(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008126
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】熱電対
(51)【国際特許分類】
G01K 7/02 20210101AFI20240112BHJP
【FI】
G01K7/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109714
(22)【出願日】2022-07-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 提供日 令和4年(2022年)4月20日 提供した場所 光洋サーモシステム株式会社(奈良県天理市嘉幡町229番地)(光洋サーモシステム株式会社は、現在、株式会社ジェイテクトサーモシステムに社名変更されている。) 公開者 日本電測株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508072567
【氏名又は名称】日本電測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 将司
【テーマコード(参考)】
2F056
【Fターム(参考)】
2F056KC03
2F056KC06
2F056KC07
(57)【要約】
【課題】 簡単な構成で、炉壁等に形成された熱電対の挿入孔の形状が歪んでも損傷が生じにくい熱電対を提供する。
【解決手段】 先端に測温部1cを有する長尺状の熱電対素線1を有する熱電対Sであって、測温部1cが露出するように熱電対素線1が挿入された絶縁管2と、熱電対素線1の基端寄りの所定位置に配設され、熱電対素線1が挿入された絶縁管2が貫通する穴を有し、熱電対Sを所定の固定部材に取り付けるための取付金具6と、内部に絶縁管2が挿入され、一端が取付金具6に対して固定され他端が取付金具6よりも熱電対素線1の先端寄りに位置するフレキシブル管5と、先端が封止された有底筒状の底部の内側に測温部1cが配置されるように内部に絶縁管2が挿入され、基端がフレキシブル管5の他端に固定された保護管3と、を備え、絶縁管2は、少なくともフレキシブル管5の内部に配置された部分が熱電対素線1の長手方向に複数に分割されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に測温部を有する長尺状の熱電対素線を有する熱電対であって、
前記測温部が露出するように前記熱電対素線が挿入された絶縁管と、
前記熱電対素線の基端寄りの所定位置に配設され、前記熱電対素線が挿入された前記絶縁管が貫通する穴を有し、前記熱電対を所定の固定部材に取り付けるための取付金具と、
内部に前記絶縁管が挿入され、一端が前記取付金具に対して固定され他端が前記取付金具よりも前記熱電対素線の先端寄りに位置して可撓性を有するフレキシブル管と、
先端が封止された有底筒状の底部の内側に前記測温部が配置されるように内部に前記絶縁管が挿入され、基端が前記フレキシブル管の他端に固定された保護管と、
を備え、
前記絶縁管は、少なくとも前記フレキシブル管の内部に配置された部分が前記熱電対素線の長手方向に複数に分割されている、
熱電対。
【請求項2】
前記絶縁管及び前記保護管はセラミックス製であり、
前記フレキシブル管は金属製である、
請求項1に記載の熱電対。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉等の温度測定に用いられる熱電対に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体製造工程等で用いられる高温熱処理炉の炉内温度の測定に長尺の熱電対が用いられている。この場合、炉壁に熱電対を挿入するための挿入孔を設け、熱電対の先端が炉内に位置するように挿入孔から熱電対を挿入し、熱電対に備えられている取付金具を炉外に設けられた所定の固定部材に取り付けることで、熱電対を所定箇所に設置するようにしている。
【0003】
このような高温熱処理炉等で用いられる従来の熱電対は、例えば、先端に測温部を有する熱電対素線が測温部を露出するようにして絶縁管に挿入され、測温部及び絶縁管を内部に収納するセラミックス製の保護管を備えた構成である。
【0004】
特許文献1には、素線を格納すると共に耐熱性を有する絶縁材を充填してなる金属製のシースの外側に、上記シースの先端部に被せて固定する先端磁性管部材と、上記シースの中間部の外周に配置する複数の継ぎ磁性管部材と、上記シースの基端寄りの外周に配置し且つ弾性変形状態からの復元力により上記継ぎ磁性管部材を上記先端磁性管部材の方向へ付勢するための弾性部材とを備えてなる分割式磁性保護管を設けた構成を有することを特徴とする熱電対が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、高温熱処理炉の炉壁は、耐火レンガや断熱部材等の多層の壁部材で形成されており、高温熱処理炉を長期間使用すると、壁部材の膨張等による体積変化や目地の幅の変化等によって炉壁に形成された熱電対の挿入孔の形状に歪みが生じる。
【0007】
