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  • 特開-加工システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000814
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 41/02 20060101AFI20231226BHJP
   B23Q 41/08 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B23Q41/02 Z
B23Q41/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099737
(22)【出願日】2022-06-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】594190068
【氏名又は名称】マキノジェイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】延吉 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 稜平
(72)【発明者】
【氏名】副島 公平
【テーマコード(参考)】
3C042
【Fターム(参考)】
3C042RA22
3C042RB32
3C042RK29
(57)【要約】
【課題】短時間で工具交換や被加工物交換が可能で、低コストで比較的限られた空間に設置することができる加工システムを提供すること。
【解決手段】複数の被加工物を連続的に加工する加工システム100が、軌道108と、軌道に沿った設置領域に設置される少なくとも1つの工作機械10、20、30と、工作機械の設置領域よりも軌道の一方の端部側に設置される工具ステーション106と、工作機械の設置領域よりも軌道の他方の端部側に設置される被加工物ステーション104と、軌道に沿って移動し被加工物を搬送する被加工物搬送装置110と、軌道に沿って移動し工具を搬送する工具搬送装置120とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被加工物を連続的に加工する加工システムにおいて、
水平に延びる軌道と、
前記軌道の一方の端部側に配置される複数の工具を保持可能な工具マガジン、および、前記軌道の前記一方の端部側とは反対の他方の端部側に配置される被加工物を加工する加工室を備え、前記軌道に沿った設置領域に設置される少なくとも1つの工作機械と、
前記工作機械の設置領域よりも前記軌道の一方の端部側に設置される工具ステーションと、
前記工作機械の設置領域よりも前記軌道の他方の端部側に設置される被加工物ステーションと、
前記軌道に沿って移動し、前記被加工物ステーションと前記工作機械の加工室との間で被加工物を搬送する被加工物搬送装置と、
前記被加工物搬送装置よりも前記軌道の一方の端部側で前記軌道に沿って移動し、前記工具ステーションと前記工作機械との間で工具を搬送する工具搬送装置と、
を備えることを特徴とする加工システム。
【請求項2】
前記工具マガジンは、カバーにより画成される工具マガジン室内に配設されており、該カバーは、前記工具搬送装置が工具マガジン室内にアクセス可能とする開口部と、該開口部を開閉するシャッタとを具備する請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記工具搬送装置は、前記工具マガジンから工具を取り出し、また前記工具マガジンに工具を装着するマニピュレータを具備し、該マニピュレータは、前記工具搬送装置において前記被加工物搬送装置側に配置されている請求項1に記載の加工システム。
【請求項4】
前記マニピュレータは、工具を把持可能なハンドを有したロボットアームを具備する請求項3に記載の加工システム。
【請求項5】
複数の工作機械を具備し、
該複数の工作機械は先端に工具を装着する主軸を備えており、
前記主軸は、前記複数の工作機械ごとに異なるシャンクサイズの工具を装着可能となっており、前記ロボットアームのハンドは、異なるシャンクサイズの工具を把持可能となっている請求項4に記載の加工システム。
【請求項6】
複数の工作機械を具備し、
該複数の工作機械の各々は、
先端に工具を装着する主軸と、
被加工物を固定するテーブルと、
前記主軸と前記テーブルとの間の相対移動および前記工具マガジンを制御する制御装置を備えており、
前記加工システムは、前記複数の工作機械の制御装置、前記被加工物搬送装置および前記工具搬送装置に接続された加工システム制御装置を更に具備し、
