(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081267
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】画像生成装置、画像生成方法及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/60 20230101AFI20240611BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240611BHJP
B60R 1/20 20220101ALI20240611BHJP
B60R 1/23 20220101ALI20240611BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N7/18 J
B60R1/20 100
B60R1/23
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194767
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐来
【テーマコード(参考)】
5C054
5C122
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA01
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC12
5C054FC13
5C054FD03
5C054GB01
5C054HA30
5C122DA03
5C122DA14
5C122EA06
5C122EA47
5C122EA61
5C122FH04
5C122FH18
5C122HA13
5C122HA35
5C122HB01
5C122HB05
(57)【要約】
【課題】車両の床下画像の生成に関し、正常な床下画像を生成する。
【解決手段】車両VHの下方の少なくとも地面を表す床下画像220を生成する画像生成装置であって、車両VHの周囲の少なくとも地面を撮像可能なカメラ40によって撮像した撮像画像から特定範囲A1の画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に基づいて床下画像220を生成する画像生成部130と、特定範囲A1の画像に車両VHと一体に移動する物体OBが映り込んでいるかを検出する物体検出部140と、物体検出部140が物体OBを検出した場合、特定範囲A1を撮像画像内で所定量オフセットさせるオフセット処理を実行するオフセット処理部150とを備えた。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の下方の少なくとも地面を表す床下画像を生成する画像生成装置であって、
前記車両の周囲の少なくとも地面を撮像可能なカメラによって撮像した撮像画像から特定範囲の画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に基づいて前記床下画像を生成する画像生成部と、
前記特定範囲の画像に前記車両と一体に移動する物体が映り込んでいるかを検出する物体検出部と、
前記物体検出部が前記物体を検出した場合、前記特定範囲を前記撮像画像内で所定量オフセットさせるオフセット処理を実行するオフセット処理部と、を備える
画像生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像生成装置であって、
前記オフセット処理部は、前記オフセット処理を実行した場合において、前記物体検出部がオフセット後の特定範囲の画像に前記物体を検出する場合には、前記物体検出部が前記物体を検出しなくなるまで前記オフセット処理を繰り返す
画像生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像生成装置であって、
前記オフセット処理部は、前記撮像画像内の前記車両から離れた所定範囲を前記床下画像の生成に適さない範囲に設定するとともに、前記オフセット処理を実行する際は、前記特定範囲を前記車両から離れる方向にオフセットさせ、
前記画像生成部は、前記物体検出部が前記物体を検出することにより、前記オフセット処理部が前記オフセット処理を実行した際に、オフセット後の特定範囲の少なくとも一部が前記所定範囲に到達する場合には、前記床下画像を生成しない
画像生成装置。
【請求項4】
