(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081285
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】止水シャッター装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240611BHJP
E06B 9/17 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B9/17 Z
E06B9/17 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194799
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 達也
(72)【発明者】
【氏名】小縣 剛士
(72)【発明者】
【氏名】角 和博
【テーマコード(参考)】
2E239
【Fターム(参考)】
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 押圧装置による押圧状態を容易に解除する。
【解決手段】 空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体10と、押圧力を発生する押圧装置40,50とを備え、閉鎖状態の開閉体10を押圧装置40,50の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、押圧装置40,50の押圧力を伝達する押圧力伝達部材60,70を備え、押圧力伝達部材60,70は、前記押圧力の伝達を可能に前進した押圧可能位置と、前記押圧力の伝達を不能にするとともに開閉体10の開放を可能に後退した退避位置とで、選択的に位置変更が可能な可変部62,72を具備する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、押圧力を発生する押圧装置とを備え、閉鎖状態の前記開閉体を前記押圧装置の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、
前記押圧装置の押圧力を伝達する押圧力伝達部材を備え、
前記押圧力伝達部材は、前記押圧力の伝達を可能に前進した押圧可能位置と、前記押圧力の伝達を不能にするとともに前記開閉体の開放を可能に後退した退避位置とで、選択的に位置変更が可能な可変部を具備することを特徴とする止水シャッター装置。
【請求項2】
前記押圧力伝達部材は、前記押圧装置から押圧力の伝達を受ける基部の下方側に、前記可変部を位置変更可能に支持していることを特徴とする請求項1記載の止水シャッター装置。
【請求項3】
前記基部と前記可変部の間に連結部が設けられ、
前記連結部は、一端側が前記基部と前記可変部のうちの一方に対し不動に止着され、他端側が、前記一方に対する他方に対し、位置変更可能に接続されていることを特徴とする請求項2記載の止水シャッター装置。
【請求項4】
前記押圧装置が、開閉体幅方向へ間隔を置いて複数設けられ、
前記押圧力伝達部材が、複数の前記押圧装置によって押圧されるように設けられることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の止水シャッター装置。
【請求項5】
前記連結部は、一端側を前記可変部に不動に止着するとともに、他端側に雄ネジ部を有する略軸状に形成され、前記雄ネジ部を前記基部に対し貫通状に螺合していることを特徴とする請求項3記載の止水シャッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水が流通しないように開口部を閉鎖する止水シャッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明は、例えば特許文献1に記載されるように、上下方向へ積み重ねられる複数のパネルからなるシャッターカーテンを、パワーシリンダ、ピストンロッド等からなる電動の押圧装置により押圧し、このシャッターカーテンを、水密ゴムを介して不動部位(床面やレール等)に圧接し、水密性を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、閉鎖状態のシャッターカーテンを押圧装置により押圧している最中に停電が発生した場合、押圧装置による押圧状態を解除できず、シャッターカーテンの開放が困難になるおそれがある。
