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特開2024-81375信号生成装置、信号解析システム及び信号生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081375
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】信号生成装置、信号解析システム及び信号生成方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/00 20060101AFI20240611BHJP
   G06F 11/10 20060101ALI20240611BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H04L1/00 A
G06F11/10 604
H04L25/02 301Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022194956
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幸代
【テーマコード(参考)】
5K014
5K029
【Fターム(参考)】
5K014AA01
5K014BA06
5K014EA01
5K014HA01
5K029AA01
5K029BB03
5K029CC01
5K029DD13
5K029EE11
(57)【要約】
【課題】CRCシグナル値の設定エラーを防止できる、信号生成装置を提供する。
【解決手段】
ネットワークシステムで用いられる信号を生成する信号生成装置であって、コントローラ10は、少なくともID(Identifer)とシグナル値を含んだメッセージフレームを取得し、メッセージフレームが予め定められた所定水準に対応するフレームである場合には、ソフトウェアライブラリに格納された規格決定用ロジックと、データベースを用いて、メッセージフレームに該当するCRC規格を選択し、ソフトウェアライブラリに格納されたCRC計算用ロジックを用いて、CRC規格に準じたCRCシグナル値を計算し、CRCシグナル値を付与したメッセージフレームを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークシステムで用いられる信号を生成する信号生成装置であって、
CRC規格を決定するための規格決定用ロジックと、CRC計算用ロジックが組み込まれたソフトウェアライブラリと、
前記ソフトウェアライブラリを参照して、ネットワークシステムで用いられる信号を生成するコントローラを備え、
前記コントローラは、
少なくともID(Identifer)とシグナル値を含んだメッセージフレームを取得し、
前記メッセージフレームが予め定められた所定水準に対応するフレームである場合には、前記規格決定用ロジックを用いて、前記メッセージフレームに該当するCRC規格を選択し、
前記CRC計算用ロジックを用いて、前記CRC規格に準じたCRCシグナル値を計算し、
前記CRCシグナル値を前記メッセージフレームに付与することで新たなメッセージフレームを生成する信号生成装置。
【請求項2】
請求項1記載の信号生成装置であって、
前記規格決定用ロジックは、フレーム種別とDLCから該当する前記CRC規格を決定するロジックであり、
前記コントローラは、
前記規格決定用ロジックを用いて、取得された前記メッセージフレームのIDを元に、データベースを参照して得られる前記フレーム種別と前記DLCから、前記メッセージフレームに該当するCRC規格を選択する信号生成装置。
【請求項3】
請求項2記載の信号生成装置であって、
前記データベースは、前記メッセージフレームのプロパティを示す情報として、ID、メッセージ名、DLC、フレーム種別、シグナル名、及びシグナルビット位置を含んでおり、
前記コントローラは、、前記データベースから得られる前記プロパティを参照して、前記メッセージフレームから前記フレーム種別と前記DLCを取得する信号生成装置。
【請求項4】
請求項3記載の信号生成装置であって、
前記コントローラは、前記プロパティを参照して前記シグナルビット位置を取得し、前記プロパティで定められた前記シグナルビット位置に、前記CRCシグナル値を格納する信号生成装置。
【請求項5】
請求項3記載の信号生成装置であって、
前記コントローラは、取得された前記メッセージフレームに含まれる前記シグナル値を編集して、新たなシグナル値を設定し、
前記CRC計算用ロジックを用いて、前記IDと前記新たなシグナル値に基づき、前記CRC規格に準じた前記CRCシグナル値を計算する信号生成装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の信号生成装置であって、
所定水準は機能安全規格を定めた水準であり、
前記コントローラは、前記メッセージフレームが前記所定水準に対応するフレームではない場合には、前記CRCシグナル値を計算するための処理を実行しない信号生成装置。
【請求項7】
