(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081335
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】騒音予測方法
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20240611BHJP
G01H 3/00 20060101ALI20240611BHJP
G01M 13/045 20190101ALI20240611BHJP
【FI】
G01M17/02
G01H3/00 A
G01M13/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194870
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶原 晃平
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA14
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB15
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】タイヤ由来の車内騒音を精度良く予測する。
【解決手段】タイヤ由来の車内騒音を予測する騒音予測方法において、タイヤが転動したときのタイヤ軸振動及びタイヤ周囲の仮想音源位置におけるタイヤ音をそれぞれ数値解析により求め、前記タイヤ軸振動とそれに由来する車内騒音との伝達関数である第1伝達関数と、前記仮想音源位置におけるタイヤ音とそれに由来する車内騒音との伝達関数である第2伝達関数とをそれぞれ取得し、前記数値解析により求まった前記タイヤ軸振動と前記第1伝達関数とから構造伝播による車内騒音である構造伝播騒音を算出し、前記数値解析により求まった前記仮想音源位置におけるタイヤ音と前記第2伝達関数とから空気伝播による車内騒音である空気伝播騒音を算出し、前記構造伝播騒音と前記空気伝播騒音とからタイヤ由来の車内騒音を算出する、騒音予測方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ由来の車内騒音を予測する騒音予測方法において、
タイヤが転動したときのタイヤ軸振動及びタイヤが転動したときのタイヤ周囲の仮想音源位置におけるタイヤ音をそれぞれ数値解析により求め、
前記タイヤ軸振動とそれに由来する車内騒音との伝達関数である第1伝達関数と、前記仮想音源位置におけるタイヤ音とそれに由来する車内騒音との伝達関数である第2伝達関数とをそれぞれ取得し、
前記数値解析により求まった前記タイヤ軸振動と前記第1伝達関数とから構造伝播による車内騒音である構造伝播騒音を算出し、
前記数値解析により求まった前記仮想音源位置におけるタイヤ音と前記第2伝達関数とから空気伝播による車内騒音である空気伝播騒音を算出し、
前記構造伝播騒音と前記空気伝播騒音とからタイヤ由来の車内騒音を算出する、騒音予測方法。
【請求項2】
前記タイヤ軸振動として、タイヤの接地部分から生じる振動であるタイヤパターン振動と、タイヤの非接地部分から生じる振動であるタイヤボディ振動とを数値解析により求め、
前記仮想音源位置におけるタイヤ音として、タイヤの接地部分から生じる音であるタイヤパターン音と、タイヤの非接地部分から生じる音であるタイヤボディ音とを数値解析により求め、
前記タイヤパターン振動及び前記タイヤボディ振動にそれぞれ前記第1伝達関数を掛けて前記構造伝播騒音を算出し、
前記タイヤパターン音及び前記タイヤボディ音にそれぞれ前記第2伝達関数を掛けて前記空気伝播騒音を算出する、
請求項1に記載の騒音予測方法。
【請求項3】
前記数値解析に用いるタイヤモデルとして、トレッドパターンのあるパターン付きタイヤモデルと、トレッドパターンのないノンパターンタイヤモデルとを準備し、
前記タイヤパターン音及び前記タイヤパターン振動を、前記パターン付きタイヤモデルを用いて算出し、
前記タイヤボディ音及び前記タイヤボディ振動を、前記ノンパターンタイヤモデルを用いて算出する、
請求項2に記載の騒音予測方法。
【請求項4】
前記タイヤ軸振動として、車両前後方向に延びるX軸、タイヤ軸と一致するY軸、上下方向に延びるZ軸の3つの軸のそれぞれの延長方向と、前記X軸及び前記Z軸をそれぞれ中心として回転する2つの方向との、5方向のタイヤ軸振動を前記数値解析により求め、
前記5方向の前記タイヤ軸振動にそれぞれ前記第1伝達関数を掛けることにより前記5方向の構造伝播騒音成分を算出し、前記5方向の前記構造伝播騒音成分を加算することにより前記構造伝播騒音を算出する、
請求項1に記載の騒音予測方法。
【請求項5】
前記仮想音源位置として、少なくともタイヤの踏み込み側、蹴り出し側、車両横方向外側の3つの位置が含まれ、
前記の少なくとも3つの前記仮想音源位置におけるタイヤ音にそれぞれ前記第2伝達関数を掛けることにより前記の少なくとも3つの前記仮想音源位置についての空気伝播騒音成分を算出し、少なくとも3つの前記仮想音源位置についての前記空気伝播騒音成分を加算することにより前記空気伝播騒音を算出する、
請求項1に記載の騒音予測方法。
【請求項6】
前記仮想音源位置として、さらに車両横方向内側の位置が含まれる、請求項5に記載の騒音予測方法。
【請求項7】
タイヤ接地端からの最短距離がタイヤ半径以下の範囲に前記仮想音源位置が設けられる、請求項5又は6に記載の騒音予測方法。
【請求項8】
前記タイヤ軸振動の種類として、タイヤの接地部分から生じる振動であるタイヤパターン振動と、タイヤの非接地部分から生じる振動であるタイヤボディ振動とを数値解析により求め、
前記仮想音源位置におけるタイヤ音の種類として、タイヤの接地部分から生じる音であるタイヤパターン音と、タイヤの非接地部分から生じる音であるタイヤボディ音とを数値解析により求め、
前記タイヤパターン振動及び前記タイヤボディ振動としてそれぞれ複数方向の振動を前記数値解析によりそれぞれ求め、複数方向の前記タイヤパターン振動及び複数方向の前記タイヤボディ振動にそれぞれ前記第1伝達関数を掛けることにより、振動の種類ごとかつ振動の方向ごとの騒音成分である構造伝播騒音成分を算出し、
前記仮想音源位置として複数位置が設けられ、複数の前記仮想音源位置における前記タイヤパターン音及び複数の前記仮想音源位置における前記タイヤボディ音にそれぞれ前記第2伝達関数を掛けることにより、タイヤ音の種類ごとかつ仮想音源位置ごとの騒音成分である空気伝播騒音成分を算出し、
車両に設けられた複数のタイヤのそれぞれについて、複数の前記構造伝播騒音成分及び複数の前記空気伝播騒音成分を算出し、
選択した騒音成分について消去又は強弱の処理を行いつつ複数の騒音成分を足すことにより前記車内騒音を計算する、
請求項1に記載の騒音予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は騒音予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の内部(車内)で聞こえるタイヤ由来の騒音を評価する方法として、人による官能評価が行われている。しかし、官能評価のためには、実際の車両を走行させる必要がある、評価対象のタイヤを製造する必要がある、タイヤを製造するための金型を製作する必要がある、等の問題がある。
