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特開2024-81459気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081459
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 15/16 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G21C15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195103
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】藤本 清志
(72)【発明者】
【氏名】石田 直行
(57)【要約】
【課題】簡易な構造を用いて、複数段の分離機構を有する気水分離器の下から二段目以降の環状流路内で蒸気に随伴される液滴量を減少させ、クオリティの高い条件でのキャリーオーバーを低減することのできる気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉を提供することにある。
【解決手段】複数段の分離機構を備える気水分離器105では、第二段目以降の分離機構は、第二段環状流路132,第三段環状流路138を周方向に分割し、第二段内筒129,第三段内筒135から第二段環状流路132,第三段環状流路138へ継続して生じる混合流の旋回成分を消失させる縦板21,31を有する。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数段の分離機構を備える気水分離器であって、
下から第一段目の前記分離機構は、
炉心で発生する蒸気と水との混合流体を下方から上方に向かって導くスタンドパイプ、
前記スタンドパイプの上側端面に連通して流路を形成し、前記上側端面の流路断面積よりも上方に向けて流路断面積を拡大するディフューザ、
前記ディフューザの上側端面に連通して流路を形成する第一段内筒、
前記蒸気と前記水との混合流の流路の軸中心を通るハブ及び前記ハブを中心にして放射状に取り付ける複数の旋回羽根を含み、前記旋回羽根の径方向に内側縁が前記ハブに固定されており、前記ディフューザの内壁又は前記第一段内筒の内壁に前記旋回羽根の径方向に外側縁が固定されているスワラ、
前記第一段内筒を同心円状に間隔を空けて囲んで形成される第一段環状流路の下方に第一段排出口を形成する第一段外筒、
前記第一段外筒の上側面を塞ぐと共に前記第一段内筒よりも小径の円形孔を形成した第一段環状板、
前記第一段環状板の前記円形孔を形成している内周縁から下方に向けて円筒状に伸ばして前記円形孔を第二段内筒への短流路として形成する第一段ピックオフリング、を有し、
下から第二段目以降の前記分離機構は、
前段の環状板上に設置され流路を形成する第二段以降内筒、
前記第二段以降内筒を同心円状に間隔を空けて囲んで形成される第二段以降環状流路の下方に第二段以降排出口を形成する第二段以降外筒、
前記第二段以降外筒の上側面を塞ぐと共に前記第二段以降内筒よりも小径の円形孔を形成した第二段以降環状板、
前記第二段以降環状板の前記円形孔を形成している内周縁から下方に向けて円筒状に伸ばして前記円形孔を次段以降の内筒への短流路あるいは出口流路として形成する第二段以降ピックオフリング、を有し、
前記第二段目以降の前記分離機構は、前記第二段以降環状流路を周方向に分割し、前記第二段以降内筒から前記第二段以降環状流路へ継続して生じる前記混合流の旋回成分を消失させる縦板を有する
気水分離器。
【請求項2】
請求項1に記載の気水分離器において、
前記縦板は、その鉛直方向の端面が前記第二段以降内筒の外面と前記第二段以降外筒の内面に対して90度の角度で設置されている
気水分離器。
【請求項3】
請求項1に記載の気水分離器において、
前記縦板は、その鉛直方向の端面が前記第二段以降内筒の外面と前記第二段以降外筒の内面に対して90度より小さい角度、あるいは90度より大きい角度で設置されている
気水分離器。
【請求項4】
請求項1に記載の気水分離器において、
前記縦板は、前記第二段以降外筒の内面、あるいは前記第二段以降内筒の外面に接続して設置されている
気水分離器。
【請求項5】
請求項1に記載の気水分離器において、
前記縦板が前記第二段以降排出口まで延伸している
気水分離器。
【請求項6】
請求項1に記載の気水分離器において、
前記縦板のうち前記混合流が衝突する面と正対する位置に前記縦板より短い長さの排水路形成板を更に有する
気水分離器。
【請求項7】
請求項6に記載の気水分離器において、
前記縦板及び前記排水路形成板が前記第二段以降排出口まで延伸しており、前記縦板に付着し液膜となって流下する水を排水する排水口及び前記蒸気の排気口をそれぞれ形成する
気水分離器。
【請求項8】
請求項1に記載の気水分離器において、
三段目以降の前記分離機構における前記縦板の数は、その下段側の前記分離機構における前記縦板の数以上である
気水分離器。
【請求項9】
請求項6に記載の気水分離器において、
三段目以降の前記分離機構における前記縦板の鉛直方向長さと前記排水路形成板の鉛直方向長さとの差分は、その下段側の前記縦板の鉛直方向長さと前記排水路形成板の鉛直方向長さとの差分以上である
気水分離器。
【請求項10】
原子炉圧力容器と、
前記原子炉圧力容器内に設けられ、複数の燃料集合体が装荷された炉心と、
前記炉心が配置されるシュラウドと、
前記炉心の上方に配置され、前記炉心で発生した蒸気と水との混合流を前記蒸気と前記水とに分離する気水分離器と、
前記気水分離器の上方に位置し、前記気水分離器で分離された湿り蒸気を乾燥させる蒸気乾燥器と、
