(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081323
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 13/06 20060101AFI20240611BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20240611BHJP
F04D 29/06 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
F04D13/06 J
F04D13/06 F
F04D13/06 H
F04D29/44 D
F04D29/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194854
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】594046329
【氏名又は名称】ケーピーエス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(74)【代理人】
【識別番号】100217467
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴崎 一磨
(72)【発明者】
【氏名】尾本 慶治
(72)【発明者】
【氏名】野島 健一郎
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AA13
3H130AA36
3H130AB12
3H130AB23
3H130AB44
3H130AC01
3H130AC27
3H130BA56A
3H130BA56C
3H130BA56D
3H130BA56E
3H130BA56G
3H130CA06
3H130CA21
3H130CB06
3H130DA02X
3H130DB00X
3H130DD04X
3H130DH03X
3H130DH06X
3H130EA07A
3H130EA07C
3H130EA07D
3H130EA07E
3H130EA07G
(57)【要約】
【課題】キャンの底部側に気体が滞留するのを抑制可能なポンプを提供する。
【解決手段】本発明のポンプA1は、軸方向一方側x1が開放する円筒部31、および軸方向他方側x2を塞ぐ底部32を有するキャン3と、吸込口54、吐出口55、および渦巻室56を有し、キャン3の軸方向一方側x1端を覆うケーシング5と、軸方向xに沿って延び、ケーシング5とキャン3の底部32とにより回転不能に支持されたシャフト6と、マグネット41、および渦巻室56に配置されたインペラ42を有し、シャフト6に回転可能に支持された回転子4と、を備え、回転子4と円筒部31との間には第1隙間G1が形成されており、シャフト6は、軸方向一方側x1の第1開口端611から軸方向他方側x2の第2開口端612まで軸方向xに貫通する中空孔61を有し、第1開口端611は吸込口54に通じており、第2開口端612第1隙間G1に通じている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の固定子と、
前記固定子の内側に配置され、軸方向の一方側が開放する円筒部、および前記軸方向の他方側を塞ぐ底部を有するキャンと、
吸込口、吐出口、および渦巻室を有し、且つ前記キャンの前記軸方向の一方側端を覆うケーシングと、
前記軸方向に沿って延びており、両端部が前記ケーシングと前記キャンの前記底部とにより支持され、且つ回転不能なシャフトと、
前記キャンの内側に配置されたマグネット、および前記渦巻室に配置されたインペラを有し、前記シャフトに回転可能に支持された回転子と、を備え、
前記回転子と前記キャンの前記円筒部との間には、第1隙間が形成されており、
前記シャフトは、前記軸方向の一方側の第1開口端から前記軸方向の他方側の第2開口端まで前記軸方向に貫通する中空孔を有し、
前記吸込口は、前記シャフトに対して前記軸方向の一方側に位置しており、
前記第1開口端は、前記吸込口に通じており、
前記第2開口端は、前記第1隙間に通じている、ポンプ。
【請求項2】
前記底部は、前記軸方向の一方側を向く座面と、前記座面から前記軸方向の他方側に凹む凹溝と、を有し、
前記シャフトは、前記軸方向の他方側端に位置し、且つ前記座面に当接し得る第1端面を有し、
前記第2開口端は、前記凹溝を介して前記第1隙間に通じている、請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記凹溝は、前記軸方向に沿って見て放射状に配置される、請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記回転子は、前記底部に接し、且つ前記第2開口端および前記第1隙間に通じる第1空間と、前記吸込口と、を区画している、請求項1ないし3のいずれかに記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の吸込みおよび吐出を行うポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
