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特開2024-81271リキッド印刷インキ組成物、及びそれを用いた印刷物並びに積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081271
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】リキッド印刷インキ組成物、及びそれを用いた印刷物並びに積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/10 20140101AFI20240611BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20240611BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240611BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240611BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C09D11/10
C09D11/02
B32B27/00 E
B32B27/20 A
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194773
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】藤本 学
(72)【発明者】
【氏名】浅見 朋美
(72)【発明者】
【氏名】伊東 聡子
(72)【発明者】
【氏名】川島 康成
(72)【発明者】
【氏名】永川 健太郎
【テーマコード(参考)】
4F100
4J039
【Fターム(参考)】
4F100AA19
4F100AA19A
4F100AA21
4F100AA21A
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK15
4F100AK15A
4F100AK25
4F100AK25A
4F100AK41
4F100AK41A
4F100AK42
4F100AK42B
4F100AK46
4F100AK46A
4F100AK51
4F100AK51A
4F100AK54
4F100AK54A
4F100AT00B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA13
4F100CA13A
4F100CC00
4F100EH66
4F100EJ55
4F100EJ86
4F100HB00
4F100HB00A
4F100HB31
4F100HB31A
4F100JB07
4F100JK06
4J039AB08
4J039AD05
4J039AD10
4J039AE04
4J039AE06
4J039AE08
4J039BA35
4J039BC08
4J039BC18
4J039BC22
4J039BC23
4J039BC25
4J039BE01
4J039BE16
4J039BE22
4J039CA02
4J039EA43
4J039GA03
4J039GA09
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、表面に無機や有機のバリアコート剤が塗布されたり蒸着されたフィルムに対しても優れた密着性及びラミネート強度を有し、且つ版カブリや筋汚れが生じにくく優れた印刷適性を有する印刷用白インキを提供することである。
【解決手段】 本発明は、バインダー樹脂、白色顔料及び有機溶剤を含有し、バインダー樹脂が、構造中に水酸基を有し、且つポリエステルポリオール由来の構造単位を有しポリエーテルポリオール由来の構造単位を有さないウレタン樹脂(A)と、構造中に水酸基を有さず、且つポリエステルポリオール由来の構造単位とポリエーテルポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂(B)を少なくとも含有する、リキッド印刷インキ組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂、白色顔料及び有機溶剤を含有し、
バインダー樹脂が、構造中に水酸基を有し、且つポリエステルポリオール由来の構造単位を有しポリエーテルポリオール由来の構造単位を有さないウレタン樹脂(A)と、
構造中に水酸基を有さず、且つポリエステルポリオール由来の構造単位とポリエーテルポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂(B)を少なくとも含有する、リキッド印刷インキ組成物。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)と前記ウレタン樹脂(B)の質量比が90:10~50:50の範囲内である、
請求項1に記載のリキッド印刷インキ組成物。
【請求項3】
バインダー樹脂全量に対するウレタン樹脂(A)とウレタン樹脂(B)の質量割合が60質量%以上である、
請求項1又は2に記載のリキッド印刷インキ組成物。
【請求項4】
バインダー樹脂として更にロジン系樹脂(C)を含有する
請求項1又は2に記載のリキッド印刷インキ組成物。
【請求項5】
バインダー樹脂全量に対する前記ロジン系樹脂(C)の質量割合が2質量%以上である
請求項4に記載のリキッド印刷インキ組成物。
【請求項6】
バインダー樹脂として更に塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、繊維素系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂から選ばれる少なくとも1つ以上の樹脂を含有する
請求項1又は2に記載のリキッド印刷インキ組成物。
【請求項7】
水をインキ組成物全量の1~5質量%の範囲で含有する
請求項1又は2に記載のリキッド印刷インキ組成物。
【請求項8】
前記白色顔料が、少なくともシリカおよび/またはアルミナで被覆された酸化チタンを含有する
請求項1又は2に記載のリキッド印刷インキ組成物。
【請求項9】
請求項1又は2の何れかに記載のリキッド印刷インキ組成物を印刷してなる印刷物。
【請求項10】
請求項1又は2の何れかに記載のリキッド印刷インキ組成物を印刷してなる印刷層を有するラミネート積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビアインキやフレキソインキとして使用可能なリキッド印刷インキ組成物、及びそれを用いた印刷物並びに積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビアインキやフレキソインキ等のリキッド印刷インキは、被印刷体に美粧性、機能性、表面保護性を付与させる目的で広く用いられている。この被印刷体が包装材料の中でも特に食品包材として用いられる場合、ラミネート加工が施されるのが一般的である。この場合、内容物の種類や使用目的に応じて様々な被印刷体やラミネート加工が利用される。
【0003】
従来この様なラミネート加工物には、ポリウレタン樹脂をバインダーとした印刷インキが、各種被印刷体への接着性や各種ラミネート加工物のラミネート強度、ボイルレトルト適性に優れることから、広く用いられてきた。
【0004】
一方で近年の包装材料の多様化に伴い、リキッド印刷インキには、各種包装材料への接着性やラミネート強度、フィルム印刷後の耐ブロッキング性が要求される。またグラビア印刷においては、画線部以外の箇所にドクターでインキが掻ききれない部分が「カブリ」となって印刷物に転移する「版かぶり」の現象や、ドクター上のインキ固形物由来の「筋汚れ」を防止して印刷適性を良好に保つことも要求されており、これらの課題全てを満足するインキとして更なる改善が試みられている。
【0005】
