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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081494
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H01L21/78 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195164
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南雲 裕司
(72)【発明者】
【氏名】植茶 雅史
(72)【発明者】
【氏名】奥田 勝
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA05
5F063BA07
5F063BA20
5F063BA22
5F063BA45
5F063CB03
5F063CB05
5F063CB13
5F063CB19
5F063CB22
5F063CB28
5F063DD04
5F063DD78
5F063DG06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】スクライブアンドブレイク工法を利用して、電極層が形成されている半導体基板を適切に分割する半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置の製造方法は、半導体基板2の第1表面2aを覆う電極層である金属膜8の表面に溝Gを形成する工程と、溝Gの底面にスクライビングホイール33を押し当てることによって、半導体基板2の厚み方向に延びるクラック5を半導体基板2に形成する工程と、クラック5を形成する工程の後に、第1表面2aの反対側に位置する半導体基板2の第2表面2bに溝に沿って分割部材であるブレイクプレートを押し当てることによって半導体基板2を分割する工程と、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
半導体基板(2)の第1表面(2a)を覆う電極層(8)の表面に溝(G)を形成する工程と、
前記溝の底面にスクライビングホイール(33)を押し当てることによって、前記半導体基板の厚み方向に延びるクラック(5)を前記半導体基板に形成する工程と、
前記クラックを形成する前記工程の後に、前記第1表面の反対側に位置する前記半導体基板の第2表面(2b)に前記溝に沿って分割部材(35)を押し当てることによって前記半導体基板を分割する工程と、
を備える、製造方法。
【請求項2】
前記スクライビングホイールの先端角度(A2)は、前記溝に直交する断面において前記溝の2箇所の上端のそれぞれと前記溝の下端とを結ぶ2個の直線によって画定される角度(A1)よりも小さい、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記スクライビングホイールが第1スクライビングホイール(33)であり、
前記溝を形成する前記工程では、第2スクライビングホイール(32)を前記電極層に押し当てることによって前記溝を形成する、
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1スクライビングホイールの先端角度(A2)は、前記第2スクライビングホイールの先端角度(A1)よりも小さい、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1スクライビングホイールが、第1支持具(133a)によって回転可能に支持されており、
前記第2スクライビングホイールが、第2支持具(132a)によって回転可能に支持されており、
前記第1スクライビングホイールの回転軸に沿う方向における前記第1支持具に対する遊び(C2)が、前記第2スクライビングホイールの回転軸に沿う方向における前記第2支持具に対する遊び(C1)よりも大きい、
請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記半導体基板はSiCにより構成されている、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法の工程の中に、複数の素子構造が形成された半導体基板を個片化する工程がある。特許文献1には、スクライブアンドブレイクという工法について開示されている。この工法では、まず、半導体基板の電極層が形成されている面にスクライビングホイールを押し当てて、半導体基板の厚み方向(以下、単に厚み方向という)に荷重をかけることによって、当該境界に沿って、半導体基板に厚み方向に沿って伸びるクラックを形成する。