(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081284
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ネジ締結体緩み監視システム及びネジ締結体緩み監視装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G01N27/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194798
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】514221115
【氏名又は名称】株式会社イーガルド
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 唯義
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA09
2G060AF10
2G060AG11
2G060EA06
2G060EB07
2G060HC15
2G060KA09
(57)【要約】
【課題】点検時の作業負担を増大させることなく低コストにネジ締結体に発生した回転緩みを検査者の習熟度に依存することなく高精度に繰り返し検査可能なネジ締結体緩み監視システム等を提供する。
【解決手段】ネジ締結体を構成する雄ネジの頭部又は雌ネジに着脱可能に嵌合され、外周部に第1電極32が配設されるとともに自部材の嵌合されたネジの回転に合わせて回転するキャップ部材31と、キャップ部材31の外周部近傍に設置され、第1電極32と相対する位置に配設された第2電極34を有する壁部材33により可変コンデンサ30を構築し、キャップ部材31の回転に伴い第1電極32と第2電極34の相対する領域の面積変化に伴う静電容量値の変化を静電容量センサタグ10により検知し、静電容量値の検知結果に基づきネジ締結体20に発生した回転緩みの状態を情報処理装置50にて判定し、判定結果を検査者に報知する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象となる少なくとも1のネジ締結体に発生した回転緩みを監視するためのネジ締結体緩み監視システムであって、
前記ネジ締結体を構成する雄ネジの頭部又は雌ネジに脱着可能に嵌合され、外周部に少なくとも1の移動電極が配設されるとともに、自部材に嵌合されたネジの回転に合わせて回転する第1部材と、前記第1部材の外周部近傍に設置され、前記移動電極と相対する位置に配設された少なくとも1つの不動電極が設けられた第2部材と、により構築され、前記第1部材の回転に伴う前記移動電極及び不動電極の相対する領域の面積変化に伴って静電容量が変化する可変コンデンサと、
前記可変コンデンサの静電容量を検知して出力する静電容量センサと、
(1)前記静電容量センサにて検知された前記可変コンデンサの静電容量と、(2)前記静電容量と前記ネジ締結体の回転角の関係を規定した基準データと、に基づき当該ネジ締結体に発生した回転緩みの状態を監視し、検査者に回転緩みの発生状態を報知する監視装置と、
を有するネジ締結体緩み監視システム。
【請求項2】
前記監視装置が、
前記静電容量センサにて検知された前記可変コンデンサの静電容量を前記基準データとしての閾値と比較し、当該比較結果に応じて当該ネジ締結体に回転緩みが発生しているか否かを判定して、当該判定結果を出力する、請求項1に記載のネジ締結体緩み監視システム。
【請求項3】
前記監視装置が、
前記静電容量センサにて検知された前記可変コンデンサの静電容量を前記基準データと比較することにより前記ネジ締結体の回転角を特定して、当該特定した回転角を出力し、又は、当該特定した回転角を日時情報と紐付けつつ回転状態履歴情報として後に利用可能に蓄積する、請求項1に記載のネジ締結体緩み監視システム。
【請求項4】
前記静電容量センサが、
RFIDタグとして構成され、前記可変コンデンサの静電容量の検知結果を無線にて前記監視装置に送信する、請求項1~3のいずれか1項に記載のネジ締結体緩み監視システム。
【請求項5】
前記静電容量センサが、
前記監視装置により送信された電磁波に基づき起電力を発生させ、当該電力を用いつつ、前記可変コンデンサの静電容量を検知するとともに、当該検知結果を無線にて前記監視装置に送信する請求項4に記載のネジ締結体緩み監視システム。
【請求項6】
前記静電容量センサが、
UHF帯、HF帯及びLF帯のいずれかの周波数帯域の前記電磁波により起電力を発生させるとともに、当該周波数帯域の電磁波により前記静電容量の検知結果を送信する、請求項5に記載のネジ締結体緩み監視システム。
【請求項7】
前記第2部材には、前記不動電極として、2つの電極が配置され、(1)一方の不動電極と、前記移動電極によって形成される第1コンデンサと(2)他方の不動電極と、前記移動電極により形成される第2コンデンサを直列に接続した形態にて前記可変コンデンサが構築される、請求項1~3のいずれか1項に記載のネジ締結体緩み監視システム。
【請求項8】
前記第2部材には、前記不動電極として、2つの電極が配置され、(1)一方の不動電極と、前記移動電極によって形成される第1コンデンサと(2)他方の不動電極と、前記移動電極により形成される第2コンデンサを直列に接続した形態にて前記可変コンデンサが構築される、請求項4に記載のネジ締結体緩み監視システム。
【請求項9】
前記第1部材には、前記移動電極として、2つの電極が配置され、(1)一方の移動電極と、前記不動電極によって形成される第3コンデンサと(2)他方の移動電極と、前記不動電極により形成される第4コンデンサを直列に接続した形態にて前記可変コンデンサが構築される、請求項1~3のいずれか1項に記載のネジ締結体緩み監視システム。
【請求項10】
前記第1部材には、前記移動電極として、2つの電極が配置され、(1)一方の移動電極と、前記不動電極によって形成される第3コンデンサと(2)他方の移動電極と、前記不動電極により形成される第4コンデンサを直列に接続した形態にて前記可変コンデンサが構築される、請求項4に記載のネジ締結体緩み監視システム。
【請求項11】
監視対象となるネジ締結体に発生した回転緩みを検知するため、当該ネジ締結体に設置されるネジ締結体監視装置であって、
当該ネジ締結体を構成する雄ネジの頭部又は雌ネジに脱着可能に嵌合され、外周部に少なくとも1の移動電極が配設されるとともに、自部材に嵌合されたネジの回転に合わせて回転する第1部材と、前記第1部材の外周部近傍に設置され、前記移動電極と相対する位置に配設された少なくとも1つの不動電極が設けられた第2部材と、により構築され、前記第1部材の回転に伴う前記移動電極及び不動電極の相対する領域の面積変化に伴って静電容量が変化する可変コンデンサと、
前記可変コンデンサの静電容量を検知する静電容量検知手段と、
前記静電容量の検知結果を、ネジ締結体の回転緩みを監視する監視装置に出力する出力手段と、
を有することを特徴とするネジ締結体監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやビス、ナット等のネジ締結体に発生した回転緩みを監視するネジ締結体緩み監視システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部材を締結して固定するためボルトやナット等のネジ締結体が広く利用されている。この種のネジ締結体は、微弱な振動やその他の原因により回転緩みが発生し、部材の固定力が低下する。特に、高速道路や橋梁、発電所、高層建築物等のインフラ設備に利用されるネジ締結体は、回転緩みに伴う固定力の低下が、大事故の発生原因になるため、定期的な保守点検によりネジ締結体に発生した回転緩みを検査し、締め直しを行うことが非常に重要となる。従来、この種の検査は、一般に打音検査によって実施されている。
【0003】
しかしながら、打音検査は、その性質上、ネジをハンマー等で叩かなければならない。このため、検査者は実際にネジの近くまで行く必要があり、足場のない場所であれば足場を組む必要がある。また、高所での作業も考えられ、その場合は危険も伴う。さらに、打音検査は、熟練した技能を有する検査者でなければ高精度な検査を実施することが難しく、検査者の育成に多大な時間と労力が必要となり、検査者が不足する事態になっている。特に、現代の少子高齢化社会においては、今後、熟練した検査者の確保が難しくなることが想定される。
【0004】
このため、最近では、ネジ締結体にRFID(Radio Frequency Identification)用のIC(Integrated Circuit)タグ(「RFIDタグ」ともいう。)を貼付し、RFIDタグを用いてネジ締結体に発生した回転緩みを検知し、非接触にて監視するためのシステムも提案されている(例えば、特許文献1及び2)
【0005】
この検査システムにおいては、構造物の座面とボルト頭部との間の境界を跨ぐように座面及びボルト頭部にRFIDタグのベースシートを貼り付けて、ボルトの回転緩みに伴ってベースシートが破断した際に発生する電気特性の変化を、センサ機能を有するRFIDタグにより検知し、ネジ締結体に発生した回転緩みを検知するとともにRFIDタグから非接触にて情報を読み出し、ネジ締結体に発生した回転緩みを監視する構成が採用されている。この結果、熟練した検査者でなくとも容易に且つ確実にネジ締結体に発生した回転緩みを監視し、検査することが可能となる。
【0006】
また、最近では、非常に低消費電力にて静電容量値を計測可能な静電容量センサ機能付ICを搭載したRFIDタグも提案されている(例えば、特許文献3)。この静電容量センサを搭載したRFIDタグは、非常に低消費電力にて静電容量を検知可能なため、パッシブ型の駆動、通信形態を利用する場合であっても、静電容量値を精度よく検知することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-78611号公報
【特許文献2】特開2021-105589号公報
【特許文献3】特開2020-134354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の発明は、いずれもベースシートの破断に伴う電気特性の変化を検知する方法を採用するため、監視対象となるネジ締結体に対して施工時に貼付したベースシートが一度破断してしまうと、新たにベースシートを再設置しなければ、後に回転緩みを監視することができず、再設置の費用的、環境的コストが大きくなる。また、特許文献3に記載のRFIDタグをネジ締結体の回転緩み検知に利用するケースも想定されるが、このRFIDタグは、ネジ締結体の回転緩み検知にそのまま利用することが難しい。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、点検時の作業負担を増大させることなく低コストにネジ締結体に発生した回転緩みを検査者の習熟度に依存することなく高精度に繰り返し検査可能なネジ締結体緩み監視システム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上述した課題を解決するため、本発明に係るネジ締結体緩み監視システムは、監視対象となる少なくとも1のネジ締結体に発生した回転緩みを監視するためのネジ締結体緩み監視システムであって、前記ネジ締結体を構成する雄ネジの頭部又は雌ネジに脱着可能に嵌合され、外周部に少なくとも1の移動電極が配設されるとともに、自部材に嵌合されたネジの回転に合わせて回転する第1部材と、前記第1部材の外周部近傍に設置され、前記移動電極と相対する位置に配設された少なくとも1つの不動電極が設けられた第2部材と、により構築され、前記第1部材の回転に伴う前記移動電極及び不動電極の相対する領域の面積変化に伴って静電容量が変化する可変コンデンサと、前記可変コンデンサの静電容量を検知する静電容量センサと、(1)前記静電容量センサにて検知された前記可変コンデンサの静電容量と、(2)前記静電容量と前記ネジ締結体の回転角の関係を規定した基準データと、に基づき当該ネジ締結体に発生した回転緩みの状態を監視し、検査者に回転緩みの発生状態を報知する監視装置と、を有している。
【0011】
この構成により、本発明のネジ締結体緩み監視システムにおいては、監視対象となるネジ締結体に発生した回転緩みに伴って、雄ネジ頭部又は雌ネジに着脱可能に嵌合した第1部材が回転すると、不動電極と移動電極の相対する領域の面積が変化して移動電極及び不動電極により形成される可変コンデンサの静電容量が変化することとなる。そして、本発明のネジ締結体緩み監視システムにおいて監視装置は、(1)静電容量センサにて検知された前記可変コンデンサの静電容量と、(2)静電容量とネジ締結体の回転角の関係を規定した基準データと、に基づき当該ネジ締結体に発生した回転緩みを監視し、回転緩みの状態を検査者に提示することができる。
