(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081262
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】制御システム、輸送用温調機、移動体、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20240611BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20240611BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
F25D11/00 101D
F02D29/00 B
F02D29/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194755
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 桃子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 勝巳
【テーマコード(参考)】
3G093
3L045
【Fターム(参考)】
3G093AA08
3G093BA08
3G093CA08
3G093EA02
3G093EB09
3L045AA02
3L045BA02
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045LA12
3L045MA02
3L045MA20
3L045NA00
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
3L045PA05
(57)【要約】
【課題】エンジンのアイドル運転時に移動体側電源から電力供給が可能な制御システム、輸送用温調機、移動体、制御方法、及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】制御システム50は、移動体に設けられた輸送用温調機を制御する制御システム50であって、輸送用温調機は、移動体のエンジンにより駆動され発電を行うオルタネータ、及びオルタネータにより充電されるバッテリから電源を供給され、所定の条件を満たす場合に、エンジンに対しアイドルアップ信号を出力し、オルタネータによる発電量を増加させる制御を行うエンジン制御部51を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられた輸送用温調機を制御する制御システムであって、
前記輸送用温調機は、前記移動体のエンジンにより駆動され発電を行うオルタネータ、及び前記オルタネータにより充電されるバッテリから電源を供給され、
所定の条件を満たす場合に、前記エンジンに対しアイドルアップ信号を出力し、前記オルタネータによる発電量を増加させる制御を行うエンジン制御部を備える制御システム。
【請求項2】
前記制御システムは、
前記オルタネータの発電量を監視するオルタネータ制御部と、
前記輸送用温調機に備えられた圧縮機の消費電力量を監視する圧縮機制御部と、を備え、
前記エンジン制御部は、前記消費電力量が前記発電量に基づき設定される第1閾値を超える場合に前記アイドルアップ信号を出力する請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記エンジン制御部は、前記アイドルアップ信号が出力された後に、前記消費電力量が前記発電量に基づき設定される第2閾値を下回る場合に前記アイドルアップ信号を停止する請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記輸送用温調機の荷室の庫内温度が、前記輸送用温調機が起動後、最初に前記輸送用温調機の設定温度に到達するまで温度変化させる運転であるプルダウン運転時またはプルアップ運転時において、前記エンジン制御部は、前記アイドルアップ信号が出力された後に前記消費電力量が前記第2閾値を下回っても前記アイドルアップ信号を出力し続ける請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記バッテリの充放電量の監視を行うバッテリ制御部を備え、
前記エンジン制御部は、前記バッテリ制御部が前記バッテリの放電を検知した場合に前記アイドルアップ信号を出力する請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記制御システムは、
前記輸送用温調機に備えられ回転数を制御可能な圧縮機の消費電力量を監視する圧縮機制御部を備え、