そこで、バッテリー等の予備電源を備える場合もあるが、予備電源自体が水害等により故障してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、押圧力を発生する押圧装置とを備え、閉鎖状態の前記開閉体を前記押圧装置の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、前記押圧装置の押圧力を伝達する押圧力伝達部材を備え、前記押圧力伝達部材は、前記押圧力の伝達を可能に前進した押圧可能位置と、前記押圧力の伝達を不能にするとともに前記開閉体の開放を可能に後退した退避位置とで、選択的に位置変更が可能な可変部を具備することを特徴とする止水シャッター装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、押圧装置による押圧状態を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る止水シャッター装置の一例を屋外側から視た正面図である。
【
図2】同止水シャッター装置の全閉状態を示す縦断面図であり、閉鎖前のパネルを二点鎖線で示している。
【
図3】
図1の(III)-(III)線に沿う横断面図である。
【
図5】押圧力伝達部材を屋内側から視た動作説明図であり、(a)は可変部が押圧可能位置にある状態を示し、(b)は同可変部が退避位置にある状態を示す。
【
図7】開閉体を垂直方向へ押圧する押圧装置の動作説明図であり、(a)は押圧前の状態、(b)は押圧状態、(c)は押圧力を解除した状態を示す。
【
図8】開閉体を水平方向へ押圧する押圧装置の動作説明図であり、(a)は押圧前の状態、(b)は押圧状態、(c)は押圧力を解除した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、「開閉体厚さ方向」とは、閉鎖状態の開閉体の厚さ方向を意味する。また、「開閉体幅方向」とは、開閉体の開閉方向と略直交する方向であって、開閉体の厚さ方向ではない方向を意味する。
また、「開閉体開閉方向」とは、開閉体が開閉動作のために空間を仕切ったり開放したりするスライド方向を意味する。
【0009】
また、「開閉体幅方向外側」とは、開閉体幅方向に沿って開閉体の外側へ向かう方向側を意味する。例えば、向かって右側のガイドレールを基準にすると、開閉体幅方向外側は、右方向側になる。
また、「開閉体幅方向内側」とは、開閉体幅方向に沿って開閉体の内側へ向かう方向側を意味する。例えば、向かって右側のガイドレールを基準にすると、開閉体幅方向内側は、左方向側になる。
【0010】
また、「開閉体厚さ方向外側」とは、開閉体の厚みの中央部から開閉体厚さ方向に沿って離れる方向側を意味する。
また、「開閉体厚さ方向内側」とは、開閉体厚さ方向に沿って開閉体の厚みの中央部へ向かう方向側を意味する。
【0011】
止水シャッター装置1は、建物等の躯体開口部を開閉体10によって開閉するように設置される。
この止水シャッター装置1は、空間を仕切るようにして閉鎖動作し閉鎖方向端部を対向する被当接面G(例えば、地面や床面等)に当接して全閉する開閉体10と、開閉体10の幅方向の両端部をそれぞれ横断面凹状に囲んで閉鎖方向へ案内する左右のガイドレール20,20と、開閉体10を上方側で収納したり繰り出したりする開閉体収納部30と、開閉体収納部30内で押圧力を発生する押圧装置40,50と、押圧装置40,50の押圧力を伝達する押圧力伝達部材60,70とを備え(
図1参照)、閉鎖状態の開閉体10を押圧装置40,50の押圧力により不動部位である被当接面Gやガイドレール20に押し付ける。
【0012】
開閉体10は、開閉体収納部30によって閉鎖方向へ順次に繰出される複数のパネル11,12を略垂直に積み重ねて全閉状態になる(
