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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081437
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】照明システム
(51)【国際特許分類】
   H05B 47/11 20200101AFI20240611BHJP
   H05B 45/20 20200101ALI20240611BHJP
   H05B 45/12 20200101ALI20240611BHJP
   H05B 47/125 20200101ALI20240611BHJP
   H05B 47/13 20200101ALI20240611BHJP
   H05B 47/16 20200101ALI20240611BHJP
【FI】
H05B47/11
H05B45/20
H05B45/12
H05B47/125
H05B47/13
H05B47/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195074
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏江 遼
(72)【発明者】
【氏名】清水 映吾
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA03
3K273QA13
3K273QA21
3K273RA02
3K273RA05
3K273RA12
3K273RA13
3K273RA17
3K273SA04
3K273SA11
3K273SA21
3K273SA22
3K273SA24
3K273SA35
3K273SA38
3K273SA46
3K273SA58
3K273SA60
3K273TA03
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA27
3K273TA28
3K273TA39
3K273TA41
3K273TA77
(57)【要約】
【課題】様々な年齢の人についてサーカディアンリズムの調整を図ることができる照明システムを提供する。
【解決手段】照明システムは、対象空間内で作業する作業者の個人作業空間に光を照射する個人用照明装置と、作業者の年齢を特定する年齢特定手段と、個人作業空間が照度設定値になるように、個人用照明装置を制御する制御装置と、を備える。個人用照明装置は、照射する光の強度及び色温度を変更可能である。照度設定値は、等価メラノピック照度である。制御装置は、作業者の年齢に応じて照度設定値を補正し、個人作業空間が補正後の照度設定値となるように個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間内で作業する作業者の個人作業空間に光を照射する個人用照明装置と、
前記作業者の年齢を特定する年齢特定手段と、
前記個人作業空間が照度設定値になるように、前記個人用照明装置を制御する制御装置と、を備え、
前記個人用照明装置は、照射する光の強度及び色温度を変更可能であり、
前記照度設定値は、等価メラノピック照度であり、
前記制御装置は、前記作業者の年齢に応じて前記照度設定値を補正し、前記個人作業空間が補正後の前記照度設定値となるように前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する照明システム。
【請求項2】
前記作業者の個人を識別する個人識別手段をさらに備え、
前記制御装置は、識別された前記作業者の個人に応じて前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する請求項1に記載の照明システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記対象空間内における前記個人用照明装置の位置に応じて前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する請求項1又は請求項2に記載の照明システム。
【請求項4】
前記個人作業空間の照度を検出する照度検出手段をさらに備え、
前記制御装置は、前記個人作業空間の照度に応じて前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する請求項1又は請求項2に記載の照明システム。
【請求項5】
前記制御装置は、1日における時間帯に応じて前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する請求項1又は請求項2に記載の照明システム。
【請求項6】
前記作業者の生体情報を取得する生体情報取得手段をさらに備え、
前記制御装置は、前記作業者の生体情報に基づいて前記作業者の作業性を推定し、前記作業者の作業性に応じて、前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する請求項1又は請求項2に記載の照明システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
照明システムにおいては、光源を有する光源部と、光源部によって照明される照明対象を含む照明環境の状況を取得する取得部と、取得部によって取得された状況を解析する解析部と、解析部の解析結果に基づいて、状況ごとに、WELL認証の要件を満たす等価メラノピック照度の範囲で光源の出力を制御する出力制御部とを具備するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-167108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような照明システムにおいては、認証の要件を満たすように光源の出力を制御するものであり、照明から受ける人への影響については十分に考慮が尽くされていない。特に、人の年齢によって照明から受ける影響が異なるため、認証の要件を満たすように光源の出力が制御されても、人によってはサーカディアンリズムの調整効果が得られない可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものである。その目的は、様々な年齢の人についてサーカディアンリズムの調整を図ることができる照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る照明システムは、対象空間内で作業する作業者の個人作業空間に光を照射する個人用照明装置と、前記作業者の年齢を特定する年齢特定手段と、前記個人作業空間が照度設定値になるように、前記個人用照明装置を制御する制御装置と、を備え、前記個人用照明装置は、照射する光の強度及び色温度を変更可能であり、前記照度設定値は、等価メラノピック照度であり、前記制御装置は、前記作業者の年齢に応じて前記照度設定値を補正し、前記個人作業空間が補正後の前記照度設定値となるように前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る照明システムによれば、様々な年齢の人についてサーカディアンリズムの調整を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る照明システムの対象空間の構成を模式的に示す側面図である。
図2】実施の形態1に係る照明システムの制御系統の構成を示すブロック図である。
図3】人の目の光透過率の加齢による変化例を示す図である。
図4】実施の形態1に係る照明システムの動作の一例を示すフロー図である。
図5】実施の形態1に係る照明システムの変形例の構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態1に係る照明システムの変形例の構成を示すブロック図である。
図7】実施の形態1に係る照明システムの制御装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る照明システムを実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一又は相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化又は省略する。以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。なお、本開示は以下の実施の形態に限定されることなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施の形態の自由な組み合わせ、各実施の形態の任意の構成要素の変形、又は各実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【0010】
実施の形態1.
