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特開2024-81416杭打機の下部リーダ着脱治具及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081416
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】杭打機の下部リーダ着脱治具及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20240611BHJP
   E02D 7/14 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
E02D7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195033
(22)【出願日】2022-12-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日:令和3年12月16日 販売した場所:マルト機械建設株式会社(神奈川県横浜市旭区金が谷499-3)
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 愛斗
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050EE10
2D050EE14
2D050EE24
(57)【要約】
【課題】簡易で取り扱いも容易な杭打機の下部リーダ着脱治具及びその使用方法を提供する。
【解決手段】作業装置17を昇降案内するリーダ19の下端フランジ面に複数のボルトによるフランジ締結で下部リーダ20を着脱可能に備えた杭打機の下部リーダ着脱治具31であって、下部リーダ20に着脱可能に設けられるブラケット32と、該ブラケット32と作業装置17との間を連結して下部リーダ20を作業装置17の鉛直方向に沿った昇降動作に追従させる吊り具33とを備え、ブラケット32は、吊り具33が取り付けられる吊り具取付部38を有し、吊り具33に張力を付与した状態で、下部リーダ20をその上端フランジ面(フランジ20a上面)がリーダ19の下端フランジ面(フランジ19a下面)と対面した宙吊り姿勢に保持してなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を昇降案内するリーダの下端フランジ面に複数のボルトによるフランジ締結で下部リーダを着脱可能に備えた杭打機の下部リーダ着脱治具であって、
前記下部リーダに着脱可能に設けられるブラケットと、該ブラケットと前記作業装置との間を連結して前記下部リーダを前記作業装置の鉛直方向に沿った昇降動作に追従させる吊り具とを備え、
前記ブラケットは、前記吊り具が取り付けられる吊り具取付部を有し、前記吊り具に張力を付与した状態で、前記下部リーダをその上端フランジ面が前記リーダの下端フランジ面と対面する宙吊り姿勢に保持してなることを特徴とする下部リーダ着脱治具。
【請求項2】
前記吊り具に付与した張力の大きさを監視するための張力表示部を備え、
前記張力表示部は、前記吊り具と前記吊り具取付部との間に介在させて使用する吊り秤であることを特徴とする請求項1記載の下部リーダ着脱治具。
【請求項3】
前記吊り具取付部は、前記吊り具が取り付けられるシャフトと、該シャフトを移動可能に支持するシャフト支持構造と、前記吊り具に付与した張力の大きさが設定値を超えた状態であることを知らせる警告表示部とを備え、
前記シャフト支持構造は、前記シャフトを貫通させる貫通孔を備えたプレートと、前記シャフトの前記貫通孔からの抜けを弾性的に阻止する伸縮可能なスプリングとを備え、
