(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081407
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】衝突回避支援装置、衝突回避支援方法及び衝突回避支援プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195020
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】友常 雄太郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 俊
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181LL15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】出合い頭の衝突の虞がある状況において、自車両の停止が無駄な停止になることを防止しつつ、自車両の自動制動が遅れることがないよう改良された衝突回避支援装置、衝突回避支援方法及び衝突回避支援プログラムを提供する。
【解決手段】自車道路110と交差する道路112を自車道路へ向けて走行する他車両106と自車両102とが衝突する虞がある状況において、自車両を減速させる自動制動を実行すべきか否かを予め設定された判定条件にて判定し、自動制動を実行すべきと判定したときには、自動制動により自車両を減速させる衝突回避支援装置であって、自車道路が非優先道路の車線であると判定したときには、自車道路が非優先道路の車線ではないと判定したときに比して、予め設定された判定条件を緩和することにより自動制動を実行すべきと判定され易くする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周囲の情報を取得する周囲情報取得装置と、前記周囲情報取得装置により取得された情報に基づいて、自車道路と交差する道路を前記自車道路へ向けて走行する他車両と自車両とが衝突する虞があると判定している状況において、自車両を減速させる自動制動を実行すべきか否かを予め設定された判定条件にて判定し、自動制動を実行すべきと判定したときには、自動制動により自車両を減速させるよう構成された制御ユニットと、を含む衝突回避支援装置において、
前記制御ユニットは、前記周囲情報取得装置により取得された情報に基づいて、前記自車道路が非優先道路の車線であると判定したときには、前記自車道路が非優先道路の車線ではないと判定したときに比して、前記予め設定された判定条件を緩和することにより自動制動を実行すべきと判定され易くするよう構成された衝突回避支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の衝突回避支援装置において、自動制動を実行すべきか否かの判定は、推定される衝突の態様が予め設定された衝突の態様の範囲に含まれるか否かの判定を含み、前記制御ユニットは、自車道路が非優先道路であると判定したときには、自車道路が非優先道路ではないと判定したときに比して、前記態様の範囲を拡張することにより前記予め設定された判定条件を緩和するよう構成された衝突回避支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の衝突回避支援装置において、自動制動を実行すべきか否かの判定は、自動制動の可否判定を含み、前記制御ユニットは、自車道路が非優先道路であると判定したときには、前記自車道路が非優先道路ではないと判定したときに比して、自動制動の許可判定が早くなるように前記可否判定の基準値を変更することにより前記判定条件を緩和するよう構成された衝突回避支援装置。
【請求項4】
周囲情報取得装置により取得された自車両の周囲の情報に基づいて、自車道路と交差する道路を前記自車道路へ向けて走行する他車両と自車両とが衝突する虞があるか否かを判定するステップと、自車両を減速させる自動制動を実行すべきか否かを予め設定された判定条件にて判定するステップと、自動制動を実行すべきと判定したときには、自動制動により自車両を減速させるステップと、を含む衝突回避支援方法において、
前記周囲情報取得装置により取得された情報に基づいて、前記自車道路が非優先道路であるか否かを判定するステップと、前記自車道路が非優先道路であると判定したときには、自車道路が非優先道路ではないと判定したときに比して、前記予め設定された判定条件を緩和することにより自動制動を実行すべきと判定され易くするステップと、を更に含む衝突回避支援方法。
【請求項5】
