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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081291
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240611BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240611BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01L29/78 619A
H01L29/78 617T
H01L29/78 617U
H01L29/78 618B
H01L21/312 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194805
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】張 鴻立
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
【テーマコード(参考)】
5F058
5F110
【Fターム(参考)】
5F058AA10
5F058AB10
5F058AC02
5F058AC03
5F058AC05
5F058AC10
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5F058AD05
5F058AD06
5F058AD10
5F058AF01
5F058AF04
5F110AA09
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5F110NN33
5F110NN34
5F110NN35
5F110NN36
5F110QQ06
(57)【要約】
【課題】可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性を高めることを可能とした薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】ボトムゲート型の薄膜トランジスタ10であって絶縁性を有した表面11Sを備える可撓性基板11と、表面11Sに位置するゲート電極12と、ゲート電極12を覆うゲート絶縁層13と、ゲート絶縁層13上に位置する半導体層14とを備える。薄膜トランジスタ10は、半導体層14上に位置するチャネル保護層15を備える。チャネル保護層15は、半導体層14上に位置し、有機高分子化合物から構成される第1チャネル保護層15Aと、第1チャネル保護層15A上に位置し、無機化合物から構成される第2チャネル保護層15Bとから構成される。第1チャネル保護層15Aは、50nm以上500nm以下の厚さを有する。第2チャネル保護層15Bは、10nm以上100nm以下の厚さを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有した表面を備える可撓性基板と、
前記表面に位置するゲート電極と、
前記ゲート電極を覆うゲート絶縁層と、
前記ゲート絶縁層上に位置する半導体層と、を備えるボトムゲート型の薄膜トランジスタであって、
前記半導体層上に位置するチャネル保護層を備え、
前記チャネル保護層は、
前記半導体層上に位置し、有機高分子化合物から構成される第1チャネル保護層と、
前記第1チャネル保護層上に位置し、無機化合物から構成される第2チャネル保護層と、から構成され、
前記第1チャネル保護層は、50nm以上500nm以下の厚さを有し、
前記第2チャネル保護層は、10nm以上100nm以下の厚さを有する
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記ゲート絶縁層は、有機高分子化合物から構成される
請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記ゲート絶縁層は、
前記ゲート電極を覆い、有機高分子化合物から構成される第1ゲート絶縁層と、
前記第1ゲート絶縁層上に位置し、無機化合物から構成される第2ゲート絶縁層と、から構成され、
前記第1ゲート絶縁層は、200nm以上2000nm以下の厚さを有し、
前記第2ゲート絶縁層は、2nm以上30nm以下の厚さを有し、
前記半導体層は、前記第2ゲート絶縁層上に位置する
請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記ゲート絶縁層、前記半導体層、および、前記チャネル保護層を覆い、有機高分子化合物から構成される層間絶縁層をさらに備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記半導体層が、酸化物半導体または非結晶シリコンから構成される
請求項1から3のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記第1チャネル保護層がポリビニルピロリドンから構成され、
前記第2チャネル保護層が酸化珪素から構成される
請求項1から3のいずれか一項に記載の薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタの一例は、半導体層に含まれるチャネル領域を覆うチャネル保護層を備えている。半導体層が化学物質や大気に暴露されると半導体層の電子状態が変わり、これによって薄膜トランジスタの電気的特性が変わる。半導体層がチャネル保護層で覆われることによって、半導体層が化学物質や大気に暴露されることが抑えられるから、安定な電気的特性を有した薄膜トランジスタが得られる。チャネル保護層は、無機化合物から構成される(例えば、特許文献1,2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-76351号公報
【特許文献2】特開2022-97012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、薄膜トランジスタには、ウェアラブルデバイスなどの高い可撓性を有することが必要な表示装置への応用が期待されている。薄膜トランジスタが備えるチャネル保護層は硬い無機化合物から構成されるから、表示装置が屈曲した際にチャネル保護層が割れることがある。割れが生じたチャネル保護層は、半導体層を保護する機能を十分に有しないから、薄膜トランジスタの電気的特性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための薄膜トランジスタは、絶縁性を有した表面を備える可撓性基板と、前記表面に位置するゲート電極と、前記ゲート電極を覆うゲート絶縁層と、前記ゲート絶縁層上に位置する半導体層と、を備える。薄膜トランジスタは、前記半導体層上に位置するチャネル保護層を備える。前記チャネル保護層は、前記半導体層上に位置し、有機高分子化合物から構成される第1チャネル保護層と、前記第1チャネル保護層上に位置し、無機化合物から構成される第2チャネル保護層と、から構成される。前記第1チャネル保護層は、50nm以上500nm以下の厚さを有し、前記第2チャネル保護層は、10nm以上100nm以下の厚さを有する。
【0006】
上記薄膜トランジスタによれば、有機高分子化合物から構成される第1チャネル保護層上に無機化合物から構成される第2チャネル保護層が位置するから、チャネル保護層が高いバリア性を有することが可能である。しかも、第1チャネル保護層が有機高分子化合物から構成され、かつ、2つの保護層の厚さが上述した範囲内に含まれるから、可撓性基板が屈曲した際に硬い第2チャネル保護層において生じたひずみは、第2チャネル保護層と半導体層との間に位置する柔らかい第1チャネル保護層によって緩和される。これにより、可撓性基板の屈曲に起因したチャネル保護層の劣化が抑えられ、結果として、薄膜トランジスタにおいて、可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性が高められる。
【0007】
上記薄膜トランジスタにおいて、前記ゲート絶縁層は、有機高分子化合物から構成されてもよい。
上記薄膜トランジスタによれば、ゲート絶縁層が無機化合物から構成される場合に比べてゲート絶縁層が柔らかいから、可撓性基板が屈曲した際に半導体層において生じたひずみは、ゲート絶縁層によって緩和される。これにより、可撓性基板の屈曲に起因した半導体層の劣化が抑えられ、結果として、薄膜トランジスタにおいて、可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性がさらに高められる。
【0008】
上記薄膜トランジスタにおいて、前記ゲート絶縁層は、前記ゲート電極を覆い、有機高分子化合物から構成される第1ゲート絶縁層と、前記第1ゲート絶縁層上に位置し、無機化合物から構成される第2ゲート絶縁層と、から構成され、前記第1ゲート絶縁層は、200nm以上2000nm以下の厚さを有し、前記第2ゲート絶縁層は、2nm以上30nm以下の厚さを有し、前記半導体層は、前記第2ゲート絶縁層上に位置してもよい。
【0009】
上記薄膜トランジスタによれば、半導体層が位置する第2ゲート絶縁層が無機化合物から構成されるから、半導体層と第2ゲート絶縁層との間において良好な界面が形成されやすい。しかも、ゲート絶縁層は、有機高分子化合物から構成された第1ゲート絶縁層を備え、かつ、第1ゲート絶縁層の厚さと第2ゲート絶縁層の厚さとが上述した範囲内に含まれるから、可撓性基板の屈曲に際して硬い第2ゲート絶縁層において生じたひずみが柔らかい第1ゲート絶縁層によって緩和される。結果として、薄膜トランジスタにおいて、可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性が高まる。
【0010】
上記薄膜トランジスタにおいて、前記ゲート絶縁層、前記半導体層、および、前記チャネル保護層を覆い、有機高分子化合物から構成される層間絶縁層をさらに備えてもよい。
上記薄膜トランジスタによれば、薄膜トランジスタが層間絶縁層をさらに備えるから、半導体層がチャネル保護層に加えて層間絶縁層によっても保護される。また、層間絶縁層が有機高分子化合物から構成されるから、層間絶縁層が無機化合物から構成される場合に比べて、可撓性基板の屈曲時に薄膜トランジスタにひずみが生じにくいから、薄膜トランジスタにおいて、可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性が高められる。
【0011】
上記薄膜トランジスタにおいて、前記半導体層が、酸化物半導体または非結晶シリコンから構成されてもよい。
上記薄膜トランジスタによれば、半導体層が酸化物半導体または非単結晶シリコンから構成されるから、薄膜トランジスタの電気的特性を高めることができる。
【0012】
上記薄膜トランジスタにおいて、前記第1チャネル保護層がポリビニルピロリドンから構成され、前記第2チャネル保護層が酸化珪素から構成されてもよい。
上記薄膜トランジスタによれば、第1チャネル保護層がポリビニルピロリドンから構成され、かつ、第2チャネル保護層が酸化珪素から構成される。そのため、上述した第1チャネル保護層と第2チャネル保護層とから構成されるチャネル保護層が、薄膜トランジスタにおける可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性を高める実効性が高まる。
【発明の効果】
【0013】
上記薄膜トランジスタによれば、可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、エッチストップ構造を有したボトムゲート型の薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図2図2は、図1が示す薄膜トランジスタの層構造における一部を示す平面図である。
図3図3は、バックチャネルエッチ構造を有したボトムゲート型の薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図4図4は、図3が示す薄膜トランジスタの層構造における一部を示す平面図である。
