(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081505
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20240611BHJP
B60C 9/04 20060101ALI20240611BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B60C9/08 Z
B60C9/08 E
B60C9/04 Z
B60C9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195176
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】宮園 俊哉
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA44
3D131BA02
3D131BA20
3D131BB03
3D131BC31
3D131DA30
(57)【要約】
【課題】本発明は、耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の空気入りタイヤは、コードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを備え、前記カーカスプライの端を覆う、有機繊維コードのゴム引き層からなる保護層が配置され、前記有機繊維コードは、前記空気入りタイヤの構成部材のコードの中で最も小さい径を有しており、前記有機繊維コードの少なくとも一部は、前記カーカスプライの端よりもタイヤ径方向外側まで延在する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーカスコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを備えた、空気入りタイヤであって、
前記カーカスプライの端を覆う、有機繊維コードのゴム引き層からなる保護層が配置され、
前記有機繊維コードは、前記空気入りタイヤの構成部材のコードの中で最も小さい径を有しており、
前記有機繊維コードの少なくとも一部は、前記カーカスプライの端よりもタイヤ径方向外側まで延在することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
一対のビード部をさらに備え、
前記カーカスは、前記一対のビード部間をトロイダル状に跨るカーカス本体部と、前記カーカス本体部から延びて前記ビードコアの周りを折り返されてなるカーカス折り返し部と、を有し、
前記有機繊維コードの少なくとも一部は、前記カーカス折り返し部の端よりもタイヤ径方向外側まで延在する、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記有機繊維コードの端又は前記有機繊維コードの折り返し部の頂点位置と、前記カーカスプライの端との最短距離は、5~37mmである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記有機繊維コードの5%伸長時の歪みは、2~10Nである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記有機繊維コードの打ち込み数は、前記カーカスコードの打ち込み数より多く、且つ、隣接する前記有機繊維コード間の間隙は、0.1mm以上である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態において、
前記カーカスコードと前記有機繊維コードとの距離は、0.2~1.0mmである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態において、
前記カーカスコードと前記有機繊維コードとの重なり幅は、10mm以上である、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記保護層は、前記カーカスコードの端よりもタイヤ径方向外側で折り返されることにより、前記カーカスコードの端を覆っている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤには、カーカスコードのゴム引き層からなる1枚以上のカーカスプライからなるカーカスが配置されている。タイヤゴムとカーカスコードとは剛性が異なるため、タイヤゴム中のカーカスコード(特に端)には応力が集中し、亀裂の発生や故障の原因になる場合がある。
【0003】
これに対し、補強部材のコード端への応力集中を緩和するため、補強部材のコード端をゴムと繊維とからなるゴム引き層からなる保護層で覆ったり沿わせて配置したりする手法も提案されている(ベルトの場合の例として特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような技術をカーカスプライの端に適用することも考えられるが、そのような手法によっても空気入りタイヤの耐久性が十分に向上しない場合があった。本発明者が検討したところ、上記保護層の特に繊維の端が新たな応力集中による亀裂の発生の起点となってしまうことが、空気入りタイヤの耐久性が十分に向上しない一因であるという知見を得た。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みて、耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)カーカスコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスを備えた、空気入りタイヤであって、
