(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081432
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】紙製マルチシート
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20240611BHJP
C08L 97/00 20060101ALI20240611BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20240611BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20240611BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
A01G13/00 302Z
C08L97/00 ZBP
C08L67/04
C08L29/04 B
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195063
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000176637
【氏名又は名称】日本製紙パピリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】飯森 武志
(72)【発明者】
【氏名】半田 暖尚
【テーマコード(参考)】
2B024
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
2B024DB01
2B024DB03
4J002AB03X
4J002AB04X
4J002AC02X
4J002AC08X
4J002AH00W
4J002BC05X
4J002BE02X
4J002BF02X
4J002BG00X
4J002BG06X
4J002CF19X
4J002GA00
4J200AA02
4J200AA04
4J200BA14
4J200CA01
4J200DA02
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】生育期間の長い農作物に対しても充分適用できる紙製マルチシートを提供すること。
【解決手段】原紙と、該原紙の少なくとも一面上の塗工された塗工層と、を有し、
前記原紙が、製紙用繊維として木材パルプを40重量%以上含み、
前記塗工層が、リグニンと樹脂を、30:70~99:1の重量比(リグニン:樹脂)で含む紙製マルチシート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙と、該原紙の少なくとも一面上の塗工された塗工層と、を有し、
前記原紙が、製紙用繊維として木材パルプを40重量%以上含み、
前記塗工層が、リグニンと樹脂を、30:70~99:1の重量比(リグニン:樹脂)で含むことを特徴とする紙製マルチシート。
【請求項2】
前記リグニンの含有量が、0.3g/m2以上であることを特徴とする請求項1に記載の紙製マルチシート。
【請求項3】
前記樹脂が、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂の1以上を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の紙製マルチシート。
【請求項4】
前記原紙の坪量が、20g/m2以上50g/m2以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製マルチシート。
【請求項5】
JIS P8116に準拠して測定したMD方向の引裂強さが300mN以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙製マルチシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸分野において用いられている紙製マルチシートに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチシートとは、農作物あるいは花卉の周りの地面を被覆する農業用資材であり、地温の調節、雑草発生の抑制などの効果により、農作物あるいは花卉の品質、収穫量の向上を目的として使用されている。一般的に、マルチシートとしては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムが使用されている。しかしながら、これらのプラスチックフィルムは、生分解性ではないため、使用後は、回収・焼却処理が必要であり、また、回収・焼却処理にあたっては特殊な装置や多大な労力と時間が必要である上、環境汚染の点からも問題となっている。
【0003】
このような背景から、敷設期間はその形態を維持しながらも、作物収穫後に土壌に鋤き込んで処理できる生分解性材料からなるマルチシートの使用が拡大しつつある。例えば、特許文献1には、粉末活性炭を生分解性樹脂に分散させた樹脂組成物なるマルチシートが提案されている。特許文献2には、機械パルプを30重量%以上70重量%以下、化学パルプを30重量%以上60重量%以下含有する木材パルプを主成分とし、浸透助剤が対パルプ当たり0.05重量%以上10重量%以下含有され、坪量が50g/m2以上120g/m2以下で、かつ水の透水性が30ml/m2・分以上500ml/m2・分以下であることを特徴とする農業用マルチシートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-68458号公報
