(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081328
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】情報処理装置、予測方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
C10L 1/04 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
C10L1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194862
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】井口 靖敏
(72)【発明者】
【氏名】土師 勝彦
(57)【要約】
【課題】複数の基材油を配合して製造される灯油のナフテノベンゼン量を予測する。
【解決手段】情報処理装置10は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、複数の灯油に含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータ24を記憶する記憶部14と、特定の灯油の複数のパラメータの数値を取得する取得部12と、モデルデータ24と、特定の灯油の複数のパラメータの数値とを用いて、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測する演算部16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、前記複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを記憶する記憶部と、
特定の灯油の前記複数のパラメータの数値を取得する取得部と、
前記モデルデータと、前記特定の灯油の前記複数のパラメータの数値とを用いて、前記特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測する演算部と、を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記蒸留性状は、50%留出温度、70%留出温度および90%留出温度の少なくとも一つを備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記蒸留性状は、210℃以上留出割合、235℃以上留出割合および240℃以上留出割合の少なくとも一つを備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記芳香族分は、全芳香族分と、多環芳香族分とを備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記複数のパラメータは、動粘度をさらに備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記モデルデータは、前記複数の灯油の前記複数のパラメータの数値を入力とし、前記複数の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を出力とする教師データを用いた機械学習によって生成される、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記記憶部は、目標灯油の製造に用いる複数の基材油のそれぞれの前記複数のパラメータの数値を備える基材油データをさらに記憶し、
前記演算部は、前記モデルデータおよび前記基材油データを用いて、前記目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となるように、前記目標灯油を製造するための前記複数の基材油の目標配合比率を決定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記演算部は、前記目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量が8.9容量%以下となるように、前記目標配合比率を決定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記演算部は、前記目標灯油の10%留出温度と50%留出温度の差が10℃より大きくなるように、前記目標配合比率を決定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記演算部は、前記目標灯油のa%留出温度と(a+25)%留出温度の差が7℃以上となるように、前記目標配合比率を決定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記演算部は、前記目標灯油のa%留出温度と(a+20)%留出温度の差が6℃以上となるように、前記目標配合比率を決定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記複数のパラメータは、動粘度をさらに備え、
前記演算部は、前記目標灯油の動粘度ν(30℃、mm2/s)および密度ρ(15℃、g/cm3)について、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足されるように、前記目標配合比率を決定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記複数のパラメータは、硫黄分をさらに備え、
前記演算部は、前記目標灯油の硫黄分が所定の基準値以下となるように、前記目標配合比率を決定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記複数のパラメータは、発熱量をさらに備え、
前記演算部は、前記目標灯油の発熱量が所定条件を充足するように、前記目標配合比率を決定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記基材油データは、前記複数の基材油のそれぞれのコストを含み、
前記演算部は、前記目標灯油のコストが所定条件を充足するように、前記目標配合比率を決定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記基材油データは、前記複数の基材油のそれぞれの在庫量を含み、
前記演算部は、前記目標灯油を所定の製造量で製造する場合に使用される前記複数の基材油のそれぞれの使用量が前記在庫量以下となるように、前記目標配合比率を決定する、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記複数の基材油は、第1基材油と、第2基材油とを備え、
前記第1基材油は、直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、および、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を蒸留分離して除去した残油を備える第1群から選択され、
前記第2基材油は、ノルパララフィネート、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、FT合成油、FT合成油由来を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、FT合成油を異性化した灯油留分、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記複数の基材油は、第1基材油と、第2基材油とを備え、
前記第1基材油は、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第1群から選択され、
前記第2基材油は、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を抽出した後の残油、ノルパララフィネート、FT合成油、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、およびFT合成油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項19】
前記複数の基材油は、非石油由来の基材油を備える、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項20】
複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、前記複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを取得することと、
特定の灯油の前記複数のパラメータの数値を取得することと、