車両の下方の少なくとも地面を表す床下画像を生成する画像生成方法であって、
前記車両の周囲の少なくとも地面を撮像可能なカメラによって撮像した撮像画像から特定範囲の画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に基づいて前記床下画像を生成する画像生成処理と、
前記特定範囲の画像に前記車両と一体に移動する物体が映り込んでいるかを検出する物体検出処理と、
前記物体検出処理により前記物体を検出した場合、前記特定範囲を前記撮像画像内で所定量オフセットさせるオフセット処理と、を含む
画像生成方法。
【請求項5】
車両の下方の少なくとも地面を表す床下画像を生成する画像生成装置のコンピュータに、
前記車両の周囲の少なくとも地面を撮像可能なカメラによって撮像した撮像画像から特定範囲の画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に基づいて前記床下画像を生成する画像生成処理と、
前記特定範囲の画像に前記車両と一体に移動する物体が映り込んでいるかを検出する物体検出処理と、
前記物体検出処理により前記物体を検出した場合、前記特定範囲を前記撮像画像内で所定量オフセットさせるオフセット処理と、を実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像生成装置、画像生成方法及び、プログラムに関し、車両下方の地面を表す床下画像の生成に好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、車載カメラによって進行方向の地面を撮像するとともに、撮像した画像を所定時間経過後に車両の現在の床下画像として表示する装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
車両においては、所有者がステップやトーイングヒッチ、ブルバーやカンガルーバー、スポイラー等といったオプション部品(以下、外装部品)を後付けする場合がある。このような外装部品がカメラの撮像画像に映り込んでしまうと、外装部品は車両と一体に移動するため、外装部品が床下画像に常時連続して表示されることになる。すなわち、床下画像を正常に表示できなくなるといった課題がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、床下画像を正常に生成することを目的とする。
【0006】
本開示の装置は、車両(VH)の下方の少なくとも地面を表す床下画像(220)を生成する画像生成装置であって、前記車両(VH)の周囲の少なくとも地面を撮像可能なカメラ(40)によって撮像した撮像画像から特定範囲(A1)の画像を取り込むとともに、取り込んだ画像に基づいて前記床下画像(220)を生成する画像生成部(130)と、前記特定範囲(A1)の画像に前記車両(VH)と一体に移動する物体(OB)が映り込んでいるかを検出する物体検出部(140)と、前記物体検出部(140)が前記物体(OB)を検出した場合、前記特定範囲(A1)を前記撮像画像内で所定量オフセットさせるオフセット処理を実行するオフセット処理部(150)と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る車両のハードウェア構成を示す模式図である。
【
図2】カメラセンサの配置及び撮像範囲を示した模式図である。
【
図3】本実施形態に係る制御装置のソフトウェア構成を示す模式図である。
【
図4】(A)は、画像生成部が生成する俯瞰画像の一例を説明する模式図である。(B)は、車両が前進走行している場合に、床下画像の生成に用いる画像データを説明する模式図である。(C)は、車両が後進走行している場合に、床下画像の生成に用いる画像データを説明する模式図である。
【
図5】床下画像の生成に用いる画像の取り込み範囲及び、取り込み範囲のオフセットを説明する模式図である。
【
図6】画像生成処理のルーチンを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本実施形態に係る画像生成装置、画像生成方法及び、プログラムを説明する。
【0009】
[ハードウェア構成]
