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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081292
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】体温調節システム及び体温調節シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240611BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20240611BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240611BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/56
A47C7/62 Z
B60H1/00 102V
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194806
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】591240984
【氏名又は名称】株式会社鎌倉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 威史
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝彦
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
3L211
【Fターム(参考)】
3B084JC00
3B087DD11
3B087DE08
3B087DE09
3B087DE10
3L211AA09
3L211BA02
3L211BA03
3L211DA53
(57)【要約】
【課題】ユーザが着座する座面と流体との熱交換を効率的に行うことが可能な体温調節システム及び体温調節シートを提供する。
【解決手段】本発明の体温調節システムは、シート部と、流体回路と、流体温度調節部と、切替部と、を具備する。シート部は、座面を有し、ユーザが着座可能に構成される。流体回路は、シート部に配置された第1流路と、第1流路に接続されシート部の外部に配置された第2流路と、を有し、第1流路と第2流路との間で流体が循環する。流体温度調節部は、第2流路を流れる流体の温度を調節する。切替部は、ユーザがシート部に着座することにより、第1流路を流れる流体と座面との間の熱交換を可能とする第1状態と、ユーザがシート部から退座することにより、第1流路を流れる流体と座面との間の熱交換を第1状態よりも抑制する第2状態と、を切り替える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面を有し、ユーザが着座可能なシート部と、
前記シート部に配置された第1流路と、前記第1流路に接続され前記シート部の外部に配置された第2流路と、を有し、前記第1流路と前記第2流路との間で流体が循環する流体回路と、
前記第2流路を流れる前記流体の温度を調節する流体温度調節部と、
前記ユーザが前記シート部に着座することにより、前記第1流路を流れる前記流体と前記座面との間の熱交換を可能とする第1状態と、前記ユーザが前記シート部から退座することにより、前記第1流路を流れる前記流体と前記座面との間の熱交換を前記第1状態よりも抑制する第2状態と、を切り替える切替部と、
を具備する体温調節システム。
【請求項2】
請求項1に記載の体温調節システムであって、
前記切替部は、
前記ユーザの前記シート部への着座を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記流体回路における前記流体の流れ又は前記流体温度調節部の作動を制御する制御部と、を有する
体温調節システム。
【請求項3】
請求項2に記載の体温調節システムであって、
前記制御部は、
前記検出部が前記ユーザの前記シート部への着座を検出した場合に、前記第1状態として、前記流体の温度を調節するように前記流体温度調節部を制御し、
前記検出部が前記ユーザの前記シート部への着座を検出しなかった場合に、前記第2状態として、前記流体の温度の調節を前記第1状態よりも規制するように前記流体温度調節部を制御する
体温調節システム。
【請求項4】
請求項3に記載の体温調節システムであって、
前記流体温度調節部は、
気体の媒体を圧縮する圧縮部と、
圧縮された前記媒体を凝縮して液化させる凝縮部と、
前記凝縮部によって液化された前記媒体を減圧して膨張させる減圧部と、
前記減圧部によって減圧された前記媒体を蒸発させる蒸発部と、
を含み、前記蒸発部又は前記凝縮部において前記媒体と前記第2流路内の前記流体とを熱交換させる冷熱回路を有し、
前記制御部は、
前記第1状態において、前記圧縮部を作動させるように前記冷熱回路を制御し、
前記第2状態において、前記第1状態よりも前記圧縮部の作動量を低下させるように前記冷熱回路を制御する
体温調節システム。
【請求項5】
請求項2に記載の体温調節システムであって、
前記第2流路は、
前記第1流路へ流入する前記流体の通路となる往路部と、
前記第1流路から流出する前記流体の通路となる復路部と、
前記往路部と前記復路部との間に配置され、前記復路部から前記往路部へ前記流体を循環させるポンプと、
前記往路部と前記復路部との間を接続するバイパス流路と、
を含み、
前記切替部は、
前記第2流路に配置され、前記バイパス流路への前記流体の流入を制御することが可能な弁機構をさらに有し、
前記制御部は、
前記検出部が前記ユーザの前記シート部への着座を検出した場合に、前記第1状態として、前記バイパス流路への前記流体の流入を規制するように前記弁機構を制御し、
前記検出部が前記ユーザの前記シート部への着座を検出しなかった場合に、前記第2状態として、前記バイパス流路への前記流体の流入を許容するように前記弁機構を制御する
体温調節システム。
【請求項6】
請求項5に記載の体温調節システムであって、
前記弁機構は、
前記往路部又は前記バイパス流路の開放及び閉塞が可能な開閉弁を有する
体温調節システム。
【請求項7】
請求項5に記載の体温調節システムであって、
前記弁機構は、
前記往路部と前記バイパス流路との間で主流路の切り替えが可能な切替弁を有する
体温調節システム。
【請求項8】
請求項1に記載の体温調節システムであって、
前記切替部は、
前記シート部に配置され、前記ユーザの荷重によって弾性変形することで、前記第2状態から前記第1状態へ切り替える弾性部材を有する
体温調節システム。
【請求項9】
請求項8に記載の体温調節システムであって、
前記第1流路は、第1チューブを含み、
前記弾性部材は、
前記第1チューブに接続され、断熱性を有する、弾性変形可能な軟質チューブを含み、
前記軟質チューブは、前記第1チューブよりも大きい内径を有し、
前記第2状態では、前記流体が前記軟質チューブに優先的に流れることで、前記第1チューブにおける前記流体の流量が規制され、
前記第1状態では、前記ユーザの荷重によって前記軟質チューブが潰れることで、前記第2状態よりも前記第1チューブにおける前記流体の流量が増加する
体温調節システム。
【請求項10】
請求項8に記載の体温調節システムであって、
前記第1流路は、第1チューブを含み、
前記シート部は、
前記座面側に配置された第1主面と、前記第1チューブを収容し前記第1主面に開口し前記第1チューブの外径よりも大きい深さで形成された第1凹部と、含む、弾性変形可能な前記弾性部材として構成されたシート本体と、
前記座面を形成し、前記第1主面を被覆するカバー部材と、を有し、
前記第2状態では、前記カバー部材と前記第1チューブとが離間しており、
前記第1状態では、前記シート本体が弾性変形することで、前記カバー部材と前記第1チューブとが前記第2状態よりも近接する
体温調節システム。
【請求項11】
請求項10に記載の体温調節システムであって、
前記シート本体は、
前記第1凹部の側壁を形成し、前記第1チューブと隣接する壁部をさらに含む
体温調節システム。
【請求項12】
請求項11に記載の体温調節システムであって、
前記シート本体は、
前記第1チューブの延在方向において前記第1凹部と隣接して配置され、前記第1主面側から前記第1チューブを覆う蓋部をさらに含む
体温調節システム。
【請求項13】
請求項12に記載の体温調節システムであって、
前記シート本体は、
前記第1主面の反対側に配置された第2主面と、
前記第1凹部の底部を形成し前記第1チューブを支持する底部と、
前記蓋部と対向するように前記第2主面に開口して前記第1チューブを収容する溝部と、をさらに含む
体温調節システム。
【請求項14】
請求項10に記載の体温調節システムであって、
前記シート本体は、
前記第1凹部が形成される領域である第1領域に隣接し、前記第1領域との境界部で折り曲げ可能に構成された第2領域をさらに有し、
前記第1流路は、前記第2領域に配置された第2チューブを含み、
前記シート本体の前記第2領域は、
前記第2チューブを収容し前記第1主面に開口し前記第2チューブの外径よりも大きい深さで形成された第2凹部を含み、
前記第2状態では、前記カバー部材と前記第2チューブとが離間しており、