前記モデルデータと、前記特定の灯油の前記複数のパラメータの数値とを用いて、前記特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測することと、を備える予測方法。
【請求項21】
複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、前記複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを取得する機能と、
特定の灯油の前記複数のパラメータの数値を取得する機能と、
前記モデルデータと、前記特定の灯油の前記複数のパラメータの数値とを用いて、前記特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測する機能と、をコンピュータに実現させるプログラム。
【請求項22】
複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、前記複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを記憶し、目標灯油の製造に用いる複数の基材油のそれぞれの前記複数のパラメータの数値を備える基材油データを記憶する記憶部と、
前記モデルデータおよび前記基材油データを用いて、前記目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となるように、前記目標灯油を製造するための前記複数の基材油の目標配合比率を決定する演算部と、を備える情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、予測方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油製品の需要が軽質化しており、重質油や残渣油を活用して灯油などの軽質油を増産することが求められている。重質油や残渣油を分解して得られる分解基材灯油は、ナフテノベンゼン類の含有割合が多い傾向にある。灯油に含まれるナフテノベンゼン量が増加すると、灯油ストーブなどの暖房機器の安定的な長期運転の支障になることが知られている。分解基材灯油を活用する場合には、灯油に含まれるナフテノベンゼン量を適切に管理する必要があるとされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナフテノベンゼン量の分析は煩雑で時間がかかるため、灯油の製造現場において灯油に含まれるナフテノベンゼン量を逐次分析することは困難である。
【0005】
本開示のある態様の例示的な目的の一つは、灯油に含まれるナフテノベンゼン量を簡便に予測する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある態様の情報処理装置は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを記憶する記憶部と、特定の灯油の複数のパラメータの数値を取得する取得部と、モデルデータと、特定の灯油の複数のパラメータの数値とを用いて、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測する演算部と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様は、予測方法である。この方法は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを取得することと、特定の灯油の複数のパラメータの数値を取得することと、モデルデータと、特定の灯油の複数のパラメータの数値とを用いて、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測することと、を備える。
【0008】
本開示のさらに別の態様は、プログラムである。このプログラムは、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを取得する機能と、特定の灯油の複数のパラメータの数値を取得する機能と、モデルデータと、特定の灯油の複数のパラメータの数値とを用いて、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測する機能と、を備える。
【0009】
本開示のさらに別の態様は、情報処理装置である。この装置は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを記憶し、目標灯油の製造に用いる複数の基材油のそれぞれの複数のパラメータの数値を備える基材油データを記憶する記憶部と、モデルデータおよび基材油データを用いて、目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となるように、目標灯油を製造するための複数の基材油の目標配合比率を決定する演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、灯油に含まれるナフテノベンゼン量を簡便に予測できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る情報処理装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】基材油データのデータ構造の一例を示す図である。
【
図3】燃料油データのデータ構造の一例を示す図である。
【
図4】ナフテノベンゼン量の予測結果の一例を示すグラフである。
【
図5】灯油の動粘度および密度と燃焼性の関係性の一例を示すグラフである。
【
図6】実施の形態に係るナフテノベンゼン量の予測方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態に係る配合比率の決定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の概要を説明する。本開示は、灯油の性状を示す複数のパラメータの数値から灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測する技術に関する。ナフテノベンゼン量の計測には、電場イオン化質量分析法(FIMS)、ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析法(GC-TOFMS)、2次元ガスクロマトグラフ質量分析法(2DGC)などの質量分析法を用いる必要があり、煩雑で時間がかかる。そのため、灯油の製造現場にて灯油のナフテノベンゼン量を逐次測定することは現実的ではない。本開示では、灯油の製造現場で取得可能な複数のパラメータを入力とする相関モデルを用いてナフテノベンゼン量を予測する。ナフテノベンゼン量の予測に用いる複数のパラメータとして、密度、動粘度、蒸留性状、芳香族分などを用いることができる。
【0013】
本開示は、複数の基材油を配合して目標灯油を製造する際の目標配合比率を決定する技術に関する。本開示によれば、基材油のナフテノベンゼン量が不明であったとしても、基材油の複数のパラメータから相関モデルを用いてナフテノベンゼン量を予測することができる。その結果、相関モデルを用いることにより、配合した目標灯油のナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となるように複数の基材油の配合比率を決定できる。これにより、長期燃焼性に優れた目標灯油を製造するための配合比率を簡便に決定することができる。
【0014】
以下、本開示の技術を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限り、いかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。
【0015】
本開示における装置または方法の主体は、コンピュータを備える。このコンピュータがコンピュータプログラムを実行することによって、本開示における装置または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、コンピュータプログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、コンピュータプログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC、LSI等)を含む一つまたは複数の電子回路で構成される。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的な記録媒体に記録される。コンピュータプログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0016】
