(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081354
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】建設機械のキャブマウント構造
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20240611BHJP
B62D 21/18 20060101ALI20240611BHJP
E02F 9/08 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E02F9/16 C
B62D21/18 D
E02F9/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194916
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹山 詠祐
(72)【発明者】
【氏名】江口 熙
(72)【発明者】
【氏名】平田 恵鈴夏
【テーマコード(参考)】
2D015
3D203
【Fターム(参考)】
2D015EC02
3D203AA26
3D203BA06
3D203BA07
3D203BC34
(57)【要約】
【課題】フレームと走行装置との干渉を避けつつ、建設機械の車高を低く抑え得る建設機械のキャブマウント構造を提供する。
【解決手段】車体を構成するフレーム12と、フレーム12に接続され、キャブ15の前部がマウントされる前マウント部24と、フレーム12に接続され、キャブ15の後部がマウントされる後マウント部25とを備え、前マウント部24と後マウント部25は、キャブ15の下面がフレーム12の上面より下に位置する高さでキャブ15を支持する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を構成するフレームと、
前記フレームに接続され、キャブの前部がマウントされる前マウント部と、
前記フレームに接続され、前記キャブの後部がマウントされる後マウント部とを備え、
前記前マウント部と前記後マウント部は、前記キャブの下面が前記フレームの上面より下に位置する高さで前記キャブを支持するよう構成されていること
を特徴とする建設機械のキャブマウント構造。
【請求項2】
前記前マウント部は、前記フレームの下方に設けられる走行装置の前端よりも前方の位置に、前記フレームよりも低い高さで設けられること
を特徴とする請求項1に記載の建設機械のキャブマウント構造。
【請求項3】
前記後マウント部は、前記キャブの後面に設けられた繋留部をマウントするよう構成されること
を特徴とする請求項1に記載の建設機械のキャブマウント構造。
【請求項4】
前記後マウント部は、前記キャブの後面に設けられた繋留部を前記フレームの上面よりも高い位置でマウントするよう構成された後マウントフレームを備え、
該後マウントフレームは、該後マウントフレームを前後に貫通する貫通孔を備えること
を特徴とする請求項3に記載の建設機械のキャブマウント構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械においてキャブを車体にマウントするための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は建設機械の一例としてクローラキャリアを示している。クローラキャリア1の車体を構成するフレーム2は、走行装置であるクローラ3の上に旋回輪4を介して旋回可能に取り付けられており、フレーム2上の前部にはキャブ5が設置されている。キャブ5の後方には、荷台6が起伏可能に取り付けられている。
【0003】
フレーム2は、車体の前後方向に沿って設けられた2本のサイドメンバと、該2本のサイドメンバに交差するよう左右方向に沿って設けられた複数のクロスメンバを備えて構成され、それらの上にキャブ5や荷台6が支持されている。
【0004】
この種の建設機械におけるフレームの構造に関連する技術を開示した先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の如き建設機械においては一般に、なるべく車高を低く抑えたいという要求がある。クローラキャリア1のような建設機械は、運搬車に積載されて公道を運搬されることが多く、その際、積載された建設機械の車高が高いほど全体の車高が高くなり、道によっては車高制限をクリアできない可能性が高まるのである。また、建設機械が稼働する建設現場等においても、様々な障害物を躱すために建設機械の車高を低くすることが有効な局面は想定できる。