周囲情報取得装置により取得された自車両の周囲の情報に基づいて、自車道路と交差する道路を前記自車道路へ向けて走行する他車両と自車両とが衝突する虞があるか否かを判定するステップと、自車両を減速させる自動制動を実行すべきか否かを予め設定された判定条件にて判定するステップと、自動制動を実行すべきと判定したときには、自動制動により自車両を減速させるステップと、を自車両に搭載された電子制御装置に実行させる衝突回避支援プログラムにおいて、
前記周囲情報取得装置により取得された情報に基づいて、前記自車道路が非優先道路であるか否かを判定するステップと、前記自車道路が非優先道路であると判定したときには、前記自車道路が非優先道路ではないと判定したときに比して、前記予め設定された判定条件を緩和することにより自動制動を実行すべきと判定され易くするステップと、を更に含む衝突回避支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両の衝突回避支援装置、衝突回避支援方法及び衝突回避支援プログラムに係る。
【背景技術】
【0002】
衝突回避支援装置の一つとして、十字路などにおける出合い頭の衝突を回避するための自動制動による衝突回避支援装置が知られている。この種の衝突回避支援装置は、自車両が走行する道路(「自車道路」という)と交差する道路(「他車道路」という)を自車道路へ向けて走行する他車両と自車両とが衝突する虞があり、自動制動すべきと判定したときには、自動制動により自車両を減速させ停止させる。
【0003】
出合い頭の衝突の虞がある状況において、他車両が制動により寸止め停止し、自車両も自動制動により停止すると、出合い頭の衝突を防止することができるが、特に自車道路が優先道路である場合には、自車両の停止が無駄な停止になる。
【0004】
この問題に対処すべく、下記の特許文献1には、他車両が制動により衝突を回避することができなくなる前の時点においては、自車両の自動制動を許可せず、他車両が制動により衝突を回避することができなくなる時点において、自車両の自動制動を許可するよう構成された衝突回避支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
〔発明が解決しようとする課題〕
上記特許文献1に記載された衝突回避支援装置のような従来の衝突回避支援装置においては、他車両が制動により衝突を回避することができなくなる時点にならないと、自車両の自動制動が許可されない。そのため、自車両の自動制動が遅れるので、特に自車道路が非優先道路である場合には、出合い頭の衝突の防止が遅れてしまう。
【0007】
本発明は、出合い頭の衝突の虞がある状況において、自車両の停止が無駄な停止になることを防止しつつ、自車両の自動制動が遅れることがないよう改良された衝突回避支援装置、衝突回避支援方法及び衝突回避支援プログラムを提供する。
【0008】
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
本発明によれば、自車両(102)の周囲の情報を取得する周囲情報取得装置(物標情報取得装置16、ナビゲーション装置80)と、周囲情報取得装置により取得された情報に基づいて、自車道路(110)と交差する道路(112)を自車道路へ向けて走行する他車両(106)と自車両とが衝突する虞があると判定している状況において(S10、S20)、自車両を減速させる自動制動を実行すべきか否かを予め設定された判定条件にて判定し(S70、S80)、自動制動を実行すべきと判定したときには、自動制動により自車両を減速させる(S90)よう構成された制御ユニット(運転支援ECU10)と、を含む衝突回避支援装置(100)が提供される。
【0009】
制御ユニット(運転支援ECU10)は、周囲情報取得装置により取得された情報に基づいて、自車道路が非優先道路の車線であると判定したときには(S30)、自車道路が非優先道路の車線ではないと判定したときに比して、予め設定された判定条件を緩和することにより自動制動を実行すべきと判定され易くするよう(S50、S60)よう構成される。
【0010】
また、本発明によれば、周囲情報取得装置(16)により取得された自車両(102)の周囲の情報に基づいて、自車道路(110)と交差する道路(112)を自車道路へ向けて走行する他車両(106)と自車両とが衝突する虞があるか否かを判定するステップ(S10、S20)と、自車両を減速させる自動制動を実行すべきか否かを予め設定された判定条件にて判定するステップ(S70、S80)と、自動制動を実行すべきと判定したときには、自動制動により自車両を減速させるステップ(S90)と、を含む衝突回避支援方法が提供される。
