(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081365
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】海洋生分解性ポリマー化合物、その製造方法及び海洋生分解性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 79/14 20060101AFI20240611BHJP
C08G 63/00 20060101ALI20240611BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20240611BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20240611BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C08G79/14
C08G63/00
C08L101/16
C08G69/26
C08G18/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194941
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 直弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健太
(72)【発明者】
【氏名】早川 和寿
(72)【発明者】
【氏名】橋場 俊文
【テーマコード(参考)】
4J001
4J029
4J030
4J034
4J200
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001EA06
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4J029AA01
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4J030CC02
4J030CC04
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4J030CC15
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4J030CC29
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4J034CA15
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4J034HC61
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4J034HC71
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4J200AA02
4J200BA09
4J200BA10
4J200BA21
4J200BA29
4J200BA35
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】海洋中での樹脂の分解を助長し、生分解を促進させる、イオン結合を有する海洋生分解性ポリマー化合物を提供する。
【解決手段】(A)所定の分子量の有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物である海洋生分解性連結剤に由来する構造単位A、及び(B1)分子中に前記反応性基Xと反応する2以上の反応性基Yを有する化合物に由来する構造単位B1、又は(B2)開環重合し得る環式化合物であって、開環することによって分子中に前記反応性基Xと反応する反応性基Yを生じる環式化合物に由来する構造単位B2を必須単位として含む海洋生分解性ポリマー化合物であって、構造単位B1を含む場合は、更に(C)前記海洋生分解性連結剤以外の分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物に由来する構造単位Cを含む海洋生分解性ポリマー化合物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物である海洋生分解性連結剤に由来する構造単位A、及び
(B1)分子中に前記反応性基Xと反応する2以上の反応性基Yを有する化合物に由来する構造単位B1、又は(B2)開環重合し得る環式化合物であって、開環することによって分子中に前記反応性基Xと反応する反応性基Yを生じる環式化合物に由来する構造単位B2
を必須単位として含む海洋生分解性ポリマー化合物であって、
構造単位B1を含む場合は、更に
(C)前記海洋生分解性連結剤以外の分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物に由来する構造単位C
を含む海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項2】
前記有機アニオンが、カルボン酸アニオン(-COO-)、スルホン酸アニオン(-SO3
-)、硫酸アニオン(-O-SO3
-)及びリン酸アニオン(-P(=O)(OH)-O-)から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項3】
前記有機アニオンが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びカーボネート結合から選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位を有する請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項4】
前記2価以上の金属カチオンが、カルシウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオン、白金イオン、金イオン、チタンイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ジルコニウムイオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、スカンジウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン又はラジウムイオンである請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項5】
1分子中の2価以上の金属イオンの当量が、平均で1~100eq/105gである請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項6】
海洋生分解性連結剤(A)の溶融温度が、180℃以下である請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項7】
海洋生分解性連結剤(A)1分子中に含まれる金属カチオン数の平均値が、1よりも大きいものである請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項8】
海洋生分解性連結剤(A)のセルロース相対分解度が、40%以上である請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項9】
反応性基X及び反応性基Yが、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はカルボキシ基である請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項10】
構造単位Cに対する構造単位Aの含有比(A:C)が、物質量比で0.1:99.9~90:10である請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項11】
ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド又はポリウレアである請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項12】
海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)のいずれか1種以上が、三官能以上である請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項13】
末端が封止されたものである請求項1記載の海洋生分解性ポリマー化合物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項記載の海洋生分解性ポリマー化合物からなる添加剤。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項記載の海洋生分解性ポリマー化合物を含む海洋生分解性樹脂組成物。
【請求項16】
更に、生分解性樹脂を含む請求項15記載の海洋生分解性樹脂組成物。
【請求項17】
前記海洋生分解性ポリマー化合物の含有量が1~99質量%であり、前記生分解性樹脂の含有量が1~99質量%である請求項16記載の海洋生分解性樹脂組成物。
【請求項18】
請求項15記載の海洋生分解性樹脂組成物から得られる成形体。
【請求項19】
(A)分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物である海洋生分解性連結剤、(B1)分子中に前記反応性基Xと反応する2以上の反応性基Yを有する化合物及び(C)前記海洋生分解性連結剤以外の分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物を重合させる、又は(A)分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物である海洋生分解性連結剤及び(B2)開環重合し得る環式化合物であって、開環することによって分子中に前記反応性基Xと反応する反応性基Yを生じる環式化合物を重合させる、海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
【請求項20】
重合が、重縮合である請求項19記載の海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
【請求項21】
重合させる前に、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)又は海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(B2)を混合する工程を含む請求項19記載の海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
【請求項22】
化合物(C)に対する海洋生分解性連結剤(A)の使用比((A):(C))が、物質量比で0.1:99.9~90:10である請求項19記載の海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
【請求項23】
海洋生分解性連結剤(A)の溶融温度が180℃以下であり、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)又は海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(B2)を溶融させて重合を行う請求項19~22のいずれか1項記載の海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
【請求項24】
分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上のアミノ基、カルボキシ基、チオール基、ビニル基又はイソシアネート基を含む化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋生分解性ポリマー化合物、その製造方法及び海洋生分解性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプラスチックによる環境汚染(海洋汚染)及び生態系への悪影響が問題となっており、環境負荷を低減するための様々な取り組みが始まっている。その中で、生分解性樹脂の開発及び普及に注目が集まっている。
【0003】
一般的な生分解性樹脂は、土壌や汚泥等、分解を担う微生物が多く存在する環境下では高い生分解性を示すものの、海洋中のように微生物濃度が極端に低い環境では分解し難いという欠点がある(非特許文献1)。また、ポリカプロラクトン(PCL)やポリヒドロキシアルカン酸(PHA)等のように海洋中での生分解性が報告されている樹脂についても、その分解速度は、海水の種類により大きく異なることが分かってきており、これには、海水中の分解菌の有無や菌数、塩濃度、pH、水温、溶存酸素濃度、溶存有機炭素量等の様々な要因が影響していると報告されている(非特許文献2)。
【0004】
また、生分解性樹脂としてデンプン系の樹脂も実用化され、上市されているものの、単一デンプン素材では物性面において大きく劣るため、ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)やポリ乳酸(PLA)などの海洋では生分解し難いポリエステル系樹脂との混合組成物になっているのが殆どである。そのため、デンプン系樹脂であっても海洋での生分解性が大きく低下してしまう傾向にある。
【0005】
このような状況下、物性を維持しつつ、どのような種類の海水でも確実に分解が進む材料や、海水中で生分解が進み難い樹脂の分解促進剤となり、かつ、環境負荷を低減するような材料の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】高田秀重、「マイクロプラスチック汚染の現状、国際動向および対策」、廃棄物資源循環学会誌、Vol. 29, No. 4, pp. 261-269, 2018
【非特許文献2】戎井章 他4名、「海水中における生分解性プラスチックの分解」、水産工学、Vol. 40, No. 2, pp. 143-149, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、海洋中での樹脂の分解を助長し、生分解を促進させる、海洋生分解性ポリマー化合物、その製造方法及び該ポリマー化合物を含む海洋生分解性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、(A)分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物である海洋生分解性連結剤に由来する構造単位A、及び(B1)分子中に前記反応性基Xと反応する2以上の反応性基Yを有する化合物に由来する構造単位B1、又は(B2)開環重合し得る環式化合物であって、開環することによって分子中に前記反応性基Xと反応する反応性基Yを生じる環式化合物に由来する構造単位B2を必須単位として含む海洋生分解性ポリマー化合物であって、構造単位B1を含む場合は、更に(C)前記海洋生分解性連結剤以外の分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物に由来する構造単位Cを含む海洋生分解性ポリマー化合物が、海水中でナトリウム、カリウム等の1価カチオンとイオン交換されることで該ポリマー化合物の分子が切断され、海洋分解が促進されることを見出した。海洋生分解性連結剤(A)は、連結剤として使用され、海洋生分解性連結剤(A)を原料とするポリマー化合物において、主鎖にイオン結合をトリガーとする切断部位を導入し、海洋生分解性を付与することができる。