前記カーカスプライの端を覆う、有機繊維コードのゴム引き層からなる保護層が配置され、
前記有機繊維コードは、前記空気入りタイヤの構成部材のコードの中で最も小さい径を有しており、
前記有機繊維コードの少なくとも一部は、前記カーカスプライの端よりもタイヤ径方向外側まで延在することを特徴とする、空気入りタイヤ。
【0008】
(2)一対のビード部をさらに備え、
前記カーカスは、前記一対のビード部間をトロイダル状に跨るカーカス本体部と、前記カーカス本体部から延びて前記ビードコアの周りを折り返されてなるカーカス折り返し部と、を有し、
前記有機繊維コードの少なくとも一部は、前記カーカス折り返し部の端よりもタイヤ径方向外側まで延在する、上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0009】
(3)前記有機繊維コードの端又は前記有機繊維コードの折り返し部の頂点位置と、前記カーカスプライの端との最短距離は、5~37mmである、上記(1)又は(2)に記載の空気入りタイヤ。
【0010】
(4)前記有機繊維コードの5%伸長時の力は、2~10Nである、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
ここで、「有機繊維コードの5%伸長時の力」は、空気入りタイヤから前記保護層を取り出し、その中から1本の有機繊維コードを取り出し、当該1本の有機繊維コードを5%伸ばした際にかかる力を計測して求めるものとする(JISL1095:2010年に準拠)。
【0011】
(5)前記有機繊維コードの打ち込み数は、前記カーカスコードの打ち込み数より多く、且つ、隣接する前記有機繊維コード間の間隙は、0.1mm以上である、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0012】
(6)前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態において、
前記カーカスコードと前記有機繊維コードとの距離は、0.2~1.0mmである、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
ここで、上記「距離」は、タイヤ幅方向断面において、補強層のコードの延在方向に直交する方向に計測した際の、補強層のコードと有機繊維コードとの最短距離をいうものとする。
ここで、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
【0013】
(7)前記空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態において、
前記カーカスコードと前記有機繊維コードとの重なり幅は、10mm以上である、上記(1)~(6)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【0014】
(8)前記保護層は、前記カーカスコードの端よりもタイヤ径方向外側で折り返されることにより、前記カーカスコードの端を覆っている、上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
【
図5】カーカスプライの端付近の模式図及び拡大図である。
【
図6】保護層の剛性と歪みとの関係を示す図である。
【
図7】補強層のコードと有機繊維のコードとの位置関係によるせん断変形について説明するための模式図である。
【
図8】カーカスコードの端と有機繊維コードの折り返し部の頂点位置との距離と、カーカスコードの端付近での亀裂速度との関係を示す図である。
【
図9】有機繊維コードの5%伸長時の力と有機繊維コード端又は折り返し部付近の亀裂長さとの関係を示す図である。
【
図10】2種類の有機繊維コードの物性を示す図である。
【
図11】補強層のコードと有機繊維のコードとの重なり長さと亀裂の長さとの関係を示す図である。
【
図12】本実施形態の第3の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態にかかる空気入りタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)のタイヤ幅方向断面図である。
図1は、タイヤ赤道面CLを境界とするタイヤ幅方向の一方の半部のみを示しているが、他方の半部についても同様の構成である。
【0019】
図1では、重荷重用タイヤ(トラック・バス用タイヤ)を例示しているが、本発明は、他にも乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等、様々な用途のタイヤに用いることができる。
【0020】
タイヤの内部構造は、特に限定されるものではないが、一例としては、
図1に示すように、タイヤ1は、一対のビード部2間をトロイダル状に跨るカーカス3と、カーカス3のクラウン部のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層からなるベルト4と、トレッド5とを有している。一対のビード部2と、トレッド5との間には、一対のサイドウォール部7が連なっている。
【0021】
本例では、一対のビード部2の各々には、ビードコア2aが埋設されている。また、ビードコア2aのタイヤ径方向外側には、断面略三角形状のビードフィラ2bが配置されている。ビードフィラ2bは、硬質の部分とそのタイヤ径方向外側の軟質の部分とで構成することもできる。ビードコア2aの周囲(ビードコア2aから見てカーカス3よりも外周側)には、ワイヤーチェーファー6が配置されている。
