IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ソリューションズの特許一覧

特開2024-81302製造販売計画立案支援装置、及び製造販売計画立案支援方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081302
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】製造販売計画立案支援装置、及び製造販売計画立案支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0637 20230101AFI20240611BHJP
【FI】
G06Q10/0637
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194821
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000233055
【氏名又は名称】株式会社日立ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 宗純
(72)【発明者】
【氏名】小沢 康弘
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA06
5L049AA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】温室効果ガスの排出量取引を伴う事業活動を行う事業体の製造販売計画の立案を支援する製造販売計画立案支援装置及び製造販売計画立案支援方法を提供する。
【解決手段】製造販売計画立案支援装置10は、指定された製品の製造及び販売を含むプロセスの1以上のパターンを、製品の製造及び販売を含む温室効果ガスの排出を伴うプロセスを入力値とし、このプロセスにより得られる販売利益及びこのプロセスにより発生する温室効果ガスの量を出力値とする販売利益算出モデル5に入力することにより、そのプロセスにより得られる販売利益及びそのプロセスにより発生する温室効果ガスの量をパターン毎に算出し、算出した各温室効果ガスの量と、温室効果ガスの排出量の目標値とを比較することにより、温室効果ガスの排出量に応じた利益である排出量利益を夫々算出し、販売利益及び排出量利益の合計を最適化するパターンに係る利益の合計を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の製造及び販売を含む、温室効果ガスの排出を伴うプロセスを入力値とし、前記プロセスにより得られる販売利益及び前記プロセスにより発生する温室効果ガスの量を出力値とする販売利益算出モデルと、
温室効果ガスの排出量の目標値とを記憶する記憶装置、及び、
指定された、製品の製造及び販売を含むプロセスの1以上のパターンを前記販売利益算出モデルに入力することにより、前記プロセスにより得られる販売利益及び前記プロセスにより発生する温室効果ガスの量を前記パターンごとに算出する販売利益算出処理と、
前記算出した各温室効果ガスの量と、前記温室効果ガスの排出量の目標値とを比較することにより、温室効果ガスの排出量に応じた利益である排出量利益をそれぞれ算出する排出量利益算出処理と、
前記販売利益及び前記排出量利益の合計を最適化する前記パターンを特定し、特定したパターンに係る前記合計を出力する全体利益算出処理とを実行する処理装置
を備える、製造販売計画立案支援装置。
【請求項2】
前記記憶装置は、所定の管理領域ごとの前記温室効果ガスの排出量の目標値を記憶し、
前記処理装置は、
前記販売利益算出処理において、前記プロセスに対応づけられた管理領域を検索し、検索された管理領域における温室効果ガスの量を算出し、
前記排出量利益算出処理において、前記検索された管理領域ごとに、前記算出した各温室効果ガスの量と、前記温室効果ガスの排出量の目標値とを比較することにより、前記排出量利益をそれぞれ算出する、
請求項1に記載の製造販売計画立案支援装置。
【請求項3】
前記処理装置は、
前記販売利益算出処理において、さらに、前記プロセスにおける制約条件として前記温室効果ガスの排出量の目標値を前記温室効果ガスの排出量の上限値として指定して前記パターンを前記販売利益算出モデルに入力することにより、前記プロセスにより得られる販売利益を算出し、
算出した販売利益の情報を、前記特定したパターンに係る合計と共に出力する結果出力処理を実行する、
請求項1に記載の製造販売計画立案支援装置。
【請求項4】
前記処理装置は、前記特定したパターンに係る、前記販売利益及び前記排出量利益のそれぞれの情報を出力する結果出力処理を実行する、
請求項1に記載の製造販売計画立案支援装置。
【請求項5】
情報処理装置が、
製品の製造及び販売を含む、温室効果ガスの排出を伴うプロセスを入力値とし、前記プロセスにより得られる販売利益及び前記プロセスにより発生する温室効果ガスの量を出力値とする販売利益算出モデルと、
温室効果ガスの排出量の目標値とを記憶し、
指定された、製品の製造及び販売を含むプロセスの1以上のパターンを前記販売利益算出モデルに入力することにより、前記プロセスにより得られる販売利益及び前記プロセスにより発生する温室効果ガスの量を前記パターンごとに算出する販売利益算出処理と、
前記算出した各温室効果ガスの量と、前記温室効果ガスの排出量の目標値とを比較することにより、温室効果ガスの排出量に応じた利益である排出量利益をそれぞれ算出する排出量利益算出処理と、
前記販売利益及び前記排出量利益の合計を最適化する前記パターンを特定し、特定したパターンに係る前記合計を出力する全体利益算出処理とを実行する、
製造販売計画立案支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造販売計画立案支援装置、及び製造販売計画立案支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サプライチェーンのグローバル化が進んでいる今日では、各国の事情を考慮した効率的な製品の製造販売計画を綿密に立案することが重要となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、販売計画の実現可能性を確認することを目的として、販売予定時期及び販売担当者に紐付く商品及び販売予定数を販売予定データから抽出し、当該販売担当者に紐付く商品、売上数及び売上時期を売上実績データから抽出し、抽出した商品の予定在庫数を、現在在庫データ、発注データ及び製造指示データを参照し且つ抽出した販売予定数を用いて計算し、抽出した商品の当該販売予定時期の次の販売予定時期における予定在庫数を、発注データ、製造指示データ及び販売予定データを参照し且つ計算した予定在庫数を用いて計算し、抽出した商品の当該販売予定時期における販売予定金額を、単価データを参照し且つ抽出した販売予定数を用いて計算するとともに、抽出した商品の当該次の販売予定時期における販売予定金額を販売予定データおよび単価データを参照して計算し、結果を出力する、といった販売計画支援装置が開示されている。
【0004】
ところで、今日ではまた、従来の化石燃料から環境負荷のリスクが小さいクリーンエネルギーへの転換により産業構造ないし社会システムの変革を図る、いわゆるグリーントランスフォーメーション(Green Transformation:GX)への取り組みが行われている。
【0005】
そして、GXにおける一つの仕組みとして、各事業体がその事業活動で生じた温室効果ガスの量に応じて、温室効果ガスを排出する権利(排出権)すなわち排出量を売買する排出量取引が提案されている。
【0006】
この排出量取引は、例えば、GXに賛同する企業で構成されるコミュニティにおける各企業が、自身に設定された温室効果ガスの排出量目標を超える量の温室効果ガスを排出した場合にはその超過分に相当する排出権(排出量)を所定の取引所から購入し、逆に、自身に設定された温室効果ガスの排出量目標を下回る量の温室効果ガスを排出した場合には、その下回った分に相当する排出権(排出量)を所定の取引所に売却する、というものである。
【0007】