【0009】
さらに、前記海洋生分解性ポリマー化合物を樹脂、特に生分解性樹脂と組み合わせて使用することで、本材料が先行して海水中で一次分解し、(1)樹脂材料中に空孔が形成され、樹脂の比表面積が増加し、分解を担う微生物の増殖を促す効果や、(2)一次分解することで、二次分解、すなわち微生物による生分解を促進する効果が得られ、結果的に樹脂材料の海洋中での生分解を促進できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、下記海洋生分解性ポリマー化合物、その製造方法及び海洋生分解性樹脂組成物を提供する。
1.(A)分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物である海洋生分解性連結剤に由来する構造単位A、及び
(B1)分子中に前記反応性基Xと反応する2以上の反応性基Yを有する化合物に由来する構造単位B1、又は(B2)開環重合し得る環式化合物であって、開環することによって分子中に前記反応性基Xと反応する反応性基Yを生じる環式化合物に由来する構造単位B2
を必須単位として含む海洋生分解性ポリマー化合物であって、
構造単位B1を含む場合は、更に
(C)前記海洋生分解性連結剤以外の分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物に由来する構造単位C
を含む海洋生分解性ポリマー化合物。
2.前記有機アニオンが、カルボン酸アニオン(-COO-)、スルホン酸アニオン(-SO3
-)、硫酸アニオン(-O-SO3
-)及びリン酸アニオン(-P(=O)(OH)-O-)から選ばれる少なくとも1種である1の海洋生分解性ポリマー化合物。
3.前記有機アニオンが、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びカーボネート結合から選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位を有する1又は2の海洋生分解性ポリマー化合物。
4.前記2価以上の金属カチオンが、カルシウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオン、白金イオン、金イオン、チタンイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ジルコニウムイオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、スカンジウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン又はラジウムイオンである1~3のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
5.1分子中の2価以上の金属イオンの当量が、平均で1~100eq/105gである1~4のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
6.海洋生分解性連結剤(A)の溶融温度が、180℃以下である1~5のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
7.海洋生分解性連結剤(A)1分子中に含まれる金属カチオン数の平均値が、1よりも大きいものである1~6のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
8.海洋生分解性連結剤(A)のセルロース相対分解度が、40%以上である1~7のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
9.反応性基X及び反応性基Yが、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基又はカルボキシ基である1~8のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
10.構造単位Cに対する構造単位Aの含有比(A:C)が、物質量比で0.1:99.9~90:10である1~9のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
11.ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド又はポリウレアである1~10のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
12.海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)のいずれか1種以上が、三官能以上である1~11のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
13.末端が封止されたものである1~12のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物。
14.1~13のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物からなる添加剤。
15.1~13のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物を含む海洋生分解性樹脂組成物。
16.更に、生分解性樹脂を含む15の海洋生分解性樹脂組成物。
17.前記海洋生分解性ポリマー化合物の含有量が1~99質量%であり、前記生分解性樹脂の含有量が1~99質量%である16の海洋生分解性樹脂組成物。
18.15~17のいずれかの海洋生分解性樹脂組成物から得られる成形体。
19.(A)分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物である海洋生分解性連結剤、(B1)分子中に前記反応性基Xと反応する2以上の反応性基Yを有する化合物及び(C)前記海洋生分解性連結剤以外の分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物を重合させる、又は(A)分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物である海洋生分解性連結剤及び(B2)開環重合し得る環式化合物であって、開環することによって分子中に前記反応性基Xと反応する反応性基Yを生じる環式化合物を重合させる、海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
20.重合が、重縮合である19の海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
21.重合させる前に、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)又は海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(B2)を混合する工程を含む19又は20の海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
22.化合物(C)に対する海洋生分解性連結剤(A)の使用比((A):(C))が、物質量比で0.1:99.9~90:10である19~21のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
23.海洋生分解性連結剤(A)の溶融温度が180℃以下であり、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)又は海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(B2)を溶融させて重合を行う19~22のいずれかの海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法。
24.分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上のアミノ基、カルボキシ基、チオール基、ビニル基又はイソシアネート基を含む化合物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の海洋生分解性ポリマー化合物は、海洋生分解性を有するため、これを含む組成物や成形体は、海洋中での生分解が促進され、海洋汚染対策に有用である。本発明の海洋生分解性ポリマー化合物を用いることで、環境にやさしい組成物や成形体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[海洋生分解性ポリマー化合物]
本発明の海洋生分解性ポリマー化合物は、(A)分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物である海洋生分解性連結剤(以下、海洋生分解性連結剤(A)ともいう。)に由来する構造単位A、及び(B1)分子中に前記反応性基Xと反応する2以上の反応性基Yを有する化合物(以下、化合物(B1)ともいう。)に由来する構造単位B1、又は(B2)開環重合し得る環式化合物であって、開環することによって分子中に前記反応性基Xと反応する反応性基Yを生じる環式化合物(以下、化合物(B2)ともいう。)に由来する構造単位B2を必須単位として含む。ただし、構造単位B1を含む場合は、更に(C)海洋生分解性連結剤(A)以外の分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物(以下、化合物(C)ともいう。)に由来する構造単位Cを含む。
【0013】
海洋生分解性連結剤(A)は、分子量が100~10000である有機アニオンを2以上含み、該有機アニオンが2価以上の金属カチオンによるイオン結合で結合した構造を主鎖に有し、分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物からなるものである。
【0014】
前記有機アニオンは、海水での生分解性及び機械物性の観点から、その分子量が100~10000である。分子量の下限は、400以上が好ましく、500以上がより好ましく、600以上が更に好ましく、700以上が最も好ましい。一方、分子量の上限は、6000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、4000以下が更に好ましく、3000が最も好ましい。分子量が10000を超えると生分解が困難であり、100未満であると樹脂中のイオンの割合が多くなり、機械的物性の低下が懸念されるため、好ましくない。なお、本発明における有機アニオンの分子量とは、末端基定量法より求めた数平均分子量を意味する。
【0015】
前記有機アニオンは、カルボン酸アニオン(-COO-)、スルホン酸アニオン(-SO3
-)、硫酸アニオン(-O-SO3
-)及びリン酸アニオン(-P(=O)(OH)-O-)から選ばれる1価アニオン性置換基を有するものが好ましい。前記有機アニオンとしては、特にカルボン酸アニオンを有するものが好ましい。
【0016】
前記有機アニオンは、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びカーボネート結合から選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位を有することが好ましい。具体的には、前記繰り返し単位は、ポリアルキレングリコール、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート又はポリアミドに由来するものが好ましい。
【0017】
前記2価以上の金属カチオンは、特に限定されないが、カルシウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、鉄イオン、銅イオン、白金イオン、金イオン、チタンイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、ジルコニウムイオン、ルテニウムイオン、ロジウムイオン、パラジウムイオン、スカンジウムイオン、ガリウムイオン、インジウムイオン、ラジウムイオン等が挙げられる。これらのうち、カルシウムイオン、ベリリウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン等が好ましく、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン等がより好ましい。
【0018】
海洋生分解性連結剤(A)は、1分子中に含まれる金属カチオン数が、平均で1以上であるが、より高い海洋生分解性の促進効果が得られるという観点から、1よりも大きいことが好ましい。前記金属カチオン数の上限は、機械的物性の観点から、10以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましい。すなわち、海洋生分解性連結剤(A)は、少なくとも1つの反応性基Xと1つの1価アニオン性置換基とを有する1価有機アニオン2つ以上を2価以上の金属カチオン1つで結合した構造の化合物(以下、化合物(A1)ともいう。)、及び2つ以上の1価アニオン性置換基を有する多価有機アニオンを2価以上の金属カチオンで結合させ、その末端を2価以上の金属カチオンを介して少なくとも1つの反応性基Xと1つの1価アニオン性置換基とを有する1価有機アニオンで封止した構造の化合物(以下、化合物(A2)ともいう。)の混合物であることが好ましい。換言すれば、化合物(A2)は、2つ以上の1価アニオン性置換基を有する多価有機アニオンからなる構造単位が2価以上の金属カチオンを介して1つ以上含まれ、その末端が2価以上の金属カチオンを介して前記1価有機アニオンで封止されたものである。すなわち、化合物(A1)は1分子中に1つのみ金属カチオンを有し、化合物(A2)は1分子中に2つ以上の金属カチオンを有するものである。
【0019】
海洋生分解性連結剤(A)は、その溶融温度が180℃以下であることが好ましい。前記溶融温度は、取り扱い性や他の成分との反応性、得られるポリマー化合物の物性を考慮すると、40~180℃であることが好ましく、60~150℃であることがより好ましい。
【0020】
海洋生分解性連結剤(A)は、そのセルロース相対分解度が40%以上であることが好ましい。なお、本発明においてセルロース相対分解度とは、海水に浸漬後60日経過後におけるセルロースに対する分解度である。海洋生分解性連結剤(A)は、セルロース相対分解度が50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましく、80%以上であることが最も好ましい。なお、セルロース相対分解度は、ASTM D6691やそれらを参考に改変されたBODによる海洋生分解試験方法等により測定することができる。
【0021】