【0011】
衝突回避支援方法は、周囲情報取得装置により取得された情報に基づいて、自車道路が非優先道路であるか否かを判定するステップ(S30)と、自車道路が非優先道路であると判定したときには、自車道路が非優先道路ではないと判定したときに比して、予め設定された判定条件を緩和することにより自動制動を実行すべきと判定され易くするステップ(S50、S60)と、を更に含む。
【0012】
更に、本発明によれば、周囲情報取得装置により取得された自車両(102)の周囲の情報に基づいて、自車道路(110)と交差する道路(112)を自車道路へ向けて走行する他車両(106)と自車両とが衝突する虞があるか否かを判定するステップ(S10、S20)と、自車両を減速させる自動制動を実行すべきか否かを予め設定された判定条件にて判定するステップ(S70、S80)と、自動制動を実行すべきと判定したときには、自動制動により自車両を減速させるステップ(S90)と、を自車両に搭載された電子制御装置(運転支援ECU10)に実行させる衝突回避支援プログラムが提供される。
【0013】
衝突回避支援プログラムは、周囲情報取得装置により取得された情報に基づいて、自車道路が非優先道路であるか否かを判定するステップ(S30)と、自車道路が非優先道路であると判定したときには、自車道路が非優先道路ではないと判定したときに比して、予め設定された判定条件を緩和することにより自動制動を実行すべきと判定され易くするステップ(S50、S60)と、を更に含む。
【0014】
上記の衝突回避支援装置、衝突回避支援方法及び衝突回避支援プログラムによれば、自車道路が非優先道路の車線であると判定されたときには、自車道路が非優先道路の車線ではないと判定されたときに比して、予め設定された判定条件が緩和されることにより自動制動を実行すべきと判定され易くされる。
【0015】
よって、自車道路が非優先道路の車線であると判定されたときには、自車道路が非優先道路の車線ではないと判定されたときに比して、自動制動が早期に実行される。従って、出合い頭の衝突の虞がある状況において、自車両の自動制動が遅れることを防止し、出合い頭の衝突を防止することができる。
【0016】
なお、自車道路が非優先道路の車線ではないと判定されたときには、予め設定された判定条件が緩和されないので、自動制動が早期に実行されることに起因して自車両の停止が無駄な停止になることを防止することができる。
【0017】
〔発明の態様〕
本発明の一つの態様においては、自動制動を実行すべきか否かの判定は、推定される衝突の態様が予め設定された衝突の態様の範囲に含まれるか否かの判定(S70)を含み、制御ユニット(運転支援ECU10)は、自車道路が非優先道路であると判定したときには、自車道路が非優先道路ではないと判定したときに比して、態様の範囲を拡張することにより予め設定された判定条件を緩和する(S50)よう構成される。
【0018】
上記態様によれば、自車道路が非優先道路であると判定されたときには、自車道路が非優先道路ではないと判定されたときに比して、上記態様の範囲を拡張することにより予め設定された判定条件が緩和される。よって、自車道路が非優先道路であると判定されたときには、自車道路が非優先道路ではないと判定されたときに比して、推定される衝突の態様が予め設定された衝突の態様の範囲に含まれると判定され易くなる。従って、自動制動を実行すべきと判定され易くすることができる。
【0019】
本発明の他の一つの態様においては、自動制動を実行すべきか否かの判定は、自動制動の可否判定(S80)を含み、制御ユニット(運転支援ECU10)は、自車道路が非優先道路であると判定したときには、自車道路が非優先道路ではないと判定したときに比して、自動制動の許可判定が早く行われるように可否判定の基準値を変更することにより判定条件を緩和する(S60)よう構成される。
【0020】
上記態様によれば、自車道路が非優先道路であると判定されたときには、自車道路が非優先道路ではないと判定されたときに比して、自動制動の許可判定が早く行われるように可否判定の基準値が変更されることにより判定条件が緩和される。よって、自車道路が非優先道路であると判定されたときには、自車道路が非優先道路ではないと判定されたときに比して、自動制動の許可判定が早く行われるので、自動制動を早期に開始することができる。
【0021】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態にかかる衝突回避支援装置を示す概略構成図である。
【
