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特開2024-81515樹脂組成物、ペレット、および、成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081515
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物、ペレット、および、成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240611BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240611BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20240611BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20240611BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L83/05
C08L91/06
C08K3/32
C08K7/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195187
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】太田 茂樹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE033
4J002BB213
4J002CG011
4J002CG012
4J002CP033
4J002CP043
4J002DA030
4J002DH037
4J002DL006
4J002EH030
4J002EH040
4J002FA096
4J002FD016
4J002FD060
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD160
4J002FD203
4J002FD207
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 低比重で、かつ、耐衝撃性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、ペレット、および、成形品の提供。
【解決手段】 ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、ポリカーボネートオリゴマー1~20質量部と、圧縮破壊強度100MPa以上の中空ガラス5~25質量部と、改質向上剤0.1~5質量部とを含む、樹脂組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、
ポリカーボネートオリゴマー1~20質量部と、
圧縮破壊強度100MPa以上の中空ガラス5~25質量部と、
改質向上剤0.1~5質量部とを含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記改質向上剤が、
【化1】
で表される基(*は他の部位との結合部位である)、カルボン酸基、エステル基、不飽和ジカルボン酸無水物基、エポキシ基、および、リン酸塩の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記改質向上剤が、シラン変性シリコーン、ワックス、および、リン酸水素塩から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記改質向上剤が、酸変性ワックスを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネートオリゴマーの含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、8質量部以上である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記中空ガラスの真密度が0.2~1.0g/cm3である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記中空ガラスと前記ポリカーボネートオリゴマーの質量比率である(中空ガラス/ポリカーボネートオリゴマー)が、0.3~1.5である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記改質向上剤が、
【化2】
で表される基(*は他の部位との結合部位である)、カルボン酸基、エステル基、不飽和ジカルボン酸無水物基、エポキシ基、および、リン酸塩の少なくとも1つを含み、
前記ポリカーボネートオリゴマーの含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、8質量部以上であり、
前記中空ガラスの真密度が0.2~1.0g/cm3であり、
前記中空ガラスと前記ポリカーボネートオリゴマーの質量比率である(中空ガラス/ポリカーボネートオリゴマー)が、0.3~1.5である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1、2または8に記載の樹脂組成物のペレット。
【請求項10】
請求項1、2または8に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項11】
請求項9に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ペレット、および、成形品に関する。特に、ポリカーボネート樹脂を主要成分とする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)は、透明性や耐熱性、耐候性、機械的物性、電気的特性に優れる樹脂であり、例えば、自動車材料や航空機材料、電気・電子機器材料、住宅材料、医療機器材料、その他の工業分野における材料等に幅広く利用されている。
ここで、ポリカーボネート樹脂成形品のさらなる軽量化が求められている。
例えば、特許文献1には、(A)ポリカーボネート樹脂、(B)ポリブチレンテレフタレート樹脂、(C)中空充填材を配合してなる熱可塑性樹脂組成物であり、ポリカーボネート樹脂と(B)ポリブチレンテレフタレート樹脂の合計を100重量%として、(A)ポリカーボネート樹脂1~99重量%、(B)ポリブチレンテレフタレート樹脂1~99重量%であり、(A)ポリカーボネート樹脂と(B)ポリブチレンテレフタレート樹脂の合計を100重量部として、(C)中空充填材が0.1~50重量部からなる熱可塑性樹脂組成物であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-127062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討を行ったところ、上記樹脂組成物は耐衝撃性が不十分であることが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、低比重で、かつ、耐衝撃性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、ペレット、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂に、所定の中空ガラスと、ポリカーボネートオリゴマーと、改質向上剤を配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、