図1から図7を参照しながら、本開示の実施の形態1について説明する。図1は照明システムの対象空間の構成を模式的に示す側面図である。図2は照明システムの制御系統の構成を示すブロック図である。図3は人の目の光透過率の加齢による変化例を示す図である。図4は照明システムの動作の一例を示すフロー図である。図5及び図6は照明システムの変形例の構成を示すブロック図である。図7は照明システムの制御装置の機能を実現する構成の一例を示す図である。
【0011】
この実施の形態に係る照明システムは、図1に示すように、対象空間1内に設けられた個人用照明装置20を備えている。対象空間1は、例えば1つの部屋の内部空間である。対象空間1は、作業者3が作業するための空間である。対象空間は、例えば、会議室内の空間、作業室内の空間、オフィス内の空間のうちのいずれかでもよい。「作業」は、頭脳を主として使用する労働でもよいし、身体の動作を主として使用する労働でもよい。対象空間は、複数の作業者3が作業可能な空間である。それぞれの作業者3が座って作業する席は、個人作業空間2に相当する。図示の例では、個人作業空間2内には、作業者3が使用する机4がそれぞれ配置されている。
【0012】
対象空間1内で作業するそれぞれの作業者3の個人作業空間2に光を個別に照射する。図示の例では、それぞれの個人作業空間2に配置された作業者3の机4に個人用照明装置20がそれぞれ設置されている。個人用照明装置20は、それぞれの個人作業空間2に対応して個人作業空間2と同数設けられている。個人用照明装置20は、それぞれに対応する個人作業空間2内に光を照射する。
【0013】
個人用照明装置20は、個人作業空間2内に照射する光の色温度を変更可能である。すなわち、個人用照明装置20は、個人作業空間2内に第1色温度の光と第2色温度の光とを照射可能である。第2色温度は、第1色温度より高い色温度である。第1色温度は例えば3000K程度である。第2色温度は例えば6000K程度である。それぞれの個人用照明装置20は、対応する個人作業空間2内に照射する光の色温度を個別に変更可能である。
【0014】
個人用照明装置20は、第1色温度の光を発する第1光源21と、第2色温度の光を発する第2光源22とを備えている。第1光源21及び第2光源22は、例えばLED(発光ダイオード)である。個人用照明装置20は、第1光源21と第2光源22とを、互いに独立して点灯/消灯させることができる。なお、第2光源22が発する光の波長は、約490nmをピークとする分布を有することが望ましい。
【0015】
また、個人用照明装置20は、それぞれに対応した個人作業空間2内に照射する光の強度を個別に変更可能である。個人用照明装置20は、第1光源21及び第2光源22のそれぞれから照射する光の強度を互いに独立して変更可能である。これにより、個人用照明装置20は、照射する光の強度及び色温度を変更できる。
【0016】
図示の構成例では、対象空間1に係る部屋の天井面に全体用照明装置10が設けられている。全体用照明装置10は、対象空間1内の全体に光を照射可能である。全体用照明装置10は、例えば白色系の光を照射する。全体用照明装置10から照射される光の色温度は、例えば4000Kから5000K程度である。
【0017】
次に、図2も参照しながら、この実施の形態に係る照明システムの構成について説明を続ける。この実施の形態の照明システムは、制御装置30を備えている。制御装置30は、全体用照明装置10及び個人用照明装置20を制御する。
【0018】
制御装置30は、年齢特定部31、設定補正部32及び制御部33を備えている。年齢特定部31は、作業者3の年齢を特定する年齢特定手段である。制御装置30は、例えば、図示しない端末装置と通信可能である。端末装置は、例えば、作業者3の机4に設置されたパーソナルコンピュータ(PC)、作業者3が所持するスマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ等である。作業者3は、端末装置を用いて事前に自身の年齢情報を入力する。年齢情報は、当該作業者3の年齢そのものの情報であってもよいし、当該作業者3の眼科検診結果の情報であってもよい。端末装置に入力された年齢情報は、制御装置30が備える図示しない記憶部に記憶される。年齢特定部31は、記憶部に記憶されている年齢情報を取得する。そして、年齢特定部31は、取得した年齢情報に基づいて、作業者3の年齢を特定する。
【0019】
