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特開2024-81332ブッシング及び電界緩和シールドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081332
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ブッシング及び電界緩和シールドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/04 20060101AFI20240611BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20240611BHJP
   H01B 17/24 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H01F27/04 B
H01F27/36 120
H01B17/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194867
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】華表 宏隆
(72)【発明者】
【氏名】小薗 秀明
(72)【発明者】
【氏名】田中 克征
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 禎弥
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 博雅
【テーマコード(参考)】
5E058
5E059
5G331
【Fターム(参考)】
5E058CC03
5E058CC05
5E059JM03
5E059JM08
5G331AA08
5G331BA01
5G331BB24
5G331CA04
5G331DA04
5G331EB09
(57)【要約】
【課題】電界緩和シールドの製造時における加工を容易に行えるようにすること。
【解決手段】ブッシング(10)は、中心導体(11)を囲う位置に設けられる電界緩和シールド(20)を備えている。電界緩和シールドは、網状部材を筒状として形成され、中心軸方向が中心導体の延出方向に平行に設けられるシールド本体(21)と、シールド本体の中心軸方向両側に設けられてループ状に形成される端部形成体(22)とを有している。端部形成体は、シールド本体の中心軸方向に平行に形成されてシールド本体が接続される接続面部(22a)と、接続面部に連なって前記ループの延出方向に直交する断面が円弧状に形成される補強面部(22b)とを備えている。接続面部の補強面部と反対側の端部には切欠部(22c)が形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に延出する中心導体と、前記中心導体の外周に形成された絶縁部と、前記絶縁部に埋設され、且つ、前記中心導体を囲う位置に設けられる電界緩和シールドと、を備えたブッシングであって、
前記電界緩和シールドは、網状部材を筒状として形成され、中心軸方向が前記中心導体の延出方向に平行に設けられるシールド本体と、前記シールド本体の中心軸方向両側に設けられてループ状に形成される端部形成体とを有し、
前記端部形成体は、前記シールド本体の中心軸方向に平行に形成されて前記シールド本体が接続される接続面部と、前記接続面部に連なって前記ループの延出方向に直交する断面が円弧状に形成される補強面部とを備え、
前記接続面部の前記補強面部と反対側の端部に切欠部が形成されることを特徴とするブッシング。
【請求項2】
所定方向に延出する中心導体と、前記中心導体の外周に形成された絶縁部と、前記絶縁部に埋設され、且つ、前記中心導体を囲う位置に設けられる電界緩和シールドと、を備えたブッシングであって、
前記電界緩和シールドは、網状部材を筒状として形成され、中心軸方向が前記中心導体の延出方向に平行に設けられるシールド本体と、前記シールド本体の中心軸方向両側に設けられてループ状に形成される端部形成体とを有し、
前記端部形成体は、前記シールド本体の中心軸方向に平行に形成されて前記シールド本体が接続される接続面部と、前記接続面部に連なって前記ループの延出方向に直交する断面が円弧状に形成される補強面部とを備え、
前記補強面部の前記接続面部と反対側の端部に切欠部が形成されることを特徴とするブッシング。
【請求項3】
前記切欠部は、周方向に複数形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブッシング。
【請求項4】
所定方向に延出する中心導体と、前記中心導体の外周に形成された絶縁部と、前記絶縁部に埋設され、且つ、前記中心導体を囲う位置に設けられる電界緩和シールドと、を備えたブッシングであって、
