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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008132
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】サインパネル、およびカード
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/20 20140101AFI20240112BHJP
【FI】
B42D25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109727
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】上原 隆志
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005HA19
2C005HB01
2C005HB09
2C005HB20
2C005JA01
2C005JA26
2C005JB07
2C005KA42
2C005KA43
2C005KA61
(57)【要約】
【課題】カードの製造コストが増大することを抑制できるサインパネル、およびカードを提供する。
【解決手段】本発明のサインパネルの一つの態様は、カード面に貼り付けられるサインパネルであって、カード面に接着される接着面を有する接着層と、筆記面を有し、接着層に対して積層された筆記層と、を備え、筆記面から接着面までの厚さ方向の全体において透明または半透明な透過部が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード面に貼り付けられるサインパネルであって、
前記カード面に接着される接着面を有する接着層と、
筆記面を有し、前記接着層に対して積層された筆記層と、
を備え、
前記筆記面から前記接着面までの厚さ方向の全体において透明または半透明な透過部が設けられている、サインパネル。
【請求項2】
前記サインパネルの全体が前記透過部となっている、請求項1に記載のサインパネル。
【請求項3】
前記筆記面の算術平均粗さRaは、0.3μm以上、3.0μm以下である、請求項1に記載のサインパネル。
【請求項4】
前記筆記面の十点平均粗さRzは、1.2μm以上、17.0μm以下である、請求項1に記載のサインパネル。
【請求項5】
前記筆記面の最大高さRmaxは、3.0μm以上、20.0μm以下である、請求項1に記載のサインパネル。
【請求項6】
前記接着層と前記筆記層との間に位置する中間層を備え、
前記中間層は、透明または半透明である、請求項1に記載のサインパネル。
【請求項7】
前記サインパネルの厚さは、2.0μm以上、50.0μm以下である、請求項1に記載のサインパネル。
【請求項8】
カード面を有するカード本体と、
請求項1から7のいずれか一項に記載され、前記カード面に貼り付けられたサインパネルと、
を備える、カード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サインパネル、およびカードに関する。
【背景技術】
【0002】
サインパネル付きのカードが知られている。例えば、特許文献1には、紙質のサインパネルが貼り付けられたカードが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-92070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなカードにおいては、カードの表面の色相とカードの裏面の色相とを合わせる「tone on tone」と呼ばれるデザインが使用される場合がある。この場合、サインパネルの色相もサインパネルが設けられるカード面の色相に合わせる必要がある。そのため、サインパネルを設けるカード面の色相ごとに当該色相と同一の色相、または近い色相を有するサインパネルを用意する必要があり、カードの製造コストが増大する問題があった。
【0005】
本発明の一つの態様は、上記事情に鑑みて、カードの製造コストが増大することを抑制できる構造を有するサインパネル、およびそのようなサインパネルを備えるカードを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のサインパネルの一つの態様は、カード面に貼り付けられるサインパネルであって、前記カード面に接着される接着面を有する接着層と、筆記面を有し、前記接着層に対して積層された筆記層と、を備え、前記筆記面から前記接着面までの厚さ方向の全体において透明または半透明な透過部が設けられている。
【0007】
本発明のカードの一つの態様は、カード面を有するカード本体と、上記に記載され、前記カード面に貼り付けられたサインパネルと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、サインパネルを備えるカードの製造コストが増大することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態におけるカードを示す図である。