【0012】
この結果、本発明のネジ締結体緩み監視システムによれば、保守点検時の作業負担を増大させることなく、点検作業に不慣れな検査者であっても容易に且つ高精度にネジ締結体に発生した回転緩みを検査、点検することができる。また、第1部材は、監視対象となるネジ締結体の雄ネジ頭部又は雌ネジに脱着可能に嵌合しているので、回転緩みの検知されたネジ締結体に関しては、一度第1部材を取り外して、締め直しを行った後、再度、第1部材を雄ネジ頭部又は雌ネジに嵌合させつつ再設置して、第2部材を両面テープ等で再設置することにより、繰り返し回転緩みの発生状態を監視することができる。この結果、本構成によれば、点検時の作業負担を増大させることなく低コストにネジ締結体に発生した回転緩みを繰り返し検査することができる。また、第1部材をネジ締結体に嵌合させ、第2部材を周囲に設置する簡易な施工形態を実現して施工時のコストを削減できる。なお、可変コンデンサの具体的な構成及び監視装置においてネジ締結体に発生した回転緩みを監視する際の原理に関しては後に詳述する。また、監視装置により回転緩みの発生状態を監視するネジ締結体の数に関しては任意であり、監視装置により1のネジ締結体の回転緩みの発生状態のみを監視するようにしてもよく、複数のネジ締結体における回転緩みの発生状態を一元的に監視する構成としてもよい。
【0013】
(2)また、請求項2に記載のネジ締結体緩み監視システムは、請求項1に記載の構成において、前記監視装置が、前記静電容量センサにて検知された前記可変コンデンサの静電容量を前記基準データとしての閾値と比較し、当該比較結果に応じて当該ネジ締結体に回転緩みが発生しているか否かを判定して、当該判定結果を出力する構成を有する。
【0014】
本構成により、静電容量センサにより検知された可変コンデンサの静電容量を基準データにより示される閾値と比較することにより、監視対象となるネジ締結体に回転緩みが発生しているか否かを監視装置にて判定し、回転緩みの発生の有無を検査者に提示することができる。この結果、本構成によれば点検作業に不慣れな検査者であっても締め直しの要否を的確に判断できる。
【0015】
(3)また、請求項3に記載のネジ締結体緩み監視システムは、請求項1に記載の構成において、前記監視装置が、前記静電容量センサにて検知された前記可変コンデンサの静電容量を前記基準データと比較し、前記ネジ締結体の回転角を特定して、当該特定した回転角を出力し、又は、回転状態履歴情報として後に利用可能に蓄積する構成を有する。
【0016】
本構成により、本発明のネジ締結体緩み監視システムは、静電容量センサにて検知された可変コンデンサの静電容量と基準データに基づき、ネジ締結体の回転角を特定して検査者に提示し、又は、回転状態履歴情報を後に利用可能に蓄積できる。
【0017】
この結果、本発明のネジ締結体緩み監視システムによれば、検査者はネジ締結体にどの程度の回転緩みが発生しているのかを定量的に把握することが可能となり、回転緩みの経時的な進行状態に関しても把握可能となる。例えば、現在は10度緩んでいるが、6ヶ月前の回転角は5度だったので緩みが進行している等、回転緩みの進行状況を検査者が的確に把握可能になる。
【0018】
(4)また、請求項4に記載のネジ締結体緩み監視システムは、請求項1~3のいずれか1項に記載の構成において、前記静電容量センサが、RFIDタグとして構成され、前記可変コンデンサの静電容量の検知結果を無線にて前記監視装置に送信する構成を有する。
【0019】
本構成により、ネジ締結体に発生した回転緩みを無線により遠隔にて監視できるので、点検作業時に足場を組む等の作業が不要となる。特に、高所に設置されたネジ締結体の点検作業を行う際であっても点検作業に伴う危険の発生を回避しつつ、回転緩みの発生状況を遠隔にて安全に監視でき、点検作業時のコストと作業負担を大幅に削減することが可能になる。
【0020】
(5)また、請求項5に記載のネジ締結体緩み監視システムは、請求項4に記載の構成において、前記静電容量センサが、前記監視装置により送信された電磁波に基づき起電力を発生させ、当該電力を用いつつ、前記可変コンデンサの静電容量を検知するとともに、当該検知結果を無線にて前記監視装置に送信する構成を有する。
【0021】
本構成により、静電容量センサに電源を設ける必要性がなくなるので、静電容量センサの電池交換を行うことなく、ネジ締結体に発生した回転緩みを非常に長期間に渡って監視可能になり、システム運用時のランニングコストを大幅に低減することができる。
【0022】
(6)また、請求項6に記載のネジ締結体緩み監視システムは、請求項5に記載の構成において、前記静電容量センサが、UHF帯、HF帯及びLF帯のいずれかの周波数帯域の前記電磁波により起電力を発生させるとともに、当該周波数帯域の電磁波により前記静電容量の検知結果を送信する構成を有する。
【0023】
本構成により、一般的なパッシブ型の電波式RFIDタグとして静電容量センサを構成できるので、従来のパッシブ型RFID用のリーダ/ライタを利用しつつ、数十cm(センチメートル)~数十m程度の通信距離を確保し、低コストで遠隔による回転緩みの検査を高精度に且つ容易に実施することができる。
【0024】
(7)また、請求項7に記載のネジ締結体緩み監視システムは、請求項1~3のいずれか1項に記載の構成において前記第2部材には、前記不動電極として、2つの電極が配置され、(1)一方の不動電極と、前記移動電極によって形成される第1コンデンサと(2)他方の不動電極と、前記移動電極により形成される第2コンデンサを直列に接続した形態にて前記可変コンデンサが構築される構成を有する。
【0025】
本構成により、第2部材に配設された2つの不動電極に対して静電容量センサ基板を直接電気的に接続することにより、ネジ締結体に発生した回転緩みを検知できるので、静電容量センサ接続時の配線を省略し、配線接続に伴う寄生容量の影響を軽減しつつ、ネジ締結体に発生した回転緩みを高精度に検知することが可能となる。
【0026】
(8)また、請求項8に記載のネジ締結体緩み監視システムは、請求項4に記載の構成において、前記第2部材には、前記不動電極として、2つの電極が配置され、(1)一方の不動電極と、前記移動電極によって形成される第1コンデンサと(2)他方の不動電極と、前記移動電極により形成される第2コンデンサを直列に接続した形態にて前記可変コンデンサが形成される構成を有する。
【0027】
本構成により請求項7と同様の機能を実現できる。
【0028】
(9)また、請求項9に記載のネジ締結体緩み監視システムは、請求項1~3のいずれか1項に記載の構成において、前記第1部材には、前記移動電極として、2つの電極が配置され、(1)一方の移動電極と、前記不動電極によって形成される第3コンデンサと(2)他方の移動電極と、前記不動電極により形成される第4コンデンサを直列に接続した形態にて前記可変コンデンサが構築される構成を有する。
【0029】
本構成により、第1部材に配設された2つの移動電極に対して静電容量センサ基板を直接電気的に接続することにより、ネジ締結体に発生した回転緩みを検知できるので、静電容量センサ接続時の配線を省略し、配線接続に伴う寄生容量の影響を軽減しつつ、ネジ締結体に発生した回転緩みを高精度に検知することが可能となる。
【0030】
(10)また、請求項10に記載のネジ締結体緩み監視システムは、請求項4に記載の構成において、前記第1部材には、前記移動電極として、2つの電極が配置され、(1)一方の移動電極と、前記不動電極によって形成される第3コンデンサと(2)他方の移動電極と、前記不動電極により形成される第4コンデンサを直列に接続した形態にて前記可変コンデンサが構築される構成を有する。
【0031】
本構成により請求項9と同様の機能を実現できる。
【0032】
(11)また、本発明のネジ締結体監視装置は、監視対象となるネジ締結体に発生した回転緩みを検知するため、当該ネジ締結体に設置されるネジ締結体監視装置であって、当該ネジ締結体を構成する雄ネジの頭部又は雌ネジに脱着可能に嵌合され、外周部に少なくとも1の移動電極が配設されるとともに、自部材に嵌合されたネジの回転に合わせて回転する第1部材と、前記第1部材の外周部近傍に設置され、前記移動電極と相対する位置に配設された少なくとも1つの不動電極と、により構築され、前記第1部材の回転に伴う前記移動電極及び不動電極の相対する領域の面積変化に伴って静電容量が変化する可変コンデンサと、前記可変コンデンサの静電容量を検知する静電容量検知手段と、前記静電容量の検知結果を、ネジ締結体の回転緩みを監視する監視装置に出力する出力手段と、を有している。
【0033】
この構成により、本発明のネジ締結体緩み監視装置は、本発明のネジ締結体緩み監視システムと同様にネジ締結体に発生した回転緩みを可変コンデンサの静電容量に変換しつつ、回転緩みに対応した静電容量の検知結果を監視装置に出力することができる。監視装置は、この結果からネジ締結体に回転緩みが発生しているか否かを判定して、検査者に提示でき、点検作業時における作業負担を増大させることなく、低コストに、且つ、熟練した検査者でなくともネジ締結体に発生した回転緩みを繰り返し高精度に検査できる。なお、可変コンデンサと、静電容量検知手段及び出力手段とは、別体として構成してもよく、可変コンデンサ内に静電容量検知手段及び出力手段を構成する要素(例えば、後述するICチップ及びアンテナ)を内蔵する構成としてもよいが、この点については後述する。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るネジ締結体緩み監視システムは、点検時の作業負担を増大させることなく低コストにネジ締結体に発生した回転緩みを検査者の習熟度に依存することなく高精度に繰り返し検査可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明に係るネジ締結体緩み監視システムの第1実施形態における構成例を示すシステム構成図である。
【
図2】第1実施形態のネジ締結体緩み監視システムにおいて、回転緩みの監視対象となるネジ締結体と、当該ネジ締結体に配設される可変コンデンサの構成例を示す図であり、(A)には、実際に利用したネジ締結体(ダブルナット形式)の斜視図を示し、(B)には、ネジ締結体周りに設置する可変コンデンサ構成例の斜視図を示すとともに、(C)には、回転緩み検知時における可変コンデンサ設置例の斜視図を示している。
【
図3】第1実施形態の可変コンデンサを構成するキャップ部材の構成を示す図であり、(A)にはキャップ部材の斜視図、(B)には上面図、(C)には下面図、(D)には側面図を示している。
【
図4】第1実施形態の可変コンデンサを構成する壁部材の構成を示す図であり、(A)には壁部材の斜視図、(B)には上面図、(C)には下面図、(D)には側面図を示している。
【
図5】第1実施形態のネジ締結体緩み監視システムにおいて監視対象となるネジ締結体を構成するナットの回転角に応じたキャップ部材と、第1電極と、壁部材と、第2電極と、の位置関係を示すイメージ図であり、(A)~(D)には、各々、ナット及びこれに嵌合したキャップ部材の回転角が「0°」、「30°」、「60°」及び「90°」の各状態におけるキャップ部材と、壁部材と、第1電極及び第2電極の位置関係を示している。
【
図6】第1実施形態のネジ締結体緩み監視システムにおいて監視対象となるネジ締結体の回転角(上側のナット)と当該ネジ締結体に配設される可変コンデンサの静電容量計測値の関係を示すグラフである。
【
図7】第2実施形態のネジ締結体緩み監視システムにおいて回転緩みの監視対象となるネジ締結体に設置される可変コンデンサの構成及び可変コンデンサと静電容量センサタグの接続方法を示す図であり、(A)には、壁部材を適切な位置に設置する前の状態の可変コンデンサ構成例の斜視図を示し、(B)には、壁部材を適切な位置に設置した後の状態の可変コンデンサ構成例の斜視図を示すとともに、(C)には、ナットに回転緩みが発生した後の状態の斜視図を示している。
【
図8】第2実施形態の可変コンデンサとして形成される直列コンデンサの模式図であり、(A)には、ネジ締結体のダブルナットを構成する上側のナットに回転緩みが発生していない状態を示し、(B)には、上側のナットに回転緩みが発生した状態を示している。
【