前記加工システム制御装置は、被加工物交換指令と工具交換指令とを同時に実行したとき、前記被加工物搬送装置と前記工具搬送装置とが干渉するか否かを判断し、干渉すると判断した場合に、被加工物交換指令を優先して実行するよう前記被加工物搬送装置および工具搬送装置を制御する請求項1に記載の加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の工作機械と、工具搬送装置と、被加工物搬送装置とを備えた加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
このような加工システムに関連して、特許文献1には、複数台のマシニングセンタを横列配置し、該複数台のマシニングセンタに接近した位置に工具ストッカとワークストッカとを配置し、マシニングセンタと、工具ストッカおよびワークストッカとの間にツールおよびワークを搬送するスタッカクレーンを配置したフレキシブルマニファクチュアリングシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60-127959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフレキシブルマニファクチュアリングシステムでは、マシニングセンタと、工具ストッカおよびワークストッカとの間でツールおよびワークを搬送するためにスタッカクレーンが用いられている。スタッカクレーンは非常に大掛かりな装置であり、設置スペースや設置コストが非常に大きくなる。
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、短時間で工具交換や被加工物交換が可能で、またそのためにシステムを停止する必要がなく、低コストで比較的限られた空間に設置することができる加工システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、複数の被加工物を連続的に加工する加工システムにおいて、水平に延びる軌道と、前記軌道の一方の端部側に配置される複数の工具を保持可能な工具マガジン、および、前記軌道の前記一方の端部側とは反対の他方の端部側に配置される被加工物を加工する加工室を備え、前記軌道に沿った設置領域に設置される少なくとも1つの工作機械と、前記工作機械の設置領域よりも前記軌道の一方の端部側に設置される工具ステーションと、前記工作機械の設置領域よりも前記軌道の他方の端部側に設置される被加工物段取りステーションと、前記軌道に沿って移動し、前記被加工物段取りステーションと前記工作機械の加工室との間で被加工物を搬送する被加工物搬送装置と、前記被加工物搬送装置よりも前記軌道の一方の端部側で前記軌道に沿って移動し、前記工具ステーションと前記工作機械との間で工具を搬送する工具搬送装置とを具備する加工システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、共通する軌道に沿って独立した被加工物搬送装置と工具搬送装置が移動するので、加工システムは比較的狭いスペースに設置可能となる。また、工具搬送装置は、軌道上において、被加工物搬送装置よりも工具ステーションの近傍に配置されるので、同一の工作機械に対して、被加工物搬送装置による被加工物交換動作と、工具搬送装置による工具交換動作を同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の加工システムの第1の実施形態を示す略図である。
図2】本発明の加工システムの第2の実施形態を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1において、加工システム100は、好ましくは複数の工作機械、加工システム制御装置102、被加工物段取りステーションとしての被加工物ステーション104、工具ステーション106、軌道108、軌道108に沿って移動可能な被加工物搬送装置110および工具搬送装置120を主要な構成要素として含んでいる。加工システム100は、更に、被加工物棚130を含んでいてもよい。
【0010】
図1には、一例として3台の工作機械10、20、30が示されているが、加工システム100は、より多くの或いは2台の工作機械を含んでいてもよいし、1台の工作機械でも加工システム100を構成することができる。工作機械10、20、30の各々は、被加工物Wを載置、固定するテーブル(図示せず)と、被加工物Wを加工する工具Tを装着する主軸12、22、32と、加工室18、28、38を画成するカバーとを備えている。主軸12、22、32およびテーブルは、加工室18、28、38内に配設されている。工具Tは、一例として、エンドミルやドリルのような回転工具とすることができ、この場合、工作機械10、20、30の主軸12、22、32は回転主軸であり、例えば、主軸頭(図示せず)に回転可能に支持することができる。
【0011】