前記蒸気乾燥器で乾燥された蒸気をタービンに供給する主蒸気配管と、
前記原子炉圧力容器とシュラウド間に形成され、前記気水分離器で分離された水が循環するダウンカマと、
前記ダウンカマの下方に配置され、前記ダウンカマ内の水を前記炉心に供給するポンプと、を備え、
前記気水分離器は、請求項1乃至請求項9のうちいずれか1項に記載の気水分離器である
沸騰水型原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉に係り、特に、炉心で発生する蒸気と水との混合流体を蒸気と水とに分離するために炉心上部に配置されている気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
簡易な構造を用いて気水分離器外で蒸気に同伴される液適量を減少させると共に、蒸気の通気抵抗の増加を抑制しながら、クオリティの高い条件でのキャリーオーバーを低減することのできる気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉の一例として、特許文献1には、気液二相流を下方から上方に向かって導くスタンドパイプと、スタンドパイプの上側端面に連通して流路を形成し、上側端面の流路断面積よりも上方に向けて流路断面積を拡大するディフューザと、ディフューザの上側端面に連通して流路を形成する第一段内筒と、第一段内筒を同心円状に間隔を空けて囲んで環状の流路を形成する第一段外筒と、第一段外筒の上側端面の内周縁を塞ぐと共に第一段内筒よりも小径の円形孔を形成した第一段環状板と、第一段環状板の円形孔を形成している内周縁から下方に向けて円筒状に起立させて円形孔を第二段内筒への流路として形成する第一段ピックオフリングと、第一段環状板上に設置され流路を形成する第二段内筒と、第二段内筒を同心円状に間隔を空けて囲んで環状の第二段排出流路を形成する第二段外筒と、第二段外筒の上側端面の内周縁を塞ぐと共に第二段内筒よりも小径の円形孔を形成した第二段環状板と、第二段環状板上に設置され流路を形成する第三段内筒と、第二段環状板の円形孔を形成している内周縁から下方に向けて円筒状に起立させて円形孔を第三段内筒への流路として形成する第二段ピックオフリングとを少なくとも備え、気液二相流の流路の軸中心を通るハブ及びハブを中心にして放射状に取り付ける複数の旋回羽根を含み、旋回羽根の径方向に内側縁がハブに固定されており、ディフューザの内壁又は第一段内筒の内壁に旋回羽根の径方向に外側縁が固定されているスワラを備えた気水分離器において、第二段外筒に第二段排出流路に流入した水を排出する第二段分離水排出口と蒸気を排出する第二段蒸気排出口を設けると共に、第二段蒸気排出口が第二段分離水排出口よりも高い位置に配置され、かつ、第二段蒸気排出日の縁に沿って第二段排出流路へ突出した突起物が設けられ、突起物の先端が第二段蒸気排出口の流路を塞がない方向に折り曲げられて第二段外筒との間で溝状の流路である突起溝が形成されている、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5562908号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的な沸騰水型原子炉には、炉心で発生する蒸気と水との混合流体を蒸気と水とに分離するために、炉心上部に複数の気水分離器が設置されている。この気水分離器では、ディフューザ内のスワラ(旋回羽根)によって蒸気と水との混合流体に旋回速度が与えられ、遠心力により気液密度差を利用して蒸気と水とに分離される。
【0005】
分離された水は、気水分離器の内筒内の空間から内筒と外筒の間の環状流路を下降し、気水分離器の外筒下方の排出口から排水されてダウンカマに戻り、再循環ポンプにより再び炉心へ送られる。一方、分離された蒸気は、気水分離器の中央の流路から気水分離器外に排出され、蒸気乾燥器に流入し湿分が取り除かれた後、タービンへ送られる。これらより、炉心で発生させた湿分を含む蒸気から可能な限り湿分を取り除き、効率的な発電を実現している。
【0006】
さらに、効率的な発電を実現させる1つの方法として、炉心出口における蒸気と水の全流量に対する蒸気流量の割合(以下、クオリティという)を大きくして蒸気発生量を増加させることが有効である。
【0007】
気水分離器に流入する蒸気と水との混合流体のクオリティが変わると、気水分離性能も変化する。一般的に、クオリティが大きくなり蒸気発生量が増加すると、スワラによって二相流に与えられる旋回速度が大きくなり、遠心力が増加して気水分離性能は向上する。
【0008】
ここで、一例として、改良型沸騰水型原子炉(以下、ABWRという)に用いられている三段式の気水分離器について説明する。
【0009】
ABWRで使用されている気水分離器では、第一段内筒と第一段外筒との間の環状流路で下向きの排出口からは、蒸気の混入がほとんどない分離水が排水される。また、気水分離器の下から二段目及び三段目のそれぞれの外筒の下方に設けられた排出口からは、分離水と蒸気が排出される。
【0010】
ここで、炉心出口で蒸気発生量が増加する、すなわち気水分離器入口で蒸気流量が大きくなると、気水分離器の下から二段目及び三段目のそれぞれの内筒からピックオフリングで分離され環状流路に流れ込む蒸気流量、つまり蒸気速度が増加する。
【0011】
気水分離器の下から二段目及び三段目のピックオフリングで分離された水は、環状流路内において内筒外面や外筒内面を液膜として流下したり液滴として存在して蒸気と共に排出口から排出される。蒸気速度が増加すると、蒸気は流下する液膜の表面を波立たせ、その波の先端を引きちぎって生じる液滴を巻き込み、そのまま排出口から排出され、複数の気水分離器間の狭い流路を上昇し、湿分が多い蒸気として蒸気乾燥器へ流入する可能性がある。