図9】第2実施形態のネジ締結体緩み監視システムにおいて回転緩みの監視対象となる上側のナットの回転角に応じたキャップ部材と、第1電極と、壁部材と、第3電極と、第4電極と、の位置関係を示すイメージ図であり、(A)~(D)には、各々、上側のナット及びこれに嵌合したキャップ部材の回転量が「0°」、「15°」「30°」及び「45°」の各状態におけるキャップ部材と、壁部材と、第1電極と、第3電極と、第4電極と、の位置関係を示している。
【
図10】第2実施形態の可変コンデンサの静電容量計測値と上側のナットの回転角の関係を示すグラフである。
【
図11】第3実施形態のネジ締結体緩み監視システムにおいて回転緩みの監視対象となるネジ締結体に設置される可変コンデンサの構成及び可変コンデンサと静電容量センサタグの接続方法を示す図であり、(A)には、壁部材を適切な位置に設置する前の状態の可変コンデンサ構成例の斜視図を示し、(B)には、壁部材を適切な位置に設置した後の状態の可変コンデンサ構成例の斜視図を示すとともに、(C)には、ナットに回転緩みが発生した後の状態の斜視図を示している。
【
図12】第3実施形態の可変コンデンサとして形成される直列コンデンサの模式図であり、(A)には、ネジ締結体のダブルナットを構成する上側のナットに回転緩みが発生していない状態を示し、(B)には、上側のナットに回転緩みが発生した状態を示している。
【
図13】第3実施形態のネジ締結体緩み監視システムにおいて上側のナットの回転角に応じたキャップ部材と、第5電極と、第6電極と、壁部材と、第2電極と、の位置関係を示すイメージ図であり、(A)~(D)には、各々、上側のナット及びこれに嵌合したキャップ部材の回転角が「0°」、「15°」「30°」及び「45°」の各状態におけるキャップ部材と、第5電極と、第6電極と、壁部材と、第2電極と、の位置関係を示している。
【
図14】第3実施形態の可変コンデンサの静電容量計測値と上側のナットの回転角の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、各種インフラ設備に利用されるネジ締結体に発生した回転緩みを監視するためのシステムに対して本発明に係るネジ締結体緩み監視システムを適用した場合の実施形態である。但し、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、以下の実施形態で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。また、以下に説明する実施形態においては、インフラ設備に利用されるネジ締結体に発生した回転緩みを監視する場合を例に説明を行うが、本発明のネジ締結体緩み監視システムは、インフラ設備の他、鉄道車両や自動車、その他ネジ締結体を利用して部材同士を締結する全ての構造物に適用可能である。
【0037】
[A]第1実施形態
[A1]ネジ締結体緩み監視システム1の概要
まず、
図1及び2を用いつつ、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1の概要及び構成について説明する。なお、
図1は、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1の構成例を示すシステム構成図であり、
図2は、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1において監視対象となるネジ締結体20と、当該ネジ締結体20に配設される可変コンデンサ30の構成例を示す図である。また、
図2において、(A)には、回転緩みの検知に実際に利用したネジ締結体20の斜視図を示し、(B)には、ネジ締結体20の周りに設置する可変コンデンサ30の構成例の斜視図を示すとともに、(C)には、ネジ締結体20に発生した回転緩みを実際に検知する際における可変コンデンサ30の設置例の斜視図を示している。なお、
図2においては、説明の理解を容易化するため、(i)構造物の床面21に固定されたボルト22と、(ii)上側のナット23A及び下側のナット23Bにより構成されるダブルナット形式のナット23(以下、上下のナットを特に特定する必要がない場合「ナット23」という。)と、を有するネジ締結体20に発生した回転緩みを検知する場合の例を示しているが、回転緩みの検知対象となる具体的なネジ締結体に関しては任意であり、シングルナット形式のネジ締結体や単純なボルト、ビス等のネジ締結体に発生した回転緩みを検知する構成にしてもよい。但し、本実施形態においては
図2(A)に示す六角ダブルナット形式のネジ締結体20に発生した回転緩みを検知するものとして説明を行い、他の構成のネジ締結体に生じた回転緩みを検知する手法については変形例の項にて説明する。
【0038】
図1に示すように本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1は、(a)パッシブ型のRFIDタグとして構成される静電容量センサタグ10と、(b)ネジ締結体20を構成するナット23の回転角に応じて静電容量が変化する可変コンデンサ30と、(c)パッシブ型のRFID用のリーダ/ライタ40と、(d)PC(パーソナルコンピュータ)やスマートフォン、タブレット型情報通信端末装置等の情報処理装置50と、を有し、ネジ締結体20のナット23に発生した回転緩みを検知するためのものである。なお、可変コンデンサ30の構成については後に詳述する。また、静電容量センサタグ10は、アクティブ型、パッシブ型、セミアクティブ型、セミパッシブ型のいずれの駆動方式のものを利用してもよいが、本実施形態においてはパッシブ型の駆動方式のものを利用するものとして説明を行い、アクティブ型やセミアクティブ型の駆動方式を採用する場合については、変形例の項にて説明を行う。この構成により、静電容量センサタグ10に電源を設ける必要性がなくなるので、静電容量センサタグ10の電池交換を行うことなく、ネジ締結体20に発生した回転緩みを非常に長期間に渡って検知可能になり、システム運用時のランニングコストを大幅に低減することができる。なお、アクティブ型、パッシブ型、セミアクティブ型、セミパッシブ型の各RFID自体は、従来のRFIDシステムと同様であるため、詳細を省略する。また、例えば、本実施形態の静電容量センサタグ10は、本発明の「静電容量センサ」を構成するとともに、情報処理装置50は、RFIDリーダ/ライタ40と連動して、「監視装置」を構成する。
【0039】
ここで、上記従来のネジ締結体緩み監視システム(例えば特許文献1及び2)においては、RFIDタグのベースシートをネジ締結体の雄ネジ頭部に貼付して、ベースシートの破断に伴う電気特性の変化に基づき、回転緩みを検知する構成を採用していた。このため、このシステムでは回転緩みの発生によってベースシートが一度破断してしまうと、新たにベースシートを再設置しなければ、後に発生した回転緩みを監視することが不可能となり、再設置時の費用的、環境的コストが大きくなる。
【0040】
そこで、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1においては、ネジ締結体20を構成するダブルナット形式のナット23の内、上側のナット23Aに対してナット23の回転角に応じて静電容量が変化する可変コンデンサ30を設置し、この可変コンデンサ30の静電容量を静電容量センサタグ10により検出(計測)して、出力する構成を採用する。そして、当該出力された検出結果をRFIDリーダ/ライタ40を用いて情報処理装置50が読み出すことにより、情報処理装置50にてナット23に発生した回転緩みの状態を監視する構成を採用することとした。なお、可変コンデンサ30の静電容量変化に基づきナット23の回転角を検知する際の原理及びナット23の回転角と可変コンデンサ30の静電容量の関係については後に詳述する。
【0041】
[A2]可変コンデンサ30の構成
次いで、
図2~4を用いて、本実施形態の可変コンデンサ30の構成について説明する。なお、
図3及び4は、各々、本実施形態の可変コンデンサ30を構成するキャップ部材31及び壁部材33の一構成例を示す図であり、各々、(A)には斜視図、(B)には上面図、(C)には下面図、(D)には側面図を示している。
【0042】
図2~4に示すように、本実施形態の可変コンデンサ30は、(1)厚さ数mm(ミリメートル)程度の円筒形の樹脂(絶縁体)により構成され、円筒内径がネジ締結体20を構成するナット23よりも大きく設定されるとともに(
図3(C)参照)、円筒上部の中心軸周りに上側のナット23Aの外周よりも若干大きな六角形の嵌合孔311(
図3(B)参照)が設けられ、上側のナット23Aに着脱可能に嵌合される構成を有し、外周部に薄い金属板(例えば、0.1~0.5mm程度の厚さの金属板)により構成される第1電極32が配設されたキャップ部材31と、(2)
図4(A)、(B)及び(C)に示すようにキャップ部材31の外周よりも若干径の大きな円弧形状を有する厚さ数mm程度の樹脂(絶縁体)により構成されるとともに、
図2(B)及び(C)に示すようにキャップ部材31の外周部側に設置され、キャップ部材31の外周部と相対する面(すなわち、円弧内周面)に第1電極32と同様、薄い金属板にて構成される第2電極34が配設された壁部材33(
図4(D)参照)と、によって構成され、壁部材33を、
図2(C)に示すようにキャップ部材31に対して所定の間隔(1mm程度)を持たせつつキャップ部材31に被せるように設置して構築される。このとき、壁部材33は、回転緩みの発生していない状態の上側のナット23Aに嵌合したキャップ部材31に設けられた第1電極32と第2電極34が相対した状態にて完全に重なり合った状態になるようにキャップ部材31の外周部に固定して設置される(
図2(C)及び
図5(A)参照)。本構成により、キャップ部材31側の第1電極32及びこれに相対して設置される壁部材33側の第2電極34によって可変コンデンサ30が形成されることとなる。なお、例えば、本実施形態のキャップ部材31及び壁部材33は、各々、本発明の「第1部材」及び「第2部材」を構成するとともに、第1電極32及び第2電極34は、各々、「移動電極」及び「不動電極」を構成する。また、
図3においてはキャップ部材31を円筒形状とする場合の構成例を示したが、キャップ部材31は対象となるネジ締結体20の形状に応じて、例えば、六角柱等の形状を採用することも可能である。
【0043】
また、本実施形態において、第1電極32及び第2電極34には、各々、静電容量センサタグ10の第1入力端子11A及び第2入力端子11Bが電気的に接続され、静電容量センサタグ10は、第1及び第2入力端子11A及び11B間に接続された可変コンデンサ30の静電容量を計測して、RFIDリーダ/ライタ40を介して情報処理装置50に送信(出力)する構成になっている。係る可変コンデンサ30及び静電容量センサタグ10の機能により本発明の「ネジ締結体監視装置」が実現される。なお、例えば、本実施形態の静電容量センサタグ10に内蔵されるICチップは、本発明の「静電容量検知手段」を構成するとともに、ICチップ及びアンテナは、RFIDリーダ/ライタ40と連動して、「出力手段」を構成する。また、静電容量センサタグ10の第1及び第2入力端子11A及び11Bに対して第1電極32及び第2電極34を接続する具体的な手法は任意であり、
図2(C)に例示するようにワニ口式のクリップ及び導電性ワイヤにより構成される配線を用いて接続する構成にしてもよい。
【0044】
そして、本実施形態においては、上側のナット23Aの回転緩みに伴って、これに嵌合したキャップ部材31が回転すると、キャップ部材31とともに第1電極32の位置が変化し、第1電極32と第2電極34の相対する領域(すなわち、両電極32及び34の重なる部分)の面積が変化して、可変コンデンサ30の静電容量が変化する構成となっている(
図5参照)。なお、キャップ部材31は、ネジ締結体20を構成する2つのナット23A及び23Bのいずれに設けてもよいが、通常、ダブルナット形式のナット23が緩む場合、上側のナット23Aが回転した場合にネジ締結体20全体の回転緩みが発生するため、本実施形態においては上側のナット23Aに第1電極32の配設されたキャップ部材31を着脱可能に嵌合させ、上側のナット23Aの回転緩みを検知するものとして説明を行う。また、キャップ部材31及び壁部材33に配置する第1電極32及び第2電極34のキャップ部材31外周方向に対する長さ(横幅)は任意であり、検知する上側ナット23Aの回転角の上限に応じて適切な長さを設定するようにすればよい。但し、本実施形態においては、説明を具体化するため、上側のナット23Aの回転角を「90°」まで検知可能とするため、第1電極32及び第2電極34は各々適切な長さに設定されているものとして説明を行う。また、第1電極32及び第2電極34の長さがキャップ部材31の「180°」以上を覆ってしまうと、ネジ締結体20が緩んだ際に後ろが重なり出して、静電容量が単調に減少しなくなる。このため、最大でも「180°」以下となるように長さを設定することが必要となる。さらに、壁部材33は、
