(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081339
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20240611BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240611BHJP
【FI】
A63B53/04 C
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194878
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120938
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 教郎
(74)【代理人】
【識別番号】100227983
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 久美子
(72)【発明者】
【氏名】元川 祐貴
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
(57)【要約】
【課題】フェース部の新たな構造により性能が高められたゴルフクラブヘッドの提供。
【解決手段】ヘッド2は、打撃フェース4aを有するフェース部4と、クラウン部6と、ソール部8と、ホーゼル部10と、ヘッド重心CGとを備えている。打撃フェース4aは、スイートスポットSSと、フェースセンターFcとを有している。フェース部4は、スイートスポットSSを通る水平面P1により、上部40と下部42とに区画される。下部42が、上部40の最大肉厚よりも厚い厚肉部46を有している。厚肉部46の少なくとも一部が、最大肉厚部48である。フェースセンターFcの位置における下部の上下方向幅Dの30%がオフセット幅とされ、下部42において打撃フェース4aの輪郭線k1に沿った前記オフセット幅の領域が下部周縁領域44とされる。厚肉部46の全体が下部周縁領域44に配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃フェースを有するフェース部と、ソール部と、クラウン部と、ホーゼル部と、ヘッド重心とを備えており、
前記打撃フェースが、前記ヘッド重心を通り前記打撃フェースに垂直な直線と前記打撃フェースとの交点であるスイートスポットと、フェースセンターとを有しており、
前記フェース部が前記スイートスポットを通る水平面により上部と下部とに区画されるとき、前記下部が、前記上部の最大肉厚よりも厚い厚肉部を有しており、
前記厚肉部の少なくとも一部が、前記フェース部の最大肉厚を有する最大肉厚部であり、
前記フェースセンターの位置における前記下部の上下方向幅の30%がオフセット幅とされ、前記下部において前記打撃フェースの輪郭線に沿った前記オフセット幅の領域が下部周縁領域とされるとき、前記厚肉部の全体が前記下部周縁領域に配置されているゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記最大肉厚部の肉厚が、前記上部の最小肉厚の3.0倍以上である請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記厚肉部の全体が、前記ヘッドの重心よりも下側に配置されている請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記厚肉部が、トウ側とヒール側とに分配されている請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記フェース部が、そのトウ側の端からのトウ-ヒール方向距離がフェース長の30%以内の領域であるトウ側領域と、そのヒール側の端からのトウ-ヒール方向距離がフェース長の30%以内の領域であるヒール側領域と、前記トウ側領域と前記ヒール側領域との間の領域である中央領域とに区画されるとき、
前記厚肉部が、前記トウ側領域に配置されたトウ厚肉部と、前記ヒール側領域に配置されたヒール厚肉部とに分配されており、
前記中央領域に前記厚肉部が存在しない請求項4に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記フェース部が、そのトウ側の端からのトウ-ヒール方向距離がフェース長の30%以内であるトウ側領域と、そのヒール側の端からのトウ-ヒール方向距離がフェース長の30%以内であるヒール側領域と、前記トウ側領域と前記ヒール側領域との間の領域である中央領域とに区画されるとき、
前記厚肉部が、前記トウ側領域から前記中央領域を経由して前記ヒール側領域まで延びている請求項1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
フェース部内で肉厚が変化するゴルフクラブヘッドが提案されている。米国特許出願公開第2014/0179458号明細書には、ロングアイアンでは下側にいくにつれてフェース部が厚くなり、ショートアイアンでは上側にいくにつれてフェース部が厚くなるアイアン型ゴルフクラブヘッドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0179458号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェース部内で肉厚を変化させることで、ヘッドの重心位置が調整されうる。しかし、肉厚が大きい部分は撓みにくいため、反発性能が低下しうる。本発明者は、フェース部の新たな構造により、ヘッドの性能を高めうることを見出した。
