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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081476
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】多層構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240611BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240611BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/30 102
B65D65/40 D BRQ
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195128
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】502247341
【氏名又は名称】プランティック・テクノロジーズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】太田 匡彦
(72)【発明者】
【氏名】片倉 剛志
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AB02
3E086AC07
3E086AD01
3E086AD06
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA29
3E086BB01
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB15
3E086BB22
3E086BB51
3E086BB52
3E086BB72
3E086BB74
3E086CA01
3E086DA08
4F100AJ07C
4F100AK03A
4F100AK04A
4F100AK21C
4F100AK41A
4F100AL06C
4F100AR00A
4F100AR00C
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100DG10B
4F100DG10D
4F100GB15
4F100GB23
4F100JA13B
4F100JC00A
4F100JD02C
4F100JD03A
4F100JL12A
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】焙煎コーヒー豆のような保管中にガスを放出する食品においても、離解性に優れ、かつ内圧上昇による破袋を防止でき、落下などの衝撃を受けたとしても内容物の臭気漏れを抑制できる包装体を形成可能な多層構造体を提供する。
【解決手段】シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)をこの順に含む多層構造体であって、シーラント層(A)は、JIS K 7126-2に準拠して、温度23℃、湿度50%下で測定される酸素透過度が100cc/(m・day・atm)以上であり、紙層(B)の坪量は50g/m未満でかつ密度は1.00g/cm未満であり、バリア層(C)は、ポリビニルアルコール系樹脂及び変性デンプンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、多層構造体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)をこの順に含む多層構造体であって、シーラント層(A)は、JIS K 7126-2に準拠して、温度23℃、湿度50%下で測定される酸素透過度が100cc/(m・day・atm)以上であり、紙層(B)の坪量は50g/m未満でかつ密度は1.00g/cm未満であり、バリア層(C)は、ポリビニルアルコール系樹脂及び変性デンプンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、多層構造体。
【請求項2】
シーラント層(A)は、ポリオレフィン系樹脂及び生分解性ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
シーラント層(A)、紙層(B)、バリア層(C)及び紙層(D)をこの順に含む、請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の多層構造体に含まれるシーラント層(A)が接着されてなる、包装体。
【請求項5】
請求項4に記載の包装体の内部に二酸化炭素を放出する食品を含む、食品包装体。
【請求項6】
前記二酸化炭素を放出する食品は、焙煎コーヒー豆又は発酵食品である、請求項5に記載の食品包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の包装容器等に用いられる多層構造体、並びに該多層構造体を含む包装体及び食品包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の環境に関する機運の高まりからプラスチック削減が叫ばれる中で、紙包材の需要が高まっている。紙は生分解性、リサイクル性に優れる材料であるものの、バリア性や強度が低く、プラスチック包材と同様の機能を満たすためには他の機能性材料と積層化又は複合化する必要がある。
【0003】
焙煎コーヒー豆は紙包材の需要が高い食品の一つであるが、包装後にコーヒー豆から排出される二酸化炭素などのガス成分によって、内圧が高まり、密封包装の場合破裂する恐れがある。従来は逆止弁バルブや、包材の面並びにヒートシール部に孔を設ける工夫がなされていた(例えば特許文献1)。同様の問題は、味噌等の発酵食品においても発生しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-167335号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の逆止弁バルブはリサイクルの妨げとなり、孔を設ける場合、コストが増加するばかりでなくバリア性との両立が容易でない。一方で、本発明者の検討によれば、バルブや孔を利用しない包装体は、バリア性が付与されたとしても、食品から放出されるガスにより保管中に内圧が上昇し、袋が破壊(破袋ということがある)されることや、内容物の臭気漏れが起こることがあり、特に落下などの衝撃を受けた場合は内容物の臭気漏れが顕著となることがわかった。また、これらの破袋の防止や臭気漏れと離解性とを両立することも困難であることがわかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、焙煎コーヒー豆のような保管中にガスを放出する食品においても、離解性に優れ、かつ内圧上昇による破袋を防止でき、落下などの衝撃を受けたとしても内容物の臭気漏れを抑制できる包装体を形成可能な多層構造体、並びに該多層構造体を含む包装体及び食品包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)をこの順に含む多層構造体において、シーラント層(A)の酸素透過度が特定の範囲であり、紙層(B)が特定の坪量及び密度を満たし、バリア層(C)が特定の成分を含めば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
【0008】
[1]シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)をこの順に含む多層構造体であって、シーラント層(A)は、JIS K 7126-2に準拠して、温度23℃、湿度50%下で測定される酸素透過度が100cc/(m・day・atm)以上であり、紙層(B)の坪量は50g/m未満でかつ密度が1.00g/cm未満あり、バリア層(C)は、ポリビニルアルコール系樹脂及び変性デンプンからなる群から選択される少なくとも1つを含む、多層構造体。
[2]シーラント層(A)は、ポリオレフィン系樹脂及び生分解性ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含む、[1]に記載の多層構造体。
[3]シーラント層(A)、紙層(B)、バリア層(C)及び紙層(D)をこの順に含む、[1]又は[2]に記載の多層構造体。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の多層構造体に含まれるシーラント層(A)が接着されてなる、包装体。
[5][4]に記載の包装体の内部に二酸化炭素を放出する食品を含む、食品包装体。
[6]前記二酸化炭素を放出する食品は、焙煎コーヒー豆又は発酵食品である、[5]に記載の食品包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、焙煎コーヒー豆のような保管中にガスを放出する食品においても、離解性に優れ、かつ内圧上昇による破袋を防止でき、落下などの衝撃を受けたとしても内容物の臭気漏れを抑制できる包装体を形成可能な多層構造体、並びに該多層構造体を含む包装体、及び食品包装体を提供できる。特に、焙煎コーヒー豆をはじめとした保管中にガスを放出する食品包材などに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例で使用された二軸押出機の概略図である。
図2】実施例で使用された積層体の製造装置の概略図である。
図3】実施例で使用された多層構造体の製造装置の概略図である。
【0011】
[多層構造体]
本発明の多層構造体は、シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)をこの順に含み、シーラント層(A)は、JIS K 7126-2に準拠して、温度23℃、湿度50%下で測定される酸素透過度が100cc/(m・day・atm)以上であり、紙層(B)の坪量は50g/m未満かつ密度は1.00g/cm未満であり、バリア層(C)は、ポリビニルアルコール系樹脂及び変性デンプンからなる群から選択される少なくとも1つを含む。本発明者らは、焙煎コーヒー豆等の保管中にガスを放出する食品を含む包装体に使用される多層構造体について検討したところ、バリア層(C)よりもシーラント層(A)側に坪量が50g/m未満かつ密度が1.00g/cm未満である紙層を備えることで、食品から放出されたガスにより包装袋の内圧は上昇するものの、破袋せずに紙層(B)を通じて外部にガスが抜けることを見出した。また、驚くべきことに、内容物の臭気漏れ自体は抑制されることから、特許文献1のような従来の技術と比べて、簡便かつ性能の高い包装体を提供できる。さらに、シーラント層(A)の酸素透過度が100cc/(m・day・atm)以上であることで、紙層からガスが放出しやすいことからも内圧による破袋を防止できる。また、ポリビニルアルコール系樹脂及び変性デンプンからなる群から選択される少なくとも1つを含むバリア層(C)を備えることで、高い離解性を実現することができ、リサイクル性が高い包装体を提供できる。