図2参照)。
複数のパネル11,12は、パネル連繋チェーン14によって開閉方向に繋がっている。
【0013】
パネル11は、開閉体幅方向へ長尺な正面視矩形板状の部材である。このパネル11は、金属等の硬質材料により、上下に仕切られた空洞を有する縦断面枠状に形成される。
このパネル11の下端部は、開閉体幅方向の全長にわたって縦断面略V字状に突出しており、その突出する外面には、シール部16が一体的に設けられる。
【0014】
シール部16は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から、パネル11下端に沿う縦断面V字状に形成され、パネル11の下端部に開閉体幅方向の全長にわたって接合されている。
【0015】
また、パネル11の上端部には、上方に重なり合うパネル11(又は12)のシール部16に嵌り合うように、開閉体幅方向の全長にわたって縦断面略V溝状の凹部11aが形成される。
そして、パネル11の横幅方向の両端部には、開閉体幅方向へ突出するように、支持軸部13が設けられる。
【0016】
最上部のパネル12は、開閉体幅方向へ長尺状に連続する正面視矩形状を呈し、パネル11よりも高さ寸法が小さい。前記寸法は、開閉体10によって開閉される開口部の高さ寸法等に応じて適宜に設定される。
このパネル12は、パネル11と略同様に、金属材料を引抜成形又は押出成形することで、開閉体幅方向に連続する空洞を内在する縦断面枠状に形成される。
パネル12の下端側には、パネル11と同様にシール部16が設けられる。さらに、パネル12の側面には、パネル11と同様に支持軸部13が設けられる。また、パネル12の上端には、開閉体幅方向へわたって連続する凹部12aが設けられる。
【0017】
なお、複数のパネル11のみによって所望とする高さ寸法の開閉体10を構成できる場合には、パネル12を省くことも可能である。この場合、最上部には、パネル11が位置し、このパネル11の上端部が、押圧装置40によって押圧される。
【0018】
支持軸部13は、各パネル11,12の幅方向の両端部から、それぞれ、開閉体幅方向外側へ突出している(
図3参照)。
この支持軸部13は、パネル連繋チェーン14に挿通された軸状部材の先端側に、ローラを回転自在に支持してなる。
【0019】
パネル連繋チェーン14は、動力伝達用等に用いられる所謂ローラチェーンであり、その長さ方向において所定間隔置きに支持軸部13を回転自在に挿通している。
このパネル連繋チェーン14は、上下方向のすべてのパネル11,12を、支持軸部13を介して連結し、その上端側が開閉体収納部30内の複数(図示例によれば、二つ)のスプロケット31a,31bに掛けられている。
【0020】
また、各パネル11の側面において、下端側の屋内寄りには、ガイド軸部15が設けられている(
図2及び
図3参照)。
ガイド軸部15は、各パネル11の幅方向端部から突出する軸状部材の先端側にローラを回転自在に支持してなる。
このガイド軸部15は、各パネル11が開閉体収納部30に収納される際に、開閉体収納部30内のガイド部材34(
図2参照)に係合し案内され、開閉体厚さ方向の振れを抑制する。なお、このガイド軸部15は、省くことも可能である。
【0021】
ガイドレール20は、閉鎖状態の開閉体10の幅方向端部を囲むように、横断面凹状もしくはコ字状に形成される(
図3参照)。このガイドレール20は、被当接面Gから開閉体収納部30へわたる長尺状に形成される。
ガイドレール20内には、閉鎖状態の開閉体10を屋外側から屋内側へ押圧する厚さ方向押圧機構55と、この厚さ方向押圧機構55によって押動された開閉体10を屋内側から受ける受部材21とが、上下方向へわたって連続的に設けられる。
【0022】
厚さ方向押圧機構55は、後述する押圧装置50の下方向きの力によって、全閉状態の開閉体10を屋内側へ押圧する装置である。
この厚さ方向押圧機構55は、開閉体10の屋外側面に当接する当接部材55aと、この当接部材55aを屋内側へ平行移動する押圧方向変換機構55bと、ロッド52の進退に連動して上下動する連動部材55cとを具備して構成される(
図3及び