水中に微細な気泡を大量に発生させると、この気泡が汚れ等、周囲のものを吸着しながらゆっくりと浮上するという、洗浄作用を発揮することが知られている。また、温湯中にこのような微細な気泡を発生させると、温浴作用を発揮することも知られている。このような作用を効果的に発揮させるためには、発生させる気泡の大きさを、10~50μm径、あるいはそれ以下の微細なものとする必要がある。このような微細な気泡を、特にファインバブルと呼ぶことがある。上記のようなファインバブルを発生させる装置を構成するためには、液体を比較的高圧で吐出することができるポンプが必要である。
【0003】
従来のポンプの一例は、たとえば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載されたポンプは、同文献の
図4、
図6に示されるように、モータケース(1)、ステータ(2)、キャン(3)、回転子(4)、ケーシング(5)、およびシャフト(6)を備えている。ステータ(2)は、円筒形状のコイルであり、モータケース(1)内に設けられている。回転子(4)は、筒状ホルダ(40)、円筒形状のマグネット(41)、およびインペラ(42)を有する。マグネット(41)は、ステータ(2)の内側においてこれと同心円状に配置されている。インペラ(42)は、ケーシング(5)の渦巻室(56)に収容されている。シャフト(6)は、軸方向に沿って延びており、両端部がケーシング(5)およびキャン(3)により回転不能に支持されている。シャフト(6)と筒状ホルダ(40)との間には軸受として機能するカラー(43)が介在しており、回転子(4)は、カラー(43)を介してシャフト(6)により回転可能に支持されている。ステータ(2)に電力供給されると、回転子(4)に回転駆動力が発生する。これによりインペラ(42)が回転することとなり、吸込口(54)から渦巻室(56)を介して吐出口(55)へと水などの流体を流すことができる。上記従来のポンプにおいて、キャン(3)の円筒部と回転子(4)との間には隙間が設けられていており、ポンプの運転時には、渦巻室(56)を通過する流体の一部は、キャン(3)および回転子(4)の間の上記隙間を通じてキャン(3)の底部側(特許文献1の
図4における左側)にも流れ込む。これにより、回転子(4)がキャン(3)の内側において水没した状態になり、シャフト(6)の周囲の摺動部分が水に接しているので摩耗が防止される。
【0004】
上記特許文献1のポンプは、たとえばファインバブル発生装置に組み込んで使用される。ファインバブル発生装置に利用されるポンプにおいては、空気などの気体を多く含む気液混相流体が吸込口(54)から渦巻室(56)に導入される。渦巻室(56)では加圧状態となった加圧液体中に気体が溶解し、この加圧流体が、吐出口(55)を通じて外部に放出される。しかしながら、上述のようにファインバブル発生装置に利用されるポンプにおいては、渦巻室(56)に導入される気液混相流体は、気体を比較的多く含む。このため、渦巻室(56)において加圧液体中に溶解しない余剰分の気体がキャン(3)と回転子(4)の間の上記隙間を通じてキャン(3)の底部側に流入し、滞留する場合がある。この場合、シャフト(6)の周囲の摺動部分が乾いた状態になり、いわゆるドライ運転となって過度な摩耗や温度上昇を招き、ポンプの正常な運転を阻害するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、キャンの底部側に気体が滞留するのを抑制することが可能なポンプを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明によって提供されるポンプは、筒状の固定子と、前記固定子の内側に配置され、軸方向の一方側が開放する円筒部、および前記軸方向の他方側を塞ぐ底部を有するキャンと、吸込口、吐出口、および渦巻室を有し、且つ前記キャンの前記軸方向の一方側端を覆うケーシングと、前記軸方向に沿って延びており、両端部が前記ケーシングと前記キャンの前記底部とにより支持され、且つ回転不能なシャフトと、前記キャンの内側に配置されたマグネット、および前記渦巻室に配置されたインペラを有し、前記シャフトに回転可能に支持された回転子と、を備え、前記回転子と前記キャンの前記円筒部との間には、第1隙間が形成されており、前記シャフトは、前記軸方向の一方側の第1開口端から前記軸方向の他方側の第2開口端まで前記軸方向に貫通する中空孔を有し、前記吸込口は、前記シャフトに対して前記軸方向の一方側に位置しており、前記第1開口端は、前記吸込口に通じており、前記第2開口端は、前記第1隙間に通じている。
【0009】