図2】実施形態の衝突回避支援制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図3】交差点にける出合い頭の衝突の態様を示す図である。
【
図4】自車両の自動制動の許可のタイミングを説明するための図である。
【
図5】自車道路が非優先道路であると判定されない場合を示す図である。
【
図6】自車道路が非優先道路であると判定される場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明の実施形態にかかる衝突回避支援装置、衝突回避支援方法及び衝突回避支援プログラムについて詳細に説明する。
【0024】
<構成>
図1に示されているように、本発明の実施形態にかかる衝突回避支援装置100は、車両102に適用され、運転支援ECU10を含んでいる。車両102は、自動運転が可能な車両であってよく、駆動ECU20、制動ECU30、電動パワーステアリングECU40及びメータECU50を備えている。ECUは、マイクロコンピュータを主要部として備える電子制御装置(Electronic Control Unit)を意味する。なお、以下の説明においては、電動パワーステアリングはEPSと呼称される。また、車両102は、他車両と区別するため、必要に応じて自車両102と呼称される。
【0025】
各ECUのマイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、読み書き可能な不揮発性メモリ(N/M)及びインターフェース(I/F)などを含んでいる。CPUは、ROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現する。更に、これらのECUは、CAN(Controller Area Network)104を介してデータ交換可能(通信可能)に互いに接続されている。従って、特定のECUに接続されたセンサ(スイッチを含む)の検出値などは、他のECUにも送信されるようになっている。
【0026】
運転支援ECU10は、出合い頭の衝突を回避するための自動制動による衝突回避支援制御、車線逸脱防止制御などの運転支援制御を行う中枢の制御装置である。実施形態においては、運転支援ECU10は、後に詳細に説明するように、他のECUと共働して、自動制動による衝突回避支援制御を実行する。
【0027】
運転支援ECU10には、カメラセンサ12、レーダセンサ14及びスイッチ18が接続されている。カメラセンサ12及びレーダセンサ14は、それぞれ複数のカメラ装置及び複数のレーダ装置を含んでいる。カメラセンサ12及びレーダセンサ14は、車両102の周囲の物標の情報を取得する物標情報取得装置16として機能する。
【0028】
カメラセンサ12の各カメラ装置は、図には示されていないが、車両102の周囲を撮影するカメラ部と、カメラ部によって撮影して得られた画像データを解析して道路の白線、他車両などの物標を認識する認識部とを備えている。認識部は、認識した物標に関する情報を所定の時間毎に運転支援ECU10に供給する。
【0029】
レーダセンサ14の各レーダ装置は、レーダ送受信部及び信号処理部(図示せず)を備えている。レーダ送受信部は、ミリ波帯の電波(以下、「ミリ波」と称呼する)を放射し、放射範囲内に存在する立体物(例えば、他車両、ガードレールなど)によって反射されたミリ波(即ち、反射波)を受信する。信号処理部は、送信したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及びミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間などに基づいて、自車両と立体物との距離、自車両と立体物との相対速度、自車両に対する立体物の相対位置(方向)などを表す情報を所定の時間毎に運転支援ECU10に供給する。なお、レーダセンサ14に代えて、或いはレーダセンサ14に加えて、LiDAR(Light Detection And Ranging)が使用されてもよい。
【0030】
スイッチ18は、
図1には示されていないステアリングホイールのように運転者により操作可能な位置に設けられ、運転者によりオン及びオフに切換操作されるようになっている。スイッチ18がオンであるときには、そのことを示す信号が運転支援ECU10へ供給され、自動制動による衝突回避支援制御が実行される。
【0031】
駆動ECU20には、
図1には示されていない駆動輪に駆動力を付与することにより車両102を加速させる駆動装置22が接続されている。駆動ECU20は、通常時には、駆動装置22により発生される駆動力が運転者による駆動操作に応じて変化するよう、駆動装置22を制御し、運転支援ECU10から指令信号を受信すると、指令信号に基づいて駆動装置22を制御する。なお、駆動装置22は、当技術分野において公知の任意の駆動装置であってよい。