前記警告表示部は、前記シャフトの周面に設けられ該シャフトと前記プレートとの相対移動に応じて前記プレートの板面上に出没するインジケータであることを特徴とする請求項1記載の下部リーダ着脱治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載の下部リーダ着脱治具の使用方法であって、前記ブラケットを前記下部リーダに取り付ける段階と、前記ブラケットと前記作業装置との間を前記吊り具で連結する段階と、前記作業装置を上昇して前記吊り具に張力を付与する段階と、前記リーダの下端及び前記下部リーダの上端のフランジ面同士を互いに押圧したフランジ当接状態で、上下のフランジ同士を複数のボルトで締結又は締結解除する段階とを順に行うことを特徴とする下部リーダ着脱治具の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機の下部リーダ着脱治具及びその使用方法に関し、詳しくは、リーダの下端に下部リーダを着脱する際に使用する杭打機の下部リーダ着脱治具及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭施工用の施工部材(鋼管杭、ロッドなど)に回転・押込力を付与する作業装置を備えた杭打機では、作業装置を案内するリーダの下端に下部リーダを着脱可能に設けており、下部リーダを取り付けた状態では作業装置の昇降ストロークを大きくすることができ、一方、下部リーダを取り外した状態ではその分のスペースを活用して施工部材の下端部(羽根)の径を大きくすることができる。こうした仕様変更が可能な杭打機は、下部リーダをクレーンで吊った状態で行う不安定な着脱作業を強いられることから、クレーンの吊りロープに代えて、下部リーダを油圧ジャッキで昇降させる下部リーダ着脱治具が開発され、運用に至っている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-98622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された下部リーダ着脱治具では、従来からのクレーン作業と同様に、下部リーダの支持に必要な事前の段取り時間を多く必要とし、その上、挟まれ防止の観点から油圧ジャッキの作動にも慎重を期す必要がある。特に、専用の動力を必要としない簡易的な下部リーダ着脱治具を求める現場ニーズは未だ高く、杭打機が使用される多様な現場においては、容易に取り扱うことのできる下部リーダ着脱治具の開発が引き続き望まれている。
【0005】
そこで本発明は、簡易で取り扱いも容易な杭打機の下部リーダ着脱治具及びその使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機の下部リーダ着脱治具は、作業装置を昇降案内するリーダの下端フランジ面に複数のボルトによるフランジ締結で下部リーダを着脱可能に備えた杭打機の下部リーダ着脱治具であって、前記下部リーダに着脱可能に設けられるブラケットと、該ブラケットと前記作業装置との間を連結して前記下部リーダを前記作業装置の鉛直方向に沿った昇降動作に追従させる吊り具とを備え、前記ブラケットは、前記吊り具が取り付けられる吊り具取付部を有し、前記吊り具に張力を付与した状態で、前記下部リーダをその上端フランジ面が前記リーダの下端フランジ面と対面する宙吊り姿勢に保持してなることを特徴としている。
【0007】
また、前記吊り具に付与した張力の大きさを監視するための張力表示部を備え、前記張力表示部は、前記吊り具と前記吊り具取付部との間に介在させて使用する吊り秤であることを特徴としている。
【0008】
さらに、前記吊り具取付部は、前記吊り具が取り付けられるシャフトと、該シャフトを移動可能に支持するシャフト支持構造と、前記吊り具に付与した張力の大きさが設定値を超えた状態であることを知らせる警告表示部とを備え、前記シャフト支持構造は、前記シャフトを貫通させる貫通孔を備えたプレートと、前記シャフトの前記貫通孔からの抜けを弾性的に阻止する伸縮可能なスプリングとを備え、前記警告表示部は、前記シャフトの周面に設けられ該シャフトと前記プレートとの相対移動に応じて前記プレートの板面上に出没するインジケータであることを特徴としている。
【0009】
また、本発明の下部リーダ着脱治具の使用方法は、前記下部リーダ着脱治具の使用方法であって、前記ブラケットを前記下部リーダに取り付ける段階と、前記ブラケットと前記作業装置との間を前記吊り具で連結する段階と、前記作業装置を上昇して前記吊り具に張力を付与する段階と、前記リーダの下端及び前記下部リーダの上端のフランジ面同士を互いに押圧したフランジ当接状態で、上下のフランジ同士を複数のボルトで締結又は締結解除する段階とを順に行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、杭打機の下部リーダ着脱治具が、下部リーダに着脱可能に設けられるブラケットと、該ブラケットと作業装置との間を連結して下部リーダを作業装置の鉛直方向に沿った昇降動作に追従させる吊り具とを備えているので、吊り具に対して張力を付与する際に、杭打機に備えられた作業装置(例えばオーガ)を使用できることとなり、クレーンや油圧ジャッキなどの外部動力を必要としない簡易的な下部リーダ着脱治具及びその使用方法が達成される。