前記第1状態では、前記シート本体が弾性変形することで、前記カバー部材と前記第2チューブとが前記第2状態よりも近接する
体温調節システム。
【請求項15】
請求項14に記載の体温調節システムであって
前記第1主面からの前記第2凹部の最大深さは、前記第1主面からの前記第1凹部の最大深さよりも小さい
体温調節システム。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の体温調節システムであって、
前記流体は、冷却液である
体温調節システム。
【請求項17】
座面と、
温度調節された流体が流れる第1チューブと、
前記座面側に配置された第1主面と、前記第1チューブを収容し前記第1主面に開口し前記第1チューブの外径よりも大きい深さで形成された第1凹部と、含む、弾性変形可能なシート本体と、
前記座面を形成し、前記第1主面を被覆するカバー部材と、
を具備する体温調節シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に着用者の体温を調節する液体の流路を収容する体温調節シート及び体温調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトなどの特殊車両の運転のように、着座して行われる作業であっても、外気温下での作業は、高温又は低温による体調不良のリスクを伴う。このような体調不良のリスクを低減するため、ユーザが着座するシートの内部に、温度調節された液体の流路を設けた体温調節シートの開発が進められている。例えば、特許文献1には、マット内の配管に冷却された流体を供給するマット用冷却液循環供給装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2018-525205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、特殊車両の運転等の作業を行うユーザは、座席に頻繁に座り降りすることがある。このため、ユーザの座り降りに伴って、座面と流体との熱交換を効率的に行うことができる技術が求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、ユーザが着座する座面と流体との熱交換を効率的に行うことが可能な体温調節システム及び体温調節シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る体温調節システムは、シート部と、流体回路と、流体温度調節部と、切替部と、を具備する。
前記シート部は、座面を有し、ユーザが着座可能に構成される。
前記流体回路は、前記シート部に配置された第1流路と、前記第1流路に接続され前記シート部の外部に配置された第2流路と、を有し、前記第1流路と前記第2流路との間で流体が循環する。
前記流体温度調節部は、前記第2流路を流れる前記流体の温度を調節する。
前記切替部は、前記ユーザが前記シート部に着座することにより、前記第1流路を流れる前記流体と前記座面との間の熱交換を可能とする第1状態と、前記ユーザが前記シート部から退座することにより、前記第1流路を流れる前記流体と前記座面との間の熱交換を前記第1状態よりも抑制する第2状態と、を切り替える。
【0007】
上記構成により、ユーザがシート部に着座した場合は、座面を介してユーザと流体との熱交換が可能となる。一方で、ユーザがシート部から退座した場合は、座面と流体との熱交換が抑制される。これにより、ユーザの着座と退座に伴い、座面と流体との熱交換を効率的に行うことができる。
【0008】
例えば、前記切替部は、
前記ユーザの前記シート部への着座を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記流体回路における前記流体の流れ又は前記流体温度調節部の作動を制御する制御部と、を有していてもよい。
【0009】
この場合、例えば前記制御部は、
前記検出部が前記ユーザの前記シート部への着座を検出した場合に、前記第1状態として、前記流体の温度を調節するように前記流体温度調節部を制御し、
前記検出部が前記ユーザの前記シート部への着座を検出しなかった場合に、前記第2状態として、前記流体の温度の調節を前記第1状態よりも規制するように前記流体温度調節部を制御することができる。
【0010】
具体的に、前記流体温度調節部は、
気体の媒体を圧縮する圧縮部と、
圧縮された前記媒体を凝縮して液化させる凝縮部と、
前記凝縮部によって液化された前記媒体を減圧して膨張させる減圧部と、
前記減圧部によって減圧された前記媒体を蒸発させる蒸発部と、
を含み、前記蒸発部又は前記凝縮部において前記媒体と前記第2流路内の前記流体とを熱交換させる冷熱回路を有し、
前記制御部は、
前記第1状態において、前記圧縮部を作動させるように前記冷熱回路を制御し、
前記第2状態において、前記第1状態よりも前記圧縮部の作動量を低下させるように前記冷熱回路を制御してもよい。
【0011】
あるいは、前記第2流路は、
前記第1流路へ流入する前記流体の通路となる往路部と、
前記第1流路から流出する前記流体の通路となる復路部と、
前記往路部と前記復路部との間に配置され、前記復路部から前記往路部へ前記流体を循環させるポンプと、
前記往路部と前記復路部との間を接続するバイパス流路と、
を含み、
前記切替部は、
前記第2流路に配置され、前記往路部から前記バイパス流路への前記流体の流入を制御することが可能な弁機構をさらに有し、
前記制御部は、
前記検出部が前記ユーザの前記シート部への着座を検出した場合に、前記第1状態として、前記バイパス流路への前記流体の流入を規制するように前記弁機構を制御し、
前記検出部が前記ユーザの前記シート部への着座を検出しなかった場合に、前記第2状態として、前記バイパス流路への前記流体の流入を許容するように前記弁機構を制御してもよい。
【0012】
具体的に、前記弁機構は、前記往路部又は前記バイパス流路の開放及び閉塞が可能な開閉弁を有していてもよい。
【0013】
あるいは、前記弁機構は、前記往路部と前記バイパス流路との間で主流路の切り替えが可能な切替弁を有していてもよい。
【0014】
一方、前記切替部は、
前記シート部に配置され、前記ユーザの荷重によって弾性変形することで、前記第2状態から前記第1状態へ切り替える弾性部材を有していてもよい。
【0015】
この場合、例えば前記第1流路は、第1チューブを含み、
前記弾性部材は、
前記第1チューブに接続され、断熱性を有する、弾性変形可能な軟質チューブを含み、
前記軟質チューブは、前記第1チューブよりも大きい内径を有し、
前記第2状態では、前記流体が前記軟質チューブに優先的に流れることで、前記第1チューブにおける前記流体の流量が規制され、
前記第1状態では、前記ユーザの荷重によって前記軟質チューブが潰れることで、前記第2状態よりも前記第1チューブにおける前記流体の流量が増加するように構成されてもよい。
【0016】
あるいは、前記第1流路は、第1チューブを含み、
前記シート部は、
前記座面側に配置された第1主面と、前記第1チューブを収容し前記第1主面に開口し前記第1チューブの外径よりも大きい深さで形成された第1凹部と、弾性変形可能な前記弾性部材として構成されたシート本体と、
前記座面を形成し、前記第1主面を被覆するカバー部材と、を有し、
前記第2状態では、前記カバー部材と前記第1チューブとが離間しており、
前記第1状態では、前記シート本体が弾性変形することで、前記カバー部材と前記第1チューブとが前記第2状態よりも近接するように構成されてもよい。
【0017】
例えば、前記シート本体は、
前記第1凹部の側壁を形成し、前記第1チューブと隣接する壁部をさらに含んでいてもよい。
これにより、第1チューブの位置ずれを抑制することができる。
【0018】
また、前記シート本体は、
前記第1チューブの延在方向において前記第1凹部と隣接して配置され、前記第1主面側から前記第1チューブを覆う蓋部をさらに含んでいてもよい。
これにより、シート本体の厚み方向における第1チューブの位置ずれを抑制することができる。
【0019】
また、前記シート本体は、
前記第1主面の反対側に配置された第2主面と、
前記第1凹部の底部を形成し前記第1チューブを支持する底部と、
前記蓋部と対向するように前記第2主面に開口して前記第1チューブを収容する溝部と、をさらに含んでいてもよい。
これにより、第1チューブの位置を上下から固定できるとともに、第1状態における第1チューブの潰れを抑制することができる。
【0020】
また、前記シート本体は、
前記第1凹部が形成される領域である第1領域に隣接し、前記第1領域との境界部で折り曲げ可能に構成された第2領域をさらに有し、
前記第1流路は、前記第2領域に配置された第2チューブを含み、
前記シート本体の前記第2領域は、
前記第2チューブを収容し前記第1主面に開口し前記第2チューブの外径よりも大きい深さで形成された第2凹部を含み、
前記第2状態では、前記カバー部材と前記第2チューブとが離間しており、
前記第1状態では、前記シート本体が弾性変形することで、前記カバー部材と前記第2チューブとが前記第2状態よりも近接するように構成されてもよい。
例えば第2領域は、背もたれなどとして使用され得る。
【0021】
さらに、前記流体は、冷却液であってもよい。
これにより、第2状態における座面の結露を抑制することができ、座面の濡れによるユーザの不快感を抑制することができる。
