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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081485
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】タイヤ成型用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240611BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240611BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20240611BHJP
   B29K 105/24 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
B29K105:24
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195139
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】石原 泰之
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
【Fターム(参考)】
4F202AG28
4F202AH20
4F202AR07
4F202AR12
4F202CA21
4F202CB01
4F202CU04
4F202CU14
4F202CX06
4F202CX10
4F203AA45
4F203AH20
4F203AJ11
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL10
(57)【要約】
【課題】ブレードの破損やタイヤ品質の低下を防止することができるタイヤ成型用金型を提供する。
【解決手段】タイヤ成型用金型は、タイヤのサイプを成形する板状のブレード1と、タイヤの踏面を成形し、ブレード1が配置される保持穴3を有する踏面金型部2と、保持穴3に嵌め込まれ、ブレード1を支持する保持部4と、を備え、保持部4は、ブレード1を弾性的に支持しており、ブレード1は、保持部4に埋設された基部10と、基部10からタイヤ側に延出し、基部10と一体に形成された露出部16と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのサイプを成形する板状のブレードと、
前記タイヤの踏面を成形し、前記ブレードが配置される保持穴を有する踏面金型部と、
前記保持穴に嵌め込まれ、前記ブレードを支持する保持部と、を備え、
前記保持部は、前記ブレードを弾性的に支持しており、
前記ブレードは、前記保持部に埋設された基部と、前記基部から前記タイヤ側に延出し、前記基部と一体に形成された露出部と、を有するタイヤ成型用金型。
【請求項2】
前記保持部は、前記踏面金型部よりも弾性のある素材で形成されている請求項1に記載のタイヤ成型用金型。
【請求項3】
前記基部は、前記露出部よりも断面係数が小さい請求項1に記載のタイヤ成型用金型。
【請求項4】
前記基部が平板状に形成されている請求項2に記載のタイヤ成型用金型。
【請求項5】
前記保持穴は、前記保持部を係止される係止溝部を有し、
前記保持部は、前記係止溝部に係止される係止突起部を有する請求項1から4の何れか一項に記載のタイヤ成型用金型。
【請求項6】
前記保持部を前記保持穴に連結する弾性部材である連結具を有し、
前記連結具は、前記ブレードの板面に直交する方向への前記保持部の傾斜を許容する請求項1から4の何れか一項に記載のタイヤ成型用金型。
【請求項7】
前記連結具は、前記保持部及び前記保持穴に対して着脱自在である請求項6に記載のタイヤ成型用金型。
【請求項8】
前記保持部は、前記ブレードの正面視における側方への前記ブレードの傾斜を許容する回動機構を有する、請求項6に記載のタイヤ成型用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ成型用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
