(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008133
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法および電子部品の製造装置
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240112BHJP
B26D 1/02 20060101ALI20240112BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20240112BHJP
B26D 7/20 20060101ALI20240112BHJP
B26D 3/18 20060101ALI20240112BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240112BHJP
【FI】
H01G4/30 311A
B26D1/02 Z
B26D7/06 E
B26D7/20
B26D3/18 Z
H01G13/00 391H
H01G4/30 311Z
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109729
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】酒井 哲生
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
3C021GA01
3C027EE03
3C027EE04
3C027EE05
5E001AB03
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ02
5E082AB03
5E082BC38
5E082BC39
5E082EE04
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG54
5E082LL03
5E082MM24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】予期せぬ切断などが生じにくく、より精度よくマザーブロックを切断する方法およびそのための装置を提供する。
【解決手段】内部電極が複数埋設された上主面MFと下主面MBとを有するマザーブロック1を複数の加工生成物に切断する切断工程を備える電子部品の製造方法であって、切断工程では、マザーブロック1は、マザーブロック1の下主面MB側から曲面状の支持部材22で支持され、マザーブロック1は、支持部材22で支持された状態で、マザーブロック1の上主面MF側からカット刃12により相対的に押し切られる、電子部品の製造方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極が複数埋設された上主面と下主面とを有する被加工物を複数の加工生成物に切断する切断工程を備える電子部品の製造方法であって、
前記切断工程では、
前記被加工物は、前記被加工物の前記下主面側から曲面状の支持部材で支持され、
前記被加工物は、前記支持部材で支持された状態で、前記被加工物の前記上主面側からカット刃により相対的に押し切られる、
電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記被加工物は、マザーブロックであり、
前記加工生成物は、小片化されたチップである工程をさらに備えた、
請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記被加工物は、マザーブロックであり、
前記加工生成物は、ブロックであり、
前記ブロックを、それぞれ型枠にいれてプレスするプレス工程をさらに備えた、
請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記カット刃は、固定保持され、前記支持部材からの押し当て力でのみ前記被加工物が切断される、
請求項1から3の何れか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記被加工物は、湾曲可能な支持体で支持されており、
前記曲面状の支持部材は、前記支持体を介して、前記被加工物を刃に押し当てる、
請求項1から3の何れか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
支持体と、
前記支持体の周囲を保持する枠体と、を備え、
前記支持体の一方の主面側から他方の主面側に向かって、押し当てられる曲面状の支持部材と、前記支持体の他方の主面側で前記曲面状の支持部材と相対する位置に配置されたカット刃と、をさらに備え、
前記曲面状の支持部材を前記支持体に押し当てることで前記支持体を湾曲させ、