【0003】
そこで特許文献1に記載のように、有限要素解析により予測したタイヤ車軸力と、選択した伝達特性とからタイヤ車軸力に基づく車内騒音を予測するとともに、境界要素解析により予測した車外騒音と、選択した車体遮音特性とから車外騒音に基づく車内騒音を予測することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車外騒音の車内への伝達には、車体の遮音以外の要素、例えばタイヤ周囲の所定位置から車体までの空気中の音の伝播や、車体から搭乗者の耳までの空気中の音の伝播も影響する。そのため、車外騒音に基づく車内騒音を予測するにあたり、車体の遮音特性のみを考慮する方法では、タイヤ由来の車内騒音を精度良く予測することができない。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、タイヤ由来の車内騒音を精度良く予測する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0008】
[1]タイヤ由来の車内騒音を予測する騒音予測方法において、タイヤが転動したときのタイヤ軸振動及びタイヤが転動したときのタイヤ周囲の仮想音源位置におけるタイヤ音をそれぞれ数値解析により求め、前記タイヤ軸振動とそれに由来する車内騒音との伝達関数である第1伝達関数と、前記仮想音源位置におけるタイヤ音とそれに由来する車内騒音との伝達関数である第2伝達関数とをそれぞれ取得し、前記数値解析により求まった前記タイヤ軸振動と前記第1伝達関数とから構造伝播による車内騒音である構造伝播騒音を算出し、前記数値解析により求まった前記仮想音源位置におけるタイヤ音と前記第2伝達関数とから空気伝播による車内騒音である空気伝播騒音を算出し、前記構造伝播騒音と前記空気伝播騒音とからタイヤ由来の車内騒音を算出する、騒音予測方法。
【0009】
[2]前記タイヤ軸振動として、タイヤの接地部分から生じる振動であるタイヤパターン振動と、タイヤの非接地部分から生じる振動であるタイヤボディ振動とを数値解析により求め、前記仮想音源位置におけるタイヤ音として、タイヤの接地部分から生じる音であるタイヤパターン音と、タイヤの非接地部分から生じる音であるタイヤボディ音とを数値解析により求め、前記タイヤパターン振動及び前記タイヤボディ振動にそれぞれ前記第1伝達関数を掛けて前記構造伝播騒音を算出し、前記タイヤパターン音及び前記タイヤボディ音にそれぞれ前記第2伝達関数を掛けて前記空気伝播騒音を算出する、[1]に記載の騒音予測方法。
【0010】
[3]前記数値解析に用いるタイヤモデルとして、トレッドパターンのあるパターン付きタイヤモデルと、トレッドパターンのないノンパターンタイヤモデルとを準備し、前記タイヤパターン音及び前記タイヤパターン振動を、前記パターン付きタイヤモデルを用いて算出し、前記タイヤボディ音及び前記タイヤボディ振動を、前記ノンパターンタイヤモデルを用いて算出する、[2]に記載の騒音予測方法。
【0011】
[4]前記タイヤ軸振動として、車両前後方向に延びるX軸、タイヤ軸と一致するY軸、上下方向に延びるZ軸の3つの軸のそれぞれの延長方向と、前記X軸及び前記Z軸をそれぞれ中心として回転する2つの方向との、5方向のタイヤ軸振動を前記数値解析により求め、前記5方向の前記タイヤ軸振動にそれぞれ前記第1伝達関数を掛けることにより前記5方向の構造伝播騒音成分を算出し、前記5方向の前記構造伝播騒音成分を加算することにより前記構造伝播騒音を算出する、[1]~[3]のいずれかに記載の騒音予測方法。
【0012】
[5]前記仮想音源位置として、少なくともタイヤの踏み込み側、蹴り出し側、車両横方向外側の3つの位置が含まれ、前記の少なくとも3つの前記仮想音源位置におけるタイヤ音にそれぞれ前記第2伝達関数を掛けることにより前記の少なくとも3つの前記仮想音源位置についての空気伝播騒音成分を算出し、少なくとも3つの前記仮想音源位置についての前記空気伝播騒音成分を加算することにより前記空気伝播騒音を算出する、[1]~[4]のいずれかに記載の騒音予測方法。
【0013】
[6]前記仮想音源位置として、さらに車両横方向内側の位置が含まれる、[5]に記載の騒音予測方法。
【0014】
[7]タイヤ接地端からの最短距離がタイヤ半径以下の範囲に前記仮想音源位置が設けられる、[5]又は[6]に記載の騒音予測方法。
【0015】
[8]前記タイヤ軸振動の種類として、タイヤの接地部分から生じる振動であるタイヤパターン振動と、タイヤの非接地部分から生じる振動であるタイヤボディ振動とを数値解析により求め、前記仮想音源位置におけるタイヤ音の種類として、タイヤの接地部分から生じる音であるタイヤパターン音と、タイヤの非接地部分から生じる音であるタイヤボディ音とを数値解析により求め、前記タイヤパターン振動及び前記タイヤボディ振動としてそれぞれ複数方向の振動を前記数値解析によりそれぞれ求め、複数方向の前記タイヤパターン振動及び複数方向の前記タイヤボディ振動にそれぞれ前記第1伝達関数を掛けることにより、振動の種類ごとかつ振動の方向ごとの騒音成分である構造伝播騒音成分を算出し、前記仮想音源位置として複数位置が設けられ、複数の前記仮想音源位置における前記タイヤパターン音及び複数の前記仮想音源位置における前記タイヤボディ音にそれぞれ前記第2伝達関数を掛けることにより、タイヤ音の種類ごとかつ仮想音源位置ごとの騒音成分である空気伝播騒音成分を算出し、車両に設けられた複数のタイヤのそれぞれについて、複数の前記構造伝播騒音成分及び複数の前記空気伝播騒音成分を算出し、選択した騒音成分について消去又は強弱の処理を行いつつ複数の騒音成分を足すことにより前記車内騒音を計算する、[1]~[7]のいずれかに記載の騒音予測方法。
【発明の効果】
【0016】
本実施形態によれば、タイヤ由来の車内騒音を精度良く予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】タイヤから車内への音の伝達経路について説明する図。
【
図3】第1伝達関数を取得する試験における車両を示す図。
【
図4】(a)はタイヤ取り付け面を上から見た図。(b)はタイヤ取り付け面にタイヤ及びホイールが取り付けられた様子を上から見た図。
【
図5】第1伝達関数を取得する試験で使用される加振治具の斜視図。(a)は加振方向として直交するXYZ方向を示す図。(b)は加振方向としてX軸を中心とする回転を生じさせるモーメントの方向を示す図。(c)は加振方向としてZ軸を中心とする回転を生じさせるモーメントの方向を示す図。
【
図6】第2伝達関数を取得する試験における車両を示す図。
【
図7】タイヤの方向について説明する図。(a)はタイヤを正面から見た図。(b)は(a)のタイヤの接地面を上から見た図。
【