リキッド印刷インキのうち、白インキでは主に酸化チタンが顔料として使用されており、無機顔料である上にインキ中の含有量が多く、各種包装材料への密着性やラミネート強度等の性能確保に関しては、藍インキ等の有機顔料を用いるインキと比較してより困難である。更に近年は、食品用、電子部品用向けのフィルムパッケージに用いられるフィルムとして、内容物の変質を防止すべく空気を遮断する酸素バリア、水蒸気を遮断する水蒸気バリア等の各種バリア性を付与した高機能フィルムが増加する傾向にある。これらの高機能フィルムは、その表面に無機や有機のバリアコート剤が塗布されたり蒸着されたフィルムであり、一般のフィルム印刷と比較して密着性が保持し難いのが現状である。そのため、白インキにおいて、このような高機能フィルムに対して密着性を向上させることが求められている。
【0006】
また、白インキは上記のように無機顔料である上にインキ中の含有量が多いことから、「版かぶり」、「筋汚れ」の問題や、印刷中にインキパン中でインキ表面が膜を張る現象である「皮張り」といった問題が生じやすく、印刷適性が損なわれやすい。
【0007】
例えば特許文献1には、蒸着層やバリア性樹脂組成物層を有する高機能フィルムに対して優れた密着性を有する印刷インキとして、末端に第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基から選ばれる1種以上を有し、且つ水酸基を有する官能基含有ポリウレタン樹脂と、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体とを含有する印刷インキ組成物が開示されている。
【0008】
しかしながら、ラミネート加工における密着性の向上及び印刷物の高意匠性は更に求められている。そのため、蒸着フィルムのような密着し難いフィルムに対しても優れた密着性を有し、且つ優れた印刷適性を有する印刷用白インキの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2018-4407号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、表面に無機や有機のバリアコート剤が塗布されたり蒸着されたフィルムに対しても優れた密着性及びラミネート強度を有し、且つ版カブリや筋汚れが生じにくく優れた印刷適性を有する印刷用白インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、バインダー樹脂として特定のウレタン樹脂を2種類含有するリキッド印刷インキ組成物が上記課題解決に有効であることを見出した。
【0012】
即ち本発明は、バインダー樹脂、白色顔料及び有機溶剤を含有し、バインダー樹脂が、構造中に水酸基を有し、且つポリエステルポリオール由来の構造単位を有しポリエーテルポリオール由来の構造単位を有さないウレタン樹脂(A)と、構造中に水酸基を有さず、且つポリエステルポリオール由来の構造単位とポリエーテルポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂(B)を少なくとも含有するリキッド印刷インキ組成物である。
【0013】
また、本発明は、バインダー樹脂、白色顔料及び有機溶剤を含有し、バインダー樹脂が、構造中に水酸基を有し、且つポリエステルポリオール由来の構造単位を有しポリエーテルポリオール由来の構造単位を有さないウレタン樹脂(A)と、構造中に水酸基を有さず、且つポリエステルポリオール由来の構造単位とポリエーテルポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂(B)を少なくとも含有するリキッド印刷インキ組成物を印刷してなる印刷物である。
【0014】
また、本発明は、バインダー樹脂、白色顔料及び有機溶剤を含有し、バインダー樹脂が、構造中に水酸基を有し、且つポリエステルポリオール由来の構造単位を有しポリエーテルポリオール由来の構造単位を有さないウレタン樹脂(A)と、構造中に水酸基を有さず、且つポリエステルポリオール由来の構造単位とポリエーテルポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂(B)を少なくとも含有するリキッド印刷インキ組成物を印刷してなる印刷層を有するラミネート積層体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、表面に無機や有機のバリアコート剤が塗布されたり蒸着されたフィルムに対しても優れた密着性を有し、且つ版カブリが生じにくく優れた印刷適性を有する印刷用白インキを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(言葉の定義)
本発明においてリキッド印刷インキ組成物とは、グラビアインキまたはフレキソインキ等の、印刷版を使用する印刷方法に適用されるリキッド状のインキを指し、好ましくはグラビアインキまたはフレキソインキである。また本発明の印刷用リキッドインキは活性エネルギー硬化性の成分を含んでおらず、即ち活性エネルギー線非反応性のリキッドインキである。
【0017】
なお以下の説明で用いる「インキ」とは全て「印刷インキ」を示す。また「部」とは全て「質量部」を示し、「インキ全量」とは、有機溶剤等の揮発性成分をすべて含んだインキの全量を示し、「インキ固形分全量」とは、揮発性成分を含まない、不揮発性成分のみの全量を示す。
【0018】
本発明は、構造中に水酸基を有し、且つポリエステルポリオール由来の構造単位を有しポリエーテルポリオール由来の構造単位を有さないウレタン樹脂(A)と、構造中に水酸基を有さず、且つポリエステルポリオール由来の構造単位とポリエーテルポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂(B)と、白色顔料及び有機溶剤を含有するリキッド印刷インキ組成物である。
【0019】
(ウレタン樹脂(A))
構造中に水酸基を有し、ポリエステルポリオール由来の構造単位を有しポリエーテルポリオール由来の構造単位を有さないウレタン樹脂(A)は、主剤として使用されるものである。ウレタン樹脂(A)は、ウレア結合を有するポリウレタンウレア樹脂であることが好ましい。ウレタン樹脂(A)は、ポリエステルポリオール及びポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーに、必要に応じて鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂であり、反応原料としてポリエーテルポリオールを用いないものである。
【0020】
ポリエステルポリオールは、例えば、水酸基を2個以上有する化合物と多塩基酸とを公知のエステル化反応により得られるものを用いることができ、低分子ポリオールと多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオールであることが好ましい。ポリエステルポリオールは、エステル基を導入して凝集エネルギーを高める事で、ラミネート強度をより一層高めることができる。
【0021】
前記水酸基を2個以上有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等のグリコール;2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3,5-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の分岐構造を有するグリコール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどを用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記多塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、これらの酸の無水物等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0023】