【0012】
これらの気水分離器の下から二段目及び三段目の内筒と外筒の間の環状流路内に存在し流下する液膜を蒸気に随伴させない手段として、蒸気の排出口の縁に沿ってL字型の構造物を設置することが、特許文献1に記載されている。
【0013】
しかしながら、上記のL字型の構造物を採用した特許文献1においては、L字型の構造物を複数段の分離機構を有する気水分離器の下から二段目及び三段目の内筒と外筒の間の狭い環状流路内に設置する必要があるため、作業性を改善する余地がある。一方、L字型の構造物を設置した場所において蒸気が流れる隙間も確保する必要があるが、隙間が狭いと蒸気速度が増加する懸念がある。
【0014】
また、複数段の分離機構を有する気水分離器の下から二段目及び三段目の内筒内でピックオフリングにより分離された水と蒸気は、ピックオフリングを通過後の分離水と蒸気は環状流路内でチャーン流あるいは環状噴霧流状態で存在し、蒸気中に液滴が多量に存在する状態である。
【0015】
更に、蒸気速度が増加すると、環状流路内を流下する液膜の表面を波立たせ、その波の先端を引きちぎって液滴となり、蒸気中に随伴される液滴が増えることが懸念される。
【0016】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、簡易な構造を用いて、複数段の分離機構を有する気水分離器の下から二段目以降の環状流路内で蒸気に随伴される液滴量を減少させ、クオリティの高い条件でのキャリーオーバーを低減することのできる気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、複数段の分離機構を備える気水分離器であって、下から第一段目の前記分離機構は、炉心で発生する蒸気と水との混合流体を下方から上方に向かって導くスタンドパイプ、前記スタンドパイプの上側端面に連通して流路を形成し、前記上側端面の流路断面積よりも上方に向けて流路断面積を拡大するディフューザ、前記ディフューザの上側端面に連通して流路を形成する第一段内筒、前記蒸気と前記水との混合流の流路の軸中心を通るハブ及び前記ハブを中心にして放射状に取り付ける複数の旋回羽根を含み、前記旋回羽根の径方向に内側縁が前記ハブに固定されており、前記ディフューザの内壁又は前記第一段内筒の内壁に前記旋回羽根の径方向に外側縁が固定されているスワラ、前記第一段内筒を同心円状に間隔を空けて囲んで形成される第一段環状流路の下方に第一段排出口を形成する第一段外筒、前記第一段外筒の上側面を塞ぐと共に前記第一段内筒よりも小径の円形孔を形成した第一段環状板、前記第一段環状板の前記円形孔を形成している内周縁から下方に向けて円筒状に伸ばして前記円形孔を第二段内筒への短流路として形成する第一段ピックオフリング、を有し、下から第二段目以降の前記分離機構は、前段の環状板上に設置され流路を形成する第二段以降内筒、前記第二段以降内筒を同心円状に間隔を空けて囲んで形成される第二段以降環状流路の下方に第二段以降排出口を形成する第二段以降外筒、前記第二段以降外筒の上側面を塞ぐと共に前記第二段以降内筒よりも小径の円形孔を形成した第二段以降環状板、前記第二段以降環状板の前記円形孔を形成している内周縁から下方に向けて円筒状に伸ばして前記円形孔を次段以降の内筒への短流路あるいは出口流路として形成する第二段以降ピックオフリング、を有し、前記第二段目以降の前記分離機構は、前記第二段以降環状流路を周方向に分割し、前記第二段以降内筒から前記第二段以降環状流路へ継続して生じる前記混合流の旋回成分を消失させる縦板を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構造を用いて、複数段の分離機構を有する気水分離器の下から二段目以降の環状流路内で蒸気に随伴される液滴量を減少させ、クオリティの高い条件でのキャリーオーバーを低減することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の気水分離器が適用される沸騰水型原子炉の概略構造を示す縦断面図である。
図2】実施例1の気水分離器を示す縦断面図であり、後述する図3のA-A矢視図である。
図3】実施例1の複数の気水分離器を示す水平断面図である。
図4】実施例1の気水分離器のうち、第二段より上方側を示す縦断面図である。
図5】実施例1の気水分離器を示す水平断面であり、図4のB-B矢視図である。
図6】実施例1の気水分離器を示す水平断面のうち、図5のD部詳細図である。
図7】実施例1の気水分離器を示す第二段あるいは第三段の内筒外面から外周側見た展開図である。
図8】実施例1の気水分離器を示す排出口のうち、図4のC部詳細図である。
図9】実施例1の気水分離器の縦板を第二段外筒の内面に設置した状態を示した図である。
図10】実施例1の気水分離器の縦板を第二段内筒の外面に設置した状態を示した図である。
図11】実施例1の気水分離器の変形例を示す水平断面図である。
図12】実施例1の気水分離器の変形例を示す水平断面のうち、図11のE部詳細図である。
図13】実施例2の気水分離器を示す縦断面図である。
図14】実施例2の気水分離器を示す水平断面のうち、図13のF-F矢視図である。
図15】実施例2の気水分離器を示す水平断面のうち、図13のG-G矢視図である。
図16】実施例2の気水分離器を示す第二段あるいは第三段の内筒外面から外周側見た展開図である。
図17】実施例2の気水分離器を示す排出口の詳細のうち、図13のH部の拡大図である。
図18】実施例2の気水分離器を示す第二段目の環状流路内の旋回流れの詳細図である。
図19】実施例2の気水分離器を示す第三段目の環状流路内の旋回流れの詳細図である。
図20】実施例2の気水分離器の変形例1を示す水平断面図である。
