(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081370
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両管理装置、車両管理方法、及び車両管理システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240611BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20240611BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194946
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三角 龍馬
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181FF10
5H181FF12
5H181FF13
5H181FF17
5H181MA48
5H181MA50
5L049CC41
5L050CC41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両を利用したユーザの不満度を抑制できる車両管理装置を提供する。
【解決手段】自律運転により走行可能な車両を管理する車両管理装置において、車両の目的地までの走行計画ルートと、車両が前記走行計画ルートを走行して前記目的地に到着する到着予定時刻とを算出する走行計画算出部13と、車両が目的地までに実際に走行したときの実走行ルートと目的地に実際に到着したときの実到着時刻とを管理する走行管理部14と、車両を利用したユーザに対してインセンティブを提供するインセンティブ提供部15とを備え、走行管理部14は、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたか否か判定し、インセンティブ提供部15は、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、実到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対して前記インセンティブを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律運転により走行可能な車両を管理する車両管理装置において、
前記車両の目的地までの走行計画ルートと、前記車両が前記走行計画ルートを走行して前記目的地に到着する到着予定時刻とを算出する走行計画算出部と、
前記車両が前記目的地までに実際に走行したときの実走行ルートと前記目的地に実際に到着したときの実到着時刻とを管理する走行管理部と、
前記車両を利用したユーザに対してインセンティブを提供するインセンティブ提供部とを備え、
前記走行管理部は、
前記実走行ルートが、前記自律運転の性能を起因として前記走行計画ルートから変更されたか否か判定し、
前記インセンティブ提供部は、
前記実走行ルートが、前記自律運転の性能を起因として前記走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、前記実到着時刻が前記到着予定時刻より遅い場合には、前記ユーザに対して前記インセンティブを提供する車両管理装置。
【請求項2】
前記インセンティブ提供部は、
前記実走行ルートが、自律運転の性能を起因として前記走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、前記実到着時刻が前記到着予定時刻より遅くない場合には、前記ユーザに対して前記インセンティブを提供しない請求項1記載の車両管理装置。
【請求項3】
前記インセンティブ提供部は、前記実走行ルートが交通状況に応じて前記走行計画ルートから変更された走行ルートであり、かつ、前記実到着時刻が前記到着予定時刻より遅い場合には、前記ユーザに対して前記インセンティブを提供しない請求項1又は2記載の車両管理装置。
【請求項4】
前記インセンティブ提供部は、前記実走行ルートが緊急車両の走行を優先させるために前記走行計画ルートから変更された走行ルートであり、かつ、前記実到着時刻が前記到着予定時刻より遅い場合には、前記ユーザに対して前記インセンティブを提供しない請求項1又は2記載の車両管理装置。
【請求項5】
前記インセンティブ提供部は、前記実到着時刻が前記到着予定時刻より遅れた時間の長さに応じて、前記インセンティブの大きさを決める請求項1又は2記載の車両管理装置。
【請求項6】
自律運転により走行可能な車両を管理し、コントローラにより実行される車両管理方法において、
前記コントローラは、
前記車両の目的地までの走行計画ルートと、前記車両が前記走行計画ルートを走行して前記目的地に到着する到着予定時刻とを算出し、