前記エンジン制御部は、前記消費電力量が第3閾値を超え、かつ、前記バッテリの充電量が第4閾値を下回る場合に、前記アイドルアップ信号を出力する請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記第3閾値は、前記エンジンのアイドル運転時における前記オルタネータの発電可能発電量の80%の発電量である請求項6に記載の制御システム。
【請求項8】
前記第4閾値は、前記バッテリの充電量の50%の充電量である請求項6に記載の制御システム。
【請求項9】
圧縮機と、熱交換器と、前記熱交換器に備えられるファンと、を備え、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の制御システムにより制御される輸送用温調機。
【請求項10】
荷室と、
前記荷室に対して設けられた輸送用温調機と、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の制御システムと、
を備える移動体。
【請求項11】
移動体に設けられた輸送用温調機に対して適用される制御方法であって、
前記輸送用温調機は、前記移動体のエンジンにより駆動され発電を行うオルタネータ、及び前記オルタネータにより充電されるバッテリから電源を供給され、
所定の条件を満たす場合に、前記エンジンに対しアイドルアップ信号を出力し、前記オルタネータによる発電量を増加させる制御を行うエンジン制御工程を備え、
コンピュータによって実行される制御方法。
【請求項12】
コンピュータに、請求項11に記載の制御方法を実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御システム、輸送用温調機、移動体、制御方法、及び制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷室の温度状態を管理して荷物を目的地まで輸送するための移動体(例えば輸送用トラック、乗用車など)には、輸送用の冷凍機、加温機等の輸送用温調機が搭載される。輸送用温調機の駆動電源として輸送用温調機用オルタネータ(発電機)及び輸送用温調機用バッテリを用いることで、輸送用温調機は車速には依存しない安定した温調能力を提供している。
【0003】
しかし、移動体のエンジンがアイドル運転を行う場合、エンジン回転数が低くなり、オルタネータの発電量も低下する。このようにアイドル運転時に低下した発電電力の不足分を補うために、特許文献1には、発電機の余剰分がバッテリに充電され、発電電力が小さくなるとバッテリから冷凍機へ電力が供給されることが開示されている。また特許文献2には、アイドリング時に電力が不足するのに対し、バッテリを充電することが開示されている。また特許文献3には、ハイブリッド車において、停車時にバッテリの残容量が少ない場合は、エンジンを駆動して発電器によりバッテリの充電を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6779382号公報
【特許文献2】特開2021-14945号公報
【特許文献3】特開2001-254643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1乃至3では、アイドリング時または停車時にバッテリの充電を行うことが開示されているものの、不足電力はバッテリからの供給でまかなうこととなる。この場合、電力供給はバッテリの容量に依存することとなる。例えばエンジンのアイドル運転時に、冷凍機(温調機)の起動後に最初に冷凍機の設定温度に到達するまでの温度変化させる運転であるプルダウン運転が行われる場合、プルダウン運転は冷凍機が高負荷となるが、発電電力不足となり冷凍機が冷凍能力不足となるおそれがある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、エンジンのアイドル運転時に移動体側電源から電力供給が可能な制御システム、輸送用温調機、移動体、制御方法、及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の制御システム、輸送用温調機、移動体、制御方法、及び制御プログラムは以下の手段を採用する。
本開示の制御システムは、移動体に設けられた輸送用温調機を制御する制御システムであって、前記輸送用温調機は、前記移動体のエンジンにより駆動され発電を行うオルタネータ、及び前記オルタネータにより充電されるバッテリから電源を供給され、所定の条件を満たす場合に、前記エンジンに対しアイドルアップ信号を出力し、前記オルタネータによる発電量を増加させる制御を行うエンジン制御部を備える。
【0008】