図5図5は、エッチストップ構造を有し、かつ、2層構造のゲート絶縁層を備える薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図6図6は、バックチャネルエッチ構造を有し、かつ、2層構造のゲート絶縁層を備える薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図7図7は、エッチストップ構造を有し、かつ、層間絶縁層を備える薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図8図8は、バックチャネルエッチ構造を有し、かつ、層間絶縁層を備える薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図9図9は、エッチストップ構造を有し、かつ、2層構造のゲート絶縁層と層間絶縁層とを備える薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図10図10は、バックチャネルエッチ構造を有し、かつ、2層構造のゲート絶縁層と層間絶縁層とを備える薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図11図11は、比較例1の薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図12図12は、比較例2の薄膜トランジスタの構造を示す断面図である。
図13図13は、実施例および比較例の薄膜トランジスタの層構造を示す表である。
図14図14は、実施例および比較例の薄膜トランジスタの評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図14を参照して、薄膜トランジスタの一実施形態を説明する。なお、以下に説明する薄膜トランジスタにおけるソースとドレインとは、薄膜トランジスタの駆動回路の動作によって定まるため、第1の電極がソースからドレインに機能を替えてもよく、かつ、第2の電極がドレインからソースに機能を替えてもよい。
【0016】
本開示の薄膜トランジスタの型式は、ボトムゲート型である。本開示の薄膜トランジスタは、層構造にかかわらず、以下の条件を満たす。
【0017】
(条件1)チャネル保護層は、半導体層上に位置し、有機高分子化合物から構成される第1チャネル保護層と、第1チャネル保護層上に位置し、無機化合物から構成される第2チャネル保護層とから構成される。
(条件2)第1チャネル保護層は、50nm以上500nm以下の厚さを有する。
(条件3)第2チャネル保護層は、10nm以上100nm以下の厚さを有する。
【0018】
本開示の薄膜トランジスタによれば、有機高分子化合物から構成される第1チャネル保護層上に無機化合物から構成される第2チャネル保護層が位置するから、チャネル保護層が高いバリア性を有することが可能である。しかも、第1チャネル保護層が有機高分子化合物から構成され、かつ、2つの保護層の厚さが上述した範囲内に含まれるから、可撓性基板が屈曲した際に硬い第2チャネル保護層において生じたひずみは、第2チャネル保護層と半導体層との間に位置する柔らかい第1チャネル保護層によって緩和される。これにより、可撓性基板の屈曲に起因したチャネル保護層の劣化が抑えられ、結果として、薄膜トランジスタにおいて、可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性が高められる。
【0019】
[薄膜トランジスタの構造]
図1から図10を参照して薄膜トランジスタの層構造を詳細に説明する。
図1が示す薄膜トランジスタ10は、エッチストップ構造を有している。薄膜トランジスタ10は、可撓性基板11、ゲート電極12、ゲート絶縁層13、および、半導体層14を備えている。可撓性基板11は、絶縁性を有した表面11Sを備えている。ゲート電極12は、可撓性基板11の表面11Sに位置している。ゲート絶縁層13は、ゲート電極12を覆っている。ゲート絶縁層13は、ゲート電極12の全体を覆っている。半導体層14は、ゲート絶縁層13上に位置している。可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、ゲート絶縁層13の面積は半導体層14の面積よりも大きい。
【0020】
薄膜トランジスタ10は、半導体層14上に位置するチャネル保護層15を備えている。チャネル保護層15は、第1チャネル保護層15Aと第2チャネル保護層15Bとから構成されている。第1チャネル保護層15Aは、半導体層14上に位置し、かつ、有機高分子化合物から構成されている。第2チャネル保護層15Bは、第1チャネル保護層15A上に位置し、無機化合物から構成されている。チャネル保護層15は、半導体層14の一部を覆っている。可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、第1チャネル保護層15Aの面積と第2チャネル保護層15Bの面積とが等しい。第1チャネル保護層15Aは、50nm以上500nm以下の厚さを有している。第2チャネル保護層15Bは、10nm以上100nm以下の厚さを有している。
【0021】
図1が示す薄膜トランジスタ10において、ゲート絶縁層13は、有機高分子化合物から構成されてよい。これにより、ゲート絶縁層13が無機化合物から構成される場合に比べてゲート絶縁層13が柔らかいから、可撓性基板11が屈曲した際に半導体層14において生じたひずみは、ゲート絶縁層13によって緩和される。これにより、可撓性基板11の屈曲に起因した半導体層14の劣化が抑えられ、結果として、薄膜トランジスタ10において、可撓性基板11の屈曲に対する電気的な耐久性がさらに高められる。
【0022】
半導体層14は、酸化物半導体または非結晶シリコンから構成されてよい。半導体層14が酸化物半導体または非単結晶シリコンから構成されることによって、薄膜トランジスタ10の電気的特性を高めることができる。
【0023】
第1チャネル保護層15Aがポリビニルピロリドンから構成され、かつ、第2チャネル保護層15Bが酸化珪素から構成されてもよい。この場合には、上述した第1チャネル保護層15Aと第2チャネル保護層15Bとから構成されるチャネル保護層15が、薄膜トランジスタ10における可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性を高める実効性が高まる。
【0024】
薄膜トランジスタ10は、ソース電極16とドレイン電極17とをさらに備えている。ソース電極16は、チャネル保護層15の一部と半導体層14の一部とを覆っている。ドレイン電極17は、チャネル保護層15の他の一部と半導体層14の他の一部とを覆っている。
【0025】
図2は、可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見た薄膜トランジスタ10の一部を示している。なお、図2では、説明の便宜上、薄膜トランジスタ10のうちで、半導体層14、チャネル保護層15、ソース電極16、および、ドレイン電極17のみが示されている。
【0026】
図2が示すように、ソース電極16とドレイン電極17とが並ぶ配列方向において、ソース電極16はチャネル保護層15の第1端部を覆い、かつ、ドレイン電極17はチャネル保護層15の第2端部を覆っている。配列方向において、ソース電極16は半導体層14の第1端部を覆い、かつ、ドレイン電極17は半導体層14の第2端部を覆っている。すなわち、半導体層14のうち、第1端部および第2端部に挟まれた中央部は、ソース電極16にも覆われていないし、ドレイン電極17にも覆われていない。
【0027】
半導体層14のうちで、ソース電極16とドレイン電極17とに挟まれた領域である中央部が、チャネル領域14CHである。チャネル領域14CHは、半導体層14のうちでチャネル保護層15によって覆われた部分でもある。そのため、配列方向に沿うチャネル保護層の長さがチャネル長Lである。配列方向に直交する方向に沿う半導体層14の長さが、チャネル幅Wである。チャネル領域14CHは、チャネル長Lとチャネル幅Wとによって特定される。
【0028】
図3が示す薄膜トランジスタ10は、バックチャネルエッチ構造を有している。薄膜トランジスタ10は、上述したチャネルエッチ型の薄膜トランジスタ10と同様に、可撓性基板11、ゲート電極12、ゲート絶縁層13、および、半導体層14を備えている。ソース電極16は半導体層14の一部を覆い、かつ、ドレイン電極17は半導体層14の他の一部を覆っている。チャネル保護層15は、ソース電極16の一部とドレイン電極17の一部とを覆っている。チャネル保護層15のうち、第1チャネル保護層15Aが、ソース電極16、ドレイン電極17、および、半導体層14に接している。第2チャネル保護層15Bは、第1チャネル保護層15A上に位置している。
【0029】
図4は、可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見た薄膜トランジスタ10の一部を示している。なお、図4では、説明の便宜上、薄膜トランジスタ10のうちで、半導体層14、チャネル保護層15、ソース電極16、および、ドレイン電極17のみが示されている。
【0030】
図4が示すように、ソース電極16とドレイン電極17とが並ぶ配列方向において、ソース電極16は、半導体層14の第1端部を覆い、かつ、ドレイン電極17は、半導体層14の第2端部を覆っている。すなわち、半導体層14のうち、第1端部および第2端部に挟まれた中央部は、ソース電極16にも覆われていないし、ドレイン電極17にも覆われていない。配列方向において、チャネル保護層15は、ソース電極16におけるドレイン電極17に面する端部と、ドレイン電極17におけるソース電極16に面する端部と、半導体層14の中央部とを覆っている。
【0031】
半導体層14のうちで、ソース電極16とドレイン電極17とに挟まれた中央部が、チャネル領域14CHである。チャネル領域14CHは、半導体層14のうちでチャネル保護層15によって覆われた部分でもある。そのため、配列方向において、ソース電極16とドレイン電極17との間の距離が、チャネル長Lである。配列方向と直交する方向に沿う半導体層14の長さが、チャネル幅Wである。チャネル領域14CHは、チャネル長Lとチャネル幅Wとによって特定される。
【0032】
図5および図6が示すように、薄膜トランジスタ10は2層構造のゲート絶縁層13を備えてもよい。
図5が示す薄膜トランジスタ10は、図1が示す薄膜トランジスタ10と同様にエッチストップ構造を有している。図5が示す薄膜トランジスタ10の層構造では、図1が示す薄膜トランジスタ10の層構造と比べて、ゲート絶縁層13の構造が異なっている。
【0033】
ゲート絶縁層13は、第1ゲート絶縁層13Aと第2ゲート絶縁層13Bとから構成されている。第1ゲート絶縁層13Aは、ゲート電極12を覆い、かつ、有機高分子化合物から構成されている。第1ゲート絶縁層13Aは、ゲート電極12の全体を覆っている。第2ゲート絶縁層13Bは、第1ゲート絶縁層13A上に位置し、かつ、無機化合物から構成されている。可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、第2ゲート絶縁層13Bの面積は、第1ゲート絶縁層13Aの面積よりも小さい。
【0034】
第1ゲート絶縁層13Aは、200nm以上2000nm以下の厚さを有している。第2ゲート絶縁層13Bは、2nm以上30nm以下の厚さを有している。半導体層14は、第2ゲート絶縁層13B上に位置している。可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、第2ゲート絶縁層13Bの面積は、半導体層14の面積と等しい。
【0035】
半導体層14が位置する第2ゲート絶縁層13Bが無機化合物から構成されるから、半導体層14と第2ゲート絶縁層13Bとの間において良好な界面が形成されやすい。しかも、ゲート絶縁層13は、有機高分子化合物から構成された第1ゲート絶縁層13Aを備え、かつ、第1ゲート絶縁層13Aの厚さと第2ゲート絶縁層13Bの厚さとが上述した範囲内に含まれるから、可撓性基板11の屈曲に際して硬い第2ゲート絶縁層13Bにおいて生じたひずみが柔らかい第1ゲート絶縁層13Aによって緩和される。結果として、薄膜トランジスタ10において、可撓性基板11の屈曲に対する電気的な耐久性が高まる。
【0036】
図6が示す薄膜トランジスタ10は、図3が示す薄膜トランジスタ10と同様にバックチャネルエッチ構造を有している。図6が示す薄膜トランジスタ10の層構造では、図3が示す薄膜トランジスタ10の層構造と比べて、ゲート絶縁層13の構造が異なっている。
【0037】
ゲート絶縁層13は、図5が示す薄膜トランジスタ10と同様に、第1ゲート絶縁層13Aと第2ゲート絶縁層13Bとから構成されている。第1ゲート絶縁層13Aは有機高分子化合物から構成され、かつ、200nm以上2000nm以下の厚さを有している。第2ゲート絶縁層13Bは無機化合物から構成され、かつ、2nm以上30nm以下の厚さを有している。ソース電極16は、第2ゲート絶縁層13Bの第1端部、および、第1ゲート絶縁層13Aの第1端部を覆っている。ドレイン電極17は、第2ゲート絶縁層13Bの第2端部、および、第1ゲート絶縁層13Aの第2端部を覆っている。