【0012】
「シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)をこの順に含む」とは、シーラント層(A)と紙層(B)とバリア層(C)とがこの順に積層されていればよく、各層の層間には、例えば接着層等の他の層を有していてもよい。シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)は直接積層されていることが好ましい。
【0013】
<シーラント層(A)>
本発明の多層構造体は、シーラント層(A)を含むことで、本発明の包装体を作製する際に、本発明の多層構造体のシーラント層(A)同士を接着して容易に包装体を作製することができる。また、本発明の包装体のJIS K 7126-2に準拠して、温度23℃、湿度50%下で測定される酸素透過度(OTRと略記することがある)が100cc/(m・day・atm)以上であることで、包装体の内圧上昇に起因する破袋を抑制できる。シーラント層(A)の前記OTRは、包装体の内圧上昇に起因する破袋を抑制する観点から、200cc/(m・day・atm)以上が好ましく、300cc/(m・day・atm)以上がより好ましい。シーラント層(A)の前記OTRは通常100000cc/(m・day・atm)以下であり、50000cc/(m・day・atm)以下、30000cc/(m・day・atm)以下、又は15000cc/(m・day・atm)以下であってもよい。シーラント層(A)の酸素透過度は、例えば実施例に記載の方法により測定できる。なお、本明細書において、数値範囲の上限値と下限値とは任意に組み合わせることができる。
【0014】
シーラント層(A)を構成する材料はJIS K 7126-2に準拠して、温度23℃、湿度50%下で測定される酸素透過度(OTR)が100cc/(m・day・atm)以上であれば特に限定されないが、通常、熱可塑性樹脂を含んでなる。熱可塑性樹脂は1種又は2種以上含まれていてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(エチレングリコール-co-1,4-シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)(PETG)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリメチルペンテン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ乳酸(PLA);エステル化デンプン;酢酸セルロース系樹脂;バイオポリウレタン等のポリウレタン系樹脂;ポリメチルメタアクリル等のポリ(メタ)アクリル系樹脂;アイオノマー系樹脂;及びこれらの共重合体などが挙げられる。共重合体としては、スチレン-(メタ)アクリル共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。また、(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル樹脂及びアクリル樹脂を包含する意味である。熱可塑性樹脂としては、化石資源由来樹脂を用いても生物由来樹脂を用いてもよい。上記に例示の熱可塑性樹脂のうち、生物由来樹脂としては、例えばポリ乳酸(PLA)、エステル化デンプン、酢酸セルロース、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、バイオポリエチレン、バイオポリエチレンテレフタレート、バイオポリウレタンなどが挙げられる。生物由来樹脂とは、原料として再生可能な有機資源由来の物質を含み、好ましくは化学的又は生物学的に合成することにより得られる数平均分子量(Mn)1,000以上の高分子材料である。好ましくはPLA、エステル化デンプン、酢酸セルロース、PBS、PBSA等の生分解性樹脂を用いると生分解性を向上でき、特にPBS、PBSA等の生分解性ポリエステル系樹脂が好ましい。なお、生分解性樹脂とは、微生物の働きにより、分子レベルまで分解され、最終的には二酸化炭素と水となって自然界へと循環していく性質の樹脂を意味する。
【0015】
これらの熱可塑性樹脂の中でも、ヒートシール性及び包装体の破袋を防ぐ観点から、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、及びこれらの共重合体からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、PBS、PBSA、PETG、及びスチレン-(メタ)アクリル共重合体(アクリル系エマルジョン)からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂がより好ましい。
【0016】
本発明の好適な実施形態では、ヒートシール性及び包装体の破袋を防ぐ観点から、シーラント層(A)は、ポリオレフィン系樹脂及び生分解性ポリエステル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、PBS、及びPBSAからなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0017】
本発明の一実施形態において、シーラント層(A)のガラス転移温度(Tgともいう)は、好ましくは-150℃以上、より好ましくは-130℃以上、さらに好ましくは-120℃以上、さらにより好ましくは-110℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。シーラント層(A)のTgが上記の範囲内であると、食品包装材料として好適なヒートシール性を保有しやすい。シーラント層(A)のTgは、示差走査熱量計(DSC)で測定できる。なお、上記のTgは、シーラント層(A)自体のTgを示すが、シーラント層(A)に含まれる樹脂のTgであってもよい。すなわち、シーラント層(A)に含まれる樹脂のTgは、シーラント層(A)の上記Tgの範囲から選択できる。また、シーラント層(A)が2つ以上の樹脂を含む場合、該樹脂のTgは全ての樹脂の平均値とすることができる。
【0018】
本発明の一実施形態において、シーラント層(A)の重量平均分子量(Mwともいう)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは20,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下である。シーラント層(A)のMwが上記の範囲内であると、溶融成形性と力学的強度を両立しやすい。上記のMwは、シーラント層(A)自体のMwを示すが、シーラント層(A)に含まれる樹脂のMwであってもよい。すなわち、シーラント層(A)に含まれる樹脂のMwは、シーラント層(A)の上記Mwの範囲から選択できる。また、シーラント層(A)が2つ以上の樹脂を含む場合、該樹脂のMwは全ての樹脂の平均値とすることができる。Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を行い、標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0019】
シーラント層(A)は、さらに添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、後述する<バリア層(C)>の項に例示の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。また、シーラント層(A)は、1つ又は2つ以上設けられていてもよく、単層又は多層であってもよい。多層構造体がシーラント層(A)を2つ以上有する場合、バリア層(C)の紙(B)が位置する側とは反対側に少なくとも1つのシーラント層(A)が配置されていればよい。また、2つ以上のシーラント層(A)の厚みや種類は同一であっても、異なっていてもよい。シーラント層(A)が熱可塑性樹脂以外に添加剤を含む場合、その含有量は、シーラント層(A)の質量に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下であっても、3質量%以下であっても、2質量%以下であっても、1質量%以下であってもよい。
【0020】
シーラント層(A)はシール性(例えばヒートシール性)、水蒸気バリア性、遮光性などを有する層であってもよく、シール性を有する層であることが好ましい。シーラント層(A)がシール性を有すると、密閉性を高め、内容物を酸素による酸化等による劣化などから守り、保存期間の延長を可能にしやすい。
【0021】
シーラント層(A)の形態は、特に限定されないが、フィルム又はシート状であることが好ましい。シーラント層(A)の厚みは、バリア性、耐発泡性及び耐変形性を高めやすい観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下、さらにより好ましくは100μm以下、特に好ましくは70μm以下、特により好ましくは50μm以下である。シーラント層(A)の厚みが上記の範囲内であると、本発明の包装体の破袋をより抑制できる傾向となる。多層構造体がシーラント層(A)を2つ以上有する場合、上記シーラント層(A)の厚みは、1つのシーラント層(A)の厚みを示す。シーラント層(A)の厚みは、多層構造体を厚み方向に垂直に切断した断面像を顕微鏡観察することで測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0022】
シーラント層(A)として市販品を用いることもできる。シーラント層(A)を形成する際に、後述の押出コートを使用する場合は、押出コートにより樹脂層を形成し得る組成物(例えば樹脂ペレット)を使用してもよく、後述の溶液コートを使用する場合は、溶液コートにより樹脂層を形成し得る組成物(例えば樹脂のエマルジョン等)を使用してもよく、後述の貼合法を用いる場合は、シーラント層(A)としてフィルム又はシートを使用してもよい。