図8】第1伝達関数を取得する変更例の試験における車両を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0019】
本実施形態においては、空気入りタイヤ(以下単に「タイヤ」とする)が路面を転動することに由来する車内騒音を予測する。以下において、車内騒音とは、車内における搭乗者の耳の位置における騒音のことを意味する。
【0020】
まず、タイヤから車内への音の伝達経路について、
図1に基づき説明する。タイヤが路面上で転動すると、そのことに起因するタイヤの振動(以下「タイヤ振動」とする)として、タイヤパターン振動及びタイヤボディ振動の2種類の振動が生じる。タイヤパターン振動とは、タイヤのトレッドのうち路面と接している部分の振動のことである。また、タイヤボディ振動とは、タイヤにおける路面と接していない部分(サイドウォールや、トレッドのうち路面と接していない部分等を含む部分)の振動のことである。タイヤパターン振動及びタイヤボディ振動は、車体に伝わって車体振動となる。車体振動は、騒音となって車内の搭乗者の耳に伝わる。
【0021】
また、タイヤが路面上で転動すると、そのことに起因する車外のタイヤ周囲のタイヤ音(「タイヤ音」とは、タイヤの転動に起因してタイヤから生じる音のことである)として、タイヤパターン音及びタイヤボディ音の2種類の音が生じる。タイヤパターン音とは、タイヤのトレッドのうち路面と接している部分が振動することにより生じる音のことである。また、タイヤボディ音とは、タイヤにおける路面と接していない部分(サイドウォールや、トレッドのうち路面と接していない部分等を含む部分)が振動することにより生じる音のことである。タイヤパターン音及びタイヤボディ音は、空気中を伝わって車内に浸透し、騒音となって車内の搭乗者の耳に伝わる。
【0022】
タイヤパターン振動及びタイヤボディ振動が、騒音として車内における搭乗者の耳にまで伝わることを構造伝播という。また、タイヤパターン音及びタイヤボディ音が、騒音として車内における搭乗者の耳にまで伝わることを空気伝播という。車内における搭乗者の耳に伝わる騒音は、構造伝播の騒音(「構造伝播騒音」とする)と空気伝播の騒音(「空気伝播騒音」とする)を合わせたものとなる。
【0023】
本実施形態の騒音予測方法は、
図2のフローチャートに従い実施される。まず、構造伝播の伝達関数である第1伝達関数が、試験により取得される(ステップS1)。ここで、タイヤパターン振動及びタイヤボディ振動は、タイヤの回転軸(以下「タイヤ軸」ともいう)に伝わるので、タイヤの回転軸の振動(以下「タイヤ軸振動」とする)の振動として測定することができる。そのため、本実施形態における構造伝播の伝達関数とは、タイヤ軸振動と、車内における搭乗者の耳の位置における騒音との関係を示す関数である。また、試験により取得するとは、実際のタイヤ及び車両を使用し実際の音等を測定することを通して取得することを意味する。
【0024】
次に、空気伝播の伝達関数である第2伝達関数が、試験により取得される(ステップS2)。ここで、空気伝播の伝達関数とは、車外におけるタイヤ周囲のタイヤ音と、車内における搭乗者の耳の位置における騒音との関係を示す関数である。
【0025】
次に、タイヤが路面上で転動するときのタイヤ軸振動が、数値解析により取得される(ステップS3)。本実施形態においては、タイヤ軸振動として、タイヤボディ振動由来の振動とタイヤパターン振動由来の振動がそれぞれ取得される。また、タイヤ軸振動を取得するための数値解析として、有限要素解析が実行される。
【0026】
次に、タイヤが路面上で転動するときの、車外におけるタイヤ周囲のタイヤ音が、数値解析により取得される(ステップS4)。本実施形態においては、タイヤ音として、タイヤボディ音とタイヤパターン音がそれぞれ取得される。また、タイヤ音を取得するための数値解析として、有限要素解析及び境界要素解析が実行される。
【0027】
次に、ステップS3にて取得されたタイヤ軸振動と、ステップS1にて取得された第1伝達関数を乗じて、構造伝播騒音が算出される(ステップS5)。ここで上記の通り、ステップS3において、タイヤ軸振動としてタイヤボディ振動とタイヤパターン振動がそれぞれ取得される。それらを利用して、構造伝播騒音として、タイヤボディ振動から生じる車内騒音とタイヤパターン振動から生じる車内騒音とがそれぞれ算出され、それらの車内騒音が加算されることにより、構造伝播騒音が算出される。
【0028】
次に、ステップS4にて取得されたタイヤ音と、ステップS2にて取得された第2伝達関数を乗じて、空気伝播騒音が算出される(ステップS6)。ここで上記の通り、ステップS4において、タイヤ音としてタイヤボディ音とタイヤパターン音がそれぞれ取得された。それらを利用して、空気伝播騒音として、タイヤボディ音から生じる車内騒音とタイヤパターン音から生じる車内騒音とがそれぞれ算出され、それらの車内騒音が加算されることにより、空気伝播騒音が算出される。
【0029】
次に、ステップS5にて算出された構造伝播騒音と、ステップS6にて算出された空気伝播騒音とを足して、タイヤ由来の車内騒音が算出される(ステップS7)。
【0030】
以上ステップS1~S7それぞれのステップの詳細について順に説明する。
【0031】
ステップS1では、上記の通り、タイヤ軸振動と車内騒音との関係を示す伝達関数であり、構造伝播の伝達関数である第1伝達関数が、試験により取得される。
【0032】
図3に示すように、この試験では、乗用車等の車両10と、車両10におけるタイヤ取り付け面(ホイール取り付け面ともいう)に取り付けられる加振治具11と、車両10の内部における搭乗者の耳の位置に配置されるマイク12と、収録されたデータに基づき伝達関数を求めるための解析装置(不図示)とが準備される。
【0033】
車両10は、評価対象のタイヤが実際に取り付けられる予定の車両、又はそのような車両と構造的に近い車両であることが好ましい。車両10には
図4(a)に示すタイヤ取り付け面15が存在する。走行時の車両10においては、
図4(b)に示すように、このタイヤ取り付け面15にタイヤ16及びホイール17が取り付けられる。また、
図3に示すように、車両10の内部には、ヘッドレスト19を備える複数のシート18が配置されている。
【0034】
図5に示すように、加振治具11は、円盤11aと、円盤11aの片面において円盤11aの中心から突出した軸部材11bとからなる。軸部材11bは、円盤11aの表面(後述する加振面)に対して垂直に延びている。円盤11aには、軸部材11bを中心に配置された複数の孔11cが形成されている。
【0035】
加振治具11は、車両10からタイヤ16及びホイール17を取り外したときに現れるタイヤ取り付け面15に、タイヤ16及びホイール17の代わりに取り付けられる。詳細には、車両10のタイヤ取り付け面15に、円盤11aにおける軸部材11bのない方の面が接触し、かつ、車両10のタイヤ取り付け面15から突出するボルト15a(ハブの周りのボルト)が円盤11aの孔11cに入るように、加振治具11が設けられる。そして、円盤11aを押さえるように前記ボルト15aにナットが締められることにより、加振治具11がタイヤ取り付け面15に固定される。