図2】第1実施形態におけるカードを示す断面図であって、図1におけるII-II断面図である。
図3】第1実施形態のサインパネルの製造方法における手順の一部を示す斜視図である。
図4A】第1実施形態のサインパネルの製造方法における手順の一部を示す断面図である。
図4B】第1実施形態のサインパネルの製造方法における手順の他の一部を示す断面図である。
図4C】第1実施形態のサインパネルの製造方法における手順のさらに他の一部を示す断面図である。
図5】第2実施形態におけるカードを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数などを、実際の構造における縮尺および数などと異ならせる場合がある。
【0011】
また、図面には、適宜、X軸、Y軸、およびZ軸を示している。Z軸は、各実施形態におけるカードの厚さ方向を示している。X軸およびY軸は、各実施形態におけるカードの厚さ方向と直交する方向を示しており、互いに直交する方向を示している。X軸は、各実施形態における略長方形板状のカードの短辺に沿った方向を示している。Y軸は、各実施形態における略長方形板状のカードの長辺に沿った方向を示している。以下の説明においては、X軸に沿った方向を“短手方向X”と呼び、Y軸に沿った方向を“長手方向Y”と呼び、Z軸に沿った方向を“厚さ方向Z”と呼ぶ。短手方向Xと長手方向Yと厚さ方向Zとは、互いに直交する方向である。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態におけるカード100を示す図である。図2は、本実施形態におけるカード100を示す断面図であって、図1におけるII-II断面図である。図1では、カード100を裏側から見た図を示している。図1および図2に示すように、カード100は、略長方形板状のカードである。本実施形態においてカード100は、磁気ストライプ11および図示しないICチップを有するクレジットカードである。なお、カード100の種類は、特に限定されず、クレジットカード以外であってもよい。カード100は、例えば、キャッシュカード、身分証明書としてのカード、および会員証としてのカードなどであってもよい。カード100は、ICカードであってもよいし、磁気カードであってもよいし、電気的な素子も磁気的な素子も有しないカードであってもよい。
【0013】
本実施形態においてカード100は、カード100の表面の色相とカード100の裏面の色相とを合わせる「tone on tone」デザインのカードである。なお、カード100は、「tone on tone」デザインのカードでなくてもよく、カード100の表面の色相とカード100の裏面の色相とが互いに異なっていてもよい。
【0014】
カード100は、カード本体10と、サインパネル20と、を備える。カード本体10は、略長方形板状である。カード本体10の形状および構造は、特に限定されない。図2に示すように、カード本体10は、厚さ方向Zの一方側(+Z側)を向く第1カード面10aと、厚さ方向Zの他方側(-Z側)を向く第2カード面(カード面)10bと、を有する。第1カード面10aは、表面である。第2カード面10bは、裏面である。図示は省略するが、第1カード面10aには、ICチップと電気的に接続された接触端子が露出している。図1に示すように、第2カード面10bには、長手方向Yに延びる磁気ストライプ11が設けられている。第1カード面10aにおける色相は、第2カード面10bにおける色相と同一の色相、または近い色相である。本実施形態において第2カード面10bは、サインパネル20が貼り付けられるカード面である。
【0015】
サインパネル20は、カード100の所有者がサインを記載するためのパネルである。本実施形態においてサインパネル20は、カード本体10の裏面である第2カード面10bに貼り付けられている。サインパネル20は、長手方向Yに延びている。サインパネル20は、長手方向Yに長い長方形板状である。本実施形態においてサインパネル20は、磁気ストライプ11と短手方向Xに隣り合って配置されている。図2に示すように、サインパネル20は、接着層21と、接着層21に対して積層された筆記層22と、を有する。本実施形態においてサインパネル20は、接着層21と筆記層22との2つの層が厚さ方向Zに積層されて構成されている。
【0016】
接着層21は、第2カード面10bに接着される接着面21aを有する。接着面21aは、接着層21における厚さ方向Zの一方側(+Z側)の面である。接着面21aは、サインパネル20における厚さ方向Zの一方側の面である。接着面21aが第2カード面10bに接着されることにより、サインパネル20がカード本体10の第2カード面10bに貼り付けられている。接着層21は、透明である。より詳細には、接着層21は、無色透明である。なお、接着層21は、白色半透明などの半透明であってもよい。本実施形態において接着層21を構成する材料は、熱可塑性樹脂である。なお、接着層21を構成する材料は、熱硬化性接着剤であってもよいし、感圧性接着剤であってもよい。
【0017】