前記車両が前記目的地までに実際に走行したときの実走行ルートと前記目的地に実際に到着したときの実到着時刻とを管理し、
前記実走行ルートが、自律運転の性能を起因として前記走行計画ルートから変更されたか否か判定し、
前記実走行ルートが、前記自律運転の性能を起因として前記走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、前記実到着時刻が前記到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対してインセンティブを提供する車両管理方法。
【請求項7】
自律運転により走行可能な車両及びサーバを含む車両管理システムにおいて、
前記サーバ又は前記車両は、
前記車両の目的地までの走行計画ルートと、前記車両が前記走行計画ルートを走行して前記目的地に到着する到着予定時刻とを算出し、
前記車両が前記目的地までに実際に走行したときの実走行ルートと前記目的地に実際に到着したときの実到着時刻とを管理し、
前記実走行ルートが、自律運転の性能を起因として前記走行計画ルートから変更されたか否か判定し、
前記サーバは、前記実走行ルートが、前記自律運転の性能を起因として前記走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、前記実到着時刻が前記到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対してインセンティブを提供する車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両管理装置、車両管理方法、及び車両管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、相乗りに提供される車両の運行スケジュールの遅延発生を防ぐ乗車管理装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の乗車管理装置において、相乗り決定部は、利用者Aが乗車する車両に利用者Bが同乗する場合、利用者Bが車両に乗車する合流地点を決定する。走行管理部は、利用者Aが使用する通信端末からの情報に基づいて、車両が合流地点へ移動を開始したか否かを判断する。待機判断部は、車両が移動を開始した場合、利用者Bが使用する通信端末から受ける所定の情報に基づいて利用者Bが合流地点で待機しているか否を判断する。キャンセル通知部は、利用者Bが合流地点で待機していないと待機判断部により判断された場合、利用者Bの相乗りがキャンセルされたことを通信端末に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、自律運転で走行中の車両が自律運転を維持するために走行ルートを変更することで運行スケジュールに遅れが生じた場合に、上記乗車管理装置は、ユーザに対して補償することはないため、車両を利用したユーザの満足度が低くなるという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、車両を利用したユーザの満足度の低下を抑制できる、車両管理装置、車両管理方法、及び車両管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の実際のルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、目的地に実際に到着したときの到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対して前記インセンティブを提供することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両を利用したユーザの満足度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態における配車車両の車両管理システムの概念図である。
【
図2】
図2は、車両管理装置の制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る配車車両のメンテナンスを管理する車両管理システムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る車両管理システム説明するための概念図である。本実施形態に係る車両管理システムにより管理される配車車両2は、自律運転機能を有しており、自律運転により走行可能な車両である。自律運転の制御は、運転タスクの全てをシステム主導で行う制御に限らず、運転タスクの一部をシステム主導とする運転支援制御であってもよい。車両管理システムは、サーバ1、配車車両2、及びユーザ端末3を有しており、ユーザの希望に応じた配車車両2をユーザに割り当ててユーザに配車する。車両管理システムは、目的地までの走行計画ルートと目的地への到着予定時刻を算出する。配車車両2は、到着予定時刻に目的地に到着できるよう、走行計画ルートに沿って自律運転で走行する。