【0032】
制動ECU30には、
図1には示されていない車輪に制動力を付与することにより車両102を制動により減速させる制動装置32が接続されている。制動ECU30は、通常時には、制動装置32により発生される制動力が運転者による制動操作に応じて変化するよう、制動装置32を制御し、運転支援ECU10から指令信号を受信すると、指令信号に基づいて制動装置32を制御することにより自動制動を行う。よって、制動ECU30及び制動装置32は、自動制動装置34として機能する。
【0033】
EPS・ECU40には、EPS装置42が接続されている。EPS・ECU40は、後述の運転操作センサ60及び車両状態センサ70により検出された操舵トルクTs及び車速Vに基づいて、当技術分野において公知の要領にてEPS装置42を制御することにより、操舵アシストトルクを制御し、運転者の操舵負担を軽減する。また、EPS・ECU40は、EPS装置42を制御することにより、必要に応じて転舵輪を転舵することができる。よって、EPS・ECU40及びEPS装置42は、必要に応じて転舵輪を自動的に操舵する自動操舵装置として機能する。
【0034】
メータECU50には、警報装置52が接続されている。警報装置52は、自車両102か他車両と衝突する虞があると判定されたときに作動され、警報の発出、即ち自車両102が他車両に衝突する虞がある旨の警報の発出を行う。警報装置52は、表示器、警報ランプのような視覚警報を発する警報装置、警報ブザーのような聴覚警報を発する警報装置、シートの振動のような体感警報を発する警報装置の何れであってもよく、それらの任意の組合せであってもよい。
【0035】
運転操作センサ60及び車両状態センサ70は、CAN104に接続されている。運転操作センサ60及び車両状態センサ70によって検出された情報(センサ情報と呼ぶ)は、CAN104に送信される。CAN104に送信されたセンサ情報は、各ECUにおいて適宜に利用可能である。なお、センサ情報は、特定のECUに接続されたセンサの情報であって、その特定のECUからCAN104に送信されてもよい。
【0036】
運転操作センサ60は、アクセルペダルの操作量を検出する駆動操作量センサ、マスタシリンダ圧力又はブレーキペダルに対する踏力を検出する制動操作量センサ、ブレーキペダルの操作の有無を検出するブレーキスイッチを含んでいる。更に、運転操作センサ60は、操舵角θを検出する操舵角センサ、操舵トルクTsを検出する操舵トルクセンサなどを含んでいる。
【0037】
車両状態センサ70は、車両102の車速Vを検出する車速センサ、車両の前後加速度を検出する前後加速度センサ、車両の横加速度を検出する横加速度センサ、車両のロール角加速度を検出するロール角加速度センサ、及び車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサなどを含んでいる。
【0038】
更に、ナビゲーション装置80もCAN104に接続されている。ナビゲーション装置80は、車両102の位置を検出するGPS受信機と、地図情報及び道路情報を記憶する記憶装置と、地図情報及び道路情報の最新情報を外部から取得する通信装置とを備えている。ナビゲーション装置80は、車両102の現在地の情報を取得する装置として機能し、地図上における車両の現在地及びその周辺の情報を示す信号を運転支援ECU10に出力する。
【0039】
以上の説明から解るように、実施形態においては、物標情報取得装置16及びナビゲーション装置80は、車両102の周囲の道路などの情報を取得する周囲情報取得装置として機能する。
【0040】
実施形態においては、運転支援ECU10のROMは、出合い頭の衝突を回避するための自動制動による衝突回避支援制御プログラムを記憶している。この制御プログラムは、
図2に示されたフローチャートに対応しており、衝突回避支援制御方法はこの制御プログラムが実行されることにより実行される。
【0041】
<衝突回避支援制御プログラム(
図2)>
次に、
図2に示されたフローチャートを参照して実施形態における衝突回避支援制御について説明する。
図2に示されたフローチャートによる衝突回避支援制御は、スイッチ18がオンであるときに運転支援ECU10のCPUにより所定の時間毎に繰り返し実行され、スイッチ18がオフになると、終了する。以下の説明においては、衝突回避支援制御を「本制御」と指称する。
【0042】
