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特開2024-81446バイオガス発生装置およびバイオガス発電システム
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  • 特開-バイオガス発生装置およびバイオガス発電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081446
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】バイオガス発生装置およびバイオガス発電システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20240611BHJP
   B09B 3/65 20220101ALI20240611BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240611BHJP
   B09B 101/70 20220101ALN20240611BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
B09B3/65
B09B5/00 P
B09B101:70
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195086
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】320005431
【氏名又は名称】Daigasエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505404530
【氏名又は名称】株式会社ダイキアクシス
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 謙三
(72)【発明者】
【氏名】藤本 卓也
(72)【発明者】
【氏名】西野 優希
(72)【発明者】
【氏名】大隅 省二郎
(72)【発明者】
【氏名】岸田 勇希
(72)【発明者】
【氏名】北村 一貴
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 純一郎
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004BA03
4D004CA13
4D004CA18
4D004DA01
4D004DA07
4D059AA07
4D059BA12
4D059BA21
4D059BE01
4D059BE51
4D059BK11
4D059CA21
4D059CA28
4D059EA08
4D059EA20
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】メンテナンスを容易に行うことのできるバイオガス発電システムを提供する。
【解決手段】バイオガス発電装置(2)は、ディスポーザ(10)を経由して送り込まれる原水を貯留する原水タンク(3)と、原水タンクから第1経路(11)を介して送り込まれる原水を固形分と液分とに分離する固液分離槽(4)と、固液分離槽から供給される固形分を発酵させてバイオガスを生成するバイオガス発生槽(5)と、固液分離槽から排出される液分を排水可能に処理する排水処理槽(6)と、第1経路から分岐して、原水タンクからの原水を前記排水処理槽に導く第2経路(12)と、第1経路と第2経路とを選択的に切り替える切替手段(7)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスポーザを経由して送り込まれる原水を貯留する原水タンクと、
前記原水タンクから第1経路を介して送り込まれる原水を固形分と液分とに分離する固液分離槽と、
前記固液分離槽から供給される固形分を発酵させてバイオガスを生成するバイオガス発生槽と、
前記固液分離槽から排出される液分を排水可能に処理する排水処理槽と、
前記第1経路から分岐して、前記原水タンクからの原水を前記排水処理槽に導く第2経路と、
前記第1経路と第2経路とを選択的に切り替える切替手段とを備える、バイオガス発生装置。
【請求項2】
前記第1経路を介して前記固液分離槽に送り込まれる原水が所定量を超えたことに応じて、前記所定量を超える部分を前記固液分離槽を経由することなく前記排水処理槽に導くオーバーフロー経路をさらに備える、請求項1に記載のバイオガス発生装置。
【請求項3】
前記排水処理槽に残った固形分を前記固液分離槽に導く返送経路をさらに備える、請求項1に記載のバイオガス発生装置。
【請求項4】
前記固液分離槽または前記バイオガス発生槽の動作異常を検出する手段と、