【0038】
図7から図10が示すように、薄膜トランジスタ10は層間絶縁層を備えてもよい。
図7が示す薄膜トランジスタ10は、図1が示す薄膜トランジスタ10と同様にエッチストップ構造を有している。図7が示す薄膜トランジスタ10の層構造では、図1が示す薄膜トランジスタ10の層構造と比べて、層間絶縁層18を備える点が異なっている。
【0039】
層間絶縁層18は、ゲート絶縁層13、半導体層14、および、チャネル保護層15を覆い、かつ、有機高分子化合物から構成されている。層間絶縁層18は、さらにソース電極16およびドレイン電極17を覆っている。
【0040】
薄膜トランジスタ10が層間絶縁層18をさらに備えるから、半導体層14がチャネル保護層15に加えて層間絶縁層18によっても保護される。また、層間絶縁層18が有機高分子化合物から構成されるから、層間絶縁層18が無機化合物から構成される場合に比べて、可撓性基板11の屈曲時に薄膜トランジスタ10にひずみが生じにくいから、薄膜トランジスタ10において、可撓性基板11の屈曲に対する電気的な耐久性が高められる。
【0041】
図8が示す薄膜トランジスタ10は、図3が示す薄膜トランジスタ10と同様にバックチャネルエッチ構造を有している。図8が示す薄膜トランジスタ10の層構造では、図3が示す薄膜トランジスタ10の層構造と比べて、層間絶縁層18を備える点が異なっている。
【0042】
層間絶縁層18は、図7が示す薄膜トランジスタ10の層間絶縁層18と同様に、ゲート絶縁層13、半導体層14、チャネル保護層15、ソース電極16、および、ドレイン電極17を覆っている。
【0043】
図9が示す薄膜トランジスタ10は、図5が示す薄膜トランジスタ10と同様にエッチストップ構造を有し、かつ、ゲート絶縁層13が第1ゲート絶縁層13Aと第2ゲート絶縁層13Bとから構成されている。図9が示す薄膜トランジスタ10の層構造では、図5が示す薄膜トランジスタ10の層構造と比べて、層間絶縁層18を備える点が異なっている。
【0044】
層間絶縁層18は、図7が示す薄膜トランジスタ10の層間絶縁層18と同様に、ゲート絶縁層13、半導体層14、チャネル保護層15、ソース電極16、および、ドレイン電極17を覆っている。
【0045】
図10が示す薄膜トランジスタ10は、図6が示す薄膜トランジスタ10と同様にバックチャネルエッチ構造を有している。図10が示す薄膜トランジスタ10の層構造では、図6が示す薄膜トランジスタ10の層構造と比べて、層間絶縁層18を備える点が異なっている。
【0046】
層間絶縁層18は、図7が示す薄膜トランジスタ10の層間絶縁層18と同様に、ゲート絶縁層13、半導体層14、チャネル保護層15、ソース電極16、および、ドレイン電極17を覆っている。
【0047】
以下、薄膜トランジスタ10が備える各層をより詳しく説明する。
[可撓性基板11]
可撓性基板11において、薄膜トランジスタ10のゲート電極12が位置する面が絶縁性を有することが必要である。先に説明した薄膜トランジスタ10では、可撓性基板11の表面11Sが絶縁性を有することが必要である。可撓性基板11は、透明基板でもよいし、不透明基板でもよい。薄膜トランジスタ10が透過性ディスプレイに適用される場合には、可撓性基板11は透明基板であることが好ましい。
【0048】
可撓性基板11を構成する材料は、有機高分子化合物、有機材料と無機材料との両方を含む有機無機複合材料、金属、合金、および、無機高分子化合物から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0049】
有機高分子化合物は、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルサルフェン、トリアセチルセルロース、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン‐テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリイミド、フッ素系ポリマー、環状ポリオレフィン系ポリマーから構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0050】
有機無機複合材料は、例えば、ガラス繊維強化アクリルポリマー、または、ガラス繊維強化ポリカーボネートであってよい。金属は、例えば、アルミニウム、または、銅であってよい。合金は、例えば、鉄クロム合金、鉄ニッケル合金、または、鉄ニッケルクロム合金であってよい。無機高分子化合物は、例えば、無アルカリガラスまたはアルカリガラスであってよい。無アルカリガラスは、酸化珪素、酸化硼素、および、酸化アルミニウムを含む。アルカリガラスは、酸化珪素、酸化ナトリウム、および、酸化カルシウムを含む。
【0051】
可撓性基板11は、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。可撓性基板11が多層構造体である場合には、可撓性基板11を構成する各層を構成する材料は、それぞれ有機高分子化合物、有機無機複合材料、金属、合金、および、無機高分子化合物から構成される群から選択されるいずれか一種であってよい。
【0052】
可撓性基板11が単層構造体である場合には、可撓性基板11は、絶縁性を有したフィルムでもよいし、可撓性を有した薄板ガラスでもよい。可撓性基板11が薄板ガラスである場合には、薄板ガラスの厚さは0.5mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
【0053】
可撓性基板11が多層構造体である場合には、可撓性基板11は、導電性を有した箔と、箔上に形成された絶縁層とを備えてもよい。
【0054】
可撓性基板11が多層構造体である場合には、可撓性基板11は、下地基板と、下地基板から剥離可能に構成された剥離層とを備えてもよい。剥離層は、薄膜トランジスタ10とともに、下地基板から剥がされる。薄膜トランジスタ10を備える剥離層は、別の可撓性基材に貼り付けられてもよい。可撓性基材は、例えば、耐熱性が低い紙類、セロファン基材、布類、再生繊維類、皮革類、ナイロン基材、ポリウレタン基材であってよい。この場合には、剥離層と可撓性基材とは、別の可撓性基板11を構成する。
【0055】
[電極12,16,17]
各電極12,16,17はそれぞれ単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。各電極12,16,17が多層構造体である場合には、各電極12,16,17はそれぞれ電極の下層との密着性を高める最下層、および、電極の上層との密着性を高める最上層を有することが好ましい。
【0056】
各電極12,16,17を構成する材料は、単一材料から構成される金属でもよいし、合金でもよいし、導電性を有する金属酸化物でもよい。各電極12,16,17を構成する材料は、互いに異なってもよいし、同じであってもよい。
【0057】
金属は、例えば、遷移金属、アルカリ金属、および、アルカリ土類金属から構成される群から選択される少なくとも一種である。遷移金属は、例えば、インジウム、アルミニウム、金、銀、白金、チタン、銅、ニッケル、タングステンから構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。アルカリ金属は、例えば、リチウム、あるいは、セシウムであってよい。アルカリ土類金属は、例えば、マグネシウムおよびカルシウムの少なくとも一種であってよい。合金は、例えば、モリブデンニオブ、鉄クロム、アルミニウムリチウム、マグネシウム銀、アルミネオジウム合金、アルミネオジムジルコニア合金(Al‐Nd)から構成される群から選択されるいずれか一種であってよい。
【0058】
金属酸化物は、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化インジウムカドミウム、酸化カドミウム錫、酸化亜鉛錫から構成される群から選択されるいずれか一種であってよい。金属酸化物は、不純物を含んでもよい。不純物を含有する金属酸化物は、例えば不純物を含む酸化インジウムであってよい。当該不純物は、例えば、錫、亜鉛、チタン、セリウム、ハフニウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステンから構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。不純物を含有する金属酸化物は、例えば不純物を含む酸化錫でもよい。当該不純物は、例えばアンチモンまたはフッ素であってよい。不純物を含有する金属酸化物は、例えば不純物を含む酸化亜鉛でもよい。当該不純物は、ガリウム、アルミニウム、硼素から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。また、不純物を含む金属酸化物は、水素原子を含む金属酸化物でもよい。金属酸化物中に含まれる水素原子は、金属酸化物中において良好な電子供与サイトを形成することが可能である。
【0059】
電極12,16,17の成膜方法は、例えば、スパッタ法、蒸着法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、原子堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、印刷法、塗布法などであってよい。電極12,16,17の成膜方法は、スパッタ法または印刷法であることが好ましい。スパッタ法および印刷法によれば、他の成膜方法に比べて、生産速度が高く、生産コストが低く、かつ、大面積へ成膜が容易である。
【0060】
電極12,16,17を形成する際には、各種の成膜方法によって電極12,16,17を形成するための導電膜を成膜した後に、フォトリソグラフィ法を用いて導電膜上にレジストパターンを形成する。次いで、導電膜のうち不要な部分をエッチングによって除去することによって、導電膜を各電極12,16,17が有する形状に加工することができる。
【0061】
なお、印刷法を用いて電極12,16,17を形成する場合には、例えば、導電材料、溶媒、および、可塑剤などを混合することによってインキを作成した後に、インキを用いて電極12,16,17のパターンを印刷する。次いで、電極12,16,17のパターンを焼成することによって、パターンから溶媒や可塑剤などを除去し、これによって電極12,16,17を得ることができる。また、印刷法を用いて電極12,16,17を形成する場合には、印刷法を用いて電極12,16,17を形成するための薄膜を形成した後に、フォトリソグラフィ法によって薄膜を所望の形状にパターニングしてもよい。
【0062】
各電極12,16,17に適用することが可能な材料の範囲を広げる観点では、各電極12,16,17の電気抵抗率が、5.0×10-5Ω・cm以上であることが好ましい。薄膜トランジスタ10の消費電力を抑える観点では、各電極12,16,17の電気抵抗率は、1.0×10-2Ω・cm以下であることが好ましい。各電極12,16,17の電気抵抗値を抑える観点では、各電極12,16,17の厚さは、50nm以上であることが好ましい。薄膜トランジスタ10を構成する各層の平坦性を高める観点では、各電極12,16,17の厚さは、300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。
【0063】
[ゲート絶縁層13]
ゲート絶縁層13は、上述したように、単層構造を有してもよいし、2層構造を有してもよい。ゲート絶縁層13が単層構造を有する場合には、ゲート絶縁層13の構成は、ゲート絶縁層13が2層構造を有する場合における第1ゲート絶縁層13Aの構成と同等である。そのため以下では、ゲート絶縁層13が2層構造を有する場合における第1ゲート絶縁層13Aおよび第2ゲート絶縁層13Bの構成を説明する一方で、ゲート絶縁層13が単層構造を有する場合におけるゲート絶縁層13の構成の説明を省略する。
【0064】
第1ゲート絶縁層13Aは、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。第1ゲート絶縁層13Aが単層構造体あるいは多層構造体のいずれであっても、第1ゲート絶縁層13Aは、上述したように、有機高分子化合物から構成されることが好ましい。これにより本開示の薄膜トランジスタ10は、可撓性を有することが可能である。なお、本開示の薄膜トランジスタ10において、第1ゲート絶縁層13Aは、有機高分子化合物と無機化合物の混合物である有機無機複合材料であって、かつ、混合物において有機高分子化合物の体積分率が50%を超える材料であってもよい。すなわち、ゲート絶縁層13において、有機高分子化合物が主成分である。