反応性基Xは、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基及びイソシアネート基から選ばれる基が好ましいが、反応性と化学的安定性の観点からヒドロキシ基、アミノ基又はカルボキシ基がより好ましく、ヒドロキシ基又はアミノ基がより好ましく、ヒドロキシ基が最も好ましい。前記海洋生分解性連結剤(A)は、主鎖の末端に反応性基Xを有することが好ましい。
【0022】
海洋生分解性連結剤(A)は、生分解性の観点から、二官能性であることが好ましいが、物性及び生分解性の調整の観点から三官能以上の化合物を用いてもよい。
【0023】
海洋生分解性連結剤(A)は、生分解性を促進させる観点から、環構造を含まないことが好ましい。ただし、物性及び生分解性の調整の観点から、環構造を導入してもよい。
【0024】
海洋生分解性連結剤(A)の数平均分子量は、500~10000であることが好ましく、ハンドリング性及び機械的物性を考慮すると、1000~8000がより好ましく、1500~6000が更に好ましい。数平均分子量が前記範囲であれば、反応性や全体の生分解速度を制御する観点から好ましい。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0025】
海洋生分解性連結剤(A)は、2以上の反応性基Xを有する化合物に前述した1価アニオン性置換基を導入し、2価以上の金属カチオンを有する塩化合物(多価金属塩)を用いてイオン結合させることで合成することができる。
【0026】
前記2以上の反応性基Xを有する化合物としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸又はその酸塩化物、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
前記ポリオールとしては、ポリアルキレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドポリオール、ポリエステルポリアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール等のヒドロキシ基を2つ以上有する化合物が挙げられ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プラクセル210B、220N、308((株)ダイセル製)、ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリブチレンサクシネート、ビス(6-ヒドロキシヘキシル)ポリブチレンサクシネート、ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリブチレンアジペート、N,N'-ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ビス(4-ヒドロキシブチル)ポリブチレンテレフタレート、クラレポリオールP-510、P-1010、P-2010、P-2050、P-520、C-590、F-1010((株)クラレ製)等が挙げられる。これらは、公知の方法で合成してもよく、市販品を使用してもよい。
【0028】
前記ポリアミンとしては、ポリアルキレングリコールジアミン、ポリカプロラクタムポリアミン、ポリエステルポリアミン、ポリアミドポリアミン、ポリエステルポリアミドポリアミン、ポリカーボネートポリアミン等のアミノ基を2つ以上有する化合物が挙げられ、例えば、ビス(2-アミノエチル)ポリエチレングリコール、ビス(2-アミノプロピル)ポリプロピレングリコール、ポリ(ヘキサノ-6-ラクタム)-1,2-エタンジルアミド、ビス(4-アミノブチル)ポリブチレンサクシネート、ビス(6-アミノヘキシル)ポリブチレンサクシネート、N,N'-ビス(4-アミノブチル)ポリ(テトラメチレンサクシナミド)、N,N'-ビス(6-アミノヘキシル)ポリ(ヘキサメチレンサクシナミド)等が挙げられる。これらは、公知の方法で合成してもよく、市販品を使用してもよい。
【0029】
前記ポリカルボン酸としては、ポリアルキレングリコールジカルボン酸、ポリカプロラクトンポリカルボン酸、ポリカプロラクタムポリカルボン酸、ポリエステルポリカルボン酸、ポリアミドポリカルボン酸、ポリエステルポリアミドポリカルボン酸、ポリアクリル酸等のカルボキシ基を2つ以上有する化合物が挙げられ、例えば、ポリエチレングリコールジサクシネート、ポリプロピレングリコールジサクシネート、ポリ(ヘキサノ-6-ラクトン)-1,2-エタンジルエーテルジサクシネート、ビス(4-サクシニルオキシブチル)ポリブチレンサクシネート、ビス(4-アジポイルオキシブチル)ポリブチレンアジペート、N,N'-ビス(4-サクシニルオキシブチル)ポリ(テトラメチレンサクシナミド)、N,N'-ビス(6-サクシニルブチルヘキシル)ポリ(ヘキサメチレンサクシナミド)等が挙げられる。また、これらのポリカルボン酸を酸塩化物や酸無水物、エステルに誘導したものを用いてもよい。これらは、公知の方法で合成してもよく、市販品を使用してもよい。
【0030】
前記ポリイソシアネートとしては、ポリアルキレンジイソシアネート、ポリカプロラクトンポリイソシアネート、ポリアルキレンポリオールポリイソシアネート、ポリアルキレンポリアミンポリイソシアネート等のイソシアネート基を2つ以上有する化合物が挙げられ、例えば、ビス(2-イソシアナトエチル)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールジサクシネート、ポリ(ヘキサノ-6-ラクタム)-1,2-エタンジルアミドジイソシアネート、ビス(4-イソシアナトブチル)ポリブチレンサクシネート、ビス(6-イソシアナトヘキシル)ポリブチレンサクシネート、N,N'-ビス(4-イソシアナトブチル)ポリ(テトラメチレンサクシナミド)、N,N'-ビス(6-イソシアナトヘキシル)ポリ(ヘキサメチレンサクシナミド)等が挙げられる。これらは、公知の方法で合成してもよく、市販品を使用してもよい。
【0031】
前記2以上の反応性基Xを有する化合物に1価アニオン性置換基を導入する方法としては、例えば-COO-を導入する場合は、前記2以上の反応性基Xを有する化合物と2価カルボン酸無水物とを1価金属塩存在下でエステル化反応やアミド化反応させる方法が挙げられる。前記2価カルボン酸無水物としては、無水フタル酸、トリメリット酸無水物(該化合物は1個の酸無水物基と1個のカルボキシル基を有する)、ピロメリット酸無水物、5-ノルボルネン-エンド-2,3-ジカルボン酸無水物、ナフチル酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、無水マレイン酸、無水コハク酸、クロレンド酸無水物等が挙げられる。これらのうち、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸が好ましく、生分解性を考慮すると無水コハク酸、無水マレイン酸がより好ましい。また、例えば-SO3
-を導入する場合は、前記反応性基Xとしてヒドロキシ基又はアミノ基を有する化合物とSO3又はSO3・ルイス塩基錯体とを非プロトン性極性溶媒中で反応させる方法が挙げられる。前記ルイス塩基としては、3級アミン、ピリジン、DMF等を用いることができる。また、前記非プロトン性極性溶媒としては、アセトニトリル等が好ましい。これらの反応は、公知の方法で行うことができる。
【0032】
多価金属塩を用いてイオン結合させる方法としては、2以上の反応性基Xを有する化合物に1価アニオン性置換基を導入したもの(以下、前駆体Aともいう。)が溶解する媒体に、多価金属塩の粉末又は溶液を滴下し、結合処理を行いながら析出又は沈殿させる方法、又は多価金属塩の粉末又は多価金属塩が溶解する溶液に、前駆体Aが溶解する溶液を滴下し、結合処理を行いながら析出又は沈殿させる方法が挙げられる。
【0033】
具体的には、例えば、まず、水又は水及び親水性有機溶媒の混合溶媒に前駆体Aを溶解させた溶液を調製する。このとき、溶解度を向上させるため、必要に応じて加熱してもよい。次に、多価金属塩を含む溶液を添加して攪拌する。または、多価金属塩を含む溶液に前駆体Aを溶解させた溶液を添加して攪拌してもよい。
【0034】
前記多価金属塩は、カルシウム塩、ストロンチウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩、ラジウム塩、鉛塩、亜鉛塩、ニッケル塩、鉄塩、銅塩、カドミウム塩、コバルト塩、マンガン塩、アルミニウム塩、ガリウム塩、インジウム塩、タリウム塩等が挙げられるが、海水中に含まれる金属であることや、環境面、安全性、汎用性の点から、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩が好ましく、海水での環境下を考慮すると、カルシウム塩、マグネシウム塩がより好ましい。前記多価金属塩として具体的には、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム(カリウムミョウバン)等が挙げられるが、水への溶解性、取扱性、コスト等から塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウムが好ましい。
【0035】
多価金属塩を含む溶液中の多価金属塩の濃度は、1~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。前記溶液の溶媒は、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等の低級アルコール系溶媒、及びこれらの混合溶媒が好ましいが、粒子を溶解させない範囲で目的の濃度になるよう塩を溶解できれば、他の有機溶剤との混合溶媒でも構わない。
【0036】
また、前記多価金属塩の反応性が良好であり、固体状態であっても反応するのであれば、媒体を用いずに粉末状で使用してもよく、少量の媒体に分散させて使用してもよい。
【0037】
こうすることで、イオン結合処理を行うことができ、徐々に溶解できなくなった目的とする海洋生分解性連結剤(A)が、析出又は沈殿する。処理時間は、0.5~24時間が好ましく、1~12時間が好ましい。
【0038】
このとき、析出又は沈殿物の粒径を制御する目的で、界面活性剤や高分子安定剤を、前駆体Aを溶解させた溶液及び多価金属塩を含む溶液の少なくとも一方に溶解させてもよい。
【0039】
目的とする海洋生分解性連結剤(A)を析出又は沈殿させる際に、加熱を行ってもよい。加熱は、前駆体Aを溶解させた溶液と多価金属塩を含む溶液とを混合する際に行ってもよく、混合後攪拌する際に行ってもよく、これらの両方において行ってもよい。加熱温度は、15~100℃が好ましく、40~80℃が好ましい。
【0040】
処理後、必要に応じて粒子の洗浄及び乾燥を行うことで、海洋生分解性連結剤(A)を得ることができる。洗浄は、通常の方法で行うことができ、例えば、結合処理後溶媒を除去し、水を加えて遠心分離する等の方法が挙げられる。乾燥は、通常の方法で行うことができ、例えば、噴霧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等の方法で行うことができる。なお、得られた海洋生分解性連結剤(A)は、必要に応じて公知の設備によって、表面処理を行ったり、粉砕処理を行って粒径を調整したりしてもよい。
【0041】
化合物(B1)は、反応性基Xと反応する2以上の反応性基Yを含む化合物であれば、特に限定されない。化合物(B2)は、開環重合し得る環式化合物であって、開環することによって分子中に反応性基Yを生じる環式化合物であれば、特に限定されない。また、化合物(C)は、海洋生分解性連結剤(A)以外の分子中に2以上の反応性基Xを含む化合物であれば、特に限定されない。
【0042】
反応性基Xは、前述のとおりである。反応性基Yは、反応性基Xと反応するものであれば特に限定されないが、反応性と化学的安定性の観点からヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基及びイソシアネート基から選ばれる基が好ましい。これらのうち、カルボキシ基又はイソシアネート基がより好ましい。
【0043】
反応性基X又は反応性基Yを2以上有する化合物としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸又はその酸塩化物、ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
前記ポリオールは、ヒドロキシ基を2以上含む化合物であれば特に限定されないが、炭素数2~20のものが好ましい。その具体例としては、エチレングリコール、グリセロール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2,5-ペンタントリオール、2-ヒドロキシ-2-エチル-1,3-プロパノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,4-ベンゼンジメタノール、3,6-ジアザオクタン-1,8-ジオール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、フロログルシノール、ピロガロール、1,2,4-ベンゼントリオール、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0045】
前記ポリアミンとは、アミノ基を2以上含む化合物であれば特に限定されないが、炭素数2~20のものが好ましい。その具体例としては、1,4-ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,5-ジアミノペンタン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、3,3-ジアミノジプロピルアミン、1,4-シクロヘキサジアミン、スペルミン、スペルミジン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;1,4-フェニレンジアミン、1,2-ジフェニルエチレンジアミン、オルトトリジン等の芳香族ポリアミン等が挙げられる。
【0046】
前記ポリカルボン酸は、カルボキシ基を2以上含む化合物であれば特に限定されないが、炭素数2~20のものが好ましい。その具体例としては、テレフタル酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、アコニット酸、リンゴ酸、クエン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸は、そのまま用いてもよく、必要に応じて反応性を高める目的で酸塩化物や活性エステルに誘導したものを用いてもよい。
【0047】
前記ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2以上含む化合物であれば特に限定されないが、炭素数7~20のものが好ましい。その具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。環境中での生分解性を考慮すると、直鎖脂肪族イソシアネートであるHDI、PDIが好ましい。
【0048】
化合物(B2)の具体例としては、ラクチド、ε-カプロラクトン、β-プロピオラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、グリコリド、クマリン、シクロペンタデカノリド、シクロヘキサデカノリド等のラクトン;2-ピペリドン、ε-カプロラクタム、N-メチル-ε-カプロラクタム、ω-ヘプタラクタム、ω-オクタラクタム、ω-ラウリンラクタム、ラウロカプラム等のラクタム等が挙げられる。