工作機械10、20、30は、被加工物Wと工具Tとを相対移動する直線送り軸装置(図示せず)を備えている。一例として、工作機械10、20、30は、X軸(図1において左右方向)、Y軸(図1の紙面に垂直な方向)および工具Tの回転軸線に平行に延びるZ軸(図1では上下方向)の直交3軸方向に被加工物Wと工具Tとを相対移動可能となっている。工作機械10、20、30は、直交3軸方向の直線送り軸装置に加えて、1つまたは2つの回転送り軸装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0012】
軌道108は、所定の方向に直線状に延びるレール(図示せず)を具備することができる。図1では、軌道108のレールはX軸方向に延びるレールを具備している。軌道108は、好ましくは、2本のレールを具備する。図1では、3機の工作機械10、20、30は、軌道108に沿った設置領域に横並びに配置されている。軌道108の周囲、つまり工具搬送装置120と被加工物搬送装置110が移動する領域を柵で包囲して、オペレータその他の通行者の安全を確保するようにできる。
【0013】
工作機械10、20、30は、更に、工具マガジン室14、24、34内に収容された工具マガジンを備えている。工具マガジン室14、24、34を画成するカバーの天井部分に、後述する工具搬送装置が工具マガジン室14、24、34内にアクセスする開口部14a、24a、34aを形成することができる。開口部14a、24a、34aにシャッタ(図示せず)を配設して、工具マガジン室14、24、34内の雰囲気が外部に流出することを防止することができる。
【0014】
工具マガジンは、一例として、工具Tを把持する複数のグリッパを円環状に配列した回転体(図示せず)と、該回転体を回転駆動する工具マガジン駆動モータ(図示せず)と、前記複数のグリッパの1つに把持された工具Tと、工作機械10、20、30の各々の主軸12、22、32に装着された工具Tとを交換する工具交換装置(図示せず)とを含むことができる。
【0015】
回転体は、一例として、X軸に平行に延びる中心軸線(図示せず)周りに回転可能に支持することができる。前記工具マガジン駆動モータは、前記複数のグリッパの1つを工具交換装置との授受位置へ配置するように、回転体を回転駆動可能となっている。工具交換装置との授受位置へ配置されるグリッパは、工具交換装置へ渡すための工具Tを把持しているか、或いは、工具交換装置から工具Tを受け取るために何も把持していない空の状態とすることができる。
【0016】
工具マガジン駆動モータは、更に、前記複数のグリッパの1つを工具搬送装置120との受渡位置へ配置するように、回転体を回転駆動可能となっている。工具搬送装置120との受渡位置へ配置されるグリッパは、工具搬送装置120へ渡すための工具Tを把持しているか、或いは、工具搬送装置120から工具Tを受け取るために何も把持していない空の状態とすることができる。
【0017】
工具マガジンは、他の形態の工具マガジンとしてもよい。例えば、工具マガジンは、工具を鉛直平面内に配列、保持する複数の工具保持部を有したラック(図示せず)と、該ラックから工具を取り外し、所定位置へ搬送する或いは前記ラックの所定位置に工具Tを搬送する工具移送装置(図示せず)を備えていてもよい。この場合、前記工具移送装置に把持された工具Tと、工作機械10、20、30の各々の主軸12、22、32に装着された工具Tとを交換する工具交換装置(図示せず)を更に含むことができる。前記工具移送装置は、工具交換装置との授受位置、工具搬送装置120との受渡位置および前記ラックの工具保持部との間で移動可能となっている。
【0018】
工作機械10、20、30は、制御装置16、26、36を具備している。制御装置16、26、36は、工作機械10、20、30の送り軸装置のサーボモータおよび主軸を回転駆動するサーボモータを制御するNC装置および工具マガジンの前記工具マガジン駆動モータ、工具交換装置および工具移送装置等を制御する機械制御装置を含むことができる。また制御装置16、26、36は、個々の工具Tの使用時間を累積し、残っている使用可能時間(工具寿命)を演算するようにできる。
【0019】
被加工物ステーション104は、軌道108の他方の端部Aまたは該端部Aに隣接させて配置されている。被加工物ステーション104は、軌道108に関して、工作機械10、20、30と同じ側に配置されている。オペレータは、被加工物ステーション104を通じて加工済被加工物Wを外部へ取り出し、未加工被加工物Wを加工システム100内へ搬入する。被加工物ステーション104は、加工済被加工物Wおよび/または未加工被加工物Wを載置する被加工物載置台(図示せず)と、該被加工物載置台を包囲するカバー(図示せず)と、オペレータが被加工物載置台にアクセスするために、前記カバーに形成された開口部(オペレータ側開口部)を開閉するドア等を含むことができる。なお、前記カバーは、軌道108に面した側面は常に開放しておくようにできる。
【0020】