例えば、ユーザがシート部から退座する第2状態では、座面のユーザで覆われている部分がなくなり、第1状態よりも座面の外気に晒される面積が大きくなるため結露しやすい状況となるが、上記構成により前記第2状態では、前記座面と前記第1チューブとが離間して熱抵抗が増し、カバー部材の温度は外気温側に近づくため露点以下の温度になりにくくなる。
【0022】
本発明の他の実施形態に係る体温調節シートは、座面と、第1チューブと、シート本体と、カバー部材と、を具備する。
前記第1チューブは、温度調節された流体が流れる。
前記シート本体は、前記座面側に配置された第1主面と、前記第1チューブを収容し前記第1主面に開口し前記第1チューブの外径よりも大きい深さで形成された第1凹部と、含み、弾性変形可能に構成される。
前記カバー部材は、前記座面を形成し、前記第1主面を被覆する。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、ユーザが着座する座面と流体との熱交換を効率的に行うことが可能な体温調節システム及び体温調節シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る体温調節システムを示す概略図である。
図2】上記体温調節システムのシート部を示す平面図である。
図3図2のA-A線で切断した上記シート部を示す断面図である。
図4】上記体温調節システムを示す模式図である。
図5】上記体温調節システムの制御部の動作例を示すフローチャートである。
図6】上記実施形態の変形例に係る体温調節システムを示す概略図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る体温調節システムを示す模式図である。
図8】上記体温調節システムの制御部の動作例を示すフローチャートである。
図9】本発明の第3実施形態に係る体温調節システムを示す模式図である。
図10】上記体温調節システムのシート部を示す平面図である。
図11図10のB-B線で切断した上記シート部を示す断面図であり、(A)はユーザがシート部から退座している第2状態における態様を示し、(B)はユーザがシート部に着座している第1状態における態様を示す。
図12】上記実施形態の変形例に係るシート部を示す平面図である。
図13】本発明の第4実施形態に係る体温調節システムを示す模式図である。
図14】上記体温調節システムのシート部を示す平面図である。
図15図14のC-C線で切断した上記シート部を示す断面図である。
図16】(A)は、ユーザがシート部から退座している第2状態における上記シート部の使用例を示す断面図であり、(B)は(A)の要部拡大図である。
図17】(A)は、ユーザがシート部に着座している第1状態における上記シート部の使用例を示す断面図であり、(B)は(A)の要部拡大図である。
図18】上記シート本体及びそれに配置された第1チューブの要部斜視図である。
図19】上記実施形態の変形例1に係るシート部を示す断面図である。
図20】上記実施形態の変形例2に係るシート部を示す平面図である。
図21図20のD-D線で切断した上記シート部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0026】
<第1実施形態>
[体温調節システムの基本構成]
図1は、本発明の第1実施形態に係る体温調節システム1を示す概略図である。
図2は、シート部10を示す平面図である。
なお、図中のX軸、Y軸及びZ軸は、平坦面上に配置したシート部10に属する座標軸であって、相互に直交する軸とする。X軸方向は着座したユーザの大腿部の延在方向に対応するシート部10の前後方向、Y軸方向はユーザの左右方向に対応するシート部10の幅方向、Z軸方向はシート部10の厚み方向とする。
【0027】
図1及び図2に示すように、体温調節システム1は、ユーザが着座可能なシート部10と、流体回路20と、流体温度調節部30と、切替部40と、を備える。
【0028】
シート部10は、座面11を有し、例えば、特殊車両等の運転席や椅子などの座席Sの上に配置される。シート部10には、流体温度調節部30によって温度を調節された流体が流れる第1流路21が配置される。ユーザがシート部10の座面11に着座することで、第1流路21を流れる流体と座面11との間で熱交換が可能となり、ユーザの体温を調節することができる。
【0029】
流体は、本実施形態において、水などの液体であることが好ましい。温度を調節された液体は、例えば、冷却液でもよいし、加温された液体でもよい。流体が冷却液の場合、座面11を介して流体がユーザを冷却することができ、高温下での熱中症等の体調不良のリスクを低下させることができる。また、流体が加温された液体の場合、座面11を介して流体がユーザを加温することができ、低温下での低体温症等の体調不良のリスクを低下させることができる。
【0030】
図1及び図2に示すように、流体回路20は、シート部10に配置された第1流路21と、第1流路21に接続されシート部10の外部に配置された第2流路22と、を有し、第1流路21と第2流路22との間で流体が循環するように構成される。第1流路21及び第2流路22は、チューブ、ホース、配管等の管材で適宜構成される。
【0031】
図2に示すように、第1流路21は、例えば、第2流路22からの流体が流入する流入口213aと、第2流路22へ流体を流出させる流出口213bと、を含み、流入口213aから流出口213bまでシート部10の内部を巡回するように構成される。流入口213a及び流出口213bは、シート部10の外部に配置されてもよい。第1流路21は、例えば可撓性の管材で構成されることが好ましい。これにより、第1流路21を好ましい形状に走行させることが容易になる。例えば本実施形態において、第1流路21は第1チューブ211を有する。
【0032】
図2に示すように、第2流路22は、第1流路21へ流入する流体の通路となる往路部221と、第1流路21から流出する流体の通路となる復路部222と、を有する。往路部221は、第1流路21の流入口213aと継手214によって接続され、復路部222は、第1流路21の流出口213bと継手214によって接続される。なお、往路部221及び復路部222は、それぞれ、継手などで接続された複数の管材で構成されていてもよい。なお、図1では、往路部221及び復路部222の管材を一つに束ねた態様を示している。
【0033】
流体温度調節部30は、第2流路22を流れる流体の温度を調節する。流体温度調節部30は、本実施形態において、第2流路22の一部とともに筐体50の内部に配置される。筐体50には、体温調節システム1の起動や停止、設定温度等を入力する入力操作部や、運転状況等を表示する表示部等が配置されていてもよい。流体温度調節部30の詳細な構成例については後述する。
【0034】
上記構成の体温調節システム1において、ユーザがシート部10の座面11に着座すると、座面11を介して、温度が調節された流体と、ユーザの臀部及び大腿部との熱交換が可能となる。一方で、例えばシート部10がフォークリフトなどの特殊車両の運転席に配置される場合など、ユーザが頻繁にシート部10に座り降りする場合がある。このような場合においても、ユーザの体温調節を効率的つまり無駄なエネルギーを使わずに行うことができる体温調節システム1が望まれる。
【0035】
そこで、本実施形態の体温調節システム1は、ユーザがシート部10に着座することにより、第1流路21を流れる流体と座面11との間の熱交換を可能とする第1状態と、ユーザがシート部10から退座することにより、第1流路21を流れる流体と座面11との間の熱交換を第1状態よりも抑制する第2状態と、を切り替える切替部40を備える。切替部40により、ユーザの着座及び退座によって自動的に座面11と流体との熱交換を制御することができ、これらの熱交換を効率的に行うことができる。
【0036】
以下、本実施形態の体温調節システム1の各部の構成について具体的に説明する。
【0037】
[シート部]
図3図2のA-A線で切断したシート部10の断面図である。
図1~3に示すように、シート部10は、例えば、座面11と、シート本体13と、を有する。シート部10は、さらに座面11の反対側の裏面12を有し、裏面12が運転席や椅子などの座席Sに接するように配置される。
【0038】
シート本体13は、弾性変形可能に構成され、第1流路21の第1チューブ211を支持する。シート本体13の材質は、着座用のシートやマットのクッション材として使用可能な弾性材料であれば特に限定されないが、着座時の快適性や成形性、断熱性等の観点から、ポリウレタン樹脂を主成分とするウレタンフォームであることが好ましい。ポリウレタンフォームとしては、例えば、軟質ウレタンフォーム、半硬質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォーム等が挙げられるが、このうち、クッション性の高い軟質ウレタンフォームを好適に用いることができる。
【0039】
図3に示す例において、シート本体13は、第1主面131と、第2主面132と、凹部133と、を有する。
第1主面131は、座面11側に配置される。
第2主面132は、第1主面131の反対側の裏面12側に配置される。
凹部133は、第1チューブ211を収容し第1主面131に開口する。本実施形態において、凹部133のZ軸方向における深さは、ユーザの体重に対応する荷重(例えば60~70kg程度)が付加された際に、第1チューブ211の外径以下となるように設定されることが好ましい。