【0010】
配車車両2の実際の走行ルートは、走行時の交通状況や配車車両2の周囲の環境等に応じて、走行計画ルートから変わることがある。例えば、走行計画ルートは、ある交差点で左折するルートを示しており、配車車両2は走行計画ルートに沿って走行し、左折予定の交差点に向かって走行している。また左折予定の交差点に接続する車線は三車線以上の車線になっており、配車車両2は左折用の車線とは別の車線を走行している。そのため、配車車両2は、交差点で左折するために車線を変更する必要がある。配車車両2は、自律運転で車線変更を行うために、車載センサを用いて、自車両の周囲の他車両、車線変更ためのスペース等を検出し、検出結果から車線変更可能か否か判定する。そして、車線変更可能と判定した場合には、配車車両2の自律運転システムは、車速及び操舵を制御して隣接車線への車線変更を行う。
【0011】
一方、車線変更不可と判定した場合には、配車車両2は、走行ルートを変更して、車線変更をすることなく自律運転を維持する。あるいは、配車車両2の自律運転システムは、システム主導からドライバ主導に切り替える。このとき、ドライバ主導への切り替えは、自律運転を完全に解除する、あるいは、ドライバ主導のよる運転タスクが増えるように、自律運転の一部を解除してもよい。ドライバ主導になった場合には、ドライバの判断で車線変更しなかったときに、走行ルートが走行計画ルートから変更になることがある。すなわち、配車車両2では、自律運転の性能を起因として、実際の走行ルートが走行計画ルートから変更されることがある。このようなルート変更は、交通渋滞などの外部要因よりも、車両の内部性能により生じた変更である。そして、走行ルートの変更により目的地への到着時刻が到着予定時刻よりも遅れ、計画通りに走行できなかった場合には、ユーザに迷惑をかけ、配車サービスを利用するユーザの満足度低下にもなる。本実施形態に係る車両管理システムでは、実際の走行ルートが走行計画ルートから変更になることで実際の到着時刻が到着予定時刻よりも遅くなり、かつ、ルート変更の要因が自律運転の性能を起因するものである場合には、ユーザに対してインセンティブを提供する。これにより、ユーザの満足度の低下を抑制する。
【0012】
実施形態に係る車両管理システムは、タクシー会社、レンタカー会社、カーシェアリング事業者等により利用されるシステムであり、不特定多数のユーザが乗車する車両を管理するためのシステムである。
図1に示すように、サーバ1は、車両管理装置10と、通信装置16を備えている。サーバ1は、通信装置16を用いて、配車車両2及びユーザ端末3と通信を行い、配車車両の管理、ユーザから入力される情報の管理、配車車両に関する案内通知等を行う。車両管理装置10は、複数の配車車両2を管理するコントローラであり、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、プログラムを実行することで、各機能を実行させるCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、を備える。車両管理装置10は、各種機能を実行させるための機能ブロックとして、情報取得部11、配車処理部12、走行計画算出部13、走行管理部14、インセンティブ提供部15を有している。なお、車両管理装置10は、情報取得部11等の機能に限らず、他の機能を有してもよい。
【0013】
情報取得部11は、通信装置16を介して、ユーザ端末3からユーザの入力情報を、配車車両2から車両情報を取得する。ユーザの入力情報は、例えば配車車両2を予約するための予約情報、ユーザの登録情報等である。予約情報は、ユーザが希望する目的地、又は目的地への希望到着時刻等の情報を含む。ユーザの登録情報はユーザの個人情報等である。車両情報は、配車車両2の位置情報、又は配車車両2が実際に走行した走行ルート(以下、実走行ルートとも称す)等を含む。情報取得部11は、配車車両2及びユーザ端末3から取得した情報を、サーバ1内のデータベースに記憶する。
【0014】
配車処理部12は、ユーザの入力情報からユーザの希望条件を特定し、ユーザの希望条件に合う配車車両2を割り当てて、配車車両2の配車予約を行う。配車予約の際には、配車処理部12は、ユーザの乗車位置と降車位置を設定する。ユーザの乗車位置及び降車位置は、ユーザにより指定されてもよく、あるいは、ユーザの希望条件に合う位置をサーバ側で指定されてもい。そして、ユーザの降車位置が、配車車両2の目的地となる。配車処理部12は、配車車両2の走行中、車両の位置からユーザの乗車及び降車を管理する。なお、配車処理部12は、ユーザ端末3の位置情報からユーザの乗車及び降車を管理してもよい。
【0015】