被加工物ステーション104は、また、加工システム制御装置102に接続されている。加工システム制御装置102は、一例として、被加工物ステーション104の制御盤(図示せず)に接続することができる。例えば、加工システム制御装置102によってドアの開閉を監視するために、被加工物ステーション104の前記ドアにスイッチ(図示せず)を取り付けることができる。或いは、オペレータが、被加工物ステーション104における被加工物Wの段取り作業が終了したときに、被加工物ステーション104の前記制御盤から、手動操作で段取り作業終了を加工システム制御装置102に通知するようにできる。
【0021】
工具ステーション106は、軌道108において、被加工物ステーション104の反対の端部Bまたは該端部Bに隣接させて配置されている。工具ステーション106は、軌道108に関して、工作機械10、20、30および被加工物ステーション104と同じ側に配置されている。こうして、軌道108に沿って、被加工物ステーション104と、工具ステーション106との間に複数の工作機械10、20、30が配置されることとなる。或いは、レイアウトスペースを考慮して、被加工物ステーション104および工具ステーション106は、工作機械10、20、30とは反対側に配置するようにしてもよい。
【0022】
工具ステーション106は、工具段取り部106aと、工具ストッカ106bと、工具段取り部106aおよび工具ストッカ106bを包囲するカバー(図示せず)とを含むことができる。工具ステーション106は、また、前記カバーに取り付けられた制御盤(図示せず)を含むことができる。工具段取り部106aと工具ストッカ106bとの間に仕切壁(図示せず)を設け、カバー内の空間を分割するようにしてもよい。
【0023】
オペレータは、工具段取り部106aにおいて工具の段取りを行い、或いは、工具段取り部106aを通じて使用済工具を加工システム100の外部へ取り出し、新たな工具Tを加工システム100内へ搬入することができる。工具ストッカ106bは、一例として、工具を鉛直平面内に配列、保持する複数の工具保持部を有したラック(図示せず)を備えることができる。
【0024】
工具ステーション106は、オペレータが工具段取り部106aにアクセスするために、前記カバーに形成された開口部(オペレータ側開口部)を開閉するドア等を含むことができる。なお、前記カバーは、軌道108に面した側面は、工具段取り部106aおよび工具ストッカ106bの双方の部分で、常に開放しておくようにできる。
【0025】
工具ステーション106もまた、加工システム制御装置102に接続されている。加工システム制御装置102は、一例として、工具ステーション106の制御盤(図示せず)に接続することができる。例えば、工具ステーション106の前記ドアにスイッチ(図示せず)を取り付け、これを加工システム制御装置102に接続することによって、加工システム制御装置102により該ドアの開閉を監視することができる。或いは、オペレータが、工具ステーション106における工具Tの段取り作業が終了したときに、工具ステーション106の前記制御盤から、手動操作で段取り作業終了を加工システム制御装置102に通知するようにできる。その際、オペレータは、段取り作業を終了した工具Tの工具番号を前記制御盤から加工システム制御装置102に通知することができる。
【0026】
被加工物搬送装置110は、軌道108に沿って往復移動可能な台車112と、該台車112に配置された被加工物交換装置とを含む被加工物搬送台車を具備している。図1の実施形態では、被加工物搬送台車110は、2つの被加工物交換装置114、116を備えている。被加工物交換装置114、116は、軌道108に沿った台車112の移動方向に垂直な水平方向、本実施形態では、Z軸方向に移動可能で被加工物を載置するスライダ(図示せず)と、Z軸方向に伸縮可能なガイドレールとを含むことができる。被加工物交換装置は、一例として、被加工物Wを把持可能なハンドを有した垂直多関節型ロボットアームのようなマニピュレータとしてもよい。
【0027】
被加工物搬送台車110は、加工システム制御装置102に接続されており、加工システム制御装置102によって、軌道108に沿った被加工物搬送台車110の移動および被加工物交換装置114、116の動作が制御される。
【0028】
被加工物搬送台車110は、複数の工作機械10、20、30と、被加工物ステーション104との間で被加工物Wを交換する。より詳細には、未加工被加工物Wを被加工物ステーション104から複数の工作機械10、20、30の1つへ搬送する。その際、被加工物搬送台車110は、1つの未加工被加工物Wを一方の被加工物交換装置114または116のスライダ上に載置し、他方の被加工物交換装置116または114のスライダ上には被加工物が載置されていない空の状態となっている。
【0029】