【0007】
一方で、建設機械1においては、フレーム2や、該フレーム2に取り付けられた各種の機器や構造物と、走行装置(クローラ)3とが干渉することを避ける必要がある。このためには、フレーム2を走行装置3より上に支持すると共に、フレーム2の上にキャブ5や荷台6を配置することが有効であるが、そのようにすると建設機械1の車高はある程度高くならざるを得ない。特に、上述のように旋回輪4を備えた旋回式の建設機械にあっては、フレーム2の走行装置3に対する旋回を考慮しつつ、フレーム2と走行装置3との干渉を避けなくてはならない。つまり、建設機械の車高を低くしようとしても、フレームと走行装置との干渉を避ける必要がある以上、そこには自ずと限界があった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、フレームと走行装置との干渉を避けつつ、建設機械の車高を低く抑え得る建設機械のキャブマウント構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、車体を構成するフレームと、前記フレームに接続され、キャブの前部がマウントされる前マウント部と、前記フレームに接続され、前記キャブの後部がマウントされる後マウント部とを備え、前記前マウント部と前記後マウント部は、前記キャブの下面が前記フレームの上面より下に位置する高さで前記キャブを支持するよう構成されていることを特徴とする建設機械のキャブマウント構造にかかるものである。
【0010】
本発明の建設機械のキャブマウント構造において、前記前マウント部は、前記フレームの下方に設けられる走行装置の前端よりも前方の位置に、前記フレームよりも低い高さで設けることができる。
【0011】
本発明の建設機械のキャブマウント構造において、前記後マウント部は、前記キャブの後面に設けられた繋留部をマウントするよう構成することができる。
【0012】
本発明の建設機械のキャブマウント構造において、前記後マウント部は、前記キャブの後面に設けられた繋留部を前記フレームの上面よりも高い位置でマウントするよう構成された後マウントフレームを備え、該後マウントフレームは、該後マウントフレームを前後に貫通する貫通孔を備えることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の建設機械のキャブマウント構造によれば、フレームと走行装置との干渉を避けつつ建設機械の車高を低く抑えるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施による建設機械のフレームの形態の一例を示す平面図である。
【
図4】
図1のフレームを備えた建設機械の前部の形態を示す側面図である。
【
図5】
図4の建設機械におけるキャブに対する繋留具の取付状態を特に示す側断面図である。
【
図6】
図4の建設機械において、キャブの後面に設けられた繋留部の形態を特に示す平面図である。
【
図7】建設機械としてのクローラキャリアの形態の一例を簡易的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1~
図3は本発明のキャブマウント構造を適用した建設機械のフレームの形態の一例を示し、
図4はそのようなフレーム構造を備えた建設機械としてのクローラキャリアの形態の一例を示している。
図4に示す如く、クローラキャリア10の車体を構成するフレーム12は、走行装置であるクローラ13の上に旋回輪14を介して旋回可能に取り付けられており、フレーム12上の前部にはキャブ15が設置されている。キャブ15の後方には、荷台16がシリンダ機構によって起伏可能に取り付けられている。
【0017】
フレーム12は、
図1に示す如く、車両の前後方向に沿って設けられた3本のサイドメンバ20(第一のサイドメンバ20a~第三のサイドメンバ20c)と、該3本のサイドメンバ20に交差するよう左右方向に沿って設けられた複数のクロスメンバ21(第一のクロスメンバ21a~第五のクロスメンバ21e)を備えて構成されている。
【0018】