金型にグリーンタイヤを押し付けてタイヤを成形した後、脱型(離型)する際、タイヤの踏面におけるサイプ形成用のブレード状の金型(以下、ブレードと称する)があった部分には、サイプが形成される。脱型する際に、ブレードはサイプに対してまっすぐに引き抜かれる場合に限られず、傾斜して引き抜かれたり、アンダーカットが発生した状態で引き抜かれたりする。この場合、ブレードには曲げ応力が発生する。曲げ応力が大きくなると、ブレードが破損したり、タイヤ表面(例えばサイプ)が変形したり割れるなどしてタイヤの初期性能が低下したりする場合がある。
【0003】
特許文献1には、サイプ(この文献では、サイプを形成するブレード状の金型の意味)が鋳ぐるまれた自動車用タイヤ成形用金型及びその製造方法が記載されている。この金型は、タイヤを成形する際、サイプの変形、剥離若しくは破損が少なくなるとされている。この金型は、セクショナルモールドタイプの金型である。この金型は、複数に分割して構成される金型ブロックの分割面近傍の端部に鋳ぐるまれたサイプあるいは骨の離型角度が、金型の分割数によって異なる所定の角度よりも小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-316328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたような従来技術では、ブレードの破損やタイヤ品質の低下を防止することができない場合があった。
【0006】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、ブレードの破損やタイヤ品質の低下を防止することができるタイヤ成型用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るタイヤ成型用金型は、
タイヤのサイプを成形する板状のブレードと、
前記タイヤの踏面を成形し、前記ブレードが配置される保持穴を有する踏面金型部と、
前記保持穴に嵌め込まれ、前記ブレードを支持する保持部と、を備え、
前記保持部は、前記ブレードを弾性的に支持しており、
前記ブレードは、前記保持部に埋設された基部と、前記基部から前記タイヤ側に延出し、前記基部と一体に形成された露出部と、を有する。
【0008】
本発明に係るタイヤ成型用金型は、更に、
前記保持部は、前記踏面金型部よりも弾性のある素材で形成されていてもよい。
【0009】
本発明に係るタイヤ成型用金型は、更に、
前記基部は、前記露出部よりも断面係数が小さくてもよい。
【0010】
本発明に係るタイヤ成型用金型は、更に、
前記基部が平板状に形成されていてもよい。
【0011】
本発明に係るタイヤ成型用金型は、更に、
前記保持穴は、前記保持部を係止される係止溝部を有し、
前記保持部は、前記係止溝部に係止される係止突起部を有してもよい。
【0012】
本発明に係るタイヤ成型用金型は、更に、
前記保持部を前記保持穴に連結する弾性部材である連結具を有し、
前記連結具は、前記ブレードの板面に直交する方向への前記保持部の傾斜を許容してもよい。
【0013】
本発明に係るタイヤ成型用金型は、更に、
前記連結具は、前記保持部及び前記保持穴に対して着脱自在でもよい。
【0014】
本発明に係るタイヤ成型用金型は、更に、
前記保持部は、前記ブレードの正面視における側方への前記ブレードの傾斜を許容する回動機構を有してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブレードの破損やタイヤ品質の低下を防止することができるタイヤ成型用金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第一実施形態に係るタイヤ成型用金型の斜視図である。
図2】タイヤの径方向に沿って内側から見た第一実施形態に係るタイヤ成型用金型の正面図である。
図3】ホルダに搭載された状態のタイヤ成型用金型をタイヤの径方向に沿って、内側から見た正面図である。
図4】第一実施形態に係るタイヤ成型用金型の上面図である。
図5】第一実施形態に係るタイヤ成型用金型の正面図である。
図6図4のVI‐VI矢視断面図である。