図8参照)。
【0023】
押圧方向変換機構55bは、上下方向の力を開閉体厚さ方向の力に変換する機構である。
押圧方向変換機構55bは、上下方向の力を開閉体厚さ方向へ変換する二つのリンク部材55b1,55b2と、これらリンク部材55b1,55b2を支持する支持部材55b3とを備える(
図8参照)。
【0024】
二つのリンク部材55b1,55b2は、開閉体厚さ方向に直列的に配設され、これらの中央側が回転自在に接続されて、この接続部分を上方へ突出させた側面視略へ字状に構成される。
一方のリンク部材55b1は、屋外側(
図8によれば左側)の部分が、支持部材55b3に対し回転自在に枢支されている。この枢支部分は、開閉体厚さ方向及び上下方向へは移動しない。
【0025】
他方のリンク部材55b2は、屋内側(
図8によれば右側)の部分が、支持部材55b3に対し開閉体厚さ方向へ移動可能に掛合し、且つ当接部材55aに対し回転自在に枢着されている。この枢着部分は、上下方向へは移動しない。
【0026】
連動部材55cは、上下方向へわたる長尺杆状の部材であり、支持部材55b3に対し上下方向へ移動可能に係合している。
この連動部材55cの上端側は、後述する押圧力伝達部材70を介して回転自在に枢着され、この枢着部分よりも下側の部分をが、二つのリンク部材55b1,55b2の接続部分に嵌り合っている。
したがって、連動部材55cが上下方向へ移動すると、これに連動して、リンク部材55b1,55b2の接続部分も同上下方向へ移動する。
【0027】
例えば、押圧装置50の押圧力により、押圧力伝達部材70及び連動部材55cが下方へ移動すると、当接部材55aが屋外側(
図8によれば右側)へ移動し開閉体10を押し動かす。
また、ロッド52の後退により押圧力伝達部材70及び連動部材55cが上方へ移動すると、当接部材55aが屋内側(
図8によれば左側)へ移動し、開閉体10から離れる。
【0028】
なお、図示を省略するが、単一の連動部材55cには、上下方向に間隔を置いて複数の押圧方向変換機構55bが配設される。
【0029】
また、受部材21は、閉鎖状態の開閉体10に対し、上下方向の全長にわたって接するようにした長尺状の部材である(
図3及び
図8参照)。この受部材21は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から形成され、開閉体10の屋内側面に弾性的に接触して、開閉体10とガイドレール20の間の水密性を保持する。
【0030】
また、開閉体収納部30は、開閉体10によって開閉される開口部の上方において、当該止水シャッター装置1の設置対象物である躯体等の壁面に固定される。
この開閉体収納部30は、
図2に示すように、内側に空間を有する基体30aに、パネル連繋チェーン14を掛け回したスプロケット31a,31bと、これらスプロケット31a,31bを双方向へ回転させる駆動機構32と、パネル11,12を、支持軸部13を介してパネル11,12を吊持して前後方向へ導く収納レール33と、パネル11下端側のガイド軸部15を水平方向へ案内するガイド部材34とを支持している。
【0031】
この開閉体収納部30は、駆動機構32によりスプロケット31a,31bを一方向へ回転させることで、収納状態にある複数のパネル11,12を屋外側へ順次に繰り出して下方へ閉鎖動作させる。また、同開閉体収納部30は、駆動機構32によりスプロケット31a,31bを逆方向へ回転させることで、閉鎖状態にあるパネル11,12を開放動作させ、上方側で屋内側へ収納する。
【0032】
一方のスプロケット31aは、全閉状態の開閉体10の上方側且つ屋内寄りに位置する。そして、他方のスプロケット31bは、スプロケット31aよりも上方側且つ屋内寄りに位置する。
したがって、開閉体10の閉鎖動作の際、開閉体収納部30から繰り出されるパネル11,12は、スプロケット31a,31bにより屋外側斜め下方へ繰り出される。また、開閉体10の開放動作の際。パネル11,12は、スプロケット31a,31bにより屋内側斜め上方へ移動し収納される。
【0033】