【0011】
しかも、吊り具取付部を有するブラケットが、吊り具に張力を付与した状態で、下部リーダをその上端フランジ面がリーダの下端フランジ面と対面する宙吊り姿勢に保持するので、鉛直方向に沿った作業装置の移動との相互作用で、下部リーダを取り付ける際のフランジ位置合わせが容易に行えるだけでなく、フランジ締結を解除して取り外す際にも下部リーダの安定状態を容易に作れることから、作業効率、作業精度、安全性の向上に寄与するものである。
【0012】
また、吊り具に付与した張力の大きさを監視するための張力表示部として、吊り秤を備えているので、吊り具とその取付部との間に市販の吊り秤(例えばばね秤)を介在させ、表示される数値(目盛)を読むだけの簡単な方法で、吊り具に付与した張力の大きさを監視できるようになる。したがって、過負荷に起因した治具の破損防止が図れ、治具の構成要素である吊り具やブラケットなどの各部の小型・軽量化にも資するものである。
【0013】
さらに、吊り具取付部において、吊り具が取り付けられるシャフトと、該シャフトを移動可能に支持するシャフト支持構造とを備えており、シャフト支持構造が、シャフトを貫通させる貫通孔を備えたプレートと、シャフトの貫通孔からの抜けを弾性的に阻止する伸縮可能なスプリングとを備えているので、スプリングの縮量を目視確認しながら吊り具に張力を付与することが可能となり、フランジ当接状態を作るうえで、フランジ面の押圧に必要な吊り具の張力を簡単かつ適切に得ることができる。
【0014】
しかも、吊り具取付部に備えられた警告表示部が、シャフトの周面に設けられたインジケータ(例えばマーキング)であって、該インジケータがシャフトとプレートとの相対移動に応じてプレートの板面上に出没するので、一見して、治具が過負荷状態に置かれているか否かの判断が容易となる。すなわち、治具の破損防止に役立つとともに、スプリングの縮量の目視確認と相俟って安定したフランジ当接状態を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一形態例を示す下部リーダ着脱治具が適用される杭打機の側面図である。
図2】同じく要部側面図である。
図3】同じく要部正面図である。
図4】同じく吊り具取付部の動作説明図である。
図5】同じく下部リーダ着脱治具の斜視図である。
図6】同じくスタンドの斜視図である。
図7】下部リーダ取り外し手順において、下部リーダに取り付けたブラケットとオーガとの間を吊り具で連結した状態を示す図である。
図8】同じく下部リーダ取り外し手順において、オーガを上昇して吊り具に張力を付与した状態を示す図である。
図9】同じく下部リーダ取り外し手順において、ブラケットのスプリング縮量の適正範囲を示す図である。
図10】同じく下部リーダ取り外し手順において、スタンドを地面に設置した状態を示す図である。
図11】同じく下部リーダ取り外し手順において、下部リーダとスタンドとの位置を合わせた状態を示す図である。
図12図11のXII-XII断面図である。
図13】同じく下部リーダ取り外し手順において、リーダの下端フランジ面とのフランジ締結を解除した下部リーダをオーガの下降動作に追従させてスタンドに挿入した状態を示す図である。
図14】同じく下部リーダ取り外し手順において、下部リーダとスタンドとを固定ピンで固定した状態を示す図である。
図15】同じく下部リーダ取り外し手順において、吊り具をオーガからクレーンフックに掛け替えて下部リーダとスタンドとを一体で吊り上げた状態を示す図である。
図16】下部リーダ取り付け手順において、基本リーダと下部リーダとの位置を合わせた状態を示す図である。
図17】同じく下部リーダ取り付け手順において、ブラケットとオーガとの間を吊り具で連結した状態を示す図である。
図18】同じく下部リーダ取り付け手順において、下部リーダとスタンドとの固定ピンを抜き取った状態を示す図である。