【0023】
<紙層(B)>
本発明の多層構造体は、紙層(B)を含むことで本発明の包装体の内圧上昇に起因する破袋を抑制できる。紙層(B)はバリア層(C)よりもシーラント層(A)側に積層されており、そうすることで包装体内部のガスを外部に適度に放出することができる。
【0024】
紙層(B)の坪量は50g/m未満である。紙層(B)の坪量が50g/m以上であると、本発明の包装体における内容物の臭気漏れを抑制できない場合がある。紙層(B)の坪量は、好ましくは1g/m以上、より好ましくは10g/m以上、さらに好ましくは20g/m以上、さらにより好ましくは30g/m以上であり、好ましくは45g/m以下、より好ましくは40g/m以下、さらに好ましくは40g/m未満、さらにより好ましくは38g/m以下である。紙層(B)の坪量が上記の範囲内であると本発明の多層構造体の離解性が良好となり、本発明の包装体における内容物の臭気漏れも抑制できる。なお、紙層(B)の坪量は、紙層(B)を2つ以上有する場合、1つの紙層(B)の坪量を意味する。紙層(B)の坪量は実施例に記載の方法により測定できる。
【0025】
紙層(B)の密度は、1.00g/cm未満である。紙層(B)の密度が1.00g/cm未満であると、本発明の包装体における内圧上昇に起因した破袋を抑制できる。紙層(B)の密度は、好ましくは0.90g/cm以下、より好ましくは0.80g/cm以下、さらに好ましくは0.75g/cm以下である。また、紙層(B)の密度は、内容物の臭気漏れを抑制する観点から、好ましくは0.30g/cm以上、より好ましくは0.40g/cm以上、さらに好ましくは0.50g/cm以上である。
【0026】
紙層(B)を構成する紙は、例えばパルプ、填料、薬剤、顔料を含んでなるフィルム又はシートであってよい。パルプとしては、例えば、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未漂白パルプ(NUKP)、サルファイトパルプ等の化学パルプ;ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプ等の機械パルプ;脱墨パルプ、古紙パルプ等の木材繊維;ケナフ、竹、麻等から得られた非木材繊維などが挙げられる。これらのパルプは単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、原紙中への異物混入の発生及び使用後の紙容器をリサイクル使用する際の経時変色の発生を抑制しやすく、また印刷時の面感が良好となりやすい観点から、化学パルプ、機械パルプ、木材繊維が好ましく、化学パルプがより好ましい。
【0027】
填料としては、例えばホワイトカーボン、タルク、カオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、ゼオライト、合成樹脂填料等の公知の填料が挙げられる。填料は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。薬剤としては、例えば酸化デンプン、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン、酵素変性デンプン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、表面サイズ剤(例えば中性サイズ剤)、耐水化剤、保水剤、増粘剤、滑剤、歩留まり向上剤、濾水性向上剤、紙力増強剤等が挙げられ、これらを単独又は二種以上組み合わせて使用してもよい。歩留まり向上剤としては、例えば、硫酸アルミニウムや各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性或いは、両性のものが挙げられる。乾燥紙力増強剤としては、例えばポリアクリルアミド、カチオン化デンプンなどが挙げられ、湿潤紙力増強剤としては、例えばポリアミドアミンエピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらの薬剤は地合や操業性などの影響の無い範囲で添加される。中性サイズ剤としては、アルキルケテンダイマーやアルケニル無水コハク酸、中性ロジンサイズ剤などが挙げられる。顔料としては、例えばカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイトなどの無機顔料及び密実型、中空型、又はコアーシェル型等の有機顔料などが挙げられ、これらを単独又は二種以上組み合わせて使用できる。さらに、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤等も必要に応じて添加することができる。なお、紙の表面を各種薬剤や顔料で処理してもよい。
【0028】
紙の製造(抄紙)方法は特に限定されるものではなく、公知の長網フォーマー、オントップハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマーマシン等を用いて、酸性抄紙、中性抄紙、アルカリ抄紙方式で抄紙して紙を製造することができる。
【0029】
紙の表面処理の方法は特に限定されないが、例えばロッドメタリングサイズプレス、ポンド式サイズプレス、ゲートロールコーター、スプレーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターなどの公知の塗工装置を使用できる。
【0030】
このようにして得られる紙としては、例えば上質紙、中質紙、塗工紙、片艶紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、片艶晒クラフト紙、レーヨン紙、薄葉紙、グラシン紙、板紙、白板紙、防水紙、セロハン、ライナーなどが挙げられる。紙は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
紙は、上述した原紙の片面又は両面に、紙の一部として透明塗工層を有していてよい。原紙上に透明塗工を施すことにより、原紙の表面強度や平滑性を向上しやすく、また、顔料を塗工する際の塗工性を向上しやすい。該透明塗工層は、バインダーとして、デンプン由来の高分子化合物を含んでいてよい。透明塗工の量は、片面あたり固形分で0.1~4.0g/mが好ましく、0.5~2.5g/mがより好ましい。例えば、サイズプレス、ゲートロールコーター、プレメタリングサイズプレス、カーテンコーター、スプレーコーター等のコーター(塗工機)を使用して、デンプン、酸化デンプン等の各種デンプン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子を主成分とする塗布液を原紙上に塗布してよい。また、オンラインソフトカレンダー、オンラインチルドカレンダーなどにより塗工前の原紙にプレカレンダー処理を行い、原紙を予め平滑化しておくことが、塗工後の塗工層を均一化する上で好ましい。
【0032】
紙は、必要に応じて平滑化処理してよい。平滑化処理には、通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー、熱カレンダー、シューカレンダー等の平滑化処理装置を用いることができる。平滑化処理装置は、オンマシンやオフマシンで適宜用いられ、加圧装置の形態、加圧ニップの数、加温等も適宜調整される。
【0033】
<バリア層(C)>
本発明の多層構造体は、バリア層(C)を含むことで本発明の包装体における臭気漏れを抑制することができ、かつ、本発明の多層構造体の紙層の離解性に優れる。バリア層(C)はポリビニルアルコール系樹脂及び変性デンプンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、ポリビニルアルコール系樹脂及び変性デンプンを含むことが好ましい。なお、本明細書において、バリア性とは、ガスの透過を防止又は抑制できる特性に加え、包装体における内容物の臭気漏れを防止又は抑制できる特性を含む意味である。
【0034】
(変性デンプン)
変性デンプンは、バリア性、耐発泡性、耐変形性、離解性及び生分解性を高めやすい観点から、例えばエーテル化デンプン、エステル化デンプン、カチオン化デンプン及び架橋デンプンからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0035】
デンプンとしては、キャッサバ、トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷、サゴ、タピオカ、モロコシ、豆、ワラビ、ハス、ヒシ、小麦、コメ、オート麦、クズウコン、エンドウ等に由来するデンプンが挙げられる。中でもトウモロコシ、キャッサバに由来するデンプンが好ましく、高アミロースのトウモロコシに由来するデンプンがさらに好ましい。デンプンは単独又は二種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
エーテル化デンプンとしては、例えばメチルエーテル化デンプン等のアルキルエーテル化デンプン;例えばカルボキシメチルエーテル化デンプン等のカルボキシアルキルエーテル化デンプン;例えば炭素原子数が2~6個であるヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプン等のヒドロキシアルキルエーテル化デンプン等が挙げられる。また、アリルエーテル化デンプン等も用いることができる。
【0037】
エステル化デンプンとしては、例えば酢酸由来の構造単位を有するエステル化デンプン等のカルボン酸由来の構造単位を有するエステル化デンプン;例えばマレイン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン、フタル酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン、オクテニルスクシン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン等のジカルボン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン;例えば硝酸エステル化デンプン、リン酸エステル化デンプン、尿素リン酸エステル化デンプン等のオキソ酸由来の構造単位を有するエステル化デンプンが挙げられる。他の例としては、キサントゲン酸エステル化デンプン、アセト酢酸エステル化デンプン等が挙げられる。
【0038】