図1は、本実施形態に係る車両VHのハードウェア構成を示す模式図である。車両VHは、ECU(Electronic Control Unit)10を有する。ECU10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13及びインターフェース装置14等を備える。CPU11は、ROM12に格納されている各種プログラムを実行するプロセッサである。ROM12は、不揮発性メモリであって、CPU11が各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。RAM13は、揮発性メモリであって、各種プログラムがCPU11によって実行される際に展開される作業領域を提供する。インターフェース装置14は、外部装置と通信するための通信デバイスである。
【0010】
ECU10は、画像生成処理及び、画像表示処理を行う中枢となる装置である。ECU10には、駆動装置20、操舵装置21、制動装置22、表示装置25、内界センサ装置30、カメラセンサ40等が通信可能に接続されている。
【0011】
駆動装置20は、車両VHの駆動輪に伝達する駆動力を発生させる。駆動装置20としては、例えば、電動機、エンジンが挙げられる。本実施装置において、車両VHは、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)、電気自動車(BEV)、エンジン車の何れであってもよい。操舵装置21は、車両VHの車輪に転舵力を付与する。制動装置22は、車両VHの車輪に制動力を付与する。
【0012】
表示装置25は、車両VHのインストルメントパネル等に設けられたタッチパネル式のディスプレイ(例えば、タッチパネル式の液晶ディスプレイ)である。表示装置25としては、例えば、図示しないナビゲーション装置が備えるディスプレイを用いることができるが、ナビゲーション装置とは独立したディスプレイであってもよい。表示装置25は、ECU10からの指令に応じて各種の画像を表示する。
【0013】
内界センサ装置30は、車両VHの状態を検出するセンサ類である。具体的には、内界センサ装置30は、車速センサ31、アクセルセンサ32、ブレーキセンサ33、操舵角センサ34、加速度センサ35等を備えている。車速センサ31は、車両VHの走行速度、すなわち車速を検出する。アクセルセンサ32は、ドライバによる不図示のアクセルペダルの操作量を検出する。ブレーキセンサ33は、ドライバによる不図示のブレーキペダルの操作量を検出する。操舵角センサ34は、不図示のステアリングホイール又は、ステアリングシャフトの回転角、すなわち操舵角を検出する。加速度センサ35は、車両VHの加速度を検出する。内界センサ装置30は、各センサ31~35によって検出される車両VHの状態をECU10に所定の周期で送信する。
【0014】
カメラセンサ40は、車両VHの周囲を撮像する。カメラセンサ40は、例えば、ステレオカメラや単眼カメラであり、CMOSやCCD等の撮像素子を有するデジタルカメラを用いることができる。本実施形態において、カメラセンサ40は、前方カメラ41、後方カメラ42、左側方カメラ43、右側方カメラ44を備えている。複数のカメラ41~44は、これらを区別する必要がない場合、単に「カメラセンサ40」とも称する。
【0015】
図2は、カメラセンサ40の配置及び撮像範囲を示した模式図である。前方カメラ41は、車両VHの前部の車幅方向の略中央部(例えば、フロントグリル)に設けられる。前方カメラ41の光軸は、車両VHの前斜め下方に向けられている。後方カメラ42は、車両VHの後部(例えば、バックドア)に設けられる。後方カメラ42の光軸は、車両VHの後斜め下方に向けられている。左側方カメラ43は、車両VHの左側部(例えば、左サイドミラー)に設けられる。左側方カメラ43の光軸は、車両VHの左斜め下方に向けられている。右側方カメラ44は、車両VHの右側部(例えば、右サイドミラー)に設けられる。右側方カメラ44の光軸は、車両VHの右斜め下方に向けられている。
【0016】
カメラセンサ40は、広角レンズを備えており、光軸を基準とした右方、左方、下方及び、上方の範囲を撮像する。すなわち、カメラセンサ40は、車両VHの周囲の地面及び、地面から上方の領域を含む車両VHの全周囲の画像データを取得することができる。カメラセンサ40は、取得した画像データをECU10に所定の周期で送信する。
【0017】
[ソフトウェア構成]
図3は、本実施形態に係るECU10のソフトウェア構成を示す模式図である。