図19】同じく下部リーダ取り付け手順において、オーガを上昇して吊り具に張力を付与し、下部リーダを基本リーダの下端フランジ面にフランジ締結した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1乃至図19は、本発明の下部リーダ着脱治具を適用可能な杭打機の一形態例を示している。本形態例に示す杭打機は、作業装置の昇降方式としてラックピニオン方式を採用した杭打機11であって、図1に示すように、下部走行体12と、該下部走行体12の上部に旋回可能に設けられた上部旋回体13と、該上部旋回体13の前部に左右揺動可能に設けられたリーダサポート14と、該リーダサポート14に前後起伏可能に設けられたリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するバックステー(油圧シリンダ)16とを備えており、リーダ15には、施工部材(鋼管杭、ロッドなど)に回転を付与するオーガ17や、施工部材を抱持するロアガイド18などの作業装置がリーダ15に沿って昇降可能に設けられている。
【0017】
作業装置17,18を昇降案内するリーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を連結したもので、リーダサポート14に装着される基本リーダ19と、該基本リーダ19の上部に連結される複数の上部リーダ(図示せず)と、基本リーダ19の下部に連結される下部リーダ20とを備えている。各リーダ19,20は、図9にも示すように、フランジ19a,20a同士を突き合わせて複数のボルト・ナット21でそれぞれ締結することによって着脱可能に連結されている。
【0018】
リーダ15の両側前端部には、作業装置17,18のガイドギブ17a,18aが摺動可能に係合する左右一対のガイドレール22,22が設けられるとともに、リーダ15の前面中央には、作業装置17,18に設けられた昇降ピニオンが歯合するラック23がリーダ15の全長に亘って設けられている。ガイドレール22,22は、図2図5から見てとれるように、外側角部に面取りがなされた略四角断面形状を有し、上下端が各リーダ19,20のフランジ面に整合し、下方に突出したピン22a,22aを相手側のピン孔22b,22bに挿入することでフランジ19a,20a同士(ボルト孔同士)の前後左右方向の位置が確定される。
【0019】
ところで、杭打機11は、地盤改良と鋼管埋設との2種類の作業を1台で行うことができるが、こうした工事内容の切り替えにおいて、施工部材の変更で下部リーダ20を着脱する必要が生じた際には、図2乃至図6に示す構造の下部リーダ着脱治具31が使用される。
【0020】
下部リーダ着脱治具31は、下部リーダ20に着脱可能に設けられるブラケット32と、該ブラケット32と作業装置17,18との間を連結して下部リーダ20を作業装置17,18の鉛直方向に沿った昇降動作に追従させる左右一対の吊り具(例えば吊りロープ)33,33とを備えている。また、吊り具33に付属のシャックル(連結金具)34や、取り外した下部リーダ20を起立状態で支持するためのスタンド35が用いられ、これらを治具31の構成要素として含めることができる。以下では、吊り具33が取り付けられる作業装置としてオーガ17を例に挙げて説明するが、ロアガイド18であっても同様の作用、効果が得られるものである。
【0021】
ブラケット32は、基本的に左右対称形状をなし、対向配置した板体36,36同士の間を2本のパイプ材37,37で結合した平面視略コ字状の本体と、板体36,36の外側に設けられた左右一対の吊り具取付部38,38とを有している。板体36は、ブラケット32の取付ピン39を挿通するためのピン挿通部36aが設けられ、内側板面にはガイドレール22の前面に当接可能な当て板36bが固着されている。
【0022】
下部リーダ着脱治具31をリーダ15にセットする場合、図視は省略するが、地面に置かれたブラケット32に吊り具33,33の一端側を取り付けた状態とし、杭打機11の運転操作でオーガ17を地面付近に下降する。そして、ガイドギブ17aの下端部に設けられた吊り片40に対して(図2)、吊り具33の他端側を取り付けることで、2本の吊り具33,33を介してオーガ17とブラケット32とが連結される。
【0023】