本開示の輸送用温調機は、圧縮機と、熱交換器と、前記熱交換器に備えられるファンと、を備え、前述の制御システムにより制御される。
【0009】
本開示の移動体は、荷室と、前記荷室に対して設けられた輸送用温調機と、前述の制御システムと、を備える。
【0010】
本開示の制御方法は、移動体に設けられた輸送用温調機に対して適用される制御方法であって、前記輸送用温調機は、前記移動体のエンジンにより駆動され発電を行うオルタネータ、及び前記オルタネータにより充電されるバッテリから電源を供給され、所定の条件を満たす場合に、前記エンジンに対しアイドルアップ信号を出力し、前記オルタネータによる発電量を増加させる制御を行うエンジン制御工程を備え、コンピュータによって実行される。
【0011】
本開示の制御システムは、コンピュータに、前述の制御方法を実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、温調能力を損なうことなく、輸送用温調機が冷凍機である場合、安定した冷凍能力を保つことができる。さらには移動体に積載された荷物の温度管理に伴う信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の幾つかの実施形態に係るトラックの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態に係る冷凍機の冷媒回路の一例を示す図である。
【
図3】本開示の幾つかの実施形態に係る冷凍機及びトラックの電力系統を示す図である。
【
図4】本開示の幾つかの実施形態に係る制御システムのハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図5】本開示の幾つかの実施形態に係る制御システムが備える機能を示した機能ブロック図である。
【
図6】本開示の幾つかの実施形態に係る制御システムの制御フローを示す図である。
【
図7】本開示の幾つかの実施形態に係る制御システムの制御フローを示す図である。
【
図8】本開示の幾つかの実施形態に係る制御システムの制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示に係る制御システム、輸送用温調機、移動体、制御方法、及び制御プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本開示の幾つかの実施形態に係るトラック1の概略構成を示す図(斜視図)である。本実施形態では、移動体として車両であるトラック1を例示して説明するが、移動体であればトラック1に限定されない。
図1に示すように、トラック1は、荷室2を有している。荷室2は、荷物を積むことができ、輸送用温調機、本実施形態では冷凍機によって温度管理が可能となっている。輸送用温調機は、加温を行う加温機であるとしてもよい。荷室2は複数あってもよい。
【0016】
トラック1には、庫外熱交換器3と、庫内熱交換器4とが搭載されている。トラック1の運転室には、キャビンコントローラ6が設けられており、荷室2の冷凍状態を操作可能となっている。本実施形態では輸送用温調機は冷凍機であるとし、庫外熱交換器3は凝縮部(コンデンサユニット)3であり、庫内熱交換器4は蒸発部(エバポレータユニット)4であるとする。
【0017】
トラック1には、バッテリ(蓄電池)8が搭載される。バッテリ8は例えばコネクタユニット9を介して、蓄電又は放電が可能である。バッテリ8は、例えば、Li-ionや、Ni-MH、キャパシタ、鉛蓄電池などを採用することができる。バッテリ8は、トラック1側のシステムに設けられていても、冷凍機側のシステムに設けられていても、その他の車両取付品に設けられていてもよい。
【0018】
トラック1には、発電可能な機器であるオルタネータ7が搭載される。前述のバッテリ8、及びオルタネータ7等の発電が可能な機器は、冷凍機(温調機)への電源供給を行うことができる。
【0019】
図2は、幾つかの実施形態に係る冷凍機の冷媒回路の一例を示す図である。
図2の冷媒回路10はあくまでも一例であり、他の構成の冷媒回路10をトラック1に搭載することとしてもよい。
【0020】
図2に示すように、コンデンサユニット3に対して、エバポレータユニット4が接続されている。
【0021】
コンデンサユニット3では、圧縮機11により圧縮された高温高圧の冷媒が弁SV4を介して凝縮器(荷室外熱交換器)13へ供給される。凝縮器13では、ファン14により流れる空気と熱交換して、冷媒が熱を放出して凝縮する。そして、冷媒は、レシーバ15とドライヤ16を介し、さらに弁SV1を介して荷室2に対して設置されたエバポレータユニット4へ供給される。エバポレータユニット4では、膨張弁EVで冷媒を膨張させて低温低圧とする。そして、冷媒は蒸発器(荷室内熱交換器)21へ供給される。蒸発器21では、ファン23により流れる空気と熱交換して、冷媒が熱を吸収して蒸発する。これによって、荷室2内の空気が冷却される。蒸発された冷媒は、チェックバルブ26、さらにアキュムレータ20を介して圧縮機11へ流れ込む。