ポリカーボネートオリゴマー1~20質量部と、
圧縮破壊強度100MPa以上の中空ガラス5~25質量部と、
改質向上剤0.1~5質量部とを含む、
樹脂組成物。
<2>前記改質向上剤が、
【化1】
で表される基(*は他の部位との結合部位である)、カルボン酸基、エステル基、不飽和ジカルボン酸無水物基、エポキシ基、および、リン酸塩の少なくとも1つを含む、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記改質向上剤が、シラン変性シリコーン、ワックス、および、リン酸水素塩から選択される少なくとも1種を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記改質向上剤が、酸変性ワックスを含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記ポリカーボネートオリゴマーの含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、8質量部以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記中空ガラスの真密度が0.2~1.0g/cm3である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>前記中空ガラスと前記ポリカーボネートオリゴマーの質量比率である(中空ガラス/ポリカーボネートオリゴマー)が、0.3~1.5である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>記改質向上剤が、
【化2】
で表される基(*は他の部位との結合部位である)、カルボン酸基、エステル基、不飽和ジカルボン酸無水物基、エポキシ基、および、リン酸塩の少なくとも1つを含み、
前記ポリカーボネートオリゴマーの含有量が、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、8質量部以上であり、
前記中空ガラスの真密度が0.2~1.0g/cm3であり、
前記中空ガラスと前記ポリカーボネートオリゴマーの質量比率である(中空ガラス/ポリカーボネートオリゴマー)が、0.3~1.5である、<1>に記載の樹脂組成物。
<9><1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物のペレット。
<10><1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
<11><9>に記載のペレットから形成された成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、低比重で、かつ、耐衝撃性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、ペレット、および、成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、数平均分子量は、特に述べない限り、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0008】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、ポリカーボネートオリゴマー1~20質量部と、圧縮破壊強度100MPa以上の中空ガラス5~25質量部と、改質向上剤0.1~5質量部とを含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、低比重で、かつ、耐衝撃性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物が得られる。さらに、曲げ弾性率が高い成形品を提供可能な樹脂組成物が得られる。また、外観に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物が得られる。
【0009】
この理由は、以下の通りであると推測される。
樹脂組成物を低比重にしつつ、機械的強度を向上させるために、中空ガラスを配合することが考えられる。特に、圧縮破壊強度100MPa以上の中空ガラスを用いると、押出機を用いて溶融混練する際にも、その形状を保ちやすい。しかしながら、中空ガラスを配合すると外観が劣ってしまう。これは、中空ガラスが成形品の表面に出てきてしまうためであると推測された。本実施形態では、ポリカーボネートオリゴマーを配合することにより、外観を向上させることに成功した。すなわち、ポリカーボネートオリゴマーは、成形品の表面側に偏在し、中空ガラスを成形品の表面に出にくくすることができると推測された。また、ポリカーボネートオリゴマーを配合することにより、樹脂組成物がゆっくり固化するため、表面粗さが緩くなるためであると推測された。
しかしながら、ポリカーボネートオリゴマーを配合すると、得られる成形品の耐衝撃性が問題となった。これは、中空ガラスが表面に本来的に有する水酸基が、ポリカーボネート樹脂やポリカーボネートオリゴマーの炭酸エステル結合部位に攻撃することが理由であると推測された。そこで、水酸基と反応ないし相互作用しうる官能基を有する改質向上剤を配合することにより、中空ガラスの表面の水酸基をキャップすることができたと推測された。結果として、耐衝撃性に優れた成形品が得られたと推測される。
【0010】
<ポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を含む。
ポリカーボネート樹脂は、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OC(=O)]-単位(Rが、炭化水素基、具体的には、脂肪族基、芳香族基、または、脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されない。本実施形態においては、ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂がより好ましい。このようなポリカーボネート樹脂を用いることにより、より優れた耐熱性と靱性が達成される。本実施形態においては、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂は、全構成単位の90モル%以上がビスフェノール骨格を有する構成単位であることが好ましく、全構成単位の90モル%以上がビスフェノールA由来の構成単位であることがより好ましい。