好ましい実施の形態においては、前記底部は、前記軸方向の一方側を向く座面と、前記座面から前記軸方向の他方側に凹む凹溝と、を有し、前記シャフトは、前記軸方向の他方側端に位置し、且つ前記座面に当接し得る第1端面を有し、前記第2開口端は、前記凹溝を介して前記第1隙間に通じている。
【0010】
好ましい実施の形態においては、前記凹溝は、前記軸方向に沿って見て放射状に配置される。
【0011】
好ましい実施の形態においては、前記回転子は、前記底部に接し、且つ前記第2開口端および前記第1隙間に通じる第1空間と、前記吸込口と、を区画している。
【0012】
好ましい実施の形態においては、ファインバブル発生装置に組み込んで使用される、いわゆるファインバブル発生装置用のポンプである。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るポンプの一例を示す平面図である。
【
図5】
図1に示すポンプのカバープレートを取り外した状態を示す。
【
図9】
図8のIX-IX線に沿う部分拡大断面図である。
【
図10】
図8のX-X線に沿う部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。以下の説明における「第1」、「第2」等の用語は、単にラベルとして用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0016】
図1~
図10は、本発明に係るポンプの一例を示している。本実施形態のポンプA1は、モータケース1、固定子2、キャン3、回転子4、ケーシング5、シャフト6および複数のボルト8を備え、たとえばファインバブル発生装置に組み込んで使用されるものである。
【0017】
なお、ポンプA1の説明において、
図3、
図4における図中左右方向は、本発明の「軸方向」の一例であり、「軸方向x」と呼ぶ。また、
図3、
図4において図中右側は本発明の「軸方向の一方側」の一例であり、「軸方向一方側x1」と呼び、図中左側は本発明の「軸方向の他方側」の一例であり、「軸方向他方側x2」と呼ぶ。
【0018】
モータケース1は、軸方向一方側x1が開口する有底円筒状に形成されており、たとえば、アルミニウム等の金属製である。モータケース1は、固定子2、キャン3、および、回転子4の一部(後述する筒状ホルダ40およびマグネット41)を収容しており、複数のボルト8を介してケーシング5と連結されている。また、モータケース1の軸方向一方側x1の端部には、キャン3を固定するための段差が形成されている。本実施形態において、モータケース1の上部には、コネクタハウジング10が設けられている。
【0019】
図5に示すように、コネクタハウジング10は、複数の側壁11に囲まれた内部空間を有しており、当該内部空間にコード71の一部とコネクタ72とが収容されている。コネクタ72には、ポンプ駆動用の複数のケーブル73が接続されており、これらケーブル73はコード71に内挿されている。複数のケーブル73は、たとえば給電ケーブルを含む。上記給電ケーブルは、ポンプA1を駆動するための電力供給に用いられるケーブルである。また、上記複数のケーブル73は、制御ケーブルを含んでいてもよい。制御ケーブルは、ポンプA1の回転数などを制御する制御盤(図示略)やセンサ類(図示略)からの制御信号の入出力に用いられるケーブルである。
【0020】
コネクタハウジング10の上方端には、外部に開放する作業用開口10aが形成されている。
図4に示すように、作業用開口10aは、カバープレート12により塞がれている。カバープレート12は、シートパッキン13を介して取り付けられている。なお、
図4においては、コード71、コネクタ72およびケーブル73を省略している。
【0021】
図5に示すように、本実施形態において、コード71は、防水パッキン75を介して側壁11に支持されている。より具体的には、側壁11には、厚さ方向に貫通する開口部111が形成されており、この開口部111に、防水パッキン75がコード71を保持した状態にて嵌め込まれている。これにより、コネクタハウジング10の内部は、その外部に対して防湿保護されている。
【0022】
図4に示すように、固定子2は、モータケース1の内壁と、キャン3との間に設置された電磁コイルにより構成されており、全体として円筒形状である。固定子2には、上記ケーブル73を介して駆動電力が供給される。
【0023】
回転子4は、筒状ホルダ40、マグネット41、およびインペラ42を有する。筒状ホルダ40は、回転子4の主要部分を構成している。筒状ホルダ40の内側には、たとえばポリフェニレンサルファイド(以下PPS)樹脂製の2つのカラー43が設けられている。筒状ホルダ40とカラー43とは、たとえば一方の凸部が他方の凹部に係合する結合構造とされており、互いに一体的に回転する。カラー43は、シャフト6によって回転可能に支持されている。シャフト6は、軸方向一方側x1端がケーシング5(後述するシャフト支持筒52)に支持されており、軸方向他方側x2端がキャン3に支持されている。
【0024】