制御部33は、全体用照明装置10及び個人用照明装置20の動作を制御する。制御部33は、全体用照明装置10及び個人用照明装置20の動作を制御するための制御信号を生成する。生成された制御信号は、制御装置30から全体用照明装置10及び個人用照明装置20へと送信される。全体用照明装置10及び個人用照明装置20は、受信した制御信号に従って動作する。
【0020】
制御部33は、それぞれの個人用照明装置20の第1光源21及び第2光源22の点灯状態、照射する光の強度等を制御することで個人用照明装置20の動作を制御する。また、制御部33は、全体用照明装置10の光源の点灯状態等を制御することで全体用照明装置10の動作を制御する。
【0021】
この実施の形態に係る照明システムにおいては、制御部33は、個人作業空間2が照度設定値になるように個人用照明装置20を制御する。照度設定値は、等価メラノピック照度(EML:Equivalent Melanopic Lux)で設定される。照度設定値は、具体的に例えば275EMLとする。
【0022】
等価メラノピック照度とは、サーカディアンリズム(体内リズム)に影響を与える明るさを定量化したものである。等価メラノピック照度は、網膜上の内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC:Intrinsically Photosensitive Retinal Ganglion Cell)で感じる明るさ(光感度)に基づいて算出される。ipRGCは、受けた光刺激に応答して、眠気を誘発するメラトニンの分泌を抑制する。日中の時間帯では、ipRGCに適切な光刺激を与えてメラトニンの分泌を抑制することで、作業者3の覚醒度を上昇させ、当該作業者3のサーカディアンリズムを整えることができる。
【0023】
ipRGCの光感度は、光の波長によって異なる。ipRGCの光感度は、波長約490nmの光に対して最も高い。波長490nmの光に対するipRGCの光感度を1.00とすると、490nmより短い波長の光に対するipRGCの光感度は、波長460nmで約0.71、波長430nmでは約0.25、波長400nmで約0.01となる。また、490nmより長い波長の光に対するipRGCの光感度は、波長520nmで約0.70、波長550nmで約0.22、波長580nmで約0.03となる。このため、前述したように、第2光源22が発する光の波長が、約490nmをピークとする分布を有するようにすることで、効率よく等価メラノピック照度を得ることができる。
【0024】
設定補正部32は、年齢特定部31が特定した作業者3の年齢に応じて照度設定値を補正する。図3に示すのは、人の眼の光透過率である。同図に示されるように、人の眼の光透過率は、加齢とともに低下していく。作業者3の年齢に対応する光透過率に応じて、照度設定値を補正する。光透過率は、光の波長によっても異なる。前述したように、ipRGCの光感度は、波長490nmの光に対して最も高いことから、照度設定値を補正する際に用いる光透過率は波長490nmの光に対するものとするとよい。
【0025】
具体的に例えば、特定された作業者3の年齢が60歳である場合、波長490nmの光に対する光透過率は、図3から0.5程度である。22歳の波長490nmの光に対する光透過率は0.7程度であるから、設定補正部32は、60歳の作業者3についての補正係数を、0.7/0.5=1.4とする。そして、設定補正部32は、照度設定値に補正係数を乗じて、照度設定値を補正する。この例では、設定補正部32は、照度設定値275EMLに補正係数1.4を乗じた値385EMLを補正後の照度設定値とする。年齢ごとの補正係数は、例えば、制御装置30が備える前述の記憶部に予め記憶されている。設定補正部32は、この記憶部から年齢に対応する補正係数を取得して用いる。
【0026】
制御部33は、個人作業空間2が設定補正部32により補正された後の照度設定値となるように個人用照明装置20が照射する光の強度及び色温度を変更する。このようにすることで、作業者3の年齢に応じてipRGCに適切な光刺激を与えることができ、作業者3の年齢に関わらず適切なメラトニン分泌抑制を促すことが可能である。したがって、作業者3の年齢によらずに、作業者3のサーカディアンリズムの調整、作業性向上等を図ることができる。
【0027】