湾曲させた前記支持体に向かって前記カット刃を相対的に押しつけることで、前記支持体の他方の主面に配置された被加工物を切断する、
電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法および電子部品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層セラミック電子部品の製造において、デラミネーションの発生を抑制しながらグリーンシート積層体を切断する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、マザーブロックを切断して、ブロックに小片化する際、刃面の角度と表面粗さを所定の範囲に設定する切断方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
積層セラミック電子部品などの電子部品の小型化が進んでいる。そのため、グリーンシート積層体などのマザーブロックを、より精度よく切断する技術が求められている。
本発明は、予期せぬ切断などが生じにくく、より精度よくマザーブロックを切断する方法およびそのための装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子部品の製造方法は、
内部電極が複数埋設された上主面と下主面とを有する被加工物を複数の加工生成物に切断する切断工程を備える電子部品の製造方法であって、
前記切断工程では、
前記被加工物は、前記被加工物の前記下主面側から曲面状の支持部材で支持され、
前記被加工物は、前記支持部材で支持された状態で、前記被加工物の前記上主面側からカット刃により相対的に押し切られる。
【0006】
また、本発明の電子部品の製造装置は、
支持体と、
前記支持体の周囲を保持する枠体と、を備え、
前記支持体の一方の主面側から他方の主面側に向かって、押し当てられる曲面状の支持部材と、前記支持体の他方の主面側で前記曲面状の支持部材と相対する位置に配置されたカット刃と、をさらに備え、
前記曲面状の支持部材を前記支持体に押し当てることで前記支持体を湾曲させ、
湾曲させた前記支持体に向かって前記カット刃を相対的に押しつけることで、前記支持体の他方の主面に配置された被加工物を切断する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予期せぬ切断などが生じにくく、より精度よくマザーブロックを切断する方法およびそのための装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】切断装置の概要を示す、切断装置の斜視図である。
【
図2】電極が印刷されたセラミックグリーンシートの概要を示す平面図である。
【
図3】マザーブロックの概要を示す、マザーブロックの一部斜視図である。
【
図4】本実施形態の切断方法の概要を示す図である。
【
図5】マザーブロックが切断される部分を拡大した図である。
【
図6】他の本実施形態の切断方法の概要を示す図である。
【
図7】他の実施形態の支持部材の形状を示す図である。
【
図9】従来の切断方法において、マザーブロックが切断される部分を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の電子部品の製造方法について説明する。以下の説明では、電子部品の一例として、積層セラミックコンデンサを取り上げる。だだし、本発明の電子部品の製造方法で製造される電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されない。電子部品は、積層配線基板等の他の部品であってもよい。
【0010】
<積層セラミックコンデンサの製造方法>
積層セラミックコンデンサは、一般に、下記の工程を経て製造される。すなわち、内部電極が表面に設けられたセラミックグリーンシートを複数枚積層して積層体を得る積層工程と、積層体を加圧密着させて未焼成のマザーブロックを成形する加圧成形工程と、内部電極の配置に合わせてマザーブロックを、例えば4つのブロックになるように十字形に切断する第1の切断工程と、切断された複数のブロックを、それぞれ型枠にいれてプレスするプレス工程と、プレスされたブロックを個片に切断してチップを得る第2の切断工程と、チップを焼成する焼成工程と、焼成されたチップに外部電極を形成する外部電極形成工程とを経て、積層セラミックコンデンサは製造される。本発明は、上記工程のなかで、第1及び第2の切断工程に関する。
【0011】
<切断装置の概要>
図1に基づいて、第1及び第2の切断工程で用いられる切断装置10を説明する。
図1は、切断装置10の概要を示す、切断装置10の斜視図である。