前記電界緩和シールドは、網状部材を筒状として形成され、中心軸方向が前記中心導体の延出方向に平行に設けられるシールド本体と、前記シールド本体の中心軸方向両側に設けられてループ状に形成される端部形成体とを有し、
前記端部形成体は、前記シールド本体の中心軸方向に平行な筒状に形成されて前記シールド本体が接続される接続面部と、内周面にて前記接続面部の中心軸方向一端側が接合されるループ状の補強部とを備えていることを特徴とするブッシング。
【請求項5】
請求項1に記載の電界緩和シールドの製造方法であって、
長方形状をなす単一の板状部材の第1長辺及び第2長辺のうち、前記第1長辺に前記切欠部を形成する切欠部形成工程と、
前記切欠部形成工程の後、前記板状部材の前記第2長辺を含む領域を曲げ加工して前記補強面部を形成する補強面部形成工程と、
前記補強面部形成工程の後、前記板状部材をループ状に形成して前記端部形成体とするループ形成工程と、
前記ループ形成工程の後、前記端部形成体と前記シールド本体とを接続する接続工程とを実施することを特徴とする電界緩和シールドの製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載の電界緩和シールドの製造方法であって、
長方形状をなす単一の板状部材の第1長辺及び第2長辺のうち、前記第2長辺に前記切欠部を形成する切欠部形成工程と、
前記切欠部形成工程の後、前記板状部材の前記第2長辺を含む領域を曲げ加工して前記補強面部を形成する補強面部形成工程と、
前記補強面部形成工程の後、前記板状部材をループ状に形成して前記端部形成体とするループ形成工程と、
前記ループ形成工程の後、前記端部形成体に前記シールド本体を接続する接続工程とを実施することを特徴とする電界緩和シールドの製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の電界緩和シールドの製造方法であって、
ループ状の前記補強部の内周面に、筒状に形成された前記接続面部の中心軸方向一端側を接合して前記端部形成体とする接合工程と、
前記接合工程と前後して、前記端部形成体に前記シールド本体を接続する接続工程とを実施することを特徴とする電界緩和シールドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブッシング及び電界緩和シールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、変圧器や開閉器に用いられる注形ブッシングが開示されている。かかる注形ブッシングは、中心導体と、中心導体の周囲に注形樹脂により成形した絶縁部と、絶縁部の内部に中心導体と同心状に埋設された電界緩和電極とを備えている。電界緩和電極は、金網を円筒状に形成した円筒部の両端に板材を円弧状断面に成形したリング状の端部電極がロー付けされて構成される(同文献の図5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-256847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、端部電極の製造にて、直線方向に延出した部材から曲げ加工してリング状に成形したり円弧状断面に成形したりする工程が行われる。この工程にて、端部電極に引っ張り力や圧縮力が作用して大きな応力が発生し、曲げ加工が困難になる、という問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電界緩和シールドの製造時における加工を容易に行うことができるブッシング及び電界緩和シールドの製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における一態様のブッシングは、所定方向に延出する中心導体と、前記中心導体の外周に形成された絶縁部と、前記絶縁部に埋設され、且つ、前記中心導体を囲う位置に設けられる電界緩和シールドと、を備えたブッシングであって、前記電界緩和シールドは、網状部材を筒状として形成され、中心軸方向が前記中心導体の延出方向に平行に設けられるシールド本体と、前記シールド本体の中心軸方向両側に設けられてループ状に形成される端部形成体とを有し、前記端部形成体は、前記シールド本体の中心軸方向に平行に形成されて前記シールド本体が接続される接続面部と、前記接続面部に連なって前記ループの延出方向に直交する断面が円弧状に形成される補強面部とを備え、前記接続面部の前記補強面部と反対側の端部に切欠部が形成されることを特徴とする。
本発明における一態様となる前記電界緩和シールドの製造方法は、長方形状をなす単一の板状部材の第1長辺及び第2長辺のうち、前記第1長辺に前記切欠部を形成する切欠部形成工程と、前記切欠部形成工程の後、前記板状部材の前記第2長辺を含む領域を曲げ加工して前記補強面部を形成する補強面部形成工程と、前記補強面部形成工程の後、前記板状部材をループ状に形成して前記端部形成体とするループ形成工程と、前記ループ形成工程の後、前記端部形成体と前記シールド本体とを接続する接続工程とを実施することを特徴とする。