また、駆動機構32は、電動モータによってチェーン及びスプロケット31a,31b等を動作させる電動開閉機構と、操作部32aに対する手動操作により同チェーン及びスプロケット等を動作させる手動開閉機構とを備える。操作部32aは、図示例によれば、手で引っ張るようにして回転させることが可能なチェーンである。
【0034】
二種類の押圧装置40,50は、開閉体収納部30の基体30aに対し、開閉体幅方向に間隔を置いて複数装着される(
図1参照)。
【0035】
一方の押圧装置40は、開閉体収納部30の基体30aに固定されたシリンダー状の本体部41と、本体部41に相対し前進するように嵌り合ったロッド42と、ロッド42を前進させるための駆動源(例えば、図示しない電動モータ等)とを備え、前記駆動源の駆動によりロッド42を前進させて押圧力を発生したり、同ロッド42を後退させて前記押圧力を解除したりする。
【0036】
複数に押圧装置40の下方側には、これら押圧装置40の複数のロッド42に跨り、これらロッド42によって押圧されるように、押圧力伝達部材60が設けられる。
詳細に説明すれば、押圧装置40は、左側と右側にそれぞれ複数(
図1の一例によれば二つ)設けられる。そして、押圧力伝達部材60は、左側の複数(図示例によれば二つ)の押圧装置40により上下動するように一つ設けられ、右側の複数の押圧装置40(図示例によれば二つ)により上下動するように一つ設けられる(
図1参照)。
【0037】
各押圧力伝達部材60は、ロッド42の前進に伴って所定の軌跡を描いて開閉体10の上端へ近づくようにリンク機構44によって支持される(
図7参照)。
【0038】
リンク機構44は、基体30aにブラケット等を介して支持され回動する複数のアーム等からなる。このリンク機構44は、押圧力伝達部材60を、略水平に保持したまま、側面視円弧状の軌跡を描くようにして、開閉体10上端部に対し接近させたり離隔させたりする(
図7参照)。
【0039】
押圧力伝達部材60は、押圧装置40から押圧力の伝達を受ける基部61の下方側に、可変部62を位置変更可能に支持している(
図4参照)。
詳細に説明すれば、この押圧力伝達部材60は、ロッド42の先端側に枢支された基部61と、この基部61の下方側に設けられた可変部62と、基部61に対し可変部62を上下方向へ位置変更可能に連結する連結部63とを備える。
【0040】
基部61は、水平片と垂直片を開閉体幅方向へ延設したアングル状の基部本体61aを備え、この基部本体61aが、各ロッド42の先端側に回転自在に枢支されるとともに、リンク機構44を構成する複数のアームにも枢支される。
図4中、符号61bは、ロッド42を枢支するとともに、前記複数のアームの一部を枢支する枢支ブラケットである。また、同
図4中、符号61cは。前記複数のアームの他の一部を枢支する枢支ブラケットである。
【0041】
可変部62は、基部61に沿って開閉体幅方向へ連続する板状の部材であり、開閉体幅方向へ間隔置いた複数の連結部63によって基部61に接続されている(
図4参照)。
この可変部62は、押圧装置40による押圧力の伝達を可能にする押圧可能位置(
図5(a)参照)と、同押圧力の伝達を不能にするとともに開閉体10の開放を可能に後退した退避位置(
図5(b)参照)とで、選択的に位置変更が可能となるように、連結部63及び係脱具64によって基部61に支持される。
この可変部62は、前記退避位置において、開閉体10の開放経路上に位置しなくなり、開閉体10の開放を可能にする。
【0042】
各連結部63は、外周に雄ネジ部を有するボルト状の部材である。この連結部63の上端側は、基部本体61aに対し、上下方向へ位置変更可能に遊挿されるとともに、係脱具64によって係脱可能に係止される。
【0043】
係脱具64は、図示例によれば、ボルト状の連結部63に螺合するナット状部材であり、基部本体61aの水平片を挟むようにして上下に二つ締め付けられる。
また、連結部63の下端側は、可変部62に対し溶接等により不動に固定されている。
【0044】
したがって、二つの係脱具64を緩めて上下方向へ移動すれば、可変部62の上下方向の位置を変えることが可能である。
【0045】