また、ポリエステルポリオールは、環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール類のような、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリエステルポリオールを用いてもよく、1種または2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量としては、500~8,000の範囲であることが好ましく、800~7,000の範囲であることがより好ましく、900~6,000の範囲であることが更に好ましい。
【0025】
尚、本発明において、数平均及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0026】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
【0027】
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
〔標準ポリスチレン〕
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0028】
ジイソシアネート化合物としては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’-ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス-クロロメチル-ジフェニルメタン-ジイソシアネート、2,6-ジイソシアネート-ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等があげられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
ポリウレタンポリウレア樹脂を形成する際に用いられるアミノ基を有する化合物は、ウレタンプレポリマーの分子量を伸ばすことを目的とした鎖伸長剤と、ポリウレタンポリウレア樹脂の反応停止を目的とした末端封鎖剤とがある。鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの他、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0030】
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の分子内に水酸基を有するアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L-アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、上記材料を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法がそのまま使用できる。例えば、ポリエステルポリオールとジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを得、得られるプレポリマーを、適当な溶剤中、すなわち、ノントルエン系グラビアインキ用の溶剤として通常用いられる、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノールなどのアルコール系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤の中で、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤と反応させる二段法、あるいはポリエステルポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤を上記のうち適切な溶剤中で一度に反応させる一段法により製造される。これらの方法のなかでも、均一なウレタン樹脂(A)を得るには、二段法によることが好ましい。
【0032】
このようにして得られるウレタン樹脂(A)は、樹脂の側鎖あるいは末端中に水酸基を有する。ウレタン樹脂(A)構造中に水酸基を有することにより、印刷インキ層を強固にすることができ、被印刷体への接着性を向上させることができる。水酸基価は0.1~20mgKOH/gであることが好ましく、1~15mgKOH/gであることがより好ましい。ウレタン樹脂(A)に水酸基を付加する方法は、鎖伸長剤や末端封止剤として水酸基を有するアミン類を使用する等の公知の方法があげられる。
【0033】
また、ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、10,000~100,000の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは15,000~90,000の範囲である。ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が10,000未満の場合には、得られるインキの組成物の耐ブロッキング性、印刷被膜の強度や耐油性などが低くなる傾向があり、100,000を超える場合には、得られるインキ組成物の粘度が高くなり、印刷被膜の光沢が低くなる傾向がある。
【0034】
ウレタン樹脂(A)のインキにおける含有量(ウレタン樹脂(A)の固形分含有量)は、インキの被印刷体への接着性を十分にする観点からインキの総重量に対して1重量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から25重量%以下が好ましく、更には1~10重量%の範囲が好ましい。
【0035】
(ウレタン樹脂(B))
構造中に水酸基を有さず、且つポリエステルポリオール由来の構造単位とポリエーテルポリオール由来の構造単位を有するウレタン樹脂(B)は、印刷インキの再溶解性を向上させるため、また、蒸着フィルムへの接着性を向上させるための必須成分である。
ウレタン樹脂(B)は、ウレア結合を有するポリウレタンウレア樹脂であることが好ましい。ウレタン樹脂(B)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーに、必要に応じて鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂である。
【0036】
ポリエステルポリオール、ポリイソシアネート、鎖伸長剤及び反応停止剤は、前述したウレタン樹脂(A)と同様のものを用いることができる。
【0037】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリエーテルポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類が挙げられる。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど公知汎用のものでよい。ポリエーテルポリオールを含有することにより、特に高機能バリアーフィルム上での密着性が大幅に向上し、結果として耐ブロッキング性、ラミネート強度が優れるようになる。
【0038】
ポリエーテルポリオールは、数平均分子量が100~3500ものであることが好ましい。前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量が100より小さいと、ポリウレタン樹脂の皮膜が硬くなる傾向にありフィルムへの接着性が低下する。数平均分子量が3500より大きい場合、ポリウレタン樹脂の皮膜が脆弱になる傾向にありインキ皮膜の耐ブロッキング性が低下する。
【0039】
ウレタン樹脂(B)の製造方法としては、ウレタン樹脂(A)と同様、上記材料(構造中に水酸基を有しないため、分子内に水酸基を有するアミン類を除く)を用いて、公知のポリウレタン樹脂の製造方法がそのまま使用できる。
【0040】