接着層21を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、塩化ビニル、およびそれらの混合物または共重合体などが挙げられる。また、接着層21を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、およびそれらのいずれかと粘着付与剤との混合物、またはそれらのいずれかと粘着付与剤およびワックスの混合物などが挙げられる。さらに、接着層21を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、共重合ポリエステル樹脂、および共重合ポリアミド樹脂などが挙げられる。またさらに、接着層21を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンまたはエチレン-酢酸ビニル共重合体にマレイン酸などの不飽和カルボン酸をグラフト重合させたグラフト重合物などが挙げられる。
【0018】
上記に挙げた熱可塑性樹脂を接着層21の材料として用いることで、接着層21の接着性を好適に得ることができ、サインパネル20を好適にカード本体10に貼り付けることができる。特に、ウレタン樹脂、塩化ビニル、およびそれらの混合物または共重合体を接着層21の材料として用いることで、接着層21の接着性を好適に得ることができるとともに、接着層21の耐久性も好適に得ることができる。
【0019】
本実施形態において筆記層22は、接着層21の厚さ方向Zの他方側(-Z側)に隣り合って積層されている。筆記層22を構成する材料としては、例えば、カオリン、タルクなどの多孔質性の微粒状体または多孔性シリカフィラーなどを、熱可塑性樹脂中または2液硬化性樹脂バインダー中に分散させた塗料を用いることができる。筆記層22を構成する材料として熱可塑性樹脂を用いる場合には、当該熱可塑性樹脂として、上述した接着層21を構成する熱可塑性樹脂と同様の材料を用いることができる。
【0020】
筆記層22は、筆記面22aを有する。筆記面22aは、カード100の所有者がサインを書く面である。筆記面22aは、筆記層22における厚さ方向Zの他方側(-Z側)の面である。筆記面22aは、サインパネル20における厚さ方向Zの他方側の面である。本実施形態において筆記面22aの算術平均粗さRaは、0.3μm以上、3.0μm以下である。本実施形態において筆記面22aの十点平均粗さRzは、1.2μm以上、17.0μm以下である。本実施形態において筆記面22aの最大高さRmaxは、3.0μm以上、20.0μm以下である。本明細書において、算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、および最大高さRmaxは、それぞれJISB0601:1982に記載された算術平均粗さRa、十点平均粗さRz、および最大高さRmaxを意味する。
【0021】
本実施形態において筆記層22は、半透明である。より詳細には、筆記層22は、白色半透明である。なお、筆記層22は、無色透明などの透明であってもよい。また、筆記層22のうち筆記面22aのみが白色透明などの半透明で、筆記層22のうち筆記面22a以外の部分が無色透明などの透明であってもよい。
【0022】
サインパネル20には、筆記面22aから接着面21aまでの厚さ方向Zの全体において透明または半透明な透過部20aが設けられている。本実施形態においては、サインパネル20の全体が透過部20aとなっている。つまり、本実施形態において透過部20aは、接着層21と筆記層22とからなる。透過部20aのうち接着層21で構成される部分は透明であり、透過部20aのうち筆記層22で構成される部分は不透明である。透過部20aは、筆記面22aから接着面21aまで可視光線を透過させる光透過性を有する。そのため、第2カード面10bのうち透過部20aが貼り付けられた部分を、透過部20aを介して見ることができる。これにより、接着面21aが第2カード面10bに接着された状態で、筆記面22aから透過部20aを介して第2カード面10bの色相を視認可能である。
【0023】
なお、本明細書において「筆記面から透過部を介してカード面の色相を視認可能である」とは、筆記面から透過部を介して見える当該カード面の色相が、直接見た場合の当該カード面の色相と同一の色相または近い色相に見えることを意味する。本明細書において「同一の色相」とは、日本色研配色体系(PCCS:Practical Color Co-ordinate System)における色相番号が同一であることを意味し、「近い色相」とは、日本色研配色体系における色相番号の差、すなわち色相差が1以上、3以下であることを意味する。また、本明細書において「半透明」とは、透明よりも透明度が低く、かつ、当該半透明な対象を介してカード面の色相を視認可能な程度に透明度を有する性質を意味する。
【0024】