この連結状態でオーガ17を上昇すると、オーガ17の移動に追従してブラケット32が吊り上げられ、板体36,36同士の間に下部リーダ20のガイドレール22,22が配置される。そして、当て板36b,36bをガイドレール22,22の前面に押し付けることで、ブラケット32の下部リーダ20に対する前後左右方向の位置が確定する。ここで、上下方向の位置を確定させるためには、ガイドレール22の外側面に設けられた上下複数段のピン孔(他のアタッチメント取付兼用孔)22cのうち、最上部が使用され、板体36の上端を下部リーダ20のフランジ20a上面に整合させて、左右両側から取付ピン39,39が挿抜可能になる。
【0024】
吊り具取付部38は、下部リーダ20のバランスを取りながら吊り点(左右2箇所)を形成するもので、図4にも示すように、吊り具33が取り付けられるシャフト41と、該シャフト41を移動可能に支持するためのシャフト支持構造42と、シャフト41の周面に設けられた警告表示部43とを備え、ブラケット32を下部リーダ20に取り付けた状態で、吊り片40の位置及び下部リーダ20の重心位置の両方を考慮して配置されている。すなわち、吊り具取付部38の配置は、図2に示すように、吊り片40の真下であって、かつ、側面視で下部リーダ20の重心Pと吊り片40とを結ぶ鉛直線上に配置されている。
【0025】
これにより、ブラケット32は、吊り具33に張力を付与した状態で、下部リーダ20に対して当て板36bのストッパ機能で取付ピン39まわりの回転を規制し、下部リーダ20をその上端フランジ面(フランジ20a上面)が基本リーダ19の下端フランジ面(フランジ19a下面)と対面した宙吊り姿勢に保持する。したがって、ボルト・ナット21を取り外してフランジ締結を解除した後の下部リーダ20は、スタンド35に受け止められるまでの間は吊り状態となるが、前後左右方向への重心移動(振れ)が発生することはなく、鉛直性を確保したままで姿勢保持がなされる。
【0026】
シャフト支持構造42は、シャフト41を上下方向に貫通させる貫通孔を備えたプレート44と、シャフト41を内挿する形でプレート44の下側に配置される伸縮可能なスプリング(圧縮バネ)45と、シャフト41に係止されたスプリング取付座46とを備えており、板体36の外側面上端部近傍から外向きに延在するプレート44の側端部下方に接続されると共に板体36の外側面上下方向に立設される補強部材42aやスプリング45の外側面を保護するように配置された側面視U字形部材の両上端部を直角に曲げてその両先端を板体36に接合したガード部材42bを一体的に設けることで必要な強度を確保している。シャフト41は、プレート44に設けられた貫通孔の径よりも大径の頭部41aがプレート44上に係止されることで、貫通孔からの下方への抜け止めがなされている。
【0027】
スプリング45は、プレート44とスプリング取付座46との間に自然長さの状態で組み込まれており、スプリング取付座46の係止ナット(ダブルナット)42cで上下方向に隙間なく調整されている。これにより、吊り具33に張力が付与されていない無負荷状態では、シャフト41の上下方向のガタ付きが抑えられ、一方、吊り具33に張力が付与された負荷状態では、上方へ抜けようとするシャフト41の移動がスプリング45の反発力で弾性的に阻止される。すなわち、吊り具33による張力を受けてシャフト41が上昇すると下端に取り付けられたスプリング取付座46がスプリング45を圧縮し、圧縮されたスプリングが圧縮量に比例した反発力を生じ、生じた反発力と張力が釣り合う長さだけシャフト41の頭部41aがプレート44から上昇する。
【0028】
警告表示部43は、吊り具33に付与した張力の大きさが設定値を超えた状態であることを知らせる表示であり、具体的には、シャフト41とプレート44との相対移動に応じてプレート44の板面上に出没するインジケータである。インジケータ43は、目に付きやすい表示であればよく、例えば、赤色塗装がなされたマーキングなどが挙げられる。また、設定値は、張力増加に対して吊り具33の安全性を確保できる値に設定され、スプリング45の縮量と張力との比例関係に基づいて、例えば、スプリング45の縮量が15mmの状態に対応している。
【0029】