【0011】
また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは12,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上である。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の耐久性がより向上する傾向にある。前記ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、50,000以下であることが好ましく、より好ましくは40,000以下であり、さらに好ましくは30,000以下であり、一層好ましくは、25,000以下である。前記上限値以下とすることにより、成形品の成形加工性がより向上する傾向にある。
粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4×Mv0.83、から算出される値を意味する。
2種以上のポリカーボネート樹脂を用いる場合は、混合物の粘度平均分子量とする。
【0012】
また、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の250℃、荷重2.16kgにおけるメルトボリュームレート(MVR)は、3cm3/10min以上であることが好ましく、7cm3/10min以上であることがより好ましく、10cm3/10min以上であることがさらに好ましく、また、70cm3/10min以下であることが好ましく、65cm3/10min以下であることがより好ましく、50cm3/10min以下であることがさらに好ましく、40cm3/10min以下であることが一層好ましく、30cm3/10min以下であることがより一層好ましく、20cm3/10min以下であることがさらに一層好ましい。
MVRは、メルトインデクサーのシリンダー内に、測定するサンプルのペレット内に入れて、ISO-1133規格に従い、260℃、荷重5kgの条件で、4分間加熱後の値を測定する。
2種以上のポリカーボネート樹脂を用いる場合は、混合物のMVRとする。
【0013】
上記の他、ポリカーボネート樹脂の詳細は、特開2021-084942号公報の段落0013~0041の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0014】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物中、60質量%以上であることが好ましく、66質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましく、75質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の機械的強度、耐熱性、透明性の維持効果がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、樹脂組成物中、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、87質量%以下であることが好ましい。前記上限値以下とすることにより、ポリカーボネート樹脂組成物の低比重(軽量化)効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0015】
<ポリカーボネートオリゴマー>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、ポリカーボネートオリゴマーを1~20質量部の割合で含む。
本実施形態において、ポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常、1000以上であり、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上であり、3000以上であってもよく、また、通常、10000未満、好ましくは9500以下、より好ましくは9000以下であり、さらに好ましくは7000以下である。
ポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)の測定は、上述のポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)と同様の方法に従って測定される。
本実施形態の樹脂組成物が2種以上のポリカーボネートオリゴマーを含む場合、粘度平均分子量(Mv)は、混合物の粘度平均分子量(Mv)とする。
【0016】
ポリカーボネートオリゴマーは、芳香族ポリカーボネートオリゴマーであることが好ましく、ビスフェノールA型ポリカーボネートオリゴマーであることがより好ましい。
【0017】
ポリカーボネートオリゴマーの製造方法やその他の詳細は、特開2010-214758号公報の段落0021、特開2021-025020号公報の段落0039~0040、0042の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0018】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネートオリゴマーの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、1質量部以上であり、3質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、7質量部以上であることがさらに好ましく、8質量部以上であることが一層好ましく、9質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の成形性かつ成形品の表面外観性がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネートオリゴマーの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、20質量部以下であり、18質量部以下であることが好ましく、16質量部以下であることがより好ましく、14質量部以下であることがさらに好ましく、13質量部以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の衝撃強度の低下抑制効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネートオリゴマーを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0019】