サインパネル20の厚さT1は、2.0μm以上、50.0μmである。本実施形態においてサインパネル20の厚さT1は、接着層21の厚さと筆記層22の厚さとを足し合わせた厚さである。サインパネル20の厚さT1は、サインパネル20における厚さ方向Zの寸法である。接着層21の厚さは、接着層21における厚さ方向Zの寸法である。筆記層22の厚さは、筆記層22における厚さ方向Zの寸法である。サインパネル20の厚さT1は、接着面21aと筆記面22aとの間の厚さ方向Zの距離と等しい。本実施形態において接着層21の厚さと筆記層22の厚さとは、互いに同じである。なお、接着層21の厚さと筆記層22の厚さとは、互いに異なっていてもよい。
【0025】
次に、サインパネル20の製造方法について説明する。図3は、サインパネル20の製造方法における手順の一部を示す斜視図である。図4Aは、サインパネル20の製造方法における手順の一部を示す断面図である。図4Bは、サインパネル20の製造方法における手順の他の一部を示す断面図である。図4Cは、サインパネル20の製造方法における手順のさらに他の一部を示す断面図である。
【0026】
図3から図4Cに示すように、本実施形態においてサインパネル20は、サインパネル転写箔30の一部をスタンパSによって加圧してカード本体10に転写することによって作られる。サインパネル転写箔30は、例えば、ロール状に巻き取られた状態となっている。サインパネル転写箔30は、ベースフィルム31に対して、筆記層122と、接着層121と、をこの順に積層して作られている。筆記層122は、ベースフィルム31に対して剥離可能となっている。筆記層122は、例えば、グラビア印刷によってベースフィルム31上に形成されている。接着層121は、例えば、グラビア印刷によって筆記層122上に形成されている。筆記層122の一部がカード本体10に転写されることで、サインパネル20の筆記層22が作られる。接着層121の一部がカード本体10に転写されることでサインパネル20の接着層21が作られる。
【0027】
サインパネル20を製造する際には、図3および図4Aに示すように、ロール状に巻き取られたサインパネル転写箔30の一部を引き出して、カード本体10とスタンパSとの間に配置する。このとき、サインパネル転写箔30の接着層121がカード本体10の第2カード面10bと対向し、サインパネル転写箔30のベースフィルム31がスタンパSと対向するように、サインパネル転写箔30を配置する。
【0028】
次に、図4Bに示すように、スタンパSによってサインパネル転写箔30の一部をカード本体10の第2カード面10bに押し付ける。スタンパSによって加圧されることによって、図4Cに示すように、接着層121の一部が第2カード面10bに接着するとともに筆記層122の一部がベースフィルム31から剥離し、接着層121の一部と筆記層122の一部とが分離して第2カード面10bに貼り付けられた状態となる。これにより、カード本体10に貼り付けられた状態のサインパネル20が形成される。
【0029】
スタンパSによってサインパネル転写箔30を加圧する際、スタンパSのうちサインパネル転写箔30に接触する接触面Saにおける表面粗さが、ベースフィルム31を介して筆記層122のうちベースフィルム31に貼り付けられた面に転写される。筆記層122のうちベースフィルム31に貼り付けられた面は、筆記層22の筆記面22aとなる。そのため、筆記面22aの表面粗さは、スタンパSの接触面Saの表面粗さとなる。したがって、スタンパSの表面粗さを調節することで、筆記面22aの表面粗さを容易に調節することができる。
【0030】
本実施形態によれば、サインパネル20には、筆記面22aから接着面21aまでの厚さ方向Zの全体において透明または半透明な透過部20aが設けられている。そのため、カード100の所有者などがサインパネル20を筆記面22aから見た際に、透過部20aを介して第2カード面10bの色相を視認することが可能となる。これにより、見た目上のサインパネル20の色相を、第2カード面10bの色相と同一の色相、または近い色相にすることができる。したがって、第2カード面10bの色相が異なるカード本体10に対してサインパネル20を貼り付ける場合でも、サインパネル20の色相を変えることなく、サインパネル20の見た目上の色相を第2カード面10bの色相に合わせることができる。つまり、第2カード面10bの色相が異なる複数のカード本体10に対しても、共通のサインパネル20を使用することができる。そのため、第2カード面10bの色相に応じて異なるサインパネル20を用意する必要がなく、カード100の製造コストが増大することを抑制できる。
【0031】
また、本実施形態によれば、サインパネル20の全体が透過部20aとなっている。そのため、サインパネル20の全体における見た目上の色相を、第2カード面10bと同一の色相または近い色相にすることができる。これにより、カード100の意匠性をより向上できる。
【0032】
ここで、筆記面22aは、表面粗さが大きいほど、所有者が筆記面22aに文字を書く際の筆記性が向上する。一方、筆記面22aの表面粗さが大きくなる程、筆記面22aが不透明に近づくため、透過部20aの透過性が低下し、透過部20aを介して第2カード面10bの色相を視認することが困難になる。
【0033】