図3に示すように、ECU10は、画像取得部100、オプティカルフロー演算部110、位置推定部120、画像生成部130、映り込み検出部140、オフセット処理部150、表示制御部160を機能要素として備える。これら各機能要素100~160は、ECU10のCPU11がROM12に格納されているプログラムをRAM13に読み出して実行することにより実現される。なお、各機能要素100~160の全部又は一部は、ECU10とは別体の他のECU、或いは、車両VHと通信可能な施設(管理センタ等)の情報処理装置に設けることもできる。
【0018】
画像取得部100は、カメラセンサ40によって撮像される画像データを取得し、取得した画像データをRAM13等の記憶装置に格納する。具体的には、画像取得部100は、車両VHが所定距離移動する毎に、その時点でカメラセンサ40によって撮像される画像データを、後述する位置推定部120が推定する車両VHの位置情報、内界センサ装置30によって取得される車両VHの状態量等と対応付けて格納する。画像取得部100は、例えば、車両VHが前進走行する際は、前方カメラ41によって撮像される車両VH前方の画像データを記憶装置に格納する。また、画像取得部100は、例えば、車両VHが後進走行する際は、後方カメラ42によって撮像される車両VH後方の画像データを記憶装置に格納する。
【0019】
オプティカルフロー演算部110は、カメラセンサ40によって撮像される画像データに基づき、オプティカルフローを演算する。オプティカルフローとは、動物体解析の手法の一つであって、画像データに映っている物体の動きをベクトルで示した情報である。オプティカルフロー演算部110は、画像取得部100によって取得される現在の画像データと、車両VHが所定距離移動する前に画像取得部100が格納した過去の画像データとを比較し、特徴点が一致する物体の遷移ベクトルからオプティカルフローを演算する。
【0020】
本実施形態において、オプティカルフロー演算部110は、画像データの全範囲を用いてオプティカルフローを演算するのではなく、後述する所定の取り込み範囲(第1範囲A1、第2範囲A2・・・第n範囲An)の画像データを用いて、オプティカルフローを演算する。このように、オプティカルフローの演算に用いる画像データを、所定の取り込み範囲の画像データに制限することで、CPU11の処理負荷の軽減や演算時間の短縮を図ることが可能になる。
【0021】
位置推定部120は、車両VHの移動量に基づき、車両VHの現在位置(位置情報)を推定する。具体的には、位置推定部120は、オプティカルフロー演算部110によって演算されるオプティカルフローに基づき、車両VHの移動量を演算することにより、車両VHの現在位置を推定する。なお、車両VHの走行中の路面が舗装路等、駆動輪に空転が生じにくい路面状態の場合には、位置推定部120は、車速センサ31や操舵角センサ34の検出結果に基づいたオドメトリにより車両VHの移動量を演算してもよい。
【0022】
画像生成部130は、カメラセンサ40によって撮像された画像データに基づき、車両VHを鉛直上方から俯瞰した俯瞰画像を生成する。俯瞰画像を生成する手法は特に限定されず、マッピングテーブルを利用する手法等、公知の手法を用いることができる。画像生成部130は、画像取得部100がカメラセンサ40から画像データを取得する毎に、俯瞰画像を生成する。
【0023】
図4(A)は、画像生成部130が生成する俯瞰画像200の一例を説明する模式図である。画像生成部130は、俯瞰画像200として、周囲画像210及び、床下画像220を生成する。ここで、周囲画像210とは、車両VHを鉛直上方の仮想視点VPから俯瞰した場合に、車両VHを除いた周囲(前方、後方、左方、右方)の領域を表す画像である。また、床下画像220とは、車両VHを鉛直上方の仮想視点VPから俯瞰した場合に、車両VHを透過した床下の地面を表す画像である。
【0024】
なお、仮想視点VPは、車両VHの鉛直上方に限定されず、車両VHの乗員からの要求に応じ、例えば、仮想視点VPを車両VHの後斜め上方に設定したり、或いは、車両VHの車室内に設定したりすることも可能である。仮想視点VPを車両VHの後斜め上方に設定すれば、車両VHの乗員に周辺物体とのサイドクリアランス等を効果的に提示することができる。また、仮想視点VPを車両VHの車室内に設定し、車両VHの床部を透過させてタイヤ付近の床下画像を生成すれば、オフロード走行時等にタイヤ付近の路面状況を効果的に提示することが可能になる。
【0025】