上記従来の熱電対では、上記挿入孔の形状に歪みが生じて、挿入孔の内壁の壁部材がセラミックス製の保護管等と接触して熱電対に外力が加わると、保護管等は柔軟性がないので保護管が割れたりして熱電対に損傷が生じやすい。また、熱電対を新品と取り替える場合でも、歪んだ挿入孔に新品の熱電対を挿入しにくくなる。
【0008】
また、特許文献1の熱電対では、複数の継ぎ磁性管部材どうしが外力に応じて相対変位するように構成されているが、腐食性環境で使用する場合に継ぎ磁性管部材どうしの継ぎ目から腐食性物質が進入するのを防止するために、継ぎ磁性管部材と金属製のシースとの隙間に耐熱性を有する絶縁材を充填するようにしている。この場合、構成が複雑になるだけでなく、腐食性物質の進入を確実に防止できるかという点において懸念が残る。
【0009】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、簡単な構成で、炉壁等に形成された熱電対の挿入孔の形状が歪んでも損傷が生じにくい熱電対を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明のある態様に係る熱電対は、先端に測温部を有する長尺状の熱電対素線を有する熱電対であって、前記測温部が露出するように前記熱電対素線が挿入された絶縁管と、前記熱電対素線の基端寄りの所定位置に配設され、前記熱電対素線が挿入された前記絶縁管が貫通する穴を有し、前記熱電対を所定の固定部材に取り付けるための取付金具と、内部に前記絶縁管が挿入され、一端が前記取付金具に対して固定され他端が前記取付金具よりも前記熱電対素線の先端寄りに位置して可撓性を有するフレキシブル管と、先端が封止された有底筒状の底部の内側に前記測温部が配置されるように内部に前記絶縁管が挿入され、基端が前記フレキシブル管の他端に固定された保護管と、を備え、前記絶縁管は、少なくとも前記フレキシブル管の内部に配置された部分が前記熱電対素線の長手方向に複数に分割されている。
【0011】
この構成によれば、例えば、高温熱処理炉等の炉壁に形成された熱電対を挿入する挿入孔の形状が歪んで挿入孔の側壁が熱電対の保護管等と接触して熱電対に外力が加わっても、熱電対はフレキシブル管の部分である程度曲げられるので、熱電対の損傷が生じにくい。また、熱電対を新品と取り替える場合でも、歪んだ挿入孔に新品の熱電対を挿入しやすくなる。また、保護管は先端が封止された筒状であるので、腐食性環境で使用する場合でも保護管を介して腐食性物質等が内部へ侵入するおそれはなく、保護管の内部に絶縁材等を充填しなくてもよく、構成が簡単である。
【0012】
前記絶縁管及び前記保護管はセラミックス製であり、前記フレキシブル管は金属製であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上に説明した構成を有し、簡単な構成で、炉壁等に形成された熱電対の挿入孔の形状が歪んでも損傷が生じにくい熱電対を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)は、本実施形態の熱電対の一例を示す概略図であり、
図1(B)は、
図1(A)におけるI-I線断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の熱電対の取付箇所の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。また、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0016】
(実施形態)
図1(A)は、本実施形態の熱電対の一例を示す概略図であり、
図1(B)は、
図1(A)におけるI-I線断面図である。
【0017】
この熱電対Sは、熱電対素線1、絶縁管2(2a,2b,2c)、保護管3、保持リング4、可撓性を有するフレキシブル管5、取付金具6及び端子箱7等を備えている。
【0018】
熱電対素線1は、組成が異なる2本の素線1a,1bが先端で接続され、その先端部分が測温部1cとなっている。
【0019】
絶縁管2には、先端の測温部1cが露出するように熱電対素線1が挿入されている。絶縁管2は、素線1a,1bがそれぞれ挿入される2つの穴(素線挿入穴)を有するセラミックス製の絶縁管2a,2b,2cで構成される。なお、絶縁管2a,2b,2cの各素線挿入穴の直径は、素線1a,1bの外径よりも若干大きい。
【0020】
取付金具6は、熱電対素線1の先端から離れた基端寄りの所定位置に配設され、熱電対素線1が挿入された絶縁管2が貫通する穴6aを有し、熱電対Sを所定の固定部材110(
図2参照)に取り付けるための金具である。取付金具6には、筒状の連結部61,62の一端が全周溶接され、取付金具6の両側に連結部61,62が固定されている。
【0021】
一方の連結部61の他端は、端子箱7に接続された端子箱取付部8と全周溶接されている。これによって、端子箱7は、取付金具6に対して固定されている。端子箱7の内部には、熱電対素線1(1a,1b)と補償導線とが接続される端子台が備えられている。補償導線のケーブルはケーブル引出口7aから外部へ引き出される。
【0022】