これに対して、本実施形態によれば、筆記面22aの算術平均粗さRaは、0.3μm以上、3.0μm以下である。筆記面22aの算術平均粗さRaをこのような数値範囲にすることで、筆記面22aの筆記性を好適に確保しつつ、透過部20aを介して第2カード面10bの色相を好適に視認することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態によれば、筆記面22aの十点平均粗さRzは、1.2μm以上、17.0μm以下である。筆記面22aの十点平均粗さRzをこのような数値範囲にすることで、筆記面22aの筆記性を好適に確保しつつ、透過部20aを介して第2カード面10bの色相を好適に視認することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態によれば、筆記面22aの最大高さRmaxは、3.0μm以上、20.0μm以下である。筆記面22aの最大高さRmaxをこのような数値範囲にすることで、筆記面22aの筆記性を好適に確保しつつ、透過部20aを介して第2カード面10bの色相を好適に視認することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態によれば、サインパネル20の厚さT1は、2.0μm以上、50.0μm以下である。サインパネル20の厚さT1をこのような数値範囲にすることにより、サインパネル20の厚さT1が大きくなり過ぎることを抑制でき、透過部20aを介して第2カード面10bの色相を視認することが困難になることを抑制できる。また、サインパネル20が薄すぎて筆記面22aの筆記性が損なわれることを抑制できる。
【0037】
<第2実施形態>
本実施形態は、第1実施形態に対して、サインパネル220の構造が異なる。以下の説明において、上述した実施形態と同様の構成については、適宜同一の符号を付すなどにより説明を省略する場合がある。図5は、本実施形態におけるカード200を示す断面図である。
【0038】
図5に示すように、カード200は、カード本体10と、サインパネル220と、を備える。サインパネル220は、接着層21と、筆記層22と、中間層223と、を備える。中間層223は、接着層21と筆記層22との間に位置する。中間層223は、透明または半透明である。中間層223は、どのような層であってもよい。中間層223は、サインパネル220の厚さT2を調整するための層であってもよいし、一部に印刷が施された層であってもよいし、サインパネル220の強度を補強するための層であってもよい。中間層223を構成する材料は、透明または半透明であれば、特に限定されない。本実施形態においてサインパネル220の厚さT2は、接着層21の厚さと筆記層22の厚さと中間層223の厚さとを足し合わせた厚さである。サインパネル220の厚さT2は、2.0μm以上、50.0μmである。
【0039】
本実施形態において透過部220aは、接着層21と筆記層22と中間層223とからなる。本実施形態のサインパネル220は、第1実施形態と同様に全体が透過部220aとなっている。カード200の所有者などは、接着面21aが第2カード面10bに接着された状態で、筆記面22aから透過部220aを介して第2カード面10bの色相を視認可能である。
【0040】
本実施形態によれば、サインパネル220は、接着層21と筆記層22との間に位置する中間層223を備え、中間層223は、透明または半透明である。そのため、中間層223を設けてサインパネル220の厚さT2を調整する、またはサインパネル220に所定の機能などを付与しつつ、透過部220aを介して第2カード面10bの色相を視認可能である。これにより、サインパネル220の構造の自由度を向上させつつ、第1実施形態と同様に、カード200の製造コストが増大することを抑制できる。
【0041】
以上に本発明における実施の形態について説明したが、本発明は上述した各実施形態の構成のみに限定されず、以下の構成および方法を採用することもできる。
【0042】
透過部は、全体が透明であってもよいし、全体が半透明であってもよい。サインパネルの一部のみが透過部となっていてもよい。この場合、サインパネルのうち透過部以外の部分は、不透明な部分を含んでいてもよい。透過部は、例えば、透過部を介してカード面の色相が視認可能な範囲内において、色が付いた透明な部分を含んでもよいし、透過部を介してカード面の色相が視認可能な範囲内で白色以外の色の半透明な部分を含んでもよい。
【0043】
サインパネルは、カード本体のカード面であれば、表面に貼り付けられてもよいし、裏面に貼り付けられてもよい。例えば、上述した第1実施形態においてサインパネル20は、カード本体10の第1カード面10aに貼り付けられてもよい。筆記面の表面粗さは、特に限定されない。サインパネルの厚さは、特に限定されない。接着層と筆記層との間に中間層が設けられる場合、中間層は2層以上設けられていてもよい。
【0044】
以上、本明細書において説明した各構成および各方法は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【実施例0045】