【0022】
カーカス3は、1枚以上のカーカスプライからなる。カーカスプライは、カーカスコードをゴム被覆してなる。カーカスコードは、特に限定されないが、スチールコードとすることができる。カーカス3は、一対のビード部2間をトロイダル状に跨るカーカス本体部3aと、カーカス本体部3aから延びてビードコア2aの周りをタイヤ幅方向内側から外側に折り返してなるカーカス折り返し部3bと、を有する。図示例では、カーカスプライの端(カーカス折り返し部3bの終端)3cは、タイヤ幅方向位置よりもタイヤ径方向内側に位置している。
【0023】
図示例では、ベルト4は、4層のベルト層4a~4dを有している。図示例では、タイヤ径方向内側から順に、ベルト層4a、ベルト層4b、ベルト層4c、ベルト層4d、の順に配置されている。この例では、ベルト層4dのタイヤ幅方向の幅が最も小さく、ベルト層4bのタイヤ幅方向の幅が最も大きい。なお、上記の例にかかわらず、ベルト層の層数や、ベルトのタイヤ幅方向の幅の大小は、様々な構成とすることができる。
また、各ベルト層は、ベルトコードをゴム被覆してなるベルトプライからなる。ベルトコードは、特には限定されないが、スチールコードとすることができる。ベルトコードは、層間で互いに交差して延びている。特には限定されないが、ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、10°~60°、重荷重用タイヤでは15°~60°、好ましくは30°~60°とすることができる。
【0024】
トレッド5は、トレッドゴムからなる。トレッドゴムは、例えばタイヤ径方向に2層以上積層された構成とすることもできる。サイドウォール部7は、サイドウォールゴムからなる。
【0025】
図2は、
図1のビード部周辺の拡大図である。
図1、
図2に示すように、このタイヤ1では、カーカスプライの端3cを覆う、有機繊維コードのゴム引き層からなる保護層8が配置されている。
図5は、カーカスプライの端3c付近の模式図及び拡大図である。図示例では、保護層8は、Uの字の形状であり、すなわち、カーカス折り返し部3bのプライのタイヤ幅方向内側においてタイヤ径方向内側から外側に向かって延び、カーカスプライの端3c付近で折り返されて、カーカス折り返し部3bのプライのタイヤ幅方向外側においてタイヤ径方向外側から内側に向かって延び、これにより、カーカスプライの端3c及びその付近を覆っている。有機繊維コードは、タイヤ内で略90°で交差した、すだれ織状に構成することができる。ただし、有機繊維コードの構成は、すだれ織状には限定されない。
【0026】
図3は、本実施形態の第1の変形例を示す図であり、この例では、保護層8は、カーカスプライのタイヤ幅方向外側のみに配置され、タイヤ径方向内側から外側へと、カーカスプライの端3cよりもタイヤ径方向外側まで延びている。
図4は、本実施形態の第2の変形例を示す図であり、この例では、保護層8は、カーカスプライのタイヤ幅方向内側及び外側のそれぞれに配置され、各々が、タイヤ径方向内側から外側へと、カーカスプライの端3cよりもタイヤ径方向外側まで延びている。
このように、保護層8は、カーカス折り返し部3bに対してタイヤ幅方向外側及び/又は内側において、カーカスプライの端3cを様々な態様で覆うことができる。
図12は、本実施形態の第3の変形例を示す図であり、この例では、保護層8は、Uの字の形状であり、すなわち、カーカス折り返し部3bのプライのタイヤ幅方向内側においてタイヤ径方向内側から外側に向かって延び、カーカスプライの端3cよりもタイヤ径方向外側で折り返されて、カーカス折り返し部3bのプライのタイヤ幅方向外側においてタイヤ径方向外側から内側に向かって延び、これにより、カーカスプライの端3c及びその付近を覆っている。
【0027】
また、有機繊維コードの径は、0.04~0.60mmである。なお、有機繊維としては、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミド等を用いることができる。本例では、有機繊維コードは、タイヤ1の構成部材のコードの中で(いずれのタイヤ幅方向断面で見ても存在するタイヤ構成部材の中で)最も小さい径を有している。
【0028】
ここで、有機繊維コードの少なくとも一部は、カーカスプライの端(本例では、カーカス折り返し部3bの端)3cよりもタイヤ径方向外側まで延在している。
図2の例では、保護層8は、カーカスコードの端よりもタイヤ径方向外側で折り返されることにより、カーカスコードの端を覆っている。
以下、本実施形態の空気入りタイヤの作用効果について説明する。
【0029】
本実施形態の空気入りタイヤ1は、カーカスコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカス3を備え、カーカスプライの端3cを覆う、有機繊維コードのゴム引き層からなる保護層8が配置されている。これにより、保護層8によりカーカスプライの端3cを保護して、カーカスプライの端付近から生じる故障を抑制することができる。
ここで、カーカスプライの端や有機繊維コードの端又は有機繊維コードの折り返し部の頂点位置が、ビード部2のリムフランジ部に近づくほど、タイヤ転動時に、リムフランジ部とカーカスプライの折り返し部3bとに挟まれたゴムがタイヤ径方向外側に移動する変形が繰り返されることにより、カーカスプライの端や有機繊維コードの端や有機繊維コードの折り返し部の頂点位置付近の歪みが大きくなり、十分なタイヤ寿命が得られなくなる懸念がある。一方で、よりタイヤ径方向外側の領域では、タイヤ転動時のビード部2の接地域での曲げ変形が大きくなり、カーカスプライの端や有機繊維コードの端や有機繊維コードの折り返し部の頂点位置付近の歪みが大きくなる。