次に、境界に沿って分割部材を押し当てることによって、上記のクラックを起点として、境界に沿って半導体基板を分割して個片化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-193746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板の表面に電極層が設けられている場合がある。このような半導体基板の電極層にスクライビングホイールを押し当てると、電極層が比較的柔らかいので、荷重が分散する。したがって、半導体基板に厚み方向に沿って伸びるクラックを適切に形成できず、厚み方向以外の方向にクラックが形成されてしまうおそれがある。この場合、その後に半導体基板を個片化すると、クラックが個片化された半導体装置に残存してしまう。本明細書では、スクライブアンドブレイク工法を利用して、電極層が形成されている半導体基板を適切に分割する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、半導体装置の製造方法を開示する。製造方法は、半導体基板(2)の第1表面(2a)を覆う電極層(8)の表面に溝(G)を形成する工程と、前記溝の底面にスクライビングホイール(33)を押し当てることによって、前記半導体基板の厚み方向に延びるクラック(5)を前記半導体基板に形成する工程と、前記クラックを形成する前記工程の後に、前記第1表面の反対側に位置する前記半導体基板の第2表面(2b)に前記溝に沿って分割部材(35)を押し当てることによって前記半導体基板を分割する工程と、を備える。
【0006】
この製造方法では、まず、半導体基板の第1表面に設けられる電極層に、溝を形成する。その後、溝の底面にスクライビングホイールを押し当てて、半導体基板にクラックを形成する。このように、溝に沿ってスクライビングホイールが押し当てられるので、電極層によって荷重が分散されない。この結果、半導体基板に厚み方向に沿って伸びるクラックを適切に形成することができる。その後、第2表面側から分割部材を押し当てることによって、半導体基板を分割する。このように、上記の製造方法では、半導体基板に厚み方向に沿って伸びるクラックを適切に形成することができるので、電極層が形成されている半導体基板を適切に分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】半導体基板の平面図である。
図2】支持板貼り付け工程を説明するための図である。
図3】クラックが形成される前の研削工程を説明するための図である。
図4】電極形成工程を説明するための図である。
図5】溝形成工程を説明するための図である。
図6】クラック形成工程を説明するための図である。
図7】実施例1のクラックが形成される様子を説明するための図である。
図8】ダイシングテープ貼り付け工程を説明するための図である。
図9】支持板剥離工程を説明するための図である。
図10】保護部材被覆工程を説明するための図である。
図11】分割工程を説明するための図である。
図12】ピックアップ工程を説明するための図である。
図13】実施例2のクラックが形成される様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記スクライビングホイールの先端角度(A2)は、前記溝に直交する断面において前記溝の2箇所の上端のそれぞれと前記溝の下端とを結ぶ2個の直線によって画定される角度(A1)よりも小さくてもよい。
【0009】
この構成によれば、スクライビングホイールが電極層に接触し難く、より適切に厚み方向に沿って伸びるクラックを形成できる。
【0010】
本明細書が開示する一例の製造方法では、前記第1スクライビングホイールが、第1支持具(133a)によって回転可能に支持されており、前記第2スクライビングホイールが、第2支持具(132a)によって回転可能に支持されており、前記第1スクライビングホイールの回転軸に沿う方向における前記第1支持具に対する遊び(C2)が、前記第2スクライビングホイールの回転軸に沿う方向における前記第2支持具に対する遊び(C1)よりも大きくてもよい。
【0011】
この構成によれば、第1スクライビングホイールが溝に追随して移動し易い。したがって、第1スクライビングホイールの移動経路が溝からずれることを抑制できる。
【0012】
(実施例1)
図面を参照して実施例1の製造方法を説明する。図1は、複数の素子領域3がマトリクス状に形成された半導体基板2の平面図である。図1では、各素子領域3を実線により模式的に示している。説明の便宜上、隣り合う素子領域3の間の境界であって、後に半導体基板2を個々の素子領域3に分割する際の分割により得られる個々の素子領域(半導体装置)の端辺となる線を分割予定線4と称する。分割予定線4は、実際に半導体基板2の上に記された線ではなく、仮想的な線である。分割予定線4は、目視できるように、実際に半導体基板2の上に描かれた線や溝であってもよい。各素子領域3には、トランジスタやダイオード等の機能を有する半導体素子が形成されている。