カチオン化デンプンとしては、デンプンと2-ジエチルアミノエチルクロライドとの反応物、デンプンと2,3-エポキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドとの反応物等が挙げられる。
【0039】
架橋デンプンとしては、ホルムアルデヒド架橋デンプン、エピクロルヒドリン架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、アクロレイン架橋デンプン等が挙げられる。
【0040】
変性デンプンとしては、バリア性、耐発泡性、耐変形性、離解性及び生分解性を高めやすい観点から、炭素原子数が2~6個であるヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプン及びジカルボン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプンからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましく、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン、ヒドロキシプロピルエーテル化デンプン、ヒドロキシブチルエーテル化デンプン、マレイン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン、フタル酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプン及びオクテニルスクシン酸無水物由来の構造単位を有するエステル化デンプンからなる群から選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ヒドロキシエチルエーテル化デンプン、ヒドロキシプロピルエーテル化デンプン、及びヒドロキシブチルエーテル化デンプンからなる群から選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。変性デンプン(A)は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、本明細書において、「デンプン」の前に記載された炭素原子数は、デンプン中の1つの水酸基に置換した基(デンプン中の1つの水酸基を変性して形成された基)の炭素原子数を表す。例えば炭素原子数2~5のヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプンは、該デンプン中の1つの水酸基を変性して形成されたヒドロキシアルキル基の炭素原子数が2~5であることを示す。
【0041】
炭素原子数が2~6個であるヒドロキシアルキル基を有するエーテル化デンプンは、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキシドとデンプンとの反応により得られるものであってよい。変性に用いられるヒドロキシ基の平均数は、デンプン中の1グルコースユニット当たり好ましくは0.05~2である。
【0042】
バリア層(C)に含まれる変性デンプンの平均アミロース含有量は、バリア性を高める観点から、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは55質量%以上、さらにより好ましくは60質量%以上、特に好ましくは65質量%以上である。平均アミロース含有量が上記の下限以上であると、バリア性及び耐変形性が向上しやすい。変性デンプン中の平均アミロースの含有量は、通常90質量%以下である。本明細書において、アミロース含有量は、例えば「Starch 50 No.4 158-163(1998)」に記載のヨウ素呈色法により測定できる。なお、平均アミロース含有量は、変性デンプンが1種類の場合は、該1種類の変性デンプンのアミロース含有量を示し、変性デンプンを2種類以上使用する場合は、2種以上の変性デンプンのアミロース含有量を加重平均したものである。
【0043】
変性デンプン中の含水率は5~15質量%であってもよい。
【0044】
変性デンプンは、市販されているものを用いることもできる。変性デンプンの代表的市販品の例としては、例えばIngrediоn社製のヒドロキシプロピルエーテル化デンプンである、ECOFILM(商標)やNational1658(商標)などが挙げられる。
【0045】
変性デンプンの含有量は、変性デンプンとポリビニルアルコール系樹脂との合計100質量部を基準に、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上、さらにより好ましくは60質量部以上、特に好ましくは70質量部以上、特により好ましくは75質量部以上であり、好ましくは99.5質量部以下、より好ましくは99質量部以下、さらに好ましくは98質量部以下、特に好ましくは95質量部以下である。変性デンプンの含有量が上記の下限以上であると、生分解性及び離解性を高めやすく、また変性デンプンの含有量が上記の上限以下であると、バリア性、耐油性及び耐変形性を高めやすい。なお、変性デンプンの含有量は、バリア層(C)の質量を基準とした場合でも上記の範囲から選択できる。
【0046】
(ポリビニルアルコール系樹脂)
ポリビニルアルコール系樹脂は、変性デンプンと相容性のあるポリマーである。
【0047】
ポリビニルアルコール系樹脂は、鹸化度が好ましくは80モル%以上であり、100モル%以下、99.9モル%以下又は99.8モル%以下であってもよい。ポリビニルアルコールの鹸化度が上記範囲内である場合には、バリア性、耐発泡性及び耐変形性を高めやすい。鹸化度は、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは88モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。なお、鹸化度は、ポリビニルアルコール系樹脂における水酸基とエステル基との合計に対する水酸基のモル分率を示す。鹸化度は、JIS K 6726(ポリビニルアルコール試験方法)に準拠して測定できる。
【0048】
ポリビニルアルコール系樹脂は、JIS Z 8803に準拠して測定したポリビニルアルコール系樹脂の4%水溶液の20℃での粘度が好ましくは1~50mPa・sである。ポリビニルアルコールの粘度が上記範囲内である場合には、バリア性、耐発泡性及び耐変形性を高めやすい傾向がある。前記粘度は、より好ましくは2mPa・s以上、さらに好ましくは3mPa・s以上であり、より好ましくは45mPa・s以下、さらに好ましくは40mPa・s以下である。
【0049】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルアルコール単位以外の他の単量体単位を更に含むことができる。他の単量体単位としては、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセンなどのα-オレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3-ジアセトキシ-1-ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3-ジアセトキシ-1-アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩又はエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル;蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カルリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル単量体が例示される。他の単量体単位の含有量は、ポリビニルアルコール系樹脂を構成する構成単位の合計モル量に対して、10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。
【0050】
ポリビニルアルコール系樹脂の製造方法は特に限定されない。例えば酢酸ビニル単量体と、任意に他の単量体とを重合し、得られたポリマーを鹸化してビニルアルコール単位に変換する方法が挙げられる。重合する際の重合方式としては、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合等が挙げられる。重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法が挙げられる。ポリマーの鹸化は、公知の方法を適用できる。例えばアルコール又は含水アルコールに当該ポリマーが溶解した状態で行うことができる。このとき使用できるアルコールは、例えばメタノール、エタノール等の低級アルコールである。ポリビニルアルコール系樹脂は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0051】
ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、変性デンプンとポリビニルアルコール系樹脂との合計100質量部を基準に、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、特に好ましくは5質量部以上、特により好ましくは10質量%以上であり、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、さらにより好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下、特により好ましくは25質量部以下である。ポリビニルアルコール系樹脂の含有量が上記の下限以上であると、バリア性、耐油性及び耐変形性を高めやすく、またポリビニルアルコール系樹脂の含有量が上記の上限以下であると、生分解性及び離解性を高めやすい。なお、ポリビニルアルコール系樹脂の含有量は、バリア層(C)の質量を基準とした場合でも上記の範囲から選択できる。
【0052】
バリア層(C)において、変性デンプンとポリビニルアルコール系樹脂との合計割合は、該バリア層(C)の質量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、90質量%以上、95質量%以上又は98質量%以上であってもよい。また、変性デンプン(A)とポリビニルアルコール系樹脂との合計割合は100質量%以下であってもよい。変性デンプン(A)とポリビニルアルコール系樹脂との合計割合が上記の範囲内であると、バリア性、耐発泡性、耐変形性、生分解性及び離解性を高めやすい。