請求項1又は2記載の信号生成装置を含む信号解析システムにおいて、
前記新たなメッセージフレームを受信するコントロールユニットを備え、
前記コントロールユニットは、
受信した前記メッセージフレームに付与された前記CRCシグナル値を取得し、
前記CRCシグナル値とCRC計算値とを照合する信号解析システム。
【請求項8】
コントローラにより実行される、ネットワークシステムで用いられる信号を生成する信号生成方法であって、
前記コントローラは、
少なくともID(Identifer)とシグナル値を含んだメッセージフレームを取得し、
前記メッセージフレームが予め定められた所定水準に対応するフレームである場合には、ソフトウェアライブラリに格納された規格決定用ロジックを用いて、前記メッセージフレームに該当するCRC規格を選択し、
前記ソフトウェアライブラリに格納されたCRC計算用ロジックを用いて、前記IDとシグナル値に基づき、前記CRC規格に準じたCRCシグナル値を計算し、
前記CRCシグナル値を前記メッセージフレームに付与することでメッセージフレームを生成する信号生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号生成装置、信号解析システム及び信号生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両における電子制御装置(ECU)の動作を、シミュレータを用いて試験する試験方法が知られている(例えば特許文献1)。この試験方法では、シミュレータは、ECUのソフトウェアが正常に作動するかを試験するために、アプリケーションに所定の試験条件を示すシミュレーションデータをECU側の通信IFに入力し、そのシミュレーションデータを用いてアプリケーションが演算した結果のデータを取得して、その演算結果データからCPUボード内の試験結果判定部が試験結果を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-144274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両におけるECUがASIL(Automotive Safety Integrity Level)等の所定水準に準拠したシステムを制御するユニットである場合には、ECUが送受信するデータフレームにCRCシグナル値を付与する必要がある。上記の試験方法において、アプリケーションを用いた演算処理によりシグナル値を編集すると、CRCシグナル値の設定エラーが発生し、メッセージ内容に誤りであると認識され、シミュレーションを適切に実施できないという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、CRCシグナル値の設定エラーを防止できる、信号生成装置、信号解析システム及び信号生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、少なくともID(Identifer)とシグナル値を含んだメッセージフレームを取得し、メッセージフレームが所定水準に対応するフレームである場合には、ソフトウェアライブラリ12に格納された規格決定用ロジックを用いて、メッセージフレームに該当するCRC規格を選択し、ソフトウェアライブラリ12に格納されたCRC計算用ロジックを用いて、CRC規格に準じたCRCシグナル値を計算し、CRCシグナル値をメッセージフレームに付与することでメッセージフレームを生成することによって、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、CRCシグナル値の設定エラーを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係る信号解析システムを示すブロック図である。
図2図2は、コントローラ10で実行される制御フローを示すフローチャートである。
図3図3は、データベース20に登録されている送信フレームの構成と、各データ値を示す説明図である。
図4図4は、図2に示すステップS40のサブフローのフローチャートである。
図5図5は、規格決定用ロジックを説明するための概念図である。
図6図6は、データベース20に登録されている受信フレームの構成と、各データ値を示す説明図である。
図7図7は本実施形態の変形例に係る信号解析システムを示すブロック図である。
図8図8は本実施形態の変形例に係る信号解析システムを示すブロック図である。
図9図9は本実施形態の変形例に係る信号解析システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る信号解析システムの一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る信号解析システムを示すブロック図である。信号解析システム相当するシミュレータ11は、コントローラ10、ソフトウェアライブラリ12、データベース20と、車両30に搭載されるECU31、32を備えている。本実施形態に係る信号解析システムは、ECU間を送受信されるプロトコルメッセージを解析して、CRCシグナル値を自動生成して、ASIL等の所定水準(機能安全規格を定めた水準)に準拠したメッセージフレームに付与する。