被加工物Wの交換に際して、オペレータは、被加工物ステーション104のドアを開いて、未加工被加工物Wを被加工物ステーション104の被加工物載置台の上の所定位置に載置する。そのとき、加工システム制御装置102は、被加工物搬送台車110が、ドア開放中の被加工物ステーション104に接近することを禁止するようにできる。被加工物ステーション104のドアが閉じられると、被加工物搬送台車110は、軌道108に沿って、被加工物ステーション104の前に移動する。このとき、一方の被加工物交換装置114または116が、被加工物載置台の上の未加工被加工物Wの前、つまり被加工物載置台の前記所定位置の前に位置決めされる。
【0030】
次いで、前記一方の被加工物交換装置114または116のスライダおよびガイドレールが、被加工物載置台上の未加工被加工物Wへ向けてZ軸方向に前進し、該スライダ上に未加工被加工物Wが載置される。次いで、該一方の被加工物交換装置114または116のスライダおよびガイドレールは初期位置(収縮位置)へ後退する。
【0031】
次いで、被加工物搬送台車110は軌道108に沿って、前記1つの工作機械10、20または30の前に移動する。このとき、被加工物搬送台車110は、空の状態の前記他方の被加工物交換装置116または114が、前記1つの工作機械10、20または30のテーブルの正面に配置されるように位置決めされる。次いで、前記他方の被加工物交換装置116または114のスライダおよびガイドレールが、前記1つの工作機械10、20または30のテーブルへ向けてZ軸方向に前進し加工済被加工物Wを受け取る。受け取った後、該他方の被加工物交換装置116または114のスライダおよびガイドレールが初期位置(収縮位置)へ後退する。
【0032】
次いで、被加工物搬送台車110は、前記一方の被加工物交換装置114または116が、前記1つの工作機械10、20または30のテーブルの前に配置されるように、軌道108に沿って移動する。次いで、前記一方の被加工物交換装置114または116のスライダおよびガイドレールが未加工被加工物Wと共に前進し、未加工被加工物Wが前記1つの工作機械10、20または30のテーブルの上に載置される。次いで、該一方の被加工物交換装置114または116のスライダおよびガイドレールは初期位置(収縮位置)へ後退する。
【0033】
次いで、被加工物搬送台車110は、軌道108に沿って被加工物ステーション104の前に移動し、加工済被加工物Wを保持する前記他方の被加工物交換装置116または114のスライダおよびガイドレールが、被加工物ステーション104へ向けて前進し、加工済被加工物Wが被加工物ステーション104の被加工物載置台の上に載置される。
【0034】
被加工物棚130が設けられている場合、被加工物棚130は、未加工被加工物Wまたは加工済被加工物Wを一時的に格納する1または複数の載置面(図示せず)を有することができる。この場合、被加工物搬送台車110の被加工物交換装置114、116のスライダおよびガイドレールは、工作機械10、20、30へ向けてZ軸方向に前進可能に、かつ、被加工物棚130へ向けてZ軸方向に後退可能に設けられている。こうして、被加工物搬送台車110は、複数の工作機械10、20、30と、被加工物ステーション104と、被加工物棚130との間で、被加工物(未加工被加工物Wおよび加工済被加工物W)を搬送、交換する。
【0035】
例えば、被加工物搬送台車110は、オペレータが被加工物ステーション104に搬入した未加工被加工物Wを被加工物棚130へ順次搬送し、多数の未加工被加工物Wを被加工物棚130に格納するようにできる。こうすることによって、加工システム100は、多数の被加工物の加工を、例えば、夜間に無人で行うことが可能となる。
【0036】
工具搬送装置120は、軌道108に沿って往復可能な台車と、該台車に設けられたマニピュレータとを具備する。マニピュレータは、一例として、工具Tを把持可能なハンドを有した垂直多関節ロボットアーム122とすることができる。工具搬送装置120は、また、少なくとも1つの工具Tを保持する工具バッファ(図示せず)を備えることができる。工具搬送装置120は、軌道108上の被加工物搬送台車110よりも、工具ステーション106側に配置することができる。
【0037】
工具搬送装置120は、加工システム制御装置102に接続されており、加工システム制御装置102によって、軌道108に沿った工具搬送装置120の移動およびロボットアーム122の動作が制御される。
【0038】
工具搬送装置120は、軌道108に沿って、工具を交換すべき工作機械10、20または30の前に移動する。工具搬送装置120は、特に、開口部14a、24a、34aを通じて工具マガジン室14、24、34内にロボットアーム122がアクセス可能な所定位置に位置決めされる。
【0039】