【0049】
化合物(B1)及び化合物(C)は、生分解性を促進させる観点から、環構造を含まないことが好ましい。
【0050】
化合物(B1)及び化合物(C)は、生分解性の観点から、二官能性であることが好ましいが、物性及び生分解性の調整の観点から三官能以上の化合物を用いてもよい。
【0051】
海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)は、いずれの分子内にも環構造を含まないことが好ましい。また、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)は、いずれも二官能であることが好ましい。
【0052】
反応性基Xと反応性基Yとの組み合わせは、特に限定されないが、取扱性、反応性、ポリマー化合物の物性の観点から、以下の(1)~(6)のいずれかの組み合わせが好ましく、(1)~(4)のいずれかの組み合わせがより好ましく、(1)又は(2)の組み合わせが更に好ましく、(1)の組み合わせが最も好ましい。
(1)反応性基Xがヒドロキシ基であり、反応性基Yがカルボキシ基であるポリエステル系ポリマー化合物。このとき、海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(C)はポリオールであり、化合物(B1)はポリカルボン酸である。または、海洋生分解性連結剤(A)はポリオールであり、化合物(B2)はラクトンである。
(2)反応性基Xがヒドロキシ基であり、反応性基Yがイソシアネート基であるポリウレタン系ポリマー化合物。このとき、海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(C)はポリオールであり、化合物(B1)はポリイソシアネートである。
(3)反応性基Xがアミノ基であり、反応性基Yがカルボキシ基であるポリアミド系ポリマー化合物。このとき、海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(C)はポリアミンであり、化合物(B1)はポリカルボン酸である。または、海洋生分解性連結剤(A)はポリアミンであり、化合物(B2)はラクタムである。
(4)反応性基Xがアミノ基であり、反応性基Yがイソシアネート基であるポリウレア系ポリマー化合物。このとき、海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(C)はポリアミンであり、化合物(B1)はポリイソシアネートである。
(5)反応性基Xがカルボキシ基であり、反応性基Yがヒドロキシ基であるポリエステル系ポリマー化合物。このとき、海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(C)はポリカルボン酸であり、化合物(B1)はポリオールである。
(6)反応性基Xがカルボキシ基であり、反応性基Yがアミノ基であるポリアミド系ポリマー化合物。このとき、海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(C)はポリカルボン酸であり、化合物(B1)はポリアミンである。
【0053】
本発明の海洋生分解性ポリマー化合物中の金属イオン当量は、1~100eq/105gが好ましいが、海水での生分解性及び機械物性を考慮すると、2~50eq/105gがより好ましく、10~20eq/105gが最も好ましい。金属イオン当量が前記範囲であれば、良好な生分解性を有し、機械的物性も損なわれないため好ましい。なお、金属イオン当量は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)により測定した値である。
【0054】
本発明の海洋生分解性ポリマー化合物の数平均分子量は、3000~1000000が好ましい。生分解性、機械物性、成型加工性を考慮すると、10000~500000であることがより好ましく、20000~200000であることが更に好ましく、40000~100000であることが最も好ましい。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算測定値である。
【0055】
構造単位Cに対する構造単位Aの含有比(A:C)は、機械物性と生分解性の観点から、物質量比で0.1:99.9~90:10であることが好ましく、1:99~50:50がより好ましく、2:98~20:80が更に好ましく、3:97~10:90が最も好ましい。
【0056】
海洋生分解性ポリマー化合物は、海水中に浸漬させてから60日後における重量減少率が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、20%以上であることが最も好ましい
【0057】
本発明の海洋生分解性ポリマー化合物は、末端を封止したものであってもよい。すなわち、ポリマー化合物に残存する末端基X又は末端基Yを、末端封止剤を用いて封止してもよい。末端封止剤は、末端の置換基との反応性を有していれば、熱安定性の向上や物性向上等の目的に応じて、モノカルボン酸、モノ酸塩化物、モノエステル、モノイソシアネート、モノアルコール、モノアミン、モノエポキシド等から任意に選択できる。その具体例としては、ギ酸、酢酸、ステアリン酸等の炭素数1~20の脂肪族カルボン酸、前記脂肪族カルボン酸の酸塩化物、前記脂肪族カルボン酸の酸エステル;安息香酸、4-メチル安息香酸、4-ヘキシル安息香酸、ナフタレンカルボン酸等の炭素数7~20の芳香族カルボン酸、前記芳香族カルボン酸の酸塩化物、前記芳香族カルボン酸の酸エステル;メチルイソシアネート、オクダドデシルイソシアネート等の炭素数1~20の脂肪族イソシアネート;フェニルイソシアネート、4-ブチルフェニルイソシアネート等の炭素数7~20の芳香族イソシアネート;メタノール、エタノール、ステアリルアルコール等の炭素数1~20の脂肪族アルコール;ベンジルアルコール、3-フェニル-1-プロパノール等の炭素数7~20の芳香族アルコール;メチルアミン、エチルアミン、ステアリルアミン等の炭素数1~20の脂肪酸アミン;アニリン、ベンジルアミン、4-フェニル-1-ブチルアミン等の炭素数6~20の芳香族アミン;1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン等の炭素数2~20のエポキシド等が挙げられる。疎水性の付与、環境負荷及び反応性の観点から、前記末端封止剤としては、炭素数6~20の脂肪族カルボン酸、前記脂肪族カルボン酸の酸塩化物、前記脂肪族カルボン酸の酸エステル、炭素数6~20の脂肪族イソシアネートが好ましく、炭素数10~18の脂肪族カルボン酸及びその酸塩化物が更に好ましい。
【0058】
[海洋生分解性ポリマー化合物の製造方法]
海洋生分解性ポリマー化合物は、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)又は海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(B2)を重合させることで得ることができる。なお、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)、(B2)及び(C)は、それぞれ1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
重合させる前に、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)又は海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(B2)を混合することが好ましい。海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)を混合する場合は、これらを同時に混合してもよく、化合物(B1)及び化合物(C)を混合した後そこへ海洋生分解性連結剤(A)を混合してもよい。
【0060】
混合後、必要に応じて触媒を加えてもよい。触媒の具体例については、後述する。
【0061】
重合は、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)又は海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(B2)を溶融させ、溶融状態のこれらの化合物を加熱して重合させることが好ましい。このとき、海洋生分解性連結剤(A)の溶融温度は、取扱性、生分解性の観点から200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。なお、化合物(B1)、(B2)及び(C)は、その溶融温度が180℃以下でなくともよいが、原料化合物全てが溶融する温度まで加熱して重合させることが好ましい。
【0062】
前記重合は、重付加又は重縮合であることが好ましく、重縮合であることがより好ましい。
【0063】
海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)を重合させる場合、これらの化合物は、化合物(B1)の反応基当量に対する海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(C)の反応基当量の比([(A)+(C)]:(B1))が、0.75~1.25となる量で使用することが好ましい。海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(B2)を重合させる場合、これらの化合物は、機械物性及び生分解性の観点から、海洋生分解性連結剤(A)及び化合物(B2)の反応基当量の比((A)/(B2))が0.001~0.1となる量で使用することが好ましい。
【0064】
また、海洋生分解性連結剤(A)、化合物(B1)及び化合物(C)を重合させる場合、化合物(C)に対する海洋生分解性連結剤(A)の使用比((A):(C))は、機械物性と生分解性の観点から、物質量比で、0.1:99.9~90:10であることが好ましく、1:99~50:50がより好ましく、2:98~20:80が更に好ましく、3:97~10:90が最も好ましい。
【0065】
本発明の海洋生分解性ポリマー化合物がポリエステル系ポリマー化合物である場合、すなわち、反応性基Xがヒドロキシ基であり、反応性基Yがカルボキシ基である場合、又は反応性基Xがカルボキシ基であり、反応性基Yがヒドロキシ基である場合、公知のポリエステルの重合方法を参考にすることができる。例えば、繊維と工業、Vol. 40, No. 4.5, pp. 259-261, 1984に記載された方法を参考にすることができる。
【0066】
また、ポリエステルの重合反応において、必要に応じて反応を促進する目的で、三酸化アンチモン、ゲルマニウム触媒、チタン触媒等の重縮合触媒;酢酸マグネシウム、酢酸マンガン等の一般にエステル交換に用いられる触媒を用いてもよい。環境への付加を考慮すると金属を含まない触媒が好ましい。前記触媒の使用量は、化合物(B1)100質量部に対し、0.01~5質量部程度が好ましい。
【0067】
本発明の海洋生分解性ポリマー化合物がポリアミド系ポリマー化合物である場合、すなわち、反応性基Xがアミノ基であり、反応性基Yがカルボキシ基である場合、又は反応性基Xがカルボキシ基であり、反応性基Yがアミノ基である場合、公知のポリアミドの重合方法を参考にすることができる。例えば、特公昭52-12233号公報や特公平5-71056号公報に記載された方法を参考にすることができる。
【0068】
また、ポリアミドの重合反応において、必要に応じて反応を促進する目的で、リン酸、亜リン酸又は次亜リン酸の金属塩やアンモニウム塩、エステル等の重縮合触媒を用いてもよい。前記触媒の使用量は、化合物(B1)100質量部に対し、0.01~1.0質量部程度が好ましい。
【0069】
本発明の海洋生分解性ポリマー化合物がポリウレタン系ポリマー化合物である場合、すなわち、反応性基Xがヒドロキシ基であり、反応性基Yがイソシアネート基である場合、又は反応性基Xがイソシアネート基であり、反応性基Yがヒドロキシ基である場合、公知のポリウレタンの重合方法を参考にすることができる。例えば、ネットワークポリマー論文集、Vol. 39, No. 1, pp. 10-19, 2018に記載された方法を参考にすることができる。
【0070】
前記海洋生分解性ポリオールとジイソシアネートとの反応は、反応性の向上による反応時間の短縮や反応温度の低下を目的として、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]-オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU)、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCA)、トリエチルアミン等のアミン系触媒;ジブチルスズジラウレート、テトラメチルスズ、テトラブチルスズ、テトラオクチルスズ、トリブチルスズクロリド、ジブチルスズジクロリド、ジメチルスズオキシド、トリメチルスズクロリド、ジメチルスズジクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジアセテート、ブチルスズトリクロリド、ジオクチルスズジクロリド、ジオクチルスズオキシド、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート等のスズ触媒を用いてもよい。また前記スズ錯体に類似する亜鉛錯体、鉄錯体、ビスマス錯体及びジルコニウム錯体も、触媒として有用である。環境への付加を考慮すると、金属を含まない触媒が好ましい。前記触媒の使用量は、化合物(B1)100質量部に対し、0.01~5量部程度が好ましい。
【0071】
本発明の海洋生分解性ポリマー化合物がポリウレア系ポリマー化合物である場合、すなわち、反応性基Xがアミノ基であり、反応性基Yがイソシアネート基である場合、又は反応性基Xがイソシアネート基であり、反応性基Yがアミノ基である場合、公知のポリウレアの重合方法を参考にすることができる。例えば、特開2004-27148号公報に記載された方法を参考にすることができる。
【0072】
また、ポリウレアの重合反応において、必要に応じて反応を促進する目的で、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、亜鉛、ルビジウム、ストロンチウム、スズ、アンチモン、セシウム、バリウム、鉛等の金属からなる塩やアルコキシド、有機金属化合物等のエステル交換反応触媒の重縮合触媒を用いてもよい。前記触媒の使用量は、化合物(B1)100質量部に対し、0.00001~0.1質量部程度が好ましい。
【0073】
いずれの重合反応においても、重合温度は、130~300℃程度が好ましく、160~230℃程度がより好ましい。重合時間は、0.5~24時間程度が好ましく、1~12時間程度がより好ましい。
【0074】