まず、ステップS10においては、CPUは、カメラセンサ12のフロントカメラ装置により取得された画像及び/又はナビゲーション装置80からの情報に基づいて、車両102の前方に信号がない交差点があるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS20へ進める。
【0043】
ステップS20においては、CPUは、物標情報取得装置16からの情報に基づいて、自車道路と交差する道路を自車道路へ向けて走行する他車両があるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS30へ進める。
【0044】
ステップS30においては、CPUは、カメラセンサ12のフロントカメラ装置により取得された画像及び/又はナビゲーション装置80からの情報に基づいて、自車道路が非優先道路であるか否かを判定する。CPUは、肯定判定をしたときには、本制御をステップS50へ進め、否定判定をしたときには、本制御をステップS40へ進める。
【0045】
自車道路に優先道路の標識がないことを前提に、例えば以下の何れかが確認されたときに、自車道路が非優先道路であると判定されてよい。
X1:交差点内に他車道路のセンタラインがある。
X2:交差点内に他車道路の車線の境界線がある。
X3:自車道路にセンタラインがあるが、そのセンタラインは交差点内にはない。
X4:自車道路に一時停止や徐行の標識又は路面標識がある。
X5:自車道路に一時停止や徐行の標識、路面標識はないが、自車道路の幅が他車道路よりも狭い。
【0046】
ステップS40においては、CPUは、他車両と自車両との衝突の態様の範囲を標準の衝突の態様の範囲に設定し、自動制動の許可判定の基準値を予め設定された標準値に設定する。
【0047】
自車両及び他車両が交差点において出合い頭の衝突をするのは、自車両及び他車両が同時に交差点に進入する場合であり、
図3に示されているように、衝突の態様は自車両及び他車両が交差点に進入するタイミングによって異なる。
【0048】
図3(A)は、他車両106が交差点108に進入するタイミングが自車両102に比して最も早い場合であり、自車両102の前端角部が他車両106の後端角部に衝突する。
図3(C)は、自車両102及び他車両106が同じタイミングで交差点108に進入する場合であり、自車両102の前端角部が他車両106の前端角部に衝突する。
図3(B)は、自車両102及び他車両106が交差点108に進入するタイミングが、(A)の場合と(C)の場合との中間である場合であり、自車両102の前端角部が他車両106の側部に衝突する。
【0049】
図3(F)は、他車両106が交差点108に進入するタイミングが自車両102に比して最も遅い場合であり、他車両106の前端角部が自車両102の後端角部に衝突する。
図3(E)は、自車両102及び他車両106が交差点108に進入するタイミングが、(C)の場合と(F)の場合との中間である場合であり、他車両106の前端角部が自車両102の側部に衝突する。
図3(D)は、他車両106が交差点108に進入するタイミングが(C)の場合よりも遅く且つ(E)の場合よりも早い場合であり、他車両106の前端角部が自車両102の前端側部に衝突する。
【0050】
自車道路が非優先道路でない場合、特に自車道路が優先道路である場合には、衝突の態様が(D)乃至(F)であると予測される状況において、自車両が自動制動により減速され停止されると、運転者は自車両の加速により他車両と衝突することなく十字路を通過できたはずであるとの不満を覚える。よって、実施形態における標準の衝突の態様の範囲は、上記(A)乃至(C)であり、ステップS40においては、衝突の態様の範囲が標準の衝突の態様の範囲(A)乃至(C)に設定される。
【0051】
自車道路が非優先道路でない場合、特に自車道路が優先道路である場合には、他車両が制動により減速し停車することにより衝突を回避する可能性が高いので、その可能性がある間は自車両の自動制動の可否判定が許可にならない。
【0052】
図4に示されているように、他車両106が自車両102と衝突する直前の位置P1と他車両106の現在地P3との距離をLとする。他車両106が制動により減速すれば自車両102との衝突が避けられる距離の最小値をLbminとし、最小値Lbminに対応する他車両106の位置をP2とする。
【0053】