【特許文献2】特開2000-102329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マルチシートにおいて、生分解性樹脂や紙を用いたマルチシートは、使用後の回収、廃棄処分が不要である利点がある。しかし、生分解性樹脂製のマルチシートは、製品保管時の劣化や、鋤き込み時のロータリーへの絡まりトラブルなどの問題がある。紙製マルチシートは、強度を高めるために製品が厚く(重く)、設置時の作業性が悪く、また、生分解が速いため収穫前に劣化して強度が低下したり、耐風雨性に劣る、成長期間の長い農作物に使用するには不向きであった。紙製マルチシートに、化学的処理を施すことにより、生分解期間を長くする方法も提案されているが、処理方法が煩雑で生産性に課題があり、また紙の強度低下が発生するという問題がある。
本発明は、生育期間の長い農作物に対しても充分適用できる紙製マルチシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段は、以下のとおりである。
1.原紙と、該原紙の少なくとも一面上の塗工された塗工層と、を有し、
前記原紙が、製紙用繊維として木材パルプを40重量%以上含み、
前記塗工層が、リグニンと樹脂を、30:70~99:1の重量比(リグニン:樹脂)で含むことを特徴とする紙製マルチシート。
2.前記リグニンの含有量が、0.3g/m2以上であることを特徴とする1.に記載の紙製マルチシート。
3.前記樹脂が、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂の1以上を含むことを特徴とする1.または2.に記載の紙製マルチシート。
4.前記原紙の坪量が、20g/m2以上50g/m2以下であることを特徴とする1.または2.に記載の紙製マルチシート。
5.JIS P8116に準拠して測定したMD方向の引裂強さが300mN以上であることを特徴とする1.または2.に記載の紙製マルチシート。
【発明の効果】
【0007】
本発明の紙製マルチシートは、生分解が遅く、生育期間の長い農作物に対しても適用することができる。本発明の紙製マルチシートは、木材パルプの配合率により、生分解性を調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の紙製マルチシートは、原紙と、この原紙の少なくとも一面上に塗工されたリグニンを含む塗工層と、を有する。
(原紙)
原紙は、製紙用繊維、填料、各種助剤等からなるシートである。
本発明の原紙は、製紙用繊維として、木材パルプを40重量%以上含む。
木材パルプとしては、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、サルファイトパルプなどの化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプなどの機械パルプ、木材パルプ由来の古紙パルプ、溶解パルプ、マーセル化パルプ等の1種以上を用いることができる。これらの中で、強度に優れているため、NBKP、NUKPが好ましく、NUKPがより好ましい。
【0009】
原紙の製紙用繊維全体に対する木材パルプの配合率が高くなるほど、生分解は速くなるが、本発明の紙製マルチシートは、リグニンを含む塗工層を有することにより、木材パルプを高配合しながらも、生分解を抑制することができる。
本発明の紙製マルチシートにおいて、生分解速度とコストの点から、製紙用繊維全体に対する木材パルプの配合率は50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。原紙は木材パルプ100重量%とすることもできるが、木材パルプの配合率が高くなりすぎると、生分解が速くなる場合があるため、木材パルプの配合率は95重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
【0010】
木材パルプと組み合わせて使用する製紙用繊維としては、特に制限されず、例えば、亜麻、ケナフ、楮、みつまたなどの靭皮繊維、バガス、竹、エスパルトなどの硬質繊維、コットンパルプなどの種子毛繊維、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプなどの葉鞘・葉繊維といった非木材パルプ;ポリ乳酸系繊維、再生セルロース系繊維、ポリブチレンサクシネート系繊維、ポリエチレンサクシネート系繊維、ポリブチレンサクシネート・アジペート系繊維、ポリブチレンサクシネート・カーボネート系繊維、ポリカプロラクトン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維等の合成繊維の1種以上を含むこともできる。合成繊維は、単一材料からなる繊維、芯部と鞘部とを有する複合繊維のいずれも用いることができる。合成繊維は、生分解性の繊維を用いることが好ましく、ポリ乳酸系繊維、ポリ乳酸を芯部ポリブチレンサクシネートを鞘部とする複合繊維がより好ましい。
ポリ乳酸系繊維を使用する場合、繊度が0.01dtex以上3.0dtex以下であることが好ましく、0.05dtex以上が好ましく、1.5dtex以下がより好ましい。また、繊維長が2mm以上10mm以下であることが好ましく3mm以上が好ましく、8mm以下が好ましい。
【0011】