図2及び4に示すようにキャップ部材31の外周の一部分(例えば、90°~135程度)を覆う大きさの円弧形状としてもよく、キャップ部材31の周囲360°を一周するように囲う円筒形の構成を採用してもよい(図示はしない)。前者(
図2及び4のような円弧形状)の構成(以下「構成A」ともいう。)を採用する場合、壁部材33の構成を簡略化して、壁部材33の製造コストを削減しつつ所望の機能を実現できるとともに、ネジ締結体20に可変コンデンサ30を設置する際の自由度を向上させることができる。但し、可変コンデンサ30を適切に構成するためには、第1電極32と第2電極34が電気的に接触しないことが必要となるため、構成Aを採用する場合、壁部材33の固定設置に当たって、電極同士の接触を防止するため適宜テープ等で絶縁することが望ましい。
【0045】
一方、後者(円筒形状)の構成(以下「構成B」ともいう。)を採用する場合、キャップ部材31を囲むように設置される壁部材33の円筒内周面に第2電極34を配設して、壁部材33の設置時に、壁部材33の内周側の空間において第1電極32と第2電極34を1mm程度の間隔を持って相対させる必要がある。このため、構成Bを採用する場合、壁部材33の内径は、キャップ部材31の外径よりも1.2~2mm(すなわち、第1電極32及び第2電極34の2電極分の厚さ(0.2~1mm程度)に電極間距離として設定する1mm程度の値を加算した値)程度大きく設定することが必要になる。なお、構成Bを採用する場合であっても、(a)回転緩みの発生していない状態の上側ナット23Aに嵌合したキャップ部材31に設けられた第1電極32と、(b)壁部材33の円筒内周面に配設された第2電極34と、が完全に重なるように壁部材33を回転させつつ、電極の位置合わせを行って、壁部材33を設置する必要がある点は、構成Aを採用する場合と同様である。また、構成Bを採用した場合においても構成Aと同様に電極同士の接触を防止するため適宜テープ等で絶縁することが望ましい。
【0046】
この構成Bにより、キャップ部材31の外周側に壁部材33を上から被せるだけで、キャップ部材31の外周面に設置された第1電極32と、壁部材33の内周面に設けられた第2電極34の電極間距離を適切に調整しつつ、壁部材33の内周側の空間に第1電極32と第2電極34によって可変コンデンサ30を構築できる。この結果、この構成Bによれば、キャップ部材31に対して壁部材33を設置する際の作業負担を軽減し、可変コンデンサ30の設置作業を簡略化できるとともに、ネジ締結体20の締め直し後における可変コンデンサ30の再設置時における作業負担を軽減できる。なお、構成Bを採用する場合であっても第1電極32及び第2電極34は、構成Aを採用する場合と同じ横幅のものを利用するようにすれば、壁部材33の構成の違いに依存せず、例えば「90°」まで上側のナット23Aの回転角を検知することが可能となる。
【0047】
[A2]ナット23の回転角の検知原理について
次いで、
図5及び6を用いつつ、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1において、上側のナット23Aの回転角を検知する原理について説明する。なお、
図5は、上側のナット23Aの回転角に応じたキャップ部材31と、第1電極32と、壁部材33と、第2電極34と、の位置関係を示すイメージ図であり、(A)~(D)には、各々、上側のナット23A及びこれに嵌合したキャップ部材31の回転量が「0°」、「30°」、「60°」及び「90°」の各状態におけるキャップ部材31と、壁部材33と、第1電極32及び第2電極34の位置関係を示している。また、
図6は、上側のナット23Aの回転角と可変コンデンサ30の静電容量計測値の関係を示すグラフである。さらに、
図5においては、上記構成Aを採用した場合におけるキャップ部材31と、第1電極32と、壁部材33と、第2電極34と、の位置関係を示しているが、構成Bを採用した場合においても、所定の厚みを有する円筒形の壁部材33がキャップ部材31の外周面を360°に渡って一周囲む形となる点以外は、同様であるため、構成Bを採用する場合の位置関係に関しては図示を省略している。
【0048】
図5(A)に示すように、上側のナット23A及びこれに嵌合したキャップ部材31の回転角が「0°」の状態においては、構成A及びBのいずれの構成を採用した場合であっても第1電極32と第2電極34が所定距離(すなわち、キャップ部材31と壁部材33の相対する距離=「1mm」程度)を空けた状態で完全に重なり合い、重なり合っている領域の面積が最大の状態になる。その後、振動等の要因によって、上側のナット23Aが回転を始めると、構成A及びBのいずれの構成を採用した場合であっても、徐々に両電極32及び34の重なる領域の面積が減少し、回転角が検知範囲上限である「90°」となった時点で第1電極32及び第2電極34の重なる領域がなくなる。このとき、第1電極32及び第2電極34は平板コンデンサを構成することから、可変コンデンサ30の静電容量値は、平板コンデンサの静電容量に関する以下の式1により定義できる。
【0049】
【数1】
なお、式1において、「ε」は、誘電率であり、本実施形態においては、第1電極32及び第2電極34間に空気が介在する形になるため、誘電率「ε」は、真空の誘電率「ε
0=8.85×10
-12(F/m)」とほぼ等しい値になる。また、式1において「d」は電極間距離を示し、本実施形態においては、「1mm」程度に設定される。さらに、式1において「S」は平板コンデンサを構成する第1電極32及び第2電極34の重なり合っている領域の面積に相当する。
【0050】
ここで、本実施形態において誘電率「ε」及び電極間距離「d」は、一定値にて固定されて変化しないことから、可変コンデンサ30の静電容量値は、第1電極32及び第2電極34の重なり合っている領域の面積に比例し、上側のナット23A及びキャップ部材31の回転に伴う当該領域の面積変化に応じて可変コンデンサ30の静電容量値が変化することが分かる。
【0051】
実際に、
図2(A)に示すネジ締結体20を構成する上側のナット23Aに対して、
図2(C)に示す構成にて第1電極32を設けたキャップ部材31と、第2電極34を設けた壁部材33を設置し、静電容量センサタグ10を用いて静電容量値の変化状態を観察したところ、
図6のような結果が得られた。なお、
図6においては、縦軸に静電容量の計測値、横軸に上側ナット23A及びキャップ部材31の回転角を示している。本試験においては、ダブルナット形式のナット23を完全に締めた後、第1電極32と第2電極34が完全に重なるようにキャップ部材31及び壁部材33を設置した(
図5(A)参照)。そのため、上側のナット23Aが回転していない状態にて検知される静電容量が最大となり、このときの静電容量の計測値が約「34pF(ピコファラド)」となった。
【0052】
ネジ締結体20の回転緩みを模して、上側のナット23Aが回転すると、
図5(B)及び(C)に示すように第1電極32と第2電極34の重なる領域の面積が徐々に減少し、それに伴って検知される静電容量値も
図6のように減少することが確認された。本試験においては上側のナット23Aの回転角の検知範囲上限を「90°」とするためキャップ部材31及び壁部材33を電極が覆っている角度を「90°」としている。このため、ナット23の回転角が検知範囲上限である「90°」を超えると、
図5(D)に示すように第1電極32及び第2電極34の重なる領域がなくなり、検知される静電容量値は、「6~7pF」から変化しなくなった(
図6参照)。なお、電極の重なる領域がなくなった後に見える静電容量は、配線等に起因する寄生容量である。また、本試験においては、上記構成Aを採用しつつ、可変コンデンサ30の静電容量変化を検知したが、可変コンデンサ30の静電容量は、式1に示すように第1電極32と第2電極34の相対する領域の面積に比例し、構成A及びBのいずれを採用した場合であっても両電極32及び34の相対する領域の面積変化は同様になることから、構成Bを採用した場合においても
図6と同様の結果が得られることが分かっている。
【0053】
本実施形態においては、以上の原理に基づき、回転緩みに起因する上側のナット23Aの回転角を静電容量値に変換しつつ、当該静電容量値を静電容量センサタグ10により検知する。そして、当該検知結果をRFIDリーダ/ライタ40により遠隔で読み出すとともに、(1)当該検知された静電容量値と、(2)予め計測した計測値(
図6参照)に対応する基準データを情報処理装置50にて比較することにより、上側のナット23Aに発生した回転緩みの状態を監視する手法を採用する。
【0054】
本構成によれば、回転緩みの監視中にネジ締結体20の締め直しが必要となるレベルの回転緩みが検出された際に、ナット23からキャップ部材31及び壁部材33を一時的に取り外し、ナット23を締め直した後、再度キャップ部材31を嵌合させ、壁部材33を両面テープ等の容易に再設置可能な方法にて再設置するだけでナット23に発生した回転緩みを繰り返し、高精度に検知しつつ監視することができる。なお、構成Bを採用する場合には、締め直した上側のナット23Aに再度嵌合させたキャップ部材31に円筒形の壁部材33を単に上から被せて第1電極32と第2電極34が完全に重なるように位置合わせを行った後、床面21に壁部材33を固定するだけで、自動的に電極間距離が所望の距離に設定されるため、非常に容易に可変コンデンサ30を再設置することができ、締め直し作業後における可変コンデンサ30再設置時の作業負担を軽減できる。この結果、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1によればシステム運用時のランニングコストを大幅に削減することができる。また、可変コンデンサ30をネジ締結体20に設置する施工作業自体がキャップ部材31の嵌合及び壁部材33の固定のみで実施できるため、施工の容易性と低コスト化を実現できる。
【0055】
さらに、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1は、静電容量センサタグ10としてパッシブ型のRFIDタグを用いているため、施工後にタグの電源交換などを行うことなく非常に長期間に渡って、ネジ締結体20に発生した回転緩みを繰り返し検知し、監視することができ、施工後のランニングコストを大幅に低減できる。また、ネジ締結体20の回転緩みを無線にて検知できるので、熟練の検査者でなくても容易に、且つ、高精度にネジ締結体20に発生した回転緩みを遠隔にて検査して、事故の発生を未然に防止することが可能となる。特に、検査対象となるネジ締結体20が高所に設置されている場合、点検作業のために足場を組むことが必要となる上に、高所作業になるので検査者が危険にさらされる可能性があるが、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1によれば、遠隔にてネジ締結体20に発生した回転緩みを監視できるので、足場が不要になるとともに、点検作業時における検査者の安全を確保することが可能になる。
【0056】
[A3]ネジ締結体緩み監視システム1各部の構成
静電容量センサタグ10は、第1及び第2入力端子11A及び11Bに接続された可変コンデンサ30の静電容量値を検知する処理を実行する図示せぬIC(Integrated Circuit)チップを内蔵するとともに、ダイポールアンテナやスロットアンテナ等のUHF(Ultra High Frequency)帯(300MHz~3GHz程度の周波数帯域)の電磁波を送受信するためのアンテナ、又は、ループコイルアンテナ等のHF(High Frequency)帯(3~30MHz程度の周波数帯域)やLF帯(30kHz~300kHz程度の周波数帯域)の電磁波を送受信するための図示せぬアンテナを内蔵しており、RFIDリーダ/ライタ40から供給される電磁波に基づき起電力を発生させる構成を有している。
【0057】
そして、静電容量センサタグ10は、当該発生させた起電力を用いて可変コンデンサ30の静電容量値を検知して、当該検知結果を示す検知データをRFIDリーダ/ライタ40に送信する構成になっている。なお、静電容量センサタグ10の具体的な構成は、従来の静電容量センサ機能を持つRFIDタグ(例えば、特許文献3)と同様であるため、詳細を省略する。
【0058】