図7】ブレードの斜視図である。
図8図7のVIII‐VIII矢視断面図である。
図9図7のIX‐IX矢視断面図である。
図10】第一実施形態に係るタイヤ成型用金型を用いてタイヤの踏面を成型している状態の模式図である。
図11】タイヤから第一実施形態に係るタイヤ成型用金型を脱型している状態の模式図である。
図12】第二実施形態に係るタイヤ成型用金型の構造を説明する断面図である。
図13】第二実施形態に係るタイヤ成型用金型の正面図である。
図14】タイヤから第二実施形態に係るタイヤ成型用金型を脱型している状態の模式図である。
図15】別のタイヤ成型用金型の構造を説明する断面図である。
図16】ブレードが幅方向に傾斜している状態を説明する図である。
図17】別のタイヤ成型用金型の正面図である。
図18】別のタイヤ成型用金型の上面図である。
図19】別のタイヤ成型用金型の正面図である。
図20】ホルダとこのホルダに搭載されたタイヤ成型用金型とのユニットを周方向に沿って見た側面図である。
図21図20のXXI‐XXI矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係るタイヤ成型用金型について説明する。
【0018】
(第一実施形態)
図1には、本実施形態に係るタイヤ成型用金型100の一部を示している。まず、タイヤ成型用金型100の概要を説明する。タイヤ成型用金型100は、タイヤの踏面を成型する金型である。
【0019】
タイヤ成型用金型100は、例えば図2に示すように、タイヤの周方向(図2中における方向C)において所定の間隔に分割された幅に形成されており、タイヤの幅方向(図2中における方向W、タイヤの軸方向と同じ)に沿って延在する分割金型である。なお、図2は、タイヤ成型用金型100をタイヤの径方向に沿って、内側から見た正面図である。
【0020】
タイヤ成型用金型100は、例えば図3に示すように、タイヤの周方向において所定の間隔に分割された幅に形成されたホルダ8に搭載して用いることができる。なお、図3は、ホルダ8に搭載された状態のタイヤ成型用金型100をタイヤの径方向に沿って、内側から見た正面図である。
【0021】
図3では、タイヤ成型用金型100が、ホルダ8に対して周方向に沿って2個以上ずつ隣接させた状態で搭載されて金型のユニット200を構成している場合を例示している。タイヤの成型時には、複数のユニット200がタイヤの周方向に沿って環状に配置され、タイヤの踏面を成型する。
【0022】
ユニット200は、個別に動作を制御されてタイヤの成型に用いられてよい。また、タイヤ成型用金型100は、一個ずつ動作を制御されてタイヤの成型に用いられてよい。
【0023】
タイヤ成型用金型100は、図1に示すように、タイヤのサイプを成形する板状のブレード1と、タイヤの踏面を成形し、ブレード1が配置される保持穴3を有する踏面金型部2と、保持穴3に嵌め込まれ、ブレード1を支持する保持部4と、を備えている。
【0024】
図1に示すように、保持部4は、ブレード1を弾性的に支持している。ブレード1は、保持部4に埋設された基部10と、基部10からタイヤ側に延出し、基部10と一体に形成された露出部16と、を有する。なお、タイヤ側に延出、とは、踏面金型部2の表面から延出していることをいう。
【0025】
以下、タイヤ成型用金型100について詳述する。
【0026】
タイヤ成型用金型100は、上述のごとく、図1に示すように、ブレード1、ブレード1が配置される保持穴3を有する踏面金型部2及び保持部4を備えている。なお、図1には、タイヤ成型用金型100の一部の斜視図を示している。ブレード1、保持穴3及び保持部4は、図2,3に示すように、一つのタイヤ成型用金型100(踏面金型部2)に、複数個設けられてよい。なお、図2,3では、一つのタイヤ成型用金型100(踏面金型部2)中に設けられたブレード1、保持穴3及び保持部4の一部を図示している。
【0027】
タイヤ成型用金型100には、図2,3に示すように、タイヤの踏面にトレッドパターンを形成するパターン29が突起して設けられてよい。
【0028】