図1は、実施の形態に係る情報処理装置10の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置10は、取得部12と、記憶部14と、演算部16と、出力部18とを備える。情報処理装置10は、ネットワーク40を介してユーザ端末50およびローカル装置52と接続する。
【0017】
本開示のブロック図で示される各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサやROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現される。ここでは、ハードウェアおよびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックを描いている。これらの機能ブロックは、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせによって、いろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
図1に示す複数の機能ブロックのうち少なくとも一部の機能ブロックの機能を実装したコンピュータプログラムが、1台または複数台のコンピュータのストレージにインストールされてもよい。1台または複数台のコンピュータのCPUは、自機にインストールされたコンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、
図1に示す複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0019】
また、
図1に示す複数の機能ブロックの機能は、1台のコンピュータにより実行されてもよく、複数台のコンピュータにより分散して実行されてもよい。
図1に示す複数の機能ブロックの機能が複数台のコンピュータにより分散して実行される場合、それら複数台のコンピュータは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットを含む通信網を介してデータを送受信してもよい。
【0020】
情報処理装置10は、例えば、サーバである。情報処理装置10は、ワークステーションまたはパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータであってもよい。情報処理装置10は、スマートフォンまたはタブレット型コンピュータ等の携帯端末であってもよい。情報処理装置10は、ネットワーク40を介してユーザ端末50にコンピュータ資源を提供するよう構成されるクラウド型のサーバであってもよい。
【0021】
ユーザ端末50は、例えば、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータである。ユーザ端末50は、スマートフォンまたはタブレット型コンピュータ等の携帯端末であってもよい。ユーザ端末50は、例えば、基材油や燃料油を取り扱う工場、研究所等で使用される。
【0022】
ローカル装置52は、例えば、サーバである。ローカル装置52は、ワークステーションまたはパーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータであってもよい。ローカル装置52は、例えば、基材油や燃料油を取り扱う工場、研究所等に設置される。ローカル装置52は、工場や研究所にて使用するデータを一元管理するデータサーバとして機能する。ローカル装置52は、ネットワーク40を介してユーザ端末50にコンピュータ資源を提供するよう構成されるクラウド型のサーバであってもよい。この場合、ローカル装置52は、ユーザ端末50が設置される工場や研究所から離れた拠点に設置されてもよい。
【0023】
ネットワーク40は、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、無線基地局によって構築される各種移動通信システム含む通信網で構成される。移動通信システムとしては、例えば、3G、4Gまたは5Gなどの移動通信システム、LTE(Long Term Evolution)および所定のアクセスポイントによってよってインターネットに接続可能な無線ネットワーク(例えば、Wi-Fi(登録商標))が挙げられる。
【0024】
取得部12は、ネットワーク40を介してユーザ端末50やローカル装置52から各種データを取得する。取得部12は、情報処理装置10に接続されるキーボードやマウスといった任意の入力装置を通じてユーザが入力するデータを取得してもよい。
【0025】
記憶部14は、演算部16が実行する処理に必要なデータを記憶する。記憶部14は、取得部12が取得するデータを記録して管理する。記憶部14は、基材油データ20と、灯油データ22と、モデルデータ24とを記憶する。記憶部14は、例えば、基材油および灯油に関するデータを蓄積するデータベースであり、工場や研究所にて製造された基材油および灯油に関する過去の履歴データを記憶する。
【0026】
図2は、基材油データ20のデータ構造の一例を示す図である。基材油データ20は、灯油の製造に用いる原料となる基材油に関するデータである。基材油データ20は、基材油を識別するためのIDおよび名称と、基材油の性状を示す複数のパラメータとを備える。基材油データ20は、基材油の製造現場で取得可能な複数のパラメータを備える。
【0027】
基材油データ20は、密度(15℃、g/cm3)と、動粘度(30℃、mm2/s)とを備える。15℃における密度は、JIS K2249「原油及び石油製品-密度の求め方」に準拠して測定できる。30℃における動粘度は、JIS K2283「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に準拠して測定できる。
【0028】
基材油データ20は、硫黄分(ppm)と、発熱量(kJ/kg)とを備える。硫黄分は、JIS K2541「原油及び石油製品-硫黄分試験方法」に準拠して測定できる。発熱量は、総発熱量と真発熱量の少なくとも一方を備えることができる。発熱量は、JIS K2279「原油及び石油製品-発熱量試験方法及び計算による推定方法」に準拠して得ることができる。
【0029】
基材油データ20は、蒸留性状として留出温度(℃)を備えることができ、例えば、初留点温度(IPB)、a容量%留出温度(Ta)および終点温度(EP)を備えることができる。基材油データ20は、a容量%留出温度として、例えば、5容量%留出温度(T5)、10容量%留出温度(T10)、20容量%留出温度(T20)、30容量%留出温度(T30)、40容量%留出温度(T40)、50容量%留出温度(T50)%、60容量%留出温度(T60)、70容量%留出温度(T70)、80容量%留出温度(T80)、90容量%留出温度(T90)、95容量%留出温度(T95)および97容量%留出温度(T97)の少なくともいずれかを備えることができる。留出温度は、JIS K2254「石油製品-蒸留性状の求め方」に準拠して測定することができ、例えば、簡易蒸留法を用いて測定できる。
【0030】
基材油データ20は、蒸留性状としてb℃以上留出割合(容量%)を備えることができる。b℃以上留出割合(%)とは、b℃以上の温度で留出する容積割合のことをいう。基材油データ20は、b℃以上留出割合(Zb)として、例えば、210℃以上留出割合(Z210)、235℃以上留出割合(Z235)および240℃以上留出割合(Z240)の少なくともいずれかを備えることができる。b℃以上留出割合(Zb)は、例えば、留出温度の測定値から蒸留曲線を求め、蒸留曲線においてb℃以上となる容積割合を計算することにより得ることができる。b℃以上留出割合(Zb)は、100%からb℃以下留出割合(Eb)を減算することによって得られてもよい(つまり、Zb=100-Eb)。基材油データ20は、蒸留性状としてb℃以下留出割合(Eb)を備えてもよく、例えば、210℃以下留出割合(E210)、235℃以下留出割合(E235)および240℃以下留出割合(E240)の少なくともいずれかを備えてもよい。
【0031】
基材油データ20は、成分比率(容量%)として、飽和分、オレフィン分、全芳香族分、1環芳香族分、2環芳香族分、3環以上(3環+)芳香族分を備えることができる。これらの成分比率は、例えば、石油学会法JPI-5S-49-97「石油製品-炭化水素タイプ試験方法-高速液体クロマトグラフ」に準拠して測定できる。
【0032】
基材油データ20に記録される基材油の種類は、特に限られない。基材油は、原油の常圧蒸留装置や減圧蒸留装置から得られる灯油留分であってもよいし、水素化脱硫、接触分解、水素化分解および熱分解の少なくとも一つを用いて得られる灯油留分であってもよい。基材油は、例えば、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、常圧蒸留装置から得られる重質軽油や残渣油(直留重質油)を接触分解させた灯油留分、直留重質油を熱分解させた灯油留分、直留重質油を水素化分解させた灯油留分、減圧蒸留装置から得られる減圧軽油を水素化分解させた灯油留分、接触分解軽油を混合した重質軽油を水素化分解させた灯油留分、接触分解軽油を脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱流した灯油留分の少なくともいずれかを備えることができる。