【0005】
本発明の目的の一つは、フェース部の新たな構造により性能が高められたゴルフクラブヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様では、ゴルフクラブヘッドは、打撃フェースを有するフェース部と、ソール部と、クラウン部と、ホーゼル部と、ヘッド重心とを備えている。前記打撃フェースが、前記ヘッド重心を通り前記打撃フェースに垂直な直線と前記打撃フェースとの交点であるスイートスポットと、フェースセンターとを有している。前記フェース部が前記スイートスポットを通る水平面により上部と下部とに区画されるとき、前記下部が、前記上部の最大肉厚よりも厚い厚肉部を有している。前記厚肉部の少なくとも一部が、前記フェース部の最大肉厚を有する最大肉厚部である。前記フェースセンターの位置における前記下部の上下方向幅の30%がオフセット幅とされ、前記下部において前記打撃フェースの輪郭線に沿った前記オフセット幅の領域が下部周縁領域とされる。前記厚肉部の全体が前記下部周縁領域に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面として、フェース部の新たな構造により性能が高められたゴルフクラブヘッドが提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態のゴルフクラブヘッドの平面図である。
【
図2】
図2(a)は
図1のゴルフクラブヘッドの正面図であり、
図2(b)は
図2(a)のE1線に沿ったヘッド外面の断面図である。
【
図3】
図3は、
図1のゴルフクラブヘッドの分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のゴルフクラブヘッドの正面図である。
図4では、フェース部の内面に形成されている厚肉部が破線で示されている。
【
図6】
図6は、第2実施形態のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図7】
図7は、参考例のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図8】
図8(a)は第1実施形態の変形例であるゴルフクラブヘッドの正面図であり、
図8(b)は打撃フェースの輪郭線が途切れている場合の延長線が記載された説明図である。
【
図9】
図9は、基準状態について説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面が参照されつつ、実施形態が詳細に説明される。
【0010】
本願では、基準状態、基準垂直面、トウ-ヒール方向、フェース-バック方向、上下方向、正面視及びフェースセンターが定義される。
【0011】
所定のライ角で接地平面HP上にヘッドが載置された状態が、基準状態とされる。
図9が示すように、この基準状態では、接地平面HPに対して垂直な平面VPに、シャフト軸線Zが含まれている。シャフト軸線Zは、シャフトの中心線である。通常、シャフト軸線Zは、ホーゼル孔の中心線に一致する。前記平面VPが、基準垂直面とされる。所定のライ角は、例えば製品カタログに掲載されている。
【0012】
なお、シャフトの先端部に設けられたスリーブの回転位置等によってロフト角、ライ角及びフェース角を調整できるクラブが知られている。このクラブでは、スリーブがネジ等の固定手段でヘッドに取り外し可能に固定されうる。このため、このクラブでは、ヘッドに対してシャフトを脱着することができる。このような脱着機構を有するクラブにおいて、上記基準状態では、全ての調整項目がニュートラルとされて、シャフト軸線Zが決定される。ニュートラルとは、調整幅の中心を意味する。本発明のクラブは、このような脱着機構を有していてもよい。
【0013】
この基準状態では、フェース角が0度とされる。すなわち、上側から見た平面視において、打撃フェースのフェースセンターにおける法線がトウ-ヒール方向に対して垂直とされる。フェースセンター及びトウ-ヒール方向の定義は、後述の通りである。
【0014】
本願においてトウ-ヒール方向とは、前記基準垂直面VPと前記接地平面HPとの交線NLの方向である(
図9参照)。トウ-ヒール方向におけるトウ側が、単に「トウ側」とも称される。トウ-ヒール方向におけるヒール側が、単に「ヒール側」とも称される。
【0015】
本願においてフェース-バック方向とは、前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記接地平面HPに対して平行な方向である。フェース-バック方向におけるフェース側が、単に「フェース側」とも称される。フェース側は前方とも称される。フェース-バック方向におけるバック側が、単に「バック側」とも称される。バック側は後方とも称される。
【0016】
本願において正面視とは、前記基準状態にあるヘッドをフェース側から見た正面図である。すなわち、この正面視は、前記基準状態にあるヘッドを、前記基準垂直面VPに平行な平面に投影した投影像である。この投影は垂直投影である。