海洋生分解性ポリマー化合物の末端を封止する場合は、重合終了後に前述した末端封止剤を添加して封止してもよく、重合反応前又は重合反応中に重合液に前述した末端封止剤を添加して封止してもよい。末端封止方法は、重合終了後に末端封止剤を添加して封止する場合、例えば、海洋生分解性ポリマー化合物を溶融させ、そこへ末端封止剤を添加して反応させる方法が挙げられる。このとき、海洋生分解性ポリマー化合物を溶融させる温度は、特に限定されないが、通常130~280℃程度である。反応時間は、特に限定されないが、通常1~6時間程度である。重合反応前又は重合反応中に重合液に末端封止剤を添加して封止する場合は、例えば、前述した各原料化合物の混合物に末端封止剤を添加し、重合反応と同時に末端を封止する方法が挙げられる。この場合、末端封止剤は、反応開始前に添加してもよく、末端封止剤以外の原料を溶解させてから添加してもよく、重合反応中に添加してもよいが、分子量を向上させるためには、末端封止剤以外の原料を溶解させてから添加するか、重合反応中に添加することが好ましい。いずれの方法においても、前記末端封止剤の添加量は、全ての原料化合物中、0.05~10質量%程度が好ましく、0.1~5質量%程度がより好ましい。前記末端封止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0075】
[海洋生分解性樹脂組成物]
本発明の海洋生分解性樹脂組成物は、前記海洋生分解性ポリマー化合物を含むものである。
【0076】
前記海洋生分解性ポリマー化合物は、主原料として使用してもよいが、添加剤として他の樹脂と組み合わせて使用してもよい。前記他の樹脂としては、特に限定されないが、生分解性樹脂であることが好ましい。添加剤として他の樹脂と組み合わせて使用する場合、前記海洋生分解性ポリマー化合物は、海洋生分解促進剤として機能する。このとき、海洋中での生分解が促進される樹脂組成物となる。また、樹脂組成物の物性やハンドリング性を調整する目的で、前記他の樹脂としては、複数種の樹脂を組み合わせて使用することもできる。
【0077】
前記他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、変性ナイロン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、バイオPET、バイオポリアミド、バイオポリカーボネート、バイオポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、バイオポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸ブレンド、スターチブレンドポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシアルカン酸等が挙げられるが、環境への負荷低減を考慮すると、特に生分解性の高い樹脂が好ましい。
【0078】
また、前記生分解性樹脂としては、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)(PBSA)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)(PBAT)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリエチレンテレフタレートコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、グリコール酸/カプロラクトンコポリマー、グリコール酸/炭酸トリメチレンコポリマー等の原料が石油由来の樹脂;(ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート系)ブロックコポリマー、(ポリ乳酸/ポリカプロラクトン)コポリマー、(ポリ乳酸/ポリエーテル)コポリマー、ポリ乳酸ブレンドPBAT、乳酸/グリコール酸コポリマー、バイオポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、スターチブレンド ポリエステル樹脂、ポリ(ブチレンテレフタレートサクシネート)等の原料が一部バイオマス由来の樹脂;ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリヒドロキシカプリル酸、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)(PHBH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート/4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)等のポリヒドロキシアルカン酸、ポリ乳酸(PLA)等の原料が100%バイオマス由来の樹脂;セルロース、酢酸セルロース、セルロースエステル樹脂、デンプン、エステル化デンプン、キトサン等の天然高分子由来の樹脂が挙げられる。
【0079】
これらのうち、生分解性樹脂として土壌又はコンポストにおいて生分解性を有するが、海洋での生分解性が劣る樹脂、例えば、ポリカプロラクトン、(バイオ)PBS、PBSA、PBAT、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、PHBH、PHBV等のポリヒドロキシアルカン酸、PLA、セルロース、デンプン、キトサン等天然高分子由来の樹脂から選択される生分解性樹脂と前記海洋生分解性ポリマー化合物とを組み合わせることが好ましい。前記生分解性樹脂としては、特にPBSA、PBS、PBAT、PLA、デンプン由来の樹脂が好ましい。
【0080】
また、環境負荷の低減を考慮すると、組み合わせる樹脂の原料としては、バイオマス由来であることが好ましく、100%バイオマス由来原料であることが、最も好ましい。
【0081】
本発明の海洋生分解性樹脂組成物は、溶媒を含んでもよい。前記溶媒は、前記海洋生分解性ポリマー化合物を溶解せず粒子として残しつつ、マトリクスとなる前記樹脂を溶解するものでもよく、前記樹脂及び海洋生分解性ポリマー化合物の両方を溶解するものでもよい。これらを適宜調整することで、キャスティング等によるフィルム化による成型体や、塗料、インク、表面処理剤等としても活用可能となる。好ましい溶媒としては、例えば、水、ギ酸、ヘキサン、ヘプタン、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、へキサフルオロイソプロパノール、メチルグリコール、メチルトリグリコール、ヘキシルグリコール、フェニルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0082】
溶媒を使用する場合、前記樹脂組成物中の樹脂及び海洋生分解性ポリマー化合物の合計の濃度は、0.5~90質量%が好ましく、1~80質量%がより好ましく、5~60質量%が更に好ましく、10~50質量%が最も好ましい。また、前記樹脂に対する海洋生分解性ポリマー化合物の割合は、質量比で、99:1~10:90が好ましく、97:3~40:60がより好ましく、95:5~50:50が更に好ましく、90:10~60:40が最も好ましい。
【0083】
また、本発明の海洋生分解性樹脂組成物は、溶媒を含まなくてもよい。この場合は、前記樹脂を熱溶融し、そこへ溶融しない海洋生分解性ポリマー化合物を加えて混合してもよく、前記樹脂及び海洋生分解性ポリマー化合物をともに溶融させて混合してもよい。
【0084】
本発明の海洋生分解性樹脂組成物中、海洋生分解性ポリマー化合物の含有量は、1~50質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましく、5~45質量%がより一層好ましく、7~40質量%が更に好ましく、10~35質量%が最も好ましい。一方、樹脂の含有量は、50~99質量%が好ましく、50~97質量%がより好ましく、55~95質量%がより一層好ましく、60~93質量%が更に好ましく、65~90質量%が最も好ましい。前記範囲で海洋生分解性ポリマー化合物を含むことで生分解性樹脂の物性を維持しつつ、海水中では生分解性の進行を促進させる海洋生分解性促進剤として活用することができる。前記海洋生分解性ポリマー化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0085】
本発明の海洋生分解性樹脂組成物は、必要に応じて酸化防止剤、離型剤、剥離剤、表面改質剤、疎水化剤、撥水化剤、親水化剤、染顔料、着色剤、熱安定剤、光安定剤、耐候性改良剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、硬質化剤、軟質化剤、相溶化剤、難燃剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、フィラー、金属不活性化剤等の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、樹脂100質量部に対し、0.1~50質量部程度が好ましい。
【0086】
前記海洋生分解性樹脂組成物が溶媒を含むものである場合は、例えば、樹脂、当該海洋生分解性ポリマー化合物及び必要に応じて前記添加剤を、同時に又は任意の順で溶媒に添加し、混合することによって調製することができる。また、前記海洋生分解性樹脂組成物が溶媒を含まないものである場合は、例えば、前記樹脂を溶融させ、そこへ前記海洋生分解性ポリマー化合物及び必要に応じて前記添加剤を同時に又は任意の順で添加し、混合してもよく、前記樹脂及び海洋生分解性ポリマー化合物を加熱してともに溶融させて混合し、必要に応じて前記添加剤を添加して混合してもよい。
【0087】
[成形体]
前記樹脂組成物を用いて成形することで、前記樹脂に海洋生分解性ポリマー化合物が分散又は溶解した成形体を得ることができる。前記樹脂組成物が溶媒を含む場合は、該樹脂組成物をそのまま用いて成形を行えばよく、前記樹脂組成物が溶媒を含まない場合は、該樹脂組成物中の樹脂又は樹脂及び海洋生分解性ポリマー化合物を熱で溶融した後、成形を行えばよい。
【0088】
前記成形体の形状としては、例えば、フィルム状、繊維状、板状、発泡成形体状、その他の用途に応じた形状等が挙げられる。成形方法としては、特に限定されず、従来公知の各種成形方法を用いることができる。その具体例としては、ブロー成形、射出成形、押出成形、圧縮成形、溶融押出成形法、溶液キャスティング成形法、カレンダー成形法等が挙げられる。
【0089】
本発明の海洋生分解性樹脂組成物は、プラスチック成型品の原料として、また、液体、塗膜、フィルム、板材、紙等の成型品への各種添加剤として利用することができる。プラスチック成型品の原料として使用する場合は、フィルム、包装、容器、トレー、ラミネート材、接着剤、被覆材、医療、衣類等の繊維、釣り糸、漁網等の海洋用途材料等の原料として好適に用いることができる。また、添加剤として使用する場合は、例えば、光散乱剤や光学フィルタ材料、着色剤、化粧品、吸収剤、吸着剤、インク、接着剤、電磁波シールド材、蛍光センサー、生体マーカー、記録材料、記録素子、偏光材料、薬物送達システム(DDS)用薬物保持体、バイオセンサー、DNAチップ、検査薬、焼成空孔化成形物、アンチブロッキング剤、スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビア印刷、タンポ印刷、コーター、インクジェット等に用いられる印刷インク用添加剤、マーキングペン用、ボールペン用、万年筆用、筆ペン用、マジック等の筆記具インク用添加剤、クレヨン、絵の具、消しゴム等の文房具類の添加剤、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料用添加剤、特に船体塗料等の海洋用途に使用される塗料等の添加剤として広く利用することができる。
【実施例0090】
以下、合成例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0091】
なお、下記実施例及び比較例において、金属イオン当量は、対象の物質を硝酸又は王水で加熱、分解し、ICP-MS((株)島津製作所製ICPE-9820)を使用して発光分析法により測定した。海洋生分解性ポリマー化合物及びポリマー化合物の分子量は、対象の物質をクロロホルムに溶解させ、(株)島津製作所社製GPC測定装置(COM-20A、LC-20A、SIL-20A、RID-20A、CTO-20A)にて、移動相にクロロホルムを使用し、カラムとして昭和電工(株)製Shodex k-806Mを使用し、ポリスチレン換算により数平均分子量(Mn)として測定した。
【0092】
[1]海洋生分性連結剤の合成及びその評価
[実施例1-1]海洋生分解性連結剤A1の合成
1Lフラスコに、コハク酸295g及び1,4-ブタンジオール305gを加えて230℃で6時間加熱・攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで固形の樹脂を得た。
続いて、得られた樹脂のうち500gを粉砕して3Lフラスコに加え、アセトニトリル500g、無水コハク酸100g及び炭酸ナトリウム125gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、片末端又は両末端がCOONaで置換されたポリマー化合物を得た。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、620であった。
得られたポリマー化合物をイオン交換水500g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに20質量%塩化カルシウム水溶液320gを加えてよく撹拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にヒドロキシ基を有する海洋生分解性連結剤A1を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、1800(平均金属カチオン数1.50)であった。
【0093】
[実施例1-2]海洋生分解性連結剤A2の合成
1Lフラスコに、アジピン酸152g、テレフタル酸173g及び1,4-ブタンジオール275gを加えて230℃で6時間加熱・攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで固形の樹脂を得た。
続いて、得られた樹脂のうち500gを粉砕して3Lフラスコに加え、アセトニトリル500g、無水コハク酸100g及び炭酸カリウム160gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、片末端又は両末端がCOOKで置換されたポリマー化合物を得た。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、600であった。
得られたポリマー化合物をイオン交換水500g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに20質量%塩化カルシウム水溶液320gを加えてよく撹拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にヒドロキシ基を有する海洋生分解性連結剤A2を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、2200(平均金属カチオン数2.06)であった。
【0094】
[実施例1-3]海洋生分解性連結剤A3の合成