前記動作異常の検出に応じて、前記第1経路を前記第2経路に切り替える制御手段とをさらに備える、請求項1に記載のバイオガス発生装置。
【請求項5】
前記バイオガス発生槽内のガス圧が所定閾値を超えたことを検出する手段と、
前記ガス圧が所定閾値を超えたことに応じて、前記第1経路を前記第2経路に切り替える制御手段とをさらに備える、請求項1に記載のバイオガス発生装置。
【請求項6】
請求項1~5に記載のバイオガス発生装置で発生したバイオガスを利用して発電を行うバイオガス発電装置を備える、バイオガス発電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ディスポーザ排水を利用するバイオガス発生装置と、それを備えるバイオガス発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9-290241号公報(特許文献1)には、ディスポーザ排水に含まれる生ごみを排水処理機構で処理する生ごみ処理システムが開示されている。生ごみ処理システムは、ディスポーザと排水処理機構との間に切替弁を有しており、排水処理機構のメンテナンス時は流路を切替えて、排水を汚水処理装置に送り込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-290241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、排水処理機構のメンテナンスを行う際、一旦ディスポーザの作動を停止して、台所用水(生ごみなどの有機物を含まない排水)を排水していた。すなわち、メンテナンス中において、使用者はディスポーザ排水(生ごみなどの有機物を含む排水)を処理することができなかった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的はディスポーザの作動を停止することなく、メンテナンスを容易に行うことのできるバイオガス発電装置およびそれを備える発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るバイオガス発生装置によれば、ディスポーザを経由して送り込まれる原水を貯留する原水タンクと、原水タンクから第1経路を介して送り込まれる原水を固形分と液分とに分離する固液分離槽と、固液分離槽から供給される固形分を発酵させてバイオガスを生成するバイオガス発生槽と、固液分離槽から排出される液分を排水可能に処理する排水処理槽と、第1経路から分岐して、原水タンクからの原水を排水処理槽に導く第2経路と、第1経路と第2経路とを選択的に切り替える切替手段とを備える。
【0007】
好ましくは、第1経路を介して固液分離槽に送り込まれる原水が所定量を超えたことに応じて、所定量を超える部分を固液分離槽を経由することなく排水処理槽に導くオーバーフロー経路をさらに備える。
【0008】
好ましくは、排水処理槽に残った固形分を固液分離槽に導く返送経路をさらに備える。
【0009】
好ましくは、固液分離槽またはバイオガス発生槽の動作異常を検出する手段と、動作異常の検出に応じて、第1経路を第2経路に切り替える制御手段とをさらに備える。
【0010】
好ましくは、バイオガス発生槽内のガス圧が所定閾値を超えたことを検出する手段と、ガス圧が所定閾値を超えたことに応じて、第1経路を第2経路に切り替える制御手段とをさらに備える。
【0011】
本発明の別の態様に係るバイオガス発電システムによれば、本発明の一態様に係るバイオガス発生装置で発生したバイオガスを利用して発電を行うバイオガス発電装置を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メンテナンスを容易に行うことのできるバイオガス発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るバイオガス発電システムの概要を示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係るバイオガス発電システムの制御手段を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係るバイオガス発電システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0015】
図1を参照して、本実施の形態に係るバイオガス発電システム1(以下の説明において、単に「システム」ともいう)について説明する。
【0016】
本実施の形態に係るバイオガス発電システム1は、たとえば集合住宅に備えられる。システム1は、バイオガス発生装置2で生成されたバイオガスを利用して、バイオガス発電装置9で発電を行う。発電により得られた電気は、たとえば集合住宅の電力源の一部として用いられる。
【0017】