ここで、等価メラノピック照度に用いるipRGCの光感度の波長特性は、通常の照度で想定している錐体細胞の光感度の波長特性と異なっている。このため、等価メラノピック照度で設定された照度設定値を実現するために個人用照明装置20が照射する光の強度のみを調整すると、通常の照度としては過度に大きくなり、作業者3が眩しさを感じたり、逆に、通常の照度としては過度に小さくなり、作業者3が作業をし難くなったりするおそれがある。
【0028】
この実施の形態に係る照明システムによれば、このような場合であっても、個人用照明装置20が照射する光の色温度を併せて変更することで、所望の等価メラノトピック照度を実現できる。例えば、個人作業空間2の照度が基準値以上となる場合には、個人用照明装置20が照射する光の強度は変化させずに、色温度のみを変化させることで所望の等価メラノトピック照度を実現する。具体例を挙げると、個人作業空間2の照度が500lx、色温度が4000Kの環境において、照度設定値が275EMLである状態から、作業者3の交代等により補正後の照度設定値が550EMLになった場合、照度が1000lxに上げるのでなく、色温度を12000Kに上げることで、補正後の照度設定値である550EMLを実現できる。
【0029】
次に、以上のように構成された照明システムの動作例について、図4のフロー図を参照しながら説明する。照明システムの動作が開始すると、ステップS11において、制御装置30の年齢特定部31は、作業者3の年齢情報を取得する。そして、年齢特定部31は、取得した年齢情報に基づいて、作業者3の年齢を特定する。続くステップS12において、設定補正部32は、ステップS11で特定した作業者3の年齢から、補正係数を算出する。ステップS12の後、制御装置30は次にステップS13の処理を行う。
【0030】
ステップS13においては、設定補正部32は、ステップS12で算出した補正係数を照度設定値に乗じることで、補正後の照度設定値を決定する。そして、制御部33は、補正後の照度設定値に基づいて、個人用照明装置20の出力値、すなわち、第1光源21及び第2光源22のそれぞれが照射する光の強度を決定する。ステップS13の後、制御装置30は次にステップS14の処理を行う。
【0031】
ステップS14においては、制御部33は、ステップS13で決定した出力値で、第1光源21及び第2光源22のそれぞれから光が照射されるように、制御信号を個人用照明装置20に送信する。個人用照明装置20は受信した制御信号に従って、第1光源21及び第2光源22のそれぞれから光を照射する。ステップS14の処理が終了すれば、一連の動作は終了する。
【0032】
なお、補正後の照度設定値に上限値を設けてもよい。例えば、照度設定値が275EMLである場合、補正後の照度設定値に上限値は、照度設定値の10倍の2750EMLとする。この場合、設定補正部32は、補正係数が10以上になった場合には補正係数を10にする。このようにすることで、光の照度が高くなり過ぎて作業者3が眩しさを感じたり、特定の個人照明装置0から照射される光の照度が高くなり過ぎて周囲に影響を与えたりすることを抑制できる。
【0033】
次に、この実施の形態に係る照明システムの変形例について説明する。制御装置30は、対象空間1内における個人用照明装置20の位置にさらに応じて個人用照明装置20が照射する光の強度及び色温度を変更してもよい。対象空間1内における個人用照明装置20の位置は、具体的に例えば、対象空間1に窓がある場合には、個人用照明装置20が照らす個人作業空間2の窓からの距離であってもよい。また、他に例えば、対象空間1内における個人用照明装置20の位置は、個人用照明装置20が照らす個人作業空間2の、全体用照明装置10からの距離であってもよい。
【0034】
この場合、例えば、制御装置30の制御部33は、個人作業空間2が窓又は全体用照明装置10に近いほど、個人用照明装置20が照射する光の強度を低くする。また逆に、制御部33は、個人作業空間2が窓又は全体用照明装置10から遠いほど、個人用照明装置20が照射する光の強度を高くする。このようにすることで、個人用照明装置20から照射する光以外の環境光の影響を考慮して、個人作業空間2を所望の等価メラノトピック照度に調整できる。また、必要以上に光を照射しないことにより、消費エネルギー量の低減、及び、目の疲れの抑制を図ることができる。
【0035】
なお、図5に示すように、照明システムは照度センサ41をさらに備えてもよい。照度センサ41は、個人作業空間2の照度を検出する照度検出手段である。そして、制御装置30制御部33は、照度センサ41により検出された個人作業空間2の照度にさらに応じて、個人用照明装置20が照射する光の強度及び色温度を変更してもよい。