画像生成部130は、現時点での画像データ(すなわち、前方カメラ41、後方カメラ42、左側方カメラ43、右側方カメラ44がそれぞれ撮像した最新の画像データ)に基づいて周囲画像210を生成する。一方、現時点での床下画像220は、最新の画像データから生成することはできない。画像生成部130は、床下画像220については、車両VHが現在位置よりも所定距離ほど進行方向逆側の位置にてカメラセンサ40(前方カメラ41、後方カメラ42)が撮像した画像データを用いて生成する。
【0026】
図4(B)に示すように、画像生成部130は、車両VHが前進走行している場合には、現在位置より所定距離後方にて前方カメラ41が撮像した画像データDFを用いて床下画像を生成する。一方、画像生成部130は、
図4(C)に示すように、車両VHが後進走行している場合には、現在位置より所定距離前方にて後方カメラ42が撮像した画像データDRを用いて床下画像を生成する。床下画像の生成に用いる画像データは、画像取得部100が車両VHの位置情報等と対応付けて記憶装置に格納した画像データを用いればよい。所定距離は、特に限定されず、車両VHやカメラセンサ40(前方カメラ41、後方カメラ42)の具体的な仕様等に基づいて設定すればよい。車両VHが所定距離だけ前進又は後進したかは、位置推定部120の推定結果に基づいて取得すればよい。
【0027】
ここで、画像生成部130が床下画像を生成する際に、画像データの全範囲を取り込んで床下画像を生成すると、CPU11の処理負荷や画像生成までに要する時間が増大することになる。また、画像生成部130が、画像データ中の車両VHから離れた遠方の範囲の画像を用いて床下画像を生成すると、周辺構造物等の角度が不自然且つ低解像度の画像が生成されることになる。特に、仮想視点VPを車両VHの後斜め後方に設定した場合には、周辺構造物等の角度が不自然となることから、車両VHの運転者に違和感を与えることになる。
【0028】
そこで、画像生成部130は、画像データの全範囲の中から予め設定した所定の取り込み範囲(特定範囲)の画像データを取り込んで床下画像を生成する。
図5(A)は、デフォルトの取り込み範囲として設定されている第1範囲A1を説明する模式図である。なお、画像の取り込み処理や床下画像の生成処理は、前方カメラ41及び後方カメラ42ともに略同じ処理内容となるため、以下では、後方カメラ42について説明する。
【0029】
図5(A)において、符号RBは車両VHのリアバンパ、符号LMは画像を取り込む上限ラインを示している。ここで上限ラインLMとは、上限ラインLMよりも車両VHから離れた範囲Zの画像データを用いると、床下画像を所望の解像度で生成できず、且つ、周辺構造物等の角度も不自然になる基準となるラインである。すなわち、画像データにおいて、上限ラインLMよりも車両VHから離れた範囲Zは、床下画像の生成に適さない範囲といえる。範囲Zは、本開示の所定範囲の一例である。上限ラインLMの具体的な数値は特に限定されず、後方カメラ42の性能等に基づいて設定すればよい。上限ラインLMは固定値でもよく、或いは、後方カメラ42が画像データを撮像したときの車両VHの車速や姿勢、周辺環境(昼夜、雨天、晴天)等に応じた可変値としてもよい。おな、以下では、画像データ中の車両VHの前後方向を縦方向、車両VHの前後方向と直交する車幅方向を横方向という。
【0030】
図5(A)に示すように、第1範囲A1は、車両VHの後端直下に設定される。具体的には、第1範囲A1の横長さWは、車両VHの車幅と略同じ長さで設定されている。また、第1範囲A1の縦長さDは、リアバンパRBの後端直下から縦方向に所定の長さで設定されている。縦長さDは特に制限されないが、リアバンパRBの後端から上限ラインLMまでの距離を距離DLとした場合に、距離DLの半分よりも短い長さで設定される(D<DL/2)。すなわち、後述するオフセット処理によって、取り込み範囲を第1範囲A1から縦長さDだけ縦方向にオフセットしたとしても、オフセット後の第2範囲A2が上限ラインLMを超えないように設定されている。言い替えれば、取り込み範囲が上限ラインLMに達するまでの間に、後述するオフセット処理を少なくとも一回以上実行できるように構成されている。
【0031】
ところで、車両VHには、所有者の好みや、車両の使用目的等に応じて、ステップやトーイングヒッチ、ブルバーやカンガルーバー等といった外装部品が後付けされる場合がある。このような外装部品が後方カメラ42の画像データに映り込むと、床下画像220に外装部品が常時連続して表示されることになり、床下画像220を正常に表示できなくなる課題がある。
【0032】