【0007】
また、本発明における一態様のブッシングは、所定方向に延出する中心導体と、前記中心導体の外周に形成された絶縁部と、前記絶縁部に埋設され、且つ、前記中心導体を囲う位置に設けられる電界緩和シールドと、を備えたブッシングであって、前記電界緩和シールドは、網状部材を筒状として形成され、中心軸方向が前記中心導体の延出方向に平行に設けられるシールド本体と、前記シールド本体の中心軸方向両側に設けられてループ状に形成される端部形成体とを有し、前記端部形成体は、前記シールド本体の中心軸方向に平行に形成されて前記シールド本体が接続される接続面部と、前記接続面部に連なって前記ループの延出方向に直交する断面が円弧状に形成される補強面部とを備え、前記補強面部の前記接続面部と反対側の端部に切欠部が形成されることを特徴とする。
本発明における一態様となる前記電界緩和シールドの製造方法は、長方形状をなす単一の板状部材の第1長辺及び第2長辺のうち、前記第2長辺に前記切欠部を形成する切欠部形成工程と、前記切欠部形成工程の後、前記板状部材の前記第2長辺を含む領域を曲げ加工して前記補強面部を形成する補強面部形成工程と、前記補強面部形成工程の後、前記板状部材をループ状に形成して前記端部形成体とするループ形成工程と、前記ループ形成工程の後、前記端部形成体に前記シールド本体を接続する接続工程とを実施することを特徴とする。
【0008】
更に、本発明における一態様のブッシングは、所定方向に延出する中心導体と、前記中心導体の外周に形成された絶縁部と、前記絶縁部に埋設され、且つ、前記中心導体を囲う位置に設けられる電界緩和シールドと、を備えたブッシングであって、前記電界緩和シールドは、網状部材を筒状として形成され、中心軸方向が前記中心導体の延出方向に平行に設けられるシールド本体と、前記シールド本体の中心軸方向両側に設けられてループ状に形成される端部形成体とを有し、前記端部形成体は、前記シールド本体の中心軸方向に平行な筒状に形成されて前記シールド本体が接続される接続面部と、内周面にて前記接続面部の中心軸方向一端側が接合されるループ状の補強部とを備えていることを特徴とする。
本発明における一態様となる前記電界緩和シールドの製造方法は、ループ状の前記補強部の内周面に、筒状に形成された前記接続面部の中心軸方向一端側を接合して前記端部形成体とする接合工程と、前記接合工程と前後して、前記端部形成体に前記シールド本体を接続する接続工程とを実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、補強面部の端部に切欠部を形成したり、筒状の接続面部にループ状の補強部を接合したりしている。これにより、補強面部をループ状に曲げ加工する際に発生する応力を抑制したり、接続面部と補強部との接合により曲げ加工をなくすことができ、加工の容易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係るブッシング及びその周辺構造の概略縦断面図である。
図2】第1の実施の形態に係る電界緩和シールドの片側断面図である。
図3図3A及び図3Bは、第1の実施の形態の切欠部形成工程の説明図、図3C及び図3Dは、第1の実施の形態の補強面部形成工程の説明図、図3Eは、第1の実施の形態のループ形成工程の説明図である。
図4図4Aは、第2の実施の形態に係る電界緩和シールドの片側断面図、図4Bは、第2の実施の形態の切欠部形成工程の説明図、図4C及び図4Dは、第2の実施の形態の補強面部形成工程の説明図、図4Eは、第2の実施の形態のループ形成工程の説明図である。
図5図5Aは、第3の実施の形態に係る電界緩和シールドの片側断面図、図5Bは、図5Aの分解図である。
図6】第4の実施の形態に係る電界緩和シールドの片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るブッシングについて、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施することができるものである。以下の図においては、説明の便宜上、一部の構成を省略することがある。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係るブッシング及びその周辺構造の概略縦断面図である。図1に示すように、ブッシング10は、開閉装置や変圧器等の電力機器(不図示)にて、筐体や仕切り等を構成する金属板1に形成された穴2に貫通して装着される。特に限定されるものでないが、図1の構成では、穴2の内周面がテーパ面状に形成されている。金属板1においては接地電位とされる。
【0013】
ブッシング10は、所定方向(図1中上下方向)に延出する中心導体11と、中心導体11の外周に形成された絶縁部12と、を備えている。中心導体11は、概略円柱状に形成され、図1中上下両端に高圧導体(不図示)の端部がねじ構造等を介して連結される。