クラレポリオールP-510((株)クラレ製、Mn=500)500gを3Lフラスコに加え、次いでアセトニトリル500g、無水コハク酸100g及び炭酸ナトリウム125gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、片末端又は両末端がCOONaで置換されたポリマー化合物を得た。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、590であった。
得られたポリマー化合物をイオン交換水500g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに20質量%塩化マグネシウム水溶液280gを加えてよく撹拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にヒドロキシ基を有する海洋生分解性連結剤A3を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、1600(平均金属カチオン数1.22)であった。
【0095】
[実施例1-4]海洋生分解性連結剤A4の合成
コハク酸300g、ブタンジアミン300g及びイオン交換水180gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、撹拌しながら270℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に270℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで固形の樹脂を得た。
続いて、得られた樹脂のうち500gを粉砕して3Lフラスコに加え、次いでアセトニトリル500g、無水コハク酸100g及び炭酸ナトリウム125gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、片末端又は両末端がCOONaで置換されたポリマー化合物を得た。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、620であった。
得られたポリマー化合物をイオン交換水500g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに20質量%塩化カルシウム水溶液320gを加えてよく撹拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にアミノ基を有する海洋生分解性連結剤A4を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、1800(平均金属カチオン数1.50)であった。
【0096】
[実施例1-5]海洋生分解性連結剤A5の合成
コハク酸250g、ヘキサメチレンジアミン350g及びイオン交換水150gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、撹拌しながら270℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に270℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで固形の樹脂を得た。
続いて、得られた樹脂のうち500gを粉砕して3Lフラスコに加え、次いでアセトニトリル500g、無水コハク酸100g及び炭酸ナトリウム125gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、片末端又は両末端がCOONaで置換されたポリマー化合物を得た。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、600であった。
得られたポリマー化合物をイオン交換水500g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに20質量%塩化カルシウム水溶液320gを加えてよく撹拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にアミノ基を有する海洋生分解性連結剤A5を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、1700(平均金属カチオン数1.36)であった。
【0097】
[実施例1-6]海洋生分解性連結剤A6の合成
ポリ(プロピレングリコール)ビス(2-アミノプロピルエーテル)(シグマ-アルドリッチ社製、Mn=400)500gを3Lフラスコに加え、次いでアセトニトリル500g、無水コハク酸126g及び炭酸ナトリウム159gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、片末端又は両末端がCOONaで置換されたポリマー化合物を得た。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、510であった。
得られたポリマー化合物をイオン交換水500g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに20質量%塩化カルシウム水溶液320gを加えてよく攪拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にアミノ基を有する海洋生分解性連結剤A6を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、1500(平均金属カチオン数1.42)であった。
【0098】
[実施例1-7]海洋生分解性連結剤A7の合成
プラクセル220N((株)ダイセル製、Mn=2000)500gを3Lフラスコに加え、次いでアセトニトリル500g、無水コハク酸60g及び炭酸ナトリウム70gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。続いて反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液に塩酸を加えトルエンで抽出を行った。抽出物を含むトルエンを濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、末端がCOOHで置換されたポリマー化合を得た。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、2120であった。
得られたポリマー化合物をイオン交換水500g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに10質量%炭酸水素ナトリウム水溶液210gを加えて片末端又は両末端を中和した。その後、20質量%塩化カルシウム水溶液80gを加えてよく攪拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にカルボキシ基を有する海洋生分解性連結剤A7を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、5200(平均金属カチオン数1.36)であった。
【0099】
[実施例1-8]海洋生分解性連結剤A8の合成
1Lフラスコに、アジピン酸350g及びブタンジオール250gを加えて230℃で6時間加熱・攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで固形の樹脂を得た。
続いて、得られた樹脂のうち500gを粉砕して3Lフラスコに加え、アセトニトリル500g、無水コハク酸110g及び炭酸カリウム171gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液に塩酸を加えトルエンで抽出を行った。抽出物を含むトルエンを濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、末端がCOOHで置換されたポリマー化合物を作製した。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、1200であった。
作製したポリマー化合物をイオン交換水500g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに10質量%炭酸水素カリウム水溶液475gを加えて片末端又は両末端を中和した。その後、20質量%塩化カルシウム水溶液130gを加えてよく攪拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にカルボキシ基を有する海洋生分解性連結剤A8を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、2900(平均金属カチオン数1.28)であった。
【0100】
[実施例1-9]海洋生分解性連結剤A9の合成
コハク酸250g、ヘキサメチレンジアミン350g及びイオン交換水150gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌しながら270℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に270℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで固形の樹脂を得た。
続いて、得られた樹脂のうち500gを粉砕して3Lフラスコに加え、アセトニトリル500g、無水コハク酸200g及び炭酸カリウム272gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液に塩酸を加えトルエンで抽出を行った。抽出物を含むトルエンを濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、末端がCOOHで置換されたポリマー化合物を作製した。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、710であった。
作製したポリマー化合物をイオン交換水100g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに10質量%炭酸水素カリウム水溶液820gを加えて片末端又は両末端を中和した。その後、20質量%塩化カルシウム水溶液230gを加えてよく攪拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にカルボキシ基を有する海洋生分解性連結剤A9を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、1800(平均金属カチオン数1.22)であった。
【0101】
[実施例1-10]海洋生分解性連結剤A10の合成
1Lフラスコに、コハク酸295g及び1,4-ブタンジオール305gを加えて230℃で6時間加熱・攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで固形の樹脂を得た。
続いて、得られた樹脂のうち500gを粉砕して3Lフラスコに加え、アセトニトリル500g、無水コハク酸100g及び炭酸ナトリウム125gを加えて70℃で4時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、片末端又は両末端がCOONaで置換されたポリマー化合物を作製した。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、610であった。
作製したポリマー化合物をイオン交換水500g及びアセトニトリル500gの混合溶媒に溶解させ、そこに30質量%硫酸アルミニウム水溶液370gを加えてよく攪拌した。白色沈殿が生じたので、上澄み液を除去することで沈殿を回収し、水洗後、減圧下で残存する溶媒を除去することで、分子内にイオン結合を含み、全末端にヒドロキシ基を有する海洋生分解性連結剤A10を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、2600(平均金属カチオン数1.10)であった。
【0102】
[比較例1-1]海洋生分解性連結剤B1の合成
1Lフラスコに、コハク酸319g及び1,4-ブタンジオール244g加えて230℃で6時間加熱・攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで固形の樹脂を得た。
続いて、得られた樹脂のうち500gを粉砕して3Lフラスコに加え、次いでクロロホルム500g、無水コハク酸2.5g及び炭酸カリウム4.0gを加えて70℃で24時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、片末端又は両末端がCOOKで置換されたポリマー化合物を作製した。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、22000であった。
作製したポリマー化合物を120℃で溶融させ、そこに20質量%塩化カルシウム水溶液7.0gを加えてよく攪拌し、水分を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にヒドロキシ基を有する海洋生分解性連結剤B1を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、42000(平均金属カチオン数0.90)であった。
【0103】
[比較例1-2]海洋生分解性連結剤B2の合成
アジピン酸336g、ヘキサメチレンジアミン269g及びイオン交換水150gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌しながら265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、その後、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで固形の樹脂を得た。
続いて、得られた樹脂のうち500gを粉砕して3Lフラスコに加え、次いでクロロホルム500g、無水コハク酸2.6g及び炭酸カリウム4.1gを加えて70℃で24時間加熱・攪拌した。反応液を室温まで冷却し、ろ過により沈殿物を除去した。得られたろ液を濃縮し、更に減圧下で溶媒を除去することで、片末端又は両末端がCOOKで置換されたポリマー化合物を作製した。1H-NMRによる末端定量法で得られた化合物の数平均分子量を求めたところ、24000であった。
作製したポリマー化合物を180℃で溶融させ、そこに20質量%塩化カルシウム水溶液7.2gを加えてよく攪拌し、水分を除去することで、分子内にイオン結合を含み、両末端にアミノ基を有する海洋生分解性連結剤B2を作製した。GPCによってその数平均分子量を測定したところ、50000(平均金属カチオン数1.07)であった。
【0104】
[海水生分解評価]
海洋生分解性連結剤A1~A10について以下の方法で海水生分解試験を実施した。なお対照材料として微結晶セルロース(Sigma-Aldrich製 Avicel PH-101)を用い、セルロース相対生分解度で評価した。結果を表1に示す。
<試験方法、条件>
生分解度測定方法:閉鎖呼吸計による酸素消費量の測定(ASTM D6691参考)
試験装置 OxiTop IDS(WTW社製)
培養温度 30±1℃、暗所
生分解度(%)=(BODO-BODB)/ThOD×100
BODO:試験又は植種源活性確認の生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
BODB:空試験の平均生物化学的酸素要求量(測定値:mg)