これに対し、本実施形態の空気入りタイヤ1では、有機繊維コードの少なくとも一部は、カーカスプライの端(本例では、カーカス折り返し部3bの端)3cよりもタイヤ径方向外側まで延在している。これにより、カーカスプライの端3cは、相対的にリムフランジ部に近づけて配置し、上記の曲げ変形の影響を低減しつつも、有機繊維コードの端又は有機繊維コードの折り返し部の頂点位置を相対的にリムフランジ部から遠ざけて、上記の繰り返し変形の影響を低減することができる。ここで、有機繊維コードは、タイヤ1の構成部材のコードの中で最も小さい径を有しているため、剛性が低く、上記のような配置とすることで、歪み集中を低減することによる亀裂の発生の抑制効果を有効に得ることができる。
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤによれば、耐久性を向上させることができる。
【0030】
ここで、有機繊維コードの端又は有機繊維コードの折り返し部の頂点位置と、カーカスプライの端との最短距離は、5~37mmであることが好ましい。
図8は、カーカスコードの端と有機繊維コードの折り返し部の頂点位置との距離と、カーカスコードの端付近での亀裂速度との関係を示す図である。タイヤサイズ275/80R22.5のタイヤを、リムサイズ22.5×8.25Jのリムに組み付け、内圧を875kPaとし、荷重57.33kNで、走行距離30,000kmとし、亀裂長さを求めた。上記最短距離を5~37mmとすることにより、およそ10%の寿命向上が見込めた。
これは、上記最短距離を5mm以上37mm以下とすることにより、カーカスプライの端3cを相対的にリムフランジ部に近づけつつも、有機繊維コードの端又は有機繊維コードの折り返し部の頂点位置を相対的にリムフランジ部から遠ざけて、上記の効果を有効に得ることができるためであると考えられる。
【0031】
ここで、保護層8の有機繊維コードの径は、0.04~0.60mmであることが好ましい。
図6は、保護層の剛性と(補強層のコードの端付近及び保護層のコードの端付近の)歪みとの関係を示す図である(予測計算の結果を示している)。
図6に示すように、保護層8の剛性が高いほど、保護される補強層(本実施形態ではカーカス)のカーカスコードの端付近での歪みは小さくなる。その一方で、保護層8の剛性が高いと、ゴムとの剛性差が大きくなるため、保護層8の有機繊維コードの端付近や
図2の例での折り返し部付近での歪みが大きくなってしまう。いずれかで歪みが大きくなって亀裂が生じてしまうとタイヤの故障の発生となってしまうため、「補強層のコードの端付近の歪みと、保護層の有機繊維コードの端付近の歪みとのうち、大きい方の歪み」が小さい点付近に対応する剛性を最適な有機繊維コードの剛性値とすることができ、その周囲の範囲を適した剛性の範囲とすることができる。そこで、有機繊維コードは、空気入りタイヤの構成部材のコードの中で最も小さい径を有していることで、保護層8の有機繊維コードの端付近や
図2の例での折り返し部付近での歪みを抑制して、タイヤの耐久性をより確実に向上させることができるからである。
特に、保護層8の有機繊維コードの径を0.04mm以上とすることにより、保護されるカーカスコードの端付近の歪みを低減することができ、一方で、保護層8の有機繊維コードの径を0.60mm以下とすることにより、保護層8の有機繊維コードの端付近や
図2の例での折り返し部付近での歪みを低減することができる。従って、保護層8の有機繊維コードの径は、0.04~0.60mmとすることにより、カーカスコードの端付近の歪みと、保護層8の有機繊維コードの端付近や
図2の例での折れ曲がり部付近での歪みをバランス良く抑制して、亀裂の発生や進展をより確実に抑制することができる。
【0032】
有機繊維コードの5%伸長時の力は、2~10Nであることが好ましい。
図9は、有機繊維コードの5%伸長時の力と有機繊維コード端又は折り返し部付近の亀裂長さとの関係を示す図である。
図9に示すように、比較例(伸長時の力が41Nの有機繊維から成る保護層を用いたタイヤの場合)を「1」とした指数(指数が小さい方が、亀裂長さが小さい)において、有機繊維コードの5%伸長時の力が4N(
図10の繊維1)及び10N(
図10の繊維2)の有機繊維コードを用いた場合に、亀裂長さが小さくなったことがわかる。有機繊維コードの5%伸長時の力を10N以下とすることにより、保護層8の有機繊維コードの端付近や
図2の例での折り返し部付近での歪みを有効に低減することができ、一方で、有機繊維コードの5%伸長時の力を2N以上とすることにより、補強層の端付近での歪みを有効に低減することができる。なお、
図9において、有機繊維コードの5%伸長時の力が2Nの場合に10%程度の亀裂抑制が確認できた。
【0033】
また、有機繊維コードの打ち込み数は、カーカスコードの打ち込み数より多く、且つ、隣接する有機繊維コード間の間隙は、0.1mm以上であることが好ましい。有機繊維コードの打ち込み数を、カーカスコードの打ち込み数より多くすることで、カーカスプライの端付近の歪みをさらに抑制することができ、一方で、隣接する有機繊維コード間の間隙を、0.1mm以上とすることにより、繊維同士の間隔を確保して応力拡大係数が大きくならないようにして、亀裂の発生を抑制することができる。
【0034】
図7は、カーカスコードと有機繊維のコードとの位置関係によるせん断変形について説明するための模式図である。