【0014】
絶縁部12は、絶縁性を有する樹脂により注型成形等によって成形される。絶縁部12は、フランジ部13を備えた形状に設けられ、フランジ部13が金属板1の厚さ方向一方の面に接触した状態でボルト止め等により固定される。
【0015】
ブッシング10は、絶縁部12に埋設される電界緩和シールド20を更に備えている。電界緩和シールド20は、中心導体11を囲う位置に設けられ、更に述べると、中心軸方向が図1中上下方向に向けられる円筒形状をなし、中心導体11と同一の中心軸に設けられる。電界緩和シールド20は、金属板1における穴2の内周縁と中心導体11との間を跨ぐ位置に埋設される。また、電界緩和シールド20は、不図示の接続構造によって金属板1に電気的に接続され、金属板1と同電位の接地電位とされる。これにより、穴2の内周縁と、その近傍の絶縁部12の表面との間で電界が集中することを緩和してブッシング10として良好な絶縁性能を発揮するようになる。
【0016】
電界緩和シールド20は、中心導体11と同一の中心軸となる円筒状を呈するよう形成されたシールド本体21を備えている。シールド本体21の中心軸方向は、図1上下方向に向けられ、中心導体11の延出方向に平行に設けられる。
【0017】
図2は、第1の実施の形態に係る電界緩和シールドの片側断面図である。図2に示すように、シールド本体21は、網状部材Nを用いて構成される。
【0018】
電界緩和シールド20は、シールド本体21の中心軸方向(図2中上下方向)両側にそれぞれ設けられる端部形成体22を更に有している。端部形成体22は、中心軸方向から見て、円形となってループ状に形成される。端部形成体22及びシールド本体21は、銅やアルミニウム等の金属材によって構成される。
【0019】
端部形成体22は、前記ループの延出方向に直交する断面にて、図2中上下方向に直線的に延出する接続面部22aと、円弧状に形成される補強面部22bとを備えている。
【0020】
接続面部22aは、図2中上下方向(シールド本体21の中心軸方向)に平行に延出して形成され、また、中心軸方向から見て円形となって円筒形状となり、厚さ方向一方に円筒内周面、厚さ方向他方に円筒外周面を形成する。接続面部22aの円筒外周面側には、シールド本体21の中心軸方向の端部が接続される。かかる接続は、接続面部22aとシールド本体21とが電気的に導通するよう、ロー付けや半田付け等によって行われる。
【0021】
ここで、接続面部22aにて、上下方向両端部のうち、補強面部22bが連なる端部を基端部とし、補強面部22bと反対側の端部を先端部とする。接続面部22aの先端部を含む領域には、複数の切欠部22cが形成される。複数の切欠部22cは、円筒形状をなす接続面部22aの周方向に所定間隔毎に形成されている。各切欠部22cは、接続面部22aの先端部にて開放しつつ接続面部22aと補強面部22bとの境界位置付近まで延びる上下方向に細長い形状に形成されている。
【0022】
補強面部22bにて、断面で円弧状に延出する方向の両端部のうち、接続面部22aが連なる端部を基端部とし、接続面部22aと反対側の端部を先端部とする。補強面部22bは、基端部から外側に向かって丸まるように延出し、先端部が接続面部22aの円筒外周面に対向するように形成される。よって、補強面部22bは、パイプ状に形成されて端部形成体22全体の剛性向上を図っている。
【0023】
続いて、第1の実施の形態における電界緩和シールド20の製造方法について、図2に加えて図3を参照して、以下に説明する。かかる製造方法は、切欠部形成工程、補強面部形成工程、ループ形成工程、接続工程の順に実施する。なお、電界緩和シールド20は、2つの端部形成体22が同一構成とされるので、切欠部形成工程、補強面部形成工程、ループ形成工程においては、1つの端部形成体22の製造方法について説明する。
【0024】
図3A及び図3Bは、第1の実施の形態の切欠部形成工程の説明図である。図3Aに示すように、切欠部形成工程は、電界緩和シールド20の端部形成体22を製造するため、平面形状が長方形状をなす単一の板状部材30を用意する。板状部材30は第1長辺31及び第2長辺32を備えた形状とされ、図3Bに示すように、第1長辺31に所定間隔毎に複数の切欠部22cを形成する。切欠部22cの形成は、切削加工やレーザ加工、切欠部22cの形状に応じた切断刃によるプレス加工を行う他、図3Aに示す板状部材30を用意せずに図3Bに示す形状の切断刃によるプレス加工を行うことが例示できる。
【0025】
切欠部形成工程の実施後、図3Bに示す板状部材30から図3C及び図3Dに示す補強面部22bを形成する補強面部形成工程が実施される。図3C及び図3Dは、第1の実施の形態の補強面部形成工程の説明図であり、図3Dは、図3CのA-A線断面図である。
【0026】