<圧縮破壊強度100MPa以上の中空ガラス>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、圧縮破壊強度100MPa以上の中空ガラスを5~25質量部の割合で含む。このような中空ガラスを含むことにより、機械的強度が高く、低比重の成形品が得られる。
【0020】
ここで、中空ガラスの圧縮破壊強度(略して、「圧壊強度」ということもある)とは、JIS-Z8844:2019「微小粒子の破壊強度および変形強度の測定方法」に基づき以下の条件で測定して算出した値である。
・試験機:微小粒子用の圧縮試験機。装置としては島津製作所社製の微小圧縮試験機MCT-510を用いることができる。
・圧縮試験時の雰囲気条件:23℃±2℃、50±15%RH
・圧縮試験の負荷速度:1.1155mN/sec
・上部加圧圧子:平面50μmφ
・下部加圧板(試料散布台):平面形状
・圧縮試験は無作為に抽出した7個の粒子でそれぞれの粒子について圧縮試験を実施、破壊強度を求めてその平均値をその粒子の圧縮破壊強度とする。
・圧縮破壊強度は以下の算出式(A)で求める。
算出式(A)σ=2.8×F/d2×103
σ:圧縮破壊強度(MPa)
F:試料の破壊が認められた時の破壊力(mN)
d:測定した粒子の平均粒子径(μm)
【0021】
本実施形態で用いる中空ガラスの圧縮破壊強度は、100MPa以上であり、105MPa以上であることが好ましい。本実施形態で用いる中空ガラスの圧縮破壊強度の上限は特に定めるものではないが、例えば、250MPa以下である。
【0022】
本実施形態で用いる中空ガラスの真密度は、0.2g/cm3以上であることが好ましく、0.3g/cm3以上であることがより好ましく、0.4g/cm3以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、押出製造時の中空ガラスのフィード安定性がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いる中空ガラスの真密度は、1.0g/cm3以下であることが好ましく、0.9g/cm3以下であることがより好ましく、0.8g/cm3以下であることがさらに好ましく、0.7g/cm3以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の軽量性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、中空ガラスを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。中空ガラスを2種以上含む場合、真密度は、各中空ガラスの真密度に各中空ガラスの質量分率をかけた値の和とする。
中空ガラスの真密度は、ASTM-D2840(エアーコンパリソンピクノメーター使用)に従って測定される。
【0023】
本実施形態で用いる中空ガラスの粒径(d50)は、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、中空ガラスの真密度増加が抑制され、得られる成形品の軽量化効果がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いる中空ガラスの粒径(d50)は、40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましく、25μm以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、成形品の中空ガラスの表面浮きによる表面外観の悪化が低減する傾向にある。
中空ガラスの粒径(d50)は、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用し、乾式測定法に従って測定される。
【0024】
本実施形態で用いる中空ガラスに含まれるガラスの種類は特に定めるものではなく、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラス、Rガラス、Mガラス、Dガラスなどのガラス組成から選択され、特に、Eガラス(無アルカリガラス)が好ましい。
本実施形態で用いる中空ガラスは、通常、表面に水酸基を有するものである。
【0025】
本実施形態の樹脂組成物における中空ガラスの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、5質量部以上であり、7質量部以上であることが好ましく、9質量部以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の軽量化効果がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物における中空ガラスの含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、25質量部以下であり、20質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることがさらに好ましく、14質量部以下であることが一層好ましく、13質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の表面外観性と耐衝撃性の低下を抑制する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、中空ガラスを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。中空ガラスを2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0026】
本実施形態の樹脂組成物においては、前記中空ガラスと前記ポリカーボネートオリゴマーの質量比率である(中空ガラス/ポリカーボネートオリゴマー)が、2.5以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましく、1.1以下であることが一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる成形品の表面外観がより向上する傾向にある。また、前記中空ガラス/ポリカーボネートオリゴマーは、0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましく、0.6以上であることがさらに好ましく、0.8以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる成形品の表面外観向上化と軽量化がよりバランスよく維持する傾向にある。
【0027】