このようにして得られるウレタン樹脂(B)の重量平均分子量は、15,000~100,000の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは15,000~80,000の範囲である。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が15,000未満の場合には、得られるインキの組成物の耐ブロッキング性、印刷被膜の強度や耐油性などが低くなる傾向があり、100,000を超える場合には、得られるインキ組成物の粘度が高くなり、印刷被膜の光沢が低くなる傾向がある。
【0041】
また、ウレタン樹脂(B)は、ウレタン結合濃度が1.2mmol/g以上2.5mmol/g以下の範囲であるポリウレタン尿素樹脂が好ましい。なお、ウレタン結合濃度は下記の式(1)により算出できる。
ウレタン結合濃度={(W×OH+W×OH+・・・+W×OH)×1000}/(56100×S) 式(1)
式(1)において、各々以下の通りである。
:ポリオール1の重量
OH:ポリオール1の水酸基価
:ポリオール2の重量
OH:ポリオール2の水酸基価
:ポリオールiの重量
OH:ポリオールiの水酸基価
S:ウレタン樹脂固形分の重量
【0042】
また、ポリウレタン尿素樹脂100質量%中、ポリエーテルポリオール由来の構造単位
を1~50質量%含有する事が好ましく、より好ましくは1~30質量%の範囲である。
【0043】
ウレタン樹脂(B)のインキにおける含有量(ウレタン樹脂(B)の固形分含有量)は、インキの被印刷体への接着性を十分にする観点からインキの総質量に対して1質量%以上、適度なインキ粘度やインキ製造時・印刷時の作業効率の観点から10質量%以下が好ましく、更には2~5質量%の範囲が好ましい。
【0044】
前記ポリウレタン樹脂(A)と、ウレタン樹脂(B)の質量比(固形分比率)は、ポリウレタン樹脂(A):ポリウレタン樹脂(B)=90:10~50:50の範囲が好ましく、より好ましくは80:20~50:50、更に好ましくは70:30~55:45である。
【0045】
また、バインダー樹脂全量に対するウレタン樹脂(A)とウレタン樹脂(B)の質量割合が60質量%以上99%以下であることが好ましく、70%以上95%以下であることが好ましく、70%以上85%以下であることが好ましい。本発明のリキッド印刷インキ組成物は、バインダー樹脂全量に対してウレタン樹脂の占める割合を高くすることにより、再溶解性向上と希釈率をアップすることができ、印刷適性も向上する。
【0046】
(ロジン系樹脂(C))
本発明のリキッド印刷インキ組成物は、ロジン系樹脂(C)を含有することが好ましい。ロジン系樹脂(C)を含有することにより、再溶解性、蒸着フィルムへの密着性、ラミネート強度、版カブリを向上することができる。
【0047】
ロジン系樹脂は、ロジン骨格を有する樹脂であれば特に限定されないが、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、ロジンエステル樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、重合ロジンなどが好ましい。軟化点(環球法による)が90~200℃であることが好ましい。
【0048】
ロジン系樹脂(C)のインキにおける含有量(ロジン系樹脂(C)の固形分含有量)は、インキの総質量に対して0.1~5質量%の範囲が好ましく、0.25~4質量%の範囲がより好ましく、0.3~3質量%の範囲が更に好ましい。
【0049】
また、バインダー樹脂全量に対するロジン系樹脂(C)の質量割合が2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることが好ましい。一方、上限は15質量%以下であることが好ましい。
【0050】
(その他の樹脂)
本発明のリキッド印刷インキ組成物は、その他の樹脂として、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、繊維素系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール樹脂、石油樹脂から選ばれる樹脂を含有することができる。前記ウレタン樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)、ロジン系樹脂(C)と共に用いることが可能な併用樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキの総重量に対して0.5~20重量%が好ましく、更に好ましくは1~10重量%である。
【0051】
中でも、前記ウレタン樹脂(A)、ウレタン樹脂(B)、ロジン系樹脂(C)に加えて、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を併用することが好ましい。
【0052】
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は特に限定なく公知のものが使用できるが、中でも水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂であることが好ましく、水酸基価が50~200mgKOH/gであり、かつ前記共重合体樹脂中の塩化ビニル成分の含有比率が80~95重量%である水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂がなお好ましい。
【0053】
水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、二種類の方法で得ることができる。一つは塩化ビニルモノマー、酢酸ビニルモノマーおよびビニルアルコールを適当な割合で共重合して得られる。もう一つは、塩化ビニルと酢酸ビニルを共重合した後、酢酸ビニルを一部ケン化することにより得られる。水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂は、塩化ビニル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのモノマー比率により樹脂被膜の性質や樹脂溶解挙動が決定される。即ち、塩化ビニルは樹脂被膜の強靭さや硬さを付与し、酢酸ビニルは接着性や柔軟性を付与し、ビニルアルコールは極性溶剤への良好な溶解性を付与する。
【0054】
また水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂のモノマー比率としては、例えば水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂100質量部に対し、塩化ビニルは80~95質量部であると、耐ブロッキング性と接着性のバランスがとれなお好ましい。80質量部以上であれば樹脂被膜の強靭さが保て、耐ブロッキング性が確保できる。95質量部以下であれば、樹脂被膜が硬くなりすぎず、接着性が低下し難い。また、ビニルアルコールから得られる水酸基価は50~200mgKOH/gが好ましい。50mgKOH/g以上であれば極性溶媒への溶解性が良好であり、印刷適性も安定し易い。200mgKOH/g以下であれば、ラミネート適性も良好に保てる。
【0055】
水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂を併用する場合は、リキッド印刷インキの全樹脂固形分に対して1~30質量%の範囲であることが好ましく、5~20質量%の範囲であることがより好ましい。
【0056】
(白色顔料)
白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫化亜鉛、鉛白、亜鉛華、リトボン、アンチモンホワイト、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、石膏、シリカ、等があげられる。中でも、酸化チタンは、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましい。
【0057】