走行計画算出部13は、配車車両2の目的地までの走行計画ルートと、配車車両2が走行計画ルートを走行して目的地に到着する到着予定時刻とを算出する。走行計画ルートは、配車車両2の出発地又はユーザの乗車地から、配車車両2の目的地までの走行ルートである。走行計画ルートは、配車車両2の走行開始前、ユーザの乗車前、又はユーザの乗車時に算出される。走行計画算出部13は、算出した走行計画ルートの情報を配車車両2に送信する。配車車両2は、走行計画ルートに沿って走行するように走行を開始し、走行中、例えば交通状況等に応じて目的地までの最適ルートを算出し、走行計画ルートと異なる最適ルートを算出できた場合には、走行計画ルートとは別の走行ルートに変更する。
【0016】
走行管理部14は、配車車両2の実走行ルートと、配車車両2が目的地に実際に到着したときの実際の到着時刻(以下、実到着時刻とも称す)を管理する。走行管理部14は、配車車両2の位置情報から、実走行ルートと実到着時刻を取得する。また走行管理部14は、ユーザの降車後に、配車車両2から走行記録データを取得することで、実走行ルートと実到着時刻を管理してもよい。走行管理部14は、走行計画ルートと実走行ルートとを比較し、実走行ルートが走行計画ルートから変更されたか否か判定する。走行管理部14は、自律運転の性能を起因としたルート変更であるか否か判定する。ルート変更の要因は、自律運転の性能を起因するものの他に、交通状況に起因するもの等である。交通渋滞及び/又は交通規制により、遅れが発生する又は遅れの可能性があり、走行計画ルートとは別の走行ルートを走行した方が早く目的地に到着できる場合には、交通渋滞や交通規制が交通状況に起因するものとなる。
【0017】
走行管理部14は、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたか否か判定する。走行管理部14は、例えば以下の要領で、ルート変更が自律運転の性能を起因としたルート変更であるか判定する。配車車両2は、走行中、ナビゲーションシステムを用いて、目的地への最適ルートを算出しており、交通状況を起因としてルート変更が必要である場合には、ルート変更を行うか否か、ユーザに承諾を求める。例えば、車室内のディスプレイに、走行ルートを変更する否か選択するための画面が表示される。配車車両2は、ユーザからルート変更の承諾を確認した場合には、走行ルートを走行計画ルートから変更する。このとき、配車車両2は、ユーザから承諾を得たルート変更であることを示す承諾情報を記録する。配車車両2は、目的地への到着後、ルート変更の承諾情報を実走行ルートのデータに含めてサーバ1に送信する。
【0018】
走行管理部14は、実走行ルートが走行計画ルートから変更された走行ルートであり、ルート変更の承諾情報が実走行ルートのデータに含まれている場合には、交通状況を起因としたルート変更であると判定する。一方、走行管理部14は、実走行ルートが走行計画ルートから変更された走行ルートであり、ルート変更の承諾情報が実走行ルートのデータに含まれていない場合には、自律運転の性能を起因としたルート変更であると判定する。
【0019】
また走行管理部14は、例えば以下の要領で、ルート変更が自律運転の性能を起因としたルート変更であるか否かを判定してよい。走行管理部14は、配車車両2の走行中、現在の交通状況を示す交通情報を取得し、目的地への最適ルートを算出する。走行管理部14は、走行計画ルートとは異なる最適ルートが算出された場合には、配車車両2に、最適ルートのデータを送信する。配車車両2は、ルート変更を行うか否かユーザに承諾を求める。配車車両2は、ルート変更の承諾を確認した場合には、走行ルートを変更することを示すデータをサーバ1に送信する。そして、走行管理部14は、配車車両2から走行ルートを変更する旨のデータを取得した場合には、交通状況を起因としたルート変更であると判定し、サーバ1側で管理してる走行ルートを更新する。
【0020】
走行管理部14は、配車車両2の走行終了後に、実走行ルートのデータを配車車両2から取得する。走行管理部14は、サーバ側で管理している走行ルートと、実走行ルートを比較し、実走行ルートが、サーバ側で管理している走行ルートから変更された否か判定する。実走行ルートが変更された場合には、走行管理部14は、自律運転の性能を起因としたルート変更であると判定する。なお、走行管理部14は、配車車両2の走行中、配車車両2の位置情報から走行ルートが変更されたか否かを判定してもよい。交通状況を起因としてルート変更を行う場合には、サーバ1が、配車車両2に対して最適ルートのデータを送信しており、サーバ主導で、交通状況に応じた最適ルートを管理している。そのため、ルート変更が、サーバ主導ではなく、配車車両2の主導で行われた場合には、走行管理部14は、自律運転の性能を起因としたルート変更であると判定してもよい。
【0021】