このようにして、冷凍サイクルが構成され、荷室2の空気の冷却が行われる。
【0022】
荷室2は、内部に荷物を格納し、荷物は冷凍機により冷却される。荷物は、荷室2に設けられた扉の開閉により荷室2の外へ搬出または荷室2の中へ積載される。
【0023】
図2に示すように、SV1の上流側と、チェックバルブ26の下流側とをバイパスするライン及び該ラインに設けられた弁SV5が配置されることとしてもよい。また、圧縮機11で圧縮された高温高圧の冷媒の一部を用いた、エバポレータユニット4のドレンパンヒータを配置してもよい。具体的には、圧縮機11で圧縮された高温高圧の冷媒の一部をラインHDに流し、弁SV2を介してエバポレータユニット4のドレンパンヒータへ供給する。ドレンパンヒータは、ドレンパンを加熱する。その後は、冷媒は、蒸発器21の上流側へ供給される。
【0024】
図3は、本開示の幾つかの実施形態に係る冷凍機及びトラックの電力系統を示す図である。
図3に示されるように、冷凍機及びトラック1の電力系統60には、トラック1のエンジン30、オルタネータ7、バッテリ8、及び冷凍機の圧縮機11、インバータ36、昇圧コンバータ35が接続される。
図3の実線は、電力系統60の接続を示す。電力系統60は、後述する制御システム50により制御される。
【0025】
冷凍機は、駆動電源としてオルタネータ7及びバッテリ8を用いる。トラック1は、冷凍機専用のオルタネータ7、冷凍機専用のバッテリ8を有しているとしてもよい。オルタネータ7は、トラック1のエンジン30により駆動され、発電を行う。オルタネータ7により発電された電力は、冷凍機に供給されるとともに、バッテリ8へも供給される。バッテリ8は、オルタネータ7が発電した電力により、充電が行われる。バッテリ8に充電された電力は、冷凍機へ供給(放電)される。
【0026】
昇圧コンバータ35は、オルタネータ7またはバッテリ8から供給された電力を昇圧する。インバータ36は、昇圧コンバータ35からの直流電力を冷凍負荷に応じた周波数の三相交流電力に変換し、圧縮機11に供給する。冷凍機は、圧縮機11をはじめとする冷媒回路10(
図2参照)を備える。インバータ36から供給された電力により、圧縮機11が駆動すると、圧縮機11により、冷媒が冷媒回路10中に送出され循環する。これにより、冷凍機は、荷室2内の空間をユーザが設定した温度に冷却する。制御システム50は、冷凍機の運転を制御する。
【0027】
次に、制御システム50について説明する。
制御システム50は、トラック1に設けられた冷凍機及び電力系統に対して適用され、冷凍機の制御を行う。制御システム50については、例えばキャビンコントローラ6に搭載されてもよい。
【0028】
図4は、本実施形態に係る制御システム50のハードウェア構成の一例を示した図である。
図4に示すように、制御システム(Controller)50は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)1100、二次記憶装置(ROM、Secondary storage:メモリ)1200、主記憶装置(RAM、Main Memory)1300、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)1400と、ネットワーク等に接続するための通信部1500とを備えている。なお、大容量記憶装置としては、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることとしてもよい。これら各部は、バス1800を介して接続されている。
【0029】
CPU1100は、例えば、バス1800を介して接続された二次記憶装置1200に格納されたOS(Operating System)により制御システム50全体の制御を行うとともに、二次記憶装置1200に格納された各種プログラムを実行することにより各種処理を実行する。CPU1100は、1つ又は複数設けられており、互いに協働して処理を実現してもよい。
【0030】
主記憶装置1300は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPU1100の実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
【0031】