他方の連結部62の他端は、フレキシブル管5の一端を保持した状態で、フレキシブル管5の全周にわたって銀ろう付けされてフレキシブル管5と接合されている。これによって、フレキシブル管5の一端は取付金具6に対して固定されている。
【0023】
フレキシブル管5の内部には、その中心軸上を通るように絶縁管2(2b)が挿入されている。フレキシブル管5の他端が保持リング4に保持された状態で、フレキシブル管5の全周にわたって銀ろう付けされてフレキシブル管5と保持リング4とが接合されている。これによって、フレキシブル管5の他端は保持リング4に固定されている。フレキシブル管5は、例えば、蛇腹構造を持った伸縮可能な伸縮管でもよい。
【0024】
保持リング4は、取付金具6よりも熱電対素線1の先端寄りに配置され、内部に保護管3が挿入されるように、保持リング4の内径は保護管3の外径よりも大きい。保持リング4と保護管3との隙間には接着剤9が充填されて保持リング4と保護管3とが接着されている。ここで、接着剤9としては、耐熱性を有するものが好ましく、例えば、耐熱性無機接着剤であるアロンセラミック(登録商標)を用いることができる。上記のように、保持リング4を介して、フレキシブル管5の他端と保護管3の基端とが連結されて固定される。
【0025】
保護管3は、先端が封止された有底筒状の底部3aの内側に熱電対素線1の測温部1cが配置されるようにして内部に絶縁管2aが挿入されている。
【0026】
上記構成により、端子箱7は取付金具6に固定されている。また、取付金具6にフレキシブル管5の一端が固定され、フレキシブル管5の他端に保護管3が固定されている。また、保護管3の内部の絶縁管2は、測温部1cが露出するように熱電対素線1が挿入された1つの長尺の絶縁管2aからなり、この絶縁管2aに続いて、フレキシブル管5と連結部61,62を含む取付金具6との内部に短尺の絶縁管2bが複数配置され、さらに中尺の絶縁管2cが配置されている。なお、中尺の絶縁管2cに代えて、複数の短尺の絶縁管2bを用いてもよい。短尺の絶縁管2bは、少なくとも可撓性を有するフレキシブル管5の内部に配置されていることが好ましい。すなわち、絶縁管2は、少なくともフレキシブル管5の内部に配置された部分が熱電対素線1の長手方向に複数に分割された構成である。
【0027】
本例では、1000℃~1800℃程度の高温の測定点での測定が可能なように、絶縁管2および保護管3はセラミックス製である。このように、絶縁管2および保護管3をセラミックス製とすることにより、比較的安価で上記のような高温に耐えることが可能である。また、測定点から離れた部分に位置する保持リング4、フレキシブル管5、及び連結部61,62を有する取付金具6等はステンレス等の金属製である。
【0028】
図2は、本実施形態の熱電対Sの取付箇所の一例を上方から見た断面図である。
【0029】
この例では、熱電対Sは、例えば、高温熱処理炉100の炉内部101の温度を測定するためのものである。炉壁102には、熱電対Sを挿入する円筒状の挿入孔106が設けられ、高温熱処理炉100の外側ケーシング等の外壁に、熱電対Sを固定する固定部材110が設置されている。先端部側から熱電対Sを挿入孔106に挿入し、固定部材110に取付金具6をボルト等の所定の接続金具を用いて固定することにより、熱電対Sが設置される。
【0030】
炉壁102は、複数の層(例えば、耐火物層103、断熱層104,105)からなり、長期間の使用による壁部材の膨張等の体積変化や目地の幅の変化等によって、例えば耐火物層103が突出部103aのように突出したりして、挿入孔106の形状が歪むことがある。
【0031】
本実施形態では、炉壁102に形成された熱電対の挿入孔106の形状が歪んで挿入孔106の内壁が熱電対Sの保護管3等と接触して熱電対Sに外力が加わっても、熱電対Sはフレキシブル管5の部分である程度曲げられるので、熱電対Sの損傷が生じにくい。また、熱電対Sを新品と取り替える場合でも、歪んだ挿入孔106に新品の熱電対を挿入しやすくなる。ここで、熱電対Sをフレキシブル管5の部分である程度曲げられるように、少なくともフレキシブル管5の内部には複数の短尺の絶縁管2bが配置されている。
【0032】
また、保護管3は先端が封止された筒状であるので、腐食性環境で使用する場合でも保護管3を介して腐食性物質等が内部へ侵入するおそれはなく、保護管3の内部に絶縁材等を充填しなくてもよく、構成が簡単である。
【0033】
なお、本実施形態の熱電対Sは、1つの熱電対素線1を備えた構成としたが、複数の熱電対素線1を備えた構成としてもよい。例えば、2つの熱電対素線1を備える場合には、2つの熱電対素線1が並行に配置され、各々の熱電対素線1が2本の素線1a,1bを有するので、絶縁管2(2a,2b,2c)は素線挿入穴を4つ有する構成となる。
【0034】
また、本実施形態の熱電対Sは、端子箱7を備えた構成としたが、端子箱7を備えていない構成であってもよい。
【0035】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、簡単な構成で、炉壁等に形成された熱電対の挿入孔の形状が歪んでも損傷が生じにくい熱電対等として有用である。
【符号の説明】
【0037】
S 熱電対
1 熱電対素線
2,2a,2b,2c 絶縁管
3 保護管
5 フレキシブル管
6 取付金具
6a 穴