(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081498
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】位置検出器
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G01D5/347 110M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195168
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北川 浩二
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103BA18
2F103CA02
2F103DA01
2F103DA12
2F103EA02
2F103EA15
2F103EA16
2F103EB03
2F103EB08
2F103EB16
2F103EB33
2F103EC03
2F103ED06
2F103ED11
2F103ED21
2F103ED27
2F103FA06
2F103FA15
(57)【要約】
【課題】位置検出器から出力されるA相信号とB相信号のそれぞれに変化が無くても、リサージュ図形上にて信号軌跡がK点とQ点を通過することと同様のA相信号とB相信号を得て、異常検出回路の故障診断を可能にすること。
【解決手段】位置検出器は、発光素子12と、スケール10と、インデックススケール13aと、スケール10及びインデックススケール13aを透過した光を電気信号に変換する受光素子14aと、を含む。スケール10には、主格子目盛16及び補助格子目盛17が設けられている。受光素子14aの近傍に設けられた診断用発光素子20,21を1つずつ個別的に点灯させることで、A相信号とB相信号を変化させる。これにより、リサージュ図形上で信号軌跡が1/4周を動いたことと同様の効果が得られ、異常検出回路に故障等が発生した場合に、内部の判定回路にて異常を判定することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
sin形状又はcos形状を有し互いに90°の位相差を有するA相信号とB相信号とを出力し、A相信号とB相信号とをパルス化し、位相カウントすることで速度を求め、その速度と基準閾値とを比較することで、A相信号又はB相信号の異常及び異常検出回路の故障を検出する速度判定回路を含む位置検出器において、
受光素子の近傍に設けられた2つの診断用発光素子を含み、
前記2つの診断用発光素子を1つずつ個別的に点灯させることで、個々のA相信号とB相信号とをリサージュ図形上の隣り合う象限に発生させる、
ことを特徴とする位置検出器。
【請求項2】
sin形状又はcos形状を有し互いに90°の位相差を有するA相信号とB相信号とを出力し、A相信号とB相信号とをA/D変換し、A/D変換後のA相信号とB相信号を2乗の和を算出することで、リサージュ図形上での振幅の半径値を求め、その半径値と基準閾値とを比較することで、A相信号又はB相信号の異常及び異常検出回路の故障を検出する振幅判定回路を含む位置検出器において、
受光素子の近傍に設けられた2つの診断用発光素子を含み、
前記2つの診断用発光素子のうちの一方の診断用発光素子は、A相信号がほぼ0となる位置に配置され、前記2つの診断用発光素子のうちの他方の診断用発光素子は、B相信号がほぼ0となる位置に配置され、
前記2つの診断用発光素子を1つずつ個別的に点灯させる、
ことを特徴とする位置検出器。
【請求項3】
請求項1に記載の位置検出器において、
前記速度判定回路に対して新たな閾値を設定することで、故障を診断する、
ことを特徴とする位置検出器。
【請求項4】
請求項2に記載の位置検出器において、
前記振幅判定回路に対して新たな閾値を設定することで、故障を診断する、
ことを特徴とする位置検出器。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の位置検出器において、
前記2つの診断用発光素子と前記受光素子は、1チップの半導体素子によって構成される、
ことを特徴とする位置検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライス盤等の工作機械や半導体製造装置の位置計測に利用することが可能な光学式位置検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
図6を参照して、従来技術に係る位置検出器について説明する。
図6は、従来技術に係る光学式位置検出器の信号検出部の一例を示す斜視図である。
【0003】