排出権取引の仕組みとしては、例えば、特許文献2に、二酸化炭素排出権と、二酸化炭素排出権の評価とが関連付けられた評価情報を参照し、二酸化炭素排出権の評価に応じて、二酸化炭素排出権の調達先を選定する第1選定部と、第1選定部により選定された調達先を送信する送信部と、を備える情報処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-152869号公報
【特許文献2】特開2021-152697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような排出量取引の仕組みが実現されていくと、その事業活動における各プロセスでの温室効果ガスの排出が想定される製造業では、温室効果ガスの排出量が事業の利益状況に影響を及ぼすため、製造販売計画を見直す必要も生じてくると考えられる。
【0010】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、温室効果ガスの排出量取引を行う事業体の製造販売計画の立案を支援することが可能な製造販売計画立案支援装置、及び製造販売計画立案支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するための本発明の一つは、製品の製造及び販売を含む、温室効果ガスの排出を伴うプロセスを入力値とし、前記プロセスにより得られる販売利益及び前記プロセスにより発生する温室効果ガスの量を出力値とする販売利益算出モデルと、温室効果ガスの排出量の目標値とを記憶する記憶装置、及び、指定された、製品の製造及び販売を含むプロセスの1以上のパターンを前記販売利益算出モデルに入力することにより、前記プロセスにより得られる販売利益及び前記プロセスにより発生する温室効果ガスの量を前記パターンごとに算出する販売利益算出処理と、前記算出した各温室効果ガスの量と、前記温室効果ガスの排出量の目標値とを比較することにより、温室効果ガスの排出量に応じた利益である排出量利益をそれぞれ算出する排出量利益算出処理と、前記販売利益及び前記排出量利益の合計を最適化する前記パターンを特定し、特定したパターンに係る前記合計を出力する全体利益算出処理とを実行する処理装置を備える、製造販売計画立案支援装置、である。
【0012】
前記の課題を解決するための本発明の他の一つは、情報処理装置が、製品の製造及び販売を含む、温室効果ガスの排出を伴うプロセスを入力値とし、前記プロセスにより得られる販売利益及び前記プロセスにより発生する温室効果ガスの量を出力値とする販売利益算出モデルと、温室効果ガスの排出量の目標値とを記憶し、指定された、製品の製造及び販売を含むプロセスの1以上のパターンを前記販売利益算出モデルに入力することにより、前記プロセスにより得られる販売利益及び前記プロセスにより発生する温室効果ガスの量を前記パターンごとに算出する販売利益算出処理と、前記算出した各温室効果ガスの量と、前記温室効果ガスの排出量の目標値とを比較することにより、温室効果ガスの排出量に応じた利益である排出量利益をそれぞれ算出する排出量利益算出処理と、前記販売利益及び前記排出量利益の合計を最適化する前記パターンを特定し、特定したパターンに係る前記合計を出力する全体利益算出処理とを実行する、製造販売計画立案支援方法、である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温室効果ガスの排出量取引を伴う事業活動を行う事業体の製造販売計画の立案を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る温室効果ガスの排出量取引の一例を説明する図である。
図2】本実施形態に係る製造販売計画立案支援装置の構成の一例を示す図である。
図3】調達マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図4】製造能力マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図5】BOMマスタのデータ構成の一例を示す図である。
図6】拠点コストマスタのデータ構成の一例を示す図である。
図7】製造拠点間取引マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図8】輸送マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図9】関税マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図10】為替マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図11】販売計画マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図12】温室効果ガス排出枠マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図13】温室効果ガス排出量金額換算マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図14】国拠点マスタのデータ構成の一例を示す図である。
図15】製造販売計画立案支援装置のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図16】製造販売計画立案支援処理の一例を説明するフロー図である。
図17】登録される製造能力マスタの一例を示す図である。
図18】登録される販売計画マスタの一例を示す図である。
図19】入力画面の一例を示す図である。
図20】シミュレーション実行画面の一例を示す図である。
図21】シミュレーション実行処理の詳細を説明するフロー図である。
図22】サプライチェーンモデルの構成の一例を説明する図である。
図23】サプライチェーンパターンの一例を説明する図である。
図24】製造販売DBの一例を示す図である。
図25】排出量取引DBの一例を示す図である。
図26】利益算出処理の詳細を説明するフロー図である。
図27】結果出力処理の詳細を説明するフロー図である。
図28】結果出力処理で表示される画面の一例を示す図である。
図29】結果出力処理で表示される画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<取引の構成>
図1は、本実施形態に係る温室効果ガスの排出量取引の一例を説明する図である。本実施形態の排出量取引は、製造販売計画立案支援装置10を用いて、温室効果ガスの排出を伴う事業活動を行う各事業体5(企業等)と、各事業体5が排出した温室効果ガスの量に応じた、温室効果ガスの排出を行う権利(以下、排出権という)又はその権利に対応する金銭の取引(排出量取引)を行う取引所20との間で行われる。なお、以下では、ある量の温室効果ガスの排出に係る排出権を、単に「排出量」と称することがある。
【0016】
各事業体5は、事業活動として、材料の調達、調達した材料を用いた製品の製造、及び製造した製品の販売を行っている。
【0017】
各事業体5は、このような事業活動に関して、温室効果ガスの排出量の上限の目標値(以下、排出量目標値という)を設定している。各事業体5は、自身が事業活動を通じて排出した温室効果ガスの量が上記排出量目標値を超えた場合には、その超えた分の排出量(排出権)を取引所20から購入しなければならず、これは事業体5のコストとなる。一方、各事業体5は、自身が排出した温室効果ガスの量が上記排出量目標値を下回った場合には、その下回った分の排出量(排出権)を取引所20に売却することができ、これは事業体5の利益となる。すなわち、各事業体5は、製品の製造及び販売による利益(販売利益)と、温室効果ガスの排出量に応じた利益(排出量利益)とを事業活動を通じて得ることができる。
【0018】
本実施形態では、排出量目標値は、所定の期間における温室効果ガスの排出量の上限として設定される。また、排出量目標値は、事業体5が属する一定の地域(以下、管理領域という)ごとに設定されるものとする。したがって、例えば、事業体5が製品の製造と製品の販売を異なる管理領域で行っている場合は、製品の製造に係る排出量利益及び製品の販売に係る排出量利益はそれぞれ別々の排出量目標値によって算出されることになる。なお、製品の原材料の調達に係る排出量利益は、調達元の地域に属する管理領域又は調達先の地域に属する管理領域のいずれか一方に基づいてもよいし、両地域に基づいてもよい(例えば、等分する)。また、管理領域は、地域単位ではなく、各事業体5又は事業体5のグループを単位としてもよい。