以下の説明では、説明の便宜のため、図1中の方向Z1側(ブレード1から見て踏面金型部2の側)を下又は下方、その逆(図1中の方向Z2側)を上又は上方と称する場合がある。以下の説明では、方向Z1,Z2に沿う方向を単に上下方向と称する場合がある。なお、方向Z1は、タイヤにおける径方向の内側を向く向きである。また、方向Z2は、タイヤにおける径方向の外側を向く向きである。
【0029】
ブレード1の板面に交差し、タイヤの周方向(図2の方向C)に沿う方向であって、方向Y1の側を前又は前方、方向Y2の側を後ろ又は後方と称する。以下の説明では、方向Y1,Y2に沿う方向を単に前後方向と称する場合がある。
【0030】
図1中の方向X1側を右、その逆(図1中の方向X2側)を左と称する場合がある。なお、方向X1,X2は、ブレード1における保持部4に保持されている部分の延在方向に沿っている。また、方向X1,X2は、タイヤの幅方向(図2の方向W)に沿う方向である。以下の説明では、方向X1,X2に沿う方向を単に幅方向と称する場合がある。
【0031】
図4には、タイヤ成型用金型100の一部の上面図を示している。図5には、タイヤ成型用金型100の一部を前側から見た図(正面図)を示している。図6には、図4のVI‐VI矢視断面図を示している。また、図7には、ブレード1の斜視図を示している。
【0032】
図1及び図4から図7に示すように、ブレード1は、タイヤのサイプを形成するための板状の金型部分である。ブレード1は、ステンレスなどの金属材料で形成してよい。
【0033】
ブレード1は、後述するように、踏面金型部2に配置される。ブレード1は、後述するように、保持部4に支持される。図1では、ブレード1の下端部である基部10が踏面金型部2及び保持部4に支持されている場合を例示している。すなわち、基部10は、ブレード1の下端部であって、踏面金型部2及び保持部4に支持されている部分、すなわち、踏面金型部2及び保持部4に埋設されている部分である。これに対し、基部10から上方に延出し、踏面金型部2及び保持部4から露出している部分が露出部16である。
【0034】
基部10は、上下方向に6mm以上10mm以下の長さを有するとよい。
【0035】
ブレード1は、所望のサイプ形状に合わせて形成される。図1,4及び7では、ブレード1における露出部16が、波板状に形成されている場合を図示している。図1,4及び7では、一例として、ブレード1の波形状における峰又は谷が、上下方向に沿って形成されている場合を示している。
【0036】
ブレード1は、図7,8に示すように、露出部16が、所望のサイプ形状に対応させた、前後方向に厚みのある形状とされてよく、図7,9に示すように、基部10が、露出部16(図8参照)と比べて前後方向に厚み薄い形状とされてよい。すなわち、露出部16の厚み(図8に示す厚みt1)よりも、基部10(平板部11)の厚み(図9に示す厚みt2)が薄くされてよい。これにより、基部10における前後方向への曲げに対する断面係数が、露出部16における前後方向への曲げに対する断面係数よりも小さくなっている。すなわち、基部10が露出部16よりも前後方向への曲がりやすく、又は撓みやすくなる。
【0037】
本実施形態では、図1及び図4から図6に示すように、ブレード1における基部10の内、保持部4に埋設されている部分には、例えば、幅方向における全範囲にわたって平板状の平板部11が設けられてよい。平板部11が基部10に設けられることにより、基部10は、その平板部11において、露出部16よりも、前後方向への曲げに対する断面係数が小さくなっている。
【0038】
踏面金型部2は、タイヤの踏面を形成する金型である。踏面金型部2は、タイヤの踏面を形成する表面部分(上面)である領域20(図4から図6参照)と、表面(上面)から凹んだ凹部であって、ブレード1が配置される保持穴3とを有する。踏面金型部2は、チタン合金やアルミニウム合金などの金属材料で形成してよい。
【0039】
保持穴3は、ブレード1を支持する保持部4を収容する収容空間を形成し、且つ、保持部4を保持するための係止構造を有する構造部分である。保持穴3は、一例として、踏面金型部2の周方向における端部(図1では、前側の端部である場合を例示)において、下方に凹む窪みとして形成される。
【0040】