工作機械等の移動軸の位置検出装置として用いられる位置検出器は、スケール10と、スケール10に対して相対的に直進移動するスライダ15と、を含む。
【0004】
スケール10には、互いに異なるピッチの主格子目盛16と補助格子目盛17とが形成されている。主格子目盛16と補助格子目盛17は、それぞれ周期的な目盛である。
【0005】
スライダ15には、光透過性のインデックススケール13a、発光素子12、及び、コリメータレンズ11等が設けられている。インデックススケール13aは、主格子目盛16に対する周期的な4つの副格子を形成する。受光部は、4つの副格子に対応する4つの受光素子14aを含む。コリメータレンズ11は、発光素子12から発せられた光を平行光に形成する。
【0006】
スケール10の長手方向へのスライダ15の相対移動によって、光量変化が生じる。その光量変化が受光素子14aによって光電変換されることで、周期が同一で位相が異なる4つの信号a1,a2,b1,b2が得られる。
【0007】
上記の4つの信号(つまり、信号a1,a2,b1,b2)に対して、下記の差動演算を適用することで、オフセットの無いA相信号と、A相信号に対して位相が90°進んだB相信号と、が得られる。
A相信号=a1-a2
B相信号=b1-b2
【0008】
A相信号とB相信号は、sin形状又はcos形状を有するアナログ信号である。
図4aには、リサージュ図形上における、A相信号とB相信号の軌跡が示されている。横軸はA相信号を示し、縦軸はB相信号を示している。後述する
図4b及び
図4cにおいても、横軸はA相信号を示し、縦軸はB相信号を示している。スライダ15が、スケール10の主格子目盛16の1ピッチを移動すると、リサージュ図形上では信号軌跡が1周する。
【0009】
図5を参照して、上述した位置検出器に含まれる異常検出回路について説明する。
図5は、その異常検出回路を示すブロック図である。
【0010】
受光素子から出力されるsin信号は、A相信号を表している。受光素子から出力されるcos信号は、B相信号を表している。
【0011】
異常検出の方法は、以下に説明する通りである。機械が動作し、sin信号及びcos信号が得られると、sin信号及びcos信号がパルス化され、カウンタによって位相カウントが行われる。具体的には、リサージュ図形上で信号軌跡が1象限を超えると、カウント値として「1」が得られる。信号軌跡が1周して4象限を超えると、カウント値として「4」が得られる。信号軌跡がN周回すれば、カウント値として「N×4」が得られる。前回の位置検出時に得られたカウント値と、今回の位置検出時に得られたカウント値と、の差分を算出することで、速度が求められる。この速度と最大速度の閾値とを比較することで、異常を検出することができる。
【0012】
また、A相信号とB相信号とをA/D変換し、A/D変換後の各値の2乗の和を算出することでリサージュ半径を求め、そのリサージュ半径と、下限閾値及び上限閾値と、の比較によって振幅判定を行うことで、異常を検出することができる。
【0013】
以上のように、従来技術においては、速度判定機能と振幅判定機能とからなる2重の異常判定によって、異常が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来技術に係る診断方法においては、A相信号は正常であるが、B相信号の振幅が低下する故障モードが発生することがある。
図4bには、当該故障モードのリサージュ図形が示されている。
図4bに示す故障モードの例では、B相信号の振幅が約1/2に低下している。
【0016】
また、
図4cには、A相信号の振幅が異常であるときのリサージュ図形が示されている。
図4cに示す故障モードの例では、A相信号の振幅が約1/4となっており、プラスのオフセットが信号軌跡に重畳している。A相信号とB相信号の差動増幅を行うオペアンプ回路に含まれる電子回路が故障した場合等に、
図4bや
図4cに示されている故障モードが発生することが想定される。
【0017】
電源投入直後の機械停止時には、リサージュ図形上の1点が得られる。例えば、
図4b中のQ点の時点で電源が投入されると、信号の振幅が下限よりも小さいため、機械が動作を開始する前に異常を判定することができる。しかし、K点の時点で電源が投入されると、A相信号とB相信号のそれぞれの振幅が正常時の振幅と同じであるため、正常であると判定され、異常を検出することができない。なお、
図4a、
図4b及び
図4cには、この振幅判定の閾値の下限が、破線ERLLVLで示されており、閾値の上限が、破線ERHLVLで示されている。
【0018】
また、
図4cに示す例では、電源を投入した時点がK点であってもQ点であっても、振幅判定では異常を検出することができない。
【0019】
図4b及び
