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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081522
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/18 20060101AFI20240611BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240611BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240611BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240611BHJP
   B41J 2/19 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/175 133
B41J2/165 303
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/19
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195199
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】片山 寛
(72)【発明者】
【氏名】三十日 陸斗
(72)【発明者】
【氏名】山田 基生
(72)【発明者】
【氏名】小川 幹生
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA15
2C056EB27
2C056EC15
2C056EC17
2C056EC23
2C056EC62
2C056EC64
2C056FA04
2C056JB04
2C056JB15
2C056KB16
2C056KB26
2C056KD02
(57)【要約】
【課題】タンクからヘッドへ表面張力が高い液体が導入されるときに、ヘッド内に気泡が残存し難い手段を提供する。
【解決手段】画像記録装置100は、インクサブタンク47と、ヘッドモジュール49と、液体供給路61と、液体帰還路62と、正圧ポンプ63と、負圧ポンプ65と、コントローラ130と、を備える。コントローラ130は、初期導入を指示する第1コマンドを受け付けたことを条件として初期導入処理を実行する。初期導入処理は、負圧ポンプ65を停止した状態で正圧ポンプ63を駆動するステップS12と、ステップS12の後、正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を駆動するステップS13と、を含む。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留するタンクと、
上記タンクから供給された液体を吐出するノズル、当該ノズルと連通するヘッド流路、当該ヘッド流路と連通する供給マニホールド、および当該ヘッド流路と連通する帰還マニホールドを有するヘッドと、
上記タンクと上記供給マニホールドとを繋ぐ液体供給路と、
上記タンクと上記帰還マニホールドとを繋ぐ液体帰還路と、
上記液体供給路を通じて上記タンクから上記ヘッドへ液体を供給するための正の圧力を加える正圧ポンプと、
上記液体帰還路を通じて上記ヘッドから上記タンクへ