RFIDリーダ/ライタ40は、USB(Universal Serial Bus)等の有線インターフェースやBluetooth(登録商標)等の無線インターフェースを搭載したRFIDのリーダ/ライタであり、情報処理装置50による制御の下、電磁波(すなわち、静電容量センサタグ10を駆動させ、検知データを取得するために利用するUHF帯、HF帯及びLF帯のいずれかの周波数帯の電磁波)を送受信することにより、静電容量センサタグ10を駆動させつつ、静電容量センサタグ10にて検知された可変コンデンサ30の静電容量値の検知結果を示す検知データを取得して、情報処理装置50に供給する。なお、RFIDリーダ/ライタ40の構成は従来のパッシブ型RFID用のリーダ/ライタと同様である。
【0059】
情報処理装置50は、図示せぬディスプレイやキーボード、マウス、ディスプレイ上に配設されたタッチパネル、スピーカ等を有し、RFIDリーダ/ライタ40を制御しつつ、静電容量センサタグ10から検知データを取得して、ネジ締結体20に発生した回転緩みの状態を監視して、回転緩みの発生状態を音声及び画像の少なくとも一方を用いて検査者に報知する機能を有する。なお、情報処理装置50により回転緩みの発生状態を監視するネジ締結体20の数に関しては任意であり、情報処理装置50により、1つのネジ締結体20のみを監視する構成としてもよく、複数のネジ締結体20を監視対象とするようにしてもよい。但し、本実施形態においては説明の理解を容易化するため、1つのネジ締結体20のみを監視対象とするものとして説明を行い、複数のネジ締結体20を監視対象とする場合については、変形例の項にて詳述する。
【0060】
係る機能を実現するため、本実施形態においては、まず、ネジ締結体20の回転緩みがない状態(例えば、施工時の上側ナット23Aが締まっている状態)から徐々に上側ナット23Aを回転させつつ、変化する可変コンデンサ30の静電容量値を静電容量センサタグ10により検知するとともに、RFIDリーダ/ライタ40により静電容量値の検知結果を読み出して、上側ナット23Aの回転角と静電容量値の変化状態の関係を示す基準データ(すなわち、
図6のグラフに対応するデータ)を予め取得し、情報処理装置50の図示せぬ記憶部上に記憶しておく構成になっている。
【0061】
そして、情報処理装置50は、インフラ設備施工後の定期点検時に、(1)静電容量センサタグ10により検知される可変コンデンサ30の静電容量値と、(2)自機(すなわち、情報処理装置50)に記憶済の基準データと、に基づき、監視対象となるネジ締結体20に発生した回転緩みの状態を監視する構成になっている。なお、情報処理装置50において静電容量計測値と基準データに基づき、ネジ締結体20に発生した回転緩みの状態を監視する手法としては、以下の2通りの手法を採用することができる。
【0062】
(監視手法1)
本手法は、ネジ締結体20の締め直しが必要となる回転角に対応する静電容量値を閾値として予め設定するとともに、当該閾値を示す基準データを情報処理装置50に予め記憶しておく方法である。本手法を採用する場合、情報処理装置50が、(1)自機に予め記憶された基準データに対応する閾値と、(2)点検時に、静電容量センサタグ10により検知される可変コンデンサ30の静電容量値と、を比較する構成とする。また、この場合に情報処理装置50は、静電容量センサタグ10により検知される静電容量値が当該基準データにより示される閾値を下回っている場合に、締め直しの必要な回転緩みがネジ締結体20に発生しているものと判定する。そして、締め直しの必要な回転緩みが発生しているものと判定した場合に、情報処理装置50が音声及び画像の少なくとも一方を用いて検査者にネジ締結体20の締め直しを指示する構成にすればよい。ここで、ネジ締結体の回転緩みによる回転角度は、ネジの径やピッチによって異なる。そのため、何度の回転緩みで締め直しが必要になるかは、基本的に利用するネジ締結体20の構成によって変化する。そこで、本実施形態においては説明を具体化するため、「20°」を締め直しの閾値とする場合を例に説明する。例えば、本実施形態の構成(
図2~5)を採用して、
図6のような回転角と静電容量値の関係が得られる場合には、締め直しの判定基準となる閾値として「25pF」(すなわち、回転緩みのない状態における可変コンデンサ30の静電容量値「34pF」から「20°」回転緩みが発生するまでの静電容量変位量「9pF」を減じた静電容量値)程度の値を予め設定しておくようにする。そして、点検時に静電容量センサタグ10にて検知される静電容量値が判定の閾値である「25pF」以下になっているネジ締結体20を締め直し対象と判定して、検査者に締め直しを指示する構成を採用すればよい。なお、本手法を採用する場合における閾値のデータは、本発明の「基準データ」に相当する。
【0063】
(監視手法2)
本手法は、情報処理装置50が、可変コンデンサ30の静電容量値に基づきネジ締結体20の回転角を特定しつつ、回転緩みの状態を監視し、当該特定したネジ締結体20の回転角を、音声及び画像の少なくとも一方を用いて検査者に報知する手法である。例えば、本実施形態の構成(
図2~5)を採用して、
図6に例示するグラフのような回転角と静電容量値の関係が得られる場合、
図6のグラフに対応する基準データを情報処理装置50に予め記憶しておく構成とする。そして、情報処理装置50は、(1)点検作業時に静電容量センサタグ10により検知された可変コンデンサ30の静電容量計測値と、(2)基準データにより示されるグラフと、に基づきネジ締結体20の回転角を特定して、当該特定された回転角を検査者に報知するようにすればよい。本手法を採用することにより、ネジ締結体20にどの程度の回転緩みが発生しているのかを検査者が正確に把握できる。この結果、本手法によれば、回転緩みの経時的な変化状態を特定し、回転緩みが進行しているのか、或いは、停止しているのかに関しても検査者が把握可能となる。例えば、現在は「10°」の回転緩みが発生しているのに対して、6ヶ月前の点検時には回転角が「5°」だったので回転緩みが進行している等、回転緩みの進行状況を検査者が把握でき、締め直しを行うべき時期等の判断材料を提供することができる。また、本手法を採用する場合、特定した回転角を日時情報と紐付けつつ、回転状態履歴情報として情報処理装置50に順次蓄積(記憶)して、検査者が、過去の回転角及び現在の回転角を後に比較可能に表示できるようにすることが望ましい。
【0064】
以上説明したように本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1は、ネジ締結体20を構成する上側のナット23Aに第1電極32を設置したキャップ部材31を着脱可能に嵌合させるとともに、第2電極34を配設した壁部材33を第1電極32と第2電極34が相対する位置になるように設置することにより、監視対象となるネジ締結体20に可変コンデンサ30を設置し、可変コンデンサ30の静電容量値に基づきネジ締結体20に発生した回転緩みの状態を監視して、検査者に回転緩みの発生状況を報知できる。この結果、本実施形態の構成によれば、検査者の習熟度とは無関係に、高精度な回転緩みの点検を実施可能になるとともに、監視対象となるネジ締結体20が高所に設置されている場合であっても、検査者の安全性を確保することができる。また、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1は、ネジ締結体20を締め直した後についても、キャップ部材31及び壁部材33を再設置することにより、繰り返し回転緩みの発生状態を監視できる。さらに、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1は、パッシブ型の静電容量センサタグ10により可変コンデンサ30の静電容量を検知して無線にて読み出せるので、電池交換を行うことなく非常に長期間に渡ってネジ締結体20の回転緩みを高精度に検知することができ、施工後のランニングコストを大幅に削減できる。
【0065】
[B]第2実施形態
次いで、
図7~10を用いて本発明に係るネジ締結体緩み監視システムの第2実施形態について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態のネジ締結体緩み監視システム1における可変コンデンサ30が可変コンデンサ300に変更されている点以外は、基本的に第1実施形態と同様の構成により実現されるものであるため、以下においては、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。すなわち、本実施形態においては特に説明しない限り
図1に示す各構成要素は第1実施形態と同様の構成を有し、同様の機能を実現するものとする。
【0066】
ここで、上記第1実施形態においては、キャップ部材31と壁部材33の各々に対して第1電極32及び第2電極34を設置することにより、ネジ締結体20の周囲に可変コンデンサ30を構築していた。すなわち、第1実施形態において可変コンデンサ30は、キャップ部材31と壁部材33に電極を1枚ずつ設置することにより構築されていた。
【0067】
これに対して、本実施形態においてネジ締結体20に設置する可変コンデンサ300は、片側の電極を2つに分割して、3枚の電極を形成し、コンデンサを2つ直列に接続する構成を採用する。具体的には、上側のナット23Aに嵌合設置するキャップ部材31及びキャップ部材31の外周部に設置する第1電極32はそのまま変更せず(
図3参照)、壁部材33の円弧内側(すなわち、キャップ部材31と相対して配設される面)に設置する電極(すなわち、第2電極34)を2つに分割し、壁部材33における円弧内側に第3電極35及び第4電極36を配設する(
図7(A)参照)。これら第3電極35及び第4電極36は、第1実施形態における第2電極34よりも短くなり、それぞれ上側のナット23Aの「45°」(すなわち、90°÷2=45°)を覆う程度の横幅に設定されている。なお、例えば、本実施形態の第1電極32は本発明の「移動電極」を構成するとともに、第3電極35及び第4電極36は、本発明の「不動電極」を構成する。
【0068】
また、
図7(A)に示すように、この壁部材33側に設置された第3電極35及び第4電極36を、それぞれ静電容量センサタグ10の第1及び第2入力端子11A及び11Bに直接電気的に接続したうえで、両電極35及び36がキャップ部材31の外周部に配設された第1電極32と完全に重なった状態で相対させつつ壁部材33を床面21に固定して設置する(
図7(B)、(C)及び
図9(A)参照)。なお、本実施形態の可変コンデンサ300に関しても壁部材33は、第1実施形態における構成Bと同様に円筒形の樹脂により構成して、キャップ部材31の周囲360°を壁部材33により囲む構成としてもよい。
【0069】
この場合、壁部材33の円筒内周面に第3電極35及び第4電極36を配設して、第3電極35及び第4電極36が第1電極32と完全に重なるように壁部材33を回転させつつ、位置合わせを行った後、壁部材33をキャップ部材31に被せて設置する構成とすればよい。なお、この場合における第3電極35及び第4電極36の横幅は、円弧形状の壁部材33を採用する場合と同じ長さに設定するようにして、上側のナット23Aの「45°」程度を覆うようにすればよい。また、この場合、壁部材33の円筒内周は、第1実施形態における構成Bと同様にキャップ部材31の外径に対して、電極2枚分の厚さ+1mm程度大きくなるように1.2mm~2mm程度大きく設定する。そして、キャップ部材31の上から円筒形の壁部材33を被せることにより、壁部材33の円筒内周側において(1)キャップ部材31の外周面に設けられた第1電極32と(2)壁部材33の内周面に設けられた第3電極35及び第4電極36を1mm程度の間隔を持って相対させつつ設置して、円筒内側の空間に可変コンデンサ300を形成するようにすればよい。
【0070】
円弧形状及び円筒形状のいずれの構成の壁部材33を採用した場合であっても、
図7(B)に例示するように、導電性ワイヤ等の配線を用いることなく、静電容量センサタグ10の両入力端子11A及び11Bに対して壁部材33に設けられた第3電極35及び第4電極36をそのまま電気的に接続することが可能になる。この結果、本実施形態の構成によれば、配線の有する寄生容量の影響を排除でき、静電容量センサタグ10にて高精度に静電容量値を検知することが可能になる。
【0071】
また、本実施形態の可変コンデンサ300において上側のナット23Aが緩むと、第1実施形態の可変コンデンサ30と同様に外側の壁部材33は動かず、内側のナット23A及びキャップ部材31のみが回転することとなる。この結果、回転緩みのない状態で