【0065】
有機高分子化合物は、例えば、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルポリマー、エポキシポリマー、アモルファスフッ素ポリマーを含むフッ素系ポリマー、メラミンポリマー、フランポリマー、キシレンポリマー、ポリアミドイミドポリマー、シリコーンポリマーなどであってよい。有機高分子化合物中には、フッ素原子が含まれてもよい。
【0066】
有機無機複合材料は、有機高分子化合物と無機化合物との混合物であるから、有機高分子化合物に由来する柔軟性と、無機化合物に由来する高い耐電圧特性および高い誘電率特性とを兼ね備える。そのため、有機無機複合材料から構成される第1ゲート絶縁層13Aによれば、柔軟性、高い耐電圧特性、および、高い誘電率特性を得ることが可能である。
【0067】
有機無機複合材料は、例えば、アクリル系ポリマー内に無機化合物の微粒子を分散させた材料であってよい。微粒子を構成する無機化合物は、例えば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化珪素(SiO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化イットリウム(Y)などであってよい。
【0068】
上述したように、無機化合物の混合比率は、体積分率で50%未満である。無機化合物の混合比率が50%以上である場合には、無機化合物の特性が支配的になり、これによってゲート絶縁層13の柔軟性が損なわれ、結果としてゲート絶縁層13を備える薄膜トランジスタ10の耐屈曲性が低下する。これに対して、無機化合物の混合比率が50%未満である、すなわち有機高分子化合物の混合比率が50%を超える場合には、有機高分子化合物の特性が支配的になるから、ゲート絶縁層13の柔軟性が高まる。
【0069】
第1ゲート絶縁層13Aの抵抗率は、1×1011Ω・cm以上であることが好ましい。第1ゲート絶縁層13Aの抵抗率は、1×1012Ω・cm以上であることがより好ましい。第1ゲート絶縁層13Aの厚さは、200nm以上2000nm以下であることが好ましい。第1ゲート絶縁層13Aの厚さは、500nm以上1000nm以下であることがより好ましい。第1ゲート絶縁層13Aの厚さが200nm以上であるから、第1ゲート絶縁層13Aが、薄膜トランジスタ10の第1ゲート絶縁層13Aとして十分な耐電圧特性を有し、これによって薄膜トランジスタ10の駆動中に絶縁破壊を生じることが抑えられる。一方、第1ゲート絶縁層13Aの厚さが2000nm以下であるから、駆動電圧の上昇が抑えられ、これによって、薄膜トランジスタ10による消費電力の上昇が抑えられる。
【0070】
本開示の薄膜トランジスタ10が、共通する1つの可撓性基板11に対して複数の薄膜トランジスタが位置する薄膜トランジスタアレイに適用された場合には、可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、第1ゲート絶縁層13Aが島状にパターニングされていてもよい。すなわち、薄膜トランジスタアレイにおいて、薄膜トランジスタ10ごとに個別の第1ゲート絶縁層13Aを備えてもよい。これによって、互いに隣り合う薄膜トランジスタの第1ゲート絶縁層13Aが離間してもよい。
【0071】
第1ゲート絶縁層13Aのパターニングには、例えば以下に記載の方法を用いることができる。可撓性基板11上に絶縁層を形成した後に絶縁層をパターニングする場合には、絶縁層のパターニングにドライエッチング法を用いることができる。また、第1ゲート絶縁層13Aを塗布法で形成する場合には、第1ゲート絶縁層13Aを構成する材料に感光性を付与し、そして、材料の塗布によって形成された塗布膜を露光し、次いで塗布膜を現像する。これにより、パターニングされた絶縁層を得ることができる。また、印刷法を用いて第1ゲート絶縁層13Aを形成する場合には、所定のパターンを有した第1ゲート絶縁層13Aを一度の処理で形成することができる。また、第1ゲート絶縁層13Aを形成するための絶縁膜を可撓性基板11上に成膜する前に、可撓性基板11として、表面11Sにおいて、第1ゲート絶縁層13Aを形成しない領域に撥液層を選択的に形成した基材を用いる。次いで、可撓性基板11の表面11Sに塗布法を用いてゲート絶縁層を形成するための絶縁層を形成する。この際に、撥液層が塗布液をはじくから、撥液層のパターンに応じたパターンを有した絶縁層を形成することができる。
【0072】
第2ゲート絶縁層13Bは、無機化合物から構成されることが好ましい。第2ゲート絶縁層13Bは、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。ゲート絶縁層13が無機化合物を含むことによって、半導体層14が非単結晶シリコンまたは酸化物半導体から構成される場合に、半導体層14とゲート絶縁層13との間において良好な界面が形成される。これにより、薄膜トランジスタ10が優れた電気的特性を発現することができる。
【0073】
無機化合物は、酸化物でもよいし、窒化物でもよいし、酸化窒化物でもよい。無機化合物は、例えば、珪素、アルミニウム、タンタル、ハフニウム、イットリウム、ジルコニウムから構成される群から選択されるいずれか1種を含む。無機化合物は、例えば、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(Si)、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム(Al)、酸化タンタル(Ta)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ジルコニウム(ZrO)から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0074】
第2ゲート絶縁層13Bの抵抗値は、1×1011Ω・cm以上であることが好ましい。第2ゲート絶縁層13Bの抵抗値は、1×1013Ω・cm以上であることがより好ましい。第2ゲート絶縁層13Bの厚さは、2nm以上30nm以下であることが好ましく、5nm以上20nm以下であることがより好ましい。第2ゲート絶縁層13Bの厚さが2nm以上であることによって、連続的な膜を形成することができ、これによって第2ゲート絶縁層13Bと半導体層14との間に良好な界面を形成することが可能である。また、第2ゲート絶縁層13Bの厚さが2nm以上であることによって、ゲート電極12とソース電極16との間、あるいは、ゲート電極12とドレイン電極17との間においてゲートリーク電流が流れることが抑えられる。第2ゲート絶縁層13Bの厚さが30nm以下であることによって、第2ゲート絶縁層13Bの可撓性の低下が抑えられ、これによって可撓性基板11の屈曲時に第2ゲート絶縁層13Bに割れが生じにくい。
【0075】
第2ゲート絶縁層13Bは、半導体層14と直に接している。第2ゲート絶縁層13Bの表面は半導体層14との界面を構成する。薄膜トランジスタ10を動作させる際の捕捉順位であるキャリアトラップの抑制が要求される場合には、第2ゲート絶縁層13Bが含むダングリングボンドは少ないことが好ましい。第2ゲート絶縁層13Bに含まれる未結合手であるダングリングボンドは、キャリアトラップの要因である。
【0076】
可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、第2ゲート絶縁層13Bの面積は、第1ゲート絶縁層13Aの面積以下であってよい。例えば、第2ゲート絶縁層13Bは、半導体層14と同一の形状を有した島状にパターニングされてよい。第2ゲート絶縁層13Bは、第2ゲート絶縁層13Bよりも柔らかい、すなわちヤング率が低い第1ゲート絶縁層13Aに接している。そのため、可撓性基板11が屈曲した際にゲート絶縁層13において生じるひずみは、第1ゲート絶縁層13Aに集中する。これにより、第2ゲート絶縁層13Bではひずみが低減されるから、可撓性基板11の曲げに対する第2ゲート絶縁層13Bの耐久性が高まり、結果として薄膜トランジスタ10の耐久性が高まる。
【0077】
第2ゲート絶縁層13Bの成膜方法は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、熱CVD法、原子堆積法(ALD法:Atomic Layer Deposition)、スパッタ法、蒸着法、塗布法、陽極酸化法などであってよい。
【0078】
第2ゲート絶縁層13Bを島状にパターニングする場合には、例えば以下に記載の方法を用いることができる。可撓性基板11上に絶縁層を形成した後に絶縁層をパターニングする場合には、絶縁層のパターニングにドライエッチング法を用いることができる。また、塗布法を用いてゲート絶縁層を形成する場合には、第2ゲート絶縁層13Bを構成する材料に感光性を付与し、そして、材料の塗布によって形成された塗布膜を露光し、次いで塗布膜を現像する。これにより、パターニングされた絶縁層を得ることができる。また、印刷法を用いて第2ゲート絶縁層13Bを形成する場合には、所定のパターンを有した第2ゲート絶縁層13Bを一度の処理で形成することができる。
【0079】
[半導体層14]
半導体層14を構成する材料は、無機半導体でもよいし、有機半導体でもよい。移動度を高める観点、および、信頼性を高める観点から、半導体層14は無機半導体から構成されることが好ましい。無機半導体は、化合物半導体、非単結晶シリコン、単結晶シリコンであってよい。成膜温度を有機高分子化合物から構成される基板の耐熱温度程度まで低める観点では、半導体層14は、酸化物半導体または非単結晶シリコンから構成されることが好ましい。
【0080】
酸化物半導体は、インジウム、カドミウム、亜鉛、錫から構成される群から選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。酸化物半導体は、アルミニウム、チタン、ガリウム、タングステン、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ハフニウム、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)から構成される群から選択される少なくとも一種の金属元素を含んでもよい。
【0081】
非単結晶シリコンは、例えば、水素化非晶質シリコン(a‐Si:H)、水素化微結晶シリコン(μc‐Si:H)、低温多結晶シリコン(LTPS:Low Temperature Polycrystalline Silicon)などであってよい。
【0082】
半導体層14の厚さにおける均一性を高める観点では、半導体層14の厚さは、5nm以上であることが好ましい。半導体層14を構成する材料の使用量を抑える観点では、半導体層14の厚さは、100nm以下であることが好ましい。厚さの均一性を高めること、および、材料の使用量を抑制することを両立する観点では、半導体層14の厚さは、5nm以上100nm以下であることが好ましい。さらに、これらの効果を得る実効性を高める観点では、半導体層14の厚さは、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。
【0083】
半導体層14の成膜方法は、例えば、スパッタ法、蒸着法、プラズマCVD法、原子堆積法、塗布法、転写法などであってよい。半導体層14をスパッタ法、蒸着法、プラズマCVD法、原子堆積法、塗布法のいずれかを用いて形成する場合には、半導体層14を形成するための薄膜を形成した後に、フォトマスクなどを用いたフォトリソグラフィ法によって薄膜をエッチングし、これによって半導体層14を得ることができる。なお、印刷法を用いて半導体層14を形成する場合にも、半導体層14を形成するための薄膜を印刷法によって形成した後に、フォトリソグラフィ法によって薄膜をパターニングすることによって半導体層14を得ることも可能であるし、また、印刷法によって所定の形状を有した半導体層14を形成することも可能である。
【0084】
そのため、半導体層14を有機高分子化合物から構成されるゲート絶縁層13上に直に成膜する場合には、半導体層14を原子堆積法、印刷法、または、転写法などを用いて成膜することが好ましい。これらの方法を用いて半導体層14を成膜することにより、例えばスパッタ法またはプラズマCVD法などのプラズマを用いた方法に比べて、ゲート絶縁層13がプラズマ中のイオンやラジカルによって損傷を受けることが避けられる。そのため、ゲート絶縁層13と半導体層14の間に良好な界面を形成することが可能である。