【0036】
この場合、例えば、制御装置30の制御部33は、個人作業空間2の照度が高いほど、個人用照明装置20が照射する光の強度を低くする。また逆に、制御部33は、個人作業空間2の照度が低いほど、個人用照明装置20が照射する光の強度を高くする。このようにすることでも、個人用照明装置20から照射する光以外の環境光の影響を考慮して、個人作業空間2を所望の等価メラノトピック照度に調整できる。また、必要以上に光を照射しないことにより、消費エネルギー量の低減、及び、目の疲れの抑制を図ることができる。また、照度検出手段として、全体用照明装置10の出力値から、全体用照明装置10から照射された光の個人作業空間2における照度を推定するようにしてもよい。
【0037】
他の変形例として、制御装置30の制御部33は、1日における時間帯にさらに応じて個人用照明装置20が照射する光の強度及び色温度を変更してもよい。例えば、9時から15時等の日中の時間帯では、制御部33は、個人用照明装置20が照射する光の強度を高くし、あるいは、色温度を高くする。昼食後の13時前後であれば、眠気を抑制するために照度設定値自体を高くしてもよい。また、15時から21時等の夕方から夜間にかけての時間帯では、制御部33は、個人用照明装置20が照射する光の強度を低くし、あるいは、色温度を低くする。夜間の時間帯においては、照度設定値自体を低くしてもよい。
【0038】
他の変形例として、図6に示すように、照明システムは生体情報センサ42をさらに備えてもよい。生体情報センサ42には、例えば、以下のようなセンサが含まれ得る。
・対象空間1内の表面温度を検出する表面温度センサ
・対象空間1内の可視画像を撮影するカメラ
・準ミリ波・ミリ波レーダー応用センサ
・脳波センサ
・心拍センサ
【0039】
生体情報センサ42が、対象空間1内の被検出体の表面温度を検出する表面温度センサである場合、表面温度センサは、対象空間1内の作業者3の生体情報として、作業者3の表面温度を検出する。表面温度センサは、作業空間内の被検出体の表面温度を周期的に検出する。表面温度センサは、例えば、図示しない複数のサーモパイルを有する赤外線センサを備えた構成でもよい。表面温度センサは、この赤外線センサを回転駆動することで温度検出範囲を走査し、赤外線センサの出力を用いて温度検出範囲の熱画像データを生成してもよい。温度検出範囲内の被検出体には、例えば、作業者3の人体、床面、及び、壁面が含まれ得る。表面温度センサを用いることにより、作業空間内における作業者3の有無を判定することができるとともに、作業空間内に作業者3が存在する場合には作業者3の位置の特定及び作業者3の体の表面温度の検出が可能となる。表面温度センサは、対象空間1にいる複数の作業者3のそれぞれを検出可能である。
【0040】
表面温度センサは、サーモパイルに代えて、SOI(Silicon on Insulator)ダイオード方式の非冷却赤外線イメージセンサを備えていてもよい。SOIダイオード方式の場合、センサ部にシリコンダイオードを使用しているため、シリコン半導体ラインのみで製造可能であり、生産コストが安いというメリットがある。
【0041】
表面温度センサは、このような構成により、前述した対象範囲内を走査して当該範囲内の表面温度分布を非接触で取得する。表面温度センサの検出結果、すなわち、表面温度センサにより取得した表面温度分布データを、後述する制御装置30等で処理することで、例えば背景との温度差から、室内における人(作業者3)を含む熱源の有無及びその位置、人体の表面皮膚温度、人の身体の部位(肌の露出部と非露出部、頭部等)等を検出することができる。
【0042】
また、表面温度センサの検出結果に基づいて、室内の人の体感温度も得ることができる。この場合、肌を露出している人体ほど体感温度を検出しやすい。さらに、表面温度センサにより取得した表面温度分布データを、後述する制御装置30等で処理することで、対象空間1内の作業者3の人数も検出できる。さらに、対象空間1内の作業者3の人数の変化から、対象空間1への作業者3の入退出も検知できる。
【0043】