【0010】
コントーラ10は、ハードウェア及びソフトウェアを備えたコンピュータにより構成され、プログラムを格納したメモリと、このメモリに格納されたプログラムを実行するCPU等を有している。コントーラ10は、ECU31、32から送信されるプロトコルメッセージを取得して、プロトコルメッセージに対して信号解析を行い、ASIL対応フレームに格納されるCRCシグナル値を計算し、新たなプロトコルメッセージを生成して、ECU31、32に送信する。なお、シミュレータ11を有する装置が、本発明の「信号生成装置」に相当し、シミュレータ11で実行される信号処理方法が本発明の「信号生成方法」に相当する。
【0011】
ソフトウェアライブラリ12は、CRCシグナル値の計算に使用されるロジックを格納する。ロジックは、少なくとも、CRC規格を決定するための規格決定用ロジックと、CRC計算用ロジックを含んでいる。規格決定用ロジックは、フレーム種別とDLC(Data Length Code)から該当するCRC規格を決定するためのロジックである。CRC規格は、フレーム内におけるCRCの計算方法を定めており、フレーム種別とDLCに応じて決まる。CRC計算用ロジックは、メッセージフレームに含まれるCRCシグナル値を除いたシグナル値とIDから、CRC規格に準じたCRCシグナル値を計算するためのロジックである。ロジックはライブラリ化されて、ソフトウェアライブラリ12に格納されている。
【0012】
またデータベース20は、メッセージフレームのプロパティを示す情報として、ID、メッセージ名、DLC、フレーム種別、シグナル名、及びシグナルビット位置を含んでいる。プロパティは、フレーム領域に関するデータであり、データベース20に登録されている。プロパティは、メッセージフレームから、シグナルビット位置、フレーム種別、又はDLC等を取得するために参照されるデータである。プロパティに含まれる各情報については後述する。なお、コントローラ10及びソフトウェアライブラリ12及びデータベース20を含むシミュレータ11が、CAN測定解析ツールに相当する。
【0013】
車両30に搭載されるECU31、32は、電子制御機器であり、ステアリング、ブレーキなどの車載機器と通信網で接続されており、車載機器に対して制御指令を送信する。ECU31、32は、ASILで定められた安全性水準を満たすために、通信網の送受信データとして、CRCを付与したプロトコルメッセージを送受信する必要がある。
【0014】
本実施形態では、ECU31、32のソフトウェアの動作解析のために、CAN測定解析ツールシミュレータ11(コントローラ10及びソフトウェアライブラリ12及びデータベース20を含む)を、ECU31、32が接続されているネットワークに接続する。
そして、シミュレータ11は、ECU31から、プロトコルメッセージを取得し、CRCシグナル値以外の任意のシグナル値を変更した後、CRC計算を行う。コントーラ10は、CRC計算の結果物であるCRCシグナル値を、フレーム内の指定領域に格納して、新たなプロトコルメッセージをECU32に送信する。
ECU32は、シミュレータ11から取得したメッセージフレームに格納されているCRCシグナル値とCRC計算値を照合することで、誤りの有無を判定する。
【0015】
ところで、ASIL等の所定水準を準拠したシステムにおいてプロトコルメッセージを送受信する際には、所定水準に対応したメッセージフレームでデータを送受信する必要がある。例えば所定の水準がASIL等の機能安全規格(自動車安全水準)である場合には、メッセージフレーム内にCRC(Cyclic Redundancy Check:データ誤りチェックコード)をシグナル値として付与する必要がある。なお以下の説明では、プロトコルメッセージをCANメッセージとして、実施形態を説明するが、プロトコルメッセージはLINメッセージでもよい。
【0016】
ASIL対応CANフレームにCRCシグナル値を付与するために、フレーム内のシグナル値を編集するとCRCシグナル値の設定エラー(データ不整合)になることがある。従来はネットワークシミュレーションツールを使用して、ASIL対応CANフレームを受信する。CANフレームの種別は、CAN-HS、CAN-FD等があり、CRCを計算するための規格がフレーム種別に応じて決まっている。そのため、従来は、CANフレームの種別に応じて該当するCRC規格を選択して、編集するシグナル値を元に、エクセル等のマクロでCRCシグナル値を計算していた。また、ネットワークシミュレーションツールより、CANフレームに格納されるIDやシグナルをバイト単位で書き換えることで、シグナル設定を行っていた。このような従来の方法では、CRCシグナル値の計算は手動計算のため、例えば、ユーザがCRCの計算ロジックやCRC規格の仕様を理解していない場合には、CRCシグナル値の設定エラー(データ不整合)が頻発するという問題がある。また、フレーム種別判断とCRC計算を、ユーザが手作業で実施した場合には、平均的なネットワーク周期送信時間内で終わらせることは難しく、Signal値の変更・送信作業が不可能であった。