原紙は、公知の内添薬剤を含むことができる。紙製マルチシートは、地面の上に敷かれるものであるため、原紙は湿潤紙力増強剤を含むことが好ましい。湿潤紙力増強剤は、製紙用繊維100重量部に対して、0.5重量部以上3重量部以下含むことが好ましい。
【0012】
原紙の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して紙基材を製造することができる。また、原紙は1層であってもよく、2層以上の多層で構成されていてもよい。
【0013】
本発明の原紙の坪量は特に制限されないが、例えば、15g/m2以上80g/m2以下とすることができる。強度の点からは、原紙の坪量は18g/m2以上が好ましく、20g/m2以上がより好ましい。軽量化の点からは、原紙の坪量は、60g/m2以下が好ましく、50g/m2以下がより好ましく、45g/m2以下がさらに好ましく、35g/m2以下がよりさらに好ましい。
【0014】
(塗工層)
塗工層は、原紙の少なくとも一面上に塗工により形成される。塗工層は、リグニンと樹脂を、30:70~99:1の重量比(リグニン:樹脂)で含有すればよく、表面紙力剤、サイズ剤等の製紙用外添薬品、色材、界面活性剤、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、撥水剤等の添加剤を含むことができる。さらに、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、殺菌剤、植物成長調整剤、肥料等の薬剤の1種または2種以上を含むこともできる。
リグニンは、セルロース、ヘミセルロースとともに、木本植物の主たる構成成分である。リグニンは、白色腐朽菌により分解されるものの、その分解は遅く、塗工層を形成することにより、紙製マルチシートの分解を遅くすることができる。
リグニンは、溶解して塗工できるものであれば特に制限されないが、リグニンスルホン酸、またはその塩であることが、塗料調製が容易なため好ましい。リグニンスルホン酸の塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩などを例示することができる。リグニンスルホン酸、またはその塩としては、サンエキスM-100、サンエキスP321、サンエキス252、サンエキスP252、サンエキスSCL、サンエキスSCP、サンエキスFDL、バニレックスN、パールレックスNP、パールレックスDP(いずれも日本製紙製)などの市販品を用いることができる。
【0015】
本発明において、塗工層は、リグニンと樹脂とを、30:70~99:1の重量比(リグニン:樹脂)で含む。この範囲よりもリグニンが少ないと、生分解が十分に遅くならない場合がある。一方、この範囲よりもリグニンを多く含む(樹脂が少ない)と、リグニンの原紙への固着性が低下して、リグニンを多く含むにも関わらず、上記範囲で樹脂を含む場合と比較して原紙の生分解が速くなる場合がある。リグニンと樹脂との重量比は35:65~95:5がより好ましい。
【0016】
樹脂は、リグニンの原紙への固着性を調整する役割を果たす。樹脂は、一般的に、塗工液にバインダーとして配合されているものを特に制限することなく使用することができ、例えば、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、アクリル系樹脂、澱粉類、セルロースエーテル類、スチレン・ブタジエン系共重合体、メチルメタアクリレート・ブタジエン系共重合体、酢酸ビニル系樹脂等の1種または2種以上を用いることができる。これらの中で、ポリ乳酸系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂の1以上が、生分解であるため好ましい。
【0017】
塗工層形成用塗料の原紙への塗工方法については特に限定されるものではなく、公知の塗工装置及び塗工系で塗工することができる。例えば、塗工装置としてはブレードコーター、バーコーター、ニップコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、サイズプレスコーター、ゲートロールコーターなどが挙げられる。また、塗工系としては、水等の溶媒を使用した水系塗工、有機溶剤等の溶媒を使用した溶剤系塗工などが挙げられるが、水系塗工であることが好ましい。
【0018】
本発明において、塗工層の片面あたり塗工量は、乾燥重量で0.8g/m2以上10g/m2以下とすることが好ましい。塗工量が0.8g/m2未満であると、生分解抑制効果が十分に発揮できない場合がある。一方、10g/m2より多いと、塗工時の乾燥負荷が大きくなるとともに、紙製マルチシートが重くなる。塗工層の塗工量は、1.0g/m2以上がより好ましく、1.1g/m2以上がさらに好ましく、また、8g/m2以下がより好ましく、5g/m2以下がさらに好ましい。
【0019】
本発明の紙製マルチシートは、リグニン含有量が、乾燥重量で0.3g/m2以上であることが、生分解抑制の点から好ましい。リグニン含有量は、乾燥重量で0.35g/m2以上が好ましく、0.4g/m2以上がより好ましい。リグニン含有量の上限は特に制限されないが、例えば、5g/m2程度である。それ以上リグニン含有量を増やしても、生分解抑制効果は飽和してほとんど向上せず、原料コストが大きくなり高コストとなる。
【0020】
(紙製マルチシート)
紙製マルチシートは、原紙と、この原紙の少なくとも一面上に塗工により形成されたリグニンを含む塗工層と、を有する。紙製マルチシートは、原紙の両面に塗工層を有していてもよく、原紙と塗工層以外の層を有することもできる。