【0013】
半導体基板2は、炭化シリコン(SiC)により構成されている。なお、半導体基板2は、シリコン(Si)や窒化ガリウム(GaN)等、他の半導体材料によって構成されていてもよい。図2等に示されるように、半導体基板2は、第1表面2aと、第1表面2aの裏側に位置する第2表面2bを有している。半導体基板2の第2表面2bには、主電極6(ソース電極、アノード電極等)が形成されている。
【0014】
実施例の製造方法は、支持板貼り付け工程、金属膜形成工程、溝形成工程、クラック形成工程、ダイシングテープ貼り付け工程、支持板剥離工程、保護部材被覆工程、分割工程を含む。
【0015】
(支持板貼り付け工程)
支持板貼り付け工程では、図2に示されるように、半導体基板2の第2表面2bに対して、支持板12を貼り付ける。支持板12は、接着剤11を介して第2表面2bに貼り付けられる。支持板12は、例えばガラスにより構成されている。接着剤11は、例えばシリコン系接着剤であり、半導体基板2を支持板12に接着する機能に加えて、半導体基板2の第2表面2bを保護する機能も有している。従って、ここでは、接着剤11の厚さが主電極6の厚さよりも厚くなるように、接着剤11が塗布される。その後、図3に示されるように、必要に応じて、半導体基板2の第1表面2aを研削砥石31により研削する。これにより、半導体基板2が薄板化される。
【0016】
(金属膜形成工程)
次に、図4に示される金属膜形成工程を実施する。金属膜形成工程では、半導体基板2の第1表面2aに金属膜8を形成する。金属膜8を構成する材料は特に限定されないが、例えば、チタン、ニッケル及び金を積層した多層膜である。金属膜8は、第1表面2aの略全域を覆うように形成される。すなわち、金属膜8は、複数の素子領域3に跨るように第1表面2a上に形成される。金属膜8は、完成した半導体装置の電極として機能する。
【0017】
(溝形成工程)
次に、図5に示される溝形成工程を実施する。溝形成工程では、金属膜8に対してスクライビングホイール32を押し当てて、金属膜8に溝Gを形成する。スクライビングホイール32は、円板形状の部材であり、その中心軸回りに回転可能に一対の支持具132aにより支持されている。具体的には、スクライビングホイール32は中心孔(不図示)を有しており、中心孔にはシャフト132bが挿通されている。スクライビングホイール32の両側で、シャフト132bに支持具132aが固定されている。したがって、スクライビングホイール32は、シャフト132bに対して回転する。また、スクライビングホイール32と各支持具132aとの間には、距離C1のクリアランスがある。図5では、スクライビングホイール32と左側の支持具132aとの距離がB1であり、スクライビングホイール32と右側の支持具132aとの距離がB2であり、これらの和(B1+B2)がクリアランスC1である。スクライビングホイール32は、クリアランスC1の範囲内でシャフト132bに沿って支持具132aに対して移動することができる。すなわち、クリアランスC1は、スクライビングホイール32の支持具132aに対する遊びである。スクライビングホイール32の外周面は、半径方向外側に向かって角状に突出している。以下では、スクライビングホイールの半径方向に沿う断面における外周面の角度を、先端角度という。スクライビングホイール32は、先端角度A1を有している。ここでは、スクライビングホイール32の外周面を金属膜8に押し当てながら、分割予定線4に沿って移動(走査)させる。スクライビングホイール32は、分割予定線4に沿って移動する際に、路面上を転がるタイヤのように金属膜8を転がる(転動する)。スクライビングホイール32は、金属膜8に対して摺動せず、移動に伴って(グリップ状態で)回転する。このようにして、スクライビングホイール32の先端の形状に沿ったV字の溝Gが金属膜8に形成される。V字の溝Gの角度(すなわち、溝Gの両側面が成す角度)は、スクライビングホイール32の先端角度A1と等しい。溝形成工程では、半導体基板2にクラックは形成されない。スクライビングホイール32が「第2スクライビングホイール」の一例である。支持具132aが「第2支持具」の一例である。
【0018】
(クラック形成工程)