【0085】
また、印刷法を用いて無機半導体から構成される半導体層14を成膜する場合には、印刷によって形成された膜中に残留する炭素などを分解するために、印刷によって形成された膜を高温で焼成することが多い。そのため、印刷法を用いて半導体層14を形成する場合は、有機高分子化合物から構成されるゲート絶縁層13が熱分解しない温度において焼成が可能な半導体の前駆体材料を選択することが重要である。
【0086】
[チャネル保護層15]
薄膜トランジスタ10は、半導体層14のバックチャネル部を覆うチャネル保護層15を備えている。半導体層14において、第2ゲート絶縁層13Bに接する面とは反対側の面が、バックチャネル部である。半導体層14のバックチャネル部が、薄膜トランジスタ10の製造過程において、半導体層14の形成後の工程において化学物質や大気に暴露されることによって、半導体層14の電子状態が変わる。チャネル保護層15は、半導体層14のバックチャネル部を覆い、これによってバックチャネル部が化学物質や大気に暴露されることを抑える。結果として、チャネル保護層15は、薄膜トランジスタ10の電気的特性を安定化させる。
【0087】
上述したように、本開示の薄膜トランジスタ10が備えるチャネル保護層15は、第1チャネル保護層15Aと第2チャネル保護層15Bとから構成されている。第1チャネル保護層15Aは、ヤング率の低い有機高分子化合物から構成されることが好ましい。これにより、薄膜トランジスタ10の可撓性を高めることが可能である。第1チャネル保護層15Aのヤング率は、0.3GPa以上10.0GPa以下であることが好ましい。
【0088】
有機高分子化合物は、例えば、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルポリマー、エポキシポリマー、アモルファスフッ素ポリマーを含むフッ素系ポリマー、メラミンポリマー、フランポリマー、キシレンポリマー、ポリアミドイミドポリマー、シリコーンポリマーなどであってよい。有機高分子化合物は、フッ素原子を含んでもよい。
【0089】
第1チャネル保護層15Aの抵抗率は、1×1011Ω・cm以上であることが好ましく、1×1013Ω・cm以上であることがより好ましい。第1チャネル保護層15Aの厚さは、50nm以上500nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがより好ましい。
【0090】
第1チャネル保護層15Aの厚さが50nm以上であるから、ソース電極16とドレイン電極17との間において十分な耐電圧特性を有し、これによって薄膜トランジスタ10の駆動中に絶縁破壊を生じることが抑えられる。また、第1チャネル保護層15Aの厚さが50nm以上であるから、可撓性基板11の屈曲により第2チャネル保護層15Bに生じたひずみを第1チャネル保護層15Aが吸収することができ、これによって屈曲に対する耐性が高まる。一方、第1チャネル保護層15Aの厚さが500nm以下であるから、チャネル領域14CHに作用する応力が抑えられ、これによって薄膜トランジスタ10の電気的特性の劣化が抑えられる。
【0091】
第2チャネル保護層15Bは、無機化合物から構成される。無機化合物は、酸化物でもよいし、窒化物でもよいし、酸化窒化物でもよい。無機化合物は、珪素、アルミニウム、タンタル、ハフニウム、イットリウム、ジルコニウムから構成される群から選択されるいずれか1種を含む。無機化合物は、例えば、酸化珪素(SiO)、窒化珪素(Si)、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム(Al)、酸化タンタル(Ta)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ジルコニウム(ZrO)から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0092】
第2チャネル保護層15Bの抵抗率は、1×1011Ω・cm以上であることが好ましく、1×1013Ω・cm以上であることがより好ましい。第2チャネル保護層15Bの厚さは、10nm以上100nm以下であることが好ましく、20nm以上50nm以下であることがより好ましい。
【0093】
第2チャネル保護層15Bの厚さが10nm以上であるから、ソース電極16とドレイン電極17との間において十分な耐電圧特性を有し、これによって薄膜トランジスタ10の駆動中に絶縁破壊を生じることが抑えられる。また、第2チャネル保護層15Bを連続膜の状態で形成することが可能であるから、第2チャネル保護層15Bのガスバリア性が担保される。一方、第2チャネル保護層15Bの厚さが100nm以下であるから、第2チャネル保護層15Bの可撓性が維持された状態で、第2チャネル保護層15Bのガスバリア性も担保することができる。結果として、薄膜トランジスタ10の電気的特性が高まる。
【0094】
チャネル保護層15が備える2つの層のうち、ヤング率が低い第1チャネル保護層15Aが半導体層14上に位置し、かつ、ヤング率が高い第2チャネル保護層15Bが第1チャネル保護層15A上に位置している。可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、第1チャネル保護層15Aは半導体層14のバックチャネル部を覆うことが可能な大きさを有していればよく、また、第2チャネル保護層15Bは第1チャネル保護層15Aを覆うことが可能な大きさを有してればよい。そのため例えば、第1チャネル保護層15Aおよび第2チャネル保護層15Bの両方が、バックチャネル部と同じ大きさを有してもよい。
【0095】
チャネル保護層15がヤング率が低い第1チャネル保護層15Aとヤング率が高い第2チャネル保護層15Bとを備えるから、可撓性基板11の屈曲時に、チャネル保護層15では第1チャネル保護層15Aにひずみが集中する。これにより、第2チャネル保護層15Bではひずみが大幅に低減されるから、薄膜トランジスタ10において、可撓性基板11の屈曲に対する電気的な耐久性が高まる。
【0096】
第1チャネル保護層15Aの成膜方法は、例えば、塗布法、印刷法などであってよい。第2チャネル保護層15Bの成膜方法は、例えば、スパッタ法、蒸着法、プラズマCVD法、原子堆積法、塗布法、転写法などであってよい。
【0097】
[層間絶縁層18]
層間絶縁層18は、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。層間絶縁層18は有機高分子化合物から構成される。層間絶縁層18を構成する有機高分子化合物は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコーン、ポリスチレン、ポリアクリルアミドゲル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー、エポキシポリマー、アモルファスフッ素ポリマーを含むフッ素系ポリマー、メラミンポリマー、フランポリマー、キシレンポリマー、ポリアミドイミドポリマー、シリコーンポリマーなどであってよい。有機高分子化合物は、フッ素原子を含んでもよい。
【0098】
層間絶縁層18を構成する有機高分子化合物は、伸縮性を有した有機高分子化合物であってもよい。伸縮性を有した有機系材料は、例えば、伸縮性エポキシポリマー、伸縮性シリコーン、伸縮性ポリウレタンなどであってよい。
【0099】
層間絶縁層18のヤング率は、ゲート絶縁層13が単層構造体である場合には、層間絶縁層18のヤング率は有機高分子化合物から構成されるゲート絶縁層13のヤング率よりも低いことが好ましい。これに対して、ゲート絶縁層13が2層構造を有する場合には、層間絶縁層18のヤング率は、有機高分子化合物から構成される第1ゲート絶縁層13Aのヤング率よりも低いことが好ましい。層間絶縁層18のヤング率は10MPa以下であることが好ましく、3MPa以下であることがより好ましい。
【0100】
有機高分子化合物から構成されるゲート絶縁層13,13Aのヤング率、および、層間絶縁層18のヤング率は、適切な有機高分子化合物を選択することによって制御することができる。たとえば、フッ素樹脂であるCYTOP(CYTOPは登録商標)のヤング率は、アクリル樹脂のヤング率よりも低い。そのため、アクリル樹脂を用いてゲート絶縁層13,13Aを形成し、かつ、フッ素樹脂であるCYTOPを用いて層間絶縁層18を形成することによって、層間絶縁層18のヤング率をゲート絶縁層13,13Aのヤング率よりも低くすることができる。
【0101】
また、ゲート絶縁層13,13Aと層間絶縁層18とが同一の有機高分子化合物から構成される場合であっても、塗布法、焼成温度、乾燥速度などを制御することによって、ゲート絶縁層13,13Aのヤング率を層間絶縁層18のヤング率よりも低くすることが可能である。例えば、アクリル樹脂では、焼成温度が230℃である場合のヤング率が7.8GPaである一方で、焼成温度が180℃である場合のヤング率が6.9GPaである。すなわち、アクリル樹脂の焼成温度を低めることによって、アクリル樹脂のヤング率を低めることが可能である。このように、焼成温度を適切に制御することによって、同一の有機高分子化合物を用いて薄膜を形成した場合であっても、薄膜が有するヤング率を任意に制御することが可能である。
【0102】
層間絶縁層18の厚さは、例えば、500nm以上4000nm以下であってよく、1μm以上3000nm以下であることが好ましい。
層間絶縁層18を形成する方法は、例えば、蒸着法、塗布法、印刷法などであってよい。層間絶縁層18を形成する方法は、塗布法または印刷法であることが好ましい。層間絶縁層18はパターニングされていなくてもよいし、必要に応じて層間絶縁層18の一部がパターニングされてもよい。
【0103】
層間絶縁層18のパターニングには、層間絶縁層18を構成する材料に適した方法が用いられる。層間絶縁層18のパターニングには、例えばドライエッチング法を用いることができる。また、塗布法を用いて層間絶縁層18を形成する場合には、層間絶縁層18を構成する材料に感光性を付与し、かつ、材料の塗布によって形成された塗布膜を露光し、次いで塗布膜を現像する。これにより、パターニングされた絶縁層を得ることができる。また、印刷法を用いて層間絶縁層18を形成する場合には、所定のパターンを有した層間絶縁層18を一度の処理で形成することができる。また、層間絶縁層18を形成するための絶縁膜を可撓性基板11上に成膜する前に、可撓性基板11として、表面11Sにおいて、層間絶縁層18を形成しない領域に撥液層を選択的に形成した基材を用いる。次いで、可撓性基板11の表面11Sに塗布法を用いて層間絶縁層18を形成するための絶縁層を形成する。この際に、撥液層が塗布液をはじくから、撥液層のパターンに応じたパターンを有した絶縁層を形成することができる。
【0104】
[実施例]
図11から図14を参照して、実施例および比較例を説明する。なお、以下に説明する各実施例および各比較例では、図13が示す沿う構造を有した薄膜トランジスタを作製した。また、各実施例および各比較例では、10μmの厚さを有したポリイミド基材を可撓性基板として準備した。
【0105】
[実施例1]
実施例1では、図1が示す単層構造のゲート絶縁層13を備えるエッチストップ構造の薄膜トランジスタ10を作製した。薄膜トランジスタ10を作製する際には、まず、可撓性基板11の表面11Sに、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。
【0106】
その後、Al‐Nd薄膜上にスピンコート法を用いて感光性ポジ型レジストを塗布した。次いで、マスク露光を行った後に、アルカリ現像による現像を行うことによって、フォトレジストパターンを形成した。次に、Al‐Nd薄膜を酸系のエッチング液を用いてウェットエッチングし、これによってAl‐Nd薄膜のうち不要な部分を除去した。続いて、レジスト剥離液により、Al‐Nd薄膜からフォトレジストパターンを除去することによってゲート電極12を得た。すなわち、フォトリソグラフィ法を用いて、ゲート電極12を得た。なお、以下において、Al‐Nd薄膜と同様の方法によって薄膜をパターニングした場合に、フォトリソグラフィ法によって薄膜をパターニングしたと記載する。
【0107】
次に、可撓性基板11にスピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによってゲート絶縁層13を得た。ゲート絶縁層13の厚さは、200nmであった。
【0108】