【0017】
本実施形態に係る信号解析システムは、上記問題を解決するために、CRC計算のためのロジックを、ソフトウェアライブラリ12に格納し、データベース20のプロパティを参照して、CRCシグナル値の計算を自動化(標準化)している。また、信号解析システムは、CRCシグナル値の自動計算により、リアルタイムなフレームの送受信を可能としている。
【0018】
以下、図2を参照して、信号解析システムにおける信号生成処理(信号解析方法)を説明する。図2はコントーラ10で実行される制御フローを示すフローチャートである。
【0019】
ステップS10にて、コントーラ10は、ECU31から、少なくともID、DLC、シグナルの領域に各データを含んだ、CANフレームを取得する。ステップS20にて、コントーラ10は、取得されたメッセージフレームに含まれるシグナル値を編集して新たなシグナル値を設定する。
【0020】
新たなシグナル値の設定について、図3を参照して説明する。図3は、データベース20に登録されているプロパティと、シミュレータ11で処理されるデータフレームの構成を示す説明図である。図3は、フレーム種別(CAN-HS)の例を示している。図3(а)はプロパティの説明図である。図3(а)に示すように、データベース20のプロパティは、少なくとも、ID、メッセージ名、DLC、フレーム種別、及びシグナルビット位置を含んでいる。また、シグナルビット位置「0~1」の領域と「2」の領域の一部は、シグナル名(Signal 1)のデータ格納領域であり、シグナルビット位置「2」の領域の一部と「3」の領域はシグナル名(Signal 2)のデータ格納領域であり、シグナルビット位置「5」の領域はシグナル名(CRC)のデータ格納領域であり、シグナルビット位置「6」の領域はシグナル名(CLK:Clock)のデータ格納領域である。データフレームにおけるシグナル値等のデータの格納位置は可変であるが、データベース20にプロパティを登録することで、データの格納位置(格納領域)が指定される。なお、図3に示すシグナルビット位置のレイアウトは一例であり、各データの格納位置をメッセージ毎に変えて、レイアウトを自由に定義してもよい。例えば、CRCの格納領域をシグナルビット位置「7」としてもよい。
【0021】
ステップS10にて、コントーラ10は、ID、DLC、データ領域の各シグナル値を取得する。ステップS20にて、コントーラ10は、ステップS10の制御処理で取得したCANフレームのIDをキーとし、データベース20のプロパティを参照して、シグナル値、CRC、CLKの各種データの格納領域を計算する。さらに、図3(а)のSignal 1の値を、Signal 1の格納領域へ格納する。同様に、Signal 2と、CLKについても格納領域へ値の格納をする。このとき、シミュレータ11は、図3(b)の説明図の通りに値が代入される。また、コントーラ10は、CRCの格納領域を除き、データを格納していない領域には、パディングデータ(Padding Data)を格納する。図3(c)は、パディングデータ(Padding Data)格納後の、データフレームの構成を示す説明図である。これにより、コントーラ10は新たなシグナル値を設定する。
【0022】
ステップS30にて、コントーラ10は、データベース20に含まれるプロパティを参照して、CANフレームのフレーム種別とDLCを取得する。ステップS40にて、コントーラ10はCRC規格を選択する。図4はCRC規格を選択する制御フローのサブフローを示すフローチャートである。
【0023】
ステップS41にて、コントローラ10はステップS10の制御処理で取得したフレームがASILに対応するフレームであるか否か判定する。コントーラ10は、ステップS10の制御処理で取得したメッセージフレームのIDをキーとし、データベース20のプロパティを参照して、シグナル名にASILに対応するフレームに付随するCRC及びCLKが含まれているかの計算をする。CRC及びCLKのシグナル名が含まれているときは、ASILに対応するフレームであると判定する。フレームがASILに対応するフレームではない場合には、シミュレータ11は制御フローを終了させて、後述するCRCシグナル値を計算するための処理を実行しないため、ステップS70へ進む。
【0024】
ステップS10の制御処理で取得したフレームがASILに対応するフレームである場合には、コントーラ10は、ステップS42~S45の処理を実行する。コントーラ10は、ステップS42~S45の処理フローにおいて、規格決定用ロジックを用いて、メッセージフレームに該当するCRC規格を選択する。図5は、規格決定用ロジックを説明するための概念図である。図5に示すように、CRC規格は、フレーム種別とDLCの条件により決まる。例えばメッセージフレームの種別が、CAN-HS又はCAN-FD_Containerである場合には、CRC規格はCRC8となる。また、メッセージフレームの種別がCAN-FD_Regularである場合に、DLCが8バイト以下であるときにはCRC規格はCRC8となり、DLCが8バイトを超えるのときにはCRC規格はCRC16となる。つまり、規格決定用ロジックは、メッセージフレームの種別とDLCの長さの条件に対して、該当するCRC規格を決定するための判定ロジックに相当する。なお、図5には図示されていないが、規格決定用ロジックは、LINメッセージにも対応できるようなロジックとしてもよい。