また配車車両2が、走行ルートを変更した場合には、走行ルートの変更要因が交通状況を起因とするものが、自律運転の性能を起因としたものであるか、サーバ1側で区別できるよう、走行ルートの変更要因を示す情報を、実走行ルートのデータに含めてサーバ1に送信してもよい。例えば、配車車両2の乗車中のユーザが、ナビゲーションシステムを操作し、走行計画ルートとは異なる走行ルートに変更した場合には、配車車両2は、走行ルートの変更要因を、ユーザ希望によるものとして記憶する。また、例えば、配車車両2が走行計画ルートに沿って自律運転で走行している状態で、車両周囲の環境により自律運転を維持できなくなり、自律運転の制御主体をシステム主導からドライバ主導に変更する、あるいは、自律運転を解除する。その後、配車車両2が、走行計画ルートとは異なる走行ルートを走行した場合には、走行ルートの変更要因を、自律運転の性能を起因としたものとして記憶する。
【0022】
インセンティブ提供部15は、配車車両2を利用したユーザに対してインセンティブを提供する。インセンティブ提供部15は、実走行ルートが走行計画ルートから変更された場合には、走行管理部14の判定結果から、ルート変更が自律運転の性能を起因としたルート変更であるか否か特定する。インセンティブ提供部15は、ルート変更が自律運転の性能を起因としたルート変更である場合には、実到着時刻が到着予定時刻より遅いか否か判定する。実到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、インセンティブ提供部15はユーザに対してインセンティブを提供する。インセンティブ(ベネフィット)は、例えば、配車サービスの利用料金の割引、目的地周辺の店舗で利用可能なクーポン券、配車サービスの予約繁忙期に優先して予約できる権利等である。インセンティブ提供部15は、通信装置16を用いて、インセンティブに関するデータをユーザ端末に送信する。ユーザは、ユーザ端末30のディスプレイの表示から、インセンティブが提供されたことを確認する。このように、インセンティブ提供部15は、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、実到着時刻が前記到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対してインセンティブを提供する。
【0023】
一方、インセンティブ提供部15は、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、実到着時刻が到着予定時刻より遅くない場合には、ユーザに対してインセンティブを提供しない。ルート変更が自律運転の性能を起因としたルート変更である場合でも、実到着時刻が到着予定時刻に間に合う場合には、ユーザに対する不利益はないため、インセンティブは提供されない。
【0024】
またインセンティブ提供部15は、実走行ルートが交通状況に応じて走行計画ルートから変更された走行ルートであり、かつ、実到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対してインセンティブを提供しない。ルート変更が交通状況を起因としたルート変更である場合には、到着時間の遅れは配車車両2の外部要因によるものであるため、ユーザに対してインセンティブを提供しない。
【0025】
通信装置16は、配車車両2の通信装置25及びユーザ端末30の通信装置をデータの送受信を行う。
【0026】
配車車両2は、自律運転機能を有した車両であり、コントローラ20、センサ23、データベース24、及び通信装置25を備えている。コントローラ20は、車両全体を制御するためのコントロールユニットであり、走行ルートの算出、自律運転の制御などの各種機能を実行するための機能ブロックとして、走行ルート算出部21及び自律運転制御部22を有している。なお、コントローラ20に含まれる機能ブロックは、走行ルート算出部21及び自律運転制御部22に限らず、例えば車載バッテリの充放電の制御機能等、他の機能を実行させるための機能ブロックを含んでもよい。
【0027】
走行ルート算出部21は、データベース24に記録されている地図情報を取得し、通信装置25を用いてVICS(登録商標)などの交通システムと接続し、渋滞情報等の交通情報を取得する。また走行ルート算出部21は、GPSを用いて車両の現在位置を測定し、取得した地図情報及び交通情報を用いて、車両の現在位置から目的地までの走行ルートを算出する。走行ルート算出部21は、算出された走行ルートのデータを、車内ディスプレイや自律運転制御部22に出力する。
【0028】
自律運転制御部22は、走行計画算出部13により算出された走行計画ルート及び/又は走行ルート算出部21により算出された走行ルートに沿って自律運転で走行するように、センサ23の検出データを用いて車両の周囲を監視して、アクセル制御、ブレーキ制御、操舵制御を行う。自律運転制御部22は、走行用モータ及び/又は内燃機関を制御する駆動系のECUに対して制御指令を送信して、アクセル/ブレーキ制御を行う。また、自律運転制御部22は、ステアリングアクチュエータを制御するECUに対して制御指令を送信して、操舵制御を行う。さらに、自律運転制御部22は、データベースに記憶されている高精度地図のデータ用いて、算出された走行ルートに沿って走行するように、車両の走行位置を制御する。