<改質向上剤>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、改質向上剤を0.1~5質量部の割合で含む。改質向上剤を含むことにより、得られる成形品の耐衝撃性がより向上する傾向にある。
改質向上剤は、中空ガラスの表面の水酸基と反応ないし相互作用して、中空ガラスの表面の水酸基の少なくとも一部をキャップする作用を有する化合物が好ましく用いられる。ここでの水酸基と反応ないし相互作用するとは、中空ガラスの表面の水酸基と改質向上剤が有する官能基が、共有結合、イオン結合、配位結合、または、水素結合の関係にある場合を含む趣旨である。
具体的には、改質向上剤は、
【化3】
で表される基(*は他の部位との結合部位である)、カルボン酸基、エステル基、不飽和ジカルボン酸無水物基、エポキシ基、および、リン酸塩の少なくとも1つを含む化合物である。より具体的には、シラン変性シリコーン、ワックス(好ましくは酸変性ワックス)、および、リン酸水素塩から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、酸変性ワックスを含むことがさらに好ましい。
【0028】
本実施形態で用いる改質向上剤の第一の実施形態は、
【化4】
で表される基(*は他の部位との結合部位である)を有する化合物であり、シラン架橋性樹脂やシリコーンが例示される。
シラン架橋性樹脂としては、シラン架橋ポリオレフィン樹脂が例示される。
シリコーンとしては、直鎖シリコーンが好ましく、ポリシロキサンの側鎖の一部が水素原子であるものが例示される。ポリシロキサンの側鎖の他の部分は、メチル基、エチル基、フェニル基等が例示される。
【0029】
本実施形態で用いる改質向上剤の第二の実施形態は、ワックスであり、酸変性ワックスが好ましい。
ワックスとしては、ポリオレフィンワックスであることが好ましく、ポリエチレンワックスや、エチレンと(メタ)アクリレート(例えば、ブチルアクリレートおよび/またはメチルアクリレート)とを共重合したポリオレフィンワックスが例示される。
ワックスが酸変性されている場合の酸基としては、無水マレイン酸基、マレイン酸基、ケト酸基、グリシジル基、エポキシ基等が例示され、マレイン酸基が好ましい。
本実施形態で用いる酸変性ワックスの酸価は、5mg-KOH/g以上であることが好ましく、8mg-KOH/g以上であることがより好ましく、12mg-KOH/g以上であることがさらに好ましく、16mg-KOH/g以上であることが一層好ましく、20mg-KOH/g以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、中空ガラス表面に存在する水酸基との反応性または相互作用がより向上する傾向にある。また、本実施形態で用いる酸変性ワックスの酸価は、200mg-KOH/g以下であることが好ましく、180mg-KOH/g以下であることがより好ましく、150mg-KOH/g以下であることがさらに好ましく、130mg-KOH/g以下であることが一層好ましく、110mg-KOH/g以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、未反応の酸基による樹脂劣化、黄変等の副反応を抑制する傾向にある。
酸価は、JIS K0070に従って測定される。
本実施形態の樹脂組成物が酸変性ワックスを2種以上含む場合、混合物の酸価とする。
【0030】
本実施形態で用いる改質向上剤の第三の実施形態は、リン酸塩を含む化合物である。
好ましくは、リン酸水素リチウムまたはその水和物、リン酸水素ナトリウムまたはその水和物、リン酸水素カリウムまたはその水和物等が挙げられ、より好ましくはリン酸水素ナトリウムまたはその水和物であり、さらに好ましくはリン酸水素ナトリウムの水和物である。
【0031】
本実施形態の樹脂組成物における改質向上剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、0.1質量部以上であり、0.15質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましく、0.25質量部以上であることが一層好ましく、0.3質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、中空ガラス表面に存在する水酸基との反応性または相互作用効果がより向上する傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物における改質向上剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対し、5質量部以下であり、3.0質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましく、1.5質量部以下であることが一層好ましく、1.0質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、未反応の官能基による樹脂劣化、黄変等の副反応を抑制効果がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、改質向上剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0032】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤等)、離型剤、色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
帯電防止剤としては、特開2016-216534号公報の段落0063~0067の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
難燃剤としては、特開2016-216534号公報の段落0068~0075の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、本実施形態の樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、国際公開第2021/241471号の段落0047~0103に記載の添加剤を配合でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0033】
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
安定剤としては、また、フェノール系、アミン系、リン系、チオエーテル系などが挙げられる。中でも本実施形態においては、リン系熱安定剤および/またはフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0034】
<<リン系熱安定剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、リン系熱安定剤を含むことが好ましい。