【0036】
タイヤ取り付け面15に固定された加振治具11において、円盤11a及び軸部材11bは試験者がハンマー等の加振器具で叩く加振部分となる。円盤11aについては、軸部材11bが設けられている方の面が、試験者がハンマー等の加振器具で叩く加振面となる。試験者が加振治具11を叩いて加振を行うことにより、タイヤ軸振動を生じさせることになる。
【0037】
タイヤ軸振動は、並進の自由度が3、回転の自由度が2の、5自由度を持つ。ここで、
図4及び
図5に示すように、車両10の前後方向をX方向、車両10の横方向(すなわちタイヤ軸方向)をY方向、上下方向をZ方向とする。そして、X方向に延びるX軸、Y方向に延びるY軸及びZ方向に延びるZ軸が、円盤11aと軸部材11bの接触位置において、互いに直交に交わることとする。
【0038】
試験者が、
図5(a)に矢印で示すように軸部材11bをX、Y、Zそれぞれの方向に叩くことにより、X、Y、Zそれぞれの方向への加振を行うことができる。これらの加振により、3自由度のタイヤ軸振動として、X、Y、Zそれぞれの方向への並進のタイヤ軸振動が生じる。
【0039】
また、試験者が、
図5(b)に矢印で示すように、円盤11aにおける上下の部分をそれぞれ叩くことにより、X軸を中心とする回転を生じさせるモーメントの方向の加振を行うことができる。また、試験者が、
図5(c)に矢印で示すように、円盤11aにおける前後の部分をそれぞれ叩くことにより、Z軸を中心とする回転を生じさせるモーメントの方向の加振を行うことができる。これらの加振により、2自由度のタイヤ軸振動として、X軸、Z軸それぞれを中心とする回転のタイヤ軸振動が生じる。
【0040】
なお、本実施形態では、車両10が一定速度で直進走行したときの車内騒音を評価する。車両10が一定速度で直進走行するとき、タイヤ回転方向の入力、つまりY軸を中心とした回転モーメントは一定と仮定できる。そのため、Y軸を中心とする回転を生じさせるモーメントについては、第1伝達関数を求めたり構造伝播騒音を求めたりするにあたり考慮する必要がない。
【0041】
マイク12は、音を検出する検出部(より詳細には、音により振動する部分)を有している。マイク12は、その検出部の位置が搭乗者の耳の位置になるように配置され、固定される。例えば、マイク12は、車両10のシート18のヘッドレスト19に対して固定される。
【0042】
マイク12の数は1つでも2つでも良い。マイク12の数が1つの場合は、そのマイク12の位置が搭乗者の左右の耳のうち窓側の耳の位置になるように、ヘッドレスト19の左右方向中央よりも窓側にマイク12が配置されることが好ましい。また、マイク12の数が2つの場合は、それらのマイク12の位置が搭乗者の左右の耳の位置になるように、ヘッドレスト19の左右方向中央よりも左右両側に同じ高さで2つのマイク12が配置されることが好ましい。
【0043】
解析装置は、入力のデータ(例えば本試験においては振動計により収録されたタイヤ軸振動のデータ)と出力のデータ(例えば本試験においてはマイク12により収録された音のデータ)に基づき、入力と出力の間の伝達関数を求めることのできる装置である。詳細には、解析装置は、入力のデータ及び出力のデータを高速フーリエ変換(Fast Fourier Transformation:FFT)により周波数成分に分解し、入力と出力の間の伝達関数を、周波数を独立変数とする関数として求める。
【0044】
試験者は、以上の準備を行ったうえで、5自由度のタイヤ軸振動(すなわち、3自由度を有する並進のタイヤ軸振動と、2自由度を有する回転のタイヤ軸振動)をそれぞれ生じさせる加振を行う。そして、1自由度の加振を行うたびに、タイヤ軸振動の収録と、マイク12による音の収録(録音)とが行われる。ここで、加振時のタイヤ軸振動の収録は、加振器具の振動を、加振器具に取り付けられた振動計(力センサ等)で測定することにより行われる。
【0045】
収録されたデータは解析装置に送られる。解析装置は、振動計により収録されたタイヤ軸振動のデータを入力、マイク12により収録された音のデータを出力として、入力と出力の間の伝達関数を求める。このとき、解析装置は、上記の通り入力のデータ及び出力のデータをFFT(Fast Fourier Transformation)により周波数成分に分解し、入力と出力の間の伝達関数を、周波数を独立変数とする関数として求める。このようにして求まるのが、タイヤ軸振動と車内騒音との関係を示す第1伝達関数である。
【0046】
第1伝達関数はタイヤ軸振動の1自由度ごとに求まるので、1つのタイヤ取り付け面15につき5つの第1伝達関数が求まる。5つの第1伝達関数とは、並進の第1伝達関数が3つと、回転の第1伝達関数が2つである。また、車両10には4つのタイヤ取り付け面15があり、試験者はそれら全てのタイヤ取り付け面15について第1伝達関数を取得する試験を行うので、合計で20の第1伝達関数が求まる。
【0047】
ステップS2では、上記の通り、車外におけるタイヤ周囲のタイヤ音と車内騒音との関係を示す伝達関数であり、空気伝播の伝達関数である第2伝達関数が、試験により取得される。
【0048】
図6に示すように、この試験では、乗用車等の車両10と、車両10のタイヤ周囲に配置された音源13と、車両10の内部における搭乗者の耳の位置に配置されたマイク12と、収録されたデータに基づき伝達関数を求めるための解析装置(不図示)とが準備される。
【0049】
音源13は、所定の周波数の音を発するものであり、例えば体積速度音源である。音源13はタイヤ周囲に配置される。タイヤ周囲とは、車外におけるタイヤの接地部分の周りのことである。
【0050】
音源13の具体的な位置(以下「音源位置」とする)は、タイヤの踏み込み側、蹴り出し側、正面側及び背面側の4つの位置である。
図7に示すように、踏み込み側は車両10の前進方向、蹴り出し側は踏み込み側の反対側、正面側は車両横方向外側、背面側は車両横方向内側(車両10の左右方向の中心線側)のことである。
【0051】
4つの音源位置はいずれも、タイヤ接地端からの最短距離がタイヤ半径(すなわちタイヤの外径の半分)以下であり、かつタイヤの接地面と同一面上である路面上にある。4つの詳細な音源位置を、車両10の進行方向をX方向(前進方向が+、後退方向が-)、タイヤ軸方向をY方向(車両横方向外側が+、車両横方向内側が-)、上下方向をZ方向(上が+、下が-)として説明する。
【0052】
まず、タイヤの踏み込み側の音源位置は、タイヤの踏み込み側の接地端からX方向(ただし+方向)へ所定距離離れた位置である。所定距離は、タイヤ半径(タイヤの外径の半分)以下の長さである。また、タイヤの踏み込み側の音源位置は、Y方向についてはタイヤ接地部分の中心で、Z方向へは0である。
【0053】
また、タイヤの蹴り出し側の音源位置は、タイヤの蹴り出し側の接地端からX方向(ただし-方向)へ所定距離離れた位置である。所定距離は、タイヤ半径(タイヤの外径の半分)以下の長さである。また、タイヤの蹴り出し側の音源位置は、Y方向についてはタイヤ接地部分の中心で、Z方向については0である。