また、他方の押圧装置50は、押圧装置40と略同様に、開閉体収納部30のケース等の不動部位に固定されたシリンダー状の本体部51と、本体部51に相対し前進するように嵌り合ったロッド52と、ロッド52を前進させるための駆動源(例えば、電動モータ等)とを備え、ロッド52の前進により押圧力を発生する(
図8参照)。
この押圧装置50は、ロッド52のストロークが、押圧装置40のものとは異なる。ロッド52のストロークは、厚さ方向押圧機構55の動作量等に応じて適宜に設置される。
【0046】
この押圧装置50は、開閉体幅方向において複数の押圧装置40を間に置くようにして、その左側と右側に、それぞれ間隔をおいて設けられる(
図1参照)。
各押圧装置50の下方側には、押圧装置50のロッド52によって上下動するように、押圧力伝達部材70が設けられる。
【0047】
押圧力伝達部材70は、押圧力伝達部材60と同様の基本構造を有し、ロッド42の先端側に枢支された基部71と、この基部71の下方側に間隔を置いた可変部72と、上端側を基部71に位置変更可能に係合するとともに下端側を可変部72に止着した連結部73と、連結部73の上端側を基部71に対し係脱可能に係止する係脱具74とを具備している(
図6)。
図6中、符号71aは、ロッド52によって枢支される枢支ブラケットであり、基部71に一体的に接合されている。
【0048】
なお、
図2中の符号90は、開閉体幅方向の中央寄りへ可動柱91を移動させ、この可動柱91を開閉体10の屋内側面に押し付けて、開閉体10の撓みを抑制する撓み抑制装置である。
【0049】
<作用効果>
次に、上記構成の止水シャッター装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
【0050】
開閉体収納部30にパネル11,12が収納された状態で、駆動機構32による閉鎖動作が開始されると、複数のパネル11,12が、開閉体収納部30から順次に下方へ繰り出され、被当接面Gに積み重ねられる。そして、これら複数のパネル11,12からなる開閉体10は、
図2に示す全閉状態で静止する。
【0051】
この全閉状態において、押圧装置40,50が動作すると、開閉体10は、押圧力伝達部材60,70を介して、垂直方向及び水平方向に押圧される。
初期状態において、押圧力伝達部材60,70の可変部62,72は、押圧力の伝達が可能な押圧可能位置(
図4及び
図6の状態)にある。
【0052】
垂直方向の動作について説明すれば、押圧装置40は、図示しない制御回路からの信号及び電力により動作し、本体部41に相対しロッド42を下向きに伸長させる(
図7(a)(b)参照)。
すると、ロッド42前端に接続された押圧力伝達部材60が、リンク機構44により円弧状に回動し、パネル12(開閉体10)の上端部に当接し、開閉体10を下方へ押圧する。
【0053】
また、水平方向の動作について説明すれば、押圧装置50は、図示しない制御回路からの信号及び電力により動作し、本体部51に相対しロッド52を下向きに伸長させる(
図8(a)(b)参照)。
すると、ロッド52の押圧力により、押圧力伝達部材70が下方へ移動し、当接部材55aが水平方向へ移動して開閉体10の屋外側面に当接する。さらに、前記水平方向の移動が継続することで、開閉体10が屋内側へ押し動かされ受部材21に押圧される(
図8(b)参照)。
【0054】
押圧装置40及び押圧力伝達部材60等による垂直方向の押圧力により、最下側のパネル11は、下端のシール部16を被当接面Gに押し付けて弾性変形する。また、上下に隣接するパネル11,11(又は12)間でも、シール部16が挟まれ弾性変形する。
また、押圧装置50、押圧力伝達部材70及び厚さ方向押圧機構55等による水平方向の押圧力により、開閉体10の各パネル11,12は、ガイドレール20の受部材21に押し付けられて、受部材21が弾性変形する。
よって、開閉体10の下端と被当接面Gの間、上下に隣接するパネル11,11(又は12)間、及び開閉体10とガイドレール20の間において、水密性が保持される。
【0055】
<解除動作>