保持部4は、保持穴3に嵌め込まれ、ブレード1を支持する部材である。保持部4の上側の表面(上面)は、領域20(図4から図6参照)と共にタイヤの踏面を形成する領域40(図4から図6参照)となっている。
【0041】
保持部4は、ブレード1を弾性的に支持する部材である。保持部4は、その弾性によって、ブレード1の前後方向又は左右方向への傾斜を許容している。保持部4がブレード1を弾性的に支持することで、ブレード1が前後方向や左右方向に傾斜可能となり、タイヤ成型用金型100をタイヤから脱型(離型)する際の抜き抵抗を低減して、ブレード1の破損を防止し、また、タイヤ表面の変形や割れを抑制してタイヤ品質の低下を防止することができる。なお、本実施形態では、後述するように、ブレード1は、前後方向への傾斜を許容されている。
【0042】
保持部4は、踏面金型部2よりも弾性のある素材で形成されるとよい。これにより、ブレード1の弾性的な支持を実現することができる。踏面金型部2よりも弾性のある素材の一例は、シリコーンゴムである。
【0043】
保持部4は、踏面金型部2よりもヤング率が低く、また、剛性率の低い素材で形成されるとよい。これにより、ブレード1の弾性的な支持をよりよく実現することができる。上記で例示したシリコーンゴムは、踏面金型部2よりもング率が低く、また、剛性率の低い素材である。
【0044】
保持部4のヤング率は、踏面金型部2よりは低く、タイヤを構成する加硫ゴムに近いことが好ましい。保持部4のヤング率は例えば、1.96から9.81N/mmであるとよい。
【0045】
保持部4は、ブレード1を鋳包みして支持してよい。
【0046】
保持部4が踏面金型部2よりも弾性のある素材で形成されており、且つ、前後方向への曲げにおけるその断面係数が露出部16における前後方向への曲げに対する断面係数よりも、小さくなっているブレード1における基部10の平板部11が保持部4に埋設されていることで、ブレード1は、平板部11の部分で前後方向に曲がりやすくなっている。これにより、ブレード1は、前後方向に傾斜しやすくなる。
【0047】
保持部4は、保持穴3に嵌め込まれた状態で踏面金型部2に固定されている。保持部4は、例えば、ビス(図示せず)で踏面金型部2に固定されてよい。
【0048】
上述のごとく、基部10の上下方向における長さの概ね半分の長さの領域が保持部4に支持されているとよい。すなわち、保持部4及び保持穴3の上下方向における長さは3mm以上5mm以下であるとよい。
【0049】
なお、保持部4及び保持穴3の前後方向における長さは3mm程度であればよい。タイヤ成形に用いるブレード1の基部10の厚み(前後方向における厚み)は、厚くても3mmであるためである。
【0050】
図10には、タイヤ成型用金型100でタイヤ9の踏面90を成型している状態の模式図を示している。図11には、タイヤ9からタイヤ成型用金型100を脱型している状態の模式図を示している。なお、図10,11では、タイヤ成型用金型100、タイヤ9及び踏面90は一部のみを図示している。
【0051】
図10に示す如くタイヤ成型用金型100で踏面90を成型した後、図11に示すように脱型する際には、ブレード1はサイプ91に対してまっすぐに引き抜かれる場合に限られず、傾斜して引き抜かれたり、アンダーカットが発生した状態で引き抜かれたりする場合がある。なお、図11では、ブレード1がサイプ91に対して傾斜して引き抜かれている様子を例示して図示している。
【0052】
このようにブレード1がサイプ91に対して傾斜して引き抜かれる場合であっても、保持部4がブレード1を弾性的に支持することで、ブレード1が前後方向(ブレードの板面に直交する方向)に傾斜可能となり(図11ではブレード1が前方に傾斜する場合を例示している)、タイヤ成型用金型100をタイヤ9から脱型する際の抜き抵抗を低減して、ブレード1の破損を防止し、また、タイヤ表面(例えば、踏面90)の変形や割れを抑制してタイヤ品質の低下を防止することができる。
【0053】
特にブレード1における基部10に平板部11が設けられるなどして、ブレード1の基部10における保持部4に支持されている部分の前後方向への曲げに対する断面係数が露出部16における前後方向への曲げに対する断面係数よりも小さくなっていれば、タイヤ成型用金型100をタイヤ9から脱型する際の抜き抵抗をより良く低減して、ブレード1の破損を防止し、また、タイヤ表面(例えば、踏面90)の変形や割れを抑制してタイヤ品質の低下を防止することができる。