【0019】
次に、図2は、本実施形態に係る製造販売計画立案支援装置10の構成の一例を示す図である。製造販売計画立案支援装置10は、事業体による製品の製造販売計画の立案を支援するものであり、販売利益及び排出量利益を考慮することで、事業体の利益がなるべく大きくなるような製造販売計画をユーザに提案する。
【0020】
具体的には、製造販売計画立案支援装置10は、製造予定の製品の販売先での需要等の情報(以下、計画情報という)の入力をユーザから受け付けて、販売利益を算出する販売利益算出モデル5(詳細は後述)を作成する。そして、製造販売計画立案支援装置10は、販売利益算出モデル5により算出される販売利益と、同時に出力される排出量に基づく利益又はコストとを考慮しつつ、事業体の利益額(販売利益及び排出量利益の合計額。以下、全体利益という。)がなるべく大きくなるような製造販売計画の情報を出力する。
【0021】
ここで、製造販売計画立案支援装置10は、全体利益を算出するために必要な各データベース(マスタ)を記憶する。
【0022】
具体的には、まず、製造販売計画立案支援装置10は、製品の材料の調達先に関する情報として、製品の材料の調達先の拠点及び取扱品目等の情報を記憶する調達マスタ110を備える。
【0023】
また、製造販売計画立案支援装置10は、製品の製造プロセスに関する情報として、各製造拠点の製品(又は材料(中間品))の製造能力の情報を記憶する製造能力マスタ210、各製品の材料構成の情報を記憶するBOMマスタ220、及び、各製造拠点で生じる製造コストの情報を記憶する拠点コストマスタ230を備える。
【0024】
また、製造販売計画立案支援装置10は、各拠点(調達先、製造拠点、販売拠点)における材料又は製品の輸送に関する情報として、製造拠点間での製品の取引価格(内部取引価格)に関する情報を記憶する製造拠点間取引マスタ310、製造拠点間の材料又は製品の輸送費に関する情報を記憶する輸送マスタ320、拠点間に係る国の間での輸出入に係る関税の情報を記憶する関税マスタ330、及び、拠点(国)の間の為替レートに関する情報を記憶する為替マスタ340を備える。
【0025】
また、製造販売計画立案支援装置10は、計画情報を記憶する販売計画マスタ410を備える。
【0026】
また、製造販売計画立案支援装置10は、排出量目標値に関する情報を記憶した温室効果ガス排出枠マスタ510と、排出量とそれに対応する取引所との取引金額との関係を記憶した温室効果ガス排出量金額換算マスタ520と、製品の製造及び販売を行う各拠点が属する地域又は国の情報を記憶した国拠点マスタ530とを備える。
【0027】
また、製造販売計画立案支援装置10は、販売利益の情報及びその算出に使用された情報を記憶する製造販売DB610と、排出量利益の情報及びその算出に使用された情報を記憶する排出量取引DB630とを備える。
次に、各マスタのデータ構成を説明する。
【0028】
(調達マスタ)
図3は、調達マスタ110のデータ構成の一例を示す図である。調達マスタ110は、製品の材料(中間品)の品目の情報が設定される調達品目111、その材料が製造される製造拠点の情報が設定される製造拠点112、その材料の調達先(供給元)の情報が設定される調達先113、その材料の購買単価が設定される購買単価114、当該調達先による材料の供給可能量が設定される供給可能量115、及び、その材料の単位数当たりの製造により生じる温室効果ガス排出量が設定される温室効果ガス排出量116の各データ項目を有する。なお、販売利益算出モデル5において、購買単価と、後述するBOMマスタ220の親品目、子品目、及び子品目使用数量とにより材料の購買額の合計が算出される。
【0029】
なお、ある材料(中間品)又は製品を製造する場合は、複数の材料パターンを用いて当該材料又は製品を製造可能な場合がある。
【0030】
(製造能力マスタ)
図4は、製造能力マスタ210のデータ構成の一例を示す図である。製造能力マスタ210は、製品又は材料(ここでは中間品)の製造拠点(工場等)の情報が設定される製造拠点211、その製品又は材料を製造するための設備の情報が設定される設備名称212、その製品又は材料の品目の情報が設定される製造品目213、前記設備の稼働可能日数の情報が設定される稼働可能日数214、その製品又は材料の単位数当たりの製造所要時間が設定される所要時間215、その製品又は材料の製造量の上限値が設定される製造上限値216、及び、その製品又は材料の単位数当たりの製造により生じる温室効果ガス排出量が設定される温室効果ガス排出量217の各データ項目を有する。
【0031】
なお、設備名称212には、設備の名称だけでなく、設備の種類又は属性(例えば、再生可能エネルギーにより稼動する設備であるか否か)の情報が設定される。また、同一の製造拠点においては、同一の材料又は製品を製造可能な複数種類の設備が存在する場合がある。また、同一の材料又は製品を製造可能な設備が複数の製造拠点に存在する場合もある。
【0032】
(BOMマスタ)
図5は、BOMマスタ220のデータ構成の一例を示す図である。BOMマスタ220は、製品又は材料(ここでは中間品)の製造拠点の情報が設定される製造拠点221、その製品又は材料の品目(親品目)の情報が設定される親品目222、親品目に係る製品又は材料を構成する材料の品目(子品目)の情報が設定される子品目223、親品目に係る製品又は材料の輸入にかかる関税の識別コード(関税コード)が設定される関税コード224、子品目の材料の使用数が設定される子品目使用数量225、及び、親品目に係る製品又は材料の製造に係る変動費が設定される変動費226の各データ項目を有する。なお、親品目222、子品目223、及び子品目使用数量225は製品を構成する材料の品目及び数量を特定するために用いられる。なお、本実施形態では、工場が同一である場合には各製品を構成する材料の組み合わせは同じであるものとする。一方、各材料には複数の調達先が考えられるものとする。
【0033】
(拠点コストマスタ)
図6は、拠点コストマスタ230のデータ構成の一例を示す図である。拠点コストマスタは、製造拠点の情報が設定される製造拠点231、その製造拠点の管理維持に要する費用である固定費の情報が設定される固定費232、及び、配賦温室効果ガス排出量233の各データ項目を有する。なお、配賦温室効果ガス排出量233には、製造拠点(工場)で総量として管理する全温室効果ガス排出量(以下、配賦温室効果ガス排出量という)が設定される。販売利益算出モデル5は、配賦温室効果ガス排出量を製造拠点(工場)の総生産時間に対し製品の単位当たりの製造時間で案分した量と、製造能力マスタ210の温室効果ガス排出量217が示す単位当たりの温室効果ガス排出量とを組み合わせることで、単位数(例えば1個)の製品に対する温室効果ガス排出量を算出することができる。
【0034】
(製造拠点間取引マスタ)
図7は、製造拠点間取引マスタ310のデータ構成の一例を示す図である。製造拠点間取引マスタ310は、製品又は材料の品目の情報が設定される品目311、その製品又は材料の発送元の製造拠点の情報が設定される発送元拠点312、その製品又は材料の着荷先の製造拠点の情報が設定される着荷先拠点313、及び、その製品又は材料の内部取引単価(後述)が設定される内部取引単価314、の各データ項目を有する。なお、内部取引単価314は、販売利益算出モデル5において、後述する関税額を算出するために用いられる。
【0035】
(輸送マスタ)
図8は、輸送マスタ320のデータ構成の一例を示す図である。輸送マスタ320は、製品又は材料の品目の情報が設定される品目321、その製品又は材料の発送元の製造拠点の情報が設定される発送元拠点322、その製品又は材料の着荷先の製造拠点の情報が設定される着荷先拠点323、その製品又は材料の輸送手段の情報が設定される輸送手段324、その製品又は材料の輸送単価(輸送費の単価)が設定される輸送単価325、及び、その製品又は材料の単位数量当たりの製造によって生じる温室効果ガス排出量が設定される温室効果ガス排出量326の各データ項目を有する。なお、販売利益算出モデル5においては、輸送単価と、輸送する材料又は製品の数量とにより輸送費が算出される。また、温室効果ガス排出量326には、輸送手段に応じて異なる排出量が設定され、例えば、輸送手段が自動車であれば、より大きい値が、輸送手段が鉄道であればより小さい値が設定されることになる。