このような警告表示について、図4を用いて具体的に説明すると、下部リーダ着脱治具31の負荷状態が、図4(a)の無負荷状態から、図4(b)の適正負荷上限状態になるまでの範囲は、インジケータ43がプレート44の板面上に没した位置に置かれている。適正負荷上限状態は、図4(b)に示すように、スプリング45の縮量(シャフト移動量)Lが、例えば15mmの状態になっている。スプリング45の縮量Lが15mmを超えて増加した場合、治具31の過負荷状態とされ、プレート44上に現れた警告表示としてインジケータ43の領域が増加していく。そして、スプリング45の縮量Lが35mmに達した状態では、図4(c)に示すように、インジケータ43がプレート44上に全部出つくした状態となる。こうした過負荷状態をインジケータ43の表示により作業者に警告することで、オーガ17の上昇を停止させる必要のある状態をいち早く知らせることができる。
【0030】
ここで、警告表示部43は、吊り具33の張力増加を監視するための手段であるが、運用上、警告表示部43と共に、あるいは代替する張力表示部として、吊り秤を用いることができる。吊り秤は、周知の張力測定器であって、吊り具33と吊り具取付部38との間に介在させて使用され、例えば、ばね秤のように機械的に張力を測定する構成や、ロードセルのように電子的に張力を測定する構成などが挙げられる。
【0031】
スタンド35は、図6に示すように、下部リーダ20が載置されるベース板47と、該ベース板47の両側に設けられた左右一対の側板48,48と、ベース板47の前部側で両側板48,48間に設けられた前板49とからなる左右対称形状を有し、複数の開口形状47a,48aや切欠き形状47b,49aを設けて全体として軽量化が図られている。また、側板48は、下部リーダ20の固定ピン50を挿通するためのピン挿通部48bが設けられ、内側板面の下部には、図12にも示すように、前板49との間でガイドレール22を前後方向に挟み込む立板51,51が固着されている。
【0032】
下部リーダ20をスタンド35にセットする場合、詳細は後述するが、地面に設置されたスタンド35に対し、フランジ20aのボルト締結を解除した吊り状態の下部リーダ20をオーガ17の下降動作に追従させて降ろし、ベース板47上に下部リーダ20を載置する。下部リーダ20がスタンド35の定位置に収容されると、スタンド35のピン挿通部48bと、ガイドレール22の外側面に設けられたピン孔22cとが互いに一致し(図2)、図14にも示すように、左右両側から固定ピン50,50が挿抜可能になる。
【0033】
このように構成された下部リーダ着脱治具31を使用して、下部リーダ20を基本リーダ19から取り外す作業を行う場合、図7に示すように、杭打機11のリーダ15を鉛直方向に立てた姿勢とし、作業装置17,18を基本リーダ19下部の適宜な位置に移動した後、下部リーダ20にブラケット32を取り付け、該ブラケット32とオーガ17との間を2本の吊り具33,33で連結する。次いで、図8に示すように、オーガ17を上昇して吊り具33,33に張力を付与する。
【0034】
吊り具33の張力は、ブラケット32のスプリング縮量にて目視確認され、図9に示すように、縮量L=5~10mmの範囲に調整される。ここで、スプリング縮量(L)5mmとは、宙吊り状態の下部リーダ20から受ける下向き荷重に対応している。したがって、スプリング45が5mm以上圧縮されると、下部リーダ20の下向き荷重に抵抗する上向きの押上げ力が発生し、これにより、基本リーダ19のフランジ19a下面には、下部リーダ20のフランジ20a上面からの押圧力が作用する。なお、吊り具33の張力が過大になると過負荷状態(図4(c))に陥ることから、インジケータ43が表示された場合は、オーガ17を下降してスプリング45の縮量Lが10mm以下の適正範囲になるように調整する。
【0035】
次いで、図10に示すように、杭打機11の前方地面上にスタンド35を設置した状態で、杭打機11を前進させ、図11及び図12に示すように、下部リーダ20の前面とスタンド35の前板49とを互いに当接して前後左右方向の位置を合わせる。そして、基本リーダ19の下端及び下部リーダ20の上端のフランジ面同士を互いに押圧したフランジ当接状態で、ボルト・ナット21を取り外して、上下のフランジ19a,20a同士の締結を解除する。この場合、フランジ締結の解除後においても、基本リーダ19に対する下部リーダ20の押上げ力が作用し、両者のフランジ面同士が密着したまま維持される。
【0036】