【0025】
ステップS42にて、コントーラ10は、フレーム種別がCAN-FD_regularであるか否か判定する。フレーム種別がCAN-FD_regularである場合には、ステップS43にて、コントーラ10は、DLCが8バイトを超えるか否か判定する。DLCが8バイトを超える場合、すなわちDLCが9バイト以上である場合には、コントーラ10はCRC規格(CRC16)を選択する(ステップS44)。一方、フレーム種別がCAN-FD_regularではない場合(ステップS42の判定で「No」)、又は、フレーム種別がCAN-FD_regularであり、かつ、DLCが8バイト以下である場合(ステップS43の判定で「No」)には、コントーラ10はCRC規格(CRC8)を選択する(ステップS45)。コントーラ10は、ステップS40の制御処理により、CRC規格を自動選択し、ステップS50へ進む。
【0026】
ステップS50にて、コントーラ10は、CRC計算用ロジックを用いて、IDとシグナル値に基づき、CRC規格に準じたCRCシグナル値を計算する。シグナル値は、ステップS20で設定したシグナル値でよい。なお、IDとシグナル値からCRCシグナル値を計算方法は、CRC規格に準じた公知の方法を適用すればよいが、本実施形態では、ソフトウェアライブラリ12に格納されたCRC計算用ロジックを用いて、CRC計算処理をしているため、CRCシグナル値の自動計算を可能としている。
【0027】
ステップS60にて、コントーラ10は、データベース20のプロパティを参照して決定したCRCの格納領域(シグナルバイト位置「5」)に、CRCシグナル値(コードデータ:0x1A)を格納する。これにより、コントーラ10は、図3(d)に示すようなCANフレームを構成とするCANメッセージを生成する。図3(d)は、CRCシグナル値を格納後の、データフレームの構成を示す説明図である。ステップS70にて、コントーラ10は、CANメッセージをECU32に送信する。これにより、コントーラ10による信号解析処理の制御フローが終了する。
【0028】
図6は、受信フレームの構成を示す説明図である。ECU32は、シグナルバイト位置(図6の例では、シグナルバイト位置「5」)に格納されたCRCシグナル値を取得する。なお、シグナルビット位置とCRCシグナル値の取得は、データベース20のプロパティを参照してシミュレータ11で実行される。そして、ECU32は、CRCシグナル値とCRC計算値とを照合する。ECU32は、CRCシグナル値とCRC計算値が一致しない場合には、ECU31、32を含むネットワークシステムにおいて異常が生じていると判定する。
【0029】
なお、上記の信号解析システムにおける信号生成処理の制御フローでは、シグナル値を設定する制御フロー(ステップS20)と、CRCシグナル値を設定する制御フロー(ステップS50)とを別のフローとして説明したが、コントローラ10は、シグナル値を設定する際に、ステップS30~S50の制御フローを実行することで、シグナル値の設定に付随して、CRCシグナル値を計算してもよい。このとき、CRCシグナル値の計算に使用されるシグナル値は、ステップS10の制御フローで取得したCANフレームに含まれるシグナル値を用いてもよい。
【0030】
上記のように、本実施形態に係る信号生成装置及び信号生成方法は、少なくともID(Identifer)とシグナル値を含んだメッセージフレームを取得し、メッセージフレームが予め定められた所定水準に対応するフレームである場合には、ソフトウェアライブラリ12に格納された規格決定用ロジックを用いて、メッセージフレームに該当するCRC規格を選択し、ソフトウェアライブラリ12に格納されたCRC計算用ロジックを用いて、CRC規格に準じたCRCシグナル値を計算し、CRCシグナル値をメッセージフレームに付与することでメッセージフレームを生成する。これにより、ユーザは、CRC規格に準じたCRC計算ロジックを知らなくても、CRCシグナル値をフレームに付与できる。また、ASIL水準に対応するフレームを送受信するCANネットワークのシミュレーション設計が容易となり、リアルタイムにシグナル値を変更できるようになる。さらに、データベースを使用することで、不要なシグナル値の変更がなくなるため、CRCシグナル値の設定エラーを防止できる。
【0031】
また本実施形態において、規格決定用ロジックは、フレーム種別とDLCから該当するCRC規格を決定するロジックであり、コントローラ10は、CRC規格決定用ロジックを用いて、取得したメッセージフレームのIDを元に、データベース20のプロパティを参照して得られるフレーム種別とDLCから、メッセージフレームに該当するCRC規格を選択する。これにより、メッセージフレームに該当するCRC規格を自動選択できる。