図21】実施例2の気水分離器の変形例1を示す第二段あるいは第三段の内筒外面から外周側見た展開図である。
図22】実施例2の気水分離器の変形例2を示す縦断面図である。
図23】実施例2の気水分離器の変形例2を示す第二段の内筒外面から外筒内面を見た展開図である。
図24】実施例2の気水分離器の変形例2を示す第三段の内筒外面から外筒内面を見た展開図である。
図25】実施例3の気水分離器を示す縦断面図である。
図26】実施例3の気水分離器を示す水平断面のうち、図25のL-L矢視図である。
図27】実施例3の気水分離器を示す水平断面のうち、図25のM-M矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉の実施例を、図面を用いて説明する。なお、本明細書で用いる図面において、同一のまたは対応する構成要素には同一、または類似の符号を付け、これらの構成要素については繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0021】
<実施例1>
本発明の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉の実施例1について図1乃至図12を用いて説明する。
【0022】
最初に、本実施例の気水分離器を説明する前に、この気水分離器が適用される沸騰水型原子炉の概略構造について、図1を用いて説明する。図1は、ABWRの概略構成を示す図である。
【0023】
図1に示す改良型沸騰水型原子炉100では、原子炉圧力容器101内に円筒状の炉心シュラウド102が設けられており、その炉心シュラウド102内に複数体の燃料集合体が装荷された炉心103が設置されている。
【0024】
炉心シュラウド102内で炉心の上端部には上部格子板119、炉心シュラウド102内で炉心の下端部には炉心支持板108がそれぞれ設置されている。また、複数の燃料支持金具109が炉心支持板108に設置されている。
【0025】
また、原子炉圧力容器101内には、燃料集合体の核反応を制御するために、炉心103へ複数の十字型制御棒を挿入可能とする制御棒案内管110が設けられている。原子炉圧力容器101の底部より下方に設置された制御棒駆動機構ハウジング内に制御棒駆動機構111を備え、十字型制御棒は制御棒駆動機構111に連結されている。
【0026】
炉心103内に流入する冷却材118は、燃料集合体の核反応により加熱され蒸気と水の混合流となり、炉心103の上方に配置する気水分離器105へ流入する。気水分離器105に流入した混合流は、気水分離器105内にあるスワラ122により旋回速度が与えられ、この旋回速度により混合流に遠心力が作用し、水と蒸気の密度差により水と蒸気とに分離され、水は再び冷却材118としてダウンカマ114へ流れる。
【0027】
一方、蒸気は蒸気乾燥器106に流入し、更に乾燥されることで湿分が取り除かれる。このようにして、湿分が0.1重量パーセント以下に抑えられた蒸気を、主蒸気配管115を通してタービン(図示省略)に送り、発電を行っている。
【0028】
復水器等(図示省略)を介して給水配管116より原子炉圧力容器101内に流入する冷却材118は、インターナルポンプ113により、原子炉圧力容器101と炉心シュラウド102間に形成されており、気水分離器105で分離された水が循環するダウンカマ114内を下方へと流れる。このように、インターナルポンプ113は、炉心103で発生する熱を効率良く冷却するため、冷却材118を炉心103へ強制循環させる。なお、インターナルポンプ113の替わりにジェットポンプを使用可能である。
【0029】
次いで、図2及び図3を用いて気水分離器の構成について説明する。本発明では、分離機構を二段以上有する気水分離器を対象としており、図2では三段の分離機構を有する気水分離器を示している。
【0030】
図2に示す気水分離器105は、三段の分離機構により構成されている。
【0031】
鉛直方向最も下方に設けられている第一段目の分離機構は、スタンドパイプ120と、ディフューザ121と、第一段内筒123と、スワラ122と、第一段外筒124と、第一段環状板128と、第一段ピックオフリング125と、を有している。
【0032】
スタンドパイプ120は、炉心103で発生する蒸気と水との混合流体を下方から上方に向かって導く。ディフューザ121は、スタンドパイプ120の上側端面に連通して流路を形成し、上側端面の流路断面積よりも上方に向けて流路断面積を拡大する。第一段内筒123は、ディフューザ121の上側端面に連通して流路を形成する。スワラ122は、蒸気と水との混合流の流路の軸中心を通るハブ及びハブを中心にして放射状に取り付ける複数の旋回羽根を含み、旋回羽根の径方向に内側縁がハブに固定されており、ディフューザ121の内壁又は第一段内筒123の内壁に旋回羽根の径方向に外側縁が固定されている。第一段外筒124は、第一段内筒123を同心円状に間隔を空けて囲んで形成される第一段環状流路126の下方に第一段排出口127を形成する。第一段環状板128は、第一段外筒124の上側面を塞ぐと共に第一段内筒123よりも小径の円形孔を形成する。第一段ピックオフリング125は、第一段環状板128の円形孔を形成している内周縁から下方に向けて円筒状に伸ばして円形孔を第二段内筒129への短流路として形成する。
【0033】
第一段目の分離機構の直上に設けられている、下から第二段目の分離機構は、第二段内筒129と、第二段外筒130と、第二段環状板134と、第二段ピックオフリング131と、を有する。
【0034】