【0040】
さらに、図3に示すように、シート本体13は、凹部133を形成する要素として、例えば、壁部134と、底部135と、を有していてもよい。
壁部134は、凹部133の側壁を形成し、第1チューブ211と隣接する。壁部134により、凹部133が第1チューブ211に沿って形成され、第1チューブ211の平面内における位置ずれを抑制することができる。
底部135は、凹部133の底部を形成し、第1チューブ211を支持する。底部135により、第1チューブ211を安定して支持することができる。
【0041】
図3に示すように、さらにシート部10は、第1主面131を少なくとも被覆し、座面11を形成するカバー部材14を有することが好ましい。カバー部材14により、第1主面131からの第1チューブ211の脱離を抑制できるとともに、着座時におけるシート部10の快適性を高めることができる。図3に示すように、カバー部材14は、第1主面131及び第2主面132の双方を被覆することが好ましく、例えば、シート本体13全体を収容する袋状に構成されることが好ましい。袋状のカバー部材14は、シート本体13を取り出し可能な開口部と、開口部を開閉可能な開閉部材と、を有していることが好ましい(図14参照)。これにより、カバー部材14の着脱が可能となる。
【0042】
カバー部材14の材質は、着座用のシートやマットの表面材として使用可能なものであればよく、例えば、織布や不織布などの布地、布地の表面を樹脂等によってコーティングしたシート材(例えば合成皮革)、樹脂フィルム等が挙げられる。なお、カバー部材14は、第1チューブ211内の流体とユーザとの熱交換を可能にするため、布地や薄いフィルム等の断熱性の低い材料で構成されることが好ましい。
【0043】
図3に示すシート本体13では、凹部133が第1主面131に開口するため、第1チューブ211が第1主面131から露出する。このため、ユーザがシート部10に着座した際に、ユーザと座面11(カバー部材14)、座面11と第1チューブ211とがそれぞれ接触する。この結果、ユーザが第1チューブ211を流れる流体と近接し、座面11及び第1チューブ211を介して流体と熱交換することができる。
【0044】
[流体温度調節部]
図4は、体温調節システム1を示す模式図であり、筐体50の内部を示す図である。なお、図4において、符号Uはユーザを示す。
図4に示す例において、流体温度調節部30は、冷熱回路31を有する。冷熱回路31は、本実施形態において、冷媒を媒体(作動流体)として用いる冷凍サイクルを利用した回路として構成される。冷熱回路31は、圧縮部311と、凝縮部312と、減圧部313と、蒸発部314とを有する。この例において、蒸発部314を冷媒と第2流路22内の流体との熱交換器として機能させることで、第2流路22内の流体を所定温度に冷却することができる。
なお、冷熱回路31が第2流路22内の流体を加温する場合は、凝縮部312を第2流路22内の流体との熱交換器として機能させればよい。
【0045】
圧縮部311は、気体の冷媒を圧縮する。圧縮部311は、例えば、冷媒系統内に潤滑油を保有する圧縮機として構成される。潤滑油は、圧縮部311の底部に貯留され、蒸発部314から供給される冷媒ガスを圧縮させる動作と連動して、貯留場所から必要量が汲み上げられて圧縮部311内部の摺動部を潤滑する。
凝縮部312は、圧縮部311によって圧縮された冷媒を凝縮して液化させる。凝縮部312には必要に応じて凝縮効率を促進させるファン315が付設される。
【0046】
減圧部313は、凝縮部312によって液化された冷媒を減圧して膨張させる。減圧部313は、例えば、キャピラリーチューブ又は電子膨張弁等で構成される。
蒸発部314は、減圧部313において減圧された冷媒を蒸発させる。蒸発部314は、冷媒と第2流路22を流れる流体とを熱交換する熱交換器として構成され、例えば、プレート熱交換器、投げ込み式熱交換器等で構成される。
【0047】
また、蒸発部314による熱交換を可能とするため、第2流路22の一部が筐体50の内部に配置される。図4に示すように、第2流路22は、筐体50の内部に配置された構成として、例えば、ポンプ223と、タンク224と、をさらに有する。タンク224は、例えば復路部222に接続され、流体を一時的に貯留する。ポンプ223は、往路部221と復路部222との間に配置され、例えばタンク224内の流体を往路部221に向けて吐出する。
【0048】
冷熱回路31は、電力供給部51によって供給された電力によって作動することができる。電力供給部51は、図4に示す例において、例えば、筐体50の内部へ電力を供給する電源ケーブル52と、電源ケーブル52に接続され、交流を直流に変換するアダプタ53と、を有する。なお、電力供給部51は、電源ケーブル52に代えて又はこれに加えて、充電可能なバッテリユニットを備えていてもよい。これにより、外部電源を必要とすることなく体温調節システム1を稼働させることができる。電力供給部51は、冷熱回路31の他、筐体50の内部に配置されたポンプ223や後述する切替部40に電力を供給することができる。
【0049】
[切替部]
本実施形態において、切替部40は、制御部41と、検出部42と、を有する。
【0050】
検出部42は、ユーザUのシート部10への着座を検出する。検出部42は、本実施形態において、着座したユーザUの存在を検出する人感センサ421として構成される。人感センサ421は、例えば、赤外線センサ、超音波センサ、可視光センサ等で構成される。図1に示す例において、人感センサ421は、例えば筐体50に配置され、シート部10が配置される座席Sの近傍に配置される。
【0051】
制御部41は、検出部42の検出結果に基づいて、流体温度調節部30の作動を制御する。制御部41は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)やメモリを有するプロセッサとして構成される。制御部41は、本実施形態において、筐体50に配置され、冷熱回路31の作動を制御するほか、流体回路20のポンプ223やその他の筐体50に配置された要素を制御することができる。
【0052】
図5は、制御部41の動作例を示すフローチャートである。
制御部41は、検出部42からの信号(検出結果)に基づいて、ユーザUのシート部10への着座を検出したか否か判定する(S11)。
【0053】
制御部41は、着座を検出したと判定した場合(S11でYES)、第1状態として、流体の温度を調節するように流体温度調節部30を制御する(S12)。一方で、制御部41は、着座を検出していないと判定した場合(S11でNO)、第2状態として、流体の温度の調節を第1状態よりも規制するように流体温度調節部30を制御する(S13)。ここでいう「流体の温度の調節を第1状態よりも規制する」とは、流体温度調節部30による流体の温度の調節を停止する、又は流体温度調節部30による流体の温度の調節量を低下させることを意味する。
【0054】
制御部41は、例えば、圧縮部311の作動を制御することができる。具体的に、制御部41は、S12において圧縮部311を起動させてもよい。あるいは、制御部41は、S12において圧縮部311の作動量(回転数)を増加させてもよい。一方、制御部41は、S13において圧縮部311を停止させてもよい。あるいは、制御部41は、S13において圧縮部311の作動量(回転数)を低下させてもよい。なお、制御部41は、圧縮部311以外の冷熱回路31の要素(例えばファン315の回転数)を制御してもよい。
【0055】
上記構成では、ユーザUがシート部10に着座した場合、検出部42がユーザUの存在を検出し、制御部41が冷熱回路31を作動させることができる。これにより、シート部10に配置された第1流路21に、冷熱回路31によって温度調節された液体を循環させることができ、ユーザUの体温を調節することができる。一方で、ユーザUがシート部10から退座した場合には、検出部42がユーザUの存在を検出せず、制御部41が冷熱回路31の作動を抑制することができる。したがって、ユーザU自身が体温調節システム1の起動を制御しなくとも、ユーザUの退座時には体温調節システム1の作動が規制され、退座時におけるエネルギー消費量が低下する。これにより、体温調節システム1のエネルギー消費を効率化することができる。
【0056】
さらに、流体回路20の液体が冷却液である場合、以下の効果を有する。
ユーザUがシート部10から退座した状態では、座面11上のユーザUで覆われている部分がなくなり、ユーザUが着座している状態よりも、座面11の外気に晒される面積が大きくなるため結露しやすい状況となるが、本第1実施形態の構成により、ユーザUの退座時には、第1流路21を流れる液体が冷却されにくくなる。このため、外気と接触する座面11が露点以下に冷却されにくくなり、座面11の結露が抑制される。したがって、座面11の濡れによるユーザUの不快感を抑制することができる。さらに、上記構成では、座面11の結露を考慮せずに、冷熱回路31の設定温度を十分低く設定することができる。これにより、第1状態における体温調節効果を十分に発揮することができる。
【0057】
[変形例]