【0017】
本願において上下方向とは、前記トウ-ヒール方向に対して垂直であり且つ前記フェース-バック方向に対して垂直な方向である。換言すれば、本願において上下方向とは、前記接地平面HPに対して垂直な方向である。上下方向における上側が、単に「上側」とも称される。上下方向における下側が、単に「下側」とも称される。
【0018】
本願において、フェースセンターFcは次のように決定される。まず、上下方向およびトウ-ヒール方向において、打撃フェースの概ね中央付近の任意の点Prが選択される。次に、この点Prを通り、当該点Prにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつトウ-ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pxが決定される。次に、この中点Pxを通り、当該点Pxにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pyが決定される。次に、この中点Pyを通り、当該点Pyにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつトウ-ヒール方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pxが新たに決定される。次に、この新たな中点Pxを通り、当該点Pxにおける打撃フェースの法線方向に沿って延び、かつ上下方向に平行な平面が決定される。この平面と打撃フェースとの交線を引き、その中点Pyが新たに決定される。この工程を繰り返して、Px及びPyが順次決定される。この工程の繰り返しの中で、新たな中点Pyとその直前の中点Pyとの間の距離が最初に0.5mm以下となったときの当該新たな位置Py(最後の位置Py)が、フェースセンターFcである。
【0019】
図1は、第1実施形態のゴルフクラブヘッド2の平面図であり、
図2(a)はヘッド2の正面図である。
図2(b)は
図2(a)のE1線に沿ったヘッド外面の断面であり、打撃フェースの輪郭線k1に関する説明図である。
【0020】
ヘッド2は、フェース部4と、クラウン部6と、ソール部8と、ホーゼル部10とを有する。フェース部4は、打撃フェース4aを有する。打撃フェース4aは、フェース部4の外面である。ホーゼル部10は、ホーゼル孔10aを有する。ヘッド2は、ウッド型ヘッドである。ヘッド2は、ドライバーヘッドである。ヘッド2は、ドライバーヘッド、フェアウェイウッド型ヘッド又はハイブリッド型ヘッドとされうる。
【0021】
打撃フェース4aの輪郭線k1は、次のように決定される。
図2(a)が示すように、ヘッド重心CGとスイートスポットSSとを結ぶ線分を含む多数の断面E1、E2、E3・・・・が設定される。これらの断面において、ヘッド外面の曲率半径がスイートスポットSS側から打撃フェース4aの外側に向かって初めて200mmとなる点Feが決定される(
図2(b)参照)。この点Feの集合が、打撃フェース4aの輪郭線k1とされうる。
【0022】
なおスイートスポットSSとは、ヘッド重心CGを通る打撃フェース4aの法線と打撃フェース4aとの交点である。
図2の実施形態では、スイートスポットSSはフェースセンターFcの上側に位置する。また、スイートスポットSSはフェースセンターFcのヒール側に位置する。
【0023】
図3はヘッド2の分解斜視図である。ヘッド2は、フェース部材f1とボディ部材b1とが接合されることで形成されている。この接合は、溶接である。フェース部材f1は、カップ状の部材である。なおフェース部材f1は、鍛造、鋳造、プレス等で製造されうる。強度の観点からは、鍛造及びプレスが好ましい。最大肉厚部の肉厚t4(後述)が大きくなると、プレス及び鍛造よりも鋳造が好ましい場合がある。
【0024】
図4は、
図2(a)と同じく、ヘッド2の正面図である。
図5は、
図4のA-A線に沿った断面図である。
図5の断面位置は、スイートスポットSSとヘッド重心CGとを通る直線L1を含む。
【0025】
図5が示すように、ヘッド2は中空構造を有する。フェース部4は、フェース外面4aとフェース内面4bとを有する。前述の通り、フェース外面4aは、打撃フェースである。クラウン部6は、クラウン外面6aとクラウン内面6bとを有する。ソール部8は、ソール外面8aとソール内面8bとを有する。フェース内面4b、クラウン内面6b及びソール内面8bは、ヘッド2の中空部SPに面している。
【0026】
図5が示すように、フェース部4は、内面輪郭線k2を有する。フェース-バック方向に沿った断面において、輪郭線k1を構成する点におけるヘッド外面の法線LNとヘッド内面との交点が、内面輪郭線k2を構成する。この法線LNは、フェース部4の輪郭を構成している。
【0027】
図4及び
図5が示すように、ヘッド2は、スイートスポットSSを通る水平面P1を有する。前記基準状態のヘッド2において、水平面P1は、接地平面HPに平行である。また、ヘッド2は、ヘッド重心CGを通る水平面P2を有する。前記基準状態のヘッド2において、水平面P2は、接地平面HPに平行である。水平面P2は、水平面P1よりも下側に位置する。
【0028】