図7に模式的に示すように、カーカスコードと有機繊維のコードとの距離が大きいほど、せん断変形(大小2つの平行四辺形で模式的に示している)が大きくなる。
そこで、上記基準状態において、カーカスコードと有機繊維コードとの距離は、0.2~1.0mmであることが好ましい。上記距離を1.0mm以下とすることにより、せん断変形を小さくして、タイヤの耐久性をさらに向上させ得るからである。一方で、特には限定されないものの、製造上の観点から、上記距離は0.2mm以上とすることが好ましい。なお、上記距離を1.0mmとした場合に、伸長時の力が41Nの有機繊維から成る保護層を用いたタイヤ対比で、タイヤの室内試験結果で10%のタイヤ寿命の向上が確認できた。
【0035】
また、
図7に示すように、カーカスコードと有機繊維コードとの重なり幅(補強層のコードの延在方向に沿った重なり幅)は、長い方が、せん断変形が小さくなる。このため、上記基準状態において、カーカスコードと有機繊維コードとの重なり幅は、10mm以上であることが好ましい。タイヤサイズ275/80R22.5のタイヤを、リムサイズ22.5×8.25Jのリムに組み付け、内圧を875kPaとし、荷重57.33kNで、30、000km走行したタイヤについて調べた。
図11は、補強層のコードと有機繊維コードとの重なり幅と、補強層の端付近での亀裂長さとの関係を示す図である。
図11に示すように、上記重なり幅が10mm以上で効果が確認できた。一方で、特には限定されないが、上記重なり幅が17mm以上をしても効果が飽和したため、部材の削減と製造ばらつきの観点から、上記重なり幅は17mm~30mmとすることが好ましい。
また、製造上の観点からは、補強層のコードと有機繊維コードとのなす角度は、交差する2方向の有機繊維コードのうち単位幅当たりのコード数が多い方、又は、2方向の有機繊維コードのうち小さい方の角度が10°以下であることが好ましい。
【0036】
タイヤは、通信装置100としてのRFタグを備えてよい。RFタグは、ICチップとアンテナとを備える。RFタグは、例えば、タイヤを構成する同種又は異種の複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、タイヤ生産時にRFタグを取り付け易く、RFタグを備えるタイヤの生産性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、ビードフィラと、ビードフィラに隣接するその他の部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。RFタグは、タイヤを構成するいずれかの部材内に埋設されていてもよい。このようにすることで、タイヤを構成する複数の部材の間の位置に挟み込まれて配置される場合と比較して、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、トレッドゴム、サイドゴム等のゴム部材内に埋設されてよい。RFタグは、タイヤ幅方向断面視でのタイヤ外面に沿う方向であるペリフェリ長さ方向において、剛性の異なる部材の境界となる位置に、配置されないことが好ましい。このようにすることで、RFタグは、剛性段差に基づき歪みが集中し易い位置に、配置されない。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向断面視でカーカスの端部と、このカーカスの端部に隣接する部材(例えばサイドゴム等)と、の境界となる位置に配置されないことが好ましい。RFタグの数は特に限定されない。タイヤは、1個のみのRFタグを備えてもよく、2個以上のRFタグを備えてもよい。ここでは、通信装置の一例として、RFタグを例示説明しているが、RFタグとは異なる通信装置であってもよい。
【0037】
RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部に配置されてよい。このようにすることで、RFタグは、タイヤのサイドカットにより損傷しない。RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド中央部に配置されてよい。トレッド中央部は、トレッド部において撓みが集中し難い位置である。このようにすることで、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。また、タイヤ幅方向でのタイヤの両外側からのRFタグとの通信性に差が生じることを抑制できる。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を中心としてトレッド幅の1/2の範囲内に配置されてよい。RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端部に配置されてもよい。RFタグと通信するリーダーの位置が予め決まっている場合には、RFタグは、例えば、このリーダーに近い一方側のトレッド端部に配置されてよい。本例では、RFタグは、例えば、タイヤ幅方向において、トレッド端を外端とする、トレッド幅の1/4の範囲内に配置されてよい。
【0038】