【0053】
変性デンプン(A)とポリビニルアルコール系樹脂との合計割合は、該バリア層(C)を構成する樹脂の質量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、又は99質量%以上であってもよい。また、変性デンプン(A)とポリビニルアルコール系樹脂との合計割合は100質量%以下であってもよい。
【0054】
(他の成分)
本発明の多層構造体において、バリア層(C)は、炭素原子数が12~22の脂肪酸及び/又はその脂肪酸塩をさらに含んでいてよい。炭素原子数が12~22の脂肪酸及びその脂肪酸塩としては、例えばステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リノレイン酸、ベヘニン酸などが挙げられる。これらの中でも加工性の観点から、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウムが好ましい。炭素原子数が12~22の脂肪酸及びその脂肪酸塩はそれぞれ単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0055】
バリア層(C)が、炭素原子数が12~22の脂肪酸及び/又はその脂肪酸塩を含有する場合、バリア層(C)中の含有量は、該バリア層(C)の質量に対して、好ましくは0.01~3質量%、より好ましくは0.03~2質量%、さらに好ましくは0.1~1質量%である。炭素原子数が12~22の脂肪酸及び/又はその脂肪酸塩の含有量が上記の範囲内であると加工性の点で有利となる傾向がある。
【0056】
バリア層(C)は、粘土をさらに含んでいてもよい。粘土としては、合成又は天然層状ケイ酸塩粘土、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、雲母(マイカ)、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、ソーコナイト、バーミキュライト、レディカイト、マガダイト、ケニヤアイト、スチーブンサイト、ヴォルコンスコイトなどが挙げられる。粘土は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0057】
バリア層(C)が粘土を含有する場合、バリア層(C)中の含有量は、該バリア層(C)の質量に対して、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.5~2質量%である。粘土の含有量が上記の範囲内であると、透明性及び強度の点で有利となる傾向がある。
【0058】
バリア層(C)は、成膜性や塗工性の観点から可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、例えば水、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、キシリトール、マンニトール、トリオレイン酸グリセロール、エポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、トリ酢酸グリセリル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチラート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコールが挙げられる。可塑剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの可塑剤の中でも、バリア性を高める観点から、水が好ましい。バリア層(C)が水を含む場合、バリア層(C)において、変性デンプンとポリビニルアルコール系樹脂と水との合計割合は、該バリア層(C)の質量に対して、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上であり、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上又は99.9質量%以上であってもよい。
【0059】
バリア層(C)中の含水率(含水量)は、バリア層(C)の質量に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは4質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。含水率が上記の下限以上であると、バリア層(C)が食品包装体として適正な屈曲耐性を有しやすく、また含水率が上記の上限以下であると、耐発泡性、耐変形性及びバリア性を高めやすい。なお、含水率は、ワンダーブレンダーWB-1で最大粒径1mm以下に粉砕し、加熱乾燥式水分計を用いて、温度130℃で60分間測定したときの含水率である。
【0060】
バリア層(C)は、必要に応じて、充填剤、加工安定剤、耐候性安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、他の熱可塑性樹脂、潤滑剤、香料、消泡剤、消臭剤、増量剤、剥離剤、離型剤、補強剤、架橋剤、防かび剤、防腐剤、結晶化速度遅延剤などの添加剤をさらに含むことができる。これらの添加剤は単独又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0061】
バリア層(C)は、1つ又は2つ以上設けられていてもよく、単層又は多層であってもよい。バリア層(C)が2つ以上の場合、シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)がこの順に積層された構成を含んでいれば、もう1層のバリア層(C)の位置は特に限定されず、また各層の厚みや種類は異なっていても、同じであってもよい。
【0062】
バリア層(C)の形態は、フィルム又はシート状であることが好ましい。バリア層(C)の厚みは、バリア性、耐発泡性、耐変形性及び生分解性を高める観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは400μm以下、さらにより好ましくは300μm以下、特に好ましくは250μm以下である。特により好ましくは150μm以下、特にさらに好ましくは80μm以下である。多層構造体がバリア層(C)を2つ以上有する場合、上記バリア層(C)の厚みは、1つのバリア層(C)の厚みを示す。バリア層(C)の厚みは、顕微鏡観察で測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0063】
<多層構造体>
本発明の多層構造体は、シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)をこの順に含むため、本発明の多層構造体のシーラント層(A)同士を接着させて包装体を作製した場合、焙煎コーヒー豆のような保管中にガスを放出する食品を内容物とした場合であっても、シーラント層(A)及び紙層(B)を経由してガスが外部に放出されるため、破袋を防止できる。また、理由は定かではないが、臭気漏れも抑制できるため、保管中にガスを放出する食品を包装する包装体として好適に用いることができる。特に、本発明の多層構造体で形成された包装体は、落下などの衝撃を受けても内容物の臭気漏れを有効に抑制できる。本発明の多層構造体は、シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)がこの順に直接積層されていることが好ましい。
【0064】
本発明の多層構造体は、シーラント層(A)、紙層(B)、バリア層(C)及び紙層(D)をこの順に含むことが好ましい。紙層(D)は紙層(B)で記載したものと同様の材料を用いることができる。紙層(D)は紙層(B)と同一であっても異なっていてもよい。紙層(D)の坪量及び密度は特に限定されず、一般的に入手できる紙を用いることができる。本発明の多層構造体は、紙層(D)を備えることで多層構造体成形時のカール等の不良やそれに起因する包装体のゆがみを抑制しやすい。さらに、包装体の外面に紙が露出されることで紙包装としての認知がされやすい効果があるほか、水溶性が高いバリア層(C)が水に濡れることでバリア性が低下することを抑制することができる。
【0065】
本発明の多層構造体は、シーラント層(A)、紙層(B)、バリア層(C)及び紙層(D)以外の他の層を含んでいてもよい。
【0066】
他の層としては、例えば接着剤層、プライマー層、無機蒸着層、熱シール層、防湿層、遮光層などが挙げられる。接着剤層を構成する接着剤としては、例えばアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、エチレン-酢酸ビニル系接着剤、塩化ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、ニトリルセルロース系接着剤、フェノール系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、メラミン系接着剤、スチレン系接着剤などが挙げられ、接着性の観点から、ウレタン系接着剤等が好ましい。接着剤層の厚みは、好ましくは0.1~30μm、より好ましくは1~20μmである。接着剤層の厚みは、光学顕微鏡や膜厚計等を用いて測定できる。
【0067】
無機蒸着層としては、例えば酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着させた層などが挙げられる。熱シール層は、本発明におけるシーラント層(A)とは異なる熱接着(ヒートシール)可能な層であり、また、防湿層は、防湿作用を有する層である。
【0068】
他の層は、シーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)がこの順に積層されていれば、その積層位置は特に限定されないが、シーラント層(A)及び紙層(B)による内部ガスの放出を妨げないように他の層を積層することが好ましい。多層構造体は、他の層を1つ又は2つ以上有していてもよく、2つ以上有する場合、他の層の厚みや種類は同一であっても、異なっていてもよい。
【0069】
本発明の多層構造体の層構成の具体例を以下に示す。なお「//」は接着層を介して積層されていても、直接積層されていてもよいことを意味するが、直接積層された構成であることが好ましい場合がある。