フェース部4は、スイートスポットSSを通る水平面P1により、上部40と下部42とに区画される。フェース部4のうち、水平面P1よりも上側の部分が、上部40である。フェース部4のうち、水平面P1よりも下側の部分が、下部42である。なお、水平面P1に対してフェース部4が傾斜しているため、フェース部4を水平面P1で区画すると、水平面P1の近傍に、微小な楔形部分が生じうる。上述の区画をより正確に表現すると、フェース部4は、スイートスポットSSを通る水平面P1と打撃フェース4aとの交線により、上部40と下部42とに区画される。この交線における各点において、打撃フェース4aに対する法線が定義されうる。この法線の一例は、
図5における直線L1である。これらの法線の集合が、上部40と下部42とを区画する面となりうる。
【0029】
打撃フェース4aのうち、上部40に属する部分が、フェース面上部40aである。打撃フェース4aのうち、下部42に属する部分が、フェース面下部42aである。フェース内面4bのうち、上部40に属する部分が、フェース内面上部40bである。フェース内面4bのうち、下部42に属する部分が、フェース内面下部42bである。
【0030】
下部42は、下部周縁領域44を有する。
図2において両矢印Dで示されるのは、フェースセンターFcの位置における下部42(フェース面下部42a)の上下方向幅である。この上下方向幅Dの30%が、オフセット幅とも称される。すなわち、このオフセット幅は、0.3Dである。下部42において、輪郭線k1に沿った前記オフセット幅の領域が、下部周縁領域44である。
図2において、オフセットラインs1が2点鎖線で示されている。下部周縁領域44は、輪郭線k1とオフセットラインs1との間の領域である。輪郭線k1とオフセットラインs1との間の距離が、オフセット幅すなわち0.3Dである。この距離は、正面視において、輪郭線k1の法線方向に沿って測定される。下部周縁領域44は、正面視において決定される。
【0031】
下部42は、厚肉部46を有している。厚肉部46は、フェース内面下部42bにおいて凸部を形成している。厚肉部46は、上部40の最大肉厚t1よりも厚い。すなわち、厚肉部46の肉厚は、上部40における肉厚の最大値t1よりも大きい。なお、フェース部4を含むヘッド2の肉厚は、ヘッド外面の法線の方向に沿って測定される。この法線の方向は、ヘッド外面上の各点において決定される。
【0032】
厚肉部46は、内面輪郭線k2の内側に配置されている。厚肉部46の全体が、フェース内面下部42bに形成されている。厚肉部46の全体が、フェース部材f1に形成されている。
【0033】
厚肉部46の重量が大きくされることで、後述の効果が得られる。この観点から、より好ましくは、上部40の最大肉厚t1の1.1倍以上の肉厚を有する部分が厚肉部46と定義される。より好ましくは、上部40の最大肉厚t1の1.2倍以上の肉厚を有する部分が厚肉部46と定義される。より好ましくは、上部40の最大肉厚t1の1.3倍以上の肉厚を有する部分が厚肉部46と定義される。ヘッド重量の制約を考慮すると、厚肉部46の肉厚は、上部40の最大肉厚t1の4.0倍以下、更には3.8倍以下、更には3.6倍以下とされうる。
【0034】
厚肉部46は、下部周縁領域44に設けられている。本実施形態では、厚肉部46は、下部周縁領域44のみに設けられている。
【0035】
厚肉部46は、最大肉厚部48を有する。最大肉厚部48は、フェース部4において肉厚が最大の部分である。厚肉部46の少なくとも一部が、最大肉厚部48である。厚肉部46の全体が、最大肉厚部48であってもよい。本実施形態では、厚肉部46の大部分が、最大肉厚部48である。最大肉厚部48の全体が、下部周縁領域44に配置されている。
【0036】
上部40は、最小肉厚t2を有する。最小肉厚t2は、上部40における肉厚の最小値である。下部42は、最小肉厚t3を有する。最小肉厚t3は、下部42における肉厚の最小値である。本実施形態では、最小肉厚t3を有する下部最小肉厚部50は、輪郭線k1の位置である。下部最小肉厚部50は、厚肉部46の下側に位置する。下部最小肉厚部50は、厚肉部46とソール部8との間に位置する。下部42の最小肉厚t3は、上部40の最小肉厚t2よりも小さい。下部最小肉厚部50は、厚肉部46によりフェース部4の撓みが阻害されることを低減し、反発係数の向上に寄与している。本実施形態では最小肉厚t3が最小肉厚t2よりも小さいが、最小肉厚t3が最小肉厚t2より大きくてもよいし、最小肉厚t3が最小肉厚t2と同じでもよい。反発性能の観点から、好ましくは、最小肉厚t2は最小肉厚t3よりも大きい。反発性能の観点から、好ましくは、最小肉厚t3は、フェース部4における肉厚の最小値である。
【0037】
なお、
図5の断面図には、最大肉厚t1、最小肉厚t2及び最小肉厚t3が存在している。言うまでもなく、最大肉厚t1、最小肉厚t2及び最小肉厚t3は、ヘッド重心CGが存在する断面上に存在していなくてもよい。最大肉厚t1、最小肉厚t2及び最小肉厚t3のトウ-ヒール方向位置は、互いに相違しうる。
【0038】