補強面部形成工程は、板状部材30の第2長辺32を含む図3Bの概ね上半部領域を曲げ加工する。この曲げ加工によって、図3C及び図3Dに示すように、中心軸が直線方向に延出するパイプ状の補強面部22bが形成される。なお、板状部材30にて複数の切欠部22cが形成された領域は、補強面部形成工程ではフラットな形状が維持される。
【0027】
補強面部形成工程の実施後、図3Cに示す板状部材30から図3Eに示す端部形成体22を形成するループ形成工程が実施される。図3Eは、第1の実施の形態のループ形成工程の説明図である。
【0028】
ループ形成工程は、図3Cに示す板状部材30を曲げ加工し、板状部材30の長手方向両側の端部が相互に突き合うように円形のループ状に形成する。この曲げ加工によって、図3Eにて上下方向に中心軸が向けられる円筒状の接続面部22aが形成され、接続面部22aの径方向外側に補強面部22bが配置されるループ状の端部形成体22が形成される。
【0029】
ループ部形成工程の実施後、図3Eに示す端部形成体22とシールド本体21とを接続する接続工程が実施される。接続工程は、上述のように形成した2つの端部形成体22を同一中心軸上に並べて配置してから、図2に示すように接続面部22aの円筒外周面に網状部材Nを巻き付け、接続面部22aと網状部材Nとをロー付けや半田付け等によって固定する。これにより、円筒状を呈するようにシールド本体21を形成しつつ、シールド本体21の中心軸方向両側それぞれに端部形成体22が接続されて電界緩和シールド20の製造が完了する。
【0030】
なお、接続工程は、予め網状部材Nによりシールド本体21が円筒状を呈する形成した後、該シールド本体21の中心軸方向両側それぞれに端部形成体22をロー付け等によって固定してもよい。
【0031】
以上のように、上記第1の実施の形態によれば、接続面部22aに切欠部22cを形成したので、ループ部形成工程にて板状部材30をループ状に形成するときに、接続面部22aに発生する応力を抑制することができる。これにより、端部形成体22を形成するための曲げ加工の容易化を図ることができ、ひいては、製造時間の短縮化や、加工精度、歩留まりの向上を実現することができる。
【0032】
しかも、電界緩和シールド20にて、端部形成体22の外周面にシールド本体21が接続され、端部形成体22の内周面にシールド本体21が突出しない構成となるので、端部形成体22の内方での電界集中を抑制できる。これにより、端部形成体22における高い絶縁性能を実現することができる。
【0033】
続いて、本発明の前記以外の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、説明する実施の形態より前に記載された実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0034】
[第2の実施の形態]
本発明の第2の実施の形態について図4を参照して説明する。図4Aは、第2の実施の形態に係る電界緩和シールドの片側断面図である。図4Aに示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態の切欠部22cを形成せず、補強面部22bに複数の切欠部22dを形成している。
【0035】
第2の実施の形態において、複数の切欠部22dは、ループ状をなす補強面部22bの周方向に所定間隔毎に形成されている。各切欠部22dは、補強面部22bの先端部にて開放しつつ補強面部22bと接続面部22aとの境界位置付近まで延びる形状に形成されている。
【0036】
図4Bは、第2の実施の形態の切欠部形成工程の説明図、図4C及び図4Dは、第2の実施の形態の補強面部形成工程の説明図、図4Eは、第2の実施の形態のループ形成工程の説明図である。第2の実施の形態における電界緩和シールド20の製造方法においても、切欠部形成工程、補強面部形成工程、ループ形成工程、接続工程の順に実施する。
【0037】
図4Bに示すように、切欠部形成工程は、板状部材30の第2長辺32に所定間隔毎に複数の切欠部22dを形成する。補強面部形成工程は、複数の切欠部22dが形成された第2長辺32を含む板状部材30の図4B中概ね上半部領域を曲げ加工し、図4C及び図4Dに示すように、中心軸が直線方向に延出するパイプ状の補強面部22bを形成する。ループ形成工程は、図4Cに示す板状部材30を曲げ加工することで、図4Eに示すループ状の端部形成体22を形成する。接続工程は、図4Eに示す端部形成体22とシールド本体21とを接続する。
【0038】
上記第2の実施の形態によれば、補強面部22bに切欠部22cを形成したので、ループ部形成工程にて板状部材30をループ状に形成するときに、補強面部22bに発生する応力を抑制することができる。これにより、端部形成体22を形成するための曲げ加工の容易化を図ることができ、ひいては、製造時間の短縮化や、加工精度、歩留まりの向上を実現することができる。
【0039】
[第3の実施の形態]