上述の例では、検出部42が人感センサ421で構成されると説明したが、これに限定されない。例えば、図6に示すように、検出部42は、シート部10の座面11又は裏面12に配置された圧力センサ422で構成されてもよい。圧力センサ422としては、所定の圧力で信号を出力する圧力スイッチでもよいし、検出した圧力値に応じた信号を出力する圧力センサでもよい。これによっても、制御部41は、検出部42から出力された信号に基づいて、着座の検出を判定し、流体温度調節部30を制御することができる。
【0058】
さらに、検出部42は、人感センサ421及び圧力センサ422の双方を含んでいてもよい。この場合、制御部41は、人感センサ421及び圧力センサ422の双方の信号からユーザUの着座を検出することができる。これにより、着座したユーザUと人感センサ421の近傍を通過したユーザUとの識別や、着座したユーザUと座面11上に配置された物品等の識別が可能となり、制御部41による着座の検出精度を高めることができる。
【0059】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態では、第2流路22にバイパス流路225を設け、制御部41がバイパス流路225への流体の流入を制御する例について説明する。
なお、以下の各実施形態において、上述の第1実施形態と対応する構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
図7は、本実施形態の体温調節システム1Aを示す模式的な図である。
同図に示すように、体温調節システム1Aは、ユーザUが着座可能なシート部10と、流体回路20と、流体温度調節部30と、切替部40と、を備える。なお、シート部10及び流体温度調節部30は、第1実施形態と同様に構成することができる。
【0061】
[流体回路]
流体回路20は、第1流路21と、第2流路22と、を有する。
第1流路21は、第1実施形態と同様に構成することができる。
第2流路22は、第1実施形態と同様の往路部221、復路部222、及びポンプ223の他、さらにバイパス流路225を有する。第2流路22は、第1実施形態と同様に、流体を貯留するタンク224をさらに有していてもよい。
【0062】
バイパス流路225は、往路部221と復路部222との間を接続する。バイパス流路225は、筐体50の外部の流体回路20の構成を単純化し取り扱いを容易にする観点から、筐体50の内部に配置されることが好ましい。往路部221とバイパス流路225との接続部を第1接続部226aとし、復路部222とバイパス流路225との接続部を第2接続部226bとする。図7に示す例において、第1接続部226aは、蒸発部314よりも第1流路21側に配置され、第2接続部226bは、タンク224よりも第1流路21側に配置される。バイパス流路225を構成する管材は、往路部221に対する内径のバランス等を鑑みて適宜選択することができる。本実施形態において、バイパス流路225は、往路部221よりも内径の小さな管材で構成されることが好ましい。これにより、バイパス流路225の流路抵抗を往路部221の流路抵抗よりも高くすることができ、後述する開閉弁431が開放されている場合に往路部221及び第1流路21へ流体を優先的に流すことができる。
【0063】
[切替部]
本実施形態において、切替部40は、制御部41と、検出部42と、弁機構43と、を有する。
検出部42は、第1実施形態およびその変形例と同様に構成することができる。
【0064】
弁機構43は、第2流路22に配置され、バイパス流路225への流体の流入を制御することが可能に構成される。本実施形態において、弁機構43は、例えば往路部221又はバイパス流路225の開放及び閉塞が可能な開閉弁431を有する。開閉弁431は、流路の少なくとも一部を閉塞できればよいが、流路を完全に閉塞可能であることが好ましい。図6に示す例において、開閉弁431は、往路部221の、第1接続部226aよりも第1流路21側に配置される。
【0065】
開閉弁431は、例えば、電動で駆動されるボールバルブ、ゲートバルブ、バタフライバルブ、ダイヤフラムバルブ、又はグローブバルブ等で構成され得る。例えば、開閉弁431がボールバルブで構成されることが好ましい。これにより、開閉弁431の開閉速度を速めて、全開時の圧力損失を低下させることができる。
【0066】
制御部41は、検出部42の検出結果に基づいて、弁機構43を制御する。
図8は、制御部41の動作例を示すフローチャートである。
【0067】
制御部41は、第1実施形態と同様に、検出部42からの信号(検出結果)に基づいて、ユーザUのシート部10への着座を検出したか否か判定する(S21)。
【0068】
制御部41は、着座を検出したと判定した場合(S21でYES)、第1状態として、バイパス流路225への流体の流入を規制するように弁機構43を制御する(S22)。例えば、制御部41は、開閉弁431を開放する。これにより、温度調節された流体が往路部221を通って第1流路21へ流れ、バイパス流路225の流量が低下する。
【0069】
一方で、制御部41は、着座を検出していないと判定した場合(S21でNO)、第2状態として、バイパス流路225への流体の流入を許容するように弁機構43を制御する(S23)。例えば、制御部41は、開閉弁431を閉鎖する。これにより、温度調節された流体が、往路部221への流入を規制され、バイパス流路225の流量が増加する。この際、流体を循環させるポンプ223は運転を継続しており、流体は、バイパス流路225を介して往路部221と復路部222との間を循環している。
【0070】
上記構成では、ユーザUがシート部10に着座した場合、弁機構43により、第1流路21への流体の流入が許容される。これにより、第1流路21における流体の流量を十分に確保でき、ユーザUの体温を調節することができる。一方で、ユーザUがシート部10から退座した場合には、バイパス流路225への流体の流入が促進され、第1流路21への流体の流入が規制される。これにより、第1流路21における流体の流量を低下させ、流体と座面11との熱交換を抑制することができる。その結果、筐体50内を循環する流体の温度は殆ど変わらず、蒸発部314における熱交換も殆ど不要であるため、圧縮部311の運転も低回転で済み、エネルギー消費を抑制することができる。
また、流体が冷却液の場合は、第1実施形態と同様に、座面11の結露が抑制され、座面11の濡れによるユーザUの不快感を抑制することができる。
さらに弁機構43の開閉操作で第1流路21への流体の流入及びその遮断を切り替えるようにしているので、ポンプ223の起動及びその停止で第1流路21への流体の流入及びその遮断を切り替える方法と比較して、第1流路21に対する流体の流量調整を迅速に行うことができるとともに、ポンプ223の運転中はバイパス流路225を介して流体が循環するため、流体の循環停止に伴って発生し得る蒸発部314(蒸発器)内部における冷却液の凍結や圧縮部311(圧縮機)の液冷媒の吸入(液バック)を回避できる。
【0071】
[変形例]
例えば、開閉弁431は、バイパス流路225に配置されてもよい。この場合、バイパス流路225は、往路部221よりも内径の大きな管材で構成され、バイパス流路225の流路断面積を往路部221の流路断面積よりも大きくする。制御部41は、S22において開閉弁431を閉鎖し、S23において開閉弁431を開放することで流路抵抗の低いバイパス流路225に流体を優先的に流す。これによっても、開閉弁431の制御によってバイパス流路225への流体の流入を制御することができる。
【0072】
あるいは、弁機構43は、開閉弁431に限定されず、バイパス流路225への流体の流入を制御できる種々の弁機構を用いることができる。
例えば、弁機構43は、往路部221とバイパス流路225との間で主流路の切り替えが可能な切替弁を有していてもよい。ここでいう主流路とは、流体が優先的に流れる流路をいい、具体的には流体の流量が多い流路をいう。切替弁は、例えば、三方切替弁で構成され得る。
【0073】
この場合、制御部41は、S22において往路部221へ主流路を切り替えるように切替弁を制御し、S23においてバイパス流路225へ主流路を切り替えるように切替弁を制御する。これにより、切替弁によって第1流路21への流体の流入を制御することができる。
【0074】
<第3実施形態>
上述の実施形態では、切替部40が制御部41及び検出部42を有していたが、これに限定されず、切替部40が着座時のシート部10の変形を活かして第1状態及び第2状態の切り替えを行う構成としてもよい。
【0075】
図9は、本発明の第3実施形態に係る体温調節システム1Bを示す模式図である。
図10は、本実施形態に係るシート部10を模式的に示す平面図であり、図11(A)は図10のB-B線で切断したシート部10の断面図である。
【0076】
本実施形態に係る体温調節システム1Bは、シート部10と、流体回路20と、流体温度調節部30と、切替部40と、を備える。
本実施形態において、切替部40は、シート部10に配置された弾性部材45を有する。弾性部材45は、ユーザU の荷重によって弾性変形することで、第2状態から第1状態へ切り替わり、第1流路21を流れる流体と座面11との間の熱交換を促進することができる。
なお、流体回路20の第2流路22と、流体温度調節部30は、第1実施形態の図1及び図2と同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0077】