図4が示すように、厚肉部46は、スイートスポットSSよりもトウ側の位置から、スイートスポットSSよりもヒール側の位置まで連続して延びている。厚肉部46は、下側に向かって凸となるように曲がって延びている。厚肉部46の全体が、下部周縁領域44に配置されている。オフセットラインs1よりも上側に、厚肉部46は存在しない。厚肉部46は、下部周縁領域44のみに配置されている。下部周縁領域44の外側に、厚肉部46は存在しない。厚肉部46の全体が、ヘッド重心CGよりも下側に配置されている。すなわち、厚肉部46の全体が、水平面P2よりも下側に配置されている。
【0039】
図4において両矢印Fで示されるのは、フェース部4(打撃フェース4a)の長さである。この長さは、フェース長とも称される。打撃フェース4aは、最もトウ側の端ktと、最もヒール側の端khとを有する。フェース長Fは、端ktと端khとの間の距離である。フェース長Fは、トウ-ヒール方向に沿って測定される。
【0040】
図4が示すように、フェース部4は、トウ側領域Rt、ヒール側領域Rh及び中央領域Rcに区画される。トウ側領域Rt、ヒール側領域Rh及び中央領域Rcは、トウ-ヒール方向の領域である。
【0041】
トウ側領域Rtは、フェース部のトウ側の端ktからのトウ-ヒール方向距離がフェース長Fの30%以内の領域である。換言すれば、トウ側領域Rtは、端ktからヒール側にフェース長Fの30%だけ隔てた位置から端ktまでの領域である。ヒール側領域Rhは、フェース部のヒール側の端khからのトウ-ヒール方向距離がフェース長Fの30%以内の領域である。換言すれば、ヒール側領域Rhは、端khからトウ側にフェース長Fの30%だけ隔てた位置から端khまでの領域である。中央領域Rcは、トウ側領域Rtとヒール側領域Rhとの間の領域である。中央領域Rcは、フェースセンターFc及びスイートスポットSSを含む。
【0042】
厚肉部46は、トウ側領域Rtから、中央領域Rcを経由して、ヒール側領域Rhまで連続して延びている。
【0043】
図4が示すように、最大肉厚部48は、スイートスポットSSよりもトウ側の位置から、スイートスポットSSよりもヒール側の位置まで連続して延びている。最大肉厚部48は、下側に向かって凸となるように曲がって延びている。最大肉厚部48の全体が、下部周縁領域44に配置されている。最大肉厚部48の全体が、ヘッド重心CGよりも下側に配置されている。すなわち、最大肉厚部48の全体が、水平面P2よりも下側に配置されている。最大肉厚部48は、トウ側領域Rtから、中央領域Rcを経由して、ヒール側領域Rhまで連続して延びている。
【0044】
図5が示すように、スイートスポットSSを含み且つフェース-バック方向に沿った断面において、下部42は、厚肉部46の上側に隣接する隣接部52を有する。隣接部52の肉厚は、最大肉厚t1よりも薄い。隣接部52は、スイートスポットSS側から厚肉部46に近づくにつれて肉厚が連続的に薄くなる肉厚変化部53を有する。なお、隣接部52の構成は限定されず、例えば隣接部52は肉厚変化部を有さず、隣接部52の肉厚が一定であってもよい。
【0045】
ヘッド2では、厚肉部46とソール部8との間に形成されたソール接続部54を有する。ソール接続部54は、フェース部4の下縁とソール部8との間に延びている。ソール接続部54は、ヘッド2の外側に向かって凸となるように曲がって延びている。ソール接続部54の肉厚は、最大肉厚t1よりも小さい。ソール接続部54の肉厚は、最小肉厚t2よりも小さい。薄いソール接続部54が形成されることで、厚肉部46によりフェース部4の撓みが阻害されることが低減される。ソール接続部54は、反発係数の向上に寄与している。
【0046】
図5において両矢印HSで示されているのは、スイートスポットSSの高さである。高さHSは、基準状態のヘッド2における接地平面HPからの高さである。高さHSは、上下方向に沿って測定される。
図1において両矢印G1で示されるのは、重心深度である。重心深度G1は、シャフト軸線Zとヘッド重心CGとの間の距離である。重心深度G1は、フェース-バック方向に沿って測定される。
図5から理解されるように、ヘッド2はロフト角を有するため、重心深度G1が小さいほど高さHSは低くなりやすい。
【0047】
図6は、第2実施形態であるゴルフクラブヘッド102の正面図である。ヘッド102は、フェース部104と、クラウン部106と、ソール部108と、ホーゼル部110とを有する。フェース部104は、上部140と下部142とを有する。下部142は、オフセットラインs1、輪郭線k1及び水平面P1で区画された下部周縁領域144を有する。下部周縁領域144に、厚肉部146が形成されている。厚肉部146の全体が、下部周縁領域144に配置されている。厚肉部146は最大肉厚部148を有する。最大肉厚部148の全体が、下部周縁領域144に配置されている。厚肉部146の全体が、水平面P2よりも下側に配置されている。最大肉厚部148の全体が、水平面P2よりも下側に配置されている。厚肉部の形態を除き、ヘッド102は、第1実施形態のヘッド2と同じである。
【0048】
ヘッド102では、厚肉部146は、複数の位置に分散して配置されている。ヘッド102では、厚肉部146が、トウ側とヒール側とに分配されている。厚肉部146は、フェースセンターFcよりもトウ側に位置するトウ厚肉部146tと、フェースセンターFcよりもヒール側に位置するヒール厚肉部146hとを有する。ヒール厚肉部146hとトウ厚肉部146tとは、互いに離れている。厚肉部146は、トウ厚肉部146t及びヒール厚肉部146hのみからなる。フェースセンターFcのトウ-ヒール方向位置に、厚肉部146は存在しない。スイートスポットSSのトウ-ヒール方向位置に、厚肉部146は存在しない。トウ厚肉部146tは、最大肉厚部148tを有する。ヒール厚肉部146hは、最大肉厚部148hを有する。トウ厚肉部146t及びヒール厚肉部146hのいずれか一方のみが、最大肉厚部を有していても良い。