第二段内筒129は、前段の第一段環状板128上に設置され流路を形成する。第二段外筒130は、第二段内筒129を同心円状に間隔を空けて囲んで形成される第二段環状流路132の下方に第二段排出口133を形成する。第二段環状板134は、第二段外筒130の上側面を塞ぐと共に第二段内筒129よりも小径の円形孔を形成する。第二段ピックオフリング131は、第二段環状板134の円形孔を形成している内周縁から下方に向けて円筒状に伸ばして円形孔を第三段内筒135への短流路として形成する。
【0035】
第二段目の分離機構の直上に設けられている、下から第三段目の分離機構は、第三段内筒135と、第三段外筒136と、第三段環状板140と、第三段ピックオフリング137と、を有する。
【0036】
第三段内筒135は、前段の第二段環状板134上に設置され流路を形成する。第三段外筒136は、第三段内筒135を同心円状に間隔を空けて囲んで形成される第三段環状流路138の下方に第三段排出口139を形成する。第三段環状板140は、第三段外筒136の上側面を塞ぐと共に第三段内筒135よりも小径の円形孔を形成する。第三段ピックオフリング137は、第三段環状板140の円形孔を形成している内周縁から下方に向けて円筒状に伸ばして円形孔を気水分離器出口流路として形成する。
【0037】
図3に示すように、一定の間隔を設けて複数の気水分離器105が配置され、各々の気水分離器105の第二段排出口133及び第三段排出口139から排出された蒸気は気水分離器間流路141を上昇し、気水分離器105上部の蒸気乾燥器106に流入する。
【0038】
次に、実施例1の気水分離器105の特徴的な構成について図4乃至図8を用いて説明する。図4には気水分離器の下から二段目及び三段目の分離機構の構造を示す。
【0039】
本発明の最も特徴となる構成要素は、第二段内筒129と第二段外筒130との間の第二段環状流路132を周方向に分割し、第二段内筒129から第二段環状流路132へ継続して生じる混合流の旋回成分を消失させる縦板21、及び第三段内筒135と第三段外筒136との間の第三段環状流路138を周方向に分割し、第三段内筒135から第三段環状流路138へ継続して生じる混合流の旋回成分を消失させる縦板31である。
【0040】
図4に示すように、第二段内筒129には、第一段内筒123内で気水分離器105に流入する蒸気と水との混合流体の全流量に対する水の割合が大きく低減させた蒸気と水との混合流体が流入する。
【0041】
第二段内筒129内では、第一段内筒123の下方の旋回羽根により発生させた旋回流142がそのまま維持され継続される。そのため、第二段内筒129内においても旋回流により蒸気と水との混合流体に遠心力が働き、気液密度差により気水分離され第二段内筒129の内面に液膜が形成され、上方に移動する。
【0042】
分離された水は第二段ピックオフリング131から第二段環状流路132に流れる。一方、蒸気は第二段ピックオフリング131の中央の流路から第三段内筒135内に流れる。
【0043】
分離された水には蒸気も含まれており、第二段ピックオフリング131通過後の第二段環状流路132内でチャーン流あるいは環状噴霧流状態で存在し、蒸気中に液滴が多量に存在する状態である。
【0044】
図4図5の破線で示すように、第二段内筒129内の旋回流142が第二段環状流路132内にも旋回流143が残る。
【0045】
そこで、図6に示すように、その旋回流143を利用して、液滴を含む蒸気を、第二段環状流路132に第二段排出口133まで延伸するよう設置された縦板21に衝突させることにより気水分離することができる。
【0046】
この縦板21は、第二段外筒130の内面、あるいは第二段内筒129の外面に接続して、遠心力で第二段外筒130の内周側に水がたまることが想定されるためより好適には第二段外筒130の内面に接触するよう設置されていることが望ましいが、第二段外筒130の内面及び第二段内筒129の外面のいずれにも接触していてもよい。
【0047】
また、縦板21は、その鉛直方向の端面が第二段内筒129の外面と第二段外筒130の内面に対して90度の角度で設置されている。
【0048】
図7に示すように、分離された液滴は縦板21上で液膜2となり、重力によって下降流3として流下する。また、縦板21に衝突し旋回成分を消失した蒸気は、下降流4となる。第二段外筒130下方の第二段排出口133では、図8に示すように、縦板21上に形成され流下する液膜2はそのまま気水分離器105外に流れ出ると共に、蒸気も下降流4が維持され、気水分離器105外に流出し、上方の蒸気乾燥器106内に流入する。
【0049】
以上より、縦板21により、蒸気中の液滴を分離することが出来るとともに、第二段外筒130の第二段排出口133においても水と蒸気が別々に排出できるため、気水分離器105外から蒸気乾燥器106へのキャリーオーバーを低減できる。
【0050】
また、図4に示すように、第三段環状流路138においては、第三段内筒135内の旋回流144の強さは弱くなるが、第二段と同様に、第三段環状流路138にも旋回流145が残る。そのため、その旋回流145を利用して、第三段環状流路138内に第三段排出口139まで延伸するよう設置された縦板31に蒸気を衝突させることにより気水分離することができる。
【0051】
この縦板31についても、第三段外筒136の内面、あるいは第三段内筒135の外面に接続して、より好適には遠心力で第三段外筒136の内周側に水がたまることが想定されるため第三段外筒136の内面に接触するよう設置されていることが望ましいが、第三段外筒136の内面及び第三段内筒135の外面のいずれにも接触していてもよい。同様に、縦板31も、その鉛直方向の端面が第三段内筒135の外面と第三段外筒136の内面に対して90度の角度で設置されている。
【0052】