【0033】
基材油は、灯油留分から特定成分(例えば軽質分)を抽出した後の残留分(ラフィネート)であってもよい。基材油は、灯油留分からノルマルパラフィン分を抽出した後の残油であるノルパララフィネートであってもよい。基材油は、灯油留分から留出温度が160℃以上190℃以下である軽質留分を抽出した後の残留分であってもよい。基材油は、炭素数が9である芳香族炭化水素を主成分とするC9芳香族炭化水素であってもよい。C9芳香族炭化水素は、例えば、炭素数が6~9であるC6~C9芳香族炭化水素からC6~C8芳香族炭化水素を抽出した後の残留分であってもよい。基材油は、イソブチレンの3量体以上またはそれを水素化したイソオクテンヘビーであってもよい。
【0034】
基材油は、非石油由来基材であってもよい。基材油は、一酸化炭素と水素の混合ガスからフィッシャー・トロプシュ合成(FT合成)によって得られるFT合成油であってもよく、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、またはFT合成油を異性化した灯油留分であってもよい。基材油は、植物や細菌から得られるバイオ原料由来油であってもよいし、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、またはバイオ原料由来油を異性化した灯油留分であってもよい。基材油は、廃プラスチック、廃タイヤ、廃食用油などの廃油を原料とする廃油由来再生油であってもよく、廃油由来再生油の灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、または廃油由来再生油を異性化した灯油留分であってもよい。
【0035】
基材油データ20は、基材油の種類名、製造場所、製造日時、製造番号といった基材油を識別するための情報をさらに含んでもよい。基材油データ20は、基材油のコストに関する情報をさらに含んでもよく、基材油の製造にかかる単位容量あたりの価格を含んでもよい。基材油データ20は、基材油の在庫量に関する情報をさらに含んでもよく、製造工場などに貯留されている基材油の容量を含んでもよい。
【0036】
図3は、灯油データ22のデータ構造の一例を示す図である。灯油データ22は、複数の基材油を配合して製造される灯油に関するデータである。灯油データ22は、灯油を識別するためのIDおよび名称と、灯油の性状を示す複数のパラメータとを備える。
【0037】
灯油データ22は、基材油データ20と共通のパラメータを備える。灯油データ22は、基材油データ20と同様に、密度、動粘度、硫黄分、発熱量、留出温度、留出割合および成分比率を備えることができる。灯油データ22は、基材油データ20とは異なるパラメータとして、ナフテノベンゼン量を備える。灯油データ22は、ナフテノベンゼン量として、1環ナフテンベンゼンおよび2環ナフテノベンゼンの割合(容量%)を備えることができる。灯油のナフテノベンゼン量(容量%)は、1環ナフテンベンゼン量(容量%)および2環ナフテノベンゼン量(容量%)の合計値であってもよい。ナフテノベンゼン量は、FIMS、GC-TOFMS、2DGCなどの質量分析法を用いて測定できる。
【0038】
灯油データ22は、質量分析法を用いて分析可能な任意の成分の成分比率をさらに備えてもよい。灯油データ22は、ノルマルパラフィン分、イソパラフィン分、1環シクロパラフィン分、2環シクロパラフィン分、3環シクロパラフィン分、4環シクロパラフィン分、アルキルベンゼン、ナフタレン類、アセナフテン・ビフェニル類、フルオレン類、フェナントレン類などの成分比率をさらに備えてもよい。
【0039】
灯油データ22は、灯油の種類名、製造場所、製造日時、製造番号といった灯油を識別するための情報をさらに含んでもよい。灯油データ22は、灯油のコストに関する情報をさらに含んでもよく、灯油の製造にかかる単位容量あたりの価格を含んでもよい。
【0040】
図1に戻り、モデルデータ24は、灯油のナフテノベンゼン量を予測するための相関モデルの構成に必要な各種パラメータを含む。相関モデルは、灯油の性状を示す複数のパラメータの数値x
iと、灯油のナフテノベンゼン量yとの相関を表す。相関モデルは、例えば、以下の式(1)で表すことができる。
【数1】
ここで、関数f
iは、パラメータx
iを変数とする任意の関数であり、例えば、パラメータx
iの多項式である。係数pは、切片である。
【0041】
式(1)で表される相関モデルは、非線形モデルであってもよいし、線形モデルであってもよい。相関モデルが線形である場合、相関モデルは、例えば、以下の式(23)で表すことができる。
【数2】
ここで、係数k
iは、パラメータx
iに対する偏回帰係数であり、係数k
pは、切片である。
【0042】
相関モデルに含まれる複数のパラメータx
iとして、
図2の基材油データ20および
図3の灯油データ22に含まれる複数のパラメータを用いることができる。複数のパラメータx
iは、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える。
【0043】
複数のパラメータxiは、蒸留性状として、少なくとも一つの留出温度Taを備えることが好ましく、50%留出温度(T50)、70%留出温度(T70)および90%留出温度(T90)の少なくとも一つを備えることが好ましい。複数のパラメータxiは、容積割合aが異なる複数の留出温度Taを備えることがさらに好ましく、例えば、T50およびT70を備えることが好ましい。複数のパラメータxiは、T50、T70およびT90を備えてもよい。
【0044】
複数のパラメータxiは、蒸留性状として、少なくとも一つのb℃以上留出割合(Zb)を備えることが好ましく、210℃以上留出割合(Z210)、235℃以上留出割合(Z235)および240℃以上留出割合(Z240)の少なくとも一つを備えることが好ましい。複数のパラメータxiは、温度bが異なる複数のb℃以上留出割合Zbを備えてもよく、例えば、Z235およびZ240を備えてもよい。
【0045】
複数のパラメータxiは、芳香族分として、全芳香族分と、多環芳香族分とを備えることが好ましい。多環芳香族分は、2環芳香族分と3環+芳香族分を合算することにより算出できる。複数のパラメータxiは、芳香族分として、全芳香族分と、1環芳香族分とを備えてもよい。複数のパラメータxiは、芳香族分として、1環芳香族分と、多環芳香族分とを備えてもよい。
【0046】
ある実施例として、相関モデルの入力として用いる複数のパラメータxiの個数を6以上とし、密度、T50、T70、全芳香族分および多環芳香族分を少なくとも用いることにより、相関モデルの予測精度の指標であるQ2値を0.7以上とすることができる。
【0047】
相関モデルを構成する各種パラメータ(例えば、係数k
i、k
p)の具体的な数値は、機械学習によって決定することができる。例えば、
図3の灯油データ22を機械学習における教師データとして用いることができる。具体的には、灯油データ22に含まれる複数の灯油のそれぞれの複数のパラメータx
iを入力とし、ナフテノベンゼン量yを出力とする教師あり学習によって、相関モデルを構築できる。機械学習のアルゴリズムとして、線形回帰、サポートベクターマシン、ランダムフォレスト、勾配ブースティングおよびニューラルネットワークの少なくともいずれかを用いることができる。相関モデルは、機械学習によって生成されなくてもよく、機械学習とは異なる手法によって生成されてもよい。相関モデルは、複数のパラメータx
iの入力値と、ナフテノベンゼン量yの出力値との関係を定めるルックアップテーブルであってもよい。
【0048】
演算部16は、モデル生成部30と、予測部32と、配合決定部34とを備える。
【0049】
モデル生成部30は、モデルデータ24を生成するための機械学習を実行する。モデル生成部30は、例えば、記憶部14に記憶される灯油データ22を教師データとして使用し、灯油のナフテノベンゼン量を予測するための相関モデルを生成し、相関モデルを構成する各種パラメータの数値を決定する。モデル生成部30が生成したモデルデータ24は、記憶部14に記憶される。モデル生成部30は、機械学習とは異なる手法によってモデルデータ24を生成してもよい。モデルデータ24は、複数のパラメータxiの入力値と、ナフテノベンゼン量yの出力値との関係を定めるルックアップテーブルであってもよい。
【0050】