図10及び図11に示すように、本実施形態において、第1流路21は、第1チューブ211を含み、切替部40の弾性部材45は、第1チューブ211に接続された軟質チューブ46を含む。
【0078】
軟質チューブ46は、断熱性を有し、弾性変形可能に構成される。軟質チューブ46は、例えば、軟質のチューブ本体461と、チューブ本体461の周囲を被覆する断熱材462と、を有する。
チューブ本体461は、ユーザUの体重に対応する荷重(例えば60~70kg程度)で第1チューブ211の流路断面積よりも小さい流路断面積となるように扁平状に変形する軟質な管材で構成される。このような管材としては、例えば、ナイロンチューブ、ポリウレタンチューブ、軟質ポリエチレンチューブ、シリコーンチューブ等が挙げられる。
断熱材462は、例えば、チューブ本体461の周囲を覆うことが可能な断熱性の材料で構成される。なお、チューブ本体461が十分な断熱性を有する場合は、軟質チューブ46が断熱材462を含まなくてもよい。
【0079】
第1チューブ211は、第1実施形態の第1チューブ211と同様の管材として構成され得る。図10に示す例では、第1チューブ211がシート部10の内部において軟質チューブ46に接続され、軟質チューブ46がシート部10の外部まで延びている。軟質チューブ46は、例えば継手214によって第2流路22の往路部221及び復路部222に接続される。
【0080】
図11(A)に示すように、シート部10は、例えば、第1チューブ211及び軟質チューブ46を支持するシート本体13を有する。シート本体13は、例えば、座面11側に位置する第1主面131と、第1主面131の反対側の第2主面132と、第1チューブ211を収容する凹部133と、軟質チューブ46を収容する軟質チューブ用凹部138と、を有する。軟質チューブ用凹部138は、第1主面131に開口する。
【0081】
図11(A)に示す例では、軟質チューブ用凹部138の深さが、軟質チューブ46の外径よりも小さく構成される。これにより、軟質チューブ46を第1主面131からZ軸方向に突出させることができる。この結果、座面11では、軟質チューブ46の配置されている領域が、その周囲の領域から、Z軸方向上方に盛り上がるように構成される。
なお、シート本体13の硬度がかなり低い場合には、ユーザUが着座する状態において、その体重でシート本体13の厚みがかなり薄くなるため、上述のように軟質チューブ用凹部138の深さを軟質チューブ46の外径よりも小さくしなくても、十分に閉塞させるほどの変形を軟質チューブ46に生じさせることができる。
【0082】
また、図11(A)に示すように、軟質チューブ46の内径、つまりチューブ本体461の内径は、第1チューブ211の内径よりも大きい。第1チューブ211の内径に対する軟質チューブ46の内径の比率は、好ましくは3.5以上7.0以下である。これにより、軟質チューブ46が座面11を突出させやすくなる。また、後述するように、ユーザUが着座していない第2状態において、流体が流路抵抗の低い軟質チューブ46に優先的に流れやすくなる。
【0083】
図10に示すように、軟質チューブ46は、Z軸方向から見た平面視において、シート部10の中央部に延びるように配置される。これにより、軟質チューブ46は、ユーザUがシート部10の座面11に着座した際に、ユーザUの荷重によって潰れるように弾性変形する。なお、図10における一点鎖線は、着座したユーザUの臀部と接触する領域の例を示す。
【0084】
図11(A)に示すように、ユーザUが退座している第2状態においては、流体が、内径の大きい軟質チューブ46に優先的に流れる。これにより、第1チューブ211における流体の流量が規制される。
図11(B)に示すように、ユーザUが着座している第1状態においては、ユーザUの荷重によって軟質チューブ46が第1チューブ211の流路断面積よりも小さい流路断面積となるように潰れる。これにより、第1チューブ211の流路抵抗よりも軟質チューブ46の流路抵抗が大きくなるため、軟質チューブ46の流量が低下し、第2状態よりも第1チューブ211における流量が増加する。
【0085】
このように、上記構成の第2状態においては、座面11との熱交換が可能な第1チューブ211の流量が低下するため、第1チューブ211内の流体と座面11との熱交換が抑制される。また、軟質チューブ46は断熱性が高いため、軟質チューブ46内の流体と座面11との熱交換も抑制される。これらにより、座面11全体における流体との熱交換を抑制することができる。また、流体が冷却液の場合は、座面11の結露が防止され、座面11の濡れによるユーザUの不快感が抑制される。
さらに、第2実施形態と同様に、第2状態においてもポンプ223の運転を継続させることで、軟質チューブ46を介して流体が循環する。このため、流体の循環停止に伴って発生し得る蒸発部314(蒸発器)内部における冷却液の凍結や圧縮部311(圧縮機)の液冷媒の吸入(液バック)を回避できる。
【0086】
一方、上記構成の第1状態においては、軟質チューブ46が潰れることで、第1チューブ211の流量が増加し、第1チューブ211内の流体と座面11との熱交換が可能となる。これにより、ポンプ223や圧縮部311の起動及びその停止で第1流路21への流体の流入及びその遮断を切り替える方法と比較して、第1流路21に対する流体の流量調整を迅速に行うことができる。したがって、着座したユーザUに冷感又は温感を素早く提供することができ、ユーザUの体温調節を効率的に行うことができる。
【0087】
[変形例]
図12に示すように、シート本体13は、第1チューブ211が配置された第1領域R1と、第1領域R1に隣接する第2領域R2と、を有していてもよい。第2領域R2は、第1領域R1との境界部13cで折り曲げられることが可能に構成される。第2領域R2は、境界部13cで折り曲げて、例えば背もたれ部分として用いられる。
【0088】
この例において、第1流路21は、第2領域R2に配置され、軟質チューブ46に接続された第2チューブ212を有していることが好ましい。これにより、第1状態において、温度調節された流体が第1チューブ211及び第2チューブ212に流れ、第2領域R2の座面11とユーザUとの熱交換が可能となる。
また、第2チューブ212は、軟質チューブ46よりも小さな内径を有する。これにより、第2状態では第2チューブ212への流量が規制され、第2領域R2における座面11と流体との熱交換が抑制される。
【0089】
<第4実施形態>
切替部40としての弾性部材45は、第3実施形態において説明した軟質チューブ46に限定されない。例えば、以下に説明するように、シート本体13が弾性部材45として機能してもよい。
【0090】
図13は、本発明の第4実施形態に係る体温調節システム1Cを示す模式図である。図14は、本実施形態に係るシート部10を示す平面図である。図15は、図14のC-C線で切断したシート部10の断面図である。
本実施形態に係る体温調節システム1は、シート部10と、流体回路20と、流体温度調節部30と、弾性部材45を有する切替部40と、を備える。なお、流体回路20の第2流路22と、流体温度調節部30は、第1実施形態と同様の構成を有するため、説明を省略する。
【0091】
図14及び図15に示すように、シート部10は、座面11と、シート本体13と、カバー部材14と、を有する。
図示の例において、シート本体13は、さらに、第1領域R1と、第2領域R2と、第1領域R1及び第2領域R2の間の境界部13cと、を有する。シート本体13は、境界部13cにスリット13dが形成され、境界部13cにおいて折り曲げられることが可能に構成される。これにより、第1領域R1を着座部、第2領域R2を背もたれなどとして使用できる。また、第1領域R1のX軸方向端部を第1端部13aとし、第2領域R2のX軸方向端部を第2端部13bとする。
【0092】
第1流路21は、第1領域R1に配置される第1チューブ211と、第2領域R2に配置される第2チューブ212と、を含む。図14及び後述する図15~17、19~21では、第1チューブ211及び第2チューブ212をグレーで示している。なお、第1チューブ211及び第2チューブ212は、実際には、第1主面131において、第1凹部133aと第2凹部133b、その他の開口以外からは視認することができない。
【0093】
図14に示す例において、さらに第1流路21は、第1継手214aと、第2継手214bと、第1接続チューブ215aと、第2接続チューブ215bと、第1分流器216aと、第2分流器216bと、を含む。
第1継手214aは、第2流路22の往路部221に接続される。
第2継手214bは、第2流路22の復路部222に接続される。
第1接続チューブ215aは、第1継手214aからシート部10の内部に向かって延びる。
第2接続チューブ215bは、第2継手214bからシート部10の内部に向かって延びる。
第1分流器216aは、第1接続チューブ215aに接続され、第1チューブ211及び第2チューブ212を分岐させる。
第2分流器216bは、第2接続チューブ215bに接続され、第1チューブ211及び第2チューブ212を分岐させる。
【0094】
シート本体13は、弾性変形可能な弾性部材45として構成される。
本第4実施形態では、例えば、シート本体13は、金型を用いた成形又はフライスを用いた切削加工などによって作製されるウレタンフォームである。
シート本体13は、第1領域R1において、第1主面131と、第2主面132と、第1凹部133aと、を有する。