ThOD:試験材料又は対照材料が完全に酸化された場合に必要とされる
理論的酸素要求量(計算値:mg)
セルロース相対生分解度(%)=(試験粒子の最大生分解度/最大セルロース生分解度)×100
海水(東京湾[千葉県:千葉港]より採取)
採取した海水は、10μmのフィルタで異物を除去した後、室温25度で曝気した。また、無機栄養素として塩化アンモニウムを0.05g/L、リン酸二水素カリウムを0.1gLとなるよう添加した。
【0105】
【0106】
表1に示した結果より、本発明の海洋生分解性連結剤は、培養期間56日までにセルロース相対分解度で40%以上となる生分解性の結果が得られた。
【0107】
[2]海洋生分解性ポリマー化合物の合成
[実施例2-1]海洋生分解性ポリマー化合物AP1の製造
300mLフラスコに、コハク酸を100g、1,4-ブタンジオールを76.7g及び海洋生分解性連結剤A1を26.5g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで海洋生分解性ポリマー化合物AP1を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP1について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、45000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、10.2eq/105gであった。
【0108】
[実施例2-2]海洋生分解性ポリマー化合物AP2の製造
300mLフラスコにアジピン酸を100g、1,4-ブタンジオール72.1g及び海洋生分解性連結剤A2を37.6g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで海洋生分解性ポリマー化合物AP2を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP2について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、46000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、10.8eq/105gであった。
【0109】
[実施例2-3]海洋生分解性ポリマー化合物AP3の製造
300mLフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートを34.9g、P-510((株)クラレ製)を100g及び海洋生分解性連結剤A3を22.6g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を90℃に設定し、攪拌機を用いて60分加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで海洋生分解性ポリマー化合物AP3を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP3について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、52000であった。ICP-MSによってマグネシウムイオンの当量を測定したところ、9.5eq/105gであった。
【0110】
[実施例2-4]海洋生分解性ポリマー化合物AP4の製造
アジピン酸100g、ヘキサメチレンジアミン76.0g、イオン交換水40g及び海洋生分解性連結剤A4 83.1gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌しながら265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、その後、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで海洋生分解性ポリマー化合物AP4を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP4について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、62000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、18.1eq/105gであった。
【0111】
[実施例2-5]海洋生分解性ポリマー化合物AP5の製造
アジピン酸100g、ヘキサメチレンジアミン80.6g、イオン交換水60g及び海洋生分解性連結剤A5 67.1gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌しながら265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、その後、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで海洋生分解性ポリマー化合物AP5を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP5について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、57000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、6.1eq/105gであった。
【0112】
[実施例2-6]海洋生分解性ポリマー化合物AP6の製造
300mLフラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネートを100g、ヘキサメチレンジアミンを45.7g及び海洋生分解性連結剤A6を24.2g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を90℃に設定し、攪拌機を用いて60分加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで海洋生分解性ポリマー化合物AP6を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP6は、溶媒に不溶であるため、GPC測定は行っていない。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、11.1eq/105gであった。
【0113】
[実施例2-7]海洋生分解性ポリマー化合物AP7の製造
300mLフラスコに、テレフタル酸を100g、1,4-ブタンジオールを56g及び海洋生分解性連結剤A7を35.1g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで海洋生分解性ポリマー化合物AP7を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP7について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、68000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、2.10eq/105gであった。
【0114】
[実施例2-8]海洋生分解性ポリマー化合物AP8の製造
300mLフラスコに、アジピン酸を100g、1,4-ブタンジオールを61.5g及び海洋生分解性連結剤A8を49.1g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで海洋生分解性ポリマー化合物AP8を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP8について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、63000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、9.3eq/105gであった。
【0115】
[実施例2-9]海洋生分解性ポリマー化合物AP9の製造
アジピン酸100g、ヘキサメチレンジアミン79.1g、イオン交換水60g及び海洋生分解性連結剤A9 21.8gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌下で265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、その後、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで海洋生分解性ポリマー化合物AP9を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP9について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、55000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、11.6eq/105gであった。
【0116】
[実施例2-10]海洋生分解性ポリマー化合物AP10の製造
300mLフラスコに、ε-カプロラクトン100g及び海洋生分解性連結剤A1を4.97g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで海洋生分解性ポリマー化合物AP10を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP10について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、25000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、5.2eq/105gであった。
【0117】
[実施例2-11]海洋生分解性ポリマー化合物AP11の製造
300mLフラスコに、コハク酸100.0g、1,4-ブタンジオール76.2g及び海洋生分解性連結剤A10を32.5g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで海洋生分解性ポリマー化合物AP11を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP11は、溶媒に不溶であるため、GPC測定は行っていない。海洋生分解性ポリマー化合物AP11について、ICP-MSによってアルミニウムイオンの当量を測定したところ、7.2eq/105gであった。
【0118】
[実施例2-12]海洋生分解性ポリマー化合物AP12の製造
300mLフラスコに、アジピン酸を100g、1,2,3-プロパントリカルボン酸を13.4g、1,4-ブタンジオールを68.4g及び海洋生分解性連結剤A1を30.6g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで海洋生分解性ポリマー化合物AP12を得た。
海洋生分解性ポリマー化合物AP12は、溶媒に不溶であるため、GPC測定は行っていない。海洋生分解性ポリマー化合物AP12について、ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、9.6eq/105gであった。
【0119】
[比較例2-1]ポリマー化合物BP1の製造
300mLフラスコに、コハク酸を100g、1,4-ブタンジオールを63.2g及び海洋生分解性連結剤B1を10.5g仕込み、窒素気流下マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することでポリマー化合物BP1を得た。
ポリマー化合物BP1について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、82000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、0.41eq/105gであった。
【0120】
[比較例2-2]ポリマー化合物BP2の製造
アジピン酸100g、ヘキサメチレンジアミン65.5g、イオン交換水60g及び海洋生分解性連結剤B2 9.4gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌下で265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、その後、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことでポリマー化合物BP2を得た。
ポリマー化合物BP2について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、86000であった。ICP-MSによってカルシウムイオンの当量を測定したところ、0.36eq/105gであった。
【0121】
[比較例2-3]ポリマー化合物BP3の製造
300mLフラスコに、コハク酸を100g及び1,4-ブタンジオールを77.9g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することでポリマー化合物BP3を得た。
ポリマー化合物BP3について、GPCによってその数平均分子量を測定したところ、79000であった。
【0122】
[比較例2-4]ポリマー化合物BP4の製造
アジピン酸100g、ヘキサメチレンジアミン81.2g及びイオン交換水40gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌下で265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、その後、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことでポリマー化合物BP4を得た。
ポリマー化合物BP4について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、81000であった。
【0123】
[比較例2-5]ポリマー化合物BP5の製造
300mLフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートを33.4g及びP-510((株)クラレ製)を100g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を90℃に設定し、攪拌機を用いて60分間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することでポリマー化合物BP5を得た。
ポリマー化合物BP5について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、83000であった。
【0124】
[比較例2-6]ポリマー化合物BP6の製造
300mLフラスコに、ε-カプロラクトンを100g及び1,4-ブタンジオールを0.81g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて6時間加熱混合を行った。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することでポリマー化合物BP6を得た。