次いで、図13に示すように、下部リーダ20をオーガ17の鉛直方向に沿った下降動作に追従させてスタンド35に挿入する。下部リーダ20をスタンド35のベース板47に載置すると、ガイドレール22,22が定位置に収容され、この状態で、図14に示すように、下部リーダ20とスタンド35とを両側2箇所の固定ピン50,50で固定する。オーガ17から吊り具33,33を取り外してブラケット32との連結を解除した後、杭打機11を後退させると、これにより、下部リーダ20の上方スペースが玉掛けに必要な作業スペースとして確保される。そして、図15に示すように、吊り具33,33をオーガ17からクレーンフック52に掛け替えた後、下部リーダ20とスタンド35とを一体で吊り上げた状態(起立状態)で、そのまま保管場所へと運搬される。このような手順を経て、下部リーダ20の取り外し作業が完了する。なお、下部リーダ20は保管場所で起立状態に置かれ、治具31を取り付けた状態のままでも、保管する上で何ら邪魔にならない。
【0037】
一方、スタンド35で支持した状態の下部リーダ20を基本リーダ19に取り付ける作業を行う場合、基本的には、上述の取り外し作業と逆の手順で作業を行う。まず、杭打機11のリーダ15を鉛直方向に立てた姿勢とし、図16に示すように、杭打機11を前進させて、基本リーダ19と下部リーダ20との前後左右方向の位置を合わせる。この位置合わせに精度は求められず、多少の位置ずれが生じた状態であっても構わない。そして、図17に示すように、吊り具33,33を使用してブラケット32とオーガ17との間を連結する。
【0038】
次いで、図18に示すように、所定操作で固定ピン50,50を抜き取り、下部リーダ20とスタンド35との固定を解除した後、オーガ17を上昇して吊り具33,33に張力を付与する。このとき、下部リーダ20の下端がスタンド35のベース板47から離れるタイミングで下部リーダ20の重心移動が生じる場合があるが、これは、基本リーダ19と下部リーダ20との位置合わせのずれに起因した僅かなものである。
【0039】
こうした位置の修正により下部リーダ20は、吊り具33に張力を付与した状態で宙吊り姿勢に、すなわち、上端フランジ面(フランジ20a上面)が基本リーダ19の下端フランジ面(フランジ19a下面)と対面した宙吊り姿勢に保持される。なお、宙吊り姿勢においては、ガイドレール22のピン22aとピン孔22bとが同一軸線上(鉛直線上)に配置され、フランジ19a,20a同士(ボルト孔同士)の前後左右方向の位置が自然と確定される。こうして、スタンド35から取り出した後の下部リーダ20は、基本リーダ19に当接するまでの間は吊り状態となるが、前後左右方向への重心移動(振れ)が発生することはなく、鉛直性を確保したままで姿勢保持がなされる。
【0040】
下部リーダ20をオーガ17の鉛直方向に沿った上昇動作に追従させ、上下ガイドレール22,22同士をピン結合させるとともに、上下フランジ19a,20a同士を突き合わせると、基本リーダ19のフランジ19a下面には、下部リーダ20のフランジ20a上面からの押圧力が作用する。なお、吊り具33の張力が過大になると過負荷状態(図4(c))に陥ることから、インジケータ43が表示された場合は、オーガ17を下降してスプリング45の縮量Lが10mm以下の適正範囲になるように調整する。
【0041】
そして、図19に示すように、基本リーダ19の下端及び下部リーダ20の上端のフランジ面同士を互いに押圧したフランジ当接状態で、ボルト・ナット21を取り付けて、上下のフランジ19a,20a同士を締結する。最後に、オーガ17を下降して吊り具33の緊張を緩めた後、換言すれば、スプリング45の自然長さの状態(弾性復帰状態)を確認した後、ブラケット32の取付ピン39,39を抜き取り、この状態でオーガ17を下降すると、オーガ17の移動に追従してブラケット32が地面に降ろされる。そして、吊り具33,33をオーガ17からクレーンフック52に掛け替えた後、その場でブラケット32が吊り上げられ、例えば、用意した運搬荷台にスタンド35と一緒に搭載される。このような手順を経て、下部リーダ20の取り付け作業が完了する。
【0042】
このように、本発明によれば、杭打機11の下部リーダ着脱治具31が、下部リーダ20に着脱可能に設けられるブラケット32と、該ブラケット32と作業装置17,18との間を連結して下部リーダ20を作業装置17,18の鉛直方向に沿った昇降動作に追従させる吊り具33とを備えているので、吊り具33に対して張力を付与する際に、杭打機11に備えられた作業装置(例えばオーガ17)を使用できることとなり、クレーンや油圧ジャッキなどの外部動力を必要としない簡易的な下部リーダ着脱治具31及びその使用方法が達成される。