上述した第1実施形態のサインパネル20と同様の構成を有するサインパネルを作り、筆記性およびサインパネルを介した色相の視認性の検証を行った。サインパネル転写箔のベースフィルムは、東レ株式会社製のルミラー(登録商標)のうち品番が25-T60のフィルムとした。当該ベースフィルムには、2.0μmの筆記層と2.0μmの接着層とをそれぞれグラビア印刷により設けた。つまり、サインパネルの厚さは、4.0μmとした。筆記層を構成する材料は、90質量部のポリエステルウレタン樹脂に対して10質量部のシリカフィラーを混合した材料とした。ポリエステルウレタン樹脂は、東洋紡株式会社製のバイロン(登録商標)UR-3500とした。シリカフィラーは、富士シリシア化学株式会社製のSYLYSIA(登録商標)300とした。接着層を構成する材料は、100質量部の塩酢ビ樹脂とした。塩酢ビ樹脂は、日信化学工業株式会社製のソルバイン(登録商標)Aとした。ナビタス株式会社製のホットスタンプMP-10Bを用いて、サインパネル転写箔の一部をカード本体に対して押し付けて加圧し、カード本体に貼り付けられたサインパネルを作製した。サインパネルは、筆記面の表面粗さが異なるサインパネルを複数作製した。筆記面の表面粗さは、ホットスタンプMP-10Bにおけるサインパネル転写箔と接触する接触面の表面粗さを変更することによって変更した。サインパネルの長手方向の寸法は、57mmとした。
【0046】
上述したようにして作製した複数のサインパネルを筆記面から視認して、サインパネルが貼り付けられたカード面の色相が視認できるか否か検証を行った。結果を以下の表1から表3に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
表1は、算術平均粗さRaを変化させた場合における色相の視認性の検証結果を示す表である。表2は、十点平均粗さRzを変化させた場合における色相の視認性の検証結果を示す表である。表3は、最大高さRmaxを変化させた場合における色相の視認性の検証結果を示す表である。表1から表3において「〇」はカード面の色相を好適に視認可能であったことを示し、「△」はカード面の色相を視認可能ではあったものの視認しづらかったことを示し、「×」はカード面の色相を視認できなかったことを示している。
【0051】
上記の表1から表3に示す結果から、算術平均粗さRaが4.5μm以上、十点平均粗さRzが23.0μm以上、または最大高さRmaxが26.0以上の場合には、サインパネルを介してカード面の色相を視認できないことが確かめられた。また、算術平均粗さRaが3.0μm以下の場合、十点平均粗さRzが17.0μm以下の場合、および最大高さRmaxが20.0μm以下の場合には、サインパネルを介してカード面の色相を好適に視認できることが確かめられた。
【0052】
表1から表3に示す各サインパネルのうち、色相の視認性が「〇」または「△」であったサインパネルが第1実施形態のサインパネル20の実施例に相当し、色相の視認性が「×」であったサインパネルは筆記面が不透明な比較例に相当する。
【0053】
次に、作製した複数のサインパネルの筆記面に対して文字などを書いて筆記面の筆記性を検証した。当該筆記性の検証には、ISO12757-2に準拠した油性ボールペンを用いた。結果を以下の表4から表6に示す。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
表4は、算術平均粗さRaを変化させた場合における筆記性の検証結果を示す表である。表5は、十点平均粗さRzを変化させた場合における筆記性の検証結果を示す表である。表6は、最大高さRmaxを変化させた場合における筆記性の検証結果を示す表である。表4から表6において、「◎」はかすれなく文字などを書くことができ筆記性が良好であったことを示し、「〇」は書いた文字などの一部にかすれが生じたことを示し、「△」は書いた文字などの比較的多くの部分にかすれが生じたことを示している。
【0058】
上記の表4から表6に示す結果から、算術平均粗さRaが0.3μm以上の場合、十点平均粗さRzが1.2μm以上の場合、および最大高さRmaxが3.0μm以上の場合には、筆記面に良好に文字などを書けることが確かめられた。表4から表6に示す各サインパネルは、いずれも第1実施形態のサインパネル20の実施例に相当する。
【0059】
以上の結果から、筆記面の算術平均粗さRaを、0.3μm以上、3.0μm以下とすることで、良好な筆記性と良好な色相の視認性を有するサインパネルが得られることが確かめられた。また、筆記面の十点平均粗さRzを、1.2μm以上、17.0μm以下とすることで、良好な筆記性と良好な色相の視認性を有するサインパネルが得られることが確かめられた。また、筆記面の最大高さRmaxを、3.0μm以上、20.0μm以下とすることで、良好な筆記性と良好な色相の視認性を有するサインパネルが得られることが確かめられた。
【符号の説明】
【0060】
10…カード本体、10b…第2カード面(カード面)、20,220…サインパネル、20a,220a…透過部、21…接着層、21a…接着面、22…筆記層、22a…筆記面、100,200…カード、223…中間層、Ra…算術平均粗さ、Rmax…最大高さ、Rz…十点平均粗さ、T1,T2…厚さ、Z…厚さ方向
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5