ポリマー化合物BP6について、GPCによって数平均分子量を測定したところ、85000であった。
【0125】
[3]末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物の合成
[実施例3-1]海洋生分解性ポリマー化合物AP1'の製造
海洋生分解性ポリマー化合物AP1 20gを窒素気流下、180℃に加熱し、溶融させ、末端封止剤としてフェニルイソシアネートを0.8g添加し、1時間加熱した。その後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP1'を得た。
【0126】
[実施例3-2]海洋生分解性ポリマー化合物AP2'の製造
海洋生分解性ポリマー化合物AP1のかわりに海洋生分解性ポリマー化合物AP2を20g使用し、末端封止剤としてフェニルイソシアネートのかわりにオクタドデシルイソシアネートを1.0g使用した以外は、実施例3-1と同様の方法で、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP2'を得た。
【0127】
[実施例3-3]海洋生分解性ポリマー化合物AP3'の製造
100mLフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートを6.98g、P-510((株)クラレ製)を20g及び海洋生分解性連結剤A3を4.52g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を90℃に設定し、攪拌機を用いて20分間加熱混合を行った。その後、末端封止剤としてシクロヘキシルイソシアネートを0.8g加え、更に40分間加熱混合を行った後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP3'を得た。
【0128】
[実施例3-4]海洋生分解性ポリマー化合物AP4'の製造
アジピン酸20g、ヘキサメチレンジアミン15.2g、イオン交換水8g及び海洋生分解性連結剤A4 16.62gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌しながら265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、末端封止剤としてベンゾイルクロリドを0.8g加え、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP4'を得た。
【0129】
[実施例3-5]海洋生分解性ポリマー化合物AP5'の製造
アジピン酸20g、ヘキサメチレンジアミン16.12g、イオン交換水12g及び海洋生分解性連結剤A4 13.42gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌しながら265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、末端封止剤としてミリストイルクロリドを0.9g加え、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP5'を得た。
【0130】
[実施例3-6]海洋生分解性ポリマー化合物AP6'の製造
100mLフラスコに、ジフェニルメタンジイソシアネートを20g、ヘキサメチレンジアミンを9.14g及び海洋生分解性連結剤A6を4.84g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を90℃に設定し、攪拌機を用いて20分間加熱混合を行った。その後、末端封止剤としてラウロイルクロリドを0.1g加え、更に40分間加熱混合を行った後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP6'を得た。
【0131】
[実施例3-7]海洋生分解性ポリマー化合物AP7'の製造
海洋生分解性ポリマー化合物AP1のかわりに海洋生分解性ポリマー化合物AP7を20g使用し、溶融温度を210℃とし、末端封止剤としてフェニルイソシアネートのかわりにオクタドデシルイソシアネートを1.0g使用した以外は、実施例3-1と同様の方法で、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP7'を得た。
【0132】
[実施例3-8]海洋生分解性ポリマー化合物AP8'の製造
海洋生分解性ポリマー化合物AP1のかわりに海洋生分解性ポリマー化合物AP8を20g使用し、末端封止剤としてフェニルイソシアネートのかわりにオクタドデシルイソシアネートを0.9g使用した以外は、実施例3-1と同様の方法で、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP8'を得た。
【0133】
[実施例3-9]海洋生分解性ポリマー化合物AP9'の製造
アジピン酸20g、ヘキサメチレンジアミン15.82g、イオン交換水12g及び海洋生分解性連結剤A9 4.36gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌下で265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、末端封止剤としてラウロイルクロリドを0.8g加え、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP9'を得た。
【0134】
[実施例3-10]海洋生分解性ポリマー化合物AP10'の製造
海洋生分解性ポリマー化合物AP1のかわりに海洋生分解性ポリマー化合物AP10を20g使用し、末端封止剤としてフェニルイソシアネートのかわりにドデシルイソシアネートを0.9g使用した以外は、実施例3-1と同様の方法で、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP10'を得た。
【0135】
[実施例3-11]海洋生分解性ポリマー化合物AP11'の製造
100mLフラスコに、コハク酸20g、1,4-ブタンジオール15.24g及び海洋生分解性連結剤A10を6.5g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて1時間加熱混合を行った。その後、末端封止剤としてオクタドデシルイソシアネートを0.2g加え、更に5時間加熱混合を行った後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP11'を得た。
【0136】
[実施例3-12]海洋生分解性ポリマー化合物AP12'の製造
100mLフラスコに、アジピン酸を20g、1,2,3-プロパントリカルボン酸を2.68g、1,4-ブタンジオールを13.68g及び海洋生分解性連結剤A1を6.12g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を230℃に設定し、攪拌機を用いて1時間加熱混合を行った。その後、末端封止剤としてオクタドデシルイソシアネートを0.1g加え、更に5時間加熱混合を行った後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで、末端が封止された海洋生分解性ポリマー化合物AP12'を得た。
【0137】
[比較例3-1]ポリマー化合物BP1'の製造
海洋生分解性ポリマー化合物AP1のかわりにポリマー化合物BP1を20g使用した以外は、実施例3-1と同様の方法で、末端が封止されたポリマー化合物BP1'を得た。
【0138】
[比較例3-2]ポリマー化合物BP2'の製造
アジピン酸20g、ヘキサメチレンジアミン13.1g、イオン交換水12g及び海洋生分解性連結剤B2 1.88gを内容積1Lのオートクレーブに加え、窒素置換を十分に行った後、攪拌下で265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、末端封止剤としてミリストイルクロリドを0.8g加え、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで、末端が封止されたポリマー化合物BP2'を得た。
【0139】
[比較例3-3]ポリマー化合物BP3'の製造
海洋生分解性ポリマー化合物AP1のかわりにポリマー化合物BP3を20g使用し、末端封止剤としてフェニルイソシアネートのかわりにオクタドデシルイソシアネートを1.0g使用した以外は、実施例3-1と同様の方法で、末端が封止されたポリマー化合物BP3'を得た。
【0140】
[比較例3-4]ポリマー化合物BP4'の製造
アジピン酸20g、ヘキサメチレンジアミン16.24g及びイオン交換水8gを内容積1Lのオートクレーブに加え、オートクレーブに入れて窒素置換を十分に行った後、攪拌下で265℃に昇温した。密閉状態を維持したまま、更に265℃で1時間攪拌した後、常圧まで放圧し、末端封止剤としてラウロイルクロリドを0.9g加え、270℃で2時間攪拌した。その後、内容物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出すことで、末端が封止されたポリマー化合物BP4'を得た。
【0141】
[比較例3-5]ポリマー化合物BP5'の製造
100mLフラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートを6.68g及びP-510((株)クラレ製)を20g仕込み、窒素気流下、マントルヒーター温度を90℃に設定し、攪拌機を用いて20分間加熱混合を行った。その後、末端封止剤としてオクタドデシルイソシアネートを0.9g加え、更に40分間加熱混合を行った後、フラスコ内の反応生成物をテフロン(登録商標)シート付ステンレストレーに取り出し、放冷することで、末端が封止されたポリマー化合物BP5'を得た。
【0142】
[比較例3-6]ポリマー化合物BP6'の製造
海洋生分解性ポリマー化合物AP1のかわりにポリマー化合物BP6を20g使用し、末端封止剤としてフェニルイソシアネートのかわりにドデシルイソシアネートを0.8g使用した以外は、実施例3-1と同様の方法で、末端が封止されたポリマー化合物BP6'を得た。
【0143】
[4]基本物性の測定
[実施例4-1~4-24、比較例4-1~4-12]
海洋生分解性ポリマー化合物AP1~AP12、AP1'~AP12'、ポリマー化合物BP1~BP6及びBP1'~BP6'について、下記方法によって、溶融温度、接触角及び引張応力を測定した。結果を表2及び3に示す。
【0144】
[溶融温度の測定]
示差走査熱量計(セイコーインスツル(株)製DSC6200)を用いて測定した。具体的には、測定試料10mgを精秤し、精秤した測定試料をアルミ製パン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを用い、常温常湿下、測定温度範囲20~300℃で昇温速度10℃/分で昇温を行った。得られたリバーシングヒートフロー曲線から、ガラス転移温度(Tg)を計算した。この際、ベースラインと吸熱による曲線のそれぞれの接点の交点を結ぶ直線の中点を求め、これをTgとした。また、溶融温度として、得られた曲線の吸熱(融解)ピーク点を算出した。
【0145】
[接触角の測定]
各海洋生分解性ポリマー化合物及びポリマー化合物を溶融温度で溶融させてプレス成型し、膜厚150μmのフィルムを作製した。作製したフィルムに、JIS R 3257に沿って水滴を落とし、30秒後の接触角を接触角計(協和界面科学(株)製Drop Master 300)を用いて測定した。
【0146】
[引張応力の測定]
JIS K 7139-A22に従って、各種フィルムよりダンベルを作製し、万能試験機((株)エー・アンド・ディ製MCT-2150)を用いて引張応力(降伏点)を測定した。各サンプルにつき5回測定し、その平均値を引張応力とした。
【0147】
【0148】
【0149】
[5]海水による重量減少試験
[実施例5-1~5~24、比較例5-1~5-12]
海洋生分解性ポリマー化合物AP1~AP12、AP1'~AP12'、ポリマー化合物BP1~BP6及びBP1'~BP6'を使用し、それぞれ溶融温度でプレス成型を行い、膜厚200μmのフィルムを作製した。
得られたフィルムを20mm角に加工したものをステンレスネットに挟み込み、15Lの水槽に入れた海水(東京湾[千葉県:千葉港]より採取)に浸して30日後、60日後、90日後の浸漬後の重量減少の経過を観察した。
結果を表4及び5に示す。
【0150】
【0151】
【0152】
表4及び5に示した結果より、海水による崩壊と同時に海水中の微生物の存在により、生分解性が促進されているものと考えられる。
【0153】
[6]海洋生分解性樹脂組成物の作製と海水での確認試験1(重量減少)
[実施例6-1~6-12、比較例6-1~6-7]
生分解性樹脂であるPBSA(三菱ケミカル(株)製FD-92)に、粉砕機(大阪ケミカル(株)製ワンダーブレンダーWB-1)を用いて粉砕し、ステンレス篩(目開き26μm)で分級した海洋生分解性ポリマー化合物AP1~AP12及びポリマー化合物BP1~BP6をそれぞれ濃度が20質量%になるように140℃で混練し、150℃でプレス成型を行い、膜厚200μmのフィルムを作製した(実施例6-1~6-12、比較例6-1~6-6)。また、PBSAそのもの(粒子群を含まない)を150℃でプレス成型し、膜厚150μmのフィルムを作製した(比較例6-7)。
作製したフィルムの接触角の測定結果を表6に示す。なお、接触角は、「[4]基本物性の測定」に記載した方法で測定した。
また、得られたフィルムを10mm角に加工したものを、それぞれイオン交換水200mL及び海水(東京湾[千葉県:千葉港]より採取)200mLに入れ、25℃で7日、30日静置した後、フィルムを取り出し、走査型電子顕微鏡でフィルムの表面及び外観を観察した。結果を表6に示す。
【0154】
【0155】
表6に示した結果より、海水による崩壊と同時に海水中の微生物の存在により、生分解性が促進されているものと考えられる。
【0156】
[7]海洋生分解性樹脂組成物の作製と海水での確認試験2(重量減少)
[実施例7-1~7-12、比較例7-1~7-7]
生分解性樹脂であるデンプン系樹脂(Mater-Bi EF05B、Novamont社製)に、粉砕機(大阪ケミカル(株)製ワンダーブレンダーWB-1)を用いて粉砕し、ステンレス篩(目開き26μm)で分級した海洋生分解性ポリマー化合物AP1'~AP12'及びポリマー化合物BP1'~BP6')をそれぞれ濃度が20質量%になるように140℃で混練し、150℃でプレス成型を行い、膜厚200μmのフィルムを作製した(実施例7-1~7-12、比較例7-1~7-6)。また、デンプン系樹脂そのもの(粒子群を含まない)を150℃でプレス成型し、膜厚150μmのフィルムを作製した(比較例7-7)。
作製したフィルムの接触角の測定結果を表7に示す。なお、接触角は、「[4]基本物性の測定」に記載した方法で測定した。
また、得られたフィルムを10mm角に加工したものを、それぞれイオン交換水200mL及び海水(東京湾[千葉県:千葉港]より採取)200mLに入れ、25℃で7日、30日静置した後、フィルムを取り出し、走査型電子顕微鏡でフィルムの表面及び外観を観察した。結果を表7に示す。
【0157】
【0158】
表7に示した結果より、海水による崩壊と同時に海水中の微生物の存在により、生分解性が促進されているものと考えられる。