これら縦板21,31は、鉛直方向断面から見たときにL字状であり、各々が第二段外筒130あるいは第三段外筒136の外周面まで伸びている場合は、液膜を分離機構外へ導く面では好ましい。これに対し、第二段外筒130あるいは第三段外筒136の外周面と同一面まで延伸している場合は、製造性や設置作業などの点で好ましい。
【0053】
次に、実施例1の気水分離器105への縦板21,31の設置方法について図9及び図10を用いて説明する。図9及び図10では気水分離器105の下から二段目の分離構造について説明する。
【0054】
図9に示すように縦板21を第二段外筒130の内面に設置する、あるいは図10に示すように縦板21を第二段内筒129の外面に設置することにより、容易に本発明を実現することができる。なお、気水分離器の下から三段目の分離構造についても同様である。
【0055】
実施例1の気水分離器の変形例を図11及び図12に示す。
【0056】
本実施例の特徴となる構成は、環状流路内に設置する縦板の設置向きである。
【0057】
図11に示すように、変形例の気水分離器105Aでは、第二段環状流路132内に残る旋回流143の向きに対して、縦板21Aの鉛直部端面は第二段内筒129外面と90度より小さい角度Aで設置あるいは近接していること、または、第二段環状流路132内に設置する縦板21Aの鉛直部端面は第二段外筒130内面と90度より大きい角度Bで設置あるいは近接していることである。
【0058】
これにより、図12に示すように、角度A部の空間に液滴あるいは液膜が集まりやすくなり、縦板21Aに蒸気が衝突する際の液滴の飛散も低減できる。なお、角度Aと角度Bとが逆の場合でも問題なく、さらに角度Aあるいは角度Bでも問題なく同じ機能を有することができる。
【0059】
同様に、第三段環状流路138に設置される縦板についても、その鉛直方向の端面が第三段内筒135の外面と第三段外筒136の内面に対して90度より小さい角度、あるいは90度より大きい角度で設置されているものとすることができる。
【0060】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0061】
上述した本発明の実施例1の複数段の分離機構を備える気水分離器105では、第二段目以降の分離機構は、第二段環状流路132,第三段環状流路138を周方向に分割し、第二段内筒129,第三段内筒135から第二段環状流路132,第三段環状流路138へ継続して生じる混合流の旋回成分を消失させる縦板21,31,21Aを有する。
【0062】
これによって、液滴を含む蒸気を縦板21,31,21Aに衝突させて更に気水分離できることから、蒸気に随伴される液滴量を従来に比べて減少させることができ、出力向上時の蒸気流量が増加するクオリティの高い条件でのキャリーオーバーも低減することができる。そのため、原子炉の運転条件の幅を広げることができる。
【0063】
また、縦板21,31は、その鉛直方向の端面が第二段内筒129,第三段内筒135の外面と第二段外筒130,第三段外筒136の内面に対して90度の角度で設置されているため、縦板21,31を容易に設置することができる。
【0064】
更に、縦板21Aは、その鉛直方向の端面が第二段内筒129,第三段内筒135の外面と第二段外筒130,第三段外筒136の内面に対して90度より小さい角度、あるいは90度より大きい角度で設置されていることで、縦板21Aに蒸気が衝突する際の液滴の飛散も低減することができる。
【0065】
更に、縦板21,31,21Aは、第二段外筒130,第三段外筒136の内面、あるいは第二段内筒129,第三段内筒135の外面に接続して設置されていることで、縦板21,31,21Aの固定が非常に容易であるとともに、第二段外筒130,第三段外筒136や第二段内筒129,第三段内筒135との間に液膜が滞留したり、縦板21,31,21Aの裏面側等に滞留したりする可能性を低減して排出をより確実に実現することができる。
【0066】
また、縦板21,31,21Aが第二段排出口133,第三段排出口139まで延伸していることにより、縦板21,31,21A表面に形成される液膜を第二段排出口133,第三段排出口139まで導くことができ、気水分離器105,105A外への排出をより確実に行うことができる。
【0067】
<実施例2>
本発明の実施例2の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉について図13乃至図24を用いて説明する。
【0068】
図13では、図4と同様に、気水分離器105Bの下から二段目及び三段目の分離構造を示し、図14乃至図17では、図5等と同様に、気水分離器105Bの下から二段目の分離構造を示す。
【0069】
図13乃至図17に示す本実施例の気水分離器105Bは、縦板21B,31Bのうち混合流が衝突する面と正対する位置に縦板21B,31Bより短い長さの排水路形成板5B,5Cを更に有するとともに、縦板21B,31B及び排水路形成板5B,5Cが第二段排出口133,第三段排出口139まで延伸しており、縦板21B,31Bに付着し液膜となって流下する水を排水する排水口及び蒸気の排気口をそれぞれ形成する構成となっている。
【0070】
図13図14に示すように、第二段環状流路132内に設置される縦板21Bに液滴を含む蒸気が衝突するまで流れは、図4図5で説明した流れと同様である。
【0071】
本実施例では、縦板21Bに蒸気が衝突する面の下方に排水路形成板5Bを設置し排水路を設けている。図15図16に示すように、排水路6Bを設けることで、縦板21B上に付着した液滴が液膜となり流下するが、液膜が流下する間に下降する蒸気に接触することが無くなる。これにより、蒸気流量が増加する出力向上時においても、下降する蒸気の流れで液膜の表面が波立つことをより抑制することができる。