【0054】
また、タイヤの正面側の音源位置は、タイヤの正面側の接地端からY方向(ただし+方向)へ所定距離離れた位置である。所定距離は、タイヤ半径(タイヤの外径の半分)以下の長さである。また、タイヤの正面側の音源位置は、X方向についてはタイヤ接地部分の中心で、Z方向については0である。
【0055】
また、タイヤの背面側の音源位置は、タイヤの背面側の接地端からY方向(ただし-方向)へ所定距離離れた位置である。所定距離は、タイヤ半径(タイヤの外径の半分)以下の長さである。また、タイヤの背面側の音源位置は、X方向についてはタイヤ接地部分の中心で、Z方向については0である。
【0056】
第2伝達関数を取得する試験においては、上記4つの音源位置から順に音が発せられる。そして、音源位置から音が発せられるたびにマイク12による音の収録(録音)が行われる。
【0057】
収録されたデータは解析装置に送られる。ステップS2において使用される解析装置は、ステップS1において使用された解析装置と同じである。解析装置は、音源13から発せられた音のデータを入力、マイク12により収録された音のデータを出力として、入力と出力の間の伝達関数を求める。このとき、解析装置は、入力のデータ及び出力のデータをFFTにより周波数成分に分解し、入力と出力の間の伝達関数を、周波数を独立変数とする関数として求める。このようにして求まるのが、タイヤ周囲のタイヤ音と車内騒音との関係を示す第2伝達関数である。
【0058】
第2伝達関数は音源位置ごとに求まるので、1つのタイヤにつき4つの第2伝達関数が求まる。また、車両10には4つのタイヤがあり、試験者はそれら全てのタイヤについて第2伝達関数を取得する試験を行うので、合計で16の第2伝達関数が求まる。
【0059】
ステップS3では、上記の通り、タイヤが路面上で転動するときのタイヤ軸振動が数値解析により取得される。
【0060】
そのために、まず、シミュレーション装置が準備される。シミュレーション装置は、処理部、記憶部、入力部及び表示部を含むコンピュータにより実現される。記憶部として、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等が設けられている。記憶部には、有限要素解析を実行するプログラム、境界要素解析を実行するプログラム、伝達関数を利用して車内騒音を予測するプログラム、解析等の対象となるタイヤモデル等が記憶される。
【0061】
処理部はCPU(Central Processing Unit)等で構成されている。処理部は、ROM等に記憶されているプログラムをRAM上に読み出して実行することにより、有限要素解析や境界要素解析等を実行する。入力部は、例えばマウス及びキーボードであり、解析者からの入力を受け付ける。表示部は、例えばディスプレイであり、入力画面や解析結果等を表示する。
【0062】
このシミュレーション装置に、パターン付きタイヤモデルと、ノンパターンタイヤモデルが取得される。パターン付きタイヤモデルは、多数の溝等からなるトレッドパターンが設けられたタイヤモデルである。また、ノンパターンタイヤモデルは、トレッドパターンが省略されたタイヤモデルである。ノンパターンタイヤモデルの外径面は1つの曲面である。
【0063】
パターン付きタイヤモデル及びノンパターンタイヤモデルは、有限要素法による解析の対象となる有限要素モデルであり、複数の要素にメッシュ分割されそれらの要素の頂点に節点を有するモデルである。各要素や各節点には、要素番号、節点番号、節点座標、物性値(例えば密度、ヤング率、ポアソン比、剛性等)等が設定されている。
【0064】
パターン付きタイヤモデル及びノンパターンタイヤモデルそれぞれにおいて、車両10におけるタイヤ取り付け面15の回転中心にあたる位置が、タイヤ軸振動を算出する位置として定義される。
【0065】
次に、シミュレーション装置における有限要素解析により、パターン付きタイヤモデルを路面上で転動させるシミュレーションが実行される。それにより、転動中のタイヤパターン振動と、そのタイヤパターン振動がタイヤ軸に伝わって生じるタイヤ軸振動が算出される。このとき算出されるタイヤ軸振動は、試験のときと同じ5自由度の振動である。これにより、タイヤパターン振動由来の5自由度のタイヤ軸振動が取得される。車両10には4つのタイヤが付いており、それぞれのタイヤについて、タイヤパターン振動由来のタイヤ軸振動が取得される。
【0066】
さらに、シミュレーション装置における有限要素解析により、ノンパターンタイヤモデルを路面上で転動させるシミュレーションが実行される。そして、転動中のタイヤボディ振動と、そのタイヤボディ振動がタイヤ軸に伝わって生じるタイヤ軸振動が算出される。このとき算出されるタイヤ軸振動は、試験のときと同じ5自由度の振動である。これにより、タイヤボディ振動由来の5自由度のタイヤ軸振動が取得される。車両10には4つのタイヤが付いており、それぞれのタイヤについて、タイヤボディ振動由来のタイヤ軸振動が取得される。
【0067】
このようにして取得されたタイヤパターン振動由来及びタイヤボディ振動由来のタイヤ軸振動は、第1伝達関数との計算に利用するために、シミュレーション装置においてFFTにより周波数成分に分解される。
【0068】
ステップS4では、上記の通り、タイヤが路面上で転動するときの、車外におけるタイヤ周囲のタイヤ音が、数値解析により取得される。
【0069】
ステップS4では、まず、ステップS3において使用されたものと同じシミュレーション装置が準備される。そして、ステップS3で使用されたものと同じパターン付きタイヤモデル及びノンパターンタイヤモデルがシミュレーション装置により取得される。また、第2伝達関数を取得するステップS2の試験のときのそれぞれの音源位置に、ステップS4のシミュレーションにおける仮想音源位置が設定される。
【0070】
次に、シミュレーション装置における有限要素解析により、パターン付きタイヤモデルを路面上で転動させるシミュレーションが実行される。それにより、転動中のパターン付きタイヤにおける、踏み込み側接地端(
図7(b)における符号1の位置から符号2の位置までの線)、蹴り出し側接地端(
図7(b)における符号3の位置から符号4の位置までの線)、正面側接地端(
図7(b)における符号4の位置から符号1の位置までの線)及び背面側接地端(
図7(b)における符号2の位置から符号3の位置までの線)の4つの接地端それぞれの振動が算出される。
【0071】
次に、シミュレーション装置における境界要素解析により、タイヤ周囲の踏み込み側、蹴り出し側、正面側及び背面側の4つの仮想音源位置での音が算出される。上記の通り、4つの仮想音源位置は、第2伝達関数を取得するステップS2の試験のときの音源位置と同じである。
【0072】
具体的には、有限要素解析により算出された踏み込み側接地端の振動に起因する空気の振動が境界要素解析により計算され、踏み込み側の仮想音源位置での音が算出される。同様に、蹴り出し側接地端の振動に起因する蹴り出し側の仮想音源位置での音、正面側接地端の振動に起因する正面側の仮想音源位置での音、及び、背面側接地端の振動に起因する背面側の仮想音源位置での音が、それぞれ算出される。