【0029】
自律運転制御部22は、自律運転を維持するための走行ルートを算出してもよい。例えば、走行計画ルートに沿って自律運転で走行中、車線変更を行うようなシーンにおいて、自律運転制御部22は、センサ23の検出データを用いて、車線変更先の車線に、車線変更可能なスペースが有るか否か検知する。車線変更先の車線には複数の他車両が走行しており、車線変更かスペースがない。このような場合に、自律運転制御部22は、車線変更をしないような走行ルートを新たに算出し、算出された走行ルートに変更して、自律運転を維持してもよい。
【0030】
センサ23は、車両の周囲環境を検出するための車載センサであって、例えばLADER等の測距装置やカメラ等である。なお、路肩に設置されたインフラセンサや他車両等と通信を行い、車両の周囲環境のデータを取得する場合には、センサ23は通信機を含んでもよい。データベース24は、高精度地図を記憶する。通信装置25は、サーバ1の通信装置16及びユーザ端末30の通信装置31とデータの送受信を行う。
【0031】
ユーザ端末3は、ユーザにより操作される通信端末であり、通信装置31を有している。ユーザは、例えば配車車両2を予約するためにユーザ端末3を操作して、目的地や目的地への到着時刻等の希望条件を入力する。またユーザは、サーバ1からユーザ端末3に送信される、配車車両2の予約情報を、ユーザ端末3のディスプレイで確認できる。なお、ユーザ端末3のディスプレイには、配車車両2の走行ルートや目的地への到着予定時刻を表示してもよい。配車車両2の走行ルートは、走行計画ルートや、車両走行中にサーバ1又は配車車両2で算出された走行ルート等である。通信装置31は、サーバ1の通信装置16及び配車車両2の通信装置25とデータの送受信を行う。
【0032】
次に、
図2を参照して、車両管理装置10の制御フローを説明する。
図2は、車両管理装置10の制御処理のフローチャートである。
図2の制御フローは、配車車両2を予約してから車両の走行を終えてインセンティブを提供するまでのフローを示している。
【0033】
ステップS1にて、情報取得部11は、ユーザ端末3との通信を介して、配車車両2の予約情報を取得する。ステップS2にて、配車処理部12及び走行計画算出部13は、配車車両2の走行計画を算出する。具体的には、まず配車処理部12は予約情報に基づき配車車両2の配車予約を行い、走行計画算出部13は、配車車両2の出発地から目的地までの走行計画ルートを算出する。走行計画ルートは、少なくとも、配車車両2を予約したユーザの乗車地から降車地までのルートを含んでいる。走行計画算出部13は、車両走行時の交通状況を予め予測した上で、目的地までの最短時間で走行できる走行ルートを走行計画ルートとして算出する。走行計画算出部13は、自律運転で走行し易いように、高精度地図の整備されたルートを走行計画ルートとして算出してよい。また走行計画算出部13は、配車車両2の出発時刻、ユーザの乗車予定時刻、配車車両2目的地への希望到着時刻をそれぞれ算出する。配車車両2を決定し、配車車両2の走行計画を算出(走行計画ルート及び目的地への到着予定時刻の算出)した後に、配車処理部12は、算出された走行計画の情報をユーザ端末3に送信する。ユーザは、ユーザ端末3のディスプレイ上で、配車車両2の情報、走行計画の情報を確認できる。走行計画の情報は、少なくとも、配車車両2への乗車場所と降車場所、乗車時刻と降車予定時刻(目的地への到着予定時刻)等を含んでいればよい。そして、ユーザが、配車車両2の予約を確定するようユーザ端末を操作し、配車処理部12が、ユーザ端末3から、予約確定の指令を受信すると、配車車両2の予約と走行計画が確定する。
【0034】
ステップS3にて、走行管理部14は、配車車両2の位置情報を取得し、配車車両2の走行が開始したか否か判定する。配車車両2は、目的地に到着するまで自律運転で走行する。なお、配車車両2は、目的地までの走行ルートの全てを自律運転で走行してもよく、目的地までの走行ルートの一部を自律運転で走行してもよい。走行開始後、ステップS4にて、走行管理部14は配車車両2の現在位置から目的地までの走行ルートの交通情報を取得する。なお、走行管理部14は、サーバ1内で交通情報を管理する場合には、必ずしも外部の交通管理システムから交通情報を取得しなくてもよい。
【0035】