図4cのそれぞれの例では、機械が停止中であるため、A相信号とB相信号とをパルス化する速度判定によっても、異常を検出することができない。
【0020】
以上のように、従来技術に係る診断方法では、電源投入直後の時点で機械が停止中であると、異常を判定することができない。その結果、機械が動作を開始し、A相信号とB相信号に変化が発生し、リサージュ図形上のQ点の時点でサンプリングが行われることで、初めて、異常を検出することが可能となる。このように異常検出が遅れるため、危険な状態となり得る。
【0021】
本発明の目的は、電源投入直後の時点で機械が停止中である場合のように、位置検出器の光学部から出力されるA相信号とB相信号のそれぞれに変化が無くても、リサージュ図形上にて信号軌跡がK点とQ点を通過することと同様のA相信号とB相信号を得て、異常検出回路の故障診断を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の1つの態様は、sin形状又はcos形状を有し互いに90°の位相差を有するA相信号とB相信号とを出力し、A相信号とB相信号とをパルス化し、位相カウントすることで速度を求め、その速度と基準閾値とを比較することで、A相信号又はB相信号の異常及び異常検出回路の故障を検出する速度判定回路を含む位置検出器において、受光素子の近傍に設けられた2つの診断用発光素子を含み、前記2つの診断用発光素子を1つずつ個別的に点灯させることで、個々のA相信号とB相信号とをリサージュ図形上の隣り合う象限に位置させる、ことを特徴とする位置検出器である。
【0023】
本発明の1つの態様は、sin形状又はcos形状を有し互いに90°の位相差を有するA相信号とB相信号とを出力し、A相信号とB相信号とをA/D変換し、A/D変換後のA相信号とB相信号を2乗の和を算出することで、リサージュ図形上での振幅の半径値を求め、その半径値と基準閾値とを比較することで、A相信号又はB相信号の異常及び異常検出回路の故障を検出する振幅判定回路を含む位置検出器において、受光素子の近傍に設けられた2つの診断用発光素子を含み、前記2つの診断用発光素子のうちの一方の診断用発光素子は、A相信号がほぼ0となる位置に配置され、前記2つの診断用発光素子のうちの他方の診断用発光素子は、B相信号がほぼ0となる位置に配置され、前記2つの診断用発光素子を1つずつ個別的に点灯させる、ことを特徴とする位置検出器である。
【0024】
上記の構成においては、受光素子の近傍に2つの診断用発光素子が設けられ、各診断用発光素子を1つずつ個別的に点灯させることで、A相信号とB相信号を変化させる。例えば、第1の診断用発光素子を点灯させたときには
図4a中のK点の信号状態が得られ、かつ、第2の診断用発光素子を点灯させたときには
図4a中のQ点の信号状態が得られるように、2つの診断用発光素子が配置される。
【0025】
例えば、位置検出器の光学部に機械的な動きが無くても、
図2に示されている異常検出回路に含まれる、A/D変換回路、パルス化回路、カウント機能、リサージュ半径演算機能、速度判定機能及び振幅判定機能の各ブロックに故障が無ければ、
図4a中のK点及びQ点の2点の信号が得られる。
【0026】
また、異常検出回路に故障があれば、
図4bに示されているリサージュ図形上のK点及びQ点の2点の信号が得られ、Q点の信号が得られたときに、振幅判定によって異常を判定することができる。
【0027】
また、故障モードが異なり、
図4cに示されているリサージュ図形上での移動が起きた場合は、同一象限内に含まれる2点の信号が得られる。そのため、A相信号とB相信号とをパルス化してカウントすることで求められる速度が0となり、速度判定機能で異常を判定することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、電源投入直後の時点で機械が停止中である場合のように、位置検出器の光学部から出力されるA相信号とB相信号のそれぞれに変化が無くても、リサージュ図形上にて信号軌跡がK点とQ点を通過することと同様のA相信号とB相信号を得て、異常検出回路の故障を診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係る位置検出器の構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る異常検出回路とその診断機能を示す図である。
【
図3】実施形態に係る受光素子と診断用発光素子のレイアウトを示す図である。
【
図4a】A相信号とB相信号が正常状態のリサージュ図である。
【
図4b】B相信号が異常状態のリサージュ図である。
【
図4c】A相信号が異常状態のリサージュ図である。
【
図5】従来技術に係る異常検出回路の機能ブロック図である。
【