以下、切断装置10が第1の切断工程で用いられる場合を例にして、切断装置10について説明する。切断装置10が第1の切断工程で用いられる場合には、被加工物としてのマザーブロック1が、カット刃12により切断される。そして、加工生成物としてのブロックが得られる。
なお、切断装置10は、第2の切断工程で用いることも可能である。切断装置10が第2の切断工程で用いられる場合には、被加工物は、マザーブロック1が切断されることで得られたブロックとなる。そして、ブロックが切断装置10で個片に切断され、加工生成物としてのチップが得られる。
【0012】
切断装置10は、カット刃12とステージ16とカメラ20とを含む。
<カット刃>
カット刃12は、マザーブロック1を切断する部分である。カット刃12は、ホルダ14に保持されている。カット刃12は、押切刃である。
カット刃12の厚さは、0.05mm以上0.25mm以下が好ましい。カット刃12は、例えば、長方形型の板である。長方形型の長手方向の一方の辺に、刃が配置される。他方の辺は、肉厚となっており、この部分がホルダ14に保持される。
【0013】
<ステージ>
ステージ16は、マザーブロック1が載置される部分である。マザーブロック1は、積層治具(
図1に図示せず)や保持部材(
図1に図示せず)を介してステージ16に保持される。
ステージ16は、載置されたマザーブロック1を、移動させたり、回転させたりすることができる。
図1に、移動の方向を矢印D1で示し、回転の方向を矢印D2で示す。この移動や回転は、ステージ駆動部18によって行われる。
【0014】
<カメラ>
カメラ20は、マザーブロック1を撮影する部分である。切断装置10では、カメラ20が撮影した画像に基づいて、マザーブロック1が適切な位置で切断されるように位置合わせをする。具体的には、ステージ駆動部18がステージ16を移動させたり回転させたりして、位置合わせを行う。
詳しくは、カメラ20は、照明装置(図示せず)と一体となっていてもよい。また、カメラ20は、X線などの可視光以外の波長をとらえるものでもよい。また、カメラ20は、後に説明する基準マークを、マザーブロック1の側方から撮影することが可能なように配置されている。そして、カメラ20が撮影した基準マークの位置に基づいて、カット刃12をマザーブロック1のどこに入れるかを決定し、ステージ16の位置や向きを決定する。
ステージ16は、面内方向に少なくとも90度以上回転することが可能である。例えば、1回目の切断を行い、その後、ステージ16を90度回転させる。そして、1回目の切断方向と直交する方向で、2回目の切断を行う。これにより、マザーブロック1を、さいの目状のブロックに小片化することができる。なお、マザーブロック1は、必ずしも小片化する必要はなく、田の字状に切断してもよい。このように切断する場合、マザーブロック1に、後に説明する基準マーク4を設ける必要はない。
【0015】
<セラミックグリーンシート>
図2および
図3に基づいて、切断装置10で切断されるマザーブロック1について説明する。
図2は、内部電極3が印刷されたセラミックグリーンシート5の様子を示す平面図である。
図2に示すように、セラミックグリーンシート5には、格子状に配置された複数の内部電極3と、セラミックグリーンシート5の外周部近辺に配置された複数の基準マーク4とが印刷されている。
セラミックグリーンシート5の厚さは、例えば、0.4μm以上5.0μmとすることができる。また、内部電極3の厚さは、例えば、0.1μm以上2.0μmとすることができる。
マザーブロック1は、内部電極3が印刷されたセラミックグリーンシート5が複数枚積層されることで形成されている。
【0016】
<マザーブロック>
図3は、マザーブロック1の概要を示す、マザーブロック1の一部斜視図である。
図3に示すマザーブロック1は、基準マーク4や内部電極3がマザーブロック1の側面から露出するように、余剰部が切断された後のマザーブロック1である。
マザーブロック1の切断は、前述のように、カメラ20でマザーブロック1の側面から露出した基準マーク4や内部電極3を撮影し、カット刃12とマザーブロック1とを位置合わせした後に行われる。マザーブロック1は、例えば
図3に示す切断予定位置Lで切断される。
マザーブロック1には、内部電極3が高密度で配置されている。内部電極3は、マザーブロック1に、例えば50枚以上2000枚以下積層されている。また、同じ層内で隣接する内部電極3の間の距離は、例えば50μm以上200μm以下の狭ピッチとすることができる。
【0017】
<切断の詳細>
図4は、本実施形態の切断方法の概要を示す図である。
図4は、マザーブロック1の側面から切断の様子を見た図である。
図4に示すように、マザーブロック1は、積層治具26に載置されている。
<積層治具>
積層治具26は、支持体26aと枠体26bとを含む。
枠体26bは、平面視において長方形型の形状や正方形型の形状を有する枠である。枠体26bは、例えば金属で形成されている。