このとき、工具マガジン室14、24、34内では、工具マガジンの回転体を回転して、空のグリッパを工具搬送装置120との工具Tの受渡位置に配置しておくことができる。工具搬送装置120のロボットアーム122は、工具バッファから1つの工具Tを把持し、開口部14a、24aまたは34aを通じて、工具Tを受渡位置の空のグリッパに装着する。更に、工具Tを装着する必要がある場合には、同様に、回転体を回転して、次の空のグリッパが受渡位置に配置され、ロボットアーム122によって、次の工具Tが該グリッパに装着される。
【0040】
或いは、工具を交換する場合には、回転体を回転して、交換すべき工具を把持したグリッパを受渡位置に配置し、該工具T(旧工具)が、ロボットアーム122によって、把持され該グリッパから取り外され、工具搬送装置120の工具バッファへ移送され、次いで、工具バッファから新たな工具T(新工具)が、ロボットアーム122によって、前記受渡位置に配置されているグリッパに移送、装着される。工具バッファに移送された旧工具Tは、工具搬送装置120によって工具ステーション106へ搬送され、ロボットアーム122によって、工具段取り部106aに載置される。工具段取り部106aに載置された旧工具Tは、オペレータによって、工具段取り部106aから外部へ取り出される。
【0041】
工具搬送装置120は、また、工具ステーション106において、工具段取り部106aと、工具ストッカ106bとの間で工具Tを移送することができる。より詳細には、工具搬送装置120は、ロボットアーム122を用いて、工具段取り部106aにおいて、オペレータが段取りした工具Tまたはオペレータが工具段取り部106aへ載置した工具Tを、工具ストッカ106bへ移送したり、工具ストッカ106bに保持されている複数の工具Tのうち工具ステーション106から外部へ取り出すべき工具Tを、工具ストッカ106bから工具段取り部106aへ移送することができる。その際、工具ステーション106の前記ドアが開放している間は、工具搬送装置120が工具段取り部106aに接近することを禁止することができる。然しながら、この間(つまり、オペレータが工具段取り部106aで段取り作業をしている間)、工具搬送装置120は、工具ステーション106の工具ストッカ106bおよび工作機械10、20、30に対しては作業を行うことができる。
【0042】
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。図1の実施形態では、被加工物は、工作機械10、20、30のテーブルに直接固定されるようになっているが、図2の実施形態では、被加工物Wは、パレット(図示せず)に取り付けられ、該パレットPを工作機械10、20、30のテーブルに固定するようになっている。なお、図2において、図1と同様の構成要素には同じ参照番号が付されており、重複する説明は省略する。
【0043】
図2を参照すると、第2の実施形態による加工システム200は、被加工物は、パレットPに取り付けられた状態で搬送される。加工システム200は、被加工物搬送装置としてパレット搬送台車210を、そして、被加工物段取りステーションとしてパレットステーション204を具備している。
【0044】
パレットステーション204は、軌道108の一方の端部または該端部に隣接させて配置されている。パレットステーション204は、軌道108に関して、工作機械10、20、30と同じ側に配置されている。オペレータは、パレットステーション204を通じて加工済被加工物WをパレットPと共に加工システム200外へ取り出し、未加工被加工物WをパレットPと共に加工システム200内へ搬入する。オペレータは、パレットステーション204において、被加工物WをパレットPに取り付ける段取り作業を行うようにしてもよい。
【0045】
パレットステーション204は、パレットPに取り付けられた加工済被加工物Wおよび/または未加工被加工物Wを載置するパレット載置台(図示せず)と、該パレット載置台を包囲するカバー(図示せず)と、オペレータがパレット載置台にアクセスするために、前記カバーに形成された開口部(オペレータ側開口部)を開閉するドア等を含むことができる。パレットステーション204は、また、前記カバーに取り付けられた制御盤(図示せず)を含むことができる。なお、前記カバーは、軌道108に面した側面は常に開放しておくようにできる。
【0046】
パレットステーション204は、また、加工システム制御装置202に接続されている。加工システム制御装置202は、一例として、パレットステーション204の制御盤(図示せず)に接続することができる。例えば、加工システム制御装置202によってドアの開閉を監視するために、パレットステーション204の前記ドアにスイッチ(図示せず)を取り付けることができる。或いは、オペレータが、パレットステーション204における被加工物WのパレットPへの取り付けのような段取り作業が終了したときに、パレットステーション204の前記制御盤から、手動操作で段取り作業終了を加工システム制御装置202に通知するようにできる。その際、オペレータは、制御盤に入力することによって、段取り作業を終了したパレットPのパレット番号を加工システム制御装置202に通知するようにできる。