位置P2における他車両106の車速をVaとし、位置P2から位置P1までの他車両106の制動による平均減速度をGbaとすると、他車両106が位置P2から位置P1まで移動するのに要する時間taはVa/Gbaである。また、他車両106が現在地P3から位置P1まで減速することなく車速Vaにて走行するのに要する時間ttはL/Vaである。よって、他車両106が現在地P3から位置P2へ移動する時間、即ち他車両106と自車両102との衝突を回避することができる余裕時間tmは、tt-ta=L/Va-Va/Gbaである。
【0054】
衝突の態様が(A)乃至(E)の何れかであると予測され、他車両106が車速Vaにて走行している状況において、余裕時間tmが負の値になってから自車両102の減速を開始しても、他車両106及び自車両102の衝突を回避することができない。余裕時間tmが0になった時点において自車両102の減速を開始すれば、他車両106及び自車両102の衝突を回避することができる。余裕時間tmが正の値であるときに自車両102の減速を開始すれば、他車両106及び自車両102の衝突を回避することができるが、他車両106が制動により位置P1に到達する前に停止し、自車両102の制動による停止が無駄に行われた結果になる虞がある。
【0055】
よって、自車両102の制動開始の可否の判定は、余裕時間tmが基準値tc以下であるか否かの判定により行われ、ステップS40においては、自動制動の許可判定の基準値tcが予め設定された標準値である0に設定される。なお、他車両106の車速Va及び距離Lは、カメラセンサ12の検出結果に基づいて判定されてよい。また、他車両106の制動による平均減速度Gbaは、例えば種々の車両について実験的に求められた値の平均値であってよい。
【0056】
ステップS50においては、CPUは、他車両が自車両に側突する態様(D)乃至(F)が衝突の態様の範囲に含まれるよう、衝突の態様の範囲を拡張する。よって、拡張された衝突の態様の範囲は(A)乃至(F)である。なお、
図3においては、他車両106は自車両102に対し左方から右方へ走行するが、他車両106が自車両102に対し右方から左方へ走行する場合にも、同様に衝突の態様の範囲が拡張される。
【0057】
ステップS60においては、CPUは、自動制動の許可判定の基準値tcが予め設定された標準値である0よりも大きい値tcp(正の定数)に増大して設定する。なお、
図4においては、他車両106は自車両102に対し左方から右方へ走行するが、他車両106が自車両102に対し右方から左方へ走行する場合にも、同様に基準値tcが0よりも大きい値tcpに増大して設定される。
【0058】
ステップS70においては、CPUは、カメラセンサ12の検出結果に基づいて推定される他車両と自車両との衝突の態様が、ステップS40又はS50において設定された衝突の態様の範囲に含まれるか否かの判定により、自車両が他車両と側突する虞があるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS80へ進める。
【0059】
ステップS80においては、CPUは、カメラセンサ12の検出結果に基づいて推定される余裕時間tmが、ステップS40又はS60において設定された基準値tc以下であるか否かの判定により、自動制動が許可されるか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御を一旦終了し、肯定判定をしたときには、本制御をステップS90へ進める。
【0060】
ステップS90においては、CPUは、メータECU50へ指令信号を出力することにより、自車両102が他車両に衝突する虞がある旨の警報を発出する。また、CPUは、制動ECU30へ指令信号を出力することにより、制動装置32を作動させ、自車両102を自動制動により減速させる。
【0061】
ステップS100においては、CPUは、自車両102の車速Vが0になったか否かの判定により、自車両が停止したか否かを判定する。CPUは、否定判定をしたときには、本制御をステップS70へ戻し、肯定判定をしたときには、本制御を終了する。よって、ステップS70及びS80において肯定判定が行われるときは、自車両が停止するまで警報の発出及び自動制動が継続される。
【0062】
<実施形態の作動>
次に、車両102の前方に信号がない交差点があり(S10)、自車道路と交差する道路を自車道路へ向けて走行する他車両がある場合(S20)について、実施形態の作動を説明する。
【0063】
(1)自車道路が非優先道路であると判定されない場合(
図5)
図5は、自車道路110が優先道路であり、他車道路112が非優先道路である場合を示している。
図5に示された場合のように、自車道路110が非優先道路であると判定されない場合には、ステップS30において、否定判定が行われる。よって、ステップS40において、他車両と自車両との衝突の態様の範囲が標準の衝突の態様の範囲(A)乃至(C)に設定され、自動制動の許可判定の基準値tcが予め設定された標準値である0に設定される。