二次記憶装置1200は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置1200は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。二次記憶装置1200の一例として、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)フラッシュメモリなどが挙げられる。二次記憶装置1200は、例えば、Windows(登録商標)、iOS(登録商標)、Android(登録商標)等の情報処理装置全体の制御を行うためのOS、BIOS(Basic Input/Output System)、周辺機器類をハードウェア操作するための各種デバイスドライバ、各種アプリケーションソフトウェア、及び各種データやファイル等を格納する。また、二次記憶装置1200には、各種処理を実現するためのプログラムや、各種処理を実現するために必要とされる各種データが格納されている。二次記憶装置1200は、複数設けられていてもよく、各二次記憶装置1200に上述したようなプログラムやデータが分割されて格納されていてもよい。
【0032】
制御システム50が備える機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置1200などに記憶されており、このプログラムをCPU(プロセッサ)1100が主記憶装置1300に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置1200に予めインストールされている形態や、他の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の一例として、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどが挙げられる。
【0033】
また、制御システム50は、キーボードやマウス等からなる入力部や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部などを備えていてもよい。また、表示部を含み、ランプ、音、特にアラーム音を出力するスピーカーなどの通知部を備えていてもよい。
【0034】
図5は、制御システム50が備える機能を示した機能ブロック図である。
図5に示されるように、制御システム50は、エンジン制御部51と、オルタネータ制御部52と、バッテリ制御部53と、圧縮機制御部54と、を主に備えている。
【0035】
エンジン制御部51は、エンジン30の制御を行う。特に、所定の条件を満たす場合に、エンジン30に対し、アイドルアップ信号を出力し、オルタネータ7による発電量を増加させる制御を行う。エンジン30がアイドル運転中の場合は、エンジン30の回転数は低く、オルタネータ7の発電量も低下する。アイドル運転中のエンジン30に対し、アイドルアップ信号が出力されると、アイドルアップ運転を行うエンジン30の回転数は上昇し、オルタネータ7の発電量は増加する。オルタネータ7の発電量が増加すると、冷凍機への供給電力が増加し、冷凍機の冷凍能力が増加する。
【0036】
オルタネータ制御部52は、オルタネータ7の監視及び制御を行う。特に、オルタネータ7の発電量の監視を行う。
【0037】
バッテリ制御部53は、バッテリ8の監視及び制御を行う。特に、バッテリ8の充放電量の監視を行う。
【0038】
圧縮機制御部54は、圧縮機11の制御を行う。また、圧縮機制御部54は、圧縮機11の消費電力量の監視を行う。
【0039】
エンジン制御部51は、所定の条件を、圧縮機制御部54が取得した圧縮機11の消費電力量が、オルタネータ制御部52が取得したオルタネータ7の発電量に基づき設定される第1閾値を超える場合とし、これを満たす場合に、エンジン30に対しアイドルアップ信号を出力するとしてもよい。
【0040】
ここで、例えば第1閾値は、オルタネータ7およびバッテリ8からの供給電力を100%とした場合、これに対する圧縮機11の消費電力量の割合が80%となる値であるとする。第1閾値の値は、変更可能であるとしてもよい。
【0041】
この場合に、エンジン制御部51は、アイドルアップ信号を出力した後に、圧縮機制御部54が取得した圧縮機11の消費電力量が、オルタネータ制御部52が取得したオルタネータ7の発電量に基づき設定される第2閾値を下回る場合に、エンジン30に対しアイドルアップ信号を停止するとしてもよい。
【0042】
ここで、例えば第2閾値は、オルタネータ7およびバッテリ8からの供給電力を100%とした場合、これに対する圧縮機11の消費電力量の割合が60%となる値であるとする。
第2閾値の値は、変更可能であるとしてもよい。
【0043】
