(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081422
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H02K3/34 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195041
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 匡隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 識由
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 唱
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DB20
5H604PB01
5H604PB02
(57)【要約】
【課題】コイルエンド部の絶縁被覆を厚くせずに絶縁性を向上させることができるステータを提供すること。
【解決手段】ステータは、円環状をなし、周方向に沿って複数のスロットが形成されているステータコアと、前記スロット内に挿入されており、絶縁被膜を有するセグメントコイルと、を備え、前記セグメントコイルは、前記スロットの内部に収容されているコイル中央部と、前記スロットの外部に突出しており、前記セグメントコイル同士を接続するコイル接続部を有するコイルエンド部であって、径方向に隣接する前記コイル接続部が互いに接触しており、絶縁性の油が供給されることにより前記セグメントコイル同士が絶縁されているコイルエンド部と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状をなし、周方向に沿って複数のスロットが形成されているステータコアと、
前記スロット内に挿入されており、絶縁被膜を有するセグメントコイルと、
を備え、
前記セグメントコイルは、
前記スロットの内部に収容されているコイル中央部と、
前記スロットの外部に突出しており、前記セグメントコイル同士を接続するコイル接続部を有するコイルエンド部であって、径方向に隣接する前記コイル接続部が互いに接触しており、絶縁性の油が供給されることにより前記セグメントコイル同士が絶縁されているコイルエンド部と、
を備えるステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステータのコイルエンド部の絶縁被膜を厚肉に形成することにより、コイルエンド部の絶縁性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁被覆を厚肉にするとコイルの占積率が低下し、体格の増加及びコストの増加が生じるため好ましくない。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、コイルエンド部の絶縁被覆を厚くせずに絶縁性を向上させることができるステータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るステータは、円環状をなし、周方向に沿って複数のスロットが形成されているステータコアと、前記スロット内に挿入されており、絶縁被膜を有するセグメントコイルと、を備え、前記セグメントコイルは、前記スロットの内部に収容されているコイル中央部と、前記スロットの外部に突出しており、前記セグメントコイル同士を接続するコイル接続部を有するコイルエンド部であって、径方向に隣接する前記コイル接続部が互いに接触しており、絶縁性の油が供給されることにより前記セグメントコイル同士が絶縁されているコイルエンド部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コイルエンド部の絶縁被覆を厚くせずに絶縁性を向上させることができるステータを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るステータを含むモータ冷却装置の概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るステータの概略的な構成図である。
【
図4】
図4は、セグメントコイル間の表面張力を説明するための図である。
【
図5】
図5は、コイル接続部が接触している場合及び接触していない場合における油の表面張力を表す図である。
【
図6】
図6は、セグメントコイル間に滞留する油がある場合とない場合における絶縁性能を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係るステータについて、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
〔モータ冷却装置の概略構成〕
図1は、実施形態に係るステータを含むモータ冷却装置の概略的な構成図である。
図1に示すように、モータ冷却装置1は、モータ2と、ケース3と、油4と、オイルポンプ5と、制御装置6と、を備える。モータ冷却装置1は、オイルポンプ5により油4をモータ2に噴射し、モータ2を冷却させるモータ冷却装置である。
【0011】
モータ2は、車両等に搭載されているモータであり、回転可能なロータと、ロータを回転させるステータと、を備える。
【0012】
ケース3は、モータ2を収容するとともに、油4を貯留する。
【0013】
油4は、ケース3に貯留されており、絶縁性を有する。
【0014】
オイルポンプ5は、油4をモータ2に噴射する。
【0015】
制御装置6は、オイルポンプ5を制御する。
【0016】
〔ステータの構成〕
図2は、実施形態に係るステータの概略的な構成図である。
図2に示すステータ21は、円環状をなし、周方向に沿って複数のスロットが形成されているステータコア211と、スロット内に挿入されており、絶縁被膜を有するセグメントコイル212と、電源に電気的に接続されているコイル動力線213と、を備える。
【0017】
セグメントコイル212は、スロットの内部に収容されているコイル中央部と、スロットの外部に突出しているコイルエンド部と、を備える。
【0018】
図3は、
図2の領域Aの拡大図である。
図3に示すように、コイルエンド部2121は、セグメントコイル212同士を溶接等により接続するコイル接続部2121aを有する。径方向に隣接するコイル接続部2121aは、互いに接触している。その結果、セグメントコイル212間の距離が小さくなり、この隙間に絶縁性の油4が供給されることによりセグメントコイル212同士が絶縁されている。
【0019】
図4は、セグメントコイル間の表面張力を説明するための図である。油4に作用する表面張力の大きさは、
図4に示すセグメントコイル212間の距離Dが小さいほど増大する。
【0020】
図5は、コイル接続部が接触している場合及び接触していない場合における油の表面張力を表す図である。
図5に示すように、隣接するコイル接続部が接触していない場合、セグメントコイル間の距離Dが大きいため、油に作用する表面張力N1が小さい。これに対して、隣接するコイル接続部2121aが接触している場合、セグメントコイル212間の距離Dが小さいため、油に作用する表面張力N2が大きい。そして、表面張力N2は、セグメントコイル212間に油4が滞留するために必要な表面張力の目標値NTよりも大きい。その結果、ステータ21では、セグメントコイル212間に油4が保持される。なお、目標値NTは、車両の最大振動時に生じる加振力を加えた場合であっても、セグメントコイル212間に油4が保持されるように計算した値である。
【0021】
図6は、セグメントコイル間に滞留する油がある場合とない場合における絶縁性能を表す図である。
図6には、セグメントコイル212間に滞留する油4がある場合とない場合における絶縁性能を部分放電開始電圧(PDIV:Partial Discharge Inception Voltage)により図示した。
図6に示すように、セグメントコイル212間に油4がある場合の絶縁性能V2は、セグメントコイル間に油がない場合の絶縁性能V1よりも、25%大きく、絶縁性能が向上していることが示された。
【0022】
以上説明したステータ21によれば、径方向に隣接しているコイル接続部2121aが接触していることにより、絶縁被覆が薄くなるセグメントコイル212の曲げ加工部等において、セグメントコイル212間の距離が小さいため、セグメントコイル212間に油4が滞留することによって絶縁性が向上する。従って、ステータ21は、コイルエンド部2121の絶縁被覆を厚くせずに絶縁性を向上させることができる。
【0023】
更なる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わし、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 モータ冷却装置
2 モータ
3 ケース
4 油
5 オイルポンプ
6 制御装置
21 ステータ
211 ステータコア
212 セグメントコイル
213 コイル動力線
2121 コイルエンド部
2121a コイル接続部