【0073】
これにより、パターン付きタイヤモデルが転動したときの、4つの仮想音源位置での音がそれぞれ算出される。このとき算出される音が、4つの仮想音源位置におけるそれぞれのタイヤパターン音である。
【0074】
また、シミュレーション装置における有限要素解析により、ノンパターンタイヤモデルを路面上で転動させるシミュレーションも実行される。そして、転動中のノンパターンタイヤにおける、接地部分を除く全表面の振動が算出される。すなわち、転動中のノンパターンタイヤにおける接地部分より上の全表面の振動が算出される。
【0075】
次に、シミュレーション装置における境界要素解析により、タイヤ周囲の踏み込み側、蹴り出し側、正面側及び背面側の4つの仮想音源位置での音が算出される。上記の通り、4つの仮想音源位置は、第2伝達関数を取得するステップS2の試験のときの音源位置と同じである。
【0076】
具体的には、有限要素解析により算出された、ノンパターンタイヤにおける接地部分以外の全表面の振動に起因する、ノンパターンタイヤの周囲の空気の振動が計算される。そして、その空気の振動による踏み込み側、蹴り出し側、正面側及び背面側の4つの仮想音源位置での音が、それぞれ算出される。これにより、ノンパターンタイヤモデルが転動したときの、4つの仮想音源位置での音がそれぞれ算出される。このとき算出される音が、4つの仮想音源位置におけるそれぞれのタイヤボディ音である。
【0077】
このようにして取得されたタイヤパターン音及びタイヤボディ音は、第2伝達関数との計算に利用するために、シミュレーション装置においてFFTにより周波数成分に分解される。
【0078】
ステップS5では、シミュレーション装置において、ステップS3にて取得されたタイヤ軸振動と、ステップS1にて取得された第1伝達関数とを乗じて、構造伝播により生じる車内騒音(構造伝播騒音)が算出される。ここで、ステップS3において取得されたタイヤ軸振動としてタイヤパターン振動とタイヤボディ振動があるため、それぞれに第1伝達関数を乗じる計算が行われる。すなわち、ステップS3において取得されたタイヤ軸振動のうち、タイヤパターン振動をXvp、タイヤボディ振動をXvbとすると、構造伝播騒音Qvは、第1伝達関数Hvを用いて次の[数1]の式により算出される。
【0079】
【数1】
ここで、第1伝達関数、タイヤパターン振動及びタイヤボディ振動はそれぞれ5自由度である。そして、構造伝播騒音のうちタイヤパターン振動に由来する成分と、タイヤボディ振動に由来する成分は、それぞれ、5つの自由度ごとに算出された成分が加算されることにより算出される。
【0080】
すなわち、5自由度の第1伝達関数をそれぞれHvx、Hvy、Hvz、Hvmx、Hvmzと表し(Hvx、Hvy、HvzはX、Y、Z方向への並進の第1伝達関数、Hvmx、HvmzはX、Z軸周りの回転の第1伝達関数)、5自由度のタイヤパターン振動をXvpx、Xvpy、Xvpz、Xvpmx、Xvpmz(Xvpx、Xvpy、XvpzはX、Y、Z方向への並進のタイヤパターン振動、Xvpmx、XvpmzはX、Z軸周りの回転のタイヤパターン振動)、5自由度のタイヤボディ振動をXvbx、Xvby、Xvbz、Xvbmx、Xvbmz(Xvbx、Xvby、XvbzはX、Y、Z方向への並進のタイヤボディ振動、Xvbmx、XvbmzはX、Z軸周りの回転のタイヤボディ振動)とすると、構造伝播騒音のうちタイヤパターン振動に由来する成分は次の[数2]の式により算出される。
【0081】
【数2】
また、構造伝播騒音のうちタイヤボディ振動に由来する成分は次の[数3]の式により算出される。
【0082】
【数3】
1つのタイヤから生じる構造伝播騒音は、タイヤパターン振動に由来する成分([数2]で求まる成分)とタイヤボディ振動に由来する成分([数3]で求まる成分)とを足したものである。[数1]~[数3]からわかるように、構造伝播騒音は、振動の種類(タイヤパターン振動とタイヤボディ振動)ごとかつ振動の方向ごとに算出される騒音成分(構造伝播騒音成分)を足したものである。構造伝播騒音成分は、[数2]における「Xvpx*Hvx」等や、[数3]における「Xvbx*Hvx」等のそれぞれのことである。
【0083】
また、1つの車両10に取り付けられた4つのタイヤそれぞれのタイヤ軸振動に由来する車内騒音の合計は、4つのタイヤそれぞれについて[数1]~[数3]の計算を行い、算出されたそれぞれの車内騒音Qvを合計することにより算出される。すなわち、4つのタイヤそれぞれのタイヤ軸振動に由来する車内騒音をQv1、Qv2、Qv3、Qv4とすると、それらの合計Qvtotalは次の式[数4]により算出される。
【0084】
【数4】
ステップS6では、シミュレーション装置において、ステップS4にて取得されたタイヤ音と、ステップS2にて取得された第2伝達関数とを乗じて、空気伝播により生じる車内騒音(空気伝播騒音)が算出される。ここで、ステップS4において取得されたタイヤ音としてタイヤパターン音とタイヤボディ音があるため、それぞれに第2伝達関数を乗じる計算が行われる。すなわち、ステップS4において取得されたタイヤ音のうち、タイヤパターン音をXnp、タイヤボディ音をXnbとすると、空気伝播騒音Qnは、第2伝達関数Hnを用いて次の[数5]の式により算出される。
【0085】
【数5】
第2伝達関数、タイヤパターン音及びタイヤボディ音はそれぞれ4つの(仮想)音源位置について取得されている。そして、空気伝播騒音のうちタイヤパターン音に由来する成分と、タイヤボディ音に由来する成分は、それぞれ、4つの(仮想)音源位置ごとに算出された成分が加算されることにより算出される。
【0086】
すなわち、踏み込み側、蹴り出し側、正面側及び背面側のそれぞれの第2伝達関数をそれぞれHns、Hnk、Hnf、Hnbと表し、踏み込み側、蹴り出し側、正面側及び背面側のそれぞれのタイヤパターン音をXnps、Xnpk、Xnpf、Xnpbと表し、踏み込み側、蹴り出し側、正面側及び背面側のそれぞれのタイヤボディ音Xnbs、Xnbk、Xnbf、Xnbbと表すと、空気伝播騒音のうちタイヤパターン音に由来する成分は次の[数6]の式により算出される。
【0087】
【数6】
また、空気伝播騒音のうちタイヤボディ音に由来する成分は次の[数7]の式により算出される。
【0088】
【数7】
1つのタイヤから生じる空気伝播騒音は、タイヤパターン音に由来する成分([数6]で求まる成分)とタイヤボディ音に由来する成分([数7]で求まる成分)とを足したものである。[数5]~[数7]からわかるように、空気伝播騒音は、タイヤ音の種類(タイヤパターン音とタイヤボディ音)ごとかつ音源位置ごとに算出される騒音成分(空気伝播騒音成分)を足したものである。空気伝播騒音成分は、[数6]における「Xnps*Hns」等や[数7]における「Xnbs*Hns」等のそれぞれのことである。
【0089】