マグネット41は、略円筒形状であり、筒状ホルダ40の空隙部40aに嵌合している。マグネット41は、たとえばプラスチックマグネットにより構成されている。
【0025】
図示した例では、筒状ホルダ40には、複数の貫通孔40bが形成されている。これら貫通孔40bは、筒状ホルダ40の周方向に一定間隔を隔てて設けられており、筒状ホルダ40を軸方向xに貫通している。複数の貫通孔40bの各々は、筒状ホルダ40(回転子4)の軸方向一方側x1の空間と軸方向他方側x2の空間とに通じている。本実施形態では、複数の貫通孔40bの各々の適所には、充填物401が充填されている。複数の貫通孔40bの各々は、充填物401により部分的に閉塞されている。充填物401の構成材料は特に限定されず、たとえば合成樹脂製のパテ材料により構成される。
【0026】
インペラ42は、筒状ホルダ40の軸方向一方側x1端に設けられており、後述するケーシング5の渦巻室56に収容されている。
図4、
図6に示すように、インペラ42は、中央において軸方向xに貫通する孔421、および複数の羽根422を有する。複数の羽根422の隣接相互間には開口423が形成されている。開口423は、軸方向x視において、孔421を中心とする螺旋を描くような形状となっている。インペラ42が回転させられると、その回転遠心力により、孔421から流体が吸込まれ、当該流体は羽根422どうしの間の開口423から外側へと吐出される。
【0027】
キャン3は、ケーシング5内に流入した温水などがモータケース1内に浸入することを防ぐためのものである。キャン3は、有底の円筒形状であり、円筒部31、底部32および外向フランジ33を有する。円筒部31は、固定子2の内側に配置されている。底部32は、円筒部31の軸方向他方側x2端につながり、当該円筒部31の軸方向他方側x2を塞いでいる。外向フランジ33は、円筒部31の軸方向一方側x1につながっている。キャン3の構成材料は特に限定されず、たとえばPPS樹脂により構成される。キャン3は、その一部(主に円筒部31および底部32)が固定子2の内部空間に収容されている。キャン3の内部には、回転子4の筒状ホルダ40およびマグネット41が収容されている。
図4に示すように、筒状ホルダ40(回転子4)の外周面と円筒部31の内周面との間には、所定の第1隙間G1が形成されている。
【0028】
図4、
図8~
図10に示すように、本実施形態において、底部32は、底壁321および筒状壁322を含む。底壁321は、円筒部31の軸方向他方側x2端を塞いでおり、概略円板状である。筒状壁322は、底壁321につながり、軸方向一方側x1に延びている。
図8、
図10に示すように、シャフト6の軸方向他方側x2の端部は、筒状壁322に嵌入しており、当該筒状壁322に支持される。なお、
図10に表れているように、シャフト6の軸方向他方側x2の端部には、切欠き部63が形成されている。
【0029】
図8~
図10に示すように、底壁321は、座面321aおよび凹溝321bを有する。座面321aは、筒状壁322の内側において軸方向一方側x1を向く面である。凹溝321bは、座面321aから軸方向他方側x2に凹んでいる。
図9、
図10に表れているように、図示した例では、凹溝321bは、軸方向xに沿って見て放射状に配置される。
【0030】
図8、
図10に示すように、筒状壁322は、凹部322aおよび縦溝322bを有する。凹部322aは、筒状壁322の軸方向一方側x1端から軸方向他方側x2に凹んだ部位であり、筒状壁322の内周面から外周面まで径方向に延びている。図示した例では、複数の凹部322aが筒状壁322の周方向に一定間隔で形成されている。縦溝322bは、筒状壁322の内周面から径方向外方に凹んだ部位であり、筒状壁322の軸方向一方側x1端から軸方向他方側x2端まで延びている。図示した例では、複数の縦溝322bが筒状壁322の周方向に一定間隔で形成されている。複数の縦溝322bの各々は、複数の凹部322aのいずれかと、凹溝321bとにつながっている。
【0031】
ケーシング5は、いわゆるポンプとして機能する部分を構成するものであり、
図4に示すように、円板状壁51、シャフト支持筒52、円筒状周壁53、吸込口54、吐出口55、および渦巻室56を有している。ケーシング5の外周接続部57は、キャン3の軸方向一方側x1(外向フランジ33)を覆っている。
【0032】
吸込口54は、たとえば浴槽内の温水をポンプA1内へと吸込むための開口であり、円板状壁51の中央を貫通している。
図2および
図4に示すように、吸込口54は、略円筒形状であり、回転子4の回転軸線Oxが延びる方向に向いている。
図4に示すように、吸込口54は、シャフト6に対して軸方向一方側x1に位置する。
【0033】
シャフト支持筒52は、シャフト6の軸方向一方側x1の端部を支持するためのものであり、連結片521を介して円板状壁51に連結されている。
図4、