酸化チタンは、表面に少なくともアルミナおよび/またはシリカを含有する処理層を有することが好ましい。アルミナおよび/またはシリカで表面処理された酸化チタンにおいて、一般にシリカは、酸化チタン表面の酸・塩基の状態を調整する目的や、得られたインキ・塗料皮膜の耐久性を付与するために使用され、アルミナは分散時の酸化チタンの濡れを改良するために使用される。また酸化チタンの表面処理方法としては、水系処理、気相処理等が挙げられる。
【0058】
シリカとアルミナの処理量の比率は、分散安定性の観点から、アルミナ処理量の比率が35質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。また、酸化チタンに対する該無機物の量は必ずしも限定されないが、一般的には酸化チタン100部に対して30部以下である。
【0059】
シリカとアルミナで表面処理された酸化チタンは、市販品を使用してもよく、例えば、石原産業(株)、テイカ(株)等の酸化チタン製造メーカーより市販されている。例えば、アルミナ処理量に比較してシリカ処理量の多い品種、シリカ処理量に比較してアルミナ処理量の多い品種が市販され、アルミナによる処理量が上記比率の範囲に入る酸化チタンも入手することができる。
【0060】
前記アルミナ及びシリカそれぞれの質量比は、酸化チタンの表面に酸化チタンと共に存在するアルミナ及びシリカの量から推定することができる。アルミナ及びシリカの存在量比は、蛍光X線またはESCA等により酸化チタン表面に吸着されたアルミナ、またはシリカの量を分析、比較することによって確認することができる。特に蛍光X線による測定が簡便で精度が高い。シリカおよびアルミナは酸化チタンの表面上に存在する他、その一部が遊離した粒子として存在する可能性があり、蛍光X線による測定を行うと、その総量を測定することができる。蛍光X線による定量法については、標準資料を用いた検量線による分析方法が確立されている。
【0061】
従って、市販の酸化チタンに対して、その表面に存在するアルミナとシリカの質量比を蛍光X線による測定で確認し、種々の質量比の酸化チタンを使用することができる。
【0062】
本発明のリキッド印刷インキ組成物は、酸化チタンと無機フィラーを併用してもよい。無機フィラーは特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
【0063】
これらの中でも、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト等の粘土鉱物である
ことが好ましく、またこれらの粘土鉱物を原料とする、例えばカオリナイト(カオリン鉱
物)を原料とするカオリン(天然含水ケイ酸アルミニウム)も好ましく使用できる。カオ
リンには、湿式カオリン及びこれを焼成処理して成る焼成カオリンが知られている。本実
施形態では、未焼成カオリンが特に好ましい。
【0064】
白色顔料の含有量は、所望するインキ性能にもよるが、標準的な隠ぺい性と高い版かぶり性を必要とする白インキであれば通常インキ総質量に対し20~40質量%程度の含有量で設計し、一方、要求性能として非常に高い隠ぺい性を目的とする白インキであれば40~60質量%程度の含有量で設計してもよい。
【0065】
(有機溶剤)
本発明のリキッド印刷インキには、例えば芳香族有機溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、n-プロパノール、イノプロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤があげられ、これらを単独または2種以上の混合物で用いることができる。本発明の印刷インキ組成物は、印刷適性を向上させるために、n-プロパノール等の直鎖構造のアルコール系溶剤を含有することが好ましい。
近年、作業環境の観点から、トルエン、キシレンといった芳香族系溶剤及びケトン類の溶剤を用いないことが望ましい。
【0066】
(水)
本発明のリキッド印刷インキには、揮発性成分として前記有機溶剤と共に、水を添加してもよい。水の添加により、インキの乾燥性を制御する事ができ、特にグラビア印刷では、その特徴であるインキ転移量の少ないグラデーション部をきれいに再現することができる。前記水の添加量は、印刷適性が良好となる点からインキ組成物全量の0.3~10質量%の範囲であることが好ましい。前記水の添加量が0.3質量%以上であれば、インキの乾燥抑制効果が低下することなくグラデーション部の再現性が良好となる傾向にある。また、このような水の添加により、使用有機溶剤成分を低減させることも可能であり環境対応に繋がる。版カブリを良好にするためには、水の添加量は1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。水は有機溶剤に予め添加して含水の有機溶媒としてもよいし、別途特定量を添加してもよい。
【0067】
(その他の添加剤)
本発明では更に必要に応じて、併用樹脂、体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡
剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むことも
できる。
【0068】
本発明のリキッド印刷インキは、白色顔料を有機溶剤に安定に分散させるために、分散剤を併用してもよい。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。
【0069】
白色顔料は、分散剤を用いずに樹脂単独でも分散可能である。本発明のリキッド印刷インキは、分散剤を含有しないことが好ましい。分散剤を含有しないことにより、版カブリを改善できる。
【0070】
本発明のリキッド印刷インキは、前記バインダー樹脂、白色顔料を有機溶剤中に溶解及び/又は分散することにより製造することができる。
【0071】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0072】
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0073】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0074】
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0075】
(印刷物)
本発明の印刷物は、基材上に、本発明のリキッド印刷インキを印刷して形成された印刷層を有する印刷物である。本発明のリキッド印刷インキは、各種の基材と密着性に優れ、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキとして有用である一方で、版を使用せずインクジェットノズルからインキを吐出するインクジェット方式向けのインキを除くものである。
【0076】
即ち、インクジェットインキの場合、ノズルから吐出したインク滴が、直接基材に密着し印刷物を形成するのに対し、本発明のリキッド印刷インキは、印刷インキを一旦印刷版又は印刷パターンに密着・転写した後、インキのみを再度基材に密着させ、必要に応じて乾燥させて印刷物とするものである。
【0077】
本発明のリキッド印刷インキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0078】
前記基材としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。
【0079】
また、基材として、バイオマス由来成分を含有する材料で形成させたフィルムを使用するのも好ましい。バイオマスフィルムは各社から販売されているほか、例えば、一般財団法人日本有機資源協会に記載のバイオマス認定商品一覧に挙げられるような公知のシートを使用することができる。
【0080】
これらのフィルムは、複数のフィルムを積層させた積層フィルムであってもよく、例えばバイオマスフィルムを積層させた積層体や、従来の石油系フィルムとバイオマスフィルムとの積層体であってもよい。
【0081】
これらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。