【0036】
(関税マスタ)
図9は、関税マスタ330のデータ構成の一例を示す図である。関税マスタ330は、製品又は材料の輸出入に係る関税コードが設定される関税コード331、その輸出入に係る輸入国の名称が設定される輸入国名332、その輸出入に係る輸出国の名称が設定される輸出国名333、その輸出入に係る関税の関税率(輸入税率)が設定される関税率334、及び、その輸出入に係る関税の輸出税率が設定される輸出税率335の各データ項目を有する。
【0037】
(為替マスタ)
図10は、為替マスタ340のデータ構成の一例を示す図である。為替マスタ340は、各通貨の情報が設定される通貨341、及び、通貨間の為替レートの情報が設定される為替レート342の各データ項目を有する。
【0038】
(販売計画マスタ)
図11は、販売計画マスタ410のデータ構成の一例を示す図である。販売計画マスタ410は、製造予定の製品の品目の情報が設定される品目411、その製品の販売拠点の情報が設定される販売拠点412、その製品の販売拠点を基点とした販売先の情報が設定される販売先413、その製品の販売先での需要量が設定される需要量414、その製品の販売価格が設定される販売価格415、その製品に関して予め指定される製造拠点の情報が設定される指定製造拠点416、その製品に対してかかる関税の基準となる価格(内部取引売価)が設定される内部取引売価417、及び、その製品の必須の(最低限の)供給量(以下、必須供給量という)が設定される必須供給量418の各データ項目を有する。なお、指定製造拠点416及び必須供給量418への情報の設定は任意である。
【0039】
(温室効果ガス排出枠マスタ)
図12は、温室効果ガス排出枠マスタ510のデータ構成の一例を示す図である。温室効果ガス排出枠マスタ510は、管理領域の情報が設定される管理領域511と、その管理領域における温室効果ガスの排出量の目標値(排出量目標値)が設定される温室効果ガス排出枠目標値512とを含む各データ項目を有する。
【0040】
本実施形態では、排出量目標値は、各事業体の事業活動のうち原材料の調達(輸送)、製品の製造、及び製品の販売に関する一連のプロセスによって生じる温室効果ガスの排出量の上限値であるものとする。すなわち、排出量目標値は、ある事業体による、(1)調達先での材料の製造によって生じる温室効果ガス排出量、(2)製品の製造によって生じる温室効果ガス排出量(製品の製造時に発生する温室効果ガス発生量、又は設備を動かすための電気量等に対応)、(3)製品又は材料の輸送によって生じる温室効果ガス排出量(輸送時に発生する温室効果ガス発生量)の目標値の合計値((1)+(2)+(3))である。ただし、このような排出量目標値の対象の設定方法は一例であり、他の要素を加え、また上記した要素の一部を除外してもよい。
【0041】
なお、本実施形態では、事業体が行う事業活動の場所がいずれの管理領域にも該当しない場合がある(すなわち、排出量取引が不可能な領域が存在する)ものとする。
【0042】
(温室効果ガス排出量金額換算マスタ)
図13は、温室効果ガス排出量金額換算マスタ520のデータ構成の一例を示す図である。温室効果ガス排出量金額換算マスタ520は、管理領域の情報が設定される管理領域521と、その管理領域における温室効果ガスの取引の種類が購入であるか又は販売であるかを示す情報が設定される購入販売522と、その管理領域における温室効果ガスの排出権の取引金額(購入金額又は販売金額)の基準となる温室効果ガスの量(単位排出量)が設定される単位排出量523と、単位排出量あたりの温室効果ガスの取引金額(排出量単価)が設定される排出量単価524とを含む各データ項目を有する。温室効果ガス排出量金額換算マスタ520により、温室効果ガスの排出量に応じた、排出量取引による利益又は損失(コスト)を算出することができる。
【0043】
(国拠点マスタ)
図14は、国拠点マスタ530のデータ構成の一例を示す図である。国拠点マスタ530は、国(地域)名が設定される国531、その国における管理領域の情報が設定される管理領域532、及び、その管理領域に存在する調達先、製造拠点、及び販売拠点のリストが設定される拠点533の各データ項目を有する。国拠点マスタ530により、国及び管理領域と、これに属する各拠点とが対応づけられる。
【0044】
次に、図2に示すように、製造販売計画立案支援装置10は、販売利益算出モデル記憶部11、計画情報取得部13、サプライチェーンモデル作成部15、サプライチェーンパターン作成部17、シミュレーション実行部19、及び結果出力部21の各機能部(プログラム)を備える。
【0045】
販売利益算出モデル記憶部11は、販売利益算出モデル5を記憶する。販売利益算出モデル5は、製品の製造及び販売を含む、温室効果ガスの排出を伴う各プロセス(各マスタの情報)を入力値とし、各プロセスにより得られる販売利益及び各プロセスにより発生する温室効果ガスの量を出力値とする。
【0046】
計画情報取得部13は、ユーザ入力に基づき、製品の販売先及び当該販売先での需要量に関する情報(計画情報ないし販売計画マスタ410)を取得する。なお、計画情報取得部13は、ユーザ入力ではなく他の情報処理装置から自動的に計画情報ないし販売計画マスタ410を取得してもよい。
【0047】
サプライチェーンモデル作成部15は、材料の調達先、製品又は中間品の製造拠点、製造拠点内の製造設備、及び、製品の販売拠点をノードとしこれらのノード間の結合情報(輸送手段)をリンクとした各ノード間の関係性の情報であるサプライチェーンモデルを作成する。
【0048】
サプライチェーンパターン作成部17は、サプライチェーンモデルに対して、製品の需要量等の各パラメータを設定することで、製造量の製品の製造及び販売における各プロセスのパターンを含む情報であるサプライチェーンパターンを複数作成する。
【0049】
シミュレーション実行部19は、販売利益算出処理部191、排出量利益算出処理部192、及び全体利益算出処理部193を有する。
【0050】
販売利益算出処理部191は、ユーザから指定された、製品の製造及び販売を含むプロセスの1以上のパターン(サプライチェーンパターン作成部17が作成したサプライチェーンパターン)を販売利益算出モデル5に入力することにより、上記プロセスにより得られる販売利益、及びそのプロセスにより発生する温室効果ガスの量をパターン(サプライチェーンパターン)ごとに算出する。
【0051】
排出量利益算出処理192は、販売利益算出処理部191が算出した各温室効果ガスの量と、温室効果ガスの排出量の目標値とを比較することにより、サプライチェーンパターンごとの排出量利益を算出する。
【0052】
全体利益算出処理193は、販売利益及び排出量利益の合計(全体利益)を最適化する(本実施形態では、最大化する)サプライチェーンパターンを特定し、特定したサプライチェーンパターンに係る全体利益を出力する。
【0053】
結果出力部21は、販売利益及び排出量利益の合計を最適化するサプライチェーンパターンに係る、販売利益及び排出量利益のそれぞれの情報を出力する。
【0054】
次に、図15は、製造販売計画立案支援装置10のハードウェア構成の一例を説明する図である。製造販売計画立案支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)などの処理装置31(プロセッサ)と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置32(メモリ)と、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置33と、キーボード、マウス、タッチパネルなどからなる入力装置34と、モニタ(ディスプレイ)等からなる、画面表示を行う出力装置35とを備える。
【0055】