図7(B)のような状態にあった上側ナット23A及びキャップ部材31が、
図7(C)のように回転することにより、第1電極32に相対する第3電極35及び第4電極36の面積が変化し、可変コンデンサ300の静電容量が変化する。このとき、可変コンデンサ300として形成される直列コンデンサの模式図を
図8に示す。なお、
図8においては説明の理解を容易にするため、第1電極32、第3電極35及び第4電極36を円形ではなく直線状に描いている。
【0072】
第1電極32は、キャップ部材31の外周面に設置されており、第3電極35及び第4電極36は、壁部材33の円弧内周側に設置されている。このため、
図8に示すように第1電極32と第3電極35は相対した位置関係となり、第1コンデンサC1を形成する。また、第1電極32と第4電極36も同様に相対した位置関係になり、第2コンデンサC2を形成する。よって、この2つのコンデンサC1及びC2は電気的には直列に接続されている形態となる。回転緩みにより上側のナット23Aが回転すると、
図8に示すように第1電極32のみが移動する。この時、
図8(B)に示すように第1電極32と第3電極35が形成する第1コンデンサC1は電極が相対する領域の面積が減少して静電容量が減少するが、第1電極32と第4電極36が形成する第2コンデンサC2は電極の相対する領域の面積が変化せず静電容量が変化しない。一般的に直列接続されたコンデンサの静電容量値(合成容量)は、下記式2によって示される。
【0073】
【0074】
なお、式2において「Ccomb」は、可変コンデンサ300を構成する直列コンデンサの静電容量値、「C1」と「C2」は、それぞれ直列接続される各コンデンサC1及びC2の静電容量値であって、ここでは、各々、(1)第1電極32と第3電極35によって形成される第1コンデンサC1及び(2)第1電極32と第4電極36によって形成される第2コンデンサC2の静電容量値となる。この式2から、第1電極32と第4電極36が形成する第2コンデンサC2の静電容量値「C2」が変化しない場合でも、第1電極32と第3電極35が形成する第1コンデンサC1の静電容量値「C1」が減少した場合には、合成容量である可変コンデンサ300の静電容量値「Ccomb」も減少することが分かる。
【0075】
本実施形態においては、係る可変コンデンサ300の静電容量値「Ccomb」の変化を静電容量センサタグ10により検知して、当該検知結果を示す検知データをRFIDリーダ/ライタ40を介して情報処理装置50に送信しつつ、情報処理装置50が、静電容量の計測値に基づきネジ締結体20に生じた回転緩みを監視する構成になっているが、この点は第1実施形態と同様である。なお、例えば、本実施形態の可変コンデンサ300及び静電容量センサタグ10の機能により本発明の「ネジ締結体監視装置」が実現される。また、例えば、本実施形態の静電容量センサタグ10に内蔵されるICチップは、本発明の「静電容量検知手段」を構成するとともに、ICチップ及びアンテナは、RFIDリーダ/ライタ40と連動して「出力手段」を構成する。
【0076】
[B2]上側ナット23Aの回転角の検知原理について
次いで、
図9及び10を用いつつ、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1において、上側ナット23Aの回転角を検知する際の原理について説明する。なお、
図9は、上側ナット23Aの回転角に応じたキャップ部材31と、第1電極32と、壁部材33と、第3電極35と、第4電極36と、の位置関係を示すイメージ図であり、(A)~(D)には、各々、上側のナット23A及びこれに嵌合したキャップ部材31の回転角が「0°」、「15°」「30°」及び「45°」の各状態におけるキャップ部材31と、壁部材33と、第1電極32と、第3電極35及び第4電極36の位置関係を示している。また、
図10は、上側ナット23Aの回転角と可変コンデンサ300の静電容量計測値の関係を示すグラフである。
【0077】
図9(A)に示すように上側ナット23Aが回転していない場合、(1)第1電極32と第3電極35及び(2)第1電極32と第4電極36の双方が完全に重なった状態となり、電極の重なる領域の面積がそれぞれ最大となる。上側ナット23Aが回転を始めると、第1電極32と第4電極36の重なる領域の面積は変化しないが、第1電極32と第3電極35の重なる領域の面積は徐々に減少していき(
図9(B)及び(C))、回転角が「45°」となった時点で第1電極32と第3電極35の重なる領域が完全になくなる(
図9(D))。電極の重なる領域の面積は、コンデンサの面積を示している。このため、重なる領域の面積が変化しない第1電極32と第4電極36によって形成される第2コンデンサC2の静電容量値は、この上側ナット23Aの回転領域では変わらない。しかしながら、第1電極32と第3電極35により形成される第1コンデンサC1の静電容量は減少していく(式1参照)。この結果、式2において示したように、合成容量「C
comb」により示される可変コンデンサ300の静電容量値に関してもこれに追随して減少することになる。なお、第1実施形態における構成Bと同様に壁部材33を円筒形の構成にする場合に関しては、
図9における壁部材33の形状がキャップ部材31を360°囲む構成となる点以外は、
図9と同様であり、上側ナット23Aの回転に伴ってキャップ部材31が回転すると、第1電極32と第4電極36の重なる面積は変化しないが、第1電極32と第3電極35の重なる面積は徐々に減少していき(
図9(B)及び(C))、回転角が「45°」となった時点で第1電極32と第3電極35の重なる領域が完全になくなることとなる(
図9(D))。
【0078】
実際に
図7に示す構成の可変コンデンサ300をネジ締結体20に設置して可変コンデンサ300の静電容量値「C
comb」を静電容量センサタグ10により検知し、当該検知結果をRFIDリーダ/ライタ40を用いて情報処理装置50により読み出す実証実験を行った。この結果、
図10に示すような計測結果が得られた。なお、
図10においては、
図6と同様、縦軸に可変コンデンサ300の静電容量計測値「C
comb」、横軸に上側ナット23A及びキャップ部材31の回転角を示している。第1電極32と第3電極35及び第4電極36が完全に重なっている回転角「0°」の状態において静電容量の計測値が最大となり、上側ナット23Aが緩む方向に回転するとともに静電容量の計測値が減少していくことが分かった。なお、図示は省略するが、円筒形の壁部材33を利用した場合であっても、第1電極32と第3電極35及び第4電極36の重なる領域の面積変化は同様となるため、
図10と同様の結果が得られることが分かっている。
【0079】
そして、
図10に示すように上側のナット23A及びキャップ部材31の回転角が「45°」を超えた時点で可変コンデンサ300の静電容量値「C
comb」が変化しなくなっているが、これは回転角が「45°」を超えた時点で、第1電極32と第3電極35の重なりがなくなったため(すなわち、回転角の検知範囲上限を超えたため)である。また、回転角が「45°」を超えた後に残る静電容量は、回路に寄生している容量が反映されているが、その値は、導電性ワイヤ等の配線を用いた場合(すなわち、第1実施形態の可変コンデンサ30を用いた
図6のケース)よりも低いものとなっている。第1実施形態の可変コンデンサ30と比べて、得られた静電容量の絶対値は減少しているが、上側のナット23Aの回転緩みを検知するためには、可変コンデンサ300の静電容量値「C
comb」の変化のみをモニターすればよいことから、このことは問題とはならない。
【0080】
以上のように本実施形態の可変コンデンサ300を用いることにより、配線に伴う寄生容量の影響を軽減しつつ、高精度に静電容量値を検知して、ネジ締結体20に発生した回転緩みを高精度に検知することが可能になる。なお、(1)静電容量センサタグ10を用いて可変コンデンサ300の静電容量値「C
comb」を検知する手法、(2)RFIDリーダ/ライタ40を用いて情報処理装置50が検知デ-タを読み出す手法、及び(3)情報処理装置50が、検知データにより示される可変コンデンサ300の静電容量値「C
comb」に基づき、上側ナット23Aに発生した回転緩みの状態を監視する手法に関しては、第1実施形態と同様である。例えば、
図7の構成の可変コンデンサ300により
図10のような関係が得られる場合に、上記監視手法1の例と同様に締め直しの閾値を「20°」とする場合を想定する。この場合、締め直しの判定基準となる閾値として「10pF」(すなわち、回転緩みのない状態における可変コンデンサ300の静電容量計測値約「13pF」から「20°」回転緩みが発生するまでの静電容量値変位量約「3pF」を減じた静電容量値)程度の値を予め設定するようにする。そして、当該閾値に対応する基準データを情報処理装置50に予め記憶しておき、点検時に静電容量センサタグ10にて検知される可変コンデンサ300の静電容量「C
comb」が閾値「10pF」以下になっている場合に、情報処理装置50が、締め直しが必要になっているものと判定して、検査者に報知するようにしてもよい。また、上記監視手法2と同様に情報処理装置50に
図10に例示する静電容量と回転角の関係のグラフに対応する基準データを予め記憶しておき、静電容量センサタグ10により検知された可変コンデンサ300の静電容量値「C
comb」と基準データに基づき、情報処理装置50が回転角を特定しつつ、当該特定した回転角を検査者に報知する構成としてもよい。この場合には、第1実施形態と同様に回転状態履歴情報を情報処理装置50にて蓄積して管理する構成とすることが望ましい。
【0081】
[C]第3実施形態
次いで、
図11~14を用いて本発明に係るネジ締結体緩み監視システムの第3実施形態について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態のネジ締結体緩み監視システム1における可変コンデンサ30が可変コンデンサ3000に変更されている点以外は、基本的に第1及び第2実施形態と同様の構成により実現されるものであるため、以下においては、第1及び第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。すなわち、本実施形態においては、特に言及しない限り
図1に示す各構成要素は第1実施形態と同様の構成を有し、同様の機能を実現するものとする。
【0082】
ここで、上記第1実施形態においては、キャップ部材31と壁部材33の各々に第1電極32及び第2電極34を設置することにより、ネジ締結体20の周囲に可変コンデンサ30を構築していた。すなわち、第1実施形態において可変コンデンサ30は、キャップ部材31と壁部材33の各々に1枚ずつ電極を設置することにより構築されていた。一方、第2実施形態において可変コンデンサ300は、壁部材33側の第2電極34を第3電極35及び第4電極36の2枚に分割するとともに、これら2枚の電極35及び36を壁部材33の円弧内周面側に設置して、キャップ部材31の外周面に配設された第1電極32と第3及び第4電極35及び36により第1及び第2コンデンサC1及びC2が直列接続された形態にて可変コンデンサ300を構築する方法を採用していた。
【0083】
これに対して、本実施形態においては、
図11(A)に示すように(1)壁部材33側の第2電極34に関しては、第1実施形態の可変コンデンサ30と同様に1枚の電極により構成する。一方、(2)キャップ部材31側の第1電極32を第5電極37及び第6電極38の2枚に分割し、第5電極37及び第6電極38の配設されたキャップ部材31を上側のナット23Aに着脱可能に嵌合させる構成を採用する。そして、本実施形態においては、キャップ部材31の外周面側に1mm程度の間隔を持たせつつ1枚の第2電極34が配設された壁部材33を
図11(B)のように設置して、第2電極34と、第5電極37と、第6電極38により可変コンデンサ3000を構築する方法を採用する。これら第5電極37及び第6電極38は、第1実施形態における第1電極32よりも短くなり、それぞれ上側のナット23Aの45°(すなわち、90°÷2=45°)を覆う程度の横幅に設定すればよい。なお、例えば、本実施形態の第2電極34は本発明の「不動電極」を構成するとともに、第5電極37及び第6電極38は、本発明の「移動電極」を構成する。
【0084】
また、
図11(A)に示すように、このキャップ部材31に設置された第5電極37及び第6電極38を、それぞれ静電容量センサタグ10の第1及び第2入力端子11A及び11Bに直接電気的に接続したうえで、両電極37及び38と、第2電極34が完全に重なった状態で相対させつつ壁部材33を床面21に固定して設置する(