本実施の形態に係るバイオガス発生装置2は、ディスポーザ10を経由して送り込まれる原水を貯留する原水タンク3と、原水タンク3から第1経路11を介して送り込まれる原水を固形分と液分とに分離する固液分離槽4と、固液分離槽4から供給される固形分を発酵させてバイオガスを生成するバイオガス発生槽5と、固液分離槽4から排出される液分を排水可能に処理する排水処理槽6と、第1経路11から分岐して、原水タンク3からの原水を排水処理槽6に導く第2経路12と、第1経路11と第2経路12とを選択的に切り替える切替手段7とを備える。
【0018】
原水タンク3は、集合住宅の各戸に設けられたディスポーザ10から供給される野菜かすなどの食品系廃棄物を含むディスポーザ排水、すなわち有機物を貯留する。集合住宅は、時間帯によって有機物の発生にばらつきが生じ易い。そこで、原水タンク3に一旦貯留することとした。これにより、本実施の形態に係るバイオガス発生装置2は、時間帯によらないでバイオガス発生槽5へ有機物を供給することができる。貯留された有機物は、第1経路11を介して後述する固液分離槽4へ供給される。
【0019】
第1経路11は、原水タンク3と固液分離槽4とを接続する経路である。ディスポーザ排水の原水は、有機物を含む固形分に比して液分が非常に多い。すなわち液分は不要であり、本実施の形態のシステム1は、原水タンク3に貯留された原水をバイオガス発生槽5へ送り込む前に、固液分離槽4で固形分と液分とに分離する。分離された固形分は、固形分供給路15を介してバイオガス発生槽5に供給される。分離された液分は、液分排水路16を介して第2経路12と接続し、排水処理槽6へ送り出される。したがって、固液分離槽4は、バイオガス発生槽5で利用する有機物を効率よく集めて供給することができる。
【0020】
第2経路12は、第1経路11上の分岐点と排水処理槽6とを接続する経路である。第2経路12は、たとえば第1経路11からバイオガス発生槽5の間でメンテナンスが必要になった場合、もしくはバイオガスを発生する必要がない場合など、原水を第1経路に供給する必要がない場合に原水を排水処理槽6へ送り込む目的で使用される。
【0021】
また、本実施の形態の固液分離槽4は、分離フィルタの目詰まりを検知する観点から、固液分離槽4内の圧力を検知する液圧センサ40が設けられている。これにより、バイオガス発生装置2のメンテナンスの要否を容易に知ることができる。
【0022】
バイオガス発生槽5は、固形分供給路15を介して供給される有機物を発酵させてバイオガス発電装置9で利用するガスを生成するための槽である。バイオガス発生槽5は、典型的には1以上のメタン菌を含む発酵液が貯留されている「メタン発酵槽5」である。メタン菌は、嫌気発酵によりメタンガスを生成する。また、活性化しやすい温度帯によって低温性メタン菌(30℃未満)、中温性メタン菌(30~45℃)、高温性メタン菌(45℃を超える温度)に分別される。本実施の形態では、中温性メタン菌を使用し、特に40~45℃、好ましくは40~42℃の温度帯で活性化する中温性メタン菌を主に使用した。この温度帯のメタン菌は、それよりも低い温度帯のメタン菌よりもメタン発酵速度が速く、それよりも高い温度帯のメタン菌よりも発酵阻害が起こりにくいという利点がある。
【0023】
本実施の形態のバイオガス発生槽5は、槽5内の水位上昇を検知する水位センサ50と、槽5内のバイオガス量の増加を検知するガス圧センサ51とを含む。これにより、バイオガス発生槽5内の異常を検知したり、バイオガスの原料供給過多を検知することができる。これにより、バイオガス発生装置2のメンテナンスの要否を容易に知ることができる。
【0024】
バイオガス発生槽5内のメタン菌が生成したメタンガスは、バイオガス発生槽5の上方領域に設けられたバイオガス導入路17を介してバイオガス発電装置9へ送り出される。
【0025】
なお、バイオガス導入路17上には、バイオガス発生槽5で生成されたメタンガスを貯留することのできるガスホルダ(図示せず)が設けられてもよい。
【0026】
排水処理槽6は、バイオガス発生槽5で発生した消化液(メタン発酵後の液分)を消化液排水路18を介して受け入れる経路と、原水タンク3に貯留された原水や液分排水路16を介して集められた排水を第2経路12を介して受け入れる経路とから収集された不要な液分を処理する。一般的に、排水処理を行った結果生じる汚泥は、引き抜いて外部で廃棄処理を行う。しかしながら本実施の形態では、排水処理槽6に残った汚泥(固形分)は、固液分離槽4に導く返送経路14を経由して送り戻す。これにより、固形分の外部処理量を減らすことができる。なお、処理された液分は下水として外部へ排水される。
【0027】
切替手段7は、原水タンク3と固液分離槽4とを接続する第1経路11と、原水タンク3と排水処理槽6とを接続する第2経路12とを選択的に切り替える。切替手段7は、たとえばバルブや三方弁などであり、各経路11,12上に設けられてもよいし、各経路11,12の分岐点に設けられてもよい。なお、切替手段7の制御手段8の詳細については、後述する。