映り込み検出部140は、後方カメラ42によって撮像される画像データの取り込み範囲に、車両VHと一体に移動する外装部品等の物体(以下、一体移動物OBという)が映り込んでいるかを検出する。本実施形態において、映り込み検出部140は、前述のオプティカルフロー演算部110が取り込み範囲の画像を用いて演算するオプティカルフローに基づき、画像データの取り込み範囲に一体移動物OBが映り込んでいるか検出する。具体的には、映り込み検出部140は、オプティカルフローの演算結果に基づき、画像内に車両VHの遷移ベクトルと略一致する物体を取得した場合、当該物体を画像内に映り込んだ一体移動物OBとして検出する。映り込み検出部140は、一体移動物OBを検出した場合、その検出結果をオフセット処理部150に送信する。
【0033】
なお、一体移動物OBを検出する手法は、オプティカルフローを用いる手法に限定されず、パターンマッチング等の機械学習によって検出することも可能である。
【0034】
オフセット処理部150は、映り込み検出部140が一体移動物OBを検出すると、床下画像の生成に用いる画像の取り込み範囲を縦方向に移動させるオフセット処理を実施する。オフセット処理部150は、
図5(A)に示されるように、映り込み検出部140が第1範囲A1に一体移動物OB(図示例では、トーイングヒッチ)を検出した場合、
図5(B)に示されるように、取り込み範囲を第1範囲A1から縦方向に縦長さDだけ移動させた第2範囲A2にオフセットする。
【0035】
オフセット処理部150は、取り込み範囲を第2範囲A2にオフセットした後、映り込み検出部140が第2範囲A2に一体移動物OBを検出しない場合には、第2範囲A2を床下画像生成用の取り込み範囲に設定する。一方、オフセット処理部150は、
図5(B)に示されるように、取り込み範囲を第2範囲A2にオフセットした後、映り込み検出部140が第2範囲A2に一体移動物OBを検出する場合、取り込み範囲を第2範囲A2から縦長さDだけ縦方向にさらにオフセットさせる。すなわち、映り込み検出部140によって一体移動物OBが検出されなくなるまで、取り込み範囲の縦方向へのオフセットを繰り返し実行する。これにより、画像生成部130は、外装部品等の一体移動物OBが映り込んでいない画像に基づいて、床下画像を生成することができる。すなわち、正常な床下画像を生成することが可能になる。
【0036】
図5(C)に示されるように、オフセット処理部150は、取り込み範囲である第n範囲An(nは3以上の整数)が上限ラインLMに達した場合、より詳しくは、映り込み検出部140が取り込み範囲の画像から一体移動物OBを検出しなくなるまでの間に、第n範囲An内に上限ラインLMが含まれた場合には、画像生成部130に対して床下画像の生成を禁止する禁止指令を送信する。これにより、低解像度、且つ、周辺構造物の角度が不自然な床下画像の生成を防止することができる。
【0037】
表示制御部160は、車両VHの乗員からの要求を受け付けると、画像生成部130が生成した俯瞰画像200(周囲画像210及び、又は、床下画像220)を表示装置25に表示する。また、表示制御部160は、車両VHの乗員からの要求を受け付けた際に、オフセット処理部150が画像生成部130に禁止指令を送信している場合には、乗員に対して床下画像の生成又は表示が不可能なことを知らせるメッセージを表示装置25に表示する。なお、メッセージは、表示装置25による表示に限定されず、スピーカの音声を併用して行ってもよい。
【0038】
次に、
図6に示すフローチャートに基づいて、ECU10のCPU11が実行する画像生成処理のルーチンを説明する。なお、以下において、取り込み範囲のオフセット量(縦長さD)は、画像データ中の車両VH後端から上限ラインLMまでの距離DLの半分よりも短い長さで設定されているものとする。すなわち、オフセット処理を少なくとも一回以上実行できるものとする。
【0039】
ステップS100では、ECU10は、車両VHが停車中か否かを判定する。車両VHが停車しているか否かは、例えば、車速センサ31の検出結果に基づいて判定すればよい。車両VHが停車中の場合(Yes)、ECU10は、ステップS190の処理に進み、床下画像の生成を不可と判定し、本ルーチンをリターンする。一方、車両VHが停車中でない場合(No)、すなわち、車両VHが走行している場合、ECU10は、ステップS110の処理に進む。
【0040】
ステップS110では、ECU10は、車両VHの現在位置より所定距離後方にて後方カメラ42が撮像した画像データを取得しているかを判定する。画像データを取得している場合(Yes)、ECU10は、ステップS120の処理に進む。一方、画像データを取得していない場合(No)、ECU10は、ステップS190の処理に進み、床下画像の生成を不可と判定し、本ルーチンをリターンする。