また、プルダウン運転(冷凍機の場合)またはプルアップ運転(加温機の場合)において、エンジン制御部51は、アイドルアップ信号を出力した後に、圧縮機制御部54が取得した圧縮機11の消費電力量が、オルタネータ制御部52が取得したオルタネータ7の発電量に基づき設定される第2閾値を下回っても、エンジン30に対しアイドルアップ信号を停止せず出力し続けるとしてもよい。ここで、プルダウン運転(冷凍機の場合)またはプルアップ運転(加温機の場合)とは、冷凍機によって温度管理される荷室の庫内温度が、冷凍機が起動後、最初に冷凍機の設定温度に到達するまでの温度変化させる運転である。プルダウン運転時またはプルアップ運転時は、庫内温度と設定温度との温度差が大きく高負荷運転であり発電量を必要とすることから、燃費悪化よりも設定温度に到達させることが優先される。
【0044】
エンジン制御部51は、所定の条件を、バッテリ制御部53がバッテリ8の放電を検知した場合とし、これを満たす場合に、エンジン30に対しアイドルアップ信号を出力するとしてもよい。バッテリ8が放電を行う場合は、オルタネータ7から圧縮機11への電力供給が不足し、バッテリ8からの電力供給を必要としているといえ、エンジン30によるオルタネータ7の発電量増加が必要なことを示す。
【0045】
エンジン制御部51は、所定の条件を、圧縮機制御部54が取得した圧縮機11の消費電力量が第3閾値を超え、かつ、バッテリ制御部53が取得したバッテリ8の充電量が第4閾値を下回る場合とし、これを満たす場合に、エンジン30に対しアイドルアップ信号を出力するとしてもよい。本所定の条件を満たす場合とは、圧縮機11の消費電力量がオルタネータ7の発電量に近づいており、かつ、バッテリ8の充電量が少なくなっており、圧縮機11の消費電力量がさらに増加するとバッテリ8からの電力供給が必要となるところ、バッテリ8からの供給電力がすぐに不足することが予測される状態であることを示す。
【0046】
ここで、第3閾値は、例えばエンジン30のアイドル運転時におけるオルタネータ7の発電可能な発電量の80%の値とする。第3閾値の値は、圧縮機11やオルタネータ7の容量などに応じて変更可能であるとしてもよい。
【0047】
第4閾値は、例えばバッテリ8の充電量の50%の値とする。第4閾値の値は、バッテリ8やオルタネータ7の容量などに応じて変更可能であるとしてもよい。
【0048】
第4閾値は、エンジン30の不必要なアイドルアップ運転による燃費悪化が発生せず、かつ、トラック1が停止してエンジン30によるオルタネータ7の発電が不可能となった場合にバッテリ8からの電力供給による冷凍機の運転を実施しても、冷凍機による荷室2の温度管理に影響が出ない程度の冷凍機運転継続が可能となるように値が設定される。例えば、トラック1が目的地(立寄り地)に到着して荷室2内の荷物の荷下ろしまたは積み込みを行う場合に、荷室2の庫内温度と荷室2の設定温度との差が所定の温度以内となるように冷凍機を運転させる必要がある。所定の温度は、荷物の種類や数、荷下ろしまたは積み込みにかかる時間、外気温度、トラック1の運用などによって事前に決められた温度である。
【0049】
例えば、目的地に到着してトラック1を停車のうえエンジン30をアイドル運転し、真夏に外気下で放置され温度が上昇した番重(輸送用資材)を荷室2に入れると、荷室2の庫内温度は急激に上昇する。荷室2の庫内温度は荷室2の設定温度を超え、温度差が所定の温度を超えることとなる。このような場合に、冷凍機は冷凍能力を増加させ、圧縮機11の消費電力が増加するが、アイドルアップ信号が出力されることにより、エンジン30がアイドルアップ運転され、オルタネータ7の発電量が増加することで消費電力の不足を防ぐ。
【0050】
図6は、本開示の幾つかの実施形態に係る制御システムの制御フローを示す図である。
図6のステップS601において、通常運転が開始される。本フローチャートの通常運転は、エンジン30がアイドル運転を行っている状態であるとする。また、冷凍機についても荷室2内を冷却する運転を行っているとする。
【0051】
次にステップS602において、圧縮機制御部54が取得した圧縮機11の消費電力量が第1閾値を超えるか否かが判定される。圧縮機11の消費電力量が第1閾値を超える場合(YES)は、ステップS603へ遷移する。一方、圧縮機11の消費電力量が第1閾値以下の場合(NO)は、ステップS601に戻り、通常運転が行われる。
【0052】
ステップS603において、エンジン制御部51は、エンジン30に対し、アイドルアップ信号を出力する。これにより、エンジン30は、アイドル運転からアイドルアップ運転へ移行する。
【0053】