この変形例では、制御装置30は、作業性推定部34をさらに備えている。作業性推定部34は、生体情報センサ42により取得された生体情報に基づいて、作業者3の作業性を推定する。作業者3の労働の能率は、その作業者3個人の現在の体調、眠気の度合い、覚醒の度合い、疲労の度合い、リラックスの度合い、ストレスの度合い等に応じて変化する。「作業性」とは、その作業者3個人としての最高能率に対する、その作業者3個人の現在の能率の割合に相当する。作業性は生産性と言い換えることもできる。作業者3の作業性が高いことは、当該作業者3の現在の能率が当該作業者3の最高能率に近いことに相当する。作業者3の作業性が低いことは、当該作業者3の現在の能率が当該作業者3の最高能率に比べて低下していることに相当する。
【0044】
作業性推定部34は、生体情報センサ42を用いて得られた作業者3の生体情報に基づいて、当該作業者3の作業性の指標となる数値(以下、「作業性の値」と称する)を計算してもよい。例えば、作業者3個人の作業性が最高であるときの作業性の値を100とした場合、作業性推定部34は、生体情報センサ42を用いて得られた作業者3の生体情報に基づいて1よりも小さい補正係数を算出し、当該補正係数を100に乗じることによって当該作業者3の作業性の値を算出してもよい。
【0045】
生体情報センサ42により、作業者3の皮膚温度、心拍、眼球の動き、まぶたの動き、及び、まぶたの開度のうちの少なくとも1つを生体情報として検出するとよい。このような生体情報を用いることで、作業性を精度良く検知及び判定することが可能となる。作業性推定部34は、例えば、作業者3の生体情報に基づいて、当該作業者3の眠気レベル、覚醒レベル、疲労レベル、リラックスレベル及びストレスレベルのうちの1又は2以上のレベルを推定し、その推定結果に基づいて当該作業者3の作業性の値を算出してもよい。例えば、作業性推定部34は、眠気レベルが高いほど作業性の値が低くなるように算出してもよいし、覚醒レベルが高いほど作業性の値が高くなるように算出してもよい。また、作業性推定部34は、例えば、疲労レベルが高いほど作業性の値が低くなるように算出してもよいし、リラックスレベルが高いほど作業性の値が高くなるように算出してもよいし、ストレスレベルが高いほど作業性の値が低くなるように算出してもよい。作業者3の生体情報に基づいて以上のようなレベルを推定するための基準値は、例えば、制御装置30の記憶部に予め格納されていてもよい。
【0046】
生体情報センサ42にカメラが含まれる場合、作業性推定部34は、カメラにより撮影された作業者3の顔の画像に対して画像認識処理をすることで、作業者3の眼球の動き、まぶたの動き及びまぶたの開度のうちの少なくとも1つを検出し、その検出結果に基づいて作業性を判定してもよい。例えば、眠気レベルが高いと、時間当たりの瞬目の回数が低下する。そこで、作業性推定部34は、カメラにより取得された作業者3のまぶたの動きから時間当たりの瞬目の回数を算出し、当該回数に基づいて作業者3の眠気レベルを推定してもよい。また、瞬目の時間間隔が一定で維持されている場合、作業性推定部34は、作業者3が作業に集中、熱中、没頭しており作業性が高いと判定してもよい。
【0047】
眠気レベルが高いと、まぶたの開度が低下する。そこで、作業性推定部34は、カメラにより取得された作業者3のまぶたの開度に基づいて作業者3の眠気レベルを推定してもよい。また、眠気レベルが高いと、額の皮膚温度と鼻の皮膚温度との温度差が大きくなる。生体情報センサ42に表面温度センサが含まれる場合、作業性推定部34は、表面温度センサを用いて取得された作業者3の顔の熱画像から作業者3の額の皮膚温度と鼻の皮膚温度との温度差を検出し、当該温度差に基づいて作業者3の眠気レベルを推定してもよい。
【0048】
さらに、作業性推定部34は、表面温度センサの検出結果から体感温度を算出し、集中度を推定してもよい。作業性推定部34は、カメラにより撮影された画像を用いて作業者3の顔面の色度解析により血流量を推定し、この推定した血流量から集中度を推定してもよい。また、生体情報センサ42に脳波センサが含まれる場合、作業性推定部34は、作業者3の脳波から当該作業者3の眠気レベル、覚醒レベル、リラックスレベル等を推定して集中度を推定してもよい。
【0049】
生体情報センサ42に準ミリ波・ミリ波レーダー応用センサが含まれる場合、当該生体情報センサ42により、例えば、作業者3の体動、呼吸数、心拍、血流のうちの少なくとも1つを生体情報として取得可能である。また、生体情報センサ42に心拍センサが含まれる場合も、作業者3の心拍を生体情報として取得できる。作業性推定部34は、そのようにして検出された心拍変動に基づいて、高周波変動成分であるHF成分と、低周波変動成分であるLF成分とを抽出し、HF成分の数値と、LF/HFの数値との少なくとも一方を用いて作業者3の緊張又はリラックスの状態を推定してもよい。例えば、自律神経におけるリラックス指標であるHF成分が多いほど、作業者3のリラックスレベルが高いと推定してもよい。また、LF/HFの値が小さいほど作業者3のリラックスレベルが高いと推定してもよい。また、LF/HFの値が大きいほど作業者3のストレスレベルが高いと推定してもよい。