図6】従来技術に係る位置検出器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1を参照して、実施形態に係る位置検出器について説明する。実施形態に係る位置検出器は、スケール10と、スケール10に対して相対的に直進移動するスライダ15と、を含む。
【0031】
スケール10には、互いに異なるピッチの主格子目盛16と補助格子目盛17とが形成されている。主格子目盛16と補助格子目盛17は、それぞれ周期的な目盛である。
【0032】
スライダ15には、光透過性のインデックススケール13a、発光素子12、及び、コリメータレンズ11等が設けられている。インデックススケール13aは、主格子目盛16に対する周期的な4つの副格子を形成する。受光部は、4つの副格子に対応する4つの受光素子14aを含む。コリメータレンズ11は、発光素子12から発せられた光を平行光にする。
【0033】
スケール10の長手方向へのスライダ15の相対移動によって、光量変化が生じる。その光量変化が受光素子14aによって光電変換されることで、周期が同一で位相が異なる4つの信号a1,a2,b1,b2が得られる。
【0034】
上記の4つの信号(つまり、信号a1,a2,b1,b2)に対して、下記の差動演算を適用することで、オフセットの無いA相信号と、A相信号に対して位相が90°進んだB相信号と、が得られる。
A相信号=a1-a2
B相信号=b1-b2
【0035】
図1に示されている、スケール10、コリメータレンズ11、発光素子12、インデックススケール13a、受光素子14a及びスライダ15のそれぞれは、
図5に示されている各構成と同じである。
【0036】
本実施形態に係る位置検出器は、診断用発光素子20,21を更に含む。診断用発光素子21は、受光素子14aの近傍に配置される。具体的には、診断用発光素子20は、A相信号を大きくすることができ、かつ、B相信号が0に近くなる位置に、配置される。
【0037】
図3の左図に、その配置の具体例が示されている。受光素子14a上に4個の受光素子a2,a1,b1,b2がその順番で配置されている場合、診断用発光素子20は、受光素子a2の受光領域よりも受光素子a1の受光領域に近い位置、かつ、受光素子b1の受光領域と受光素子b2の受光領域との間の位置(例えば中間位置)に配置される。診断用発光素子21は、受光素子b2の受光領域よりも受光素子b1の受光領域に近い位置、かつ、受光素子a1の受光領域と受光素子a2の受光領域との間の位置(例えば中間位置)に配置される。
【0038】
受光素子a2,a1,b1,b2のそれぞれから得られる信号を、信号a2,a1,b1,b2と定義する。
【0039】
診断用発光素子20を点灯し、診断用発光素子21を消灯することで、信号b1と信号b2は同じ大きさを示し、信号a1と信号a2との関係は、a1>a2となる。そのため、A相信号はプラスの値を示し、B相信号は、ほぼ0の値を示す。この信号は、
図4aに示されているリサージュ図形上でのK点に位置している信号である。
【0040】
診断用発光素子20を消灯し、診断用発光素子21を点灯することで、A相信号は、ほぼ0の値を示し、B相信号はプラスの値を示す。この信号は、
図4aに示されているリサージュ図形上でのQ点に位置している信号である。
【0041】
図5に示されている異常検出回路内に故障が発生し、その故障が、B相信号の振幅が1/2となる故障であれば、
図4bに示されているリサージュ図形上でのK点の信号とQ点の信号とが得られる。従って、Q点の信号が得られたときに振幅判定機能によって異常を判定することができる。
【0042】
なお、
図4bに示す例では、異常判定を行うための閾値を変更しないで判定を行っているが、診断用発光素子20,21の発光強度が十分でない場合には、下限閾値又は上限閾値を適切な値に変更することで、判定を行うことができる。
【0043】
上述した実施形態では、K点とQ点に着目したが、
図4aに示されている「Q点とR点との組み合わせ」、「R点とM点との組み合わせ」及び「M点とK点との組み合わせ」を用いても、「K点とQ点との組み合わせ」と同様の効果が得られる。
【0044】
なお、
図3中の左図では、受光素子14a内の素子レイアウト30内において、左側から受光素子a2,a1,b1,b2の順番で各受光素子が配置されている。この配置の順番を、左側から受光素子a1,a2,b2,b1の順番に変えることで、M点の信号やR点の信号を得ることができる。
【0045】
また、
図4cに示されているリサージュ図形が得られるような故障が、
図5に示されている異常判定回路に発生している場合、