【0018】
<支持体>
支持体26aは、枠体26bに囲まれる部分に張られた部材である。支持体26aは、ベース部材と称されることもある。支持体26aは、比較的薄い支持体で形成されている。マザーブロック1は、支持体26a上に載置され、保持されている。
マザーブロック1を支持体26aに保持する方法に限定はない。例えば、温度が上がると粘着性が低下する粘着シートを介して、マザーブロック1を支持体26aに保持してもよい。この場合、加熱して粘着シートの粘着性を低下させることで、マザーブロック1と支持体26aとを容易に分離することができる。
支持体26aの材料は、例えばステンレスなどの金属が好ましい。支持体26aの厚さは、例えば、0.2mm以上1.0mm以下とすることができる。支持体26aが金属で形成されている場合、粘着剤などの粘着性を備える物質を支持体26aの表面に塗工し、その上にマザーブロック1を載置することが好ましい。
【0019】
<保持部材>
積層治具26は、保持部材24によってステージ(
図4に図示せず)に固定されている。具体的には、保持部材24が枠体26bを挟み込むことで、積層治具26を固定している。
保持部材24は、積層治具26をステージに固定するだけではなく、積層治具26を搬送する際にも用いることができる。すなわち、枠体26bを保持した状態で保持部材24が移動することで、積層治具26、ひいてはマザーブロック1を搬送することができる。
また、前述した、カメラ20が撮影した画像に基づくマザーブロック1の位置合わせも、保持部材24が移動や回転をすることで行うことができる。
なお、保持部材24は、搬送用と、位置合わせ用とで、別の部材とすることもできる。
【0020】
<切断>
マザーブロック1の切断は、以下のように行われる。
図4に示すように、支持体26aの上主面側SFにカット刃12を配置し、その位置にカット刃12を固定する。そして、支持体26aの下主面側SBから、押上げ部材としての支持部材22を、支持体26aに押し当てる。具体的には、支持部材22を矢印Aの方向に移動させる。
これにより、マザーブロック1内に、カット刃12が相対的に入り込む。その結果、マザーブロック1が切断される。
【0021】
図5は、マザーブロック1が切断される部分を拡大した図である。
図5に基づいて、マザーブロック1が切断される様子をより具体的に説明する。
図5に示すように、支持部材22の先端部22Tは、湾曲した形状を有している。そのため、支持部材22が矢印Aの方向に移動し、先端部22Tが支持体26aに当接すると、支持体26aは、上主面SFを凸にして湾曲する。この支持体26aの湾曲に伴って、その上に載置されているマザーブロック1もその上主面MFを凸にして湾曲する。
そして、支持部材22が矢印Aの方向にさらに移動し、カット刃12がマザーブロック1に入り込むにつれ、マザーブロック1は、矢印Bにように、カット刃12の両側に向けて開裂していく。そして、最終的に、マザーブロック1は、カット刃12に相対的に押し切られることで切断される。
【0022】
切断の過程において、マザーブロック1を矢印Bの方向に開裂させるような力がマザーブロック1にかかることで、カット刃12がセラミックグリーンシート5に入り込む際の負荷を低減することができる。
また、マザーブロック1がカット刃12の両側に向けて開裂していくことで、マザーブロック1の面内方向、すなわちマザーブロック1の厚さ方向にかかる圧縮応力を逃がすことができる。そのため、マザーブロック1の切断面の形状が不均一になることを抑制することができる。
また、仮にマザーブロック1に先行亀裂が生じたとしても、先行亀裂の方向を、マザーブロック1の主面に対して垂直な方向へ誘導することができる。これにより、先行亀裂がマザーブロック1の主面に対して垂直な方向以外の方向へ走ることによる切断不良の発生を抑制することができる。
<従来の切断方法>
【0023】
ここで、従来の切断方法を説明する。
図8は、従来の切断方法の概要を示す図である。
従来の切断装置100では、マザーブロック1は、切断テーブル110上に支持体26aを介して載置される。そして、カット刃12が矢印Dの方向に移動することで、マザーブロック1は切断される。
【0024】
図9(a)および
図9(b)に基づいて、従来の切断方法において生じる切断不良について説明する。
図9(a)および
図9(b)は、いずれも、従来の切断方法において、マザーブロックが切断される部分を拡大した図である。
図9(a)は、先行亀裂による切断不良を示し、
図9(b)は、斜めカットによる切断不良を示している。
【0025】
<先行亀裂>
図9(a)に基づいて、先行亀裂について説明する。