次に、図6に示されるクラック形成工程を実施する。クラック形成工程では、溝Gの底面にスクライビングホイール33を押し当てることによって、半導体基板2にクラック5を伴うスクライブライン形成する。スクライビングホイール33は、円板形状の部材であり、その中心軸回りに回転可能に一対の支持具133aにより支持されている。具体的には、スクライビングホイール33は中心孔(不図示)を有しており、中心孔にはシャフト133bが挿通されている。スクライビングホイール33の両側で、シャフト133bに支持具133aが固定されている。したがって、スクライビングホイール33は、シャフト133bに対して回転する。また、スクライビングホイール33と各支持具133aとの間には、距離C2のクリアランスがある。図6では、スクライビングホイール33と左側の支持具133aとの距離がB3であり、スクライビングホイール33と右側の支持具133aとの距離がB4であり、これらの和(B3+B4)がクリアランスC2である。スクライビングホイール33は、クリアランスC2の範囲内でシャフト133bに沿って支持具133aに対して移動することができる。すなわち、クリアランスC2は、スクライビングホイール33の支持具133aに対する遊びである。スクライビングホイール32の外周面は、半径方向外側に向かって角状に突出している。スクライビングホイール33は、先端角度A2を有している。スクライビングホイール33の先端角度A2は、スクライビングホイール32の先端角度A1よりも小さい。
【0019】
ここでは、スクライビングホイール33の外周面を溝Gの底面に押し当てながら、分割予定線4に沿って移動(走査)させる。スクライビングホイール32は、分割予定線4に沿って移動する際に、路面上を転がるタイヤのように溝Gの底面(即ち半導体基板2の第1表面2a)を転がる(転動する)。スクライビングホイール32は、溝Gの底面に対して摺動せず、移動に伴って(グリップ状態で)回転する。距離C2(すなわち、スクライビングホイール33の遊び)が大きいので、スクライビングホイール33は軸方向に沿って移動できる。したがって、スクライビングホイール33を溝Gの底面に押し当てて移動させるときに、スクライビングホイール33が溝Gに案内されることによって軸方向に移動する。このため、溝Gの下端に沿って正確にスクライビングホイール33を移動させることができる。すなわち、スクライビングホイール33の移動経路が溝Gからずれることを防止できる。また、このとき、スクライビングホイール33の先端角度A2がスクライビングホイール32の先端角度(即ち溝の角度)A1よりも小さいので、スクライビングホイール33の先端を溝Gの底面に適切に接触させることができる。すなわち、図7に示されるように、スクライビングホイール33の傾斜面を金属膜8にほとんど接触させることなく、スクライビングホイール33の先端を半導体基板2に押し当てることができる。
【0020】
図7に示されるように、溝Gの底面(即ち第1表面2a)がスクライビングホイール33により押圧されると、半導体基板2の内部には、第1表面2a近傍の表層の領域Rに圧縮応力が生じる。圧縮応力は、図7の矢印20に示されるように、スクライビングホイール33による押圧箇所(スクライビングホイール33の周縁部と第1表面2aの接触箇所)を起点として等方的に生じる。スクライビングホイール33による押圧箇所にはスクライブラインが形成される一方で、圧縮応力が生じた領域Rの直下では、半導体基板2の内部に引張応力が生じる。引張応力は、矢印22に示されるように、圧縮応力が生じる領域Rの直下において、半導体基板2の第1表面2aに沿って、分割予定線4から離れる方向に生じる。この引張応力により、半導体基板2の内部に、半導体基板2の厚み方向に延びるクラック5が形成される。ここでは、隣り合う素子領域3の境界に沿うとともに、半導体基板2の厚み方向に延びるように、クラック5が形成される。クラック5は、半導体基板2の第1表面2aの表層近傍に形成される。一般に、圧縮応力はクラックの形成及び伸展を抑制するため、クラック5は、半導体基板2の第1表面2aのスクライビングホイール33による押圧箇所の圧縮応力が生じた領域Rの外側から、圧縮応力が生じた領域Rの直下の引張応力が生じた領域に延びるように形成される。
【0021】
ここで、金属膜8に溝Gを形成せずにクラック5を形成する比較例を想定する。比較例では、金属膜8が比較的柔らかいので、金属膜8にスクライビングホイール33を押し当てると、荷重が分散する。したがって、半導体基板2の厚み方向に伸びるクラック5を適切に形成できず、厚み方向以外の方向にクラックが形成されてしまうおそれがある。一方、本実施例では、スクライビングホイール33の傾斜面を金属膜8にほとんど接触させることなく、スクライビングホイール33の先端を半導体基板2の表面2aに押し当てることができる。この結果、半導体基板2の厚み方向に伸びるクラック5を適切に形成することができる。
【0022】
(ダイシングテープ貼り付け工程)
次に、図8に示されるダイシングテープ貼り付け工程を実施する。ダイシングテープ貼り付け工程では、金属膜8の表面にダイシングテープ13を貼り付ける。ダイシングテープ13は、金属膜8の略全域を覆うように貼り付けられる。ダイシングテープ13は、ダイシングフレーム(不図示)に固定される。なお、図8以降は、第2表面2bを上にして半導体基板2が描かれていることに留意されたい。
【0023】
(支持板剥離工程)