そして、ゲート絶縁層13上に、原子堆積法(Atomic Layer Deposition)を用いて30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、[1,1,1‐trimethyl‐N‐(trimethylsilyl)silanaminato]‐indium、diethlzinc(DEZ)、trimehyl‐gallium(TMGa)を出発材料として用いた。また、反応剤として水を導入し、かつ、パージガスとして窒素ガスを用いた。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングし、これによって半導体層14を得た。
【0109】
次に、半導体層14上に、スピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1チャネル保護層15Aを得た。第1チャネル保護層15Aの厚さは50nmであった。
【0110】
続いて、第1チャネル保護層15A上に、CVD法を用いて10nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜における不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO薄膜をパターニングすることによって、第2チャネル保護層15Bを得た。
【0111】
次に、第2チャネル保護層15B上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてAl系合金薄膜をパターニングし、これによってソース電極16およびドレイン電極17を形成した。これにより、チャネル長Lが10μmであり、かつ、チャネル幅Wが20μmであるチャネル領域14CHを得た。結果として、実施例1の薄膜トランジスタ10を得た。
【0112】
[実施例2]
実施例1において以下を変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の薄膜トランジスタを得た。
【0113】
ゲート絶縁層13の厚さ:1000nm
半導体層14:ZnO
第1チャネル保護層15Aの厚さ:500nm
【0114】
なお、半導体層14を形成する際には、ゲート絶縁層13上に、原子堆積法を用いて30nmの厚さを有したZnO薄膜を形成した。この際に、diethlzinc(DEZ)を出発材料として用いた。また、反応剤として水を導入し、かつ、パージガスとして窒素ガスを用いた。
【0115】
[実施例3]
実施例3では、図5が示す二層構造のゲート絶縁層13を備えるエッチストップ構造の薄膜トランジスタ10を作製した。薄膜トランジスタ10を作製する際には、まず、可撓性基板11の表面11Sに、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板11に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。その後、フォトリソグラフィ法を用いてAl‐Nd薄膜をパターニングし、これによってゲート電極12を得た。
【0116】
次に、可撓性基板11にスピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1ゲート絶縁層13Aを得た。第1ゲート絶縁層13Aの厚さは200nmであった。
【0117】
続いて、第1ゲート絶縁層13A上に、原子堆積法を用いて2nmの厚さを有したAl薄膜を形成した。この際に、Al(CH(TMA)を出発材料として用いた。また、反応剤として水とオゾンを導入し、かつ、パージガスとして窒素ガスを用いた。Al薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、リアクティブイオンエッチング法によってAl薄膜の不要な部分を除去し、これによって第2ゲート絶縁層13Bを得た。
【0118】
そして、第2ゲート絶縁層13B上に、DCスパッタリング法を用いて、30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、InGaZnOの組成を有するターゲットと、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガスであるスパッタガスとを用いた。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングし、これによって半導体層14を得た。
【0119】
次に、半導体層14上に、スピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1チャネル保護層15Aを得た。第1チャネル保護層15Aの厚さは50nmであった。
【0120】
続いて、第1チャネル保護層15A上に、CVD法を用いて、10nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜の不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO薄膜をパターニングすることによって、第2チャネル保護層15Bを得た。
【0121】
次に、第2チャネル保護層15B上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてAl系合金薄膜をパターニングし、これによってソース電極16およびドレイン電極17を形成した。これにより、チャネル長Lが10μmであり、かつ、チャネル幅Wが20μmであるチャネル領域14CHを得た。結果として、実施例3の薄膜トランジスタ10を得た。
【0122】
[実施例4]
実施例3において以下を変更した以外は、実施例3と同様の方法によって、実施例4の薄膜トランジスタを得た。
【0123】
第1ゲート絶縁層13Aの厚さ:2000nm
第1チャネル保護層15Aの厚さ:500nm
【0124】
[実施例5]
実施例5では、図6が示す二層構造のゲート絶縁層13を備えるバックチャネルエッチ構造の薄膜トランジスタ10を作製した。薄膜トランジスタ10を作製する際には、まず、可撓性基板11の表面11Sに、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。その後、フォトリソグラフィ法を用いてAl‐Nd薄膜をパターニングし、これによってゲート電極12を得た。
【0125】
次に、可撓性基板11にスピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1ゲート絶縁層13Aを得た。第1ゲート絶縁層13Aの厚さは200nmであった。
【0126】
続いて、第1ゲート絶縁層13A上に、CVD法を用いて、30nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜の不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO薄膜をパターニングすることによって、第2ゲート絶縁層13Bを得た。
【0127】
そして、第2ゲート絶縁層13B上に、プラズマCVD法を用いて30nmの厚さを有した水素化アモルファスシリコン薄膜を形成した。この際に、シラン(SiH)ガス、および、水素(H)ガスから構成される混合ガスを用いた。次いで、水素化アモルファスシリコン薄膜をフォトリソグラフィ法でパターニングすることによって、半導体層14を得た。
【0128】
次に、半導体層14上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてAl系合金薄膜をパターニングし、これによってソース電極16およびドレイン電極17を形成した。これにより、チャネル長Lが10μmであり、かつ、チャネル幅Wが20μmであるチャネル領域14CHを得た。
【0129】
続いて、ソース電極16およびドレイン電極17上に、スピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1チャネル保護層15Aを得た。第1チャネル保護層15Aの厚さは50nmであった。
【0130】
次に、第1チャネル保護層15A上に、CVD法を用いて、100nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜の不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO薄膜をパターニングすることによって、第2チャネル保護層15Bを得た。これにより、実施例5の薄膜トランジスタ10を得た。
【0131】
[実施例6]
実施例5において以下を変更した以外は、実施例5と同様の方法によって、実施例6の薄膜トランジスタを得た。
【0132】
第1ゲート絶縁層13Aの厚さ:2000nm
半導体層14:水素化微結晶シリコン
第1チャネル保護層15Aの厚さ:500nm
【0133】
なお、半導体層14を形成する際には、第1ゲート絶縁層13A上に、プラズマCVD法を用いて30nmの厚さを有した水素化微結晶シリコン薄膜を形成した。この際に、シラン(SiH)ガス、および、水素(H)ガスから構成される混合ガスを用いた。次いで、水素化微結晶シリコン薄膜をフォトリソグラフィ法でパターニングすることによって、半導体層14を得た。
【0134】
[実施例7]
実施例7では、図7が示す単層のゲート絶縁層13と層間絶縁層18を備えるエッチストップ構造の薄膜トランジスタ10を作製した。薄膜トランジスタ10を作製する際にはまず、可撓性基板11の表面11Sに、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。その後、フォトリソグラフィ法を用いてAl‐Nd薄膜をパターニングし、これによってゲート電極12を得た。
【0135】
次に、可撓性基板11にスピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによってゲート絶縁層13を得た。ゲート絶縁層13の厚さは2000nmであった。
【0136】
そして、ゲート絶縁層13上に、原子堆積法を用いて30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。[1,1,1‐trimethyl‐N‐(trimethylsilyl)silanaminato]‐indium、diethlzinc(DEZ)、trimehyl‐gallium(TMGa)を出発材料として用いた。また、反応剤として水を導入し、かつ、パージガスとして窒素ガスを用いた。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングし、これによって半導体層14を得た。
【0137】
次に、半導体層14上に、スピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1チャネル保護層15Aを得た。第1チャネル保護層15Aの厚さは50nmであった。
【0138】
続いて、第1チャネル保護層15A上に、CVD法を用いて、10nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜の不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO薄膜をパターニングすることによって、第2チャネル保護層15Bを得た。
【0139】
次に、第2チャネル保護層15B上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてAl系合金薄膜をパターニングし、これによってソース電極16およびドレイン電極17を形成した。これにより、チャネル長Lが10μmであり、かつ、チャネル幅Wが20μmであるチャネル領域14CHを得た。
【0140】
続いて、可撓性基板11にスピンコート法を用いて感光性を有したアクリル樹脂を塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによって層間絶縁層18を得た。焼成後の層間絶縁層18の厚さは、1000nmであった。これにより、実施例7の薄膜トランジスタを得た。
【0141】
[実施例8]
実施例7において以下を変更した以外は、実施例7と同様の方法によって、実施例8の薄膜トランジスタを得た。
【0142】
ゲート絶縁層13の厚さ:200nm
半導体層14:ZnO
第1チャネル保護層15Aの厚さ:500nm
層間絶縁層18の厚さ:1500nm
【0143】
なお、半導体層14を形成する際には、ゲート絶縁層13上に、原子堆積法を用いて30nmの厚さを有したZnO薄膜を形成した。この際に、diethlzinc(DEZ)を出発材料として用いた。また、反応剤として水を導入し、かつ、パージガスとして窒素ガスを用いた。
【0144】