製造販売計画立案支援装置10の機能は、製造販売計画立案支援装置10のハードウェアによって、もしくは、製造販売計画立案支援装置10の処理装置31が、主記憶装置32又は補助記憶装置33に記憶されている各プログラムを読み出して実行することにより実現される。また、これらのプログラムは、例えば、二次記憶デバイスや不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSDなどの記憶デバイス、又は、ICカード、SDカード、DVDなどの、情報処理装置で読み取り可能な記録媒体に格納される。なお、製造販売計画立案支援装置10は、その全部または一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また、各情報処理装置によって提供される機能の全部または一部は、例えば、クラウドシステムがAPI(Application Programming Interface)等を介して提供するサービスによって実現してもよい。
次に、製造販売計画立案支援装置10が行う処理について説明する。
【0056】
<製造販売計画立案支援処理>
図16は、事業体(ユーザ)が実施する製品の製造販売計画を支援するための製造販売計画立案支援処理の一例を説明するフロー図である。製造販売計画立案支援処理は、例えば、ユーザから製造販売計画立案支援装置10に対して所定の入力があった場合に開始される。
【0057】
まず、製造販売計画立案支援装置10のシミュレーション実行部19は、サプライチェーンモデルの構築に必要なマスタのデータを作成し、これを記憶する(s11)。
【0058】
例えば、シミュレーション実行部19は、ユーザからの起動指示に基づき所定の編集アプリケーションを起動する。当該編集アプリケーションは、調達マスタ110、製造能力マスタ210、BOMマスタ220、拠点コストマスタ230、製造拠点間取引マスタ310、輸送マスタ320、関税マスタ330、温室効果ガス排出枠マスタ510、及び温室効果ガス排出量金額換算マスタ520の各マスタのデータ値の入力をユーザから受け付け、それぞれのマスタのデータファイルを作成し記憶する。なお、必要に応じて、為替マスタ340及び国拠点マスタ530も作成される。
【0059】
そして、シミュレーション実行部19は、s11で作成したマスタの選択をユーザから受け付け、選択されたマスタをシミュレーション実行用に登録する(s13)。例えば、シミュレーション実行部19は、入力画面を表示し、ユーザから、シミュレーションの実行に用いるマスタのデータファイルの登録を受け付ける。
【0060】
さらに、計画情報取得部13は、ユーザが計画している販売計画(計画情報)を登録する(s15)。例えば、計画情報取得部13は、ユーザの起動指示により所定の編集アプリケーションを起動する。当該編集アプリケーションは、製造予定の各製品の品目、各製品の販売拠点、各製品の販売先、各製品の販売先での需要量(すなわち製品の製造予定量)、各製品の販売価格、各製品の指定製造拠点(任意)、各製品の内部取引売価、及び各製品の必須供給量(任意)の各データ値の入力をユーザから受け付け、入力されたデータ値を有する販売計画マスタ410のデータファイルを作成し記憶する。そして、計画情報取得部13は、上記編集アプリケーションの終了後、所定の入力画面(後述)を表示し、ユーザから、編集アプリケーションで保存したデータファイルの登録を受け付ける。
【0061】
ここで、図17は、s13で登録される製造能力マスタ210の一例を示す図である。この例では、各製造拠点に異なる数又は異なる種類の製造設備が設けられている。また、これらの製造設備の一部は複数種類の製品を製造することができる。また、同一の製品の一部は異なる製造設備を用いても製造することができる。
【0062】
また、図18は、s15で登録される販売計画マスタ410の一例を示す図である。この例では、複数の販売拠点への複数の製品の販売計画がなされ、一部の製品には必須供給量が設定されている。また、一部の製品には複数の製造拠点が設定されている。
【0063】
(入力画面)
また、図19は、s13で表示される入力画面の一例を示す図である。この入力画面800は、各マスタのデータファイルの指定を受け付けるファイル取り込み欄801と、各マスタのデータ番号の指定を受け付けるマスタ番号登録欄802と、ファイル取り込み欄801により指定されたマスタ(データファイル)の登録を確定する登録欄803とを有する。
(シミュレーション実行画面)
また、図20は、入力画面800に引き続いて表示されるシミュレーション実行画面の一例を示す図である。シミュレーション実行画面820は、入力画面800で登録した各マスタのうちシミュレーションの実行に用いるマスタの登録を受け付けると共にその登録された各マスタのデータ番号が表示されるマスタ表示欄821と、マスタ表示欄821に表示されているマスタによるシミュレーションの実行の名称が設定される名称設定欄822と、シミュレーションの実行を開始するための実行開始欄823と、各実行結果の情報が表示される実行結果欄824とを備える。
【0064】
実行結果欄824は、各シミュレーションの実行に関して登録されているマスタのデータ番号の一覧が表示されるマスタ一覧825、及び、各実行の結果の情報が表示される結果表示欄826等を有する。結果表示欄826は、シミュレーション実行後に表示される。結果表示欄826がユーザにより指定されると、モデル実行の内容(例えば、製造販売DB610及び排出量取引DB630の内容)が表示される。
【0065】
なお、マスタ表示欄821により、ユーザは、利益が最大化される場合の製品の製造及び販売のためのプロセスの内容を確認することができる。
【0066】
次に、図16に示すように製造販売計画立案支援装置10は、シミュレーション実行処理s100を呼び出し、温室効果ガス目標値の達成を無視した場合の(排出量取引による損益を考慮しない場合の)、販売利益のみの最大利益を算出する(シミュレーション1:s17)。
【0067】
具体的には、製造販売計画立案支援装置10は、シミュレーション実行処理s100を呼び出す際に、販売利益算出モデル5に関して各管理領域の排出量目標値をサプライチェーンパターンに対する制約条件から除外し、かつ、シミュレーション実行処理s100における算出対象の利益を販売利益のみとする旨を指定する。シミュレーション実行処理s100の詳細は後述する。
【0068】
s17の処理により、各製品の製造及び販売による販売利益、及び各管理領域の温室効果ガスの排出量等が算出される。
【0069】
製造販売計画立案支援装置10は、s17で算出した各管理領域の温室効果ガス排出量について、温室効果ガス排出量が温室効果ガス目標値を超えている管理領域があるか否かを判定する(s19)。温室効果ガス排出量が温室効果ガス目標値を超えている管理領域がない場合は(s19:NO)、製造販売計画立案支援装置10は、s23の処理を実行する。温室効果ガス排出量が温室効果ガス目標値を超えている管理領域がある場合は(s19:YES)、製造販売計画立案支援装置10は、s21の処理を実行する。
【0070】
s21において製造販売計画立案支援装置10は、シミュレーション実行処理s100を呼び出し、排出量目標値の達成を必須の条件とした場合の、販売利益のみの最大利益を算出する(シミュレーション2)。
【0071】
具体的には、製造販売計画立案支援装置10は、シミュレーション実行処理s100を呼び出す際に、販売利益算出モデル5に関して各管理領域の排出量目標値をサプライチェーンパターンに対する制約条件とし、かつ、シミュレーション実行処理s100における算出対象の利益を販売利益のみとする旨を指定する。s21の処理により、各製品の製造及び販売による販売利益、及び各管理領域の温室効果ガスの排出量等が算出される。
【0072】
また、s23において製造販売計画立案支援装置10は、シミュレーション実行処理s100を呼び出し、温室効果ガス目標値の達成を条件としない場合の、販売利益及び排出量利益の合計利益の最大利益を算出する(シミュレーション3)。
【0073】
具体的には、製造販売計画立案支援装置10は、シミュレーション実行処理s100を呼び出す際に、販売利益算出モデル5に関して各管理領域の排出量目標値をサプライチェーンパターンに対する制約条件から除外し、かつ、シミュレーション実行処理s100における算出対象の利益を販売利益及び排出量利益とする旨を指定する。s23の処理により、各製品の製造及び販売による販売利益、各管理領域の温室効果ガスの排出量、及び排出量利益等が算出される。