【0049】
トウ厚肉部146tは、トウ側領域Rtに配置されている。トウ厚肉部146tの全体が、トウ側領域Rtに配置されている。トウ厚肉部146tは、下側に向かって凸となるように曲がって延びている。ヒール厚肉部146hは、ヒール側領域Rhに配置されている。ヒール厚肉部146hの全体が、ヒール側領域Rhに配置されている。ヒール厚肉部146hは、下側に向かって凸となるように曲がって延びている。中央領域Rcには、厚肉部が存在しない。
【0050】
本実施形態では、厚肉部146は、トウ側領域Rtとヒール側領域Rhとに分配され、中央領域Rcには配置されていない。厚肉部146は、トウ側領域Rtとヒール側領域Rhとに分配され、更に中央領域Rcにも分配されてもよい。厚肉部146は、ヒール側領域Rh及び中央領域Rcに配置されず、トウ側領域Rtのみに配置されてもよい。厚肉部146は、トウ側領域Rt及び中央領域Rcに配置されず、ヒール側領域Rhのみに配置されてもよい。
【0051】
図7は、参考例であるゴルフクラブヘッド202の正面図である。ヘッド202は、フェース部204と、クラウン部206と、ソール部208と、ホーゼル部210とを有する。フェース部204は、上部240と下部242とを有する。下部242は、オフセットラインs1、輪郭線k1及び水平面P1で区画された下部周縁領域244を有する。下部周縁領域244に、厚肉部246が形成されている。厚肉部246の一部が、下部周縁領域244に配置されている。厚肉部246の一部は、下部周縁領域244の外側に配置されている。厚肉部246は最大肉厚部248を有する。厚肉部246の全体が、水平面P2よりも下側に配置されている。厚肉部の形態を除き、ヘッド202は、第1実施形態のヘッド2と同じである。
【0052】
ヘッド202では、厚肉部246は、下部周縁領域244の外側に及んでいる。厚肉部246の下縁250は、打撃フェース204aの輪郭線k1に沿って延びている。下縁250は、下側に向かって凸となるように曲がっている。厚肉部246の上縁252は、水平面P2に沿って真っ直ぐに延びている。
【0053】
厚肉部246は、下部周縁領域244からはみ出でいる。厚肉部246は、下部周縁領域244に位置する部分と、オフセットラインs1よりも上側に位置する部分とを有する。トウ側領域Rtにおいて、厚肉部246は、オフセットラインs1よりも上側に位置する部分を有する。中央領域Rcにおいて、厚肉部246は、オフセットラインs1よりも上側に位置する部分を有する。ヒール側領域Rhにおいて、厚肉部246は、オフセットラインs1よりも上側に位置する部分を有する。
【0054】
上述した第1実施形態のヘッド2及び第2実施形態のヘッド102は、以下の作用効果を奏する。
【0055】
インパクト時のフェース部4の撓みは、厚肉部によって阻害されうる。しかし、第1実施形態のヘッド2では、厚肉部46が下部周縁領域44のみに設けられている。このため、フェース部4の撓みが阻害されることが低減されている。また、フェース部4の下側部分に厚肉部46が設けられているため、ヘッド重心CGの位置が低く、且つ重心深度G1が小さい。この結果、スイートスポットSSの高さHSが低くなり、実際の打点がスイートスポットSSに近くなる。上側に離れていたスイートスポットSSが打点に近づくことで、縦のギア効果が減少し、バックスピン量が低減される。特に打ち出し角が高い場合、バックスピン量の低減は、飛距離の増加に寄与する。
【0056】
なお、実際の打点は、フェースセンターFcを中心に分布する。よって、最も打撃確率が高い実際の打点は、フェースセンターFcと見なすことができる。
【0057】
厚肉部46が無い状態に比べると、厚肉部46の存在により、フェース部4の撓みが減少しうる。しかし、スイートスポットSSが打点に近づくことで、実際の打点における反発係数が向上する。
【0058】
厚肉部46の全体が、ヘッド重心CGよりも下側に位置している。このため、スイートスポットSSを下げる効果が高められている。
【0059】
このように、ヘッド2では、打ち出し角が高いゴルファーなど、低スピンが有効なゴルファーに対して、飛距離を増大することができる。
【0060】
第2実施形態のヘッド102でも、ヘッド2と同じ効果が奏される。また、ヘッド102では、フェース部104の中央部に厚肉部146が形成されていない。このため、厚肉部146によるフェース部104の撓みの阻害が更に低減され、フェース部104の中心部における反発係数が高まる。また、厚肉部146の重量がトウ側とヒール側とに分散されるため、ヘッド2の左右慣性モーメントが増加する。左右慣性モーメントの増加は、弾道の安定化及び高反発エリアの拡大に寄与する。スイートスポットSSを下げる観点からは、ヘッド102よりもヘッド2のほうが有利である。
【0061】
なお、左右慣性モーメントとは、ヘッド重心CGを通り上下方向に平行な軸まわりの慣性モーメントである。この慣性モーメントの単位は、g・cm2である。この慣性モーメントは、例えば、INERTIA DYNAMICS社製のMODEL NUMBER RK/005-002を用いて測定されうる。