図11(B)及び(C)参照)。なお、本実施形態の可変コンデンサ3000に関しても壁部材33は、第1実施形態における構成Bと同様に円筒形の樹脂により構成して、キャップ部材31の周囲360°を壁部材33により囲む構成としてもよい。この場合、壁部材33の円筒内径は、第1実施形態における構成Bと同様にキャップ部材31の外径に対して電極2枚分の厚さ+1mm程度大きくなるように1.2mm~2mm程度大きく設定するようにする。そして、壁部材33の円筒内周側において(1)キャップ部材31に設けられた第5電極37及び第6電極38と、(2)壁部材33の内周面に設けられた第2電極34が1mm程度の間隔を持って相対するように設置し、円筒内周側の空間内に可変コンデンサ3000が形成されるようにすればよい。
【0085】
円弧形状及び円筒形状のいずれの構成の壁部材33を採用した場合であっても、
図11に例示するように導電性ワイヤ等の配線を用いることなく、静電容量センサタグ10の両入力端子11A及び11Bに対してキャップ部材31に設けられた第5電極37及び第6電極38をそのまま電気的に接続することができ、第2実施形態の可変コンデンサ300と同様に配線の有する寄生容量の影響を排除して、静電容量センサタグ10にて高精度に可変コンデンサ3000の静電容量値を検知することができる。
【0086】
また、本実施形態の可変コンデンサ3000において上側のナット23Aが緩むと、第1実施形態の可変コンデンサ30と同様に外側の壁部材33は動かず、上側のナット23A及びキャップ部材31のみが回転することとなる。この結果、回転緩みのない状態で
図11(B)のような状態にあった上側のナット23A及びキャップ部材31が、
図11(C)のように回転することにより、第2電極34に相対する第5電極37及び第6電極38の面積が変化し、可変コンデンサ3000の静電容量が変化する。このとき、可変コンデンサ3000として形成される直列コンデンサの模式図を
図12に示す。なお、
図12においては説明の理解を容易にするため、第2電極34、第5電極37及び第6電極38を円形ではなく直線状に描いている。
【0087】
本実施形態の可変コンデンサ3000において第2電極34は、壁部材33の円弧内周側に設置されており、第5電極37及び第6電極38は、キャップ部材31の外周面に設置されている。このため、
図12に示すように第2電極34と第5電極37及び第6電極38は相対した位置関係となり、(1)壁部材33に設けられた第2電極34及び第5電極37により第3コンデンサC3が形成されるとともに、(2)第2電極34及び第6電極38により第4コンデンサC4が形成されることとなる。よって、この2つのコンデンサC3及びC4は電気的には直列に接続されている形態となるため、可変コンデンサ3000の静電容量は、第2実施形態の可変コンデンサ300と同様に直列コンデンサの合成容量に関する上記式2における「C
1」及び「C
2」に第3コンデンサC3と第4コンデンサの静電容量値を代入することにより合成容量「C
comb」として算出可能になる、
【0088】
上側のナット23Aに回転緩みが発生していない
図11(B)及び
図12(A)の状態から上側ナット23A及びこれに嵌合したキャップ部材31が回転した場合(
図11(C)参照)、
図12(B)に示すように第2電極34と第6電極38が形成する第4コンデンサC4は、電極が相対する領域の面積が減少して静電容量値が減少する。一方、第2電極34と第5電極37が形成する第3コンデンサC3は電極の相対する領域の面積が変化せず静電容量が変化しない(式1参照)。この結果、2つのコンデンサC3及びC4を直列接続して構築される可変コンデンサ3000の静電容量値「C
comb」は、上記式2からも分かるように上側のナット23Aの回転に伴って減少することとなる。
【0089】
本実施形態においては、係る可変コンデンサ3000の静電容量値の変化を静電容量センサタグ10により検知して、当該検知結果を示す検知データをRFIDリーダ/ライタ40を介して情報処理装置50に送信し、情報処理装置50が静電容量計測値の変化量に応じてネジ締結体20に生じた回転緩みを監視する構成になっているが、この点は第1及び第2実施形態と同様である。なお、例えば、本実施形態の可変コンデンサ3000及び静電容量センサタグ10の機能により本発明の「ネジ締結体監視装置」が実現される。また、例えば、本実施形態の静電容量センサタグ10に内蔵されるICチップは、本発明の「静電容量検知手段」を構成するとともに、ICチップ及びアンテナは、RFIDリーダ/ライタ40と連動して、「出力手段」を構成する。
【0090】
[B2]上側のナット23Aの回転角の検知原理について
次いで、
図13及び14を用いつつ、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1において、上側のナット23Aの回転角を検知する際の原理について説明する。なお、
図13は、上側のナット23Aの回転角に応じたキャップ部材31と、第5電極37と、第6電極38と、壁部材33と、第2電極34と、の位置関係を示すイメージ図であり、(A)~(D)には、各々、上側のナット23A及びこれに嵌合したキャップ部材31の回転角が「0°」、「15°」、「30°」及び「45°」の各状態におけるキャップ部材31と、第5電極37と、第6電極38と、壁部材33と、第2電極34と、の位置関係を示している。また、
図14は、上側のナット23Aの回転角と可変コンデンサ3000の静電容量計測値の関係を示すグラフである。
【0091】
図13(A)に示すように上側のナット23Aが回転していない場合は、(1)第2電極34と第5電極37及び第6電極38の双方が完全に重なった状態となり、電極の重なる領域の面積がそれぞれ最大となる。上側のナット23Aが回転を始めると、第2電極34と第5電極37の重なる領域の面積は変化しない一方、第2電極34と第6電極38の重なる領域の面積は徐々に減少する(
図13(B)及び(C))。そして、回転角が「45°」となった時点で第2電極34と第6電極38の重なる領域が完全になくなる(
図13(D))。電極の重なる領域の面積は、コンデンサの面積を示している。このため、重なる領域の面積が変化しない第2電極34と第5電極37によって形成される第3コンデンサC3の静電容量値は、この上側のナット23Aの回転領域では変わらない。しかしながら、第2電極34と第6電極38により形成される第4コンデンサC4の静電容量は減少していく(式1参照)。この結果、可変コンデンサ3000の合成容量合成容量「C
comb」に関してもこれに追随して減少することになる(式2参照)。なお、第1実施形態における構成Bと同様に壁部材33を円筒形の構成にする場合に関しては、
図13における壁部材33の形状がキャップ部材31を360°囲む構成となる点以外は、
図13と同様である。この場合においても、上側ナット23Aの回転に伴ってキャップ部材31が回転すると、第2電極34と第5電極37の重なる領域の面積は変化しないが、第2電極34と第6電極38の重なる領域の面積は徐々に減少し(
図13(B)及び(C))、回転角が「45°」となった時点で第2電極34と第6電極38の重なる領域が完全になくなることとなる(
図13(D))。
【0092】
実際に本実施形態の可変コンデンサ3000をネジ締結体20に設置して可変コンデンサ3000の静電容量値を静電容量センサタグ10により検知し、当該検知結果をRFIDリーダ/ライタ40を用いて情報処理装置50により読み出す実証実験を行った結果、
図14に示すような計測結果が得られた。なお、
図14においては、
図6と同様、縦軸に可変コンデンサ300の静電容量計測値、横軸に上側のナット23A及びキャップ部材31の回転角を示している。第2電極34と第5電極37及び第6電極38が完全に重なっている回転角「0°」の状態において静電容量計測値が最大となり、上側のナット23Aが緩む方向に回転するとともに静電容量計測値が減少していくことが分かった。なお、図示は省略するが、円筒形の壁部材33を利用した場合であっても、第2電極34と第5電極37及び第6電極38の重なる領域の面積変化は同様となるため、
図14と同様の結果が得られることが分かっている。
【0093】
そして、
図14に示すように上側のナット23A及びキャップ部材31の回転角が「45°」を超えた時点で静電容量が変化しなくなっているが、これは回転角が「45°」を超えた時点で、第2電極34と第6電極38の重なる領域がなくなったため(すなわち、回転角の検知範囲上限を超えたため)である。また、回転角が「45°」を超えた後に残る静電容量は、第2実施形態と同様に回路に寄生している容量が反映されているが、その値は、導電性ワイヤ等の配線を用いた場合(すなわち、第1実施形態の可変コンデンサ30を用いた
図6のケース)よりも低いものとなっている。さらに、第2実施形態の可変コンデンサ300と比べて、得られた最大静電容量値が「8pF」と、さらに小さくなっているが、これはキャップ部材31と壁部材33の大きさの制約から第2電極34、第5電極37及び第6電極38を一回り小さく作成したためである。また、静電容量値の減少量をとらえることでネジ締結体20の回転緩みを把握できるため、この絶対値が小さいことはネジ締結体緩み監視システム1にとっては影響がない。
【0094】
以上のようにキャップ部材31側の電極を2分割した場合においても、第2実施形態の可変コンデンサ300と同様に、配線に伴う寄生容量の影響を軽減しつつ、高精度に静電容量値を検知して、ネジ締結体20に発生した回転緩みを高精度に検知することができる。また、後述する変形例4のように静電容量センサタグ10の機能を実現するICチップ及びアンテナをキャップ部材31や壁部材33に埋め込んで内蔵する構成を採用する場合、壁部材33に内蔵するよりもキャップ部材31に内蔵する方が設計の自由度を向上させることができる。従って、キャップ部材31側に静電容量センサタグ10を接続する本実施形態の構成によれば、これらICチップやアンテナを部材内に内蔵する場合における設計の自由度を向上させることができる。
【0095】
なお、本実施形態のネジ締結体緩み監視システム1において(1)静電容量センサタグ10を用いて可変コンデンサ3000の静電容量値を検知する手法、(2)RFIDリーダ/ライタ40を用いて情報処理装置50が検知デ-タを読み出す手法、及び(3)情報処理装置50が、検知データにより示される可変コンデンサ3000の静電容量計測値に基づき、上側のナット23Aに発生した回転緩みを監視する手法に関しては、第1及び第2実施形態と同様である。例えば、本実施形態の構成の可変コンデンサ3000により
図14のような関係が得られる場合に、上記監視手法1の例と同様に締め直しの閾値を「20°」とする場合を想定する。この場合、締め直しの判定基準となる閾値として、「7pF」程度の値(すなわち、回転緩みのない状態における可変コンデンサ3000の静電容量計測値「8pF」から「20°」回転緩みが発生するまでの静電容量変位量約「1pF」を減じた静電容量値)を予め設定するとともに、当該閾値に対応する基準データを情報処理装置50に予め記憶しておくようにする。そして、点検時に静電容量センサタグ10にて検知される静電容量値が閾値「7pF」以下になっている場合に、情報処理装置50が、ネジ締結体20を締め直す必要があるものと判定して、検査者に報知するようにしてもよい。また、上記監視手法2と同様に情報処理装置50に
図14に例示する静電容量と回転角の関係のグラフに対応する基準データを予め記憶しておき、情報処理装置50が(a)静電容量センサタグ10により検知された可変コンデンサ3000の静電容量値と(b)当該基準データに基づき、回転角を特定しつつ、当該特定した回転角を検査者に報知する構成としてもよい。この場合には、第1実施形態と同様に回転状態履歴情報を情報処理装置50にて蓄積及び管理する構成とすることが望ましい。
【0096】
[C]変形例
[C.1]変形例1
上記各実施形態においては、静電容量センサタグ10及びRFIDリーダ/ライタ40としてパッシブ型のものを利用する構成を採用したが、静電容量センサタグ10に電源を搭載して、アクティブ型又はセミアクティブ型の駆動方式を採用する構成としてもよい。この場合、静電容量センサタグ10内に通常の静電容量テスタと同様の機能を実現するICチップ及びアンテナを搭載し、内蔵電源を用いて可変コンデンサ30及び300の静電容量値を検知する構成とすればよい。本構成により、パッシブ型の駆動方式を利用した場合と比較して長い通信距離(例えば、数十m)を確保できるので、検査対象となるネジ締結体20から離れた場所からであってもネジ締結体20に発生した回転緩みを検知できる。この結果、本変形例によれば点検作業時に足場を組む等の作業が不要となり、点検作業時のコストと作業負担を大幅に削減することが可能になる。なお、この場合、静電容量センサタグ10の駆動方式に合わせてRFIDリーダ/ライタ40の通信方式を変更する必要がある点は従来のRFIDシステムと同様である。また、電源搭載型のRFIDにより静電容量を検知する手法は従来のテスタと同様であるため、詳細を省略する。