【0054】
(第二実施形態)
第二実施形態のタイヤ成型用金型100は、図12に示すように、保持部4が弾性のある素材で形成されることを要せず、ブレード1が保持部4にのみ保持され、また、保持部4を保持穴3に連結する弾性部材である連結具5を有する点で第一実施形態と異なり、その他は第一実施形態と概ね同じである。なお、図12は、本実施形態に係るタイヤ成型用金型100ついて、第一実施形態で説明した図6と同様の断面を示している。以下では、第一実施形態と同じ部分の説明は適宜省略し、相違する部分について詳述する。なお、図12では、ブレード1が平板状である場合を例示的に示している。
【0055】
本実施形態において、図12に示すように、保持部4はチタン合金やアルミニウム合金などの金属材料で形成されてよい。
【0056】
保持部4及び保持穴3の上下方向における長さは5mm以上10mm以下であるとよい。保持部4及び保持穴3の前後方向における長さは、ブレード1の基部10の厚み(前後方向における厚み)よりも1mm以上3mm以下厚いとよい。
【0057】
保持部4は、例えば、幅方向に沿って見た断面の形状が角張った形状のアルファベットのC字形状に形成された板ばねなどの弾性部材である連結具5を介して保持穴3に連結(保持穴3に収容された状態で弾性的に支持)されてよい。
【0058】
連結具5は、例えば、タイヤ成型用金型100の前側の端部に配置してよい。連結具5が上記のようなC字形状に形成された板ばねである場合、そのC字形状の弧の内側を後方に向けた状態で、そのC字形状の下端を踏面金型部2における保持穴3の下側位置に係止させ、上端を保持部4に係止させて良い。連結具5は、線材状のばねやねじりコイルばねなどの、その他のばね材であってもよい
【0059】
連結具5は、ねじ止め、かしめ込み、嵌め込み、接着剤による接着で固定してよい。連結具5は、ねじ止めなどの着脱自在の固定方法により、容易に交換可能とすることが好ましい。すなわち、連結具5は、保持部4及び保持穴3に対して着脱自在であることが好ましい。これにより、タイヤ成型用金型100の寿命を延ばすことができる。
【0060】
図13に示すように、連結具5は、幅方向に沿って配置してよい。
【0061】
連結具5のC字形状の内側が開くように連結具5が弾性変形することで、図14に示すように、保持部4が前方(ブレードの板面に直交する方向)に傾斜可能となる。これにより、ブレード1は、前方に傾斜可能となる。換言すると、ブレード1が前方に傾斜する場合、連結具5の弾性変形によって、保持部4と共に傾斜することができるようになる。
【0062】
以上のようにして、ブレードの破損やタイヤ品質の低下を防止することができるタイヤ成型用金型を提供することができる。
【0063】
〔別実施形態〕
(1)上記第一実施形態では、保持部4は、例えば、ビス(図示せず)で踏面金型部2に固定されている場合を説明した。しかし、保持部4の踏面金型部2への固定する態様はこれに限られない。例えば、図15に示すように、保持穴3が、保持部4を係止される係止溝部34を有してよい。また、保持部4が、係止溝部34に係止される係止突起部43を有してよい。そして、保持部4が係止突起部43を係止溝部34に嵌め込まれて踏面金型部2に固定されてもよい。
【0064】
(2)上記第一実施形態では、ブレード1の下端部である基部10が踏面金型部2及び保持部4に支持されている場合を例示して説明した(図1など参照)。そして、ブレード1が前後方向に傾斜可能となっていることを説明した。しかし、基部10は保持部4のみに支持されてもよい。
【0065】
基部10が保持部4のみに支持されている場合、図16に示すように、ブレード1を幅方向にも傾斜可能とすることができる。なお、図16では、すなわち、ブレード1がサイプ91に対して傾斜して引き抜かれる場合に、これに追従させてブレード1を前後方向及び幅方向に傾斜させることができるようになる。
【0066】