リン系熱安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられる。
【0035】
リン系熱安定剤の第一の実施形態は、リン酸エステルである。リン酸エステルとしては、下記式で表される化合物が好ましい。
O=P(OH)m(OR)3-m
(式中、Rはアルキル基またはアリール基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。mは0~2の整数である。)
Rは炭素数1~30のアルキル基または、炭素数6~30のアリール基であることが好ましく、炭素数2~25のアルキル基、フェニル基、ノニルフェニル基、アテアリルフェニル基、2,4-ジtert-ブチルフェニル基、2,4-ジtert-ブチルメチルフェニル基、トリル基がより好ましい。
これらの詳細は、特開2016-028111号公報の段落0042~0048の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0036】
本実施形態で用いるリン系熱安定剤の第二の実施形態は、ホスファイト系化合物であり、以下の式(1)または(2)で表されるホスファイト化合物が好ましい。
【化5】
(式(1)中、R11およびR12はそれぞれ独立に、炭素数1~30のアルキル基または炭素数6~30のアリール基を表す。)
【化6】
(式(2)中、R13~R17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数6~20のアリール基または炭素数1~20のアルキル基を表す。)
【0037】
上記式(1)中、R11、R12で表されるアルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。R11、R12がアリール基である場合、以下の式(1-a)、(1-b)、または(1-c)のいずれかで表されるアリール基が好ましい。式中の*は結合位置を表す。
【0038】
【化7】
(式(1-a)中、RAは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基を表す。式(1-b)中、RBは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基を表す。)
【0039】
本実施形態の樹脂組成物におけるリン系熱安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。リン系熱安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、熱安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、リン系熱安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0040】
<<フェノール系酸化防止剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール系酸化防止剤を含むことが好ましく、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく用いられる。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0041】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物におけるフェノール系酸化防止剤(好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。フェノール系酸化防止剤の含有量を前記範囲とすることにより、フェノール系酸化防止剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール系酸化防止剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0043】
また、本実施形態の樹脂組成物においては、リン系熱安定剤とフェノール系酸化防止剤の質量比率である、リン系熱安定剤/フェノール系酸化防止剤が0.5~2.5であることが好ましく、1.0~2.0であることがより好ましい。
【0044】
<<離型剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ケトンワックス、ライトアマイドなどが挙げられ、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルが好ましく、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステルがより好ましい。
離型剤の詳細は、特開2018-095706号公報の段落0055~0061の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、樹脂組成物中、0.05~3質量%であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましく、0.1~1質量%であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0045】
<<色剤>>
本実施形態の樹脂組成物は、色剤(染料および/または顔料)を用いてもよい。
本実施形態で用いてもよい色剤としては、酸化チタンやカーボンブラック等の無機顔料、有機染料、有機顔料等が例示され、無機顔料が好ましい。
【0046】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、カドミウムイエロー等の硫化物系顔料;群青などの珪酸塩系顔料;亜鉛華、弁柄、酸化クロム、鉄黒、チタンイエロー、亜鉛-鉄系ブラウン、チタンコバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅-クロム系ブラック、銅-鉄系ブラック等の酸化物系顔料;黄鉛、モリブデートオレンジ等のクロム酸系顔料;紺青などのフェロシアン系顔料などが挙げられ、カーボンブラックが好ましい。
有機顔料および有機染料としては、例えば、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系染料または顔料;ニッケルアゾイエロー等のアゾ系染料または顔料;チオインジゴ系、ペリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系などの縮合多環染料または顔料;アンスラキノン系、複素環系、メチル系の染料または顔料などが挙げられる。
色剤は、マスターバッチ化して配合してもよい。この場合、マスターバッチ中の色剤の濃度は、30~80質量%である。マスターバッチ化する熱可塑性樹脂は、ポリスチレン樹脂が例示される。
【0047】