また、1つの車両10に取り付けられた4つのタイヤそれぞれのタイヤ音に由来する車内騒音の合計は、4つのタイヤそれぞれについて[数5]~[数7]の計算を行い、算出されたそれぞれの車内騒音Qnを合計することにより算出される。すなわち、4つのタイヤそれぞれのタイヤ音に由来する車内騒音をQn1、Qn2、Qn3、Qn4とすると、それらの合計Qntotalは次の式[数8]により算出される。
【0090】
【数8】
ステップS7では、シミュレーション装置において、ステップS5にて算出された構造伝播騒音と、ステップS6にて算出された空気伝播騒音とを足して、タイヤ由来の車内騒音が算出される。タイヤ由来の車内騒音Qtotalは次の式[数9]により算出される。
【0091】
【数9】
この車内騒音Qtotalが、予測されるタイヤ由来の車内騒音である。[数1]~[数9]の計算は周波数領域において行われるが、実際に搭乗者に聞こえる車内騒音の再生は、算出された車内騒音のデータが逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform:IFFT)により時間軸のデータに変換されることにより行われる。
【0092】
以上で説明した本実施形態の方法によれば、タイヤ由来の車内騒音を精度良く予測することができる。詳細には、タイヤ軸振動とそれに由来する車内騒音との伝達関数である第1伝達関数と、タイヤ周囲の音源位置における音とそれに由来する車内騒音との伝達関数である第2伝達関数とがそれぞれ取得される。それにより、数値解析により求まったタイヤ軸振動と第1伝達関数とから構造伝播騒音を精度良く算出することができる。また、数値解析により求まったタイヤ周囲の音源位置における音と第2伝達関数とから空気伝播騒音を精度良く算出することができる。そのため、構造伝播騒音と空気伝播騒音とから、タイヤ由来の車内騒音を精度良く予測することができる。
【0093】
また、タイヤ軸振動としてタイヤパターン振動及びタイヤボディ振動が数値解析により算出され、仮想音源位置におけるタイヤ音としてタイヤパターン音及びタイヤボディ音が数値解析により算出される。そして、タイヤパターン振動及びタイヤボディ振動にそれぞれ第1伝達関数を掛けて構造伝播騒音とするため、構造伝播騒音を精度良く算出することができる。また、タイヤパターン音及びタイヤボディ音にそれぞれ第2伝達関数を掛けて空気伝播騒音とするため、空気伝播騒音を精度良く算出することができる。
【0094】
また、数値解析に用いるタイヤモデルとして、トレッドパターンのあるパターン付きタイヤモデルと、トレッドパターンのないノンパターンタイヤモデルとが準備される。そして、タイヤボディ音及びタイヤボディ振動はノンパターンタイヤモデルを用いて算出されるため、タイヤボディ音及びタイヤボディ振動の算出を短時間で行うことができる。一方、タイヤパターン音及びタイヤパターン振動はパターン付きタイヤモデルを用いて算出されるため、精度良く算出することができる。
【0095】
また、タイヤ軸振動と車内騒音との関係を示す第1伝達関数と、タイヤ周囲のタイヤ音と車内騒音との関係を示す第2伝達関数とが、試験により取得されるため、第1伝達関数及び第2伝達関数として現実に近い伝達関数を取得することができる。そして、現実に近い伝達関数と数値解析の結果(具体的には数値解析により求まったタイヤ軸振動及びタイヤ周囲の音)とから構造伝播騒音及び空気伝播騒音をそれぞれ算出し、構造伝播騒音と空気伝播騒音とからタイヤ由来の車内騒音を算出するため、タイヤ由来の車内騒音を精度良く予測することができる。
【0096】
また、第1伝達関数を取得する試験において、車両10のタイヤ取り付け面15に、タイヤ軸方向に延びる軸部材11bと、軸部材11bに垂直な加振面とを有する加振治具11が取り付けられる。そして、軸部材11b及び加振面をそれぞれ叩くことで加振する。これにより、上記の5方向へのタイヤ軸振動を容易に生じさせることができ、第1伝達関数を容易に取得することができる。
【0097】
また、第2伝達関数を取得する試験において、タイヤの踏み込み側、蹴り出し側、正面側(車両横方向外側)及び背面側(車両横方向内側)の4つの位置におけるタイヤ音の伝達関数がそれぞれ取得される。さらに、これら4つの位置と同位置の仮想音源位置におけるタイヤ音が数値解析で算出される。そして、4つの位置それぞれについての第2伝達関数及びタイヤ音から空気伝播騒音が算出される。これにより、空気伝播騒音を精度良く予測することができる。
【0098】
以上の実施形態に対して様々な変更を行うことができる。以下で説明する変更例のいずれか1つを上記実施形態に適用しても良いし、いずれか2つ以上を組み合わせて上記実施形態に適用しても良い。
【0099】
<変更例1>
第1伝達関数及び第2伝達関数が取得されるのは、車両10の左右いずれか一方の前輪及び後輪についてのみでも良い。その場合、伝達関数が取得された左右いずれか一方のタイヤについてのみ、タイヤ軸振動及びタイヤ音が数値解析により取得される。
【0100】
そして、左右の他方のタイヤについての第1伝達関数、第2伝達関数、タイヤ軸振動及びタイヤ音は、前記一方のタイヤについて試験及び計算により取得された第1伝達関数、第2伝達関数、タイヤ軸振動及びタイヤ音と同じであると仮定して、構造伝播による車内騒音及び空気伝播による車内騒音が算出される。
【0101】
車両10の左右で伝達関数等はほぼ同じであると推定されるため、この変更例の方法でも車内騒音を推定することができる。
【0102】
<変更例2>
ステップS3において、車両10の有する前後2輪ずつのタイヤのうち前輪1つと後輪1つについてのみ、有限要素解析によりタイヤ軸振動が取得されても良い。その場合、残りの2つのタイヤについては、有限要素解析により取得されたデータが流用される。
【0103】
<変更例3>
第1伝達関数の取得方法の変更例について説明する。
【0104】
図8に示すように、この変更例では、車両10の内部に音源14が配置される。音源14は、所定の周波数の音を発するものであり、例えば体積速度音源である。また、音源14の位置は、上記実施形態においてマイク12が配置される位置と同じである。
【0105】
また、車両10のタイヤ取り付け面15には加振治具11が取り付けられ、加振治具11に振動計が取り付けられる。振動計は、上記実施形態におけるタイヤ軸振動と同じ5自由度の振動をそれぞれ測定する。そのために、X、Y、Zそれぞれの方向への並進のタイヤ軸振動を測定するための1つの振動計が、加振治具11の軸部材11bに取り付けられる。また、X軸、Z軸それぞれを中心とする回転のタイヤ軸振動を測定するための複数の振動計が、加振治具11の円盤11aに取り付けられる。
【0106】
ここで、X軸を中心とする回転のタイヤ軸振動を測定するためには、円盤11aの中心に対して上下2ヶ所(又は円盤11aの中心とそれより上又は下の2ヶ所)に振動計が設けられることが好ましい。また、Z軸を中心とする回転のタイヤ軸振動を測定するためには、円盤11aの中心に対して前後2ヶ所(又は円盤11aの中心とそれより前又は後ろの2ヶ所)に振動計が設けられることが好ましい。そのために、2つの振動計が、X軸を中心とする回転のタイヤ軸振動を測定するときと、Z軸を中心とする回転のタイヤ軸振動を測定するときとで位置を変えて設けられても良い。また、円盤11aの中心に対して上下及び前後の合計4か所にそれぞれ振動計が設けられても良い。また、円盤11aの中心及びその上下及び前後の合計5か所にそれぞれ振動計が設けられても良い。このように、円盤11aに取り付けられる振動計の数は2~5個が好ましい。