次に、図9に示される支持板剥離工程を実施する。支持板剥離工程では、支持板12及び接着剤11を半導体基板2の第2表面2bから剥離する。ここでは、例えば、接着剤11を溶剤によって溶解することにより、第2表面2bから接着剤11とともに支持板12を剥離する。これにより、半導体基板2は、ダイシングテープ13により支持された状態となる。
【0024】
(保護部材被覆工程)
次に、図10に示される保護部材被覆工程を実施する。保護部材被覆工程では、半導体基板2の各素子領域3の各主電極6の表面に跨るように保護部材15を貼り付けることによって、半導体基板2の第2表面2bを保護部材15によって被覆する。保護部材15の材料は特に限定されないが、例えば、樹脂等を用いることができる。保護部材15を被覆することにより、後の分割工程等において、半導体基板2の第2表面2bが保護される。
【0025】
(分割工程)
次に、図11示される分割工程を実施する。分割工程では、分割予定線4(クラック形成工程で形成されたクラック5)に沿ってブレイクプレート34を押し当て、分割予定線4に沿って(素子領域3の境界に沿って)半導体基板2を分割する。ここでは、まず、半導体基板2を2つの支持台35上に載置する。2つの支持台35は、間隔を空けて配置されている。半導体基板2を支持台35に載置するときには、分割すべき位置(ブレイクプレート34を押し当てる位置)の下方に当該間隔が位置するように、半導体基板2が載置される。その後、保護部材15を介して半導体基板2の第2表面2bにブレイクプレート34を押し当てる。ブレイクプレート34は、板状の部材であり、下端(第2表面2bに押し当てられる端縁)部分が稜線状(鋭い刃状)になっているが、半導体基板2を切削することなく、押し付けられるだけである。
【0026】
ブレイクプレート34の下方には支持台35が存在しない(2つの支持台35の間隔が位置している)ので、ブレイクプレート34を第2表面2bに押し当てると、2つの支持台35の間隔内に入り込むように、半導体基板2が撓む。ここで、クラック5は、半導体基板2の第1表面2a側に形成されている。このため、半導体基板2に第2表面2b側からブレイクプレート34を押し当てると、押し当てられた部分(ライン)を軸として半導体基板2が撓み、第1表面2a側ではクラック5に対して分割位置に隣接する2つの素子領域3を引き離す方向に力が加わる。また、上述したように、クラック5の周囲には引張応力が印加されている。このため、第2表面2bにブレイクプレート34を押し当てると、クラック5が半導体基板2の厚み方向に伸展し、半導体基板2が分割予定線4に沿って分割される。また、金属膜8は、半導体基板2の第1表面2a上に形成されているので、金属膜8に対しても分割位置に隣接する2つの素子領域3を引き離す方向に力が加わり、金属膜8が引き離されるように変形して分割される。なお、2つの支持台35に代えて半導体基板2の第1表面2aの全体を1つの弾性支持板(又は1つの弾性支持板を介して1つ又は複数の支持台)で支持してもよい。この場合、ブレイクプレート34の下方に弾性支持板が存在するが、半導体基板2が撓むと半導体基板2の撓みに応じて弾性支持板が変形するので、ブレイクプレート34を第2表面2bに押し当てると、2つの支持台35により支持する場合(ブレイクプレート34の下方に支持台35が存在しない場合)と同様に、クラック5に対して分割位置に隣接する2つの素子領域3を引き離す方向に力が加わることとなる。ブレイクプレート34は、「分割部材」の一例である。
【0027】
分割工程では、上述のブレイクプレート34を第2表面2bに押し当てる工程を、各分割予定線4に沿って繰り返し実施する。これにより、半導体基板2と金属膜8を各素子領域3の境界に沿って分割することができる。その後、図12に示されるように、個片化された素子領域3及び金属膜8をダイシングテープ13から剥離する。個片化された素子領域3及び金属膜8をダイシングテープ13から剥離する際にはダイシングテープ13を拡張(エキスパンド)して個片化された素子領域3及び金属膜8を相互に離隔させた状態で剥離することができる。これにより、複数の半導体装置が完成する。
【0028】
上述したように、本実施例では、まず、溝Gの底面(即ち半導体基板2の第1表面2a)にスクライビングホイール33を押し当てることにより、半導体基板2の第1表面2a側にクラック5を形成する。クラック5は、半導体基板2の第1表面2a側に形成されるので、ブレイクプレート34を第2表面2b側から押し当てると、クラック5に沿って半導体基板2が撓む。このため、クラック5に沿って第1表面2a側から半導体基板2を折り広げる方向に力が加わる。その結果、クラック5が半導体基板2の厚み方向に伸展し、素子領域3の境界に沿って半導体基板2を容易に分割することができる。また、金属膜8は、半導体基板2の第1表面2a上に形成されているので、金属膜8に対しても、クラック5の両側において金属膜8を引き離す方向に力が加わり、金属膜8が変形し、金属膜8を容易に分割することができる。このように、本実施例では、半導体基板2に対して、スクライビングホイール33及びブレイクプレート34を押し当てるという簡易な工程により、金属膜8を半導体基板2とともに分割することができる。