【0062】
図5において両矢印t4で示されるのは、最大肉厚部48の肉厚である。厚肉部46に起因する上記効果を高める観点から、最大肉厚部48の肉厚t4は、上部40の最小肉厚t2に対して、3.00倍以上が好ましく、3.25倍以上がより好ましく、3.50倍以上がより好ましい。ヘッド重量の制約の観点から、この肉厚t4は、最小肉厚t2に対して、6.50倍以下が好ましく、6.25倍以下がより好ましく、6.00倍以下がより好ましい。
【0063】
厚肉部により重心深度G1が小さくなり、スイートスポットSSを打点に近づけることができる。この観点から、重心深度G1は、22mm以下が好ましく、20mm以下がより好ましく、18mm以下がより好ましい。ウッド型又はハイブリッド型のヘッド形状に基づく限界を考慮すると、重心深度G1は、6mm以上が好ましく、8mm以上がより好ましく、10mm以上がより好ましい。
【0064】
スイートスポットSSを打点に近くする観点から、スイートスポットSSの高さHSは、36mm以下が好ましく、34mm以下がより好ましく、32mm以下がより好ましい。ウッド型又はハイブリッド型のヘッド形状に基づく限界を考慮すると、スイートスポットSSの高さHSは、18mm以上が好ましく、19mm以上がより好ましく、20mm以上がより好ましい。
【0065】
体積が大きいヘッドでは、重心深度G1が大きくなりやすいため、厚肉部による上記効果が高まる。この観点から、ヘッド体積は、400cm3以上が好ましく、410cm3以上がより好ましく、420cm3以上がより好ましい。ゴルフルールの観点から、ヘッド体積は、470cm3以下が好ましく、465cm3以下がより好ましく、460cm3以下がより好ましい。
【0066】
上記実施形態では、フェース部に厚肉部を設けつつ、反発係数の低下が抑制されている。この観点から、フェースセンターFcにおけるCORは、0.820以上が好ましく、0.821以上がより好ましく、0.822以上がより好ましい。CORを過度に高めると、フェース部の強度が低下しうる。この観点から、フェースセンターFcにおけるCORは、0.870以下が好ましく、0.865以下がより好ましく、0.860以下がより好ましい。
【0067】
CORは、Coefficient Of Restitutionの略である。このCORは、U.S.G.A.の Procedure for Measureing the Velocity Ratio of a Club Head for Conformance to Rule 4-1e, Revision 2 (February 8, 1999) に準拠して測定される。この測定方法は、具体的には以下の通りである。タイトリスト社製のゴルフボール(ピナクルゴールド)を、ボール発射装置で速度160フィート(48.77m/s)にてヘッドの1m手前から発射し、台座上に固着することなく載置されたヘッドのフェースセンターFcに衝突させる。ヘッドから13インチ(330.2mm)の位置及び25インチ(635mm)の位置にそれぞれ速度センサを設置し、2つのセンサ間で跳ね返ったボールの速度を測定し、以下の式から反発係数eを算定する。この反発係数eが、CORである。
(Vo/Vi)=(eM-m)/(M+m)
ただし、Viはゴルフボールの入力速度(=48.77m/s)であり、Voはゴルフボールの跳ね返り速度であり、Mはヘッドの質量であり、mはゴルフボールの質量である。
【0068】
正面視において、厚肉部の投影面積がS1とされ、打撃フェースの投影面積がS2とされる。厚肉部の重量を大きくする観点から、S1/S2は、5%以上が好ましく、8%以上がより好ましく、10%以上がより好ましい。厚肉部を下部周縁領域のみに配置する観点から、S1/S2は、45%以下が好ましく、42%以下がより好ましく、40%以下がより好ましい。
【0069】
正面視において、厚肉部の投影面積がS1とされ、フェース部の下部の投影面積がS3とされる。厚肉部の重量を大きくする観点から、S1/S3は、20%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、30%以上がより好ましい。厚肉部を下部周縁領域のみに配置する観点から、S1/S3は、70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下がより好ましい。
【0070】
図8(a)はヘッド2の変形例である、ヘッド2aの正面図である。ヘッド2と異なり、ヘッド2aでは、上述の定義で決定される輪郭線k1が、フェース部4のヒール側において途切れている。この場合、以下の通り、正面視において、輪郭線k1の延長線Lx及び延長線Lyが決定される。輪郭線k1の第1の途切れ部分において、端点E1と、この端点E1から0.5mm隔てた点E2と、この点E2から0.5mm隔てた点E3とが決定される。同様に、輪郭線k1の第2の途切れ部分において、端点E4と、この端点E4から0.5mm隔てた点E5と、この点E5から0.5mm隔てた点E6とが決定される。これらの0.5mmは、輪郭線k1に沿った道のり距離である。3つの点E1、E2及びE3を通る円の円弧が、延長線Lxである。3つの点E1、E2及びE3が一直線上にある場合、延長線Lxは直線である。3つの点E4、E5及びE6を通る円の円弧が、延長線Lyである。3つの点E4、E5及びE6が一直線上にある場合、延長線Lyは直線である。延長線Lxと延長線Lyとの交点が、打撃フェース4aの最もヒール側の端khとされうる。輪郭線k1がフェース部4のトウ側において途切れている場合も、同じ方法で端ktが決定されうる。輪郭線k1が途切れている位置に関わらず、上記延長線が定義されうる。輪郭線k1が途切れている場合、上記延長線及び輪郭線k1により、打撃フェース4aの投影面積S2が決定されうる。