予測部32は、記憶部14に記憶されるモデルデータ24を用いて、複数の基材油を特定の配合比率で配合した特定の灯油のナフテノベンゼン量を予測する。予測部32は、例えば、特定の灯油の性状を示す複数のパラメータxiの数値を相関モデルに入力し、相関モデルから出力されるナフテノベンゼン量yを予測値とする。
【0051】
予測部32は、ユーザ端末50に入力され、取得部12によって取得される特定の灯油の性状を示す複数のパラメータxiの数値を用いて、特定の灯油のナフテノベンゼン量yを予測してもよい。ユーザ端末50を使用するユーザは、新規に配合または製造した特定の灯油の分析結果をユーザ端末50に入力してもよい。ユーザ端末50を使用するユーザは、特定の灯油の製造に使用した複数の基材油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータxiを配合比率で加重平均することにより、特定の灯油の複数のパラメータxiの数値を算出してユーザ端末50に入力してもよい。
【0052】
複数の基材油のそれぞれの蒸留性状から特定の灯油の蒸留性状を加重平均により算出する場合の注意点として、簡易蒸留法による蒸留性状には単純な加成性が成立しないことが挙げられる。簡易蒸留法ではなく、真沸点蒸留法による蒸留性状であれば、単純な加成性が成立することが分かっている。そこで、基材油データ20が備える蒸留性状が簡易蒸留法による場合、簡易蒸留法による留出温度Taを真沸点蒸留法による留出温度Tcに変換し、真沸点蒸留法による留出温度Tcで加重平均する。その後、加重平均した留出温度Tcを簡易蒸留法による留出温度Taに逆変換することにより、特定の灯油の簡易蒸留法における蒸留性状を算出できる。簡易蒸留法と真沸点蒸留法の間での留出温度Ta,Tcの換算方法として、例えば、API Technical Databook Fifth Editionに記載される公知の方法を用いることができる。
【0053】
図4は、ナフテノベンゼン量の予測結果の一例を示すグラフである。
図4は、様々な灯油のナフテノベンゼン量の実測値と予測値の関係性を示す。横軸のナフテノベンゼン量の実測値は、質量分析法(例えばGC-TOFMS)によって測定された値である。縦軸のナフテノベンゼン量の予測値は、予測部32によって相関モデルを用いて予測された値である。
図4の実線60は、実測値と予測値が一致する傾きが1の直線である。
図4の例は、相関モデルを生成するための機械学習のアルゴリズムとして、線形回帰(例えば重回帰分析)を用いた場合を示す。
図4の例は、複数のパラメータx
iとして、密度、T50、T70、T90、全芳香族分、多環芳香族分およびZ210を用いた場合を示す。
【0054】
図4に示されるように、ナフテノベンゼン量のプロットは、実線60の近傍に分布しており、実測値を正確に予測できていることが分かる。
図4において、破線62により示されるマイナス側の誤差は1.079%であり、破線64により示されるプラス側の誤差は1.396%である。
図4において、相関モデルの予測精度の指標であるQ
2値は0.755であることから、ナフテノベンゼン量を精度良く予測できていることが分かる。
【0055】
なお、灯油に含まれるナフテノベンゼン量は、所定の基準値(例えば8.9容量%)以下となることが求められることから、ナフテノベンゼン量の予測値が実測値よりも低くなることは好ましくない。そこで、予測部32は、相関モデルにおけるマイナス側の誤差の数値(例えば、1.079%)を安全係数として加算した値をナフテノベンゼン量の予測値としてもよい。この場合、予測部32は、ナフテノベンゼン量の予測値が実測値を必ず上回るように予測値を算出できる。
【0056】
配合決定部34は、記憶部14に記憶される基材油データ20およびモデルデータ24を用いて、ナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となる目標灯油を製造するための複数の基材油の目標配合比率を決定する。配合決定部34は、目標配合比率で配合した目標灯油のナフテノベンゼン量の予測値が所定の基準値以下となるように、目標配合比率を決定する。配合決定部34は、例えば、焼きなまし法(Simulated Annealing法)などの最適化計算手法を用いることにより、複数の基材油の目標配合比率を決定できる。配合決定部34は、例えば、配合に用いる複数の基材油を識別するためのIDと、複数の基材油のそれぞれの配合比率(容量%)の値とを決定する。
【0057】
配合決定部34は、例えば、ユーザ端末50に入力され、取得部12によって取得されるナフテノベンゼン量の基準値を用いて、複数の基材油の目標配合比率を決定してもよい。配合決定部34は、記憶部14にあらかじめ記憶されるナフテノベンゼン量の基準値を用いて、複数の基材油の目標配合比率を決定してもよい。ナフテノベンゼン量の基準値は、例えば、8.9容量%である。目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量を8.9容量%以下とすることにより、算出された目標配合比率にしたがって製造される目標灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。
【0058】
配合決定部34は、ナフテノベンゼン量以外の制約条件を用いて、複数の基材油の目標配合比率を決定してもよい。配合決定部34は、目標灯油の蒸留性状が所望の数値範囲となるように目標配合率を決定してもよい。配合決定部34は、目標灯油の10容量%留出温度(T10)と50容量%留出温度(T50)の差が10℃より大きくなる(つまり、T50-T10>10℃となる)ように目標配合比率を決定してもよい。目標灯油がT50-T10>10℃の条件を満たすことにより、算出された目標配合比率にしたがって製造される目標灯油の燃料性の悪化を抑制できる。蒸留温度範囲が狭すぎる場合、燃焼試験において軽質分が一気に気化することで燃料過濃状態となって燃焼性が悪化する可能性がある。
【0059】
配合決定部34は、目標灯油のa容量%留出温度と(a+25)容量%留出温度の差が7℃以上となるように目標配合比率を決定してもよい。例えば、a=5とし、5容量%留出温度(T5)と30容量%留出温度(T30)の差が7℃以上(つまり、T30-T5≧7℃)となるように目標配合比率が決定されてもよい。例えば、a=70とし、70容量%留出温度(T70)と95容量%留出温度(T95)の差が7℃以上(つまり、T95-T70≧7℃)となるように目標配合比率が決定されてもよい。その他、複数の条件(例えば、a=5およびa=70)が同時に満たされるように目標配合比率が決定されてもよい。これにより、算出された目標配合比率にしたがって製造される目標灯油の蒸留温度範囲が狭くなることを抑制し、目標灯油の燃料性の悪化を抑制できる。
【0060】
配合決定部34は、目標灯油のa容量%留出温度と(a+20)容量%留出温度の差が6℃以上となるように目標配合比率を決定してもよい。例えば、a=30とし、30容量%留出温度(T30)と50容量%留出温度(T50)の差が6℃以上(つまり、T50-T30≧6℃)となるように目標配合比率が決定されてもよい。例えば、a=50とし、50容量%留出温度(T50)と70容量%留出温度(T70)の差が6℃以上(つまり、T70-T50≧6℃)となるように目標配合比率が決定されてもよい。その他、複数の条件(例えば、a=30およびa=50)が同時に満たされるように目標配合比率が決定されてもよい。これにより、算出された目標配合比率にしたがって製造される目標灯油の蒸留温度範囲が狭くなることを抑制し、目標灯油の燃料性の悪化を抑制できる。
【0061】
配合決定部34は、目標灯油の動粘度ν(30℃、mm2/s)および密度ρ(15℃、g/cm3)が所定条件を充足するように目標配合比率を決定してもよい。配合決定部34は、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足されるように、目標配合比率を決定してもよい。これにより、算出された目標配合比率にしたがって製造される目標灯油の燃料性の悪化を抑制できる。動粘度や密度が高すぎる場合、燃焼試験において揮発不良や燃焼不良が生じることによって燃焼性が悪化する可能性がある。
【0062】
図5は、灯油の動粘度νおよび密度ρと燃焼性との関係性の一例を示すグラフである。
図5は、様々な灯油について、動粘度νを横軸とし、密度ρを縦軸とするグラフ上に、燃焼性試験が合格となるプロット72(○)と、燃焼性試験が不合格となるプロット74(×)とを並べたものである。
図5の網掛けの領域70は、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件を充足する範囲である。