RFタグは、例えば、ビード部間に跨る、1枚以上のカーカスプライを含むカーカスより、タイヤ内腔側に配置されてよい。このようにすることで、タイヤの外部から加わる衝撃や、サイドカットや釘刺さりなどの損傷に対して、RFタグが損傷し難くなる。一例として、RFタグは、カーカスのタイヤ内腔側の面に密着して配置されてよい。別の一例として、カーカスよりタイヤ内腔側に別の部材がある場合に、RFタグは、例えば、カーカスと、このカーカスよりタイヤ内腔側に位置する別の部材と、の間に配置されてもよい。カーカスよりタイヤ内腔側に位置する別の部材としては、例えば、タイヤ内面を形成するインナーライナーが挙げられる。別の一例として、RFタグは、タイヤ内腔に面するタイヤ内面に取り付けられていてもよい。RFタグが、タイヤ内面に取り付けられる構成とすることで、RFタグのタイヤへの取り付け、及び、RFタグの点検・交換が行い易い。つまり、RFタグの取り付け性及びメンテナンス性を向上させることができる。また、RFタグが、タイヤ内面に取り付けられることで、RFタグをタイヤ内に埋設する構成と比較して、RFタグがタイヤ故障の核となることを防ぐことができる。また、カーカスが、複数枚のカーカスプライを備え、複数枚のカーカスプライが重ねられている位置がある場合に、RFタグは、重ねられているカーカスプライの間に配置されていてもよい。
【0039】
RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部で、1枚以上のベルトプライを含むベルトより、タイヤ径方向の外側に配置されてよい。一例として、RFタグは、ベルトに対してタイヤ径方向の外側で、当該ベルトに密着して配置されてよい。また、別の一例として、補強ベルト層を備える場合、当該補強ベルト層に対してタイヤ径方向の外側で、当該補強ベルト層に密着して配置されてよい。また、別の一例として、RFタグは、ベルトよりタイヤ径方向の外側で、トレッドゴム内に埋設されていてもよい。RFタグが、タイヤのトレッド部で、ベルトよりタイヤ径方向の外側に配置されることで、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信が、ベルトにより阻害され難い。そのため、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信性を向上させることができる。また、RFタグは、例えば、タイヤのトレッド部で、ベルトよりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグのタイヤ径方向の外側がベルトに覆われるため、RFタグは、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。この一例として、RFタグは、タイヤのトレッド部で、ベルトと、当該ベルトよりタイヤ径方向の内側に位置するカーカスと、の間に配置されてよい。また、ベルトが、複数枚のベルトプライを備える場合に、RFタグは、タイヤのトレッド部で、任意の2枚のベルトプライの間に配置されてよい。このようにすることで、RFタグのタイヤ径方向の外側が1枚以上のベルトプライに覆われるため、RFタグは、トレッド面からの衝撃や釘刺さりなどに対して損傷し難くなる。
【0040】
トラック・バス用タイヤの場合、RFタグは、例えば、クッションゴムと、トレッドゴムとの間やクッションゴムと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、RFタグへの衝撃を、クッションゴムにより緩和できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。また、RFタグは、例えば、クッションゴム内に埋設されていてもよい。更に、クッションゴムは、隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されてよい。かかる場合に、RFタグは、クッションゴムを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されてもよい。
【0041】
RFタグは、例えば、タイヤのサイドウォール部又はビード部の位置に配置されてよい。RFタグは、例えば、RFタグと通信可能なリーダーに対して近い一方側のサイドウォール部又は一方側のビード部に配置されてよい。このようにすることで、RFタグとリーダーとの通信性を高めることができる。一例として、RFタグは、カーカスと、サイドゴムと、の間やトレッドゴムとサイドゴムと、の間に配置されてよい。RFタグは、例えば、タイヤ径方向において、タイヤ最大幅となる位置と、トレッド面の位置と、の間に配置されてよい。このようにすることで、RFタグがタイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置される構成と比較して、タイヤ径方向でのタイヤの外側からのRFタグとの通信性を高めることができる。RFタグは、例えば、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側に配置されていてもよい。このようにすることで、RFタグは、剛性の高いビード部近傍に配置される。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。一例として、RFタグは、ビードコアとタイヤ径方向又はタイヤ幅方向で隣接する位置に配置されてよい。ビードコア近傍は歪みが集中し難い。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。特に、RFタグは、タイヤ最大幅となる位置よりタイヤ径方向の内側であって、かつ、ビード部のビードコアよりタイヤ径方向の外側の位置に配置されることが好ましい。このようにすることで、RFタグの耐久性を向上させることができるとともに、RFタグとリーダーとの通信が、ビードコアにより阻害され難く、RFタグの通信性を高めることができる。また、サイドゴムがタイヤ径方向に隣接する同種又は異種の複数のゴム部材から構成されている場合に、RFタグは、サイドゴムを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0042】