次にステップS604において、圧縮機制御部54が取得した圧縮機11の消費電力量が第1閾値以下であるか否かが判定される。圧縮機11の消費電力量が第1閾値以下の場合(YES)は、ステップS605へ遷移する。一方、圧縮機11の消費電力量が第1閾値を超える場合(NO)は、ステップS604に戻り、引き続きアイドルアップ信号が出力される。
【0054】
ステップS605において、圧縮機制御部54は、圧縮機11の回転数を下げる制御を行う。これにより、圧縮機11の消費電力量が抑えられ、即座に再び圧縮機11の消費電力量が第1閾値を超える状態となるのを防ぐことができる。
【0055】
次にステップS606において、圧縮機制御部54が取得した圧縮機11の消費電力量が第2閾値以下であるか否かが判定される。圧縮機11の消費電力量が第2閾値以下の場合(YES)は、ステップS607へ遷移する。一方、圧縮機11の消費電力量が第2閾値を超える場合(NO)は、ステップS605に戻り、再度圧縮機制御部54は、圧縮機11の回転数を下げる制御を行う。
【0056】
ステップS607において、エンジン制御部51は、エンジン30に対し出力していたアイドルアップ信号を停止する。これにより、エンジン30は、アイドルアップ運転を停止する。
【0057】
図7は、本開示の幾つかの実施形態に係る制御システムの制御フローを示す図である。
図7のフローチャートの前段において、エンジン30はアイドル運転を行っているものとする。また、冷凍機についても荷室2内を冷却する運転を行っているとする。
図7のステップS701において、バッテリ制御部53がバッテリ8の放電を検知する。
【0058】
ステップS702において、エンジン制御部51は、エンジン30に対し、アイドルアップ信号を出力する。これにより、エンジン30は、アイドル運転からアイドルアップ運転へ移行する。
【0059】
図8は、本開示の幾つかの実施形態に係る制御システムの制御フローを示す図である。
図8のフローチャートの前段において、エンジン30はアイドル運転を行っているものとする。また、冷凍機についても荷室2内を冷却する運転を行っているとする。
図8のステップS801において、制御システム50は、圧縮機制御部54が取得した圧縮機11の消費電力量が第3閾値を超え、かつ、バッテリ制御部53が取得したバッテリ8の充電量が第4閾値を下回ることを検知する。
【0060】
ステップS802において、エンジン制御部51は、エンジン30に対し、アイドルアップ信号を出力する。これにより、エンジン30は、アイドル運転からアイドルアップ運転へ移行する。
【0061】
〈付記〉
以上説明した実施形態に記載の制御システム、輸送用温調機、移動体、制御方法、及び制御プログラムは、例えば以下のように把握される。
【0062】
本開示の第1態様の制御システム(50)は、移動体(1)に設けられた輸送用温調機を制御する制御システムであって、前記輸送用温調機は、前記移動体のエンジン(30)により駆動され発電を行うオルタネータ(7)、及び前記オルタネータにより充電されるバッテリ(8)から電源を供給され、所定の条件を満たす場合に、前記エンジンに対しアイドルアップ信号を出力し、前記オルタネータによる発電量を増加させる制御を行うエンジン制御部(51)を備える。
【0063】
温調能力を損なうことなく、輸送用温調機が冷凍機である場合、安定した冷凍能力を保つことができる。さらには移動体に積載された荷物の温度管理に伴う信頼性が向上する。
また、運転状況に応じたエンジンアイドルアップ運転を行うことで、燃費上昇を最低限に抑えることができる。
【0064】
本開示の第2態様の制御システムは、前記第1態様において、前記制御システムは、前記オルタネータの発電量を監視するオルタネータ制御部(52)と、前記輸送用温調機に備えられた圧縮機(11)の消費電力量を監視する圧縮機制御部(54)と、を備え、前記エンジン制御部は、前記消費電力量が前記発電量に基づき設定される第1閾値を超える場合に前記アイドルアップ信号を出力するとしてもよい。
【0065】
高負荷時(例えば、プルダウン運転、プルアップ運転など)に、輸送用温調機の消費電力がオルタネータの発電量を上回る予兆を検知して、エンジンアイドルアップ運転を開始することができる。これにより、電力の不足を防ぎ、安定した冷凍能力を保つことができる。
【0066】
本開示の第3態様の制御システムは、前記第2態様において、前記エンジン制御部は、前記アイドルアップ信号が出力された後に、前記消費電力量が前記発電量に基づき設定される第2閾値を下回る場合に前記アイドルアップ信号を停止するとしてもよい。
【0067】
高負荷運転が終了し、輸送用温調機の消費電力がオルタネータの発電量を十分下回る予兆を検知して、エンジンアイドルアップ運転を終了することができる。これにより、不必要なエンジンアイドルアップ運転を行うことを防ぎ、燃費上昇を最低限に抑えることができる。