【0028】
切替手段7の上流側には、ポンプPが設けられている。これにより、所望の流路へ向けて原水を送り出すことができる。
【0029】
本実施の形態のバイオガス発生装置2は、第1経路11を介して固液分離槽4に送り込まれる原水が所定量を超えたことに応じて、所定量を超える部分を固液分離槽4を経由することなく排水処理槽6に導くオーバーフロー経路13を備える。オーバーフロー経路13は、第1経路11と固液分離槽4との接続部よりも鉛直方向上方に位置する。オーバーフロー経路13に原水が流入したことを検知するため、本実施の形態ではオーバーフロー経路13内に流量センサ130が配置されている。
【0030】
オーバーフロー経路13は、固液分離槽4に供給される原水の供給過多により原水が逆流するなどのトラブルを防止するための安全経路である。オーバーフロー経路13に原水が流入した後、切替手段7は直ちに原水の流れる経路を第1経路11から第2経路12へ切り替えることが望ましい。
【0031】
本実施の形態に係るバイオガス発電システム1は、第1経路11と第2経路12とを切り替える切替手段7を備える。これにより、第1経路11上にあるシステムに不具合が見られた場合であっても、流路を第2経路12に切り替えるだけで、集合住宅の各家庭に備え付けられたディスポーザ10の稼働を停止させることなくメンテナンスを行うことができる。
【0032】
なお、本実施の形態のシステム1は、空気を所定領域に送り込むブロア(図示せず)を設けることができる。ブロアは、排水処理槽6内の発酵を促進するために設けたり、固液分離槽4の目詰まり防止のために設けることが可能である。
【0033】
(制御手段について)
次に、図2を参照して、本実施の形態のバイオガス発電システム1の制御手段8について説明する。図2は、本実施の形態のバイオガス発電システムの制御手段を示すブロック図である。
【0034】
制御手段8は、固液分離槽4またはバイオガス発生槽5の動作異常を検出する手段80と、バイオガス発生槽5内のガス圧が所定閾値を超えたことを検出する手段81と、動作異常の検出あるいはガス圧上昇の検出に応じて、第1経路から第2経路に切替指示する手段82とを備える。
【0035】
動作異常検知手段80は、オーバーフロー経路13の流量センサ130が水の流れを検知したことに応じて、異常を検知する。この場合、原水の供給過多か、固液分離槽4内のフィルタに目詰まりが生じたか、固形分供給路15の管路詰まりが考えられる。
【0036】
また、動作異常検知手段80は、固液分離槽4の液圧センサ40が第1閾値以上を示すことに応じて、異常を検知する。この場合、固液分離槽4内のフィルタに目詰まりが生じたか、固形分供給路15の管路詰まりが考えられる。
【0037】
さらに、動作異常検知手段80は、バイオガス発生槽5内の水位センサ50が第2閾値以上を示すことに応じて、異常を検知する。この場合、バイオガス発生槽内における発酵がうまくいっていないか、消化液排水路18の管路詰まりが考えられる。
【0038】
このように、本実施の形態のシステム1は、手段80により動作異常を検知することで、システム1の不具合を早期に発見し、メンテナンスを行うことができる。
【0039】
ガス圧検知手段81は、バイオガス発生槽5内のガス圧センサ51が第3閾値以上を示すことに応じて、バイオガスの過剰生成(原料の供給過多)を検知する。この場合、これ以上バイオガスを生成してしまうと不要なバイオガスの燃焼作業が必要になり、環境に悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、ガス圧検知手段81は、バイオガスの生成を停止するために流路を切り替えるよう指示する。
【0040】
流路切替指示手段82は、動作異常検知手段80、ガス圧検知手段81のうち少なくともいずれか一方の検知結果に基づいて、原水の流れる経路を選択する。選択内容に基づいて、切替手段7に指示を送る。
【0041】
切替手段7は、流路切替指示手段82から送られる指示に応じて、第1経路11と第2経路12とを選択的に切り替える。
【0042】
なお、制御手段8は、動作異常検知手段80が異常を検知した際に、流路切替指示手段82へ指示を送ると同時に、外部へ報知する報知手段(図示せず)を備えることもできる。これにより、作業者は手動で流路を切り替えることもできる。
【0043】
(制御手段の動作について)
〈システム立ち上げ時について〉
本実施の形態のシステム1の立ち上げ時は、第2経路12を選択して稼働させる。ディスポーザ排水は水分が多く、バイオガス発生槽5内のメタン菌濃度が十分に高まっていないうちに菌体の一部を排出してしまうと、システムの立ち上げに時間がかかってしまう。そのため、本実施の形態では、システム1の立ち上げ後、数日間(たとえば7~30日程度)はバイオガス発生槽5内へ原水を流入させないで発酵を促進させることとした。なお、バイオガス発生槽5内のメタン菌濃度が高まった後は、切替手段7は第1経路11に切り替える。