【0064】
従って、カメラセンサ12の検出結果に基づいて推定される他車両と自車両との側突の態様が、標準の衝突の態様の範囲(A)乃至(C)であるときには、ステップS70において、自車両が他車両と側突する虞があると判定される。しかし、推定される他車両と自車両との側突の態様が、標準の衝突の態様の範囲以外の(D)乃至(F)であるときには、ステップS70において、自車両が他車両と側突する虞がない判定される。従って、自動制動(S90)は行われない。
【0065】
よって、自車道路が非優先道路でない場合において、自車両が自動制動により減速され停止されると、運転者が自車両の加速により他車両と衝突することなく十字路を通過できたはずであるとの不満を覚えることを防止することができる。
【0066】
また、カメラセンサ12の検出結果に基づいて推定される余裕時間tmが、標準値である0以下であるときには、ステップS80において、自動制動が許可されると判定される。しかし、推定される余裕時間tmが正の値であるときには、ステップS80において、自動制動が許可されないと判定される。
【0067】
よって、他車両が制動により衝突を回避することができなくなる時点(tm=0)よりも前の時点(tm>0)において、自車両の自動制動が許可されると判定されることを防止することができる。従って、他車両が制動により寸止め停止し、自車両も自動制動により停止することにより、自車両の停止が無駄な停止になることを防止することができる。
【0068】
(2)自車道路が非優先道路であると判定される場合(
図6)
図6は、自車道路110が非優先道路であり、他車道路112が優先道路である場合を示している。
図6に示された場合のように、自車道路110が非優先道路であると判定されると、ステップS30において、肯定判定が行われる。よって、ステップS50において、他車両と自車両との衝突の態様の範囲が拡張された衝突の態様の範囲(A)乃至(F)に設定される。また、ステップS60において、自動制動の許可判定の基準値tcが0よりも大きい値tcpに設定される。
【0069】
従って、ステップS70及びS80の判定条件が緩和される。即ち、カメラセンサ12の検出結果に基づいて推定される他車両と自車両との側突の態様が、標準の衝突の態様の範囲(A)乃至(C)だけでなく拡張された衝突の態様の範囲(D)乃至(F)であるときにも、ステップS70において、自車両が他車両と側突する虞があると判定される。また、カメラセンサ12の検出結果に基づいて推定される余裕時間tmが、正の値tcp以下になれば、ステップS80において、自動制動が許可されると判定される。換言すれば、自動制動が許可されるタイミングが早められる。
【0070】
よって、自車道路が非優先道路の車線であると判定されたときには、自車道路が非優先道路の車線ではないと判定されたときに比して、自動制動が早期に実行される。従って、出合い頭の衝突の虞がある状況において、自車両の自動制動が遅れることを防止し、出合い頭の衝突を効果的に防止することができる。
【0071】
以上においては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0072】
例えば、上述の実施形態においては、ステップS30において、自車道路が非優先道路でないと判定されたときに、即ち自車道路が優先道路でないと判定されたとき及び自車道路が非優先道路であると判定できないときに、ステップS40が実行される。しかし、ステップS30において、自車道路が優先道路であるか否かが判定され、肯定判定が行われたときにステップS40が実行され、否定判定が行われたときにステップS50及びS60が実行されてもよい。その場合には、自車道路が非優先道路であると判定できないときにも、ステップS50及びS60が実行される。
【0073】
また、上述の実施形態においては、ステップS50において、衝突の態様の範囲が拡張される。しかし、ステップS30における判定の結果に関係なく、衝突の態様の範囲が標準の範囲に設定されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…運転支援ECU、12…カメラセンサ、14…レーダセンサ、16…物標情報取得装置、20…駆動ECU、30…制動ECU、34…自動制動装置、40…EPS・ECU、50…メータECU、52…警報装置、80…ナビゲーション装置、100…衝突回避支援装置、102…(自)車両、106…他車両、108…十字路