【0032】
また本実施形態において、データベース20は、メッセージフレームのプロパティを示す情報として、ID、メッセージ名、DLC、フレーム種別、シグナル名、及びシグナルビット位置を含んでおり、コントローラ10は、データベース20から得られるプロパティを参照して、メッセージフレームからフレーム種別とDLCを取得する。これにより、CRCシグナル値の設定エラーを防止できる。
【0033】
また本実施形態において、コントローラ10は、データベース20のプロパティを参照して得られるシグナルビット位置を取得し、プロパティで定められたシグナルビット位置に、CRCシグナル値を格納する。これにより、CRCシグナル値の設定エラーを防止できる。
【0034】
また本実施形態において、コントローラ10は、取得されたメッセージフレームに含まれるシグナル値を編集して新たなシグナル値を設定し、CRC計算用ロジックを用いて、IDと新たなシグナル値に基づき、CRC規格に準じたCRCシグナル値を計算する。これにより、CRCシグナル値の設定エラーを防止できる。
【0035】
また本実施形態において、コントローラ10は、メッセージフレームが所定水準に対応するフレームではない場合には、CRCシグナル値を計算するための処理を実行しない。これにより、不要な計算処理を省略できる。
【0036】
また本実施形態に係る信号解析システムにおいて、新たなメッセージフレームを受信するECU32を備え、ECU32は、受信したメッセージフレームに付与されたCRCシグナル値を取得し、CRCシグナル値とCRC計算値とを照合する。これにより、設計開発において満足なECU評価が可能になり、品質を向上させることができる。
【0037】
なお本実施形態の変形例として、図7に示すように、信号解析システムはテスタ(DIAGテスタ)40をさらに備えてもよい。図7は本実施形態の変形例に係る信号解析システムを示すブロック図である。テスタ40は車両30が搭載するネットワークに接続され、故障発生時の履歴をECU31がDTC(ダイアグノスティックトラブルコード)として仕様通りに記録しているか否か判定する装置である。ECU31は、ネットワーク上に、ECU32へのメッセージフレームを送信する。その送信データを、シミュレータ11にて、ECU32がDTCを記録するようなシグナル値に編集した後、本実施形態における信号生成処理の制御フローを行い、再計算したCRCシグナル値を付与したメッセージフレームを、ネットワーク上に送信する。その書き換えられたメッセージフレームをECU32は受信し、本実施形態における信号生成処理の制御フローを行い、故障えの条件に従ってDTCをセットする。ECU32が、正常に診断処理を行った後、テスタ40から、ECU32にDIAGリクエストを送信する。ECU32は、テスタ40からのリクエストに対応するレスポンスデータを、テスタ40へ送信する。テスタ40は、ECU32のレスポンスデータからDTCを確認することで、ECU32の診断処理が正常に機能することを確認する。なお、テスタ40を用いたECUの動作確認は、ECU31に対しても同様の方法で実行できる。
【0038】
また本実施形態の変形例として、図8に示すように、信号解析システムは送信用シミュレーションコントロールユニット51及び受信用シミュレーションコントロールユニット52を備えてもよい。図8は本実施形態の変形例に係る信号解析システムを示すブロック図である。信号解析システムは、必ずしもECU31、32に含まれる全ての構成を含む必要はなく、ECU31及びECU32の制御用ソフトウェアをCAN測定解析ツールにECU51及びECU52として書き込んで、1つの解析ツールとしてもよい。例えば、CANネットワークシミュレーション設計を実施する際に、信号解析システムを用いて信号解析処理を行う場合には、本変形例のような解析ツール(信号解析システム)を適用するとよい。
【0039】
また本実施形態の変形例として、図9に示すように、信号解析システムは、ECU31とECU32のどちらか一方のECUのみを含んでいてもよい。図9は本実施形態の変形例に係る信号解析システムを示すブロック図である。例えば、ECU31の送受信信号に対して信号解析処理を行う場合には、本変形例のようなシステムを適用するとよい。
【0040】
なお、ECU31、32、51、52が本発明の「コントロールユニット」に相当する。
【0041】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0042】
10 コントローラ
11 シミュレータ
12 ソフトウェアライブラリ
20 データベース
30 車両
31 送信用コントロールユニット
32 受信用コントロールユニット
40 テスタ(DIAGテスタ)
51 送信用シミュレーションコントロールユニット
52 受信用シミュレーションコントロールユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9