【0041】
ステップS120では、ECU10は、オプティカルフローに基づき、画像データの第1範囲A1に一体移動物OBを検出したかを判定する。第1範囲A1に一体移動物OBを検出しない場合(No)、ECU10は、ステップS180の処理に進み、現在の取り込み範囲(すなわち、第1範囲A1)の画像に基づき床下画像を生成する。一方、第1範囲A1に一体移動物OBを検出する場合(Yes)、ECU10は、ステップS130の処理に進む。
【0042】
ステップS130では、ECU10は、取り込み範囲を第1範囲A1から縦方向に縦長さDだけオフセットさせた第2範囲A2に設定する。次いで、ステップS140では、ECU10は、オプティカルフローに基づき、画像データの第2範囲A2に一体移動物OBを検出したかを判定する。第2範囲A2に一体移動物OBを検出しない場合(No)、ECU10は、ステップS180の処理に進み、現在の取り込み範囲の画像(すなわち、第2範囲A2)に基づき床下画像を生成する。一方、第2範囲A2に一体移動物OBを検出する場合(Yes)、ECU10は、ステップS150の処理に進む。
【0043】
ステップS150では、ECU10は、取り込み範囲を縦方向に縦長さDだけオフセットさせた第n範囲An(nは3以上の整数)に設定する。次いで、ステップS160では、ECU10は、第n範囲Anが上限ラインLMに達したか否かを判定する。第n範囲Anが上限ラインLMに達した場合(Yes)、ECU10は、ステップS190の処理に進み、床下画像の生成を不可と判定し、本ルーチンをリターンする。一方、第n範囲Anが上限ラインLMに達していない場合(No)、ECU10は、ステップS170の処理に進む。
【0044】
ステップS170では、ECU10は、オプティカルフローに基づき、画像データの第n範囲Anに一体移動物OBを検出したかを判定する。第n範囲Anに一体移動物OBを検出しない場合(No)、ECU10は、ステップS180の処理に進み、床下画像を生成する。一方、第n範囲Anに一体移動物OBを検出する場合(Yes)、ECU10は、ステップS175にてnをカウントアップ(n=n+1)して、ステップS150の処理に戻る。すなわち、取り込み範囲が上限ラインLMに達するまでの間は、一体移動物OBを検出しなくなるまで、取り込み範囲のオフセットを繰り返す。
【0045】
以上詳述した本実施形態によれば、オフセット処理部150は、映り込み検出部140が取り込み範囲の画像に一体移動物OBの映り込みを検出すると、取り込み範囲を縦方向に移動させるオフセット処理を実行する。オフセット処理部150は、映り込み検出部140が一体移動物OBを検出しなくなるまで、取り込み範囲のオフセットを繰り返し実行する。これにより、画像生成部130は、一体移動物OBが映り込んでいない画像に基づいて床下画像を生成することが可能になる。すなわち、表示装置25に外装部品等が映り込んでいない正常な床下画像を表示することができる。
【0046】
なお、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、取り込み範囲のオフセットは、映り込み検出部140が一体移動物OBを検出した場合に、オフセット処理部150が実行するものとして説明したが、車両VHの乗員の操作(例えば、表示装置25のタッチ操作等)によって取り込み範囲を任意の範囲にオフセットできるようにすることも可能である。また、上記実施形態では、取り込み範囲のオフセット量は、縦長さDで設定されるものとして説明したが、縦長さDよりも短いオフセット量、すなわち、オフセットの前後で取り込み範囲の一部が重複するように構成することも可能である。また、本開示の適用は、車両VHの床下画像の生成に限定されず、車両VHと一体に移動する物体の映り込みが望ましくない他の画像の生成にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
VH…車両,10…ECU,25…表示装置,30…内界センサ装置,40…カメラセンサ,41…前方カメラセンサ,42…後方カメラ,43…左側方カメラ,44…右側方カメラ,100…画像取得部,110…オプティカルフロー演算部,120…位置推定部,130…画像生成部,140…映り込み検出部,150…オフセット処理部,160…表示制御部