【0043】
しかも、吊り具取付部38を有するブラケット32が、吊り具33に張力を付与した状態で、下部リーダ20をその上端フランジ面がリーダ19の下端フランジ面と対面する宙吊り姿勢に保持するので、鉛直方向に沿った作業装置17,18の移動との相互作用で、下部リーダを取り付ける際のフランジ位置合わせが容易に行えるだけでなく、フランジ締結を解除して取り外す際にも下部リーダ20の安定状態を容易に作れることから、作業効率、作業精度、安全性の向上に寄与するものである。
【0044】
また、吊り具33に付与した張力の大きさを監視するための張力表示部として、警告表示部に加えて吊り秤を備えることもでき、吊り具33とその取付部38との間に市販の吊り秤(例えばばね秤)を介在させ、表示される数値(目盛)を読むだけの簡単な方法で、吊り具33に付与した張力の大きさを監視できるようになる。したがって、過負荷に起因した治具31の破損防止が図れ、治具31の構成要素である吊り具33やブラケット32などの各部の小型・軽量化にも資するものである。
【0045】
さらに、吊り具取付部38において、吊り具33が取り付けられるシャフト41と、該シャフト41を移動可能に支持するシャフト支持構造42とを備えており、シャフト支持構造42が、シャフト41を貫通させる貫通孔を備えたプレート44と、シャフト41の貫通孔からの抜けを弾性的に阻止する伸縮可能なスプリング45とを備えているので、スプリング45の縮量を目視確認しながら吊り具33に張力を付与することが可能となり、フランジ当接状態を作るうえで、フランジ面の押圧に必要な吊り具33の張力を簡単かつ適切に得ることができる。
【0046】
しかも、吊り具取付部38に備えられた警告表示部43が、シャフト41の周面に設けられたインジケータ(例えばマーキング)43であって、該インジケータ43がシャフト41とプレート44との相対移動に応じてプレート44の板面上に出没するので、一見して、治具31が過負荷状態に置かれているか否かの判断が容易となる。すなわち、治具31の破損防止に役立つとともに、スプリング45の縮量の目視確認と相俟って安定したフランジ当接状態を作ることができる。
【0047】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、下部リーダ着脱治具を構成するブラケットの形状などは、作業装置やリーダの仕様に応じて適宜変更することができ、吊り具については、ワイヤロープやチェーンロープなどを採用することができる。また、吊り具の張力の大きさを監視するための手段は任意であり、張力表示部、警告表示部などといった目視確認できるインジケータなどの構成の他、作業者の注意が向くものであれば音や光を発する構成などが考えられる。さらに、スタンドの形状なども任意であり、下部リーダ着脱作業が行われる作業環境を考慮して適宜設定することができる。
【符号の説明】
【0048】
11…杭打機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…リーダサポート、15…リーダ、16…バックステー、17…オーガ(作業装置)、17a…ガイドギブ、18…ロアガイド(作業装置)、18a…ガイドギブ、19…基本リーダ、19a…フランジ、20…下部リーダ、20a…フランジ、21…ボルト・ナット、22…ガイドレール、22a…ピン、22b…ピン孔、22c…ピン孔、23…ラック、31…下部リーダ着脱治具、32…ブラケット、33…吊り具、34…シャックル、35…スタンド、36…板体、36a…ピン挿通部、36b…当て板、37…パイプ材、38…吊り具取付部、39…取付ピン、40…吊り片、41…シャフト、41a…頭部、42…シャフト支持構造、42a…補強、42b…ガード、42c…係止ナット、43…インジケータ(警告表示部)、44…プレート、45…スプリング、46…スプリング取付座、47…ベース板、47a…開口形状、47b…切欠き形状、48…側板、48a…開口形状、48b…ピン挿通部、49…前板、49a…切欠き形状、50…固定ピン、51…立板、52…クレーンフック
図1
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