【0068】
本開示の第4態様の制御システムは、前記第3態様において、前記輸送用温調機の荷室(2)の庫内温度が、前記輸送用温調機が起動後、最初に前記輸送用温調機の設定温度に到達するまで温度変化させる運転であるプルダウン運転時またはプルアップ運転時において、前記エンジン制御部は、前記アイドルアップ信号が出力された後に前記消費電力量が前記第2閾値を下回っても前記アイドルアップ信号を出力し続けるとしてもよい。
【0069】
高負荷運転であるプルダウン運転またはプルアップ運転を行っている時は、輸送用温調機の消費電力がオルタネータの発電量を十分下回る予兆を検知してもエンジンアイドルアップ運転を継続することから、高負荷運転を安定した電力供給で継続することができる。
【0070】
本開示の第5態様の制御システムは、前記第1態様から第4態様のいずれかにおいて、前記バッテリの充放電量の監視を行うバッテリ制御部(53)を備え、前記エンジン制御部は、前記バッテリ制御部が前記バッテリの放電を検知した場合に前記アイドルアップ信号を出力するとしてもよい。
【0071】
バッテリの放電が検知されるとエンジンアイドルアップ運転を開始することから、オルタネータの発電量の不足を検知し、電力の不足を防ぎ、安定した冷凍能力を保つことができる。
【0072】
本開示の第6態様の制御システムは、前記第1態様から第5態様のいずれかにおいて、前記制御システムは、前記輸送用温調機に備えられ回転数を制御可能な圧縮機の消費電力量を監視する圧縮機制御部を備え、前記エンジン制御部は、前記消費電力量が第3閾値を超え、かつ、前記バッテリの充電量が第4閾値を下回る場合に、前記アイドルアップ信号を出力するとしてもよい。
【0073】
消費電力量が閾値を超え、バッテリ残量が閾値を下回る場合に、エンジンアイドルアップ運転を開始することから、移動体の荷室の急激な温度変化(例えば、真夏に外気下で放置され温度が上昇した番重/輸送用資材を荷室に入れた場合等)による消費電力の増加に対応することができ、電力の不足を防ぎ、安定した冷凍能力を保つことができる。
【0074】
本開示の第7態様の制御システムは、前記第6態様において、前記第3閾値は、前記エンジンのアイドル運転時における前記オルタネータの発電可能発電量の80%の発電量であるとしてもよい。
【0075】
本開示の第8態様の制御システムは、前記第6態様において、前記第4閾値は、前記バッテリの充電量の50%の充電量であるとしてもよい。
【0076】
本開示の第9態様の輸送用温調機は、前記第1態様から第8態様のいずれかの制御システムにおいて、圧縮機と、熱交換器(13、21)と、前記熱交換器に備えられるファン(14、23)と、を備え、前記第1態様から第8態様のいずれかの制御システムにより制御される。
【0077】
本開示の第10態様の移動体は、荷室と、前記荷室に対して設けられた輸送用温調機と、前記第1態様から第8態様のいずれかの制御システムと、を備える。
【0078】
本開示の第11態様の制御方法(50)は、移動体に設けられた輸送用温調機に対して適用される制御方法であって、前記輸送用温調機は、前記移動体のエンジンにより駆動され発電を行うオルタネータ、及び前記オルタネータにより充電されるバッテリから電源を供給され、所定の条件を満たす場合に、前記エンジンに対しアイドルアップ信号を出力し、前記オルタネータによる発電量を増加させる制御を行うエンジン制御工程を備え、コンピュータによって実行される。
【0079】
本開示の第12態様の制御プログラム(50)は、コンピュータに、第11態様の制御方法を実行させる。
【符号の説明】
【0080】
1 :トラック(移動体)
2 :荷室
3 :庫外熱交換器、コンデンサユニット(凝縮部)
4 :庫内熱交換器、エバポレータユニット(蒸発部)
6 :キャビンコントローラ
7 :オルタネータ
8 :バッテリ(蓄電池)
9 :コネクタユニット
10 :冷媒回路
11 :圧縮機
13 :凝縮器(荷室外熱交換器)
14 :ファン
15 :レシーバ
16 :ドライヤ
20 :アキュムレータ
21 :蒸発器(荷室内熱交換器)
23 :ファン
26 :チェックバルブ
30 :エンジン
35 :昇圧コンバータ
36 :インバータ
50 :制御システム
51 :エンジン制御部
52 :オルタネータ制御部
53 :バッテリ制御部
54 :圧縮機制御部
60 :電力系統
1100 :CPU
1200 :二次記憶装置(ROM)
1300 :主記憶装置(RAM)
1400 :ハードディスクドライブ(HDD)
1500 :通信部
1800 :バス
EV :膨張弁
HD :ライン
SV1 :弁
SV2 :弁
SV4 :弁
SV5 :弁