【0082】
また、これらの基材フィルムは、アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したり、金属箔等を使用したり、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用したり、ポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよい。このようなフィルムを用いることで、より、水蒸気、酸素、アルコール、不活性ガス、揮発性有機物(香り)等に対する高いバリア性を備えた積層体とすることができる。本発明のリキッド印刷インキは、蒸着層や各種コート処理が施されたフィルムに対しても優れた密着性を得られる。
【0083】
印刷方法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の印刷方式で印刷できるが、特にグラビア印刷方式で印刷することが好ましい。
【0084】
上記の印刷方式、すなわち、印刷インキを一旦印刷版又は印刷パターンに密着・転写した後、インキのみを再度基材に密着させ、必要に応じてオーブンによる乾燥あるいは硬化させて定着させることにより印刷物を得ることができる。本発明のリキッド印刷インキを用いてグラビア印刷方式やフレキソ印刷方式から形成される印刷インキの膜厚は、例えば10μm以下、好ましくは5μm以下である。
【0085】
本発明の印刷物は、フィルム基材上に、上述したリキッドインキ組成物を表刷り用インキ、裏刷り用インキ、あるいはラミネート用インキとして好ましく使用することができる。表刷り用インキとして使用する場合は、別途オーバープリントワニス層を設けることもできる。オーバープリントワニスは、着色剤を含まなくてもよいし、着色目的に種々顔料を用いてもよい。一方裏刷り用インキとして使用する場合は、別途アンカーコートワニス層を設けることもできる。また、本発明のリキッドインキ組成物を用いた印刷層の他に、着色剤を含有する他の印刷層を設けてもよい。
【0086】
中でも、本発明のリキッド印刷インキは、ラミネート強度に優れていることからラミネート用インキとして用いることが好ましい。
【0087】
(積層体)
本発明の積層体は、複数の基材を貼り合せて得られ、基材の少なくとも一つに本発明のリキッド印刷インキの印刷層を有する積層体である。基材は、接着剤により貼り合わせたり、押出しラミネーションにより積層することができる。
【0088】
より具体的な積層体の構成としては、
(1)基材フィルム1/印刷層/接着層1/シーラントフィルム
(2)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属蒸着未延伸フィルム
(3)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属蒸着延伸フィルム
(4)透明蒸着延伸フィルム/印刷層/接着層1/シーラントフィルム
(5)基材フィルム1/印刷層/接着層1/基材フィルム2/接着層2/シーラントフィルム
(6)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属蒸着延伸フィルム/接着層2/シーラントフィルム
(7)基材フィルム1/印刷層/接着層1/透明蒸着延伸フィルム/接着層2/シーラントフィルム
(8)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/シーラントフィルム
(9)基材フィルム1/印刷層/接着層1/基材フィルム2/接着層2/金属層/接着層3/シーラントフィルム
(10)基材フィルム1/印刷層/接着層1/金属層/接着層2/基材フィルム2/接着層3/シーラントフィルム
等が挙げられるがこれに限定されない。なお、上記の「基材フィルム1/と印刷層」が、フィルム基材上に白色印刷層とカラー印刷層を有する上記の印刷物に該当する。また、上記構成(1)~(10)では基材フィルム1の接着層1側の面に印刷層を設ける構成を記載したが、基材フィルム1の接着層1と反対側の面(表面)に印刷層を設けてもよいし、基材フィルム2に印刷層を設ける構成としてもよい。
【0089】
構成(1)に用いられる基材フィルム1としては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム(以後Nyフィルムともいう)等が挙げられる。また、基材フィルム1としてガスバリア性や、後述する印刷層を設ける際のインキ受容性の向上等を目的としたコーティングが施されたものを用いてもよい。コーティングが施された基材フィルム1の市販品としては、K-OPPフィルムやK-PETフィルム等が挙げられる。シーラントフィルムとしては、CPPフィルム、LLDPEフィルム等が挙げられる。
【0090】
構成(2)、(3)に用いられる基材フィルム1としては、OPPフィルムやPETフィルム等が挙げられる。金属蒸着未延伸フィルムとしては、CPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-CPPフィルムを、金属蒸着延伸フィルムとしては、OPPフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-OPPフィルムを用いることができる。
【0091】
構成(4)に用いられる透明蒸着延伸フィルムとしては、OPPフィルム、PETフィルム、ナイロンフィルム等にシリカやアルミナ蒸着を施したフィルムが挙げられる。シリカやアルミナの無機蒸着層の保護等を目的として、蒸着層上にコーティングが施されたフィルムを用いてもよい。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。
【0092】
構成(5)に用いられる基材フィルム1としては、PETフィルム等が挙げられる。基材フィルム2としては、ナイロンフィルム等が挙げられる。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。
【0093】
構成(6)の基材フィルム1としては、構成(2)、(3)と同様のものが挙げられる。金属蒸着延伸フィルムとしては、OPPフィルムやPETフィルムにアルミニウム等の金属蒸着を施したVM-OPPフィルムやVM-PETフィルムが挙げられる。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。
【0094】
構成(7)の基材フィルム1としては、PETフィルム等が挙げられる。透明蒸着延伸フィルムとしては、構成(4)と同様のものが挙げられる。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。
【0095】
構成(8)の基材フィルム1としては、PETフィルム等が挙げられる。金属層としては、アルミニウム箔等が挙げられる。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。
【0096】
構成(9)、(10)の基材フィルム1としては、PETフィルム等が挙げられる。基材フィルム2としては、ナイロンフィルム等が挙げられる。金属層としては、アルミニウム箔等が挙げられる。シーラントフィルムは構成(1)と同様のものが挙げられる。
【0097】
(接着層)
接着層は、公知のフィルムラミネート用の接着剤を適宜使用することができる。また、押出しラミネーションにより積層する場合は、公知の押出しラミネーション用のアンカーコート剤を接着補助剤として適宜使用することができる。これらの接着剤やアンカーコート剤としてガスバリア性を有する材料を使用すると、特にバリア性に優れる積層体を得ることができる。
【0098】
ガスバリア性に優れる接着剤として特に好ましくは、3g/m(固形分)で塗布した接着剤の硬化塗膜の酸素バリア性が300cc/m/day/atm以下、または水蒸気バリア性が120g/m/day以下の、少なくとも一方の条件を満足するものをいう。市販品としてはDIC株式会社製のPASLIM VM001やPASLIM J350X等の「PASLIM」シリーズや、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」が挙げられる。