図5に示されるように、網掛けの領域70に含まれる動粘度νおよび密度ρとなるように目標配合比率を決定することにより、算出された目標配合比率にしたがって製造される目標灯油の燃料性試験が不合格となることを抑制できる。燃焼性試験は、例えば、灯油ストーブなどの暖房機器において1000時間の長期燃焼評価試験を実施したときに、火炎が大きくなる、逆火が生じる、目視可能な煙が生じる、芯式ストーブの芯が劣化する、ファンヒータのノズルが劣化する、油漏れや破損が生じる、芯やノズルへのカーボン堆積による流量低下が生じて火炎が小さくなる、一酸化炭素(CO)の増加といった排ガスの悪化が生じるといった不具合が発生しなければ合格となる。
【0063】
配合決定部34は、目標配合比率で配合される目標灯油に含まれる特定成分の成分比率が所定の基準値以下となるように、目標配合比率を決定してもよい。特定成分として、法律や標準規格によって基準値が定められる成分を用いることができ、例えば、硫黄分を0.0080質量%以下とする基準値を用いることができる。
【0064】
配合決定部34は、目標配合比率で配合される目標灯油の発熱量(総発熱量または真発熱量)が所定条件を充足するように、目標配合比率を決定してもよい。目標配合比率で配合される目標灯油の発熱量は、基材油データ20に含まれる複数の基材油の発熱量を用いて算出できる。例えば、複数の基材油のそれぞれの発熱量を目標配合比率で加重平均することで目標灯油の発熱量を算出し、算出される目標灯油の発熱量が所定条件を充足するかを確認できる。ここで、所定条件とは、目標灯油の発熱量が所定の数値範囲内となる条件であってもよいし、目標灯油の発熱量が所定の下限値以上となる条件であってもよい。
【0065】
配合決定部34は、目標配合比率で配合される目標灯油のコストが所定条件を充足するように、目標配合比率を決定してもよい。目標配合比率で配合される目標灯油のコストは、基材油データ20に含まれる複数の基材油のコストを用いて算出できる。例えば、複数の基材油のそれぞれのコストを目標配合比率で加重平均することで目標灯油のコストを算出し、算出される目標灯油のコストが所定条件を充足するかを確認できる。ここで、所定条件とは、目標灯油のコストが所定の数値範囲内となる条件であってもよいし、目標灯油のコストが所定の上限値未満となる条件であってもよい。
【0066】
配合決定部34は、目標配合比率で配合される目標灯油が複数の基材油の在庫量の範囲内で製造されるように、目標配合比率を決定してもよい。この場合、配合決定部34は、例えば、ユーザ端末50に入力され、取得部12によって取得される目標灯油の目標製造量をさらに用いる。配合決定部34は、目標灯油の目標製造量と複数の基材の目標配合比率とを用いて、複数の基材油のそれぞれの使用量を算出し、複数の基材油のそれぞれの使用量が在庫量以下となるように目標配合比率を決定する。配合決定部34は、基材油データ20に含まれる在庫量を用いることができる。
【0067】
出力部18は、演算部16の処理結果を出力する。出力部18は、ネットワーク40を介してユーザ端末50に処理結果を出力してもよいし、情報処理装置10に接続されるディスプレイなどの出力装置に処理結果を出力してもよい。出力部18は、予測部32によって予測される特定の灯油のナフテノベンゼン量や、配合決定部34によって決定される複数の基材油の目標配合比率を出力する。
【0068】
図6は、実施の形態に係るナフテノベンゼン量の予測方法を示すフローチャートである。予測部32は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータと、複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを取得する(ステップS10)。複数のパラメータは、密度、蒸留性状および芳香族分を少なくとも備え、例えば、密度、T50、T70、全芳香族分および多環芳香族分を備えることが好ましい。取得部12は、特定の灯油の複数のパラメータの数値を取得する(ステップS12)。特定の灯油の複数のパラメータの数値は、特定の灯油を分析することによって測定されてもよいし、特定の灯油の製造に使用する複数の基材油について測定した複数のパラメータから加重平均などの方法によって算出されてもよい。予測部32は、モデルデータと、特定の灯油の複数のパラメータの数値とを用いて、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測する(ステップS14)。複数のパラメータの数値を相関モデルに入力することにより、相関モデルからナフテノベンゼン量の予測値が出力される。なお、ステップS10およびS12の順序は特に限られず、S10およびS12の順序を入れ替えてもよい。
【0069】
図7は、実施の形態に係る配合比率の決定方法を示すフローチャートである。配合決定部34は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータと、複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを取得する(ステップS20)。複数のパラメータは、密度、蒸留性状および芳香族分を少なくとも備え、例えば、密度、T50、T70、全芳香族分および多環芳香族分を備えることが好ましい。配合決定部34は、目標灯油の製造に用いる複数の基材油のそれぞれの複数のパラメータの数値を備える基材油データを取得する(ステップS22)。配合決定部34は、モデルデータおよび基材油データを用いて、目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となる目標灯油を製造するための複数の基材油の配合比率を決定する(ステップS24)。なお、ステップS20およびS22の順序は特に限られず、S20およびS22の順序を入れ替えてもよい。
【0070】
本実施の形態によれば、灯油の製造現場において特定の灯油のナフテノベンゼン量を実測できない場合であっても、灯油の製造現場において取得可能なパラメータからナフテノベンゼン量を精度良く推定することができる。本実施の形態によれば、目標灯油のナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となるように、目標灯油を製造するための複数の基材油の配合比率を決定できる。これにより、基材油としてナフテノベンゼンの含有量が多いと推定される基材油を用いる場合であっても、ナフテノベンゼン量が過多となることを防ぎ、目標配合比率にしたがって製造される目標灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。
【0071】
本実施の形態によれば、ナフテノベンゼンの含有量が多いと推定される基材油を積極的に利用することができ、燃焼性の優れた灯油の増産が容易となる。ナフテノベンゼンの含有量が相対的に多い第1基材油は、直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、および、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を蒸留分離して除去した残油を備える第1群から選択できる。また、ナフテノベンゼンの含有量が相対的に少ない第2基材油は、例えば、ノルパララフィネート、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、FT合成油、FT合成油由来を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、FT合成油を異性化した灯油留分、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される。このような第1基材油と第2基材油を混合して灯油を製造することにより、ナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となる灯油の増産が容易となる。
【0072】
本実施の形態によれば、基材油の蒸留性状を考慮することにより、蒸留性状(温度範囲)が狭すぎるために燃焼性の悪化につながると推定される基材油を積極的に利用して、燃焼性の優れた灯油の増産が容易となる。蒸留性状(温度範囲)が相対的に狭い第1基材油は、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第1群から選択される。また、蒸留性状(温度範囲)が相対的に狭い第2基材油は、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を抽出した後の残油、ノルパララフィネート、FT合成油、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、およびFT合成油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される。このような第1基材油と第2基材油を混合して灯油を製造することにより、蒸留性状(温度範囲)が狭すぎない灯油の増産が容易となる。
【0073】