図9(a)に示すように、カット刃12が矢印D方向に移動しながらマザーブロック1に入り込むにつれ、マザーブロック1の上主面MFから面内方向に圧縮応力がかかる。そして、この圧縮応力により、マザーブロック1内に先行亀裂120が生じる。この先行亀裂120が走る方向は制御することができず、また予見することができない。
図5に示した本実施形態の切断方法による切断とは異なり、マザーブロック1の開裂方向を決める力が作用していないからである。
このように、従来の切断方法では、方向を制御できない先行亀裂120が生じ、それにより予期せぬ切断が生じる。これが切断不良となる。
【0026】
<斜めカット>
図9(b)に基づいて、斜めカットについて説明する。
図9(b)に示すように、カット刃12が矢印Dの方向に移動しながらマザーブロック1に入り込むにつれ、カット刃12の先端が曲がる場合がある。カット刃12がマザーブロック1に入り込む際に、マザーブロック1から抵抗を受けるためである。カット刃12の先端が曲がった場合、マザーブロック1の切断面が斜めになる。これが斜めカット130の切断不良である。
【0027】
近年、積層セラミックコンデンサは大容量、小型化が進んでいる。そのため、マザーブロック1の内部には、内部電極が高密度で埋設され、かつ高圧でプレスされている。その結果、マザーブロック1がより固くなっている。このため、先行亀裂による予期せぬ切断や、斜めカットによる切断不良が生じやすい。
【0028】
本実施形態の切断方法では、
図5に示すように、支持部材22が支持体26aに当接することで、カット刃12の両側に向けてマザーブロック1を開裂させるような力を、マザーブロック1に及ぼすことができる。そのため、マザーブロック1の開裂方向を定めることができる。したがって、
図9(a)に示したような、方向を制御できない先行亀裂120が生じにくい。
また、本実施形態の切断方法では、カット刃12の両側に向けてマザーブロック1を開裂させるような力がマザーブロック1に及ぶ。そのため、カット刃12がマザーブロック1に入り込む際に、カット刃12がマザーブロック1から受ける抵抗を低減することができる。したがって、
図9(b)に示したような、斜めカット130が生じにくい。
【0029】
<切断工程での動作>
以下、切断工程での典型的な動作を説明する。
マザーブロック1は、支持体26aに保持された状態で、取り入れ部から取り入れられ、加工部まで搬送される。加工部には、切断装置10が設置されている。
加工部で、マザーブロック1は、カット刃12により切断される。
加工部では、下記の(1)から(7)が行われる。
(1)加工部に搬送されたマザーブロック1の側方から、カメラ20が基準マーク4を読み取る。
(2)基準マーク4に合わせてステージ16を微調整することで、カット刃12の配置にあわせてマザーブロック1を位置決めする。
(3)カット刃12に対して、相対的に、支持部材22により支持体26aごとマザーブロック1が押し上げられ、カット刃12によって切断される。
(4)支持部材22がもとの位置に戻り、(1)に戻る。
(5)(1)から(5)を繰り返すことで、マザーブロック1を切断する。
(6)ステージ16、ひいては保持部材24が回転することで、マザーブロック1を平面内において90度回転させる。
(7)(1)から(5)を繰り返す。
切断が終了した後、切断されたマザーブロック1は、支持体26aに保持された状態で取り出し部まで搬送され、取り出される。
【0030】
<別の動作>
切断工程における別の動作について説明する。
図6は、切断工程において別の動作を伴う切断方法の概要を示す図である。
図4に基づいて説明した切断方法では、カット刃12は固定されていた。これに対して、
図6に示す切断方法では、カット刃12は、移動するように構成されている。
具体的には、カット刃12は、
図6の矢印Cに示すように、支持部材22の矢印Aの動きに連動して動く。すなわち、カット刃12は、支持部材22の動きに合わせて、支持部材22に近づく方向に動く。
これにより、支持体26aやマザーブロック1の湾曲の度合いが小さい状態で、マザーブロック1を切断することができる。
【0031】
図4に示した切断方法では、カット刃12は固定され、支持部材22の押上げのみでマザーブロック1を切断していた。そのため、マザーブロック1が完全に切断される程度まで、支持体26aおよびマザーブロック1を湾曲させる必要があった。
これに対して、
図5に示す切断方法では、カット刃12が、マザーブロック1の上主面MF側からマザーブロック1に入り込むように移動する。そのため、マザーブロック1の切断は、支持部材22の押上げに加えて、カット刃12の入り込みによっても行われる。これにより、支持部材22の押上げによる、支持体26aおよびマザーブロック1の湾曲の度合を小さくしても、マザーブロック1を切断することができる。
その結果、
図6に示す切断方法では、支持体26aの耐用期間を延ばすことができる。切断ごとの、支持体26aの変形を抑制することができるためである。