第1主面131は、座面11側に配置される。
第2主面132は、第1主面131の反対側の裏面12側に配置される。
第1凹部133aは、第1チューブ211を収容し第1主面131に開口する。本実施形態において、第1凹部133aは、第1チューブ211の外径よりも大きい深さで形成される。
【0095】
カバー部材14は、第1実施形態と同様に、座面11を形成し、第1主面131を少なくとも被覆する。図14に示す例において、カバー部材14は、袋状に構成され、シート本体13を取り出し可能な開口部141と、開口部141を開閉可能な開閉部材142と、を有する。開閉部材142は、例えば線ファスナーで構成されるが、これに限定されない。
【0096】
図16(A)及び(B)、並びに図17(A)及び(B)を用いて、切替部40(弾性部材45)を構成するシート本体13による第1状態と第2状態の切り替え方法について説明する。
図16(A)は、第2状態におけるシート部10の使用例を示す断面図であり、(B)は(A)の要部拡大図である。図17(A)は、第1状態におけるシート部10の使用例を示す断面図であり、(B)は(A)の要部拡大図である。図16及び図17では、背もたれを有する座席Sにシート部10が配置されている態様を示す。
【0097】
図16(A)及び(B)に示すように、ユーザUが退座している第2状態においては、第1チューブ211と座面11を形成するカバー部材14との間に空気層Pが形成される。これにより、カバー部材14と第1チューブ211との接触を抑制でき、カバー部材14と第1チューブ211との熱抵抗を高めることができる。したがって、カバー部材14と流体との熱交換が抑制される。特に、流体が冷却液の場合は、カバー部材14が冷却液によって露点以下に冷却されることが抑制される。これにより、カバー部材14の結露を抑制することができ、座面11の濡れによるユーザUの不快感を抑制することができる。
【0098】
一方で、図17(A)及び(B)に示すように、ユーザUが座面11に着座した第1状態においては、ユーザUの荷重によって第1凹部133aが潰れ、ユーザUが座面11(カバー部材14)を介して第1チューブ211と近接した状態になる。これにより、ユーザUと流体との熱交換を促進することができる。
【0099】
また、上記構成では、ユーザUが退座している第2状態においても、流体温度調節部30の作動状態を維持することで、第1チューブ211内の流体の温度を適温に調節することができる。これにより、ユーザUが着座すると同時に、ユーザUに対して流体による冷却又は加温を開始することができる。したがって、ユーザUがシート部10を頻繁に使用する場合でも、効率的に体温を調節することができ、ユーザの快適性が高められる。
【0100】
図18は、シート本体13及びそれに配置された第1チューブ211の要部を拡大した斜視図である。
シート本体13は、頻繁な使用によっても第1チューブ211の位置を変化させず、第2状態において第1チューブ211とカバー部材14との間の空気層Pを維持できる構成であることが好ましい。このような観点から、図14図15及び図18に示すように、シート本体13は、第1壁部134aと、第1蓋部136aと、第1底部135aと、第1溝部137aと、をさらに有する。
【0101】
第1壁部134aは、第1凹部133aの側壁を形成し、第1チューブ211と隣接する。図18に示すように、1つの第1凹部133aの周囲において、第1壁部134aがY軸方向に対向して一対配置されることが好ましい。第1壁部134aにより、第1チューブ211の平面方向(X軸方向及びY軸方向)における変位が規制され、第1チューブ211の平面方向における位置ずれを抑制することができる。また、第1壁部134aが第1チューブ211と接触するように配置されることで、第1壁部134aと第1チューブ211との間に摩擦力が作用し得る。これにより、平面方向(X軸方向及びY軸方向)に加えて、Z軸方向においても第1チューブ211の位置ずれを抑制することができる。
【0102】
第1蓋部136aは、第1チューブ211の延在方向(X軸方向)において第1凹部133aと隣接して配置され、第1主面131側から第1チューブ211を覆う。第1蓋部136aは、第1壁部134aと連接して第1主面131を形成する。図18に示すように、1つの第1凹部133aの周囲において、第1蓋部136aは、X軸方向に対向して一対配置されることが好ましい。第1蓋部136aにより、第1チューブ211が第1主面131側に浮き上がることを抑制でき、Z軸方向における第1チューブ211の位置ずれをより確実に抑制することができる。これにより、カバー部材14と第1チューブ211との間の空気層Pを維持することができる。
【0103】
第1底部135aは、第1凹部133aの底部を形成し、第1チューブ211を支持する。第1底部135aはまた、第2主面132を形成する。
第1溝部137aは、第1蓋部136aと対向するように第2主面132に開口して、第1チューブ211を収容する。
上述のようにシート本体13が複雑な形状(図18参照)をしているのは、シート本体13が金型を用いた成形又はフライスを用いた切削加工で造形されるウレタンフォームであるため、第1蓋部136aの直下に第1チューブ211が通る空間を形成するためには上記金型やフライスが第2主面132側から侵入しなければならず、この侵入した後に出来る空間が第1溝部137aとなるからである。
これにより、シート本体13の第1主面131側に単に溝を設け、第1チューブ211を落とし込む構成よりも、第1チューブ211のZ軸方向における位置固定が確実に可能となる。
第1溝部137aは、例えば、第1チューブ211の延在方向(X軸方向)において、第1底部135aと隣接して配置される。第1溝部137aにより、ユーザUの荷重によって第1蓋部136a上の第1主面131がZ軸方向に押圧された場合にも、第1チューブ211が第2主面132側に局所的に移動することができる。したがって、第1チューブ211の閉塞が抑制され、第1状態における流体の流れが維持される。
【0104】
図18に示すように、第1凹部133aは、Z軸方向から見た場合、第1壁部134aと第1蓋部136aに囲まれて配置される。第1主面131側から見た場合に、第1チューブ211は、第1蓋部136aのZ軸方向下方と第1凹部133aを交互に走行する。第2主面132側から見た場合に、第1チューブ211は、第1底部135aのZ軸方向上方と第1溝部137aを交互に走行する。このように、第1チューブ211は、第1蓋部136aと第1底部135aの間を縫うように走行することで、Z軸方向における位置を安定して維持することができる。したがって、ユーザUが退座している第2状態において、カバー部材14と第1チューブ211との間の空気層Pを安定して確保することができる。
【0105】
さらに、上記構成では、シート本体13単体においても第1チューブ211の位置が安定して維持されるため、カバー部材14の取り外しが容易になる。したがって、カバー部材14のみを洗濯又は交換することが容易になり、シート部10を清潔に維持することができる。
【0106】
シート本体13の第1凹部133a及びその周囲の各構成は、第1チューブ211の配置に応じて適宜配置することができる。
図14に示すように、第1チューブ211は、例えば、複数の延在部211eと、複数の折り返し部211fと、を有する。
延在部211eは、例えばX軸方向に沿って延在し、かつ、Y軸方向に配列される。
折り返し部211fは、延在部211eのX軸方向における端部(例えば境界部13c及び第1端部13aの近傍)に配置され、Y軸方向に隣り合う延在部211eを接続する。
上記構成により、第1チューブ211は、座面11のほぼ全体をカバーするように配置される。
【0107】
第1凹部133aは、例えば延在部211eに沿って、X軸方向及びY軸方向に並んで複数配置される。これに伴い、第1蓋部136aは、X軸方向に隣り合う第1凹部133aの間に配置される。第1壁部134aは、Y軸方向に隣り合う第1凹部133aの間に配置される。
【0108】
また、第1底部135aも、第1凹部133aに対応する位置に、延在部211eに沿ってX軸方向に並んで配置される。例えば第1底部135aは、図14の破線で示すように、Y軸方向に沿った帯状に形成される。このため、Y軸方向に隣り合う第1凹部133aの間において、第1底部135aと第1蓋部136aとがZ軸方向に接続される。第1溝部137aは、X軸方向に隣り合う第1底部135aの間に配置される。
【0109】
上記構成では、第1壁部134aと第1底部135aの一部がZ軸方向に接続され、シート本体13が一体に形成され得る。これにより、シート本体13の各部の位置ずれが抑制され、第1チューブ211の位置もより安定して固定される。さらに、シート本体13の一体成形が可能となり、製造上も有利になる。
【0110】
また、図15に示す例では、第1チューブ211の延在方向に沿って配置された複数の第1凹部133aが、第1主面131から同一の深さD1を有する。これにより、第1チューブ211が第1主面131と平行に走行しやすくなる。したがって、第1チューブ211がやや硬質の場合でも、第1チューブ211の弾性力による浮きを抑制することができる。さらに、第1チューブ211の延在方向に沿って配置された第1溝部137aの、第2主面132からの深さを同一に構成することで、第1チューブ211を第1主面131と平行に走行させることができ、第1チューブ211の浮きをより確実に抑制することができる。