【0074】
製造販売計画立案支援装置10は、s17、s21、s23で算出した結果を結果表示画面に表示する結果出力処理s25を実行する。ユーザは、結果表示画面に表示された内容に基づいて、製品の製造及び販売等の業務を実施する。結果出力処理s25の詳細は後述する。
以上で製造販売計画立案支援処理は終了する。次に、シミュレーション実行処理s100及び結果出力処理s25の詳細を説明する。
<シミュレーション実行処理>
図21は、シミュレーション実行処理s100の詳細を説明するフロー図である。
【0075】
サプライチェーンモデル作成部15は、s13、s15で登録した各マスタを読み込む(s51、s53)。
【0076】
サプライチェーンモデル作成部15は、s51、s53で読み込んだデータに基づき、各製品について、材料の調達先、材料(中間品)又は製品の製造拠点、製造拠点内の設備、及び、製品の販売拠点をノードとしこれらのノード間の結合情報(輸送手段)をリンクとした各ノード間の関係性の情報(サプライチェーンモデル)を作成する(s55)。
【0077】
例えば、サプライチェーンモデル作成部15は、国拠点マスタ530と、調達マスタ110の製造拠点112及び調達先113と、製造能力マスタ210の製造拠点211及び設備名称212とに基づき、材料の調達、材料(中間品)又は製品の製造、及び製品の販売に係る一連のプロセスの流れを特定することで、サプライチェーンモデルを生成する。
【0078】
また、サプライチェーンモデル作成部15は、原材料の調達、製品の製造、及び製品の販売に関する制約(例えば、サプライチェーンモデルに関する制約)である調達可能品、調達可能量、設備製造可能品、設備製造可能時間、設備製造上限値、及び出荷可能先の各情報を制約条件として作成する(s57)。
【0079】
例えば、サプライチェーンモデル作成部15は、調達可能品として調達マスタ110の調達品目111、調達可能量として調達マスタ110の供給可能量115、設備製造可能品として製造能力マスタ210の製造品目213、設備製造可能時間として製造能力マスタ210の稼働可能日数214及び所要時間215、設備製造上限値として製造能力マスタ210の製造上限値216、並びに、出荷可能先として製造拠点間取引マスタ310の発送元拠点312及び着荷先拠点313の各レコードの情報に基づき、制約条件を作成する。
【0080】
さらに、サプライチェーンモデル作成部15は、排出量目標値を制約条件とする旨の指定があった場合は(s21参照)、各管理領域の排出量目標値を制約条件として作成する。例えば、サプライチェーンモデル作成部15は、温室効果ガス排出枠マスタ510の各レコードの情報に基づき、各管理領域の排出量目標値を、各管理領域での調達、製造、及び販売の一連のプロセスにより生じる温室効果ガスの排出量の上限とする制約条件を作成する。
【0081】
ここで、図22は、サプライチェーンモデルの構成の一例を説明する図である。このサプライチェーンモデル880は、材料の供給元881(調達先)、材料から他の材料又は製品を製造する製造拠点882(ある国のある拠点の工場)、製造拠点882に設けられている製造設備883、及び製造拠点882からの出荷先である販売拠点884(国)をそれぞれノードとして記憶する。また、このサプライチェーンモデル880は、供給元881、製造拠点882、及び販売拠点884の間の輸送経路885をリンクとして記憶している。
【0082】
また、このサプライチェーンモデル880は、販売拠点884に関する制約条件886(出荷可能先)と、製造拠点882に関する制約条件887(設備製造可能品、設備製造可能時間、設備製造上限値)と、供給元881-製造拠点882間に関する制約条件888(調達可能品、調達可能量)とを有する。
【0083】
また、サプライチェーンモデル880は、排出量目標値を制約条件とする旨の指定があった場合には、管理領域内にある、製品の製造を行うA国工場及び製品の販売を行うC国販売拠点に関して、排出量目標値を温室効果ガスの排出量の上限とする制約条件889を有する(一方、A国販売拠点及びB国工場等は管理領域外である)。
【0084】
続いて、図21のs59に示すように、サプライチェーンパターン作成部17は、製品の需要量、製造拠点、使用設備、材料の調達先、及び輸送経路等の組み合わせを作成し、作成した各組み合わせに対してサプライチェーンパターンを作成する。
【0085】
具体的には、サプライチェーンパターン作成部17は、s55で作成したサプライチェーンモデルに対応させて、s53で読み込んだ計画情報における品目411、販売拠点412、及び販売先413の各組み合わせを作成し、その各組み合わせに対して、需要量(製造量又は販売量)を0(最小値)からs13で読み込んだ需要量414の値(最大値)まで変化させた各場合の、調達先、製造拠点、製造設備、輸送経路、及び輸送手段の全パターンをそれぞれ作成する。
【0086】
また、サプライチェーンパターン作成部17は、サプライチェーンモデル及び製造能力マスタ210等を参照することにより、異なる製造拠点又は製造設備により同じ品目の製品又は中間品の製造が可能な場合は、それらの製造拠点及び製造設備による各組み合わせについて、サプライチェーンパターンを作成する。なお、この場合、設定された製造量の一部分のみを他の製造拠点又は製造設備に割り当てるようにしてもよい。
【0087】
また、サプライチェーンパターン作成部17は、サプライチェーンモデル及び調達マスタ110等を参照することにより、複数の異なる調達先から同じ品目の材料の調達が可能な場合は、それらの調達先による各組み合わせについて、サプライチェーンパターンを作成する。なお、この場合、設定された調達量の一部分のみを他の調達先に割り当てるようにしてもよい。
【0088】
また、サプライチェーンパターン作成部17は、サプライチェーンモデル及び輸送マスタ300等を参照することにより、複数の異なる輸送経路(調達先-製造拠点-販売先までの輸送経路)又は輸送手段を用いて材料又は製品を輸送可能な場合には、それらの輸送経路及び輸送手段による各組み合わせについて、サプライチェーンパターンを作成する。なお、この場合、設定された製造量の一部分のみを他の輸送経路又は輸送手段に割り当てるようにしてもよい。
【0089】
ここで、図23は、サプライチェーンパターンの一例を説明する図である。同図に示すように、品目Aの販売先がA国、J国、E地域であり、それぞれの需要量が100t、200t、150tであり、販売先がE地域である場合の製造拠点には制約がない場合(符号840)、これに対応するサプライチェーンパターン860は、販売先がE地域である場合の製造拠点がJ国のみ(需要量150t)である「パターンa」と、販売先がE地域である場合の製造拠点がJ国及びC国(需要量はそれぞれ149t及び1t)である「パターンb」と、販売先がE地域である場合の製造拠点がJ国及びC国(需要量はそれぞれ50t、150t)である「パターンc」とを少なくとも含む。なお、同図に示している温室効果ガス排出量は、後述の利益算出処理s63において算出されるものである。
【0090】
次に、図21に示すように、シミュレーション実行部19は、s59で作成したサプライチェーンパターンの一つを選択する(s61)。
【0091】
そして、シミュレーション実行部19は、s61で選択したサプライチェーンパターンに基づき全体利益を算出する利益算出処理s63を実行する。
【0092】
利益算出処理s63により、販売利益算出モデル5は、s61で選択したサプライチェーンパターンにより製品の製造販売を行った場合の全体利益(販売利益、又は、指定されている場合は排出量利益及び販売利益の合計)と、その場合の製品の調達、製造及び販売に係る各プロセスにより生じる温室効果ガス排出量とを出力し、これらを製造販売DB610及び排出量取引DB630に記憶する。利益算出処理s63の詳細は後述する。
【0093】
シミュレーション実行部19は、今回利益算出処理s63で出力した全体利益と、前回利益算出処理s63で算出した全体利益(初回にs65が実行される場合は0)とを比較する(s65)。今回出力した全体利益が前回算出した全体利益より大きい場合は(s65:YES)、シミュレーション実行部19は今回出力した全体利益を全体利益の最適値(最大値)として、これを製造販売DB610及び排出量取引DB630に記憶し(s67)、その後はs69の処理が行われる。一方、今回出力した利益額が前回算出した利益額以下である場合は(s65:NO)、シミュレーション実行部19はs69の処理を行う。