シーラント層(A)//紙層(B)//バリア層(C)、シーラント層(A)//紙層(B)//バリア層(C)//紙層(D)、シーラント層(A)//紙層(B)//バリア層(C)//紙層(D)//バリア層(C)、シーラント層(A)//紙層(B)//バリア層(C)//紙層(D)//バリア層(C)//紙層(D)。
【0070】
なお、上記の層構成を有する多層構造体において、任意の位置に上記他の層を含んでいてもよい。
【0071】
本発明の多層構造体は、酸素バリア性に優れている。本発明の一実施形態では、多層構造体の酸素透過度(OTR)は、好ましくは100cc/(m・day・atm)以下、より好ましくは50cc/(m・day・atm)以下、さらに好ましくは30cc/(m・day・atm)以下、さらにより好ましくは10cc/(m・day・atm)以下、特に好ましくは5cc/(m・day・atm)以下である。多層構造体の酸素透過度の下限は0cc/(m・day・atm)以上である。多層構造体の酸素透過度(OTR)は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0072】
本発明の多層構造体は、離解性に優れている。本発明の一実施形態では、多層構造体の離解度は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは85%以上であり、例えば88%以上又は90%以上であってもよい。多層構造体の離解度の上限は100%以下である。多層構造体の離解度は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。なお、本明細書において、離解性とは、離解し得る特性、より詳細には離解液中でパルプが分離、懸濁しやすい特性を示し、離解度により評価できる。
【0073】
[多層構造体の製造方法]
本発明の多層構造体の製造方法は、特に限定されないが、例えば紙層(B)にバリア層(C)を直接積層して積層体を得る工程(工程(X)と称する);及び得られた積層体中の紙層(B)の表出面側に、シーラント層(A)を積層して多層構造体を得る工程(工程(Y)と称する)を含む方法が挙げられる。また、その他の手段としては、各層を製膜した後、ドライラミネートにより各層を積層することもできる。
【0074】
<工程(X)>
工程(X)は、紙層(B)にバリア層(C)を直接積層して積層体を得る工程であり、紙層(B)に変性デンプン及び前記ポリビニルアルコール系樹脂を含む含水組成物をコートする工程(工程(i)と称する)を含むことが好ましく、押出機を用いて、該含水組成物を引取機で搬送された紙層(B)に被覆する工程を含むことがより好ましい。このような工程を含むと、得られる多層構造体のバリア性、耐発泡性及び耐変形性を高めやすい。なお、紙層(D)を含む場合は、紙層(B)及び紙層(D)の間に含水樹脂組成物をコートすることが好ましい。すなわち、紙層(B)及び紙層(D)で含水樹脂組成物コート層を挟む形で積層体(紙層(B)/バリア層(C)/紙層(D))を作製することが好ましい。
【0075】
(含水組成物の製造)
含水組成物は、変性デンプン及びポリビニルアルコール系樹脂を含有する樹脂組成物を含み、含水率が1~50質量%の組成物である。該含水率は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。含水率が上記の範囲内であると、紙(B)に含水組成物をコートする際の塗布性及び成膜性を向上しやすく、得られる多層構造体における紙層(B)とバリア層(C)との間の密着性を高めやすいため、バリア性を高めやすい。なお、含水組成物の含水率は、例えば加熱乾燥式水分計を用いて温度130℃で60間測定したときの含水率である。なお、本明細書において、含水組成物は、水を含む樹脂組成物において上記方法で測定した含水率が1~50質量%のものを全て含む意味である。すなわち、含水組成物は、樹脂組成物に水を加えて含水率を上記範囲に調整したものであることが好ましいが、製造時点で含水率が上記範囲である樹脂組成物も含む。
【0076】
樹脂組成物は、例えば、少なくとも、変性デンプン及びポリビニルアルコール系樹脂を混合して混合物を得る工程(1)、該混合物を押出す工程(2)、及び押出された混合物を冷却及び乾燥する工程(3)を含む方法により製造できる。なお、樹脂組成物に含まれる成分は、バリア層(C)に含まれる成分と同じであるが、その含水率は互いに同一又は異なっていてもよく、好ましくはバリア層(C)の含水率と同様の範囲から選択できる。
【0077】
工程(1)は、少なくとも変性デンプン及びポリビニルアルコール系樹脂を混合する工程であり、任意に他の成分、例えば前記炭素原子数が12~22の脂肪酸及び/又はその脂肪酸塩、前記粘土、前記可塑剤、及び前記添加剤等を共に混合することができる。
【0078】
工程(1)は通常、押出機を用いて行う。押出機中において、各成分にスクリューによりせん断応力を与え、バレルへの外部熱の適用により加熱しながら均質に混合する。
【0079】
押出機としては、例えば二軸スクリュー押出機を用いることができる。二軸スクリュー押出機は、共回転又は逆回転のいずれであってもよい。スクリュー直径は、例えば20~150mm、押出機長さ(L)とスクリュー直径(D)の比L/D比は、例えば20~50であってよい。スクリューの回転速度は、好ましくは80rpm以上、より好ましくは100rpm以上である。また、押出成形圧力は、好ましくは5バール(0.5MPa)以上、より好ましくは10バール(1.0MPa)以上である。各成分はそれぞれ直接、押出機中へ導入することができる。また、これらの各成分を、ミキサーを用いて予備混合したものを押出機中へ導入してもよい。
【0080】
工程(1)において、成膜性とガスバリア性を高める観点から、混合物の質量に対して、下限として好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、上限として好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下の可塑剤、好ましくは水を混合することが好ましい。ここで、該混合物の質量は可塑剤を含む混合物の総質量を示す。工程(1)において、押出の初期段階に可塑剤を導入してもよく、上記加熱温度に達する前、例えば100℃以下のときに可塑剤を導入することができる。変性デンプンは、水分、熱及びせん断応力の組み合わせによりクッキング処理が施され、ゼラチン(ゲル)化させることができる。また、別途可塑剤、好ましくは水を導入することにより、ポリビニルアルコール系樹脂を溶解し、樹脂組成物を軟化し、モジュラス及び脆性を低下させることができる。
【0081】
工程(1)において、好ましくは100℃超150℃以下、より好ましくは115℃以上140℃以下の温度に加熱してクッキング処理を行う。ここで、クッキング処理とは、デンプン粒を破砕し、ゲル化させる処理である。加熱は押出機のバレルに外部から熱を適用することにより行うことができる。各バレルへは、段階的に変えた温度を適用することにより、目的とする温度まで加熱できる。120℃超の温度においてクッキング処理を行う場合、加工性の点で有利となる。
【0082】
クッキング処理した混合物は、発泡を防止するため、好ましくは85~120℃、より好ましくは90~110℃の温度へ低下しながら、ダイの方へ押し進めることが好ましい。また、バレルから排気することにより発泡を防止し、水分を除去できる。
【0083】
押出機中の滞留時間は、温度プロファイルやスクリュー速度に応じて設定可能であり、好ましくは1~2.5分である。
【0084】
混合物を押出す工程(2)では、溶融混練されながら押出機中を押し進められてきた溶融した混合物をダイから押出す。ダイの温度は好ましくは85~120℃、より好ましくは90~110℃の温度である。
【0085】
押出された混合物(溶融物)を冷却及び乾燥する工程(3)では、混合物(溶融物)はフィルム状若しくはシート状、又はストランド状に押出すことができる。
【0086】
混合物をフィルム状に押出す場合、混合物はフィルム成形用ダイから押出し、次いで引取りローラーで巻取りながら冷却及び乾燥することができる。ダイ及びローラーの間では、混合物がローラーに付着するのを防ぐように冷却するのが好ましい。ダイ及びローラーの間に成形用のロールを設置してもよい。成形用のロールの材質は例えば、ゴム製、樹脂製、金属製である。乾燥のために、ロールは加温してもよく、巻取の際に脱湿空気を供給してもよい。脱湿空気は、吹込チューブ法の場合、フィルムがダイを退出するときにフィルムを膨張させるために使用できる。タルクを空気流中に同伴させてフィルムのブロッキングを防ぐこともできる。
【0087】
混合物をストランド状に押出す場合、複数穴のストランドノズルから押出し、回転カッターで切断することでストランドをペレット形状にできる。ペレットの膠着を防ぐために、振動を定期的もしくは定常的に与え、熱風、脱湿空気又は赤外線ヒーターによりペレット中の水分を除去することができる。
【0088】
本発明の好適な実施態様では、樹脂組成物の形成後、水を加えて含水組成物を形成するため、樹脂組成物の形態はペレット状であることが好ましい。
【0089】
本発明の好適な一実施態様では、得られた樹脂組成物(好ましくはペレット状の樹脂組成物)に水を添加し、例えば撹拌混合することにより含水組成物を得ることができる。樹脂組成物同士の膠着を防ぎ、ペレット全体に水を吸着させるために、水を2回以上に分けて添加しながら撹拌を行うことが好ましい。また、含水率を一定に保つために、含水組成物は密閉容器内で保管してもよい。
【0090】
(積層体の製造)
工程(X)において、好ましくは前記含水組成物を押出機に投入する。押出機としては、例えば単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機などが挙げられる。押出機のスクリュー直径は例えば20~150mmであり、押出機長さ(L)とスクリュー直径(D)の比L/D比は例えば15~50であり、スクリューの回転速度は、好ましくは80rpm以上、より好ましくは100rpm以上である。押出機中のシリンダー温度は例えば80~120℃、好ましくは90~110℃であってよい。
【0091】