紙製マルチシートは、JIS P8118に準拠して測定したMD方向の(乾燥)引張強さが15N/15mm以上、MD方向の湿潤引張強さが5N/15mm以上であることが、栽培期間中の破れ等の発生を防止する点から好ましい。この(乾燥)引張強さは16N/15mm以上がより好ましく、17N/15mm以上がさらに好ましい。この湿潤引張強さは6N/15mm以上がより好ましく、7N/15mm以上がさらに好ましい。
紙製マルチシートは、JIS P8116に準拠して測定したMD方向の引裂強さが300mN以上であることが、設置作業時の破れ等の発生を防止する点から好ましい。この引裂強さは400mN以上がより好ましく、500mN以上がさらに好ましい。
【0021】
紙製マルチシートは、雑草の生長を抑制する点から、波長660nm及び450nmの光線透過率が、いずれも4.5%以下であることが好ましい。透過率がこの条件を満足する紙製マルチシートは、雑草の発芽を抑制することができ、仮に発芽したとしても光合成を効率的に行うことができないため、雑草の生長を抑制することができる。波長660nm及び450nmの光線透過率は、いずれも4.0%以下がより好ましく、3.0%以下がさらに好ましく、2.5%以下がよりさらに好ましく、2.0%以下がよりさらに好ましい。
【実施例0022】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明の構成はこれに限定されない。
得られた原紙および紙製マルチシートは、以下の測定方法により評価した。結果を表1に示す。
【0023】
(評価方法)
・坪量、厚さ
JIS P8124に準拠して坪量を測定した。
JIS P8118に準拠して加圧面間の圧力100kPaとして、シート1枚の厚さを測定した。
・リグニン含有量
塗工前後での坪量から、塗工量を算出した。
塗工量と、塗工料中の全固形分に対するリグニンの重量割合とから、リグニンの含有量を算出した。
【0024】
・引張強さ
(乾燥)引張強さは、JIS P8118に準拠して測定した。
湿潤引張強さは、水に浸漬した試験サンプルをろ紙で挟み込んで表面に付着した余剰な水分を取り除いた後に、JIS P8118に準拠して測定した。
・引裂強さ
引裂強さは、JIS P8116に準拠して測定した。
・光線透過率
光線透過率は、試験サンプルを分光光度計(UV-160A 株式会社島津製作所)にて、植物の光合成で多く吸収される赤色光(660nm)と青色光(450nm)の光線透過率(%)を測定した。
【0025】
・土壌分解性
家庭園芸用培養土を1.4Lタッパーに250g入れた(土中水分量:20~30%)。そこへ評価用サンプル片(幅16cm、長さ10cm)を水切りネットに入れて重量を測定した後に土面に置き、これを園芸用培養土250gで被せて埋めた。蓋をして密閉したタッパーを40℃の環境試験機(シルバリーエンペラー 株式会社カトー)に入れて土中での分解性を調査した。1週間後にサンプルを取り出し、流水中で表面の土を洗い流して風乾した後、サンプルの重量を測定した。
土壌分解性は、次の計算式に従って減少率として算出した。
減少率(%)=試験後の重量/試験前の重量×100
【0026】
「実施例1」
カナダ式標準ろ水度(CSF)400mlの針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)70重量部とポリ乳酸繊維(大和紡績社製、ミラクルファイバーKK-PL、芯部ポリ乳酸・鞘部ポリブチレンサクシネート、2.4dtex×5mm)30重量部とを配合し、原料繊維とした。原料繊維に湿潤紙力増強剤を対繊維重量で2%添加して紙料とし、目標坪量30g/m2で抄紙して、原紙を得た。
原紙に、リグニン(日本製紙製、サンエキスP321、リグニンスルホン酸マグネシウム)とポリ乳酸系樹脂(中京油脂社製、レゼムW-990)とを、固形分重量比が70:30となるように混合した塗料をサイズプレス含浸塗工して110℃で乾燥し塗工層を形成し、紙製マルチシートを得た。
【0027】
「実施例2」
リグニンとポリ乳酸系樹脂との配合比を53:47とした以外は、実施例1と同様にして紙製マルチシートを得た。
「実施例3」
リグニンとポリ乳酸系樹脂との配合比を40:60とした以外は、実施例1と同様にして紙製マルチシートを得た。
「実施例4」
リグニンとポリ乳酸系樹脂との配合比を90:10とした以外は、実施例1と同様にして紙製マルチシートを得た。
「実施例5」
ポリ乳酸系樹脂に代えて、ポリビニルアルコール系樹脂(クラレ社製 ポバール25-88KL)を用いた以外は、実施例1と同様にして紙製マルチシートを得た。
【0028】
「比較例1」
リグニンのみを塗工した(リグニンとポリ乳酸系樹脂との配合比が100:0)以外は、実施例1と同様にして紙製マルチシートを得た。
「比較例2」
塗工層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして紙製マルチシートを得た。
【0029】
【0030】
本発明である実施例1~5で得られた紙製マルチシートは、木材パルプが高配合されているにも関わらず、土壌分解が遅く、生育期間の長い農作物に対しても適用することができる。
塗工層が樹脂を含まない比較例1で得られた紙製マルチシートは、例えば、よりリグニン含有量が少ない実施例3で得られた紙製マルチシートと比較しても、生分解が速かった。これは、樹脂を含まないことにより、原紙へのリグニンの固着性に劣り、リグニンが原紙から剥がれやすいためであると推測される。