図4cに示されているリサージュ図形上でのK点の信号とQ点の信号とが得られる。この場合、K点とQ点の象限は変わらないため(つまり、K点とQ点は同じ象限内に存在するため)、A相信号とB相信号とをパルス化して位相カウントを行うと、カウント値は0となる。正常であればカウント値は1と求まるところ、カウント値が0になることで、速度判定によって異常を検出することができる。この場合、診断用の判定閾値を0.5に設定し、診断機能を動作させる。
【0046】
図2には、本実施形態に係る診断機能を実現するための構成(異常検出回路と診断機能)が示されている。本実施形態に係る異常検出回路は、
図5に示されている異常検出回路と同様に、パルス化部(例えばパルス化回路)と、カウンタと、速度判定部(例えば速度判定回路)と、異常処理部(例えば異常処理回路)と、A/D変換部(例えばA/D変換回路)と、リサージュ半径演算部(例えばリサージュ半径演算回路)と、振幅判定部(例えば振幅判定回路)とを含む。本実施形態に係る異常検出回路は、診断処理部(例えば診断処理回路)と診断用閾値設定部(例えば診断用閾値設定回路)とを更に含む。
【0047】
図5を参照して説明したように、受光素子から出力されるsin信号は、A相信号を表している。受光素子から出力されるcos信号は、B相信号を表している。
【0048】
機械が動作し、sin信号及びcos信号が得られると、sin信号及びcos信号がパルス化され、カウンタによって位相カウントが行われる。具体的には、リサージュ図形上で信号軌跡が1象限を超えると、カウント値として「1」が得られる。信号軌跡が1周して4象限を超えると、カウント値として「4」が得られる。信号軌跡がN周回すれば、カウント値として「N×4」が得られる。前回の位置検出時に得られたカウント値と、今回の位置検出時に得られたカウント値と、の差分を算出することで、速度が求められる。この速度と最大速度の閾値とを比較することで、異常を検出することができる。
【0049】
また、A相信号とB相信号とをA/D変換し、各値の2乗の和を算出することでリサージュ半径を求め、そのリサージュ半径と、下限閾値及び上限閾値と、の比較によって振幅判定を行うことで、異常を検出することができる。
【0050】
診断処理部は、診断用発光素子20,21を1つずつ個別的に点灯及び消灯を制御する。診断用閾値設定部は、速度判定部に予め専用閾値を設定する。
【0051】
例えば、電源投入後、位置検出を開始する直前に、
図2に示されている診断処理部を機能させて、異常検出回路の故障が診断される。
【0052】
診断用発光素子20,21は、
図3の左図に示すように、点光源であってもよいし、
図3の右図に示すように、複数の発光素子を配置したライン状の光源であってもよい。診断用発光素子20,21がライン状の光源によって構成される場合、診断用発光素子20は、受光素子a1の受光領域、受光素子b1の受光領域及び受光素子b2の受光領域に対応する位置に配置され、診断用発光素子21は、受光素子a2の受光領域、受光素子a1の受光領域及び受光素子b1の受光領域に対応する位置に配置される。
【0053】
2個の診断用発光素子20,21と受光素子14aは、1チップの半導体素子によって構成されてもよい。もちろん、これらは別々の素子によって構成されてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、2個の診断用発光素子20,21が用いられるが、3個以上の診断用発光素子が用いられてもよい。具体的には、2個の診断用発光素子20,21が用いられる場合と同様にリサージュ図形上で信号を移動させることができるように、3個以上の診断用発光素子が配置される。
【0055】
図2に示されている各構成(つまり、パルス化部、カウンタ、速度判定部、異常処理部、A/D変換部、リサージュ半径演算部、振幅判定部、診断処理部及び診断用閾値設定部)は、例えばプロセッサや電子回路等のハードウェア資源を利用して実現することができ、その実現において必要に応じてメモリ等のデバイスが利用されてもよい。また、各構成は、コンピュータによって実現されてもよい。つまり、コンピュータが備えるCPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェア資源と、CPU等の動作を規定するソフトウェア(プログラム)との協働により、各構成の全部又は一部が実現されてもよい。当該プログラムは、CDやDVD等の記録媒体を経由して、又は、ネットワーク等の通信経路を経由して、位置検出器が有する記憶装置に記憶される。別の例として、各構成は、DSP(Digital Signal Processor)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 スケール、11 コリメータレンズ、12 発光素子、13a インデックススケール、14a 受光素子、15 スライダ、16 主格子目盛、17 補助格子目盛、20 診断用発光素子、21 診断用発光素子。