【0099】
接着剤層は特に限定なく公知の材料を用いることができるが、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を含むことが好ましい。これらのポリオール及び又はイソシアネート化合物は、バイオマス由来成分を含むものを用いた場合には、バイオマス度の高い積層体とすることができ環境負荷を低減することができる。
【0100】
その他、接着促進剤、酸無水物、酸素捕捉機能を有する化合物、粘着付与剤、ガスバリア性接着剤が安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、結晶核剤等を含んでいてもよい。これらの各種添加剤は予めポリオール組成物(A)およびポリイソシアネート組成物(B)のいずれか一方、または両方に添加しておいてもよいし、ポリオール組成物(A)とポリイソシアネート組成物(B)とを混合する際に添加してもよい。
【0101】
また使用するガスバリア性接着剤は、溶剤型、無溶剤型いずれの形態であってもよい。使用するガスバリア性接着剤が溶剤型である場合、第一の基材上に印刷された印刷層面上に本発明の接着剤をグラビアロール等のロールを用いて塗布し、オーブン等での加熱により有機溶剤を揮発させた後、他方の基材を貼り合せて本発明の積層体を得る。ラミネート後に、エージング処理を行うことが好ましい。エージング温度は室温~80℃、エージング時間は12~240時間が好ましい。
【0102】
使用するガスバリア性接着剤が無溶剤型である場合、第一の基材上に印刷された印刷層面上に予め40℃~100℃程度に加熱しておいた本発明の接着剤をグラビアロール等のロールを用いて塗布した後、直ちに他方の基材を貼り合せて本発明の積層体を得る。ラミネート後に、エージング処理を行うことが好ましい。エージング温度は室温~70℃、エージング時間は6~240時間が好ましい。
【0103】
使用するガスバリア性接着剤を接着補助剤として用いる場合、第一の基材上に印刷された印刷層面上に本発明の接着補助剤をグラビアロール等のロールを用いて塗布し、オーブン等での加熱により有機溶剤を揮発させた後、押出し機により溶融させたポリマー材料をラミネートすることにより本発明の積層体を得る。溶融させるポリマー材料としては、低密度ポリエチレン樹脂や直線状低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。エージング温度は室温~70℃、エージング時間は6~240時間が好ましい。
【0104】
使用するガスバリア性接着剤の塗布量は、適宜調整する。溶剤型接着剤の場合、一例として固形分量が1g/m以上10g/m以下、好ましくは2g/m以上5g/m以下となるよう調整する。無溶剤型接着剤の場合、接着剤の塗布量が一例として1g/m以上5g/m以下、好ましくは1g/m以上3g/m以下である。
【0105】
接着剤を接着補助剤として用いる場合、塗布量は適宜調整されるが、一例として0.03g/m以上2g/m以下(固形分)である。
【0106】
(積層体 他の層)
本発明の積層体は、は単独で用いてもよいし、更に他のフィルムや基材を含んでいてもよい。他の基材としては、上述した延伸フィルム、未延伸フィルム、透明蒸着フィルムに加え、紙、木材、皮革等の多孔質の基材を使用することもできる。他の基材を貼り合せる際に用いる接着剤は、上述したようなガスバリア性の接着剤を用いてもよいし、そうでなくてもよい。
【0107】
<包装材>
本発明の印刷物や積層体は、食品や医薬品などの保護を目的とする多層包装材料として使用することができる。多層包装材料として使用する場合には、内容物や使用環境、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。
【0108】
本発明の包装材は、例えば、本発明の積層体を使用し、積層体のシーラントフィルムの面を対向して重ね合わせた後、その周辺端部をヒートシールして得られる。製袋方法としては、本発明の積層体を折り曲げるか、あるいは重ねあわせてその内層の面(シーラントフィルムの面)を対向させ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他のヒートシール型等の形態によりヒートシールする方法が挙げられる。本発明の包装材は内容物や使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。自立性包装材(スタンディングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0109】
本発明の包装材に、その開口部から内容物を充填した後、開口部をヒートシールして本発明の包装材を使用した製品が製造される。包装材の用途は特に限定されないが、食品包材、医薬品、サニタリー、コスメ、電子材料用、建築材料用、工業材料用等に好適に使用できる。また、タバコ、使い捨てカイロ、薬、サプリメント、輸液パック、真空断熱材などの包装材料としても使用され得る。
【実施例0110】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。表中の空欄は未配合であることを示す。
【0111】
尚、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による重量平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:0.4質量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定した。
【0112】
尚、水酸基価は、ポリウレタン樹脂中の水酸基を過剰のアセチル試薬にてアセチル化した際の、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウム(KOH)のmg数で示したものであり、JISK0070に準じたものである。
【0113】
(合成実施例1)ウレタン樹脂A
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリエステルポリオールA1(クラレポリオールP-4010、3-メチル-1,5ペンタンジオールとアジピン酸の共重合体、数平均分子量4000、クラレ社製)198.55部、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIとも略す)22.59部を仕込み、窒素気流下に90 ℃で10時間反応させ、酢酸エチル180.9部を加え冷却し、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。
【0114】
次いでイソホロンジアミン(以下IPDAとも略す)6.37部、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン1.7部、モノエタノールアミン0.30部、酢酸エチル140.40部およびイソプロピルアルコール(以下IPAとも略す)214.2部を混合したものへ、得られたウレタンプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分30%、重量平均分子量90000、水酸基価5.2mgKOH/樹脂1gのウレタン樹脂Aを得た。
【0115】
(合成実施例2)ウレタン樹脂B
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、ポリエステルポリオールA2(数平均分子量1500、水酸基価75)198.55部、ポリエチレングリコール66.21部(数平均分子量400、水酸基価278)、IPDI81.25部を仕込み、窒素気流下に90 ℃で10時間反応させ、酢酸エチル230.7部を加え冷却し、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。