[実施例9]
実施例9では、図9が示す二層構造のゲート絶縁層13と層間絶縁層18を備えるエッチストップ構造の薄膜トランジスタ10を作製した。薄膜トランジスタ10を作製する際には、まず、可撓性基板11の表面11Sに、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。その後、フォトリソグラフィ法を用いてAl‐Nd薄膜をパターニングし、これによってゲート電極12を得た。
【0145】
次に、可撓性基板11にスピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1ゲート絶縁層13Aを得た。第1ゲート絶縁層13Aの厚さは2000nmであった。
【0146】
続いて、第1ゲート絶縁層13A上に、原子堆積法を用いて2nmの厚さを有したAl薄膜を形成した。この際に、Al(CH(TMA)を出発材料として用いた。また、反応剤として水とオゾンを導入し、かつ、パージガスとして窒素ガスを用いた。Al薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、リアクティブイオンエッチング法によってAl薄膜の不要な部分を除去し、これによって第2ゲート絶縁層13Bを得た。
【0147】
そして、第2ゲート絶縁層13B上に、DCスパッタリング法を用いて、30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、InGaZnOの組成を有するターゲットと、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O)との混合ガスであるスパッタガスとを用いた。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングし、これによって半導体層14を得た。
【0148】
次に、半導体層14上に、スピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1チャネル保護層15Aを得た。第1チャネル保護層15Aの厚さは50nmであった。
【0149】
続いて、第1チャネル保護層15A上に、CVD法を用いて、100nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜の不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO膜をパターニングすることによって、第2チャネル保護層15Bを得た。
【0150】
次に、第2チャネル保護層15B上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてAl系合金薄膜をパターニングし、これによってソース電極16およびドレイン電極17を形成した。これにより、チャネル長Lが10μmであり、かつ、チャネル幅Wが20μmであるチャネル領域14CHを得た。
【0151】
続いて、スピンコート法を用いて可撓性基板11に感光性を有したアクリル樹脂を塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによって層間絶縁層18を得た。焼成後の層間絶縁層18の厚さは、2000nmであった。これにより、実施例9の薄膜トランジスタ10を得た。
【0152】
[実施例10]
実施例9において以下を変更した以外は、実施例9と同様の方法によって、実施例10の薄膜トランジスタを得た。
【0153】
第1ゲート絶縁層13Aの厚さ:200nm
第2ゲート絶縁層13Bの厚さ:30nm
半導体層14:水素化アモルファスシリコン
層間絶縁層18の厚さ:3000nm
第1チャネル保護層15Aの厚さ:500nm
【0154】
なお、半導体層14を形成する際には、プラズマCVD法を用いて30nmの厚さを有した水素化アモルファスシリコン薄膜を形成した。この際に、シラン(SiH)ガス、および、水素(H)から構成される混合ガスを用いた。次いで、水素化アモルファスシリコン薄膜をフォトリソグラフィ法でパターニングすることによって、半導体層14を得た。
【0155】
[実施例11]
実施例3において以下を変更した以外は、実施例3と同様の方法によって、実施例11の薄膜トランジスタを得た。
【0156】
第1ゲート絶縁層13Aの厚さ:2000nm
第2ゲート絶縁層13Bの厚さ:1nm
半導体層14:IGZO
【0157】
なお、半導体層14を形成する際には、第1ゲート絶縁層13A上に、原子堆積法を用いて30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、[1,1,1‐trimethyl‐N‐(trimethylsilyl)silanaminato]‐indium、diethlzinc(DEZ)、trimehyl‐gallium(TMGa)を出発材料として用いた。また、反応剤として水を導入し、かつ、パージガスとして窒素ガスを用いた。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングし、これによって半導体層14を得た。
【0158】
[実施例12]
実施例3において以下を変更した以外は、実施例3と同様の方法によって、実施例12の薄膜トランジスタを得た。
【0159】
第2ゲート絶縁層13B:SiO
第2チャネル保護層15Bの厚さ:500nm
【0160】
第2ゲート絶縁層13Bを形成する際には、第1ゲート絶縁層13A上に、CVD法を用いて、35nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜の不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO薄膜をパターニングすることによって、第2ゲート絶縁層13Bを得た。
【0161】
[比較例1]
比較例1では、図11が示す単層構造のゲート絶縁層を備えるエッチストップ構造のトランジスタを作製した。
【0162】
図11が示すように、薄膜トランジスタ20は、可撓性基板21を備えている。可撓性基板21の表面21Sには、ゲート電極22が位置している。ゲート電極22は、ゲート絶縁層23によって覆われている。ゲート絶縁層23上には、半導体層24が位置している。半導体層24上には有機高分子化合物から構成されたチャネル保護層25が位置している。半導体層24の第1端部およびチャネル保護層25の第1端部はソース電極26によって覆われ、かつ、半導体層24の第2端部およびチャネル保護層25の第2端部はドレイン電極27によって覆われている。
【0163】
薄膜トランジスタ20を作製する際には、まず、可撓性基板21の表面に、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。その後、フォトリソグラフィ法を用いてAl‐Nd薄膜をパターニングし、これによってゲート電極22を得た。
【0164】
次に、可撓性基板21にスピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによってゲート絶縁層23を得た。ゲート絶縁層23の厚さは200nmであった。
【0165】
そして、ゲート絶縁層23上に、原子堆積法を用いて30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、[1,1,1‐trimethyl‐N‐(trimethylsilyl)silanaminato]‐indium、diethlzinc(DEZ)、trimehyl‐gallium(TMGa)を出発材料として用いた。また、反応剤として水を導入し、かつ、パージガスとして窒素ガスを用いた。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングし、これによって半導体層24を得た。
【0166】
次に、半導体層24上に、スピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによってチャネル保護層25を得た。チャネル保護層25の厚さは500nmであった。
【0167】
続いて、チャネル保護層25上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてAl系合金薄膜をパターニングし、これによってソース電極26およびドレイン電極27を形成した。これにより、チャネル長Lが10μmであり、かつ、チャネル幅Wが20μmであるチャネル領域を得た。これにより、比較例1の薄膜トランジスタ20を得た。
【0168】
[比較例2]
比較例2では、図12が示す単層構造のゲート絶縁層33を備えるエッチストップ構造の薄膜トランジスタ30を作製した。
【0169】
図12が示すように、薄膜トランジスタ30は、可撓性基板31を備えている。可撓性基板31の表面31Sには、ゲート電極32が位置している。ゲート電極32は、ゲート絶縁層33によって覆われている。ゲート絶縁層33上には、半導体層34が位置している。半導体層34上にはチャネル保護層35が位置している。半導体層34の第1端部およびチャネル保護層35の第1端部はソース電極36によって覆われ、かつ、半導体層34の第2端部およびチャネル保護層35の第2端部はドレイン電極37によって覆われている。
【0170】
薄膜トランジスタ30を作製する際には、まず、可撓性基板31の表面31Sに、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。その後、フォトリソグラフィ法を用いてAl‐Nd薄膜をパターニングし、これによってゲート電極32を得た。
【0171】
次に、可撓性基板31にスピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによってゲート絶縁層33を得た。ゲート絶縁層33の厚さは2000nmであった。
【0172】
そして、ゲート絶縁層33上に、原子堆積法を用いて30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、[1,1,1‐trimethyl‐N‐(trimethylsilyl)silanaminato]‐indium、diethlzinc(DEZ)、trimehyl‐gallium(TMGa)を出発材料として用いた。また、反応剤として水を導入し、かつ、パージガスとして窒素ガスを用いた。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングし、これによって半導体層34を得た。
【0173】
続いて、半導体層34上に、CVD法を用いて、100nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜の不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO薄膜をパターニングすることによって、チャネル保護層35を得た。
【0174】
次に、チャネル保護層35上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてAl系合金薄膜をパターニングし、これによってソース電極36およびドレイン電極37を形成した。これにより、チャネル長Lが10μmであり、かつ、チャネル幅Wが20μmであるチャネル領域を得た。これにより、比較例2の薄膜トランジスタ30を得た。
【0175】
[比較例3]
比較例3では、図5が示す二層構造のゲート絶縁層13を備えるエッチストップ構造の薄膜トランジスタ10を作製した。まず、可撓性基板11の表面11Sに、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。その後、フォトリソグラフィ法を用いてAl‐Nd薄膜をパターニングし、ゲート電極12を得た。
【0176】
次に、可撓性基板11にスピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1ゲート絶縁層13Aを得た。第1ゲート絶縁層13Aの厚さは200nmであった。
【0177】
続いて、第1ゲート絶縁層13A上に、CVD法を用いて、30nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜の不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO薄膜をパターニングすることによって、第2ゲート絶縁層13Bを得た。
【0178】