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明した。この実施の形態は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0074】
上述の実施の形態では、演算部16がモデル生成部30、予測部32および配合決定部34を備える場合について示した。別の実施の形態では、演算部16がモデル生成部30、予測部32および配合決定部34の少なくともいずれかを備えなくてもよい。予測部32または配合決定部34が用いるモデルデータ24は、モデル生成部30によって生成されなくてもよく、情報処理装置10とは異なる装置において予め生成されてもよい。
【0075】
実施の形態は、上述の方法を実現するための機能をコンピュータに実現させるためのプログラムであってもよいし、プログラムを格納する記録媒体であってもよい。このようなプログラムを格納する記録媒体は、非一時的(non-transitory)かつ有形(tangible)なコンピュータ読み取り可能(computer readable)である記録媒体(storage medium)であってもよく、不揮発性メモリ、磁気テープや磁気ディスクなどの磁気記録媒体、または、光学ディスクなどの光学記録媒体であってもよい。
【0076】
以下、本開示のいくつかの態様について説明する。
【0077】
本開示の第1の態様は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、前記複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを記憶する記憶部と、特定の灯油の前記複数のパラメータの数値を取得する取得部と、前記モデルデータと、前記特定の灯油の前記複数のパラメータの数値とを用いて、前記特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測する演算部と、を備える情報処理装置である。第1の態様によれば、灯油の製造現場にて取得可能なパラメータを用いて、分析に手間がかかるナフテノベンゼン量を予測することができる。特に、複数のパラメータとして密度、蒸留性状および芳香族分を少なくとも用いることにより、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量の高い精度で予測できる。
【0078】
本開示の第2の態様は、前記蒸留性状は、50%留出温度、70%留出温度および90%留出温度の少なくとも一つを備える、第1の態様に記載の情報処理装置である。第2の態様によれば、予測に用いるパラメータとして、50%留出温度、70%留出温度および90%留出温度の少なくとも一つを用いることにより、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量の予測精度を向上できる。
【0079】
本開示の第3の態様は、前記蒸留性状は、210℃以上留出割合、235℃以上留出割合および240℃以上留出割合の少なくとも一つを備える、第1または第2の態様に記載の情報処理装置である。第3の態様によれば、予測に用いるパラメータとして、210℃以上留出割合、235℃以上留出割合および240℃以上留出割合の少なくとも一つを用いることにより、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量の予測精度を向上できる。
【0080】
本開示の第4の態様は、前記芳香族分は、全芳香族分と、多環芳香族分とを備える、第1から第3のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第4の態様によれば、予測に用いるパラメータとして、全芳香族分と多環芳香族分の双方を用いることにより、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量の予測精度を向上できる。
【0081】
本開示の第5の態様は、前記複数のパラメータは、動粘度をさらに備える、第1から第4のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第5の態様によれば、予測に用いるパラメータとして、動粘度をさらに用いることにより、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量の予測精度を向上できる。
【0082】
本開示の第6の態様は、前記モデルデータは、前記複数の灯油の前記複数のパラメータの数値を入力とし、前記複数の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を出力とする教師データを用いた機械学習によって生成される、第1から第5のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第6の態様によれば、機械学習によって相関モデルを生成することにより、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量の予測精度を向上できる。
【0083】
本開示の第7の態様は、前記記憶部は、目標灯油の製造に用いる複数の基材油のそれぞれの前記複数のパラメータの数値を備える基材油データをさらに記憶し、前記演算部は、前記モデルデータおよび前記基材油データを用いて、前記目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となるように、前記目標灯油を製造するための前記複数の基材油の目標配合比率を決定する、第1から第6のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第7の態様によれば、ナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となる目標灯油を製造するための目標配合比率を決定できる。特に、目標灯油の製造に用いる複数の基材油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量を分析する必要がないため、分析の手間を大幅に軽減できる。
【0084】
本開示の第8の態様は、前記演算部は、前記目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量が8.9容量%以下となるように、前記目標配合比率を決定する、第7の態様に記載の情報処理装置である。第8の態様によれば、目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量の予測値を8.9容量%以下とする制約条件を用いることにより、長期燃焼性に優れた目標灯油を製造するための目標配合比率を決定できる。
【0085】
本開示の第9の態様は、前記演算部は、前記目標灯油の10%留出温度と50%留出温度の差が10℃より大きくなるように、前記目標配合比率を決定する、第7または第8の態様に記載の情報処理装置である。第9の態様によれば、目標灯油の蒸留性状(蒸留範囲)が狭くなることを抑制し、目標灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。
【0086】
本開示の第10の態様は、前記演算部は、前記目標灯油のa%留出温度と(a+25)%留出温度の差が7℃以上となるように、前記目標配合比率を決定する、第7から第9のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第10の態様によれば、目標灯油の蒸留性状(蒸留範囲)が狭くなることを抑制し、目標灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。
【0087】
本開示の第11の態様は、前記演算部は、前記目標灯油のa%留出温度と(a+20)%留出温度の差が6℃以上となるように、前記目標配合比率を決定する、第7から第10のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第11の態様によれば、目標灯油の蒸留性状(蒸留範囲)が狭くなることを抑制し、目標灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。
【0088】
本開示の第12の態様は、前記複数のパラメータは、動粘度をさらに備え、前記演算部は、前記目標灯油の動粘度ν(30℃、mm2/s)および密度ρ(15℃、g/cm3)について、ν≦1.522、ρ≦0.8061、および、ρ≦-0.0429ν+0.08653の条件が充足されるように、前記目標配合比率を決定する、第7から第11のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第12の態様によれば、目標灯油の密度と動粘度を所定の範囲内とする制約条件を用いることにより、長期燃焼性に優れた目標灯油を製造するための目標配合比率を決定できる。