【0047】
パレット搬送台車210は、軌道108に沿って往復移動可能な台車212と、該台車212に配置されたパレット交換装置とを具備している。図2の実施形態では、パレット搬送台車210は、2つのパレット交換装置214、216を備えている。パレット交換装置214、216は、軌道108に沿った台車212の移動方向に垂直な水平方向、本実施形態では、Z軸方向に移動可能で被加工物Wを取り付けたパレットPを載置可能なスライダ(図示せず)と、Z軸方向に伸縮可能なガイドレールとを含むことができる。パレット交換装置は、一例として、被加工物を把持可能なハンドを有した垂直多関節ロボットアームのようなマニピュレータとしてもよい。
【0048】
パレット搬送台車210は、複数の工作機械10、20、30と、パレットステーション204との間で被加工物Wを取り付けたパレットPを交換する。パレット搬送台車210は、加工システム制御装置202に接続されており、加工システム制御装置202によって、軌道108に沿ったパレット搬送台車210の移動およびパレット交換装置214、216の動作が制御される。パレット交換動作は、第1の実施形態において、被加工物搬送装置110に関連して説明した被加工物交換動作と同様である。
【0049】
第2の実施形態によれば、パレットPには被加工物でなく工具Tを搭載するようにしてもよい。工作機械10、20、30の加工室に投入されたパレット上の新しい工具Tを工作機械10、20、30の送り軸装置を用いて主軸12、22、32に装着した後、工具マガジンの工具交換装置を用いて、工具マガジンの寿命に達した工具Tと交換することができる。工作機械10、20、30で工具搬送装置120の機能を補うことができ、また、工具ステーション106に空きが無いときの収納リソースとして使用できる。
【0050】
既述した第1と第2の実施形態によれば、工具搬送装置120と、被加工物搬送台車110またはパレット搬送台車210は、互いに干渉することなく、同一の工作機械10、20または30に同時にアクセスすることができ、工具Tと被加工物Wまたは被加工物Wを取り付けたパレットPの搬送が可能となる。
【0051】
また、工具搬送装置120は工作機械10、20、30間で工具Tを搬送することができる。例えば、工作機械の台数(本実施形態では、3台)分準備することが困難な高価な工具Tを工作機械10、20、30間で流用できる。
【0052】
複数の工作機械10、20、30は、異なるシャンクサイズの工具Tを装着可能なように構成することができる。例えば、工作機械10の主軸12が第1のシャンクサイズの工具Tを装着可能で、工作機械20の主軸22が第2のシャンクサイズの工具Tを装着可能で、工作機械30の主軸32が、第3のシャンクサイズの工具Tを装着可能なように構成することができる。シャンクサイズの組合せは自由に設定できる。工作機械10、20の主軸12、22が第1のシャンクサイズの工具Tを装着可能で、工作機械30の主軸32が第2のシャンクサイズの工具Tを装着可能なようにしてもよい。この場合、工具搬送装置120のロボットアーム122のハンドは第1~第3のシャンクサイズに適合する。或いは、工具搬送装置120上にシャンクサイズ別に複数のハンドを準備して交換可能としてもよい。工具ステーション106もまた第1~第3のシャンクサイズに適合する。
【0053】
加工システム制御装置102、202は、工作機械10、20、30の制御装置16、26、36から個々の工具寿命を受取り、工具寿命に近い工具Tの交換要求をオペレータに発するようにできる。また、要求された被加工物の加工内容から必要な工具Tを抽出し、必要な工具Tが加工システム100、200内で不足している場合に、オペレータに向けて交換要求を発することができる。オペレータは工具ステーション106の操作盤上の表示装置(図示せず)で交換要求を確認し、交換が必要な工具Tの準備を予め行い、工具ステーション106に格納しておくことができる。交換要求は、加工システム制御装置102、202と通信可能なパーソナルコンピュータ(図示せず)やハンドヘルドデバイス(図示せず)で受信するようにしてもよい。
【0054】
工具の交換は、工具寿命を考慮して余裕を持って行うことができる。従って、加工システム制御装置102、202は、工作機械10、20、30の制御装置16、26、36から工具交換指令と被加工物交換指令またはパレット交換指令が同時に発せられたとき、工具搬送装置120と被加工物搬送装置110またはパレット搬送台車210が同時に動作した場合に両者が干渉するか否かを判断し、干渉すると判断した場合に、被加工物WまたはパレットPの交換を優先して実行するようにできる。これにより、生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 工作機械