【0094】
s69においてシミュレーション実行部19は、他にサプライチェーンパターンがあるか否かを確認し、他にサプライチェーンパターンがある場合はそのサプライチェーンパターンについてs61以下の処理を繰り返す。他にサプライチェーンパターンがない場合は、シミュレーション実行部19はシミュレーション実行処理s100を終了する。
【0095】
(製造販売DB)
図24は、製造販売DB610の一例を示す図である。製造販売DB610は、製造される製品の品目の情報が設定される品目611、その製品の販売拠点の情報が設定される販売拠点612、その販売拠点での製品の販売量が設定される販売量613、その製品の販売価格が設定される販売価格614、前記販売拠点で販売される製品の製造拠点の情報が設定される製造拠点615、その製品の売上高の情報が設定される売上616、その製品の売り上げに基づく販売利益が設定される販売利益617、前記販売拠点における需要量に対して製造できなかった製品の数量の情報が設定される製造不可数量618、前記製造拠点で製造される製品の製造に用いられる製造設備の情報が設定される製造設備619、前記製造拠点で製造される製品の材料の調達先の情報が設定される調達先620、その材料の調達量が設定される調達量621、その材料の輸送手段の情報が設定される輸送手段622、及び、前記販売拠点で販売される製品に係る一連のプロセス(材料の調達、製造、販売)で発生する温室効果ガスの排出量の総量が設定される温室効果ガス排出量623の各データ項目を有する。
【0096】
(排出量取引DB)
図25は、排出量取引DB630の一例を示す図である。排出量取引DB630は、各管理領域が設定される管理領域631、その管理領域における事業活動による温室効果ガスの排出量が設定される温室効果ガス排出量632、その管理領域に設定されている排出量目標値が設定される排出量目標値633、その管理領域における単位量当たりの温室効果ガスの販売額が設定される販売レート634、その管理領域における単位量当たりの温室効果ガスの排出量の購入額が設定される購入レート635、その管理領域における事業活動による排出量利益(又はコスト)が設定される排出量利益636の各データ項目を有する。なお、販売レート634及び購入レート635は、温室効果ガス排出量金額換算マスタ520に基づき算出される。
この排出量取引DB630により、ユーザは、各事業活動によって生じる、排出量取引に基づく利益又はコストを確認することができる。
【0097】
<利益算出処理>
次に、図26は、利益算出処理s63の詳細を説明するフロー図である。
まず、シミュレーション実行部19は、s55で作成したサプライチェーンモデル、及び、s57で作成した制約条件が設定された販売利益算出モデル5を作成する。
【0098】
シミュレーション実行部19は、s61で選択したサプライチェーンパターンを、上記作成した販売利益算出モデル5に入力して販売利益算出モデル5を実行する(s631)。シミュレーション実行部19は、算出した販売利益を全体利益として記憶する。
【0099】
販売利益算出モデル5は、本実施形態では、線形計画法に基づくモデルである。例えば、販売利益算出モデル5は、サプライチェーンパターンを表す関数、及び制約条件を表す関数を入力値の構成要素として含み、販売利益の最大値を算出する目的関数である。
【0100】
販売利益算出モデル5は、目的関数の出力値である販売利益が最大となる場合の各変数の値も出力する。例えば、販売利益算出モデル5は、販売利益の最大値の算出の過程で得られ又は用いられた情報として、サプライチェーンパターンに対応づけられる製品の販売量、製品の売上額、製品の販売利益、各管理領域での各事業活動による温室効果ガス排出量、製品の製造に用いられる製造設備、製品の製造に必要な材料の調達先、製品の製造に必要な材料の調達量、及び、製品又は材料の輸送手段を算出し出力する。
【0101】
なお、販売利益算出モデル5は、上記の計算過程において、製品の売上額を、その製品の販売量及び販売価格を乗算することにより算出する。また、販売利益算出モデル5は、各国の各製品の販売利益を、売上から費用(例えば、内部取引単価により算出される関税額、材料の購買額、製造拠点における変動費及び固定費、並びに輸送費)を控除し、また売上及び費用の算出において各国の為替レートによる換算を行うことにより算出する。
【0102】
また、販売利益算出モデル5は、各管理領域での各事業活動による温室効果ガス排出量として、材料の調達により生じる温室効果ガス排出量、材料又は製品の製造により生じる温室効果ガスの排出量、製造拠点における管理維持により生じる温室効果ガスの排出量(配賦温室効果ガス排出量)、及び販売拠点において生じる温室効果ガスの排出量を算出する。
【0103】
次に、シミュレーション実行部19は、シミュレーション実行処理s100が呼び出された際に、排出量利益を算出対象として含む指定を受けていたか否か(s17、s21、s23参照)を判定する(s633)。排出量利益を算出対象として含む指定を受けていた場合は(s633:YES)、シミュレーション実行部19はs635の処理を実行し、排出量利益を算出対象として含む指定を受けていない場合は(s633:NO)、シミュレーション実行部19はs647の処理を実行する。
【0104】
s635においてシミュレーション実行部19は、管理領域の一つを選択する。
【0105】
シミュレーション実行部19は、選択した管理領域が、温室効果ガスの排出量取引が可能な領域であるかを検索する(s637)。例えば、シミュレーション実行部19は、温室効果ガス排出枠マスタ510を参照し、選択した管理領域に係るレコードが存在するか否かを判定する。
選択した管理領域が温室効果ガスの排出量取引が可能な領域である場合は(s637:YES)、s639の処理を実行し、選択した管理領域が温室効果ガスの排出量取引が可能な領域でない場合は(s637:NO)、s645の処理を実行する。
【0106】
s639においてシミュレーション実行部19は、選択中の管理領域における温室効果ガスの排出量が、温室効果ガス排出枠目標値を超えているか否かを判定する。例えば、シミュレーション実行部19は、s631で算出した温室効果ガスの排出量のうち、選択中の管理領域に係る温室効果ガスの排出量の合計を算出し、算出した合計が、温室効果ガス排出枠目標値を超えているか否かを判定する。
【0107】
選択中の管理領域における温室効果ガスの排出量が温室効果ガス排出枠目標値を超えていない場合は(s639:NO)、シミュレーション実行部19は、s641の処理を実行し、選択中の管理領域における温室効果ガスの排出量が温室効果ガス排出枠目標値を超えている場合は(s639:YES)、シミュレーション実行部19は、s643の処理を実行する。
【0108】
s641においてシミュレーション実行部19は、現在の全体利益に、選択中の管理領域に係る排出量取引により発生する利益を加算する。
【0109】
例えば、シミュレーション実行部19は、温室効果ガス排出量金額換算マスタ520を参照し、選択中の管理領域に係るレコードのうち、購入販売522に「販売」が設定されているレコードの単位排出量523及び排出量単価524の内容を取得することで、温室効果ガス単位量あたりの販売単価を算出する。シミュレーション実行部19は、(選択中の管理領域の温室効果ガス目標値)-(選択中の管理領域の温室効果ガス排出量)を算出し、算出した値に、上記販売単価を乗算することで、選択中の管理領域における排出量取引による利益を算出する。シミュレーション実行部19は、算出した利益を、全体利益に加える。その後は、s645の処理が行われる。
【0110】
s643においてシミュレーション実行部19は、選択中の管理領域に係る排出量取引により発生する損失額を算出し、算出した損失額を、現在の全体利益から減算する。
【0111】