【0050】
そして、制御装置30の制御部33は、推定した作業性に応じて個人用照明装置20が照射する光の強度及び色温度を変更してもよい。制御装置30の制御部33は、作業者3の作業性が低下した場合に、個人用照明装置20が照射する光の強度を高くし、あるいは、色温度を高くする。また、制御部33は、作業者3の作業性が低下した場合に照度設定値自体を高くしてもよい。このようにすることで、作業者3のメラトニン分泌を抑制させて覚醒度を上昇させることができる。
【0051】
図6に示すように、照明システムの制御装置30は個人識別部35をさらに備えてもよい。個人識別部35は、生体情報センサ42には、例えば、以下のようなセンサが含まれ得る。作業者3の個人を識別する個人識別手段である。例えば、対象空間1が個人毎の入退室管理がなされた部屋等である場合、管理された各個人の入退室履歴等を用いることで、対象空間1内にいる作業者3の個人を識別できる。また、作業者3の個人毎に作業する座席が予め決められている場合、作業者3の位置を検出し、当該作業者3がいる座席を特定することで、作業者3の個人を識別できる。作業者3の位置の検出は、例えば、前述した表面温度センサの検出結果、又は、カメラによる撮影画像等を用いて行うことができる。さらに、生体情報センサ42による検出結果を用いて、作業者3の個人を識別することもできる。例えば、作業者3の瞳をカメラ等で撮影する場合、作業者3の虹彩を用いて作業者3の個人を識別可能である。
【0052】
そして、この変形例においては、制御部33は、個人識別手段により識別された個人にさらに応じて、個人用照明装置20が照射する光の強度及び色温度を変更してもよい。この場合、制御部33は、個人用照明装置20が照射する光の強度及び色温度を、識別された個人の嗜好に応じたものに決定する。個人毎の嗜好に応じた個人用照明装置20が照射する光の強度及び色温度については、例えば、制御装置30の前述した記憶部に予め登録しておくことが考えられる。あるいは、補正後の照度設定値で個人用照明装置20を制御した後に、作業者3がどう感じるか(暗い、明るい等)についてアンケートを実施して、個人毎の嗜好を調査してもよい。さらに、予め設定された光の強度及び色温度の組み合わせついて、一定時間毎に順に試した後、作業者3がどう感じるかについてアンケートを実施して、個人毎の嗜好を調査してもよい。また、制御部33は、等価メラノトピック照度の時間積算値、あるいは、作業時間等に基づいて作業者3の眼の疲労度を推定し、個人用照明装置20が照射する光の強度及び色温度を調整してもよい。
【0053】
制御装置30が個人識別部35を有する場合、年齢特定部31は、個人識別部35による個人識別結果を用いて、作業者3の年齢を特定してもよい。また、照明システムが生体情報センサ42を有する場合には、年齢特定部31は、生体情報センサ42による検出結果を用いて作業者3の年齢を特定してもよい。
【0054】
図7は、この実施の形態における制御装置30の機能を実現する構成の一例を示す図である。制御装置30の機能は、例えば、処理回路により実現される。処理回路は、プロセッサ101及びメモリ102を備えていてもよい。処理回路は、専用ハードウェア103であってもよい。処理回路の一部が専用ハードウェア103として形成され、かつ、当該処理回路はさらにプロセッサ101及びメモリ102を備えていてもよい。同図に示す例においては、処理回路の一部は専用ハードウェア103として形成されている。また、同図に示す例において、処理回路は、プロセッサ101及びメモリ102をさらに備えている。
【0055】
一部が少なくとも1つの専用ハードウェア103である処理回路には、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路が少なくとも1つのプロセッサ101及び少なくとも1つのメモリ102を備える場合、制御装置30の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
【0056】