また、マザーブロック1をたわませる力が、マザーブロック1に及ぼされることを抑制することができる。これにより、マザーブロック1に内部応力が蓄積することを抑制することができる。
【0032】
<支持部材の形状等>
支持部材22について、より詳しく説明する。
支持部材22の材料は、その硬度が高い方が好ましい。例えば、ロックウェル硬さ(HRC)50以上である材料で支持部材22を形成することが好ましい。
なお、支持部材22の硬度は、支持体26aの硬度よりも高い必要がある。これにより、支持部材22の下から押し上げにより、支持体26aを湾曲させることが可能になる。
また、支持部材22は、カット刃12に対して、支持体26aを挟む形で対向して配置されている。そして、支持部材22は、カット刃12に相対的に近接することが可能なように構成されており、カット刃12と同時に支持体26aを挟持するように動く。その際の動く距離、すなわち支持部材22のストロークは、1mm以内が好ましい。これにより、切断工程の高速化が可能となる。
【0033】
支持部材22の形状について、
図7(a)から
図7(b)に基づいて説明する。
図7の各図は、支持部材22の形状を示す図である。
図7の各図は、支持部材22を側面から見た図である。ここでの側面から見るとは、カット刃12の刃先の長手方向に見ることをいう。
図7(a)は、先に
図4などで説明した支持部材22を示す。この支持部材22では、先端部22Tは、湾曲した形状、すなわち曲面を有している。この曲面の極率半径は、1mm以上2.5mm以下が好ましい。
【0034】
図7(b)に示す支持部材22では、先端部22Tは、三角形型の形状、特には鋭角の形状を有している。先端部22Tの形状が三角形型の形状である場合、先端部22Tが支持体26aに当接すると、支持体26aは、より小径に湾曲する。そのため、マザーブロック1を切断するために先端部22Tを移動させる距離を短くすることができる。これにより、切断工程をより高速化することができる。
【0035】
図7(c)に示す支持部材22では、先端部22Tは、平らであり、切断前のマザーブロック1の下主面MBと略平行となっている。先端部22Tが平ら、すなわち平面であり、また、切断前のマザーブロック1の下主面MBと略平行である場合には、先端部22Tが支持体26aに当接したときに、支持体26aが受ける応力を面内に分散させることが容易になる。その結果、支持体26aの耐用期間を延ばすことができる。
なお、支持部材22の先端部22Tの形状は、前述のように、曲面形状、鋭角形状、平面など種々の形状とすることができるが、曲面形状が好ましい。支持体26aやマザーブロック1の湾曲の度合いや、切断に要する時間等、種々の要求項目がバランスよく達成されるからである。
【0036】
<1>
内部電極が複数埋設された上主面と下主面とを有する被加工物を複数の加工生成物に切断する切断工程を備える電子部品の製造方法であって、
前記切断工程では、
前記被加工物は、前記被加工物の前記下主面側から曲面状の支持部材で支持され、
前記被加工物は、前記支持部材で支持された状態で、前記被加工物の前記上主面側からカット刃により相対的に押し切られる、
電子部品の製造方法。
【0037】
<2>
前記被加工物は、マザーブロックであり、
前記加工生成物は、小片化されたチップである工程をさらに備えた、
<1>に記載の電子部品の製造方法。
【0038】
<3>
前記被加工物は、マザーブロックであり、
前記加工生成物は、ブロックであり、
前記ブロックを、それぞれ型枠にいれてプレスするプレス工程をさらに備えた、
<1>に記載の電子部品の製造方法。
【0039】
<4>
前記カット刃は、固定保持され、前記支持部材からの押し当て力でのみ前記被加工物が切断される、
<1>から<3>のいずれか1つに記載の電子部品の製造方法。
【0040】
<5>
前記被加工物は、湾曲可能な支持体で支持されており、
前記曲面状の支持部材は、前記支持体を介して、前記被加工物を刃に押し当てる、
<1>から<4>のいずれか1つに記載の電子部品の製造方法。
【0041】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 マザーブロック
2 誘電体
3 内部電極
4 基準マーク
5 セラミックグリーンシート
10 切断装置
12 カット刃(押切刃)
14 ホルダ
16 ステージ
18 ステージ駆動部
20 カメラ
22 支持部材(押上げ部材)
22T 先端部
24 保持部材
26 積層治具
26a 支持体(ベース部材)
26b 枠体
100 切断装置
110 切断テーブル
120 先行亀裂
130 斜めカット
MF マザーブロックの上主面
MB マザーブロックの下主面
SF 支持体の上主面
SB 支持体の下主面
L 切断予定位置