本発明の第3の実施の形態について図5を参照して説明する。図5Aは、第3の実施の形態に係る電界緩和シールドの片側断面図であり、図5Bは、図5Aの分解図である。図5Aに示すように、第3の実施の形態では、端部形成体25が接続面部25aと補強部25bとを接合して構成される。
【0040】
第3の実施の形態において、端部形成体25の接続面部25aは、図5A中上下方向(シールド本体21の中心軸方向)に平行な筒状に形成され、且つ、中心軸方向から見て円形に形成される。よって、接続面部25aは、円筒部材によって構成され、厚さ方向一方に円筒内周面、厚さ方向他方に円筒外周面を形成する。接続面部25aの円筒外周面側には、シールド本体21の中心軸方向の端部がロー付け等によって接続される(接続工程)。
【0041】
第3の実施の形態における端部形成体25の補強部25bは、シールド本体21の中心軸方向から見て円形となるループ状の部材によって構成される。補強部25bは、ループの延出方向に直交する断面形状が円形に形成され、本実施の形態では中実部材としたが、中空部材としてもよい。
【0042】
端部形成体25は、別部材となる接続面部25a及び補強部25bを接合して構成される。更に述べると、ループ状の補強部25bの内周面に、筒状に形成された接続面部25aの中心軸方向一端側をロー付け等によって接合して端部形成体25を形成している(接合工程)。かかる接合に前後して、端部形成体25にシールド本体21を接続する接続工程が実施される。
【0043】
上記第3の実施の形態によれば、円筒部材によって構成される接続面部25aと、ループ状部材からなる補強部25bとを接合しているので、端部形成体25の製造にて曲げ加工をなくすことができる。これにより、端部形成体25の製造の容易化を図ることができ、ひいては、製造時間の短縮化や歩留まりの向上を実現することができる。また、接続面部25a及び補強部25bの内周面は滑らかな曲面に形成されるので、端部形成体25の内方での電界集中を抑制でき、端部形成体25における高い絶縁性能を実現することができる。
【0044】
[第4の実施の形態]
本発明の第4の実施の形態について図6を参照して説明する。図6は、第4の実施の形態に係る電界緩和シールドの片側断面図である。図6に示すように、第4の実施の形態では、端部形成体27がシールド本体21の中心軸方向から見て円形となるループ状の部材によって構成される。
【0045】
端部形成体27は、第3の実施の形態における補強部25bを切り欠いたような形状を有する。具体的には、端部形成体27は、電界緩和シールド20全体の上端面及び下端面を形成し、ループの延出方向に直交する断面形状が半円形状となる半円状部27aと、半円状部27aの内周側に連なる延長部27bとを備えている。
【0046】
延長部27bの外周面は、半円状部27aを形成する平坦面と直交するよう形成される。延長部27bの外周面と半円状部27aの平坦面とに跨って、シールド本体21の両端側が折り曲げられた状態でロー付け等によって接続される。延長部27bの内周面は、半円状部27aの外周面と連なり、該半円状部27aの外周面により形成される滑らかな曲面を図6中上下方向に拡大するよう形成される。よって、第4の実施の形態においても、端部形成体27の内周面での電界集中を抑制でき、端部形成体27における高い絶縁性能を実現することができる。
【0047】
上記第4の実施の形態によれば、端部形成体27が単一のループ状の部材によって構成されるので、端部形成体27の製造にて曲げ加工をなくすことができ、端部形成体25の製造の容易化を図ることができる。
【0048】
なお、本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0049】
上記第1及び第2の実施の形態では、端部形成体22に切欠部22c、22dを形成したが、かかる切欠部22c、22dの形成数や、幅及び長さを含む形状は、図示構成例に限定されるものでなく変更してもよい。例えば、端部形成体22の厚さや大きさに応じて曲げ加工での応力集中を緩和することが可能であれば、切欠部22c、22dの幅を小さくしたり、1つの端部形成体22あたりの切欠部22c、22dの形成数を1つとしてもよい。
【0050】
また、端部形成体22においては、第1の実施の形態の切欠部22cと、第2の実施の形態の切欠部22dとの両方を形成してもよい。両方の切欠部22c、22dを形成する端部形成体22では、切欠部22c、22dの長さや周方向の位置を適宜調整して端部形成体22全体としての剛性を確保するとよい。
【符号の説明】
【0051】
10 :ブッシング
11 :中心導体
12 :絶縁部
20 :電界緩和シールド
21 :シールド本体
22 :端部形成体
22a :接続面部
22b :補強面部
22c :切欠部
22d :切欠部
25 :端部形成体
25a :接続面部
25b :補強部
30 :板状部材
31 :第1長辺
32 :第2長辺
N :網状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6