乗用車用タイヤの場合、RFタグは、ビードフィラと、このビードフィラに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、ビードフィラを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。RFタグは、例えば、ビードフィラと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。カーカスのうちビードフィラと共にRFタグを挟み込む部分は、ビードフィラに対してタイヤ幅方向の外側に位置してもよく、タイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカスのうちビードフィラと共にRFタグを挟み込む部分が、ビードフィラに対してタイヤ幅方向の外側に位置する場合には、タイヤ幅方向のタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を、より低減できる。これにより、RFタグの耐久性を、より向上させることができる。また、ビードフィラは、サイドゴムと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ビードフィラと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。更に、ビードフィラは、ゴムチェーファーと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ビードフィラと、ゴムチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。
【0043】
トラック・バス用タイヤの場合、RFタグは、スティフナーと、このスティフナーに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、スティフナーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。RFタグは、例えば、スティフナーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。また、RFタグは、例えば、スティフナーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。カーカスのうちスティフナーと共にRFタグを挟み込む部分は、スティフナーに対してタイヤ幅方向の外側に位置してもよく、タイヤ幅方向の内側に位置してもよい。カーカスのうちスティフナーと共にRFタグを挟み込む部分が、スティフナーに対してタイヤ幅方向の外側に位置する場合には、タイヤ幅方向のタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を、より低減できる。これにより、RFタグの耐久性を、より向上させることができる。スティフナーは、ゴムチェーファーと隣接して配置されている部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、スティフナーと、ゴムチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。スティフナーは、タイヤ幅方向の外側でハットゴムに隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、スティフナーと、ハットゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。スティフナーは、硬さの異なる複数のゴム部材から構成されてよい。かかる場合に、RFタグは、スティフナーを構成する複数のゴム部材の間に挟み込まれて配置されていてもよい。RFタグは、ハットゴムと、このハットゴムに隣接する部材と、の間に挟み込まれて配置されてよい。RFタグは、例えば、ハットゴムと、カーカスプライと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、RFタグへの衝撃を、ハットゴムにより緩和できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。
【0044】
RFタグは、例えば、ゴムチェーファーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されてよい。このようにすることで、ゴムチェーファーを配置することにより歪みが集中し難くなった位置に、RFタグを配置することができる。そのため、RFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。RFタグは、例えば、ゴムチェーファーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、リムから加わる衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を低減できる。そのため、RFタグの耐久性を向上させることができる。
【0045】