図7に示すように、シャフト支持筒52の内面52aは、円筒の一部が切欠かれた形状となっており、シャフト6の端部は、内面52aに対応する切欠き部62が設けられている。そして、シャフト支持筒52の当該内面52aに、シャフト6の軸方向一方側x1の端部(切欠き部62)が嵌合している。これにより、シャフト6は、ケーシング5に対して回転不能に支持されている。シャフト支持筒52には、貫通孔52bが形成されている。
図4に示すように、貫通孔52bは、軸方向xに沿って見て、シャフト6における後述の中空孔61と重なっている。
【0034】
渦巻室56は、円板状壁51および円筒状周壁53によって規定された内部空間であり、回転子4のインペラ42を収容している。円筒状周壁53は略円筒状の内周面53aを有し、当該内周面53aとインペラ42の外周縁42aとの隙間が略一定寸法とされている。
【0035】
吐出口55は、たとえば浴槽に向けて温水を吐出するための開口であり、
図1および
図6に示すように、略円筒形状である。吐出口55は、その基端部551が円筒状周壁53を貫通しており、基端部551から先端部552にかけて、円筒状周壁53の概略接線方向に沿って延びている。ケーシング5の構成材料は特に限定されず、たとえばPPS樹脂により構成される。
【0036】
上記構成において、インペラ42が回転すると、渦巻室56において吐出圧が発生し、上記温水が吸込口54からインペラ42の孔421および開口423、ならびに渦巻室56を通って吐出口55へと流される。
【0037】
図4、
図6、
図8、
図10に示すように、シャフト6は、軸方向xに沿って延びており、全体として円筒形状とされている。シャフト6は、中空孔61、切欠き部62および切欠き部63を有する。中空孔61は、シャフト6において、軸方向一方側x1の第1開口端611から軸方向他方側x2の第1開口端611まで軸方向xに貫通している。切欠き部62は、シャフト6の軸方向一方側x1の端部において外周の一部が切除された形状である。切欠き部63は、シャフト6の軸方向他方側x2の端部において外周の一部が切除された形状である。上述のように、シャフト6の軸方向一方側x1の端部は、シャフト支持筒52に支持されており、シャフト6の軸方向他方側x2は、筒状壁322(底部32)に支持されている。また、シャフト支持筒52の内面52aにシャフト6の軸方向一方側x1の端部(切欠き部62)が嵌合することで、シャフト6は、回転不能な状態で支持されている。シャフト6の構成材料は特に限定されず、たとえばPPS樹脂や焼結カーボンにより構成される。
【0038】
図4に示すように、シャフト6は、両端部がケーシング5のシャフト支持筒52とキャン3の底部32とにより挟まれた状態で支持される。中空孔61の第1開口端611は、シャフト支持筒52の貫通孔52bを介して吸込口54に通じる。シャフト6の軸方向他方側x2端の第1端面64は、底壁321(底部32)の座面321aに当接し得る。ここで、「第1端面64が座面321aに当接し得る」とは、第1端面64が座面321aに当接するように設計しても製造上の誤差等により第1端面64と座面321aの間に僅かな隙間が生じる場合もあるが、このような場合を含むことを意味する。
【0039】
図4、
図8~
図10に示すように、底壁321(底部32)の凹溝321bは、軸方向xに沿って見て、中空孔61と重なる。そして、中空孔61の第2開口端612は、凹溝321b、縦溝322bおよび凹部322aを介して、底部32に接する第1空間S1に通じる。
図4に示すように、第1空間S1は、第2開口端612、および筒状ホルダ40(回転子4)と円筒部31との間の第1隙間G1の双方に通じる。
【0040】
次に、本実施形態のポンプA1の作用について説明する。
【0041】
ポンプA1は、たとえば浴室内において浴槽に隣接して設置され、ファインバブル発生装置に組み込んで利用される。ポンプA1の運転時においては、インペラ42(回転子4)が回転させられると、たとえば浴槽内の温水を主とする気液混相流体が吸込口54から渦巻室56に導入され、高圧状態となった加圧液体中に気体が溶解する。この加圧流体が、吐出口55から専用のノズルを通して浴槽内の温水中に放出される。温水中に放出された加圧流体は急激に減圧され、加圧流体に溶け込んでいた気体がファインバブルとして温水中に放出される。ファインバブル発生装置を構成するポンプA1においては、吐出口55から高圧状態で加圧流体を吐き出すために、回転子4(インペラ42)は高速回転させられる。回転子4の回転数は、たとえば6,000rpm程度とされる。
【0042】
ファインバブル発生装置に利用されるポンプA1においては、渦巻室56に導入される気液混相流体は、気体を比較的多く含む。このため、渦巻室56において加圧液体中に溶解しない余剰分の気体が筒状ホルダ40(回転子4)とキャン3の円筒部31との間の第1隙間G1を通じてキャン3の底部32側に流入する(
図4における点線矢印参照)。
【0043】