前記押圧状態において、開閉体10を開放する場合、通常は、前記制御回路等を介した電気的な操作により、押圧装置40,50を逆方向へ動作させ、前記押圧状態を解除すればよい。
しかしながら、例えば停電等の発生により、押圧装置40,50や前記制御回路へ電力が供給されず、電気的な解除操作ができない場合には、押圧力伝達部材60,70を収縮させるように手動で操作する。
【0056】
一方の押圧力伝達部材60を収縮する手順を詳細に説明すれば、先ず、基部61の基部本体61aを挟む上下の係脱具64,64を緩める。そして、連結部63及び可変部62を上方へ移動する(
図5参照)。
この移動は、連結部63及び可変部62を手で持ち上げるようにしてもよいし、下側の係脱具64を緩めた後に上側の係脱具64を締め付けることで可変部62を上方へ移動するようにしてもよい。
【0057】
そして、上記のようにして連結部63及び可変部62を所定量移動した後、上下の係脱具64,64を締め付けて、連結部63及び可変部62を下降しないように固定する。
【0058】
他方の押圧力伝達部材70を収縮する手順は、押圧力伝達部材60の場合と略同様であり、上下の係脱具74,74を緩めて、連結部73及び可変部72を上昇させ、この後、係脱具74,74を締め付ければよい。
【0059】
これらの作業によって、開閉体10は、上方へ開放動作可能な状態になる(
図7(c)及び
図8(c)参照)。
停電状態のまま開閉体10を開放させるには、操作部32aを手で操作して、駆動機構32を人力で開放方向へ動作させればよい。
【0060】
よって、上記構成の止水シャッター装置1によれば、押圧装置40,50による押圧状態を手動で容易に解除することができ、ひいては、停電等により電力供給がない場合でも、押圧装置40,50による押圧状態を解除して開閉体10を開放することができる。このため、停電時に押圧装置40,50を電動で解除するための予備電源を不要にすることも可能である。
【0061】
<押圧力伝達部材の他例>
上記実施形態の止水シャッター装置1において、押圧力伝達部材60,70は、例えば、
図9に示す押圧力伝達部材80等、他の構成のものに置換することが可能である。
【0062】
押圧力伝達部材80は、押圧装置40のロッド42の先端側に枢支される基部81と、この基部81の下方側に設けられた複数の可変部82と、基部81に対し可変部82を上下方向へ位置変更可能に連結する連結部83とを備える。
【0063】
基部81は、水平片と垂直片を開閉体幅方向へ延設したアングル状の基部本体81aを備え、この基部本体81aが、各ロッド42の先端側に回転自在に枢支されるとともに、リンク機構44を構成する複数のアームに枢支されている。
図9中、符号81b,81cは、上記押圧力伝達部材60のものと同構の枢支ブラケットである。
【0064】
基部本体81aの水平片には、連結部83の雄ネジ部を貫通状に螺合する雌ネジ孔81a1が設けられる。
【0065】
可変部82は、基部81に対し、単数もしくは複数(図示例によれば2つ)設けられる。
各可変部82は、略円盤状に形成され、基部81の下方側に間隔を置いた押圧可能位置に保持される。
【0066】
連結部83は。少なくとも上端側に雄ネジ部を有する略軸状の部材であり、その下端側を可変部82の略中心部に対し不動に止着している。
この連結部83の上端側の雄ネジ部は、基部81の雌ネジ孔81a1に螺合される。
【0067】
よって、上記構成の押圧力伝達部材80によれば、可変部82を下方に前進させた押圧可能位置では、押圧装置40の押圧力を伝達することができる。
可変部82を退避位置にする場合には、可変部82を手で回せば、連結部83の雄ネジ部が雌ネジ孔81a1に螺合して、可変部82が上昇する。
前記退避位置では、押圧装置40の押圧力の伝達を不能にするとともに開閉体10の開放が可能になる。
図示を省略するが。上記押圧力伝達部材70についても、押圧力伝達部材80と略同構成のものに置換することが可能である。
【0068】
<他の変形例>
上記実施形態によれば、開閉体10を複数のパネル11によって構成したが、開閉体10の単数の略板状の部材から構成することも可能である。
【0069】