12 主軸
14 工具マガジン室
14a 開口部
16 制御装置
18 加工室
20 工作機械
22 主軸
24 工具マガジン室
24a 開口部
26 制御装置
28 加工室
30 工作機械
32 主軸
34 工具マガジン室
34a 開口部
36 制御装置
38 加工室
100 加工システム
102 加工システム制御装置
104 被加工物ステーション
106 工具ステーション
106a 工具段取り部
106b 工具ストッカ
108 軌道
110 被加工物搬送台車
112 台車
114 被加工物交換装置
116 被加工物交換装置
120 工具搬送装置
122 ロボットアーム
130 被加工物棚
200 加工システム
202 加工システム制御装置
204 パレットステーション
208 軌道
210 パレット搬送台車
212 台車
214 パレット交換装置
216 パレット交換装置
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、複数の被加工物を連続的に加工する加工システムにおいて、水平に延びる軌道と、前記軌道の一方の端部側に配置される複数の工具を保持可能な工具マガジン、および、前記軌道の前記一方の端部側とは反対の他方の端部側に配置される被加工物を加工する加工室を備え、前記軌道に沿った設置領域に設置される少なくとも1つの工作機械と、前記工作機械の設置領域よりも前記軌道の一方の端部側に設置される工具ステーションと、前記工作機械の設置領域よりも前記軌道の他方の端部側に設置される被加工物段取りステーションと、前記軌道に沿って移動し、前記被加工物段取りステーションと前記工作機械の加工室との間で被加工物を搬送する被加工物搬送装置と、前記被加工物搬送装置よりも前記軌道の一方の端部側で前記軌道に沿って移動し、前記工具ステーションと前記工作機械の工具マガジンとの間で工具を搬送する工具搬送装置とを具備する加工システムが提供される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被加工物を連続的に加工する加工システムにおいて、
水平に延びる軌道と、
前記軌道の一方の端部側に配置される複数の工具を保持可能な工具マガジン、および、前記軌道の前記一方の端部側とは反対の他方の端部側に配置される被加工物を加工する加工室を備え、前記軌道に沿った設置領域に設置される少なくとも1つの工作機械と、
前記工作機械の設置領域よりも前記軌道の一方の端部側に設置される工具ステーションと、
前記工作機械の設置領域よりも前記軌道の他方の端部側に設置される被加工物ステーションと、
前記軌道に沿って移動し、前記被加工物ステーションと前記工作機械の加工室との間で被加工物を搬送する被加工物搬送装置と、
前記被加工物搬送装置よりも前記軌道の一方の端部側で前記軌道に沿って移動し、前記工具ステーションと前記工作機械の工具マガジンとの間で工具を搬送する工具搬送装置と、
を備えることを特徴とする加工システム。
【請求項2】
前記工具マガジンは、カバーにより画成される工具マガジン室内に配設されており、該カバーは、前記工具搬送装置が工具マガジン室内にアクセス可能とする開口部と、該開口部を開閉するシャッタとを具備する請求項1に記載の加工システム。
【請求項3】
前記工具搬送装置は、前記工具マガジンから工具を取り出し、また前記工具マガジンに工具を装着するマニピュレータを具備し、該マニピュレータは、前記工具搬送装置において前記被加工物搬送装置側に配置されている請求項1に記載の加工システム。
【請求項4】
前記マニピュレータは、工具を把持可能なハンドを有したロボットアームを具備する請求項3に記載の加工システム。
【請求項5】
複数の工作機械を具備し、
該複数の工作機械は先端に工具を装着する主軸を備えており、
前記主軸は、前記複数の工作機械ごとに異なるシャンクサイズの工具を装着可能となっており、前記ロボットアームのハンドは、異なるシャンクサイズの工具を把持可能となっている請求項4に記載の加工システム。
【請求項6】
複数の工作機械を具備し、
該複数の工作機械の各々は、
先端に工具を装着する主軸と、
被加工物を固定するテーブルと、
前記主軸と前記テーブルとの間の相対移動および前記工具マガジンを制御する制御装置を備えており、
前記加工システムは、前記複数の工作機械の制御装置、前記被加工物搬送装置および前記工具搬送装置に接続された加工システム制御装置を更に具備し、
前記加工システム制御装置は、被加工物交換指令と工具交換指令とを同時に実行したとき、前記被加工物搬送装置と前記工具搬送装置とが干渉するか否かを判断し、干渉すると判断した場合に、被加工物交換指令を優先して実行するよう前記被加工物搬送装置および工具搬送装置を制御する請求項1に記載の加工システム。