【0072】
更に、図17に示すように、分離した水の排水口7Bも蒸気の排出口と別々に設けることで、気水分離器105Bから排水された水が蒸気により巻き上がることが無くなる。これにより、気水分離器105B外から上昇する蒸気中に含まれる湿分も低減できる、すなわちキャリーオーバーを低減できる。
【0073】
また、図13に示すように、第三段環状流路138においては、第三段内筒135内の旋回速度は小さくなるが、第二段の分離機構と同様に、第三段環状流路138にも旋回流145が残る。そのため、その旋回流145を利用して、第三段環状流路138内に設置した縦板31Bに蒸気を衝突させることにより気水分離し、図15に示すように排水路形成板5Cにより排水路6Cを確保することと、水の排水口7Cと蒸気の排出口を別々に設けることで蒸気中に含まれる液滴を低減でき、気水分離器105B外に排出され、蒸気乾燥器106に流入する流体のキャリーオーバーを低減できる。
【0074】
なお、排水路形成板5B,5Cは、図9図10に示す縦板21,31と同様に、第二段外筒130,第三段外筒136の内面や第二段内筒129,第三段内筒135の外面に設置することで容易に実現できる。また、縦板21,31に略平行に設置することが望ましいが、略平行である必要はない。更に排水路形成板5B,5Cは内筒や外筒に対して鉛直方向90度で設置されている必要は無く、任意の角度で設置可能である。
【0075】
実施例2の気水分離器の変形例1を図18乃至図21に示す。
【0076】
図18は下から二段目の第二段環状流路に設置した縦板と排水形成板を第二段内筒外面から第二段外筒内面を見た展開図、図19は気水分離器の下から三段目の第三段環状流路に設置した縦板と排水形成板を第三段内筒外面から第三段外筒内面を見た展開図である。図18図19には、図13における第二段環状流路及び第三段環状流路に設置する縦板に旋回速度を有する蒸気が衝突する際の蒸気の縦板への衝突角度の違いについても示している。
【0077】
図18に示す気水分離器105Cでは、二段目の第二段環状流路132内の蒸気が縦板21Cへ衝突する角度Jに対して、図19に示す三段目の第三段環状流路138内の蒸気が縦板31Cへ衝突する角度Kが大きい。
【0078】
これは、三段目の第三段環状流路138内で生じる旋回速度が二段目の第二段環状流路132内で生じる旋回速度より弱くなっているためである。このため、旋回速度が弱い三段目の第三段環状流路138では蒸気が衝突する面の軸方向長さを長くする必要がある。蒸気が衝突する面の長さを長くすると、蒸気流量が増加する出力向上時には、下降する蒸気に触れる可能性が大きくなるため、出来るだけ蒸気が衝突する面は短い方が望ましい。
【0079】
そこで、三段目の第三段環状流路138内の蒸気が縦板31Cへ衝突する角度Kが大きくなる前に、すなわち衝突する角度が小さい時点で縦板31Cに衝突させれば、二段目の第二段環状流路132に設置する縦板21Cの長さで同じ効果を得ることができる。
【0080】
これを実現する方法としては、縦板21C,31Cの数を異なるものとすることが考えられる。図20及び図21に縦板を増やした構造を示す。
【0081】
図20図21に示すように、三段目以降の分離機構における縦板31Cの数は、その下段側の分離機構における縦板21Cの数以上とすることで、二段目の第二段環状流路132と三段目の第三段環状流路138に設置する縦板21C,31Cで蒸気が衝突する面の軸方向長さをそれぞれの流路に流入する蒸気の流れ方向に適した適切な長さとし、蒸気中の液滴をさらに効率的に排除することができる。
【0082】
実施例2の気水分離器の変形例2を図22乃至図24に示す。
【0083】
本実施例2の変形例2の気水分離器105Dにおける特徴となる構成要素は気水分離器105Dの第二段環状流路132に設置した縦板21Dの長さより、第三段環状流路138に設置した縦板31Dの長さを長くしたことで三段目以降の分離機構における縦板31Dの鉛直方向長さと排水路形成板5C1の鉛直方向長さとの差分を、その下段側の縦板21Dの鉛直方向長さと排水路形成板5B1の鉛直方向長さとの差分以上とした点にある。
【0084】
図23には気水分離器105Dの第二段環状流路132に設置した縦板21Dと排水路形成板5B1を第二段内筒129外面から第二段外筒130内面を見た展開図、図24には気水分離器105Dの第三段環状流路138に設置した縦板31Dと排水路形成板5C1を第三段内筒135外面から第三段外筒136内面を見た展開図を示す。
【0085】
図23図24に示すように、第二段環状流路132に設置した排水路形成板5B1の長さを第三段環状流路138に設置した排水路形成板5C1に比べて長くして、旋回速度を有する蒸気が縦板21D,31Dに衝突する面の長さを二段目の第二段環状流路132内の縦板21DではL1、三段目の第三段環状流路138内の縦板31DではL1より長いL2とすることで、蒸気を縦板21Dに衝突させる確率に比べて縦板31Dに衝突させる確率を高くすることができ、さらに効率的に蒸気中の液滴を排除することができる。
【0086】
その他の構成・動作は前述した実施例1の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0087】
本発明の実施例2の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉においても、前述した実施例1の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉とほぼ同様な効果が得られる。
【0088】