押出機に投入された含水組成物は可塑化され、ダイ出口から吐出される。一方、引取機、好ましくはローラー式引取機で紙層(B)を搬送させる。該搬送させた紙層(B)上にダイ出口から吐出した含水組成物をコートすることで積層体が得られる。得られた積層体は、金属ロールを含む複数のロールの間で紙層(B)と圧着されつつ搬送され、巻取機でロール状に巻き取ることができる。複数のロールとしては、例えば加圧ロール、キャストロール、タッチロールなどが挙げられる。このようにして、紙層(B)/バリア層(C)の積層体を得ることができる。なお、本発明では、上記製造過程で、含水組成物の水が蒸発するため、得られる積層体中のバリア層(C)の含水率は、含水組成物よりも低減される。また、得られた積層体を乾燥して含水率を調整してもよい。紙層(D)を含む場合は、紙層(B)とは反対側の面から紙層(D)を搬送してバリア層(C)を挟むように積層する以外は、上記と同様の方法で積層体(紙層(B)/バリア層(C)/紙層(D))を作製できる。
【0092】
<工程(Y)>
工程(Y)は、得られた積層体中の紙層(B)の表出面側に、シーラント層(A)を積層して多層構造体を得る工程である。
【0093】
工程(Y)におけるシーラント層(A)の積層方法としては、例えば、押出コート法や押出ラミネート法、溶液コート法、フィルム貼合法などが挙げられる。押出コート法は、例えば積層体(例えば紙(B)/バリア層(C))中の紙層(B)上に、熱可塑性樹脂及び任意に添加剤を押出コート又は押出ラミネートする方法であってもよい。また、溶液コート法は、例えば積層体中の紙層(B)上に樹脂を溶媒に溶解または分散させた溶液を塗工、乾燥する方法であってもよい。また、フィルム貼合法は、例えば積層体中の紙層(B)上に、フィルム状のシーラント層(A)をドライラミネートやサンドララミネートする方法であってもよい。
【0094】
本発明の多層構造体が他の層を含む場合、他の層を積層する方法としては、例えばシーラント層(A)の積層方法として上記に例示の方法が挙げられる。
【0095】
本発明の多層構造体は、例えば、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられるバリア包装材料、又は産業用資材などに用いることができる。これらの中でも、食品などの包装材、容器、カップ等の包装用途に用いられるバリア包装材料として使用することができ、食品などの軟包装材として使用することができる。特に、本発明の効果を利用する観点からは、包装体の内部にガスを放出する食品を含むことが好ましく、前記ガスが二酸化炭素であることが好ましい。二酸化炭素を放出する食品は焙煎コーヒー豆や発酵食品等が挙げられる。
【0096】
[包装体及び食品包装体]
本発明は、本発明の多層構造体に含まれるシーラント層(A)が接着されてなる包装体を包含する。本発明の包装体は、内側から外側に向かってシーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)の順、又は、その逆の順に各層が配置されていてもよいが、内圧上昇に起因する破袋の抑制や包装体における内容物の臭気漏れを抑制する観点、及びガスバリア性の観点から、内側から外側に向かってシーラント層(A)、紙層(B)及びバリア層(C)の順に配置、すなわち、多層構造体中のシーラント層(A)側が包装体の内側(内部)に配置されていることが好ましい。本発明の包装体は、シーラント層(A)が接着されて包装体を形成していれば、その形状は特に限定されないが、例えば二方袋、三方袋、チャック付三方袋、合掌袋、ガゼット袋、底ガゼット袋、スタンド袋、スタンドチャック袋、四方柱平底ガゼット袋、サイドシール袋、及びボトムシール袋などであってもよく、容器やカップなどの形態であってもよい。本発明の包装体はシーラント層(A)がシーラント層(A)以外の層と接着されていてもよいが、バリア性等の観点から、シーラント層同士が接着されていることが好ましい。また、本発明の包装体はシーラント層が、接着性やバリア性等の観点から、熱接着されてなる(ヒートシール又は熱融着されてなる)ことが好ましい。
本発明は、本発明の包装体の内部に二酸化炭素を放出する食品を含む食品包装体を包含する。本発明の食品包装体は、内圧の上昇による破袋が抑えられる一方、簡便な構造でかつ離解性にも優れ、落下などの衝撃を受けたとしても臭気漏れを抑制できる。二酸化炭素を放出する食品は、特に限定されないが、焙煎コーヒー豆又は発酵食品であることが好ましく、これらの食品であっても本発明の食品包装体は内圧の上昇による破袋や臭気漏れを有効に抑制できる。
【実施例0097】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0098】
〔試験方法〕
(1)酸素透過度
実施例及び比較例で得られたシーラント層(A)の酸素透過度測定用のフィルム及び多層構造体をそれぞれ、20℃、65%RHの条件下で2週間保管した後、酸素透過量測定装置に取り付け、酸素透過度を測定した。測定条件は以下の通りとした。
装置:モダンコントロール社製「MOCON OX-TRAN2/20」
温度:20℃
酸素供給側及びキャリアガス側の湿度:65%RH
酸素圧:1.0atm
キャリアガス圧力:1.0atm
【0099】
(2)紙の坪量
実施例及び比較例で使用する紙層(B)及び紙層(D)の坪量はISO 536:2019(紙及び板紙-坪量測定方法)に準拠する方法で測定した。
【0100】
(3)紙の密度
実施例及び比較例で使用する紙層(B)の密度はISO 534:2011(紙及び板紙-厚さ、密度及び比容積の測定)に準拠する方法で測定した。
【0101】
(4)シーラント層(A)及びバリア層(C)の厚み
実施例及び比較例で得られた多層構造体から1×1cmの小片を切り出し、ミクロトームで断面を平滑に切削した。電解放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテク社製SU-8010)を用いてサンプル片の断面を測定し、シーラント層(A)及びバリア層(C)の厚みを計測した。界面が不明瞭な場合はヨウ化カリウム染色によってバリア層(C)を前処理した後に計測を実施した。
【0102】
(5)離解性
実施例及び比較例で得られた多層構造体について、CEPI recyclability laboratory test method- Version 2020に準拠する方法で離解性を評価した。下記の式で離解度を定義した。
離解度(%)=100-Coarse reject(%)-Fine reject(%)
【0103】
(6)焙煎コーヒー豆の保存試験
実施例及び比較例で得られた多層構造体を用いて、内寸が幅90mm、奥行き50mm、高さ260mmのガゼット袋を作製した。製袋に当たっては、シーラント層(A)同士をヒートシールし、各シール強度は剥離時にシーラントの材料破壊以上の強度であることを確認した。2ハゼまで焙煎した直後に5分間冷却したコーヒー豆200gを、各ガゼット袋に入れ、上部を製袋時と同じヒートシール条件でシールし密封した。コーヒー豆を密封した一部のガゼット袋は1mの高さからランダムな向きで落下させた。落下試験を行わなかったコーヒー豆封入後のガゼット袋と、落下後のコーヒー豆封入後のガゼット袋を、それぞれ内容積3Lのガラス容器に入れて上部を密閉し、23℃、50%RH環境下で1週間保管した。保管後にポータブル型ニオイセンサ(新コスモス電機社、XP-329m)のセンサー部をガラス容器の隙間に差し入れ、臭気強度を測定し、落下試験を行わなかったコーヒー豆封入後のガゼット袋の臭気強度を「静置時臭気漏れ」、落下後のコーヒー豆封入後のガゼット袋の臭気強度を「落下後臭気漏れ」の評価とした。また、ガラス容器中のガゼット袋の破袋の有無を目視にて確認した。
【0104】
〔用いた材料〕
(1)デンプン
・ECOFILM(商標):プロピレンオキサイドにより変性されたトウモロコシデンプン、アミロース含有量70質量%、Ingredion社製
【0105】
(2)PVOH
・クラレポバール(商標)4-98:ポリビニルアルコール樹脂、鹸化度98mol%、粘度4mPa・s(20℃、4%水溶液)、株式会社クラレ製
【0106】
(3)変性PVOH
・エクセバール(商標)AQ-4104:変性ポリビニルアルコール樹脂、株式会社クラレ製
【0107】
(4)PE
・ノバテック(登録商標)LC600A:低密度ポリエチレン樹脂、日本ポリエチレン株式会社製
【0108】
(5)PP
・ノバテック(登録商標)FL02A:ポリプロピレン樹脂、日本ポリプロ株式会社製
【0109】
(6)PETG
・SKYGREEN(登録商標)K2012:PETG樹脂、SKケミカル株式会社製
【0110】
(6)PBS樹脂
・BioPBS FZ92AC:ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、PTTMCC社製
【0111】
(7)アクリル系エマルジョン
・HYDRECT:アクリル系エマルジョン、不揮発分40%、DICグラフィックス社製
【0112】
(8)PVDC
・サラン(商標)フィルム700:ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、43μm厚、旭化成株式会社製
【0113】
(9)EVOH
・エバール(商標)EF-XL:二軸延伸エチレンービニルアルコール共重合樹脂(EVOH)フィルム、12μm厚、株式会社クラレ製
【0114】
(10)蒸着PET
・VM-PET1310:アルミ蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム、12μm厚、東レフィルム加工株式会社製
【0115】
(11)紙層(B)及び紙層(D)
・未晒クラフト紙、坪量23g/m、密度0.59g/cm3
・未晒クラフト紙、坪量35g/m、密度0.69g/cm3
・未晒クラフト紙、坪量45g/m、密度0.69g/cm3
・未晒クラフト紙、坪量50g/m、密度0.69g/cm3
・晒クラフト紙、坪量40g/m、密度0.84g/cm3
・グラシン紙、坪量40g/cm、密度1.00g/cm3
なお、紙層の坪量及び密度は上記試験方法(2)及び(3)に記載の方法に従って測定した。
【0116】
<実施例1>
原料としてECOFILM(商標)(デンプン)8.000kgと、クラレポバール(商標)4-98(PVOH)2.000kgとをタンブラーミキサー内で2時間混合し、得られた混合物を、液体ポンプを接続した二軸押出機に供した。図1に実施例1で用いられた二軸押出機の概略図を示し、押出機のスクリュー直径、L/D比、スクリュー回転速度、運転方式、及び温度プロファイル(表1)を以下に示した。
【0117】
【表1】
【0118】
スクリュー直径:27mm
L/D比:48
スクリュー回転速度500rpm
運転方式:共回転(かみ合せ自己ワイピング)方式
【0119】