そして、第2ゲート絶縁層13B上に、DCスパッタリング法を用いて、30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、InGaZnOの組成を有するターゲットと、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガスであるスパッタガスとを用いた。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングし、これによって半導体層14を得た。
【0179】
次に、半導体層14上に、スピンコート法を用いて架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)を塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、フォトリソグラフィ法を用いてPVP薄膜をパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによって第1チャネル保護層15Aを得た。第1チャネル保護層15Aの厚さは50nmであった。
【0180】
続いて、第1チャネル保護層15A上に、CVD法を用いて、8nmの厚さを有したSiO薄膜を形成した。この際に、原料ガスとしてシラン(SiH)ガスと一酸化二窒素(NO)ガスとを用いた。その後、SiO薄膜上にフォトレジストパターンを形成した後、四フッ化炭素ガスを用いたリアクティブイオンエッチング法によってSiO薄膜の不要な部分を除去した。すなわち、ドライエッチング法を用いてSiO薄膜をパターニングすることによって、第2チャネル保護層15Bを得た。
【0181】
次に、第2チャネル保護層15B上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてAl系合金薄膜をパターニングし、これによってソース電極16およびドレイン電極17を形成した。これにより、チャネル長Lが10μmであり、かつ、チャネル幅Wが20μmであるチャネル領域14CHを得た。これにより、比較例3の薄膜トランジスタ10を得た。
【0182】
[比較例4]
比較例3において以下を変更した以外は、比較例3と同様の方法によって、比較例4の薄膜トランジスタを得た。
【0183】
第1ゲート絶縁層13Aの厚さ:2000nm
第1チャネル保護層15Aの厚さ:500nm
第2チャネル保護層15Bの厚さ:109nm
【0184】
[比較例5]
比較例3において以下を変更した以外は、比較例3と同様の方法によって、比較例5の薄膜トランジスタを得た。
【0185】
半導体層14:水素化アモルファスシリコン
第1チャネル保護層15Aの厚さ:42nm
第2チャネル保護層15Bの厚さ:10nm
【0186】
なお、半導体層14を形成する際には、プラズマCVD法を用いて30nmの厚さを有した水素化アモルファスシリコン薄膜を形成した。この際に、シラン(SiH)ガス、および、水素(H)ガスから構成される混合ガスを用いた。次いで、水素化アモルファスシリコン薄膜をフォトリソグラフィ法でパターニングすることによって、半導体層14を得た。
【0187】
[比較例6]
比較例3において以下を変更した以外は、比較例3と同様の方法によって、比較例6の薄膜トランジスタを得た。
【0188】
第1ゲート絶縁層13Aの厚さ:2000nm
半導体層14:水素化微結晶シリコン
第1チャネル保護層15Aの厚さ:513nm
第2チャネル保護層15Bの厚さ:100nm
【0189】
なお、半導体層14を形成する際には、プラズマCVD法を用いて30nmの厚さを有した水素化微結晶シリコン薄膜を形成した。この際に、シラン(SiH)ガス、および、水素(H)ガスから構成される混合ガスを用いた。次いで、水素化微結晶シリコン薄膜をフォトリソグラフィ法でパターニングすることによって、半導体層14を得た。
【0190】
[評価方法]
[屈曲試験]
実施例1から12および比較例1から6の薄膜トランジスタの電気的な耐久性を評価するために、クラムシェル型曲げ試験機(DMLHP‐CS、ユアサシステム機器(株)製)を用いて、薄膜トランジスタを0.8mmの曲率半径で50万回屈曲させる屈曲試験を行った。なお、屈曲試験では、各実施例および各比較例の薄膜トランジスタが凹形状になる方向で屈曲試験を行ったため、屈曲試験時には薄膜トランジスタに対して圧縮の曲げ応力が負荷された。また、屈曲した薄膜トランジスタにおいて弧状の断面が連なる方向である屈曲の軸がチャネル幅と平行になるように、薄膜トランジスタを曲げ試験機に設置した。そして、屈曲試験の前後において、以下に説明する評価方法によって薄膜トランジスタの外観と電気的特性とを評価した。そして、屈曲試験前の電気的特性と、屈曲試験後の電気的特性とを比較した。
【0191】
[外観の評価方法]
各実施例および各比較例の薄膜トランジスタについて、光学顕微鏡を用いて上述した屈曲試験後における薄膜トランジスタの外観を観察した。光学顕微鏡における拡大の倍率を50倍から500倍に設定し、かつ、光学顕微鏡を用いてゲート絶縁層とチャネル領域に位置するチャネル保護層とにおけるクラックの有無を確認した。なお、屈曲試験において曲率半径を0.8mmに設定し、かつ、屈曲の軸をチャネル幅と平行に設定した場合には、特にチャネル領域に位置するチャネル保護層においてチャネル幅に沿ったクラックが発生しやすいため、チャネル保護層を500倍で観察した。
【0192】
[電気的特性の評価方法]
各実施例および各比較例の薄膜トランジスタについて、半導体パラメータアナライザ(B1500A、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いることによって、屈曲試験前後の伝達特性を測定した。そして、伝達特性から、移動度およびオンオフ比を算出した。また、屈曲試験前後における移動度の減少率、屈曲試験前後におけるオンオフ比の桁数の差分値、および、屈曲試験前後における閾値電圧の変化量ΔVthを算出した。
【0193】
なお、移動度の減少率を算出する際には、屈曲試験前の移動度に対する、屈曲試験前の移動度から屈曲試験後の移動度を減算した差分値の百分率を算出した。また、オンオフ比の桁数の差分値を算出する際には、屈曲試験前におけるオンオフ比の桁数から屈曲試験後におけるオンオフ比の桁数を減算した。また、閾値電圧の変化量ΔVthを算出する際には、屈曲試験前の閾値電圧から屈曲試験後の閾値電圧を減算した。
【0194】
閾値電圧の測定、移動度の算出、および、オンオフ比の算出では、まず、ソース電極の電圧を0Vに設定し、かつ、ソース電極とドレイン電極との間の電圧であるソース‐ドレイン電圧Vdsを10Vに設定し、ゲート電圧Vgsとドレイン電流Idとの関係である伝達特性を得た。ゲート電圧Vgsは、ソース電極とゲート電極との間の電圧である。ドレイン電流Idは、ドレイン電極に流れる電流である。この際、ゲート電極の電圧を-20Vから+20Vまで変化させることによって、ゲート電圧Vgsを変化させた。そして、ドレイン電流Idが1mAであるときのゲート電圧Vgsを閾値電圧として測定した。
【0195】
[評価結果]
各実施例および各比較例の薄膜トランジスタについて、屈曲試験後において外観を評価した結果、および、屈曲試験の前後において電気的特性を評価した結果は、図14が示す通りであった。
【0196】
図14が示すように、実施例1から実施例12の薄膜トランジスタは、屈曲試験後の外観評価において、クラックが生じた層を有しないことが認められた。また、電気特性評価では、移動度の変化率は10%以下であり、オンオフ比の桁数における差分値が1桁以下であり、かつ、しきい値電圧の変化量ΔVthが2V以下であることが認められた。
【0197】
一方、屈曲試験後の外観評価において、比較例1から比較例6の薄膜トランジスタのうち、比較例1,3,6の薄膜トランジスタはクラックが生じた層を有さず、かつ、比較例2,4,5の薄膜トランジスタでは、第2チャネル保護層にクラックが生じたことが認められた。また、各比較例の薄膜トランジスタでは、オンオフ比の桁数における差分値が1桁以下である一方で、移動度の変化率が14%以上であり、かつ、しきい値電圧の変化量ΔVthが2.4V以上であることが認められた。
【0198】
特に、比較例2,4,5の薄膜トランジスタでは、移動度の変化率が20%よりも大きく、かつ、しきい値電圧の変化量が5Vよりも大きいことが認められた。そのため、比較例2,4,5の薄膜トランジスタでは、第2チャネル保護層に生じたクラックのために、薄膜トランジスタが十分な電気的特性を示さないといえる。また、比較例1,3,6の薄膜トランジスタによれば、クラックが生じた層を有しなくても、上述したように、薄膜トランジスタの電気特性が低下することが認められた。
【0199】
こうした結果から、薄膜トランジスタが以下の条件を満たすことによって、可撓性基板の屈曲に対する薄膜トランジスタの電気的な耐久性を高めることが可能であるといえる。
【0200】
(条件1)チャネル保護層は、半導体層上に位置し、有機高分子化合物から構成される第1チャネル保護層と、第1チャネル保護層上に位置し、無機化合物から構成される第2チャネル保護層とから構成される。
(条件2)第1チャネル保護層は、50nm以上500nm以下の厚さを有する。
(条件3)第2チャネル保護層は、10nm以上100nm以下の厚さを有する。
【0201】
以上説明したように、薄膜トランジスタの一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)有機高分子化合物から構成される第1チャネル保護層15A上に無機化合物から構成される第2チャネル保護層15Bが位置するから、チャネル保護層15が高いバリア性を有することが可能である。しかも、第1チャネル保護層15Aが有機高分子化合物から構成され、かつ、2つの保護層の厚さが上述した範囲内に含まれるから、可撓性基板11が屈曲した際に硬い第2チャネル保護層15Bにおいて生じたひずみは、第2チャネル保護層15Bと半導体層14との間に位置する柔らかい第1チャネル保護層15Aによって緩和される。これにより、可撓性基板11の屈曲に起因したチャネル保護層15の劣化が抑えられ、結果として、薄膜トランジスタ10において、可撓性基板11の屈曲に対する電気的な耐久性が高められる。
【0202】
(2)ゲート絶縁層13が無機化合物から構成される場合に比べてゲート絶縁層13が柔らかいから、可撓性基板11が屈曲した際に半導体層14において生じたひずみは、ゲート絶縁層13によって緩和される。これにより、可撓性基板11の屈曲に起因した半導体層14の劣化が抑えられ、結果として、薄膜トランジスタ10において、可撓性基板11の屈曲に対する電気的な耐久性がさらに高められる。
【0203】
(3)半導体層が位置する第2ゲート絶縁層が無機化合物から構成される場合には、半導体層14と第2ゲート絶縁層13Bとの間において良好な界面が形成されやすい。ゲート絶縁層13が、有機高分子化合物から構成された第1ゲート絶縁層13Aを備え、かつ、第1ゲート絶縁層13Aの厚さと第2ゲート絶縁層13Bの厚さとが上述した範囲内に含まれる場合には、可撓性基板11の屈曲に際して硬い第2ゲート絶縁層13Bにおいて生じたひずみが柔らかい第1ゲート絶縁層13Aによって緩和される。結果として、薄膜トランジスタ10において、可撓性基板の屈曲に対する電気的な耐久性が高まる。
【0204】
(4)薄膜トランジスタ10が層間絶縁層18を備える場合には、半導体層14がチャネル保護層15に加えて層間絶縁層18によっても保護される。また、層間絶縁層18が有機高分子化合物から構成されることによって、層間絶縁層18が無機化合物から構成される場合に比べて、可撓性基板11の屈曲時に薄膜トランジスタ10にひずみが生じにくいから、薄膜トランジスタ10において、可撓性基板11の屈曲に対する電気的な耐久性が高められる。
【0205】
(5)半導体層14が酸化物半導体または非単結晶シリコンから構成されることによって、薄膜トランジスタ10の電気的特性を高めることができる。
(6)第1チャネル保護層15Aがポリビニルピロリドンから構成され、かつ、第2チャネル保護層15Bが酸化珪素から構成される。そのため、第1チャネル保護層15Aと第2チャネル保護層15Bとから構成されるチャネル保護層15が、薄膜トランジスタ10における可撓性基板11の屈曲に対する電気的な耐久性を高める実効性が高まる。
【符号の説明】
【0206】
10…薄膜トランジスタ
11…可撓性基板
11S…表面
12…ゲート電極
13…ゲート絶縁層
13A…第1ゲート絶縁層
13B…第2ゲート絶縁層
14…半導体層
15…チャネル保護層
15A…第1チャネル保護層
15B…第2チャネル保護層
16…ソース電極
17…ドレイン電極
18…層間絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14