トラック・バス用タイヤの場合、RFタグは、ナイロンチェーファーと、このナイロンチェーファーのタイヤ幅方向の外側又は内側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、タイヤ変形時に、RFタグの位置が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時にRFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向外側で、ゴムチェーファーと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、ゴムチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向外側で、サイドゴムと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、サイドゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、スティフナーと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、スティフナーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。また、ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、ハットゴムと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、ハットゴムと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。更に、ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、カーカスと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、カーカスと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。更に、ナイロンチェーファーは、例えば、タイヤ幅方向内側で、ワイヤーチェーファーと隣接する部分を備えてもよい。かかる場合に、RFタグは、ナイロンチェーファーと、ワイヤーチェーファーと、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このように、RFタグは、ナイロンチェーファーと、このナイロンチェーファーのタイヤ幅方向の外側又は内側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてよい。特に、RFタグのタイヤ幅方向外側が、ナイロンチェーファーに覆われることで、タイヤ幅方向でのタイヤの外側からの衝撃や損傷により、RFタグに加わる負荷を、より低減できる。そのため、RFタグの耐久性を、より向上させることができる。
【0046】
RFタグは、ワイヤーチェーファーと、このワイヤーチェーファーのタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材と、の間に挟み込まれて配置されていてもよい。このようにすることで、タイヤ変形時に、RFタグの位置が変動し難くなる。そのため、タイヤ変形時にRFタグに加わる負荷を低減できる。これにより、RFタグの耐久性を向上させることができる。ワイヤーチェーファーがタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、ゴムチェーファーなどのゴム部材であってよい。また、ワイヤーチェーファーがタイヤ幅方向の内側又は外側で隣接する別の部材は、例えば、カーカスであってもよい。
【0047】
乗用車用タイヤの場合、ベルトの半径方向外側にベルト補強層をさらに備えてもよい。例えば、ベルト補強層はポリエチレンテレフタレートからなるコードをタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回してなってもよい。ここでコードは、6.9×10-2 N/tex以上の張力をかけて接着剤処理を施してなり、160℃で測定した29.4N荷重時の弾性率が2.5 mN/dtex・%以上であってもよい。さらにベルト補強層はベルト全体を覆うように配置されていてもベルトの両端部のみを覆うように配置されていてもよい。さらにベルト補強層の単位幅あたりの巻き回し密度が幅方向位置で異なっていてもよい。このようにすることで、高速耐久性を低下させることなくロードノイズおよびフラットスポットを低減させることができる。
【実施例0048】
本発明の効果を確かめるため、供試タイヤを試作し、室内耐久試験によりタイヤ寿命を評価した。各タイヤは、カーカスコードをゴム被覆してなる少なくとも1枚のカーカスプライの端を覆う、有機繊維コードのゴム引き層からなる保護層が配置されたものとした。各タイヤの諸元は、評価結果とともに以下の表1に示している。室内耐久試験は、タイヤサイズ275/80R22.5、荷重37.19kN、走行距離100,000kmとし、内圧は900kPa、リムは、22.5×7.5Jとした。比較例として、伸長時の力が41Nの有機繊維から成る保護層を用いたタイヤを試作し、その評価結果を「1」とした際の指数で示しており、数値が小さい方が補強層の端付近での亀裂の長さが小さく、タイヤの耐久性が高いことを示している。
【0049】
【0050】
表1に示すように、発明例1~4では、比較例対比でタイヤの耐久性が向上したことがわかる。なお、保護層の端付近や折り返し部を有する場合の折り返し部付近では、亀裂が全く生じなかった。
【0051】
[国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)への貢献]
持続可能な社会の実現に向けて、SDGsが提唱されている。本発明の一実施形態は「No.12_つくる責任、つかう責任」および「No.13_気候変動に具体的な対策を」などに貢献する技術となり得ると考えられる。