具体的には、得られた混合物を二軸押出機の重量フィーダーを経由して3.5kg/時間の速度でC1におけるホッパーを通ってバレル内に供給した。水をC4における液体ポンプ(L)を通して、26g/分の流速でバレル内に噴射した。C5~C9の温度域はクッキング域であり、これらの帯域内でデンプンの完全なアルファー化を完了した。C11以後に設置した複数穴のストランドノズルから押出、回転カッターで切断することでペレット形状に成形した。ペレットは過剰の水分を含有するため、膠着を防ぐために振動を定常的に与えながら、熱風で水分を除去した。
【0120】
得られたペレット形状の樹脂組成物に、樹脂組成物の質量に対して35質量%となるまで水を添加した。水の添加時はペレット同士の膠着を防ぎ、かつペレット全体に水を均一に吸収させるために、水を複数回に分けて添加しながらタンブラーミキサーで15分間撹拌した。撹拌後は水分が揮散しないようにポリエチレン袋に入れて密封し6時間室温で静置した。このようにして、含水率が35質量%の含水組成物(含水ペレット)を得た。なお、含水率は、メトラー・トレド社製加熱乾燥式水分計「HR73」を用いて、130℃で60分間測定することで確認した。
【0121】
続いて得られた含水ペレットを、図2に記載の単軸押出機2に投入し、製膜用ダイス3から押出した。次いで、ダイス3出口から押し出された含水組成物4をローラー式引取機(図示せず)で搬送させた紙5並びに紙5’の間に樹脂組成物の層(バリア層(C))の厚みが20μmとなるようにコートした。コートして得られた積層体6(被覆物ともいう)は直ちに加圧ロール(ゴム製)7a、キャストロール(金属製)7b及びタッチロール(ゴム製)7cを通じて圧着させた後、巻取機(図示せず)でロール状に巻き取った。このようにして、紙層(B)/バリア層(C)/紙層(D)がこの順に積層された積層体を得た。使用した単軸押出機及び運転条件の詳細と、温度プロファイル(表2)を以下に示す。
・単軸押出機:プラスチック工学研究所製押出機(40mm径、L/D=25)
・設定温度:
【表2】

・吐出量:20kg/hr
・ダイス:450mm幅コートハンガーダイ、リップ開度0.2mm
・ダイス-キャストロール間の距離(エアーギャップ):150mm
・紙:未晒クラフト紙、坪量35g/m、密度0.69g/cm3
【0122】
得られた積層体は偏肉や異物等は見られず、良好な外観だった。
【0123】
続いてポリエチレン(PE)(ノバテック(登録商標)LC600A)15を図3に記載の単軸押出機16に投入し、製膜用ダイス17から押出した。次いで、上記で得られた積層体6をローラー式引取機(図示せず)で搬送させ、搬送させた積層体6にダイス17出口から押し出されたPE18をコートした。コートとして得られた多層構造体19は直ちに加圧ロール(ゴム製)7a、キャストロール(金属製)7b及びタッチロール(ゴム製)7cを通じて圧着させた後、巻取機(図示せず)でロール状に巻き取った。このようにして、シーラント層(A)/紙(B)/バリア層(C)/紙(D)がこの順に積層された多層構造体を得た。使用した単軸押出機及び運転条件の詳細を以下に示す。なお、シーラント層(A)(PE層)の厚みは20μmであった。得られた多層構造体について、上記試験方法(1)、及び(4)~(6)に記載の方法に従って、酸素透過度、各層の厚み、離解性及び保存試験を行い評価した。結果を表3に示す。
・単軸押出機:プラスチック工学研究所製押出機(40mm径、L/D=25)
・樹脂温度:320℃
・吐出量:20kg/hr
・ダイス:450mm幅コートハンガーダイ、リップ開度0.6mm
・ダイス-キャストロール間の距離(エアーギャップ):150mm
【0124】
また、未晒クラフト紙(坪量35g/m、密度0.69g/cm3)上に、上記と同じ方法で厚み20μmのPE層を積層してシーラント層(A)/紙層の層構成を有する、シーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、上記試験方法(1)に記載の方法に従って、評価した。結果を表3に示す。
【0125】
<実施例2>
シーラント層(A)として、PPを用い、シーラント層(A)積層時の樹脂温度を280℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0126】
<実施例3>
シーラント層(A)として、PETGを用い、シーラント層(A)積層時の樹脂温度を280℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0127】
<実施例4>
シーラント層(A)として、PBSを用い、シーラント層(A)積層時の樹脂温度を170℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0128】
<実施例5>
シーラント層(A)として、アクリル系エマルジョンを用いて、紙層(B)上に乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、熱風乾燥機を用いて100℃で3分間させることで多層構造体を作製し、シーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムも上記と同様にアクリル系エマルジョンを塗工して作製した以外は、実施例1と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0129】
<実施例6~8、12,比較例3、4>
紙層(B)及び紙層(D)を表3に記載の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0130】
<実施例9>
樹脂組成物として、変性デンプンのみを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0131】
<実施例10>
PVOHを95℃の熱水中で1時間撹拌することで作製した18重量%の水溶液を調製し、未晒クラフト紙(坪量35g/m、密度0.69g/cm3)上に得られた水溶液を乾燥後の厚みが12μmとなるように塗工した。紙(B)の塗工面の上から未晒クラフト紙(坪量35g/m、密度0.69g/cm3)を重ねラミネーターを通して圧着させた後に80℃で2分熱風乾燥させることで積層体(紙層(B)/バリア層(C)/紙層(D))を得た。得られた積層体を用いた以外は実施例1と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0132】
<実施例11>
PVOHの代わりに変性PVOHを用いた以外は、実施例10と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0133】
<比較例1>
積層体作製時に片面のみに紙層を積層させた以外は実施例1と同様の方法で積層体(バリア層(C)/紙層(D))を作製した。PEを用いて20μmの単層フィルムを製膜し、得られた単層フィルムの片面に接着剤(三井化学社株式会社製タケラック(商標)A520とタケネート(商標)A50の10:1(重量比)混合物)を塗布後、60℃で1分間熱風乾燥させて溶剤を除去して接着層を形成した後、積層体のバリア層(C)の面と貼り合わせて多層構造体(シーラント層(A)/接着層/バリア層(C)/紙層(D))を得た。得られた多層構造体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で評価した、結果を表3に示す。
【0134】
<比較例2>
実施例1で得られた積層体の紙層(B)上に、厚み43μmのPVDCのフィルムを比較例1と同様に接着層を設けて積層して多層構造体(シーラント層(A)/接着層/紙層(B)/バリア層(C)/紙層(D))を作製し、シーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製する際も紙層上に上記と同様の方法で接着層を設けてPVDCフィルムを積層させた以外は実施例1と同様の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0135】
<比較例5>
実施例1で得られたシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムをそのまま多層構造体として用いた以外は、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表3に示す。
【0136】
<比較例6>
厚み12μmのEVOHのフィルムの片面に接着剤(三井化学株式会社製タケラックA520とタケネートA50の10:1(重量比)混合物)を塗布後、60℃で1分間熱風乾燥させて溶剤を除去した後、未晒クラフト紙(坪量35g/m、密度0.69g/cm3)と貼り合わせた。さらにEVOHのフィルムのもう一方の面も同様の方法で未晒クラフト紙(坪量35g/m、密度0.69g/cm3)を貼り合わせることで積層体(紙層(B)/接着層/バリア層(C)/接着層/紙層(D))を得た。得られた積層体を用いた以外は、実施例1と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0137】
<比較例7、8>
EVOHのフィルムの代わりに表3に記載の材料を用いた以外は、比較例6と同様の方法で多層構造体及びシーラント層(A)の酸素透過度測定用フィルムを作製し、評価した。結果を表3に示す。
【0138】
【表3-1】

【表3-2】
【0139】
表3に示されるように、実施例1~12で得られた多層構造体は、落下試験を含めた焙煎コーヒー豆保管試験の結果、破袋の恐れが無く、臭気を保持できることが確認された。一方で比較例1~8は、離解度、焙煎コーヒー豆保管試験の少なくともいずれかで劣っていることが確認された。したがって、実施例1~12で得られた多層構造体は、焙煎コーヒー豆のような保管中にガスを放出する食品においても、離解性に優れ、かつ内圧上昇による破袋を防止でき、落下などの衝撃を受けたとしても内容物の臭気漏れを抑制できる包装体を形成できることが示された。
【符号の説明】
【0140】
1…含水組成物(ペレット状)
2,16…単軸押出機
3,17…ダイ
4…含水組成物
5,5’…紙
6…積層体
7a…加圧ロール
7b…キャストロール
7c…タッチロール
8…二軸押出機
9…ホッパー
10…液添ノズル
11…樹脂温計
12…樹脂圧計
13…アダプタ
14…ダイ
15…ポリエチレン(PE)
18…押し出されたPE
19…多層構造体
図1
図2
図3