(3)上記第二実施形態では、タイヤ成型用金型100が、保持部4を保持穴3に連結する連結具5を有し、連結具5の弾性変形によって、ブレード1が保持部4と共に前方に傾斜することができる場合を説明した。しかし、タイヤ成型用金型100は、ブレード1を幅方向に傾斜させる機構や部材を更に備えてもよい。例えば、保持部4が、ブレード1の正面視、すなわち、ブレード1を前後方向に沿って見た場合における幅方向(側方)へのブレード1の傾斜を許容する回動機構を有してもよい。
【0067】
図17から図19には、ブレード1を幅方向に傾斜させる機構を更に備えたタイヤ成型用金型100の一例を示している。このタイヤ成型用金型100では、保持部4が、保持穴3に嵌め込まれ、連結具5で保持穴3に連結された第一保持部41と、第一保持部41に形成された第二保持穴49に嵌め込まれ、第一保持部41に対して幅方向への傾斜を許容された第二保持部42とを有する。ブレード1は第二保持部42のみに保持されている。第二保持部42は、第二保持部42の幅方向への傾斜を許容する回動機構59を介して第一保持部41に連結されている。回動機構59は、例えば、一端が第一保持部41に固定され、他端が第二保持部42に固定され、前後方向に沿って設けられたねじりコイルばねや回動軸を有してよい。これにより、図19に示すように、ブレード1は、保持部4と共に連結具5によって前方への傾斜を許容される。また、ブレード1は、回動機構59により、第二保持部42と共に、幅方向(図19では右側)への傾斜を許容される。このようにブレード1が前後方向及び幅方向へ傾斜を許容されることで、タイヤ成型用金型100をタイヤから脱型(離型)する際の抜き抵抗を低減して、ブレード1の破損を防止し、また、タイヤ表面の変形や割れを抑制してタイヤ品質の低下を防止することができる。
【0068】
(4)上記実施形態では、タイヤ成型用金型100は、例えば図3に示すように、タイヤの周方向において所定の間隔に分割されたホルダ8に対して2個以上ずつ搭載されて金型のユニット200を構成し、このユニットごとに動作を制御されてタイヤの成型に用いられてよいことを説明した。この場合、ホルダ8に搭載されたタイヤ成型用金型100の内、周方向における少なくとも一方の端部に配置されたタイヤ成型用金型100は、周方向における、ホルダ8の外側に傾斜可能に構成されてよい。
【0069】
図20には、ホルダ8と、ホルダ8に搭載されたタイヤ成型用金型100とのユニット200を、周方向に沿って見た側面図を示している。図21には、図20のXXI‐XXI矢視断面図を示している。図20,21に示すように、例えば、ホルダ8の周方向における端部に板ばね7を沿わせて固定し、その板ばね7にタイヤ成型用金型100を連結し、これによりタイヤ成型用金型100がホルダ8に対して周方向におけるホルダ8の外側に傾斜可能としてよい。このように、更にタイヤ成型用金型100がホルダ8に対して周方向におけるホルダ8の外側に傾斜可能とされることで、上記実施形態で説明した保持部4によるブレード1の傾斜と共に、ホルダ8において周方向の端部に配置されたタイヤ成型用金型100のブレード1がタイヤ成型用金型100ごと周方向に沿って傾斜可能となり、タイヤ成型用金型100をタイヤから脱型(離型)する際の抜き抵抗を低減して、ブレード1の破損を防止し、また、タイヤ表面の変形や割れを抑制してタイヤ品質の低下を防止することができるようになる。
【0070】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、タイヤ成型用金型に適用できる。
【符号の説明】
【0072】
1 :ブレード
10 :基部
100 :タイヤ成型用金型
11 :平板部
16 :露出部
2 :踏面金型部
20 :領域
200 :ユニット
29 :パターン
3 :保持穴
34 :係止溝部
4 :保持部
41 :第一保持部
42 :第二保持部
43 :係止突起部
49 :第二保持穴
5 :連結具
59 :回動機構
7 :板ばね
8 :ホルダ
9 :タイヤ
90 :踏面
91 :サイプ
C :方向
W :方向
X1 :方向
X2 :方向
Y1 :方向
Y2 :方向
Z1 :方向
Z2 :方向
t1 :厚み
t2 :厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図21