サイドメンバ20a~20cのうち、第一のサイドメンバ20a、第二のサイドメンバ20bは、一般的な建設機械の車体フレームにおける左サイドメンバに相当し、第三のサイドメンバ20cは、右サイドメンバに相当する。第一のサイドメンバ20aは、左サイドメンバのうち前部を構成し、第二のサイドメンバ20bは、前記左サイドメンバの残部(後部および中間部)を構成する。左サイドメンバの一部をなす第二のサイドメンバ20bと、右サイドメンバをなす第三のサイドメンバ20cは、旋回輪14(
図4参照)による旋回中心(
図1中にCの符号にて示す)に対し、車両の左右方向に関して等距離に位置しているが、左サイドメンバの前部をなす第一のサイドメンバ20aは、第二のサイドメンバ20bに対し、車両の左右方向に関してやや内側(右側)に位置している。これは、本実施例のクローラキャリア10(
図4参照)において、キャブ15を車両の左側前方に配置するためである。本実施例では、後述するようにキャブ15の下部がフレーム12の上面よりも下に位置するよう、フレーム12に対しキャブ15を支持するが、そのような配置を行うにあたり、サイドメンバの位置によっては、該サイドメンバがキャブ15の配置の妨げになる。そこで、フレーム12の前部をなすサイドメンバのうち、キャブ15が配置される側のサイドメンバを構成する部分(本実施例の場合、左サイドメンバの前部をなす第一のサイドメンバ20a)を、車両の左右方向に関して中央寄り(右寄り)に配置するのである。キャブが車両の右前方に配置される建設機械の場合は、必要に応じて右サイドメンバの前部を左寄りに配置すればよい。尚、キャブの配置とサイドメンバの構造の関係については、後に改めて詳述する。
【0019】
左サイドメンバを構成する第一、第二のサイドメンバ20a,20bと、右サイドメンバを構成する第三のサイドメンバ20cは、前方から順に第一~第五のクロスメンバ21a~21eによって相互に接続されている。第一、第二のサイドメンバ20a,20bと、第三のサイドメンバ20cとは、互いに平行に延びているが、第一のサイドメンバ20aは、第三のサイドメンバ20cの前端よりも前方に延びている。第一のサイドメンバ20aの長手方向中間部は、第一のクロスメンバ21aにより第三のサイドメンバ20cの前端に接続されている。第一のクロスメンバ21aは、一端(左端部)が第一のサイドメンバ20aの中間部に接続され、中間部が第三のサイドメンバ20cの前端に接続され、他端(右端部)は第三のサイドメンバ20cより右側へ延びている。第一のサイドメンバ20aの後端は、第二のクロスメンバ21bにより、第二のサイドメンバ20bの前端、および第三のサイドメンバ20cの中間部における前寄りの位置に接続されている。第二のクロスメンバ21bは、一端(左端部)が第二のサイドメンバ20bの前端に接続され、中間部が第一のサイドメンバ20aの後端に接続され、他端(右端部)は第三のサイドメンバ20cに接続されている。
【0020】
第三、第四のクロスメンバ21c,21dは、両端を第二、第三のサイドメンバ20b,21cの中間部にそれぞれ接続されている。第三、第四のクロスメンバ21c,21dの間には旋回中心Cが位置し、ここに旋回輪14(
図4参照)の上部が下から接続される。第五のクロスメンバ21eは、両端を第二、第三のサイドメンバ20b,21cの後端にそれぞれ接続されている。
【0021】
第一のサイドメンバ20aの前端の位置、第一のサイドメンバ20aの後端の位置、第二のサイドメンバ20bにおける中間部(第三のクロスメンバ21cと第四のクロスメンバ21dの間の位置)の位置には、それぞれ第一、第二のサイドメンバ20a,20bから左へ延びるように支持部材が接続され、キャブ15(
図4参照)や図示しない補機等を支持する左側のブラケット22をなしている。同様に、第三のサイドメンバ20cの前部には、該第三のサイドメンバ20cから右へ延びるように支持部材が接続され、第三のサイドメンバ20cの前端から右へ延びる第一のクロスメンバ21aの一部と共に、図示しないバッテリや補機等を支持する右側のブラケット23をなしている。
【0022】
そして、左側のブラケット22を構成する支持部材のうち、第一のサイドメンバ20aの前端の位置に設けられた支持部材は、キャブ15(
図4参照)の前部を支持する前マウント部24を構成し、第一のサイドメンバ20aの後端の位置に設けられた支持部材は、キャブ15の後部を支持する後マウント部25を構成する。車両の前後方向に関する前マウント部24の位置は、前述の通り第一のサイドメンバ20aの前端の位置と同じであるが、この位置は走行装置(クローラ)13の前端よりも前方である。また、車両の前後方向に関する後マウント部25の位置は、走行装置(クローラ)13の前端よりも後方であり、旋回中心Cよりも前方である。