本実施形態で用いる樹脂組成物における色剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。また、色剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、5.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましく、2.0質量部以下であることがさらに好ましい。
前記樹脂組成物は、色剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0048】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、比重が低いことが好ましい。具体的には、比重が1.112g/cm3以下であることが好ましく、1.111g/cm3以下であることがより好ましく、1.100g/cm3未満であることがさらに好ましく、1.099g/cm3以下であることが一層好ましく、1.090g/cm3以下であることがより一層好ましい。また、前記比重の下限値は、特に定めるものではないが、0.900g/cm3以上が実際的である。
本実施形態の樹脂組成物は、ノッチ無しシャルピー衝撃強さが高いことが好ましい。具体的には、ISO179規格に従って測定したノッチ無しシャルピー衝撃強さが、例えば、25kJ/m2以上であり、40kJ/m2以上であることが好ましく、45kJ/m2以上であることがより好ましく、50kJ/m2以上であることがさらに好ましく、55kJ/m2以上であることが一層好ましく、60kJ/m2以上であることがより一層好ましい。前記ノッチ無しシャルピー衝撃強さの上限値は、特に定めるものではないが、150kJ/m2以下が実際的である。
上記比重およびノッチ無しシャルピー衝撃強さは、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0049】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートオリゴマー、圧縮破壊強度100MPa以上の中空ガラス、改質向上剤、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
また、圧縮破壊強度100MPa以上の中空ガラスは、サイドフィードしてもよい。
また、色剤は、マスターバッチとして配合してもよい。色剤をマスターバッチ化する場合、スチレン樹脂が好ましい。色剤のマスターバッチにおいて、色剤の濃度は、10~50質量%が好ましい。
【0050】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物ないしペレットから形成される。上記した樹脂組成物(例えば、ペレット)は、各種の成形法で成形して成形品とされる。すなわち、本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から成形される。成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、ボタン状のもの等が挙げられる。
【0051】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。しかしながら、本実施形態の樹脂組成物がこれらで得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0052】
本実施形態の成形品は、ポリカーボネート樹脂を含む成形品に広く用いることができる。
具体的には、電気電子機器/部品、OA機器/部品、情報端末機器/部品、機械部品、家電製品、車輌部品(自動車内外装)、建築部材、各種容器、レジャー用品・雑貨類、照明機器、無人飛行機器部材などに好ましく用いられる。
【実施例0053】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0054】
1.原料
下記表1または表2に示す原料を用いた。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表2において、Meはメチル基を、PEはポリエチレンを、Phはフェニル基を示している。
【0058】
2.実施例1~15、比較例1~13
<コンパウンド>
表1および表2に記載した(C)中空ガラス以外の各成分を下記表3~6記載した量(各成分は全て質量部で表記している)で、タンブラーミキサーにて20分間混合した後、1ベントを備えた日本製鋼所社製二軸押出機TEX25αに供給し、スクリュー回転数150rpm、吐出量18kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練したところに、サイドフィーダーより(C)中空ガラスをスクリュー回転数150rpm、吐出量2kg/時間でフィードし、ストランド状に押出された溶融樹脂組成物を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化し、樹脂組成物のペレットを得た。
【0059】
<比重>
上記の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度100℃、成形サイクル50秒の条件で、ISO規格多目的試験片(ISO 3167 typeA、4mm厚)を射出成形した。
ISO 1183/Method Aに従って、成形品の比重を測定した。
単位は、g/cm3で示した。
【0060】
<曲げ弾性率>
上記射出成形で得られたISO規格多目的試験片を用いて、ISO178に準拠して、23℃の温度での曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
【0061】
<ノッチ無シャルピー衝撃強さ>
上記射出成形で得られたISO規格多目的試験片を用いて、ISO179規格に従い、シャルピー衝撃強さ(ノッチ無し)の測定を行った。単位は、kJ/m2で示した。
NBは、破壊せずを意味する。
【0062】
<表面粗さ(Ra)>
上記の製造方法で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度110℃または130℃、成形サイクル40秒の条件で、面積が100×100mm、厚みが2mmである平板状試験片を射出成形した。
JIS-B0651-1996に従い、金型温度110℃および130℃における表面粗さを測定した。具体的には、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製、「SURFCOM 3000A-3DF」)を用いてRa(中心線平均粗さ)を測定した。単位は、μmで示した。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、低比重でシャルピー衝撃強さに優れていた。さらに、外観にも優れていた。また、曲げ弾性率も高かった。