ソフトウェア及びファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ102に格納される。プロセッサ101は、メモリ102に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータあるいはDSPともいう。メモリ102には、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM及びEEPROM等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリ、又は磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク及びDVD等が該当する。
【0057】
このようにして、制御装置30の処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、制御装置30の各機能を実現することができる。制御装置30の処理回路が少なくともプロセッサ101及びメモリ102を備える場合、制御装置30においてメモリ102に記憶されたプログラムをプロセッサ101が実行し、制御装置30のハードウェアとソフトウェアとが協働することによって、制御装置30が備える各部の機能が実現される。なお、個人用照明装置20及び全体用照明装置10は、単一の制御装置30により動作が制御される構成に限定されるものではない。個人用照明装置20及び全体用照明装置10は、複数の装置が連携することで動作を制御されてもよい。
【0058】
なお、本開示においては、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態を任意に組み合わせてもよい。以下に、本開示の諸態様の例を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
対象空間内で作業する作業者の個人作業空間に光を照射する個人用照明装置と、
前記作業者の年齢を特定する年齢特定手段と、
前記個人作業空間が照度設定値になるように、前記個人用照明装置を制御する制御装置と、を備え、
前記個人用照明装置は、照射する光の強度及び色温度を変更可能であり、
前記照度設定値は、等価メラノピック照度であり、
前記制御装置は、前記作業者の年齢に応じて前記照度設定値を補正し、前記個人作業空間が補正後の前記照度設定値となるように前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する照明システム。
(付記2)
前記作業者の個人を識別する個人識別手段をさらに備え、
前記制御装置は、識別された前記作業者の個人に応じて前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する付記1に記載の照明システム。
(付記3)
前記制御装置は、前記対象空間内における前記個人用照明装置の位置に応じて前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する付記1又は付記2に記載の照明システム。
(付記4)
前記個人作業空間の照度を検出する照度検出手段をさらに備え、
前記制御装置は、前記個人作業空間の照度に応じて前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する付記1から付記3のいずれか一項に記載の照明システム。
(付記5)
前記制御装置は、1日における時間帯に応じて前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する付記1から付記4のいずれか一項に記載の照明システム。
(付記6)
前記作業者の生体情報を取得する生体情報取得手段をさらに備え、
前記制御装置は、前記作業者の生体情報に基づいて前記作業者の作業性を推定し、前記作業者の作業性に応じて、前記個人用照明装置が照射する光の強度及び色温度を変更する付記1から付記5のいずれか一項に記載の照明システム。
【符号の説明】
【0059】
1 対象空間
2 個人作業空間
3 作業者
4 机
10 全体用照明装置
20 個人用照明装置
21 第1光源
22 第2光源
30 制御装置
31 年齢特定部
32 設定補正部
33 制御部
34 作業性推定部
35 個人識別部
41 照度センサ
42 生体情報センサ
101 プロセッサ
102 メモリ
103 専用ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7