【0107】
このように音源14及び振動計が設けられた状態で、音源14から音が発せられ、そのときの5自由度のタイヤ軸振動がそれぞれ測定される。そして、解析装置が、音源14から発せられた音のデータと、振動計により収録されたタイヤ軸振動のデータとから、タイヤ軸振動と車内騒音との関係を示す第1伝達関数を求める。
【0108】
<変更例4>
タイヤの背面側(車両横方向内側)で発生する音は、車内にあまり届かず、車内騒音への寄与が小さい。そこで、空気伝播により生じる車内騒音を、タイヤの踏み込み側、蹴り出し側及び正面側から発生する音に基づき算出しても良い。
【0109】
この変更例では、まず、第2伝達関数として、タイヤの踏み込み側、蹴り出し側及び正面側のそれぞれの音源13から車内のマイク12への伝達関数がそれぞれ取得される。
【0110】
次に、タイヤパターン音として、タイヤの踏み込み側、蹴り出し側及び正面側の3つの仮想音源位置におけるそれぞれのタイヤパターン音が算出される。また、タイヤボディ音として、タイヤの踏み込み側、蹴り出し側及び正面側の3つの仮想音源位置におけるそれぞれのタイヤボディ音が算出される。そして、このようにして算出されたタイヤパターン音、タイヤボディ音及び第2伝達関数から、空気伝播により生じる車内騒音が算出される。
【0111】
この変更例によれば、タイヤの背面側の仮想音源位置でのタイヤ音の算出等を省略することができるので、空気伝播により生じる車内騒音を効率良く算出することができる。
【0112】
<変更例5>
タイヤ軸振動を算出するために、上記実施形態では、ノンパターンタイヤモデルを使用してタイヤボディ振動が算出され、パターン付きタイヤモデルを使用してタイヤパターン振動が算出された。
【0113】
しかし、1つのパターン付きタイヤモデルを使用して、タイヤボディ振動とタイヤパターン振動がそれぞれ算出されても良い。このとき、タイヤボディ振動の算出とタイヤパターン振動の算出が同時に行われても良いし、別々に行われても良い。
【0114】
この変更例の場合、トレッドパターンを考慮しなくて良いはずのタイヤボディ振動の算出においてパターン付きタイヤモデルを使用するため、ノンパターンタイヤモデルを使用する場合よりも、タイヤボディ振動の算出に時間がかかる。しかし、タイヤボディ振動の算出のためにノンパターンタイヤモデルを準備する必要がなくなる利点がある。
【0115】
<変更例6>
タイヤ音を算出するために、上記実施形態では、ノンパターンタイヤモデルを使用してタイヤボディ音が算出され、パターン付きタイヤモデルを使用してタイヤパターン音が算出された。
【0116】
しかし、1つのパターン付きタイヤモデルを使用して、タイヤボディ音とタイヤパターン音がそれぞれ算出されても良い。このとき、タイヤボディ音の算出とタイヤパターン音の算出が同時に行われても良いし、別々に行われても良い。
【0117】
この変更例の場合、トレッドパターンを考慮しなくて良いはずのタイヤボディ音の算出においてパターン付きタイヤモデルを使用するため、ノンパターンタイヤモデルを使用する場合よりも、タイヤボディ音の算出に時間がかかる。しかし、タイヤボディ音の算出のためにノンパターンタイヤモデルを準備する必要がなくなる利点がある。
【0118】
<変更例7>
上記実施形態では、パターン付きタイヤモデルが転動したときの仮想音源位置でのタイヤパターン音は、タイヤ接地端のうちその仮想音源位置に近い部分の振動に基づき算出された。例えば、踏み込み側の仮想音源位置でのタイヤパターン音は、踏み込み側接地端の振動に基づき算出された。
【0119】
しかし、4つの仮想音源位置でのタイヤパターン音が、それぞれ、タイヤ接地端全体の振動に基づき算出されても良い。
【0120】
具体的には、まず、シミュレーション装置における有限要素解析により、パターン付きタイヤモデルを路面上で転動させるシミュレーションが実行される。そして、転動中のパターン付きタイヤモデルにおける踏み込み側接地端、蹴り出し側接地端、正面側接地端及び背面側接地端の振動が算出される。
【0121】
次に、シミュレーション装置における境界要素解析により、タイヤ周囲の踏み込み側、蹴り出し側、正面側及び背面側の4つの仮想音源位置でのタイヤパターン音が算出される。
【0122】
具体的には、有限要素解析により算出されたタイヤ接地端全体(タイヤ接地端は、踏み込み側接地端、蹴り出し側接地端、正面側接地端及び背面側接地端からなる)の振動に起因する、タイヤ周囲の空気の振動が境界要素解析により算出される。そして、タイヤ周囲の空気の振動に起因する、踏み込み側、蹴り出し側、正面側及び背面側の4つの仮想音源位置でのタイヤパターン音が、それぞれ算出される。
【0123】
このように、この変更例では、4つの仮想音源位置でのタイヤパターン音を、それぞれ、タイヤ接地端全体の振動に基づき算出する。そのため、例えば、踏み込み側の仮想音源位置でのタイヤパターン音は、踏み込み側接地端だけでなく正面側接地端等の振動の影響も受けたものとなる。それにより、算出されるタイヤパターン音の精度が上がる。
【0124】
<変更例8>
[数9]により算出される車内騒音は、[数2]及び[数3]に記載のような振動の種類ごとかつ振動の方向ごとの騒音成分である構造伝播騒音成分と、[数6]及び[数7]に記載のようなタイヤ音の種類ごとかつ仮想音源位置ごとの騒音成分である空気伝播騒音成分とがそのまま加算されたものであり、実際に搭乗者に聞こえると予測される車内騒音である。
【0125】
しかし、選択した騒音成分について消去又は強弱の処理を行いつつ、複数の騒音成分(消去した騒音成分を除く全ての騒音成分)を足すことにより、車内騒音が算出されても良い。
【0126】
例えば、一部の騒音成分のみから車内騒音を算出する(例えば、一部のタイヤの騒音成分のみを加算して車内騒音を算出する、タイヤパターン音、タイヤボディ音、タイヤパターン振動及びタイヤボディ振動のいずれか一部のみに起因する騒音成分のみを加算して車内騒音を算出する等)、一部の騒音成分を大きく又は小さくして車内騒音を算出する、といった方法が実行されても良い。
【0127】
これらの方法により、特定の騒音成分がないとき、大きいとき又は小さいときの車内騒音を精度良く予測することができ、その予測に基づき様々な検討等を行うことができる。例えば、ある特定の騒音成分のみを除いて車内騒音を算出し再生したところ、騒音が許容できるものであった場合は、その「ある特定の騒音成分」が小さくなるようにタイヤを設計することが好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0128】
10…車両、11…加振治具、11a…円盤、11b…軸部材、11c…孔、12…マイク、13…音源、14…音源、15…タイヤ取り付け面、16…タイヤ、17…ホイール、18…シート、19…ヘッドレスト