【0044】
本実施の形態のシステム1によれば、経路を選択できる切替手段7を備えるため、システム立ち上げ直後などバイオガス発生槽5内にディスポーザ排水を送り込みたくない場合であっても、ディスポーザ10の稼働を停止させる必要がない。したがって、集合住宅の入居者は、ディスポーザ10を常に使用することができる。
【0045】
〈システムメンテナンス時について〉
図3を参照して、本実施の形態のシステム1のメンテナンス時の動作について説明する。図3は、本実施の形態に係るバイオガス発電システム1の動作を示すフローチャートである。
【0046】
はじめに、切替手段7は第1経路11を選択している(ステップS1)。したがって、この状態において、原水は第1経路11を経由して固液分離槽4に供給され、固液分離槽4で分離された固形分はバイオガス発生槽5へ供給されている。
【0047】
次に、オーバーフロー経路13に配置された流量センサ130が経路13を流れる原水を検知するか否かを確認する(ステップS2)。原水が検知された場合(ステップS2にてYES)、動作異常検知手段80はメンテナンスが必要な状況にあると判断し、流路切替指示手段82から切替手段7へ向けて切替指示を送信することで、第2経路12に切り替える。
【0048】
オーバーフロー経路13を流れる原水が検知されない場合(ステップS2にてNO)、固液分離槽4内の液圧センサ40の値が第1閾値以上であるか否かを確認する(ステップS3)。液圧センサ40の上昇が検知された場合(ステップS3にてYES)、動作異常検知手段80はメンテナンスが必要な状況にあると判断し、流路切替指示手段82から切替手段7へ向けて切替指示を送信することで、第2経路12に切り替える。
【0049】
液圧センサ値の上昇が検知されない場合(ステップS3にてNO)、バイオガス発生槽5内の水位センサ50の値が第2閾値以上であるか否かを確認する(ステップS4)。水位センサ50の上昇が検知された場合(ステップS4にてYES)、動作異常検知手段80はメンテナンスが必要な状況にあると判断し、流路切替指示手段82から切替手段7へ向けて切替指示を送信することで、第2経路12に切り替える。
【0050】
ステップS2~S4において全てNOが選択された場合、バイオガス発生装置2内に動作異常は見られないと見做すことができる。ここで、バイオガス発生槽5内のガス圧センサ51の値が第3閾値以上であるか否かを確認する(ステップS5)。ガス圧センサ51の上昇が検知された場合(ステップS5にてYES)、制御手段8はバイオガスの生産が過剰状態にあると判断し、切替手段7に切替指示が送信され、第2経路を選択する。
【0051】
従来技術に記載した特許文献1では、メンテナンスを行う際はディスポーザの稼働を停止させる必要があった。これに対し、本実施の形態のシステム1は、ディスポーザの稼働を停止させることなくメンテナンスを行うことができる。この特徴は、特に集合住宅など、生活習慣の異なる入居者が使用するディスポーザから供給される排水を原料として使用する際に有利である。また、集合住宅のように専門の作業者が常駐していない施設に採用すれば、作業者はメンテナンスが必要な場合にだけ施設を訪れればよくなり、容易にメンテナンス作業を行うことができる。
【0052】
なお、本発明の実施の形態に係るシステム1は、集合住宅に用いられることを例に挙げて説明したが、これに限定されない。したがって、システム1には有機物が供給されればよく、たとえば商業施設、宿泊施設であってもよい。この場合であっても、施設内で発生した有機物を利用した発電を行い、発電された電気を施設内の設備に利用することができ、エコフレンドリーな建物を提供することができる。
【0053】
また、本発明の実施の形態に係るシステム1は、異常検知のためのセンサとして液圧センサ40、水位センサ50、流量センサ130、ガス圧上昇を検知するためのセンサとしてガス圧センサ51を備えることとしたが、メンテナンス時に第1経路11と第2経路12とを切り替えることができるのであれば、これらのセンサ全てを備える必要はないことに留意されたい。
【0054】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 バイオガス発電システム、2 バイオガス発生装置、3 原水タンク、4 固液分離槽、5 バイオガス発生槽、6 排水処理槽、7 切替手段、8 制御手段、9 バイオガス発電装置、10 ディスポーザ、11 第1経路、12 第2経路、13 オーバーフロー経路、14 返送経路、80 動作異常検知手段、81 ガス圧検知手段、82 流路切替指示手段。
図1
図2
図3