【0089】
本開示の第13の態様は、前記複数のパラメータは、硫黄分をさらに備え、前記演算部は、前記目標灯油の硫黄分が所定の基準値以下となるように、前記目標配合比率を決定する、第7から第12のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第13の態様によれば、硫黄分の基準値を満たすように配合比率が決定されるため、ユーザの利便性を向上できる。
【0090】
本開示の第14の態様は、前記複数のパラメータは、発熱量をさらに備え、前記演算部は、前記目標灯油の発熱量が所定条件を充足するように、前記目標配合比率を決定する、第7から第13のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第14の態様によれば、発熱量に関する条件を満たすように配合比率が決定されるため、ユーザの利便性を向上できる。
【0091】
本開示の第15の態様は、前記基材油データは、前記複数の基材油のそれぞれのコストを含み、前記演算部は、前記目標灯油のコストが所定条件を充足するように、前記目標配合比率を決定する、第7から第14のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第15の態様によれば、コストに関する条件を満たすように配合比率が決定されるため、ユーザの利便性を向上できる。
【0092】
本開示の第16の態様は、前記基材油データは、前記複数の基材油のそれぞれの在庫量を含み、前記演算部は、前記目標灯油を所定の製造量で製造する場合に使用される前記複数の基材油のそれぞれの使用量が前記在庫量以下となるように、前記目標配合比率を決定する、第7から第15のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第16の態様によれば、基材油の限られた在庫を活用することができ、燃焼性の優れた灯油の増産に寄与できる。
【0093】
本開示の第17の態様は、前記複数の基材油は、第1基材油と、第2基材油とを備え、前記第1基材油は、直留灯油、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、および、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を蒸留分離して除去した残油を備える第1群から選択され、前記第2基材油は、ノルパララフィネート、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、FT合成油、FT合成油由来を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、FT合成油を異性化した灯油留分、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、第7から第16のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第17の態様によれば、ナフテノベンゼン量が比較的多い第1基材油と、ナフテンベンゼン量が比較的少ない第2基材油とを組み合わせることにより、ナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となる目標灯油の配合比率を決定できる。これにより、ナフテノベンゼン量が比較的多い第1基材油を有効活用することができ、灯油の増産に寄与できる。
【0094】
本開示の第18の態様は、前記複数の基材油は、第1基材油と、第2基材油とを備え、前記第1基材油は、接触分解軽油を高分解率で水素化分解した灯油留分、C9芳香族炭化水素、イソオクテンヘビー、バイオ原料由来油、バイオ原料由来油を分留した灯油留分、バイオ原料由来油を水素化した灯油留分、バイオ原料由来油を異性化した灯油留分、廃油由来再生油、廃油由来再生油を分留した灯油留分、廃油由来再生油を水素化した灯油留分、および廃油由来再生油を異性化した灯油留分を備える第1群から選択され、前記第2基材油は、直留灯油を水素化脱硫した灯油留分、直留重質油を水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を低分解率で水素化分解した灯油留分、接触分解軽油を分留および脱硫した灯油留分、オイルサンド由来の脱硫した灯油留分、灯油留分から160℃以上190℃以下留分を抽出した後の残油、ノルパララフィネート、FT合成油、FT合成油を分留した灯油留分、FT合成油を水素化した灯油留分、およびFT合成油を異性化した灯油留分を備える第2群から選択される、第7から第16のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第18の態様によれば、蒸留性状(温度範囲)が比較的狭い第1基材油と、蒸留性状(温度範囲)が比較的狭い第2基材油とを組み合わせることにより、目標灯油の蒸留性状(蒸留範囲)が狭くなることを抑制し、目標灯油の燃焼性の悪化を抑制できる。これにより、蒸留性状(温度範囲)が比較的狭い第1基材油を有効活用することができ、灯油の増産に寄与できる。
【0095】
本開示の第19の態様は、前記複数の基材油は、非石油由来の基材油を備える、第7から第18のいずれか一つの態様に記載の情報処理装置である。第19の態様によれば、非石油由来の基材油を用いる場合であっても、ナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となる目標灯油を製造するための目標配合比率を決定できる。
【0096】
本開示の第20の態様は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを取得することと、特定の灯油の前記複数のパラメータの数値を取得することと、前記モデルデータと、前記特定の灯油の前記複数のパラメータの数値とを用いて、前記特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測することと、を備える予測方法である。第20の態様によれば、灯油の製造現場にて取得可能なパラメータを用いて、分析に手間がかかるナフテノベンゼン量を予測することができる。特に、複数のパラメータとして密度、蒸留性状および芳香族分を少なくとも用いることにより、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量の高い精度で予測できる。
【0097】
本開示の第21の態様は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを取得する機能と、特定の灯油の前記複数のパラメータの数値を取得する機能と、前記モデルデータと、前記特定の灯油の前記複数のパラメータの数値とを用いて、前記特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量を予測する機能と、をコンピュータに実現させるプログラムである。第21の態様によれば、灯油の製造現場にて取得可能なパラメータを用いて、分析に手間がかかるナフテノベンゼン量を予測することができる。特に、複数のパラメータとして密度、蒸留性状および芳香族分を少なくとも用いることにより、特定の灯油に含まれるナフテノベンゼン量の高い精度で予測できる。
【0098】
本開示の第22の態様は、複数の灯油のそれぞれの性状を示す複数のパラメータであって、密度と、蒸留性状と、芳香族分とを少なくとも備える複数のパラメータと、複数の灯油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量との相関を示す相関モデルに関するモデルデータを記憶し、目標灯油の製造に用いる複数の基材油のそれぞれの前記複数のパラメータの数値を備える基材油データを記憶する記憶部と、前記モデルデータおよび前記基材油データを用いて、前記目標灯油に含まれるナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となるように、前記目標灯油を製造するための前記複数の基材油の目標配合比率を決定する演算部と、を備える情報処理装置である。第22の態様によれば、ナフテノベンゼン量が所定の基準値以下となる目標灯油を製造するための目標配合比率を決定できる。特に、目標灯油の製造に用いる複数の基材油のそれぞれに含まれるナフテノベンゼン量を分析する必要がないため、分析の手間を大幅に軽減できる。
【0099】
上述した実施の形態または態様に係る構成の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0100】
10…情報処理装置、12…取得部、14…記憶部、16…演算部、20…基材油データ、22…灯油データ、24…モデルデータ、30…モデル生成部、32…予測部、34…配合決定部。