本実施形態のポンプA1において、シャフト6は軸方向xに沿って延びており、両端部がケーシング5と底部32(キャン3)とにより支持される。シャフト6は、回転不能な状態で支持されており、軸方向一方側x1の第1開口端611から軸方向他方側x2の第1開口端611まで軸方向xに貫通する中空孔61を有する。第1開口端611は、シャフト6のx1に位置する吸込口54に通じており、第2開口端612は、回転子4と円筒部31の間の第1隙間G1に通じている。このような構成によれば、ポンプA1の運転時には、シャフト6の中空孔61においては軸方向一方側x1に位置する吸込口54に向かう吸引力が生じる。そして、上記第1隙間G1を通じて底部32側に流入した気体は、シャフト6の第2開口端612から中空孔61を軸方向一方側x1に流れ、第1開口端611を経て吸込口54に流れ込む(
図4における点線矢印参照)。これにより、キャン3の底部32側に気体が滞留することは抑制され、ポンプA1がドライ運転になるなどの不都合を防止することができる。
【0044】
キャン3の底壁321(底部32)は、軸方向一方側x1を向く座面321aと、座面321aから軸方向他方側x2に凹む凹溝321bを有する。シャフト6は、軸方向他方側x2端に位置する第1端面64を有し、当該第1端面64は座面321aに当接し得る。シャフト6の第2開口端612は、凹溝321bを介して第1隙間G1に通じている。
このような構成によれば、回転不能に支持されたシャフト6の第1端面64が底部32側に密着する場合でも、上記第1隙間G1とシャフト6の中空孔61の双方に通じる流路を確保することができる。
【0045】
凹溝321bは、軸方向xに沿って見て放射状とされている。このような構成によれば、上記第1隙間G1を通じて底部32側に流入した気体を効率よくシャフト6の中空孔61に導入することができる。このことは、キャン3の底部32側に気体が滞留するのを抑制する上で、より好ましい。
【0046】
本実施形態において、回転子4の筒状ホルダ40に形成された複数の貫通孔40bには充填物401が充填されており、複数の貫通孔40bの各々は、充填物401により部分的に閉塞されている。これにより、回転子4は、底部32(底壁321ないし筒状壁322)に接し、上記第1隙間G1およびシャフト6の第2開口端612に通じる第1空間S1と、シャフト6の軸方向一方側x1に位置する吸込口54と、を区画している。このような構成によれば、
図4において点線矢印で示すように、上記第1隙間G1から第1空間S1および中空孔61を経て吸込口54に向かう単一の流路が形成される。これにより、シャフト6の中空孔61においては吸込口54に向かう吸引力が適切に生じる。したがって、キャン3の底部32側に気体が滞留するのをより確実に抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係るポンプの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0048】
上記実施形態においては、回転子4(筒状ホルダ40)は既存設計の場合を例示しており、筒状ホルダ40に形成された複数の貫通孔40bに充填物401を充填して閉塞する構成について説明したが、本発明はこれに限定されない。回転子4(筒状ホルダ40)において、上記実施形態で説明した貫通孔40bを予め設けない構成としてもよい。
【0049】
上記実施形態においては、ポンプA1がファインバブル発生装置に適用される場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係るポンプの用途は特に限定されず、幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
A1 :ポンプ
1 :モータケース
10 :コネクタハウジング
10a :作業用開口
11 :側壁
111 :開口部
12 :カバープレート
13 :シートパッキン
2 :固定子
3 :キャン
31 :円筒部
32 :底部
321 :底壁
321a:座面
321b:凹溝
322 :筒状壁
322a:凹部
322b:縦溝
33 :外向フランジ
4 :回転子
40 :筒状ホルダ
40a :空隙部
40b :貫通孔
401 :充填物
41 :マグネット
42 :インペラ
42a :外周縁
421 :孔
422 :羽根
423 :開口
43 :カラー
5 :ケーシング
51 :円板状壁
52 :シャフト支持筒
52a :内面
52b :貫通孔
521 :連結片
53 :円筒状周壁
53a :内周面
54 :吸込口
55 :吐出口
551 :基端部
552 :先端部
56 :渦巻室
57 :外周接続部
6 :シャフト
61 :中空孔
611 :第1開口端
612 :第2開口端
62,63:切欠き部
64 :第1端面
71 :コード
72 :コネクタ
73 :ケーブル
75 :防水パッキン
8 :ボルト
G1 :第1隙間
S1 :第1空間
Ox :回転軸線
x :軸方向
x1 :軸方向一方側
x2 :軸方向他方側