ステップS5にて、走行管理部14は、交通状況を起因としたルート変更が必要であるか否か判定する。ルート変更が必要であると判定した場合には、走行管理部14は、走行中の配車車両の走行ルートの変更を承諾するかユーザに選択させるための選択要求指令を、配車車両2及び/又はユーザ端末3に送信する。ユーザがルート変更を承諾する旨の操作をした場合には、ルート変更を承諾する承諾指令がサーバ1に送信される。ステップS6にて、走行管理部14は、ユーザが交通状況を起因としたルート変更を承諾したか否か判定する。ルート変更の承諾指令を受信した場合には、走行管理部14はルート変更の承諾有りと判定し、現在の走行ルートを、走行計画ルートから新たな走行ルートに変更する。ステップS5の判定フローで、交通状況を起因としたルート変更が必要ではないと判定した場合には、車両管理装置10はステップS7の制御フローを実行する。またステップS6の判定フローで、ルート変更の承諾指令を受信しない場合には、走行管理部14はルート変更の承諾無しと判定し、制御フローを終了させる。つまり、車両管理システムがユーザにルート変更を提案したが、ユーザがその提案を承諾しない場合には、インセンティブの提供の対象外とする。
【0036】
ステップS7にて、配車車両2の位置情報を取得し、配車車両2が目的地に到着したか否か判定する。配車車両2が目的地に到着していない場合には、車両管理装置10はステップS5の制御フローを実行する。配車車両2が目的地に到着した場合には、ステップS8にて、走行管理部14は、実走行ルートが走行計画ルートから変更されたか否かを判定する。実走行ルートが走行計画ルートから変更された場合には、ステップS9にて、走行管理部14は、走行ルートの変更が自律運転の性能を起因としたルート変更であるか否かを判定する。例えば、ユーザに対して交通状況を起因としたルート変更を提案しておらず、実走行ルートが走行計画ルートと異なる場合には、走行管理部14は、自律運転の性能を起因としたルート変更であると判定してもよい。
【0037】
ステップS10にて、走行管理部14は、目的地への実到着時刻が到着予定時刻より遅いか否かを判定する。実到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、ステップS11にて、インセンティブ提供部15は、遅れ時間が余裕時間範囲内であるか否かを判定する。遅れ時間は、実到着時刻が到着予定時刻より遅れた時間の長さに相当する。余裕時間は、到着時間の遅れの許容範囲を示すものであって、車両管理装置10により設定される。例えば、余裕時間は、走行ルートの長さ(走行距離)に応じて設定されればよい。走行ルートの長さが長い程、余裕時間の長さが長くなるように、インセンティブ提供部15は余裕時間を算出すればよい。
【0038】
遅れ時間が余裕時間範囲内である場合には、ステップS12にて、インセンティブ提供部15は、ユーザに対して、インセンティブ(小)を通知する。遅れ時間が余裕時間範囲外である場合には、ステップS13にて、インセンティブ提供部15は、ユーザに対して、インセンティブ(大)を通知する。つまり、遅れ時間が余裕時間より長い場合には、インセンティブ提供部15はインセンティブを大きくし、遅れ時間が余裕時間以下である場合には、インセンティブ提供部15はインセンティブを小さくする。これにより、インセンティブ提供部15は、遅れ時間の長さに応じて、インセンティブの大きさを決める。そして、インセンティブを提供した後、車両管理装置10は制御フローを終了させる。
【0039】
ステップS8の判定フローで実走行ルートが走行計画ルートから変更されていないと判定した場合、ステップS9の判定フローで走行ルートの変更が自律運転の性能を起因としたルート変更ではないと判定した場合、ステップS10の制御フローで目的地への実到着時刻が到着予定時刻より遅くないと判定した場合には、車両管理装置10はステップS14の制御フローを実行する。ステップS14にて、インセンティブ提供部15は、インセンティブをユーザに提供せずに、制御フローを終了させる。
【0040】
上記のように本実施形態に係る車両管理装置10及び車両管理方法は、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたか否か判定し、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、実到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対してインセンティブを提供する。これにより、自律運転の性能を起因として目的地への到着が遅れた場合にはインセンティブを提供して、ユーザのサービスに対する満足度の低下を抑制できる。
【0041】
また本実施形態において、インセンティブ提供部15は、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、実到着時刻が到着予定時刻より遅くない場合には、ユーザに対してインセンティブを提供しない。つまり、自律運転の性能を起因として走行ルートが変更になった場合でも、到着予定時刻までに目的地に到着できた場合には、インセンティブはユーザに提供されない。これにより、ユーザの不利益とならないような車両利用に対して、インセンティブを提供することを回避できる。
【0042】