また、上記実施形態によれば、押圧装置40,50をピストンシリンダ方式により押圧力を発生する機構としたが、前記押圧装置の他例としては、駆動回転するネジ部材に螺合したナット状部材によって押圧力を発生する機構や、駆動回転する平歯車とラック歯車によって押圧力を発生する機構、リニアモータによって押圧力を発生する機構、その他の機構とすることが可能である。
【0070】
また、上記実施形態よれば、押圧装置40と押圧装置50をストロークの異なるものとしたが、図示しない他例としては、厚さ方向押圧機構55の動作量等を適宜に調整して、二つの押圧装置40,50のストロークを略同一にすることも可能である。
【0071】
また、上記実施形態において押圧方向変換機構55bは、リンク機構等によってロッド52の上下方向の力を開閉体厚さ方向の力に変換するようにしたが、他例としては、図示例以外の構成(例えば、ラック・ピニオン機構等)によってロッド52の上下方向の力を開閉体厚さ方向の力に変換することも可能である。
【0072】
また、上記実施形態によれば、連結部63,73,83の下端側を上記可変部に対し不動に止着し、この連結部の上端側を上記基部に対し位置変更可能に接続したが、他例としては、前記連結部の下端側を上記可変部に対し位置変更可能に接続するとともにこの連結部の上端側を上記基部に対し不動に止着することも可能である。なお、この他例において、前記連結部が前記開閉体に干渉しないよう構成するのは勿論である。
【0073】
また、上記実施形態によれば、上記連結部と上記基部の螺合により、上記可変部を上下方向に位置変更可能にしたが、他例としては、上記連結部と上記基部を図示しない係脱手段により係脱可能に構成し、前記係脱手段により係合した際に前記可変部が固定され、前記係脱手段による係合状態が解除された際に前記可変部が上下方向へ移動する態様とすることも可能である。
【0074】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0075】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、押圧力を発生する押圧装置とを備え、閉鎖状態の前記開閉体を前記押圧装置の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、前記押圧装置の押圧力を伝達する押圧力伝達部材を備え、前記押圧力伝達部材は、前記押圧力の伝達を可能に前進した押圧可能位置と、前記押圧力の伝達を不能にするとともに前記開閉体の開放を可能に後退した退避位置とで、選択的に位置変更が可能な可変部を具備することを特徴とする止水シャッター装置(
図1~
図9参照)。
ここで、前記「前進」及び前記「後退」には、上下方向に沿う前進及び後退や、左右方向に沿う前進及び後退、斜め方向に沿う前進及び後退を含む。
(2)
前記押圧力伝達部材は、前記押圧装置から押圧力の伝達を受ける基部の下方側に、前記可変部を位置変更可能に支持していることを特徴とする(1)に記載の止水シャッター装置(
図4~
図6,
図9参照)。
(3)
前記基部と前記可変部の間に連結部が設けられ、前記連結部は、一端側が前記基部と前記可変部のうちの一方に対し不動に止着され、他端側が、前記一方に対する他方に対し、位置変更可能に接続されていることを特徴とする(2)に記載の止水シャッター装置(
図4~
図6,
図9参照)。
(4)
前記押圧装置が、開閉体幅方向へ間隔を置いて複数設けられ、前記押圧力伝達部材が、複数の前記押圧装置によって押圧されるように設けられることを特徴とする(1)~(3)いずれかに記載の止水シャッター装置(
図1参照)。
(5)
前記連結部は、一端側を前記可変部に不動に止着するとともに、他端側に雄ネジ部を有する略軸状に形成され、前記雄ネジ部を前記基部に対し貫通状に螺合していることを特徴とする(3)に記載の止水シャッター装置(
図9参照)。
【符号の説明】
【0076】
1:止水シャッター装置
10:開閉体
20:ガイドレール(不動部位)
30:開閉体収納部
40,50:押圧装置
60,70,80:押圧力伝達部材
61,71,81:基部
62,72,82:可変部
63,73,83:連結部
G:被当接面(不動部位)