例えば、シミュレーション実行部19は、温室効果ガス排出量金額換算マスタ520を参照し、選択中の管理領域に係るレコードのうち、購入販売522に「購入」が設定されているレコードの単位排出量523及び排出量単価524の内容を取得することで、温室効果ガス単位量あたりの購入単価を算出する。シミュレーション実行部19は、(選択中の管理領域の温室効果ガス排出量)-(選択中の管理領域の温室効果ガス目標値)を算出し、算出した値に、上記販売単価を乗算することで、選択中の管理領域における排出量取引による損失(コスト)を算出する。シミュレーション実行部19は、算出したコストを、全体利益から減算する。その後は、s645の処理が行われる。
【0112】
s645においてシミュレーション実行部19は、これまでに選択していない他の管理領域がある場合は、その管理領域を選択してs637の処理を繰り返す。これまでに選択していない他の管理領域がない場合は、シミュレーション実行部19は、s647の処理を実行する。
【0113】
s647においてシミュレーション実行部19は、販売利益算出モデル5の実行により得られた各値を一時格納DBに記憶する。以上で利益算出処理s63は終了する。
【0114】
<結果出力処理>
次に、図27は、結果出力処理s25の詳細を説明するフロー図である。
結果出力部21は、シミュレーション1の結果、温室効果ガス排出量が温室効果ガス目標値を超えている管理領域があったか否かを判定する(s251)。
【0115】
温室効果ガス排出量が温室効果ガス目標値を超えている管理領域があった場合は(s251:YES)、結果出力部21はs253の処理を実行し、温室効果ガス排出量が温室効果ガス目標値を超えている管理領域がなかった場合は(s251:NO)、結果出力部21はs255の処理を実行する。
【0116】
s253において結果出力部21は、シミュレーション1、シミュレーション2、及びシミュレーション3の実行結果を画面に表示する。例えば、結果出力部21は、シミュレーション1、シミュレーション2、及びシミュレーション3のそれぞれによる各利益の情報を表示する。以上で結果出力処理s25は終了する。
【0117】
s255において結果出力部21は、シミュレーション1及びシミュレーション3の実行結果を画面に表示する。以上で結果出力処理s25は終了する。例えば、結果出力部21は、シミュレーション1及びシミュレーション3のそれぞれによる各利益の情報を表示する。以上で結果出力処理s25は終了する。
【0118】
ここで、図28は、結果出力処理s25のs253の処理で表示される画面の一例を示す図である。すなわち、この画面700は、排出量取引による損益を考慮せずに販売利益のみをシミュレーション1により算出した結果、温室効果ガス排出量が温室効果ガス目標値を超えている管理領域があり、その後シミュレーション2(温室効果ガス排出量が温室効果ガス目標値を遵守するようにした場合)及びシミュレーション3(排出量取引を考慮した場合)が実行された場合に表示される画面である。
【0119】
具体的には、この画面700は、シミュレーション1による販売利益額701と、シミュレーション2による販売利益額702と、シミュレーション3による販売利益額703及び排出量利益704(同図の例では損失となっている)の合計額705(全体利益)とが比較されて表示される。
【0120】
この画面700により、ユーザは、排出量取引で損失が生じるおそれがある場合に、販売利益の達成を優先的に考慮するべきか、排出量目標値の遵守を重視すべきか(利益は最小)、又は、販売利益及び排出量取引を考慮して一定の利益を確保するべきか、のいずれのパターンに基づいて製品の製造販売計画を立案するべきかを検討することができる。
【0121】
図29は、結果出力処理s25のs255の処理で表示される画面の一例を示す図である。すなわち、この画面800は、排出量取引による損益を考慮せずに販売利益のみをシミュレーション1により算出した結果、温室効果ガス排出量が温室効果ガス目標値を超えていない場合に表示される画面である。
【0122】
具体的には、この画面800は、シミュレーション1による販売利益額801と、シミュレーション3による販売利益額802及び排出量利益803(同図の例では利益となっている)の合計額804(全体利益)とが比較されて表示される。これにより、ユーザは、排出量取引で利益を得られる可能性がある場合に、純粋な販売利益と、販売利益及び排出量利益の合計(全体利益)とを比較することができる。
【0123】
なお、ここで説明した、結果出力処理s25で表示される画面は一例である。例えば、シミュレーション1又はシミュレーション2に係る表示において、別途算出した排出量利益を加えて表示してもよい。また、排出量利益における利益の内訳(例えば、製品の調達による排出量利益、製品の製造による排出量利益、及び製品の販売による排出量利益)を表示してもよい。
【0124】
以上に説明したように、本実施形態の製造販売計画立案支援装置10は、ユーザから指定された、製品の製造及び販売を含むプロセス(サプライチェーンパターン)及びその制約条件の組み合わせを販売利益算出モデル5に入力することにより、販売利益及び温室効果ガスの排出量をサプライチェーンパターンごとに算出し、算出した各温室効果ガスの量と排出量目標値とを比較することにより排出量利益をサプライチェーンパターンごとに算出し、販売利益及び排出量利益の合計を最適化するサプライチェーンパターンの場合の全体利益を出力する。
【0125】
これにより、製品の製造販売による販売利益及び、それに伴い発生する温室効果ガスの排出に基づく排出量取引による排出量利益を考慮した利益額を算出することができる。
【0126】
このように、本実施形態の製造販売計画立案支援装置10によれば、温室効果ガスの排出量取引を行う事業体の製造販売計画の立案を支援することができる。
【0127】
また、本実施形態の製造販売計画立案支援装置10は、製品の製造及び販売等のプロセスに対応づけられた管理領域を検索し、検索された管理領域における温室効果ガスの量を算出し、検索された管理領域ごとに排出量利益を算出する。
【0128】
これにより、排出量取引を導入している地域に関しては排出量利益を算出する一方で、排出量取引を導入していない地域に関しては排出量利益を考慮しないことができるので、排出量取引に関して様々なポリシーを採用している各地域にまたがる製品のサプライチェーンを展開している事業体においても、温室効果ガスの排出量取引を行う事業体の製造販売計画の立案を支援することができる。
【0129】
また、本実施形態の製造販売計画立案支援装置10は、制約条件として排出量目標値を温室効果ガスの排出量の上限値として指定してサプライチェーンパターンを販売利益算出モデル5に入力することにより販売利益を算出し、算出した販売利益の情報と、先に算出した全体利益の情報とを出力する。
【0130】
このように、温室効果ガスの排出量が排出量目標値以下に収まるようにした場合のシミュレショーン(シミュレーション2)を行って販売利益を算出し、この販売利益と、既に算出した全体利益とを出力することで、ユーザは、排出量目標値を遵守した場合の販売利益と、排出量目標値を制約にしないで得られる全体利益との比較をすることができる。
【0131】
また、本実施形態の製造販売計画立案支援装置10は、全体利益を最適化(最大化)するサプライチェーンパターンに係る販売利益及び排出量利益のそれぞれの情報を出力する。
【0132】
これにより、ユーザは、販売利益及び排出量利益のそれぞれの利益に対する貢献度を比較することができる。
【0133】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0134】
例えば、製造販売計画立案支援装置10が備える各機能部の構成は一例であり、例えばある機能部を他の機能部に設けてもよいし、複数の機能部を一つの機能部に統合してもよい。また、製造販売計画立案支援装置10の機能部の一部を他の通信可能な情報処理装置に設けてもよい。
【0135】
また、本実施形態で説明した各マスタのデータ項目は一例であり、他の項目を追加し、又は項目の一部を省いてもよい。
【符号の説明】
【0136】
5 販売利益算出モデル
10 製造販売計画立案支援装置
11 販売利益算出モデル記憶部
15 サプライチェーンモデル作成部
17 サプライチェーンパターン作成部
19 シミュレーション実行部
21 結果出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29