えば熱伝導率の高いエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂で円柱状に形成され、低熱伝導樹脂部6は、例えば素子封止部5のエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂よりも熱伝導率の低いエポキシ樹脂で形成されている。
【0019】
上記感熱素子2は、例えばチップサーミスタ、フレーク型サーミスタ、薄膜サーミスタ等であり、本実施形態では、感熱素子2としてチップサーミスタを採用している。
上記ベース板4は、例えばAl等の金属板で長方形状に形成されている。
なお、低熱伝導樹脂部6は、ベース板4の形状に対応して、平面視長方形状かつ断面台形状に形成されている。
なお、リード線3が低熱伝導樹脂部6から外部に延出している方向を、基端側とし、その反対側を先端側とする。
【0020】
上記リード線3は、ベース板4の上面に載置した素子封止部5から素子封止部5の軸線方向かつ基端側に延在した後、ベース板4の基端側端辺近傍でU字状に折り返され、ベース板4の長手方向に先端に向けて延在している。さらに、リード線3は、ベース板4の先端側端辺近傍で再びU字状に折り返され、ベース板4の長手方向を基端に向けて延在し、ベース板4の基端側端辺から外方に延出している。
【0021】
したがって、リード線3は、ベース板4上の感熱素子2及び素子封止部5の周囲を一周するように延在して折り返されている。
なお、リード線3がベース板4の長手方向を基端に向けて延在している部分は、素子封止部5の側面に接している。
【0022】
上記芯線3aは、例えば銅線等であり、絶縁性被覆部3bはPVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)、FEP(テフロン(登録商標))等である。
なお、芯線3aの先端は、感熱素子2にハンダ等で接合されている。
上記高熱伝導材料部3cは、熱容量が小さく、熱伝導が良い材料で形成することが好ましく、例えばアルミ箔等の金属箔や金属膜が採用可能である。
なお、感熱素子2の素子封止部5の周囲も、高熱伝導材料部3cで覆うことで、より熱応答性が向上する。
【0023】
本実施形態の温度センサ1を被測定物に取り付ける場合、ベース板4の下面(設置面4a)を被測定物に接着剤で固定する、又はバネ部材等で直接接触させた状態で押圧させて固定しても良い。また、ベース板4の下面(設置面4a)と被測定物との間に、熱伝導接着テープを配して密着させることで、対向した表面の凹凸を埋めて、より受熱性を向上させても良い。
【0024】
このように本実施形態の温度センサ1では、一対のリード線3が、ベース板4上で設置面4aに沿って折り返して曲げられているので、リード線3がベース板4上で真っ直ぐに延在している場合に比べて、ベース板4上に延在するリード線3が長くなり、リード線3の先端側がベース板4から受ける熱が多くなることで、感熱素子2だけでなくリード線3の先端側自体も多く加温される。
【0025】
これにより、リード線3の基端側からの排熱が抑制されることで、高い熱応答性が得られ、測温特性が向上し、高精度な温度測定が可能になる。また、リード線3を折り曲げる簡易な構造であるため、安価で高精度な温度測定が可能になる。
特に、一対のリード線3が、感熱素子2を囲んで折り曲げられることで、ベース板4から受熱したリード線3が、周囲から感熱素子2に対しても加温することで、より熱応答性を向上させることができる。
【0026】
さらに、一対のリード線3の折り返された一部を、感熱素子2の側面に接触させることで、ベース板4から受熱したリード線3が、側面から感熱素子2に対して直接的に加温し、より熱応答性を向上させることができる。
なお、リード線径は細いものほど、リード線の熱容量が小さくなるため、好ましい。
【0027】
また、一対のリード線3が、絶縁性被覆部3bよりも熱伝導性が高い材料で形成されベース板4上の絶縁性被覆部3bを覆った高熱伝導材料部3cを備えているので、金属膜や熱伝導樹脂テープ等の高熱伝導材料部によってベース板4からの熱を効率的に受けることができ、ベース板4上のリード線3をより加温することができる。
【0028】
さらに、ベース板4上で素子封止部5及び一対のリード線3の先端側を素子封止部5よりも熱伝導性が低い樹脂で封止する低熱伝導樹脂部6を備えているので、低熱伝導樹脂部6により、外部からの接触があっても熱が奪われることを防ぐと共に、感熱素子2を含む素子封止部5及び折り返されたリード線3の上方から熱が拡散することを抑制することができる。
【実施例0029】
上記実施形態の温度センサを実施例として、被測定物として25℃~85℃の熱板に接触させた際の測温特性(スタート温度と目標温度との差の63.2%に達した時間)を測定した。
また、比較例として、感熱素子から単に真っ直ぐに延在させたリード線を用いた温度センサについても、同様に測温特性を測定した。
なお、比較例のリード線は、上記高熱伝導材料部で覆われていない。また、比較例のベース板上には、低熱伝導樹脂部が形成されていない。
【0030】
これらの結果、比較例では、63.2%に達した時間が163.1秒であったのに対し、本発明の実施例では、63.2%に達した時間が25.9秒であり、熱応答性が大きく向上している。
【0031】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
1…温度センサ、2…感熱素子、3…リード線、3a…芯線、3b…絶縁性被覆部、3c…高熱伝導材料部、4…ベース板、4a…設置面、5…素子封止部、6…低熱伝導樹脂部