また、縦板21B,31B,21C,31C,21D,31Dのうち混合流が衝突する面と正対する位置に縦板21B,31B,21C,31C,21D,31Dより短い長さの排水路形成板5B,5Cを更に有することにより気水分離器105B,105C,105D外への液滴の排出を確実に行うことができる。
【0089】
更に、縦板21B,31B,21C,31C,21D,31D及び排水路形成板5B,5Cが第二段排出口133,第三段排出口139まで延伸しており、縦板21B,31B,21C,31C,21D,31Dに付着し液膜となって流下する水を排水する排水口及び蒸気の排気口をそれぞれ形成することで、気水分離器105B,105C,105D外への液滴の排出を更に効率的に行うことができる。
【0090】
また、三段目以降の分離機構における縦板31Cの数は、その下段側の分離機構における縦板21Cの数以上であることや、三段目以降の分離機構における縦板31Dの鉛直方向長さと排水路形成板5Cの鉛直方向長さとの差分は、その下段側の縦板21Dの鉛直方向長さと排水路形成板5Bの鉛直方向長さとの差分以上であることで、蒸気を縦板21C,21D,31C,31Dに衝突させる確率をより高くすることができ、蒸気中の液滴の排除をさらに効率的に行うことができる。
【0091】
<実施例3>
本発明の実施例3の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉について図25乃至図27を用いて説明する。
【0092】
図25乃至図27に示す本実施例の気水分離器105Eでは、縦板21E,31Eの構造を半円管とし、排水路を円管構造としたことである。
【0093】
図25乃至図27の水平断面に示すように縦板を半円管状の縦板21E,31Eとすることで、旋回成分を有する蒸気が半円管状の縦板21E,31Eに衝突する際に、実施例1や実施例2に示した平板状の縦板21,21A,21B,21C,21D,31,31B,31C,31Dより液滴の飛散を防止することができる。
【0094】
また、半円状の排水路形成板5Eを更に設けて縦板21Eとの間の空間による排水路6Eを円管構造とすることで、排水路を容易に実現することができる。なお、排水路形成板5Eは半円状である必要は無く、平板状であってもよい。
【0095】
同様に、第三段環状流路138内に半円状あるいは平板状の排水路形成板5E1を設けて排水路6E1を形成することが望ましい。
【0096】
その他の構成・動作は前述した実施例1の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉と略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0097】
本発明の実施例3の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉においても、前述した実施例1の気水分離器及びそれを備えた沸騰水型原子炉とほぼ同様な効果が得られる。
【0098】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0099】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0100】
例えば、上述の全ての実施例では縦板21,21A,21B,21C,21D,21E,31,31B,31C,31D,31を鉛直方向に真直ぐ延伸する形態を示したが、この形態に限られず、混合流に対して略平行、あるいは略垂直な方向に縦板を設置することができる。なお、混合流に対して略平行、あるいは略垂直な方向に縦板を設置する場合、排出口に近い部分は液膜を排出口にスムーズに導くために鉛直方向にまっすぐ延伸していることが望ましい。この場合も、排水路形成板を適宜設けることが可能である。
【符号の説明】
【0101】
2…縦板に付着して形成された液膜
3…液膜の下降流
4…蒸気の下降流
5B,5B1,5C,5C1,5E,5E1…排水路形成板
6B,6C,6E,6E1…排水路
7B,7C…排水口
21,21A,21B,21C,21D,21E…縦板(第二段)
31,31B,31C,31D,31E…縦板(第三段)
100…改良型沸騰水型原子炉
101…原子炉圧力容器
102…炉心シュラウド
103…炉心
104…シュラウドヘッド
105,105A,105B,105C,105D,105E…気水分離器
106…蒸気乾燥器
108…炉心支持板
109…燃料支持金具
110…制御棒案内管
111…制御棒駆動機構
113…インターナルポンプ
114…ダウンカマ
115…主蒸気配管
116…給水配管
117…インペラ
118…冷却材
119…上部格子板
120…スタンドパイプ
121…ディフューザ
122…スワラ
123…第一段内筒
124…第一段外筒
125…第一段ピックオフリング
126…第一段環状流路
127…第一段排出口
128…第一段環状板
129…第二段内筒(第二段以降内筒)
130…第二段外筒(第二段以降外筒)
131…第二段ピックオフリング(第二段以降ピックオフリング)
132…第二段環状流路(第二段以降環状流路)
133…第二段排出口(第二段以降排出口)
134…第二段環状板(第二段以降環状板)
135…第三段内筒(第二段以降内筒)
136…第三段外筒(第二段以降外筒)
137…第三段ピックオフリング(第二段以降ピックオフリング)
138…第三段環状流路(第二段以降環状流路)
139…第三段排出口(第二段以降排出口)
140…第三段環状板(第二段以降環状板)
141…気水分離器間流路
142…第二段内筒内の旋回流
143…第二段外側環状流路内の旋回流
144…第三段内筒内の旋回流
145…第三段外側環状流路内の旋回流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27