また本実施形態において、インセンティブ提供部15は、実走行ルートが交通状況に応じて走行計画ルートから変更された走行ルートであり、かつ、実到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対してインセンティブを提供しない。これにより、自律運転の性能とは異なり、交通渋滞などの外部要因により走行ルートが変更され、到着時刻の遅れが発生した場合には、インセンティブはユーザに提供されない。これにより、自律運転の性能以外を要因として到着時刻の遅れが発生した場合に、インセンティブが提供されることを回避できる。
【0043】
また本実施形態において、インセンティブ提供部15は、実到着時刻が到着予定時刻より遅れた時間の長さに応じて、インセンティブの大きさを決める。これにより、ユーザのサービスに対する満足度の低下を抑制できる。
【0044】
なお、本実施形態の変形例として、車両管理装置10は、緊急車両の走行を優先させたために、走行ルートが変更になり、かつ、実到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対してインセンティブを提供しなくてもよい。走行管理部14は、例えば以下の要領で、実走行ルートが走行計画ルートと異なる場合に、緊急車両の走行を優先させたためのルート変更であるか否かを判定してよい。配車車両2が、走行ルートを変更した場合には、走行ルートの変更要因が、緊急車両の走行を起因とするものが、自律運転の性能を起因としたものであるか、サーバ1側で区別できるよう、走行ルートの変更要因を示す情報を、実走行ルートのデータに含めてサーバ1に送信してもよい。
【0045】
例えば、自律運転の走行中、配車車両2の周囲を緊急車両が走行しているような走行シーンにおいて、走行計画ルート上の走行を維持させる場合に、配車車両2の走行が緊急車両の走行に影響するときには、配車車両2は緊急車両の走行を優先させるように、自律運転を制御する。配車車両2は、センサ23の検出データから緊急車両の位置と車速を検出し、例えば自車両を一時停止させるなど、走行計画ルートを変更することなく、緊急車両の走行を優先させることができるか否か判定する。走行計画ルートを変更することなく、緊急車両の走行を優先させることができない場合には、配車車両2の自律運転制御部22は、走行ルートを変更する。このとき、自律運転制御部22は走行ルートの変更要因を、緊急車両の走行によるものとして記憶する。そして、配車車両2は、は走行ルートの変更要因を示す情報を、実走行ルートのデータに含めて、サーバ1に送信する。走行管理部14は、緊急車両の走行を要因としたルート変更である旨の情報が含まれる実走行ルートのデータに含まれている場合には、実走行ルートが緊急車両の走行を優先させるために走行計画ルートから変更された走行ルートであると判定する。そして、インセンティブ提供部15は、緊急車両の走行を優先させるためのルート変更であり、かつ、実到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対して前記インセンティブを提供しない。これにより、自律運転の性能以外を要因として到着時刻の遅れが発生した場合に、インセンティブが提供されることを回避できる。
【0046】
なお、本実施形態において、ステップS3~ステップS10の制御フローは配車車両2のコントローラで実行されてもよい。また本実施形態において、ステップS1~S14の制御フローの順序は適宜変更されてもよい。
【0047】
また本実施形態において、走行計画算出部13及び走行管理部14の機能のうち、少なくとも一部は配車車両2のコントローラに設けてもよい。すなわち、本実施形態に係る車両管理システムにおいて、サーバ1又は配車車両2は、配車車両2の目的地までの走行計画ルートと、配車車両2が走行計画ルートを走行して目的地に到着する到着予定時刻を算出し、実走行ルートと実到着時刻を管理し、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたか否か判定する。またサーバ1は、実走行ルートが、自律運転の性能を起因として走行計画ルートから変更されたと判定され、かつ、実到着時刻が到着予定時刻より遅い場合には、ユーザに対してインセンティブを提供する。これにより、自律運転の性能を起因として目的地への到着が遅れた場合にはインセンティブを提供して、ユーザのサービスに対する満足度の低下を抑制できる。
【0048】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0049】
1 サーバ
2 配車車両
3 ユーザ端末
10 車両管理装置
11 情報取得部
12 配車処理部
13 走行計画算出部
14 走行管理部
15 インセンティブ提供部
16 通信装置
20 コントローラ
21 走行ルート算出部
22 自律運転制御部
23 センサ
24 データベース
25 通信装置
30 ユーザ端末
31 通信装置