【0111】
第2領域R2は、境界部13cの第2主面132側に形成されたスリット13dを挟んで、第1領域R1と隣接して配置される。本実施形態において、シート本体13の第2領域R2は、第1領域R1と同様に構成される。
すなわち第2領域R2は、第1主面131と、第2主面132と、第2凹部133bと、を有する。
第2凹部133bは、第2チューブ212を収容し第1主面131から第2主面132に向かって第2チューブ212の内径よりも大きい深さで形成される。
【0112】
さらに、第2領域R2は、第2壁部134bと、第2蓋部136bと、第2底部135bと、第2溝部137bと、を有する。
第2壁部134bは、第2凹部133bの側壁を形成し、第2チューブ212と隣接する。
第2蓋部136bは、第2チューブ212の延在方向(X軸方向)において第2凹部133bと隣接して配置され、第1主面131側から第2チューブ212を覆う。
第2底部135bは、第2凹部133bの底部を形成し、第2チューブ212を支持する。
第2溝部137bは、第2蓋部136bと対向するように第2主面132に開口して第2チューブ212を収容する。
【0113】
図14に示すように、第2チューブ212は、例えば、複数の延在部212eと、複数の折り返し部212fと、を有する。
延在部212eは、X軸方向に沿って走行し、かつ、Y軸方向に沿って配列される。
折り返し部212fは、延在部211eのX軸方向における端部(例えば境界部13c及び第1端部13aの近傍)に配置され、Y軸方向に隣り合う延在部212eを接続する。
第2凹部133bは、例えば延在部212eに沿って、X軸方向及びY軸方向に配列される。
【0114】
さらに、図15に示すように、第2凹部133bの第1主面131からの最大深さD2は、第1凹部133aの第1主面131からの最大深さD1よりも小さいことが好ましい。これにより、第1状態において、第2領域R2に付加される荷重が第1領域R1よりも小さい場合でも、カバー部材14と第2チューブ212とが接触しやすくなる。したがって、第2領域R2においても、ユーザUと座面11との熱交換が可能となる。最大深さD1,D2の値は、後述する第1主面131と第1及び第2チューブ211,212との距離C1,C2及びシート本体13の変形性(硬度)に応じて適宜設定することができる。
【0115】
また、第2領域R2は、例えば背もたれ部分として用いられ、略垂直の状態になるため、着座時においてユーザUから加わる面圧が第1領域R1よりも小さい。
このため、図15に示すように、第1主面131と第2チューブ212との距離C2は、第1主面131と第1チューブ211との距離C1よりも小さいことが好ましい。これにより、カバー部材14と第2チューブ212とをより確実に接触させることができる。なお、距離C1及び距離C2は、確実に空気層Pを形成する観点から、15mm以上であることが好ましい。距離C1及び距離C2の上限値は、シート本体13の変形性(硬度)に応じて適宜設定することができる。
【0116】
また、第1凹部133aの第1主面131からの最大深さD1及び第2凹部133bの第1主面131からの最大深さD2は、チューブの外径及びシート本体13の変形性(硬度)や着座時におけるユーザUからの押圧力の程度に応じて適宜設定することができる。例えば、シート本体13の変形性が低い場合やユーザUからの押圧力が低い場合は、シート本体13の変形性が高い場合よりも、最大深さD1,D2を小さくすることが好ましい。
【0117】
また、シート本体13が本実施形態のように、例えばポリウレタンフォームで形成される場合、シート本体13は、金型を用いた成形又は切削加工等によって作製される。シート本体13が金型を用いて成形される場合には、上述の構成のシート本体13を一体成形することができるため、軟質なウレタンフォームを用いることができる。この場合、最大深さD1,D2を十分に深くして確実に空気層Pを設けることができるとともに、シート本体13のクッション性を向上させることができる。また、シート本体13が切削加工によって形成される場合は、加工性の観点から、やや硬質のウレタンフォームを用いることが好ましく、最大深さD1,D2も小さく設定されることが好ましい。
【0118】
[変形例1]
複数の第1凹部133a及び複数の第2凹部133bの深さは、それぞれ同一である例に限定されず、異なっていてもよい。なお、本変形例におけるシート部10の平面形状は、図14と同様であるため、図示を省略する。
図19は、本実施形態の変形例1に係るシート部10の、図15と同様の位置における断面図である。
【0119】
ユーザUの着座時において、ユーザUの臀部が配置される第1主面131の境界部13cの近傍では、ユーザUの膝に近い第1端部13aの近傍よりも、大きな圧力が付加される(図17(A)参照)。このため、X軸方向において、境界部13c側に位置する第1凹部133aは、第1端部13a側に位置する第1凹部133aよりも、第1主面131からの深さが深いことが好ましい。さらに、X軸方向に沿って境界部13cから第1端部13aに向かうに従い、第1凹部133aの第1主面131からの深さが小さくなることが好ましい。
【0120】
図19に示す例では、X軸方向に沿った4つの第1凹部133aの第1主面131からの深さを、第1端部13a側から境界部13c側に向かってD3,D4,D5,D6とすると、以下の式(1)の関係が成り立っている。
D3<D4<D5<D6 …(1)
【0121】
同様に、X軸方向において、境界部13c側の第2凹部133bは、第2端部13b側の第2凹部133bよりも、第1主面131からの深さが深いことが好ましい。さらに、X軸方向に沿って境界部13cから第2端部13bに近づくに従い、第2凹部133bの第1主面131からの深さが浅くなることが好ましい。
【0122】
図19に示す例では、X軸方向に沿った4つの第2凹部133bの第1主面131からの深さを、境界部13cから第2端部13bに向かってD7,D8,D9,D10とすると、以下の式(2)の関係が成り立っている。
D7>D8>D9≧D10 …(2)
【0123】
これにより、座面11に付加される荷重の面内分布に応じて、面圧が高いほど第1凹部133a及び第2凹部133bの深さを深くする傾向にして、ユーザUの着座時にちょうど第2チューブ212が座面11(上記(2)の関係式ではユーザUの背中が密着する背もたれ部分)に密着するように最適化することができる。したがって、第2状態において安定して空気層Pを設けることができるとともに、第1状態においてはユーザUと座面11との熱交換を確実に可能とすることができる。
【0124】
[変形例2]
図20は、本実施形態の変形例2に係るシート部10を模式的に示す平面図である。図21は、図20のD-D線で切断したシート部10の断面図である。
これらの図に示すように、シート本体13は第2領域R2を有さなくてもよい。この場合であっても、第1状態においては、座面11を介してユーザUの臀部及び大腿部と流体との熱交換を促進することができ、第2状態においては空気層によって座面11と流体との熱交換を抑制することができる。
【0125】
<他の実施形態>
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば本発明の実施形態は各実施形態を組み合わせた実施形態とすることができる。
【0126】
シート本体13の構成は、座面11との熱交換を可能とするように第1流路21を配置できれば、上述の例に限定されない。また、流体回路20の形状は図示の例に限定されない。例えば、延在部211e,212eがY軸方向に沿って配置されていてもよい。あるいは、流体回路20は、図示しない分流路や合流路等を適宜含んでいてもよい。
【0127】
例えば、シート部10は上記構成に限定されず、例えばシート本体13を有さなくてもよい。この場合は、カバー部材14が、縫い目などによって形成された第1チューブ211の通路を有し、第1チューブ211がその通路に収容されるように構成されてもよい。
【0128】
流体温度調節部30は、冷熱回路31を有する構成に限定されない。例えば、流体温度調節部30は、加熱源によって流体を加温する構成でもよい。あるいは、流体温度調節部30は、冷却ファン等によって流体を冷却する構成でもよい。
【0129】
また、弾性部材45は、上記構成の軟質チューブ46及びシート本体13に限定されない。例えば、弾性部材45は、シート部10の内部に配置され、ユーザUの荷重によって厚みが変化することで、座面11と第1チューブ211とが近接することが可能な種々の構成を採用することができる。
【0130】
また、シート部10は、例えば運転席などの座席Sと一体に構成されていてもよい。この場合、検出部42の人感センサ421は、座席Sの一部に取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1,1A,1B,1C…体温調節システム
10…シート部
11…座面
20…流体回路
21…第1流路
22…第2流路
30…流体温度調節部
40…切替部
41…制御部
42…検出部
43…弁機構
45…弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21