【実施例0071】
[実施例1]
実施例1は、前述した第1実施形態のヘッド2(
図4参照)とされた。Ti-8Al-2Vを鋳造で成形して、ボディ部材b1を得た。Ti-6Al-4Vを鍛造で成形して、フェース部材f1を得た。フェース部材f1をボディ部材b1に溶接して、ヘッド2と同じ実施例1のヘッドを得た。このヘッドにシャフト及びグリップを装着して、実施例1のクラブを得た。ヘッド体積は460cm
3であり、ロフト角は10.5°であり、クラブ長さは45.5インチとされた。
[実施例2]
実施例2は、前述した第2実施形態のヘッド102(
図6参照)とされた。厚肉部の形態が相違する他は実施例1と同様にして、ヘッド102と同じ実施例2のヘッドと、それを用いたクラブとを得た。
[比較例1]
比較例1は、前述した参考例のヘッド202(
図7参照)とされた。厚肉部の形態が相違する他は実施例1と同様にして、ヘッド202と同じ比較例1のヘッドと、それを用いたクラブとを得た。
[比較例2]
厚肉部を設けない他は実施例1と同様にして、比較例2のヘッドと、それを用いたクラブとを得た。
【0072】
なお、実施例1、実施例2及び比較例1において、厚肉部の体積及び重量は同一とされた。ヘッド重量は、全ての実施例及び全ての比較例で同一とされた。フェース部の重量も、全ての実施例及び全ての比較例で同一とされた。比較例2では、実施例1から厚肉部46が除かれたフェース部をベースとして、フェース部全体(最小肉厚t3の近傍を除く)で一様に肉厚を増やすことで、フェース部の重量を実施例1等と同一とした。ただし、比較例2の最小肉厚t3については実施例1、2及び比較例1と同一とした。
【0073】
<評価>
各ヘッドについて、上述の方法で、フェースセンターFcでのCORを測定した。また、ツルーテンパー社製のスイングロボットにクラブを取り付け、フェースセンターFcを打点として、ヘッドスピード45m/sで打撃させて、飛距離を計測した。各実施例及び各比較例の仕様及び評価結果が、下記の表1に示される。
【0074】
【0075】
表1に示されるように、実施例1及び2は、比較例1及び2に比べて評価が高い。
【0076】
以下の付記は、本発明に含まれる発明の一部である。
[付記1]
打撃フェースを有するフェース部と、ソール部と、クラウン部と、ホーゼル部と、ヘッド重心とを備えており、
前記打撃フェースが、前記ヘッド重心を通り前記打撃フェースに垂直な直線と前記打撃フェースとの交点であるスイートスポットと、フェースセンターとを有しており、
前記フェース部が前記スイートスポットを通る水平面により上部と下部とに区画されるとき、前記下部が、前記上部の最大肉厚よりも厚い厚肉部を有しており、
前記厚肉部の少なくとも一部が、前記フェース部の最大肉厚を有する最大肉厚部であり、
前記フェースセンターの位置における前記下部の上下方向幅の30%がオフセット幅とされ、前記下部において前記打撃フェースの輪郭線に沿った前記オフセット幅の領域が下部周縁領域とされるとき、前記厚肉部の全体が前記下部周縁領域に配置されているゴルフクラブヘッド。
[付記2]
前記最大肉厚部の肉厚が、前記上部の最小肉厚の3.0倍以上である付記1に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記3]
前記厚肉部の全体が、前記ヘッドの重心よりも下側に配置されている付記1又は2に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記4]
前記厚肉部が、トウ側とヒール側とに分配されている付記1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記5]
前記フェース部が、そのトウ側の端からのトウ-ヒール方向距離がフェース長の30%以内の領域であるトウ側領域と、そのヒール側の端からのトウ-ヒール方向距離がフェース長の30%以内の領域であるヒール側領域と、前記トウ側領域と前記ヒール側領域との間の領域である中央領域とに区画されるとき、
前記厚肉部が、前記トウ側領域に配置されたトウ厚肉部と、前記ヒール側領域に配置されたヒール厚肉部とに分配されており、
前記中央領域に前記厚肉部が存在しない付記4に記載のゴルフクラブヘッド。
[付記6]
前記フェース部が、そのトウ側の端からのトウ-ヒール方向距離がフェース長の30%以内であるトウ側領域と、そのヒール側の端からのトウ-ヒール方向距離がフェース長の30%以内であるヒール側領域と、前記トウ側領域と前記ヒール側領域との間の領域である中央領域とに区画されるとき、
前記厚肉部が、前記トウ側領域から前記中央領域を経由して前記ヒール側領域まで延びている付記1から3のいずれか1項に記載のゴルフクラブヘッド。