【0023】
この前マウント部24および後マウント部25について、特に説明する。
【0024】
前マウント部24は、第一のサイドメンバ20aの前端部から左へ延びるように設けられた梁材24aと、該梁材24aの後方へ延びる繋留部24bを備えて構成されている。梁材24aは、
図1~
図3に示す如く、右端部の上面が第一のサイドメンバ20aの前端部の下面の下方に位置する形で、第一のサイドメンバ20aに支持されており、これにより、フレーム12を構成する各サイドメンバ20やクロスメンバ21よりも一段低い高さに位置している。
【0025】
梁材24aの右端部は、第一のサイドメンバ20aの前端面に接続された吊ブラケット24cを介し、第一のサイドメンバ20aの前端部から吊り下げられる形で第一のサイドメンバ20aに固定されている。このような構造により、前マウント部24は、第一のサイドメンバ20aに対し片持ち梁構造で支持されることになるが、梁材24aの右端部には、さらに補強部材24dが接続されている。補強部材24dは、一端を梁材24aの右端部に接続されると共に、他端を第一のクロスメンバ21aの中間部に接続された細長い板状の部材であり、これにより、梁材24aの右端部と、第一のクロスメンバ21aの中間部とが斜めに連結される。こうして、梁材24aの片持ち梁構造が補強され、前マウント部24の支持強度と剛性が保たれるようになっている。
【0026】
繋留部24bは、水平方向に沿った面をなすフランジ24eに、該フランジ24eを上下に貫通する2個の繋留孔24fを備えて構成されている(
図1参照)。フランジ24eは、梁材24aの後部上端から後方へ延びる板状の部材であり、梁材24aの上面の高さで水平方向に沿った面をなしている。フランジ24eは、梁材24aの向きに沿って車両の左右方向に細長く延び、その向きに2個の繋留孔24fが配列している。
【0027】
一方、キャブ15の前方下面には、
図4、
図5に示す如く、前マウント部24の繋留部24bに対応する位置に繋留部15aが設けられている。この繋留部15aには、前マウント部24のフランジ24eに設けられた繋留孔24fに対応する位置に繋留孔が設けられており、キャブ15の前部を前マウント部24にマウントした状態で、この繋留孔同士の位置を合わせてアンカやボルト等の繋留具28を取り付けることで、キャブ15の前部が前マウント部24に対し繋留されるようになっている。
【0028】
後マウント部25の上面には、
図1~
図3に示す如き後マウントフレーム27が接続される。後マウントフレーム27は、後マウント部25の位置においてフレーム12の上方に突出するように設けられる部材である。後マウントフレーム27は、車両の前後方向に直交する面をなす部材である主面部27aと、該主面部27aの上縁に設けられた繋留部27bを備えて構成されている。
【0029】
繋留部27bは、水平方向に沿った面をなすフランジ27cに、該フランジ27cを上下に貫通する2個の繋留孔27dを備えて構成されている(
図1参照)。フランジ27cは、主面部27aの上縁から前後に突出するように設けられた板状の部材であり、主面部27aの上縁の高さで水平方向に沿った面をなしている。フランジ27cは、後マウント部25および主面部27aの向きに沿って車両の左右方向に細長く延び、その向きに2個の繋留孔27dが配列している。
【0030】
一方、
図4~
図6に示す如く、キャブ15の後部における上下方向に関して中間部には、後マウント部25に取り付けられた後マウントフレーム27の繋留部27bに対応する位置に、繋留部15bが設けられている。繋留部15bは、キャブ15の後面から後方へ突出するように設けられ、後マウントフレーム27に対しキャブ15の後部をマウントし、繋留するための構造である。通常、キャブをフレームにマウントし、繋留するためのキャブ側の構造は、前後ともキャブの下面に設けられることが多いが、本実施例ではこのように、キャブ15の下面ではなく後面に繋留部15bを設けている。
【0031】
繋留部15bには、後マウントフレーム27のフランジ27cに設けられた繋留孔27dに対応する位置に繋留孔が設けられており、キャブ15の繋留部15bを後マウントフレーム27にマウントした状態で、この繋留孔同士の位置を合わせてアンカやボルト等の繋留具28を取り付けることで、キャブ15の後部が後マウントフレーム27に対し繋留されるようになっている。