【0029】
また、本実施例では、半導体基板2にガラスにより構成された支持板12を貼り付けた状態で、半導体基板2の第1表面側にクラック5を形成する。支持板12が比較的硬い材料で構成されているので、半導体基板2にスクライビングホイール33を押し当てるときに、比較的低い荷重で半導体基板2の第1表面側にクラック5を形成することができる。
【0030】
また、本実施例では、ダイシングテープ13を貼り付けた状態で、半導体基板2と金属膜8を分割する。半導体基板2(金属膜8)がダイシングテープ13に固定されているので、半導体基板2にブレイクプレート34を押し当てるときに、半導体基板2の位置ずれを抑制することができ、得られる半導体装置が散乱することを防止することができる。
【0031】
また、本実施例では、第2表面2bが保護部材15により被覆された状態でブレイクプレート34を半導体基板2に押し当てる。第2表面2bが保護部材15により保護されるので、ブレイクプレート34により第2表面2bが損傷することを防止することができる。
【0032】
(実施例2)
続いて、図13を参照して、実施例2を説明する。実施例2は、図13に示されるように、U字の溝Gが金属膜8に形成される点が、実施例1とは異なる。実施例2では、溝Gの角度A1は、溝Gに直交する断面において溝Gの2箇所の上端U1、U2のそれぞれと溝Gの下端Lとを結ぶ2個の直線(図13の破線100)によって画定される角度である。スクライビングホイール33の先端角度A2は、溝Gの角度A1よりも小さい。このような構成でも、スクライビングホイール33が金属膜8に接触し難く、より適切に厚み方向に沿って伸びるクラック5を形成できる。
【0033】
なお、上述した実施例において、支持板貼り付け工程、ダイシングテープ貼り付け工程、及び保護部材被覆工程は実施されなくてもよい。
【0034】
また、上述の実施例の溝形成工程では、スクライビングホイール32によって金属膜8に溝Gを形成したが、その他の手法、例えばエッチングによって、金属膜8に溝Gを形成してもよい。
【0035】
以下に、本明細書に開示の製造方法の構成を列記する。
(構成1)
半導体装置の製造方法であって、
半導体基板(2)の第1表面(2a)を覆う電極層(8)の表面に溝(G)を形成する工程と、
前記溝の底面にスクライビングホイール(33)を押し当てることによって、前記半導体基板の厚み方向に延びるクラック(5)を前記半導体基板に形成する工程と、
前記クラックを形成する前記工程の後に、前記第1表面の反対側に位置する前記半導体基板の第2表面(2b)に前記溝に沿って分割部材(35)を押し当てることによって前記半導体基板を分割する工程と、
を備える、製造方法。
(構成2)
前記スクライビングホイールの先端角度(A2)は、前記溝に直交する断面において前記溝の2箇所の上端のそれぞれと前記溝の下端とを結ぶ2個の直線によって画定される角度(A1)よりも小さい、構成1に記載の製造方法。
(構成3)
前記スクライビングホイールが第1スクライビングホイール(33)であり、
前記溝を形成する前記工程では、第2スクライビングホイール(32)を前記電極層に押し当てることによって前記溝を形成する、
構成1又は2に記載の製造方法。
(構成4)
前記第1スクライビングホイールの先端角度(A2)は、前記第2スクライビングホイールの先端角度(A1)よりも小さい、構成3に記載の製造方法。
(構成5)
前記第1スクライビングホイールが、第1支持具(133a)によって回転可能に支持されており、
前記第2スクライビングホイールが、第2支持具(132a)によって回転可能に支持されており、
前記第1スクライビングホイールの回転軸に沿う方向における前記第1支持具に対する遊び(C2)が、前記第2スクライビングホイールの回転軸に沿う方向における前記第2支持具に対する遊び(C1)よりも大きい、
構成3または4に記載の製造方法。
(構成6)
前記半導体基板はSiCにより構成されている、構成1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【0036】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
2:半導体基板、2a:第1表面、2b:第2表面、3:素子領域、4:分割予定線、5
:クラック、6:主電極、8:金属膜、11:接着剤、12:支持板、13:ダイシン
グテープ、15:保護部材、31:研削砥石、32,33:スクライビングホイール、34:ブレイクプレート、G:溝
図1
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図13