【0097】
[C2]変形例2
上記各実施形態においては、ボルト22及び六角ダブルナット形式のナット23から構成されるネジ締結体20の回転緩みを監視する手法について説明したが、回転緩みの監視対象となるネジ締結体20の種別は、これに限定されず、六角形以外のダブルナット形式のものやシングルナット形式のネジ締結体、ボルト、ビス等のネジ締結体に適用するようにしてもよい。六角形以外のダブルナットやシングルナット形式のネジ締結体の回転緩み監視手法は上記各実施形態と同様であり、ナット(雌ネジ)に可変コンデンサ30、300又は3000を設置して、回転緩みを監視するようにすればよい。可変コンデンサ30又は300を設置する場合、キャップ部材31には、嵌合孔311に換えて当該ナットよりも若干大きくナットと同形状の嵌合孔を設け、対象となるナットに着脱可能に嵌合する構成とすればよい。また、ボルトやビス等の雄ネジの回転緩みを検知する場合には、(1)ボルトやビス等の雄ネジの頭部にネジ等の回転に合わせて回転する第1電極32の配設されたキャップ部材31を設置するとともに、(2a)当該キャップ部材31の第1電極32と相対する位置に第2電極34の配設された壁部材33、又は、(2b)第3電極35及び第4電極36の配設された壁部材33を電極同士が相対するように床面21に固定して可変コンデンサ30又は300を構成する(
図2及び7参照)。また、この場合、各電極を静電容量センサタグ10の第1及び第2入力端子11A及び11Bに電気的に接続して、ネジ締結体20の回転緩みに伴う静電容量値の変化を静電容量センサタグ10により検知する構成とする。そして、情報処理装置50が、RFIDリーダ/ライタ40を用いて静電容量センサタグ10から検知データを読み出し、回転緩みの発生を検知する構成とすればよい。また、ネジ締結体20に可変コンデンサ3000を設置する場合、ネジ締結体20の雄ネジ頭部に第5電極37及び第6電極38が配設され、ネジの回転に合わせて回転するキャップ部材31を嵌合させるとともに、第2電極34の配設された壁部材33を電極が相対するように床面21に固定して可変コンデンサ3000を構成すればよい(
図11参照)。なお、この場合においても壁部材33は、上記各実施形態と同様に円弧形状としてもよく、円筒形状としてもよい。また、各ケースにおける可変コンデンサ30、300及び3000の構成は、上記各実施形態と同様であるため、詳細を省略する。
【0098】
但し、雄ネジの回転緩みを検知する場合には、キャップ部材31の嵌合孔311の形状を雄ネジ頭部の形状に合わせて変更することが必要となる。例えば、(1)雄ネジ頭部が一般的な六角頭の場合にはナット23の場合と同様に雄ネジ頭部よりも若干大きい六角形の嵌合孔をキャップ部材31に設け(
図3(B)参照)、雄ネジ頭部に着脱可能に嵌合可能な構成にすればよい。また、(2)雄ネジ頭部が六角形又は十字形の穴を有する場合には、キャップ部材31の上面を覆い、この上面の裏側に雄ネジ頭部に設けられた六角形又は十字形の穴に着脱可能に嵌合する六角形又は十字形の突起を設ける構成を採用する。そして、このキャップ部材31の突起を雄ネジ頭部の穴に着脱可能に嵌合させ、雄ネジの回転と合わせてキャップ部材31が回転するようにキャップ部材31を構成すればよい(図示はしない)。また、上記各実施形態と同様にキャップ部材31の外周面に第1電極32を設けるとともに、(a)キャップ部材31の外側に第2電極34を設けた壁部材33、又は、(b)第3電極35及び第4電極36を設けた壁部材33を設置して、可変コンデンサ30又は300を監視対象となるネジ締結体に構築する。そして、情報処理装置50が、静電容量値の検知結果に基づき対象となるネジ締結体に発生した回転緩みを検知する構成とすればよい。可変コンデンサ3000を用いる場合についても同様であり、このキャップ部材31外周面に第5電極37及び第6電極38を設け、キャップ部材31の外周面側に第2電極34の設けられた壁部材33を電極が相対するように設置すればよい。なお、静電容量値及び回転緩みの検知手法は、上記各実施形態と同様であるため詳細を省略する。
【0099】
本構成により、様々な形態のネジ締結体に発生した回転緩みを検知できるとともに、ネジ締結体を締め直した後にキャップ部材31を再度嵌合させつつ、壁部材33を再設置するだけで、長期に渡って繰り返しネジ締結体に発生した回転緩みを非接触にて監視することが可能になり、インフラ設備等の維持管理コストを大幅に削減することが可能になる。
【0100】
[C3]変形例3
上記各実施形態においては、可変コンデンサ30、300及び3000の静電容量値を、静電容量センサを搭載したRFIDタグ(すなわち、静電容量センサタグ10)により検知する構成を採用したが、静電容量センサは、RFIDタグ形態のものに限定されず、USBやBluetooth等の入出力インターフェースを有する静電容量のテスタを情報処理装置50に接続して、当該テスタを静電容量センサとして利用する構成としてもよい。この場合、当該テスタにより可変コンデンサ30、300及び3000の静電容量値を検知し、情報処理装置50が、検知結果を取得して、回転緩みの発生状態を監視する構成とすればよい。この場合、静電容量センサタグ10を用いる場合と同様に第1実施形態の構成の可変コンデンサ30を用いる場合には、テスタの入力端子を第1電極32及び第2電極34に接続して、可変コンデンサ30の静電容量値を計測しつつ、情報処理装置50に供給するようにすればよく、第2実施形態の構成の可変コンデンサ300を用いる場合には、テスタの入力端子を第3電極35及び第4電極36に接続して、可変コンデンサ300の静電容量値を計測しつつ、情報処理装置50に供給するようにすればよい。また第3実施形態の可変コンデンサ3000を用いる場合には、テスタの入力端子を第5電極37及び第6電極38に接続して、可変コンデンサ3000の静電容量値を計測しつつ、情報処理装置50に供給するようにすればよい。他の構成に関しては上記各実施形態と同様である。
【0101】
[C4]変形例4
上記各実施形態においては、静電容量センサタグ10をRFIDタグとして構成し、可変コンデンサ30、300及び3000とは別の筐体にて構成する例を説明したが、キャップ部材31又は壁部材33に静電容量センサタグ10に搭載した静電容量センサ機能を有するICチップやダイポールアンテナ、ループコイルアンテナ等を埋め込んで一体化した構成とすることも可能である。この場合には、RFIDリーダ/ライタ40から供給される電磁波に基づき、起電力を発生させつつ、可変コンデンサ30、300及び3000単体にてネジ締結体20の回転角に応じた静電容量値を検知して、検知結果に対応する検知データをRFIDリーダ/ライタ40に送信する構成とする。一方、情報処理装置50は、上記各実施形態と同様の監視手法により、監視対象となるネジ締結体20に発生した回転緩みの状態を監視して、回転緩みの発生状態を検査者に提示する構成とすればよい。なお、例えば本変形例の可変コンデンサ30、300及び3000に埋め込んで内蔵されるICチップ及びアンテナは、本発明の「静電容量検知手段」及び「出力手段」を構成するとともに、本変形例の可変コンデンサ30、300及び3000自体が本発明の「ネジ締結体監視装置」を構成する。また、この場合においても変形例1と同様に可変コンデンサ30、300及び3000に電源を搭載し、この電源を用いつつ静電容量値を検知して当該検知した静電容量値を示す検知データを可変コンデンサ30、300及び3000からRFIDリーダ/ライタ40に送信する構成を採用してもよい。さらに、キャップ部材31や壁部材33に内蔵するICチップやアンテナは、静電容量センサタグ10に内蔵するものと同一であってもよく、静電容量センサ機能を有する一般的なICチップと、アンテナ及び電源を組み合わせるようにしてもよい。
【0102】
本構成により、可変コンデンサ30、300及び3000に対して静電容量センサタグ10を電気的に接続する工程を省略できるので、施工作業を簡略化して、設備施工時のイニシャルコストを削減しつつ、検査者の習熟度に依存することなくネジ締結体20に発生した回転緩みの状態を遠隔にて高精度に繰り返し検知しつつ監視することが可能となる。
【0103】
[C5]変形例5
上記各実施形態においては、静電容量センサタグ10をRFIDタグとして構成する例について説明したが、静電容量センサタグ10としてBluetooth(登録商標)やIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11系の所謂無線LAN(Local Area Network)等の通信プロトコルに従って通信を行うICチップ及びアンテナを電源とともに静電容量センサを搭載したタグ形状の通信デバイスを利用して、可変コンデンサ30、300及び3000の静電容量値を検知しつつ、情報処理装置50が、当該検知結果に対応する検知データをこのタグ型デバイスから取得する構成を採用してもよい。
【0104】
[C6]変形例6
上記各実施形態においては、情報処理装置50により1のネジ締結体20に発生した回転緩みの状態を監視する場合を例に説明を行ったが、情報処理装置50により複数のネジ締結体20に発生した回転緩みの状態を一元的に監視する構成としてもよく、この場合には、例えば、以下の手法を採用するようにすることも可能である。
【0105】
(1)まず、監視対象となる複数のネジ締結体20の各々に対して可変コンデンサ30、300及び3000のいずれかを設置するとともに、各ネジ締結体20に通し番号等の識別情報を予め割り当てておく。また、この識別情報を該当するネジ締結体20に設置する静電容量センサタグ10の図示せぬメモリ内に予め記憶しておく構成を採用する。
(2)そして、静電容量センサタグ10は、RFIDリーダ/ライタ40から電磁波を受信した際に、当該電磁波に基づき起電力を発生させつつ自機に接続された可変コンデンサの静電容量値を検知して検知データを生成して、RFIDリーダ/ライタ40に送信する。このとき、静電容量センサタグ10は自機のメモリ内に記憶された識別情報を読み出し、検知データとともにRFIDリーダ/ライタ40に送信する。
(3)一方、情報処理装置50には、予め(a)各ネジ締結体20に割り当てられた識別情報と、(b)当該ネジ締結体20に対応する基準データを紐付けて記憶しておく構成を採用する。
(4)そして、情報処理装置50は、RFIDリーダ/ライタ40を用いて各静電容量センサタグ10から取得した識別情報と紐付けて記憶されている基準データと、当該静電容量センサタグ10から取得した検知データに基づき各ネジ締結体20に発生している回転緩みの状況をネジ締結体20毎に監視して、各ネジ締結体20における回転緩みの発生状態を検査者に報知する。なお、RFIDリーダ/ライタ40が複数の静電容量センサタグ10と個別に通信を行って検知データを取得する手法自体は、従来のRFIDシステムと同様である。また、この場合に情報処理装置50にて実現する監視手法は、上記監視手法1及び2のいずれの方法を用いてもよい。さらに、この場合に基準データは各ネジ締結体20毎に予め静電容量の変化状態を個別に計測して生成及び記憶するようにしてもよく、同一構成の可変コンデンサを設置したネジ締結体20に関しては同じ基準データを共用するようにしてもよい。
【0106】
以上説明したように本変形例の構成によれば、複数のネジ締結体20における回転緩みの発生状態を1台の情報処理装置50にて監視できるので、システム構築時のイニシャルコストを削減できるとともに、検査者は、インフラ設備内に設置された各ネジ締結体20を一元的に監視できるため、点検作業時の作業負担を軽減できる。
【符号の説明】
【0107】
1…ネジ締結体緩み監視システム、10…静電容量センサタグ、11A…第1入力端子、11B…第2入力端子、20…ネジ締結体、21…床面、22…ボルト、23A…上側ナット、23B…下側ナット、30、300、3000…可変コンデンサ、31…キャップ部材、32…第1電極、33…壁部材、34…第2電極、35…第3電極、36…第4電極、37…第5電極、38…第6電極、C1、C2、C3、C4…コンデンサ、