【0116】
次いでIPDA10.90部、ジブチルアミン3.00部、酢酸エチル237.2部およびIPA200.5部を混合したものへ、得られたウレタンプレポリマーの溶液を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、固形分35%、重量平均分子量60000、ウレタン結合濃度={(198.55×75+66.21×278)×1000/(56100×359.9)=1.6mmol/gのウレタン樹脂Bを得た。
【0117】
(塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂溶液の調整)
水酸基を有する塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂(樹脂モノマー組成が重量%で塩化ビニル/酢酸ビニル/ビニルアルコール=92/3/5、水酸基価(mgKOH)=64)を酢酸エチルで15%溶液とし、これを塩酢ビ樹脂溶液とした。
【0118】
(ロジン変性フマル酸樹脂)
市販のロジン変性フマル酸樹脂(商品名:マルキード No.31、荒川化学工業株式会社製)50部を、イソプロピルアルコール50部に溶解させて固形分50%のロジン変性フマル酸樹脂溶液を得た。
【0119】
(実施例、比較例 リキッド印刷インキの製造方法)
合成済みのポリウレタン樹脂溶液等を用い、表1に記載の配合比率で混合した混合物を、マイティーミル(株式会社井上製作所製)を用いて混練し、実施例1~18及び比較例1~2に記載の白インキを調製し、各々について以下の評価を実施した。
【0120】
なお、各表において、バインダー樹脂の割合は固形分割合で示した。また、白色顔料は、アルミナ及びシリカで表面処理された酸化チタン顔料(R-780、石原産業(株)製)を用いた。また、有機溶剤は、酢酸エチル:酢酸プロピル:イソプロピロアルコールの質量比率が4:2:2の混合有機溶剤を用いた。
【0121】
〔印刷物の製造方法〕
得られたリキッド印刷インキの粘度を酢酸エチル/イソプロピルアルコール=80/20の混合有機溶剤でザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整した。調整後のインキを、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア校正機により、片面にコロナ処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、OPPフィルム、東洋紡績株式会社製)、及び片面にコロナ処理を施した二軸延伸ポリエステルフィルム(以下、PETフィルム、東洋紡績株式会社製 E-5100 厚さ12μm)のコロナ処理面へ印刷して、乾燥し、PETフィルム印刷物を得た。
【0122】
[印刷適性総合評価]
印刷適性総合評価は、版カブリとドクター上インキ固形物由来の筋汚れの評価結果に基づき、◎が2点、〇が1点、△が0点とした合計得点で評価した。
【0123】
(版カブリ)
得られたリキッド印刷インキの粘度を酢酸エチル/イソプロピルアルコール=80/20の混合有機溶剤でザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整し、版深度30μmを有するレーザーグラビア版を取り付けたMD型グラビア印刷機(富士機械株式会社製)を用いて、片面にコロナ放電処理を施したPETフィルムの処理面に印刷を行った。グラビア版の円周600mmφで印刷速度200m/minで印刷した際のハイライト非印刷部分の汚れ度合い(版かぶり度)を目視評価した。
【0124】
(評価基準)
◎:非印刷部分に汚れが全く無い
〇:非印刷部分に汚れが僅かにある
△:非印刷部分の汚れが顕著である
【0125】
(ドクター上インキ固形物由来の筋汚れ)
前記版カブリと同様のPETフィルム印刷物において、印刷部分へのインキの筋状汚れの発生を評価した。
【0126】
(評価基準)
◎:筋状の汚れが全く無い
〇:筋状の汚れが僅かにある
△:筋状の汚れが顕著である
【0127】
(再溶解性)
得られたリキッド印刷インキの粘度を酢酸エチル/イソプロピルアルコール=80/20の混合有機溶剤でザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整した。調整後のインキを、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア校正機により、片面にコロナ処理を施した二軸延伸ポリエステルフィルム(以下、PETフィルム、東洋紡績株式会社製 E-5100 厚さ12μm)のコロナ処理面へ印刷して、乾燥し、PETフィルム印刷物を得た。
【0128】
酢酸エチル/イソプロピルアルコール=80/20の混合有機溶剤を1Lステンレス容器に500ml入れ、そこに先ほどのPETフィルム印刷物の印刷部分半分を混合有機溶剤に10秒から60秒浸漬し、その後混合有機溶剤から取り出し、インキの溶け具合を目視で判定した。
【0129】
(評価基準)
◎:印刷被膜がすべて溶け落ちる
〇:印刷被膜が50~80%溶け落ちる
△:印刷被膜が50%以下溶け落ちる
【0130】
(インキ皮張り)
印刷適性総合評価(版カブリとドクター上インキ固形物由来の筋汚れ)の評価時にインキパン中のインキ表層の皮張りを目視で判定した。
【0131】
(評価基準)
◎:表面に皮(膜)が全く無い
〇:表面に薄い膜が僅かにある
△:表面全体に膜が張っている
【0132】
(透明蒸着フィルムへの密着性)
リキッド印刷インキの粘度を酢酸エチル/イソプロピルアルコール=80/20の混合有機溶剤でザーンカップ#3(離合社製)で16秒(25℃)に調整した。調整後のインキを、版深30μmのグラビア版を備えたグラビア校正機により、蒸着フィルム(凸版印刷(株)製 酸化アルミニウム蒸着透明PETフィルム GL-ARH-F(厚み:12μm)へ印刷して、乾燥し、蒸着フィルム印刷物を得た。
【0133】
得られた蒸着フィルム印刷物を印刷直後に、印刷面にセロハンテープ(ニチバン製12mm幅)を貼り付け、これをゆっくり剥がしたときの印刷皮膜の外観の状態を目視判定した。
【0134】
(評価基準)
◎:印刷皮膜が全く剥がれなかった。
【0135】
〇:印刷皮膜の50~80%がフィルムに残った。
【0136】
△:印刷皮膜の50%以下がフィルムに残った。
【0137】
(ラミネート強度)
前記版カブリと同様のPETフィルム印刷物において、印刷物の印刷面に、ウレタン系のドライラミネート接着剤ディックドライLX-703VL/KR-90(DIC製)にてドライラミネート機(DICエンジニアリング製)を塗工し、接着剤塗工面に無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、R-CPP:東レ合成フィルム社製 ZK-75 50μm)を積層させた。その後40℃で5日間エージングを施しラミネート物を得た。
得られたラミネート物を15mm幅に切り出し、引っ張り速度300mm/分で90度の剥離試験を行った。
【0138】
(評価基準)
◎:ラミネート強度が4N/15mm以上である。
【0139】
〇:ラミネート強度が2N/15mm以上~4N/15mm未満である。
【0140】
△:ラミネート強度が2N/15mm未満である。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】
【0145】
実施例及び比較例より、実施例に示す本発明のリキッドインキ組成物は優れた印刷適性を有し、且つ、透明蒸着フィルムに対する密着性及びラミネート強度においても優れた結果が得られた。
【0146】
実施例3より、ウレタン樹脂(B)の量が増えると版カブリが改善し、透明蒸着フィルムに対する密着性が向上することがわかった。また、実施例6~8より、水の割合が多く、また、分散剤の量が少ないほど版カブリの改善に効果があることがわかった。また、実施例16~18より、ロジン樹脂の量が多いほど筋汚れが改善し、ラミネート強度も向上することがわかった。