【0032】
また、
図3に示す如く、後マウントフレーム27の主面部27aの中央部には、該主面部27aを前後に貫通する貫通孔27eが設けられており、必要に応じ、この貫通孔27eを通して配管や配線等を設置できるようになっている。
【0033】
こうして、
図4に示す如く、キャブ15は前部を前マウント部24に、後部を後マウントフレーム27にマウントされた姿勢で、フレーム12に繋留される。ここで、キャブ15の下面は、フレーム12のなす面と平行であるが、キャブ15の下面が支持されている高さは前マウント部24のフランジ24eの高さであり、この高さはフレーム12の上面に対し、寸法d(
図2参照)だけ低い。
【0034】
通常の建設機械、例えば
図7に示すような従来のクローラキャリア1においては、キャブ5はフレーム2の上面に対して下面を支持する形でマウントされる。すなわち、キャブ5の下面の高さは、フレーム2の上面と同じ高さか、それより上の高さに位置する。これに対し、
図4に示す本実施例のクローラキャリア10では、キャブ15の下面は、
図7に示すキャブ5の下面と比較して寸法dほど低い。即ち、本実施例のクローラキャリア10の車高は、従来例のクローラキャリア1と比べ、車高が寸法dほど低い。従来であればフレームの上面にキャブをマウントしていたところ、本実施例ではフレーム12に対し一段低い高さに前マウント部24を設け、この前マウント部24の高さにキャブ15をマウントすることにより、キャブ15を低い位置に支持し、クローラキャリア10の車高を低くしているのである。
【0035】
ここで、キャブ15を支持する位置をあまり低くすれば、該キャブ15がクローラ13に干渉してしまうため、キャブ15の位置を際限なく下げることはできないが、本実施例のように、走行装置(クローラ)13の上方にフレーム12を配した構造の建設機械(クローラキャリア)10においては、該フレーム12の下面の高さにある物体であればフレーム12と干渉する虞はない。よって、キャブ15は、下面がフレーム12の下面と同程度の高さに位置する程度までであれば下げることができる。すなわち、寸法dは、概ねサイドメンバ20やクロスメンバ21によって構成されるフレーム12の厚み程度である。
【0036】
このように、本実施例では、キャブ15をフレーム12の上面に支持しない。この場合、フレーム12に対しキャブ15を支持する構造が別途必要となる。本実施例の場合、これが前マウント部24と、後マウント部25および後マウントフレーム27である。
【0037】
前マウント部24は、フレーム12に対し下方に位置しており、キャブ15の前部を下方から支持するようになっている。このように設けられた前マウント部24は、フレーム12の下面よりは低い位置にあるが、前マウント部24の設けられた位置はクローラ13の前端より前方であるので、前マウント部24がクローラ13と干渉する心配はない。尚、本実施例ではフレーム12が旋回輪14によってクローラ13に対し旋回するようになっているが、前マウント部24は旋回動作をも考慮し、フレーム12が旋回しても旋回輪14と干渉しない位置に設けられている。すなわち、平面視において(
図1参照)、旋回中心Cから前マウント部24までの最小距離は、旋回中心Cからクローラ13の端部までの最大距離よりも長く設定されている。
【0038】
一方、後マウント部25に関しては、クローラ13の前端より後方に位置するので、これを前マウント部24のようにフレーム12の下面より低い位置に設けようとすると、クローラ13と干渉する可能性がある。そこで、キャブ15の後面に、該後面から突出するように繋留部15bを設け、該繋留部15bをフレーム12の上面から上の高さにおいて後マウントフレーム27にマウントしている。ここで、繋留部15bを備える高さ(すなわち、フレーム12において繋留部15bをマウントする高さ)は、フレーム12の上面の高さとしても構わないが、本実施例では後マウント部25の上に後マウントフレーム27を設け、繋留部15bをマウントする高さをフレーム12の上面より高く設定している。これは、建設機械であるクローラキャリア10において、キャブ15の後方下部に各種の装置や配管・配線類が設置される場合があるためである。キャブ15をマウントし、繋留するための構造(繋留部15b,27bや繋留具28)には相応の体積が必要であり、これをフレーム12の上面の高さに配置すると、これが同じ高さに配置される前記装置や配管・配線類の邪魔になってしまう可能性がある。そこで、本実施例のように後マウントフレーム27を設置して繋留部15b,27bをフレーム12より上の高さに設け、繋留部15b,27bとフレーム12の間の高さに貫通孔27eを設ければ、該貫通孔27eに配管や配線を通すことができ、スペースが限られるフレーム12上の空間において、装置類のレイアウトが邪魔されることを避けることができる。
【0039】
また本実施例では、左サイドメンバの前部をなす第一のサイドメンバ20aが、左サイドメンバの残りの部分をなす第二のサイドメンバ20bと比べ、車両の左右方向に関して内側寄り(右寄り)に配置されている。これは、フレーム12よりも低い位置でキャブ15を支持するにあたり、左サイドメンバがキャブ15の配置の妨げになることを避けるための構造である。キャブ15を配置する側のサイドメンバ(左サイドメンバ20)が車両の左右方向に関して内側に回り込むことにより、キャブ15を適切な位置に無理なく配置できるのである。
【0040】
前マウント部24をなす梁材24aの左端部には、キャブ15へ乗降するためのラダー状のステップ29が設けられている。本実施例の場合、キャブ15の位置が従来例と比べて低いため、ステップ29を通じたキャブ15への乗降がしやすいという利点もある。
【0041】
尚、本実施例では前マウント部24や繋留部24bをフレーム12よりも低い位置に設け、キャブ15の前部を下から支持するようにしているが、この他に、フレーム12側の前マウント部や繋留部をキャブ15の前方に設けると共に、キャブ15の前面にも対応する繋留部を設け、これをフレーム12に対し、フレーム12と同じかフレーム12より上の高さでマウントするよう構成することも、理論上は可能である。いわば、本実施例における後マウント部25と同様の構造を、前マウント部に関しても前後逆に採用する構造である。ただし、このようにした場合、車両の前端がキャブ15の前面から突出し、車体前方の旋回半径が大きくなってしまうというデメリットがある。
【0042】
以上のように、上記本実施例の建設機械のキャブマウント構造は、車体を構成するフレーム12と、フレーム12に接続され、キャブ15の前部がマウントされる前マウント部24と、フレーム12に接続され、キャブ15の後部がマウントされる後マウント部25とを備え、前マウント部24と後マウント部25は、キャブ15の下面がフレーム12の上面より下に位置する高さでキャブ15を支持するよう構成されている。このようにすれば、キャブ15を低い位置に支持し、建設機械10の車高を低くすることができる。
【0043】
本実施例において、前マウント部24は、フレーム12の下方に設けられる走行装置13の前端よりも前方の位置に、フレーム12よりも低い高さで設けられている。このようにすれば、前マウント部24が走行装置13と干渉することを避けつつ、前マウント部24によりキャブ15の前部を下方から支持することができる。
【0044】
本実施例において、後マウント部25は、キャブ15の後面に設けられた繋留部15bをマウントするよう構成されている。このようにすれば、後マウント部25が走行装置13と干渉することを避けつつ、後マウント部25によりキャブ15の後部を支持することができる。
【0045】
本実施例において、後マウント部25は、キャブ15の後面に設けられた繋留部15bをフレーム12の上面よりも高い位置でマウントするよう構成された後マウントフレーム27を備え、該後マウントフレーム27は、該後マウントフレーム27を前後に貫通する貫通孔27eを備えている。このようにすれば、貫通孔27eに配管や配線を通し、フレーム12上におけるレイアウトが邪魔されることを避けることができる。
【0046】
したがって、上記各実施例によれば、フレームと走行装置との干渉を避けつつ建設機械の車高を低く抑え得る。
【0047】
尚、本発明の建設機械のキャブマウント構造は、上述の実施例にのみ限定されるものではない。例えば、適用対象の建設機械は旋回式のクローラキャリアに限らず、車体にキャブを配置した建設機械であれば種々の車両に適用できる。その他、本発明の実施にあたっては、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
12 フレーム
15 キャブ
15b 繋留部
24 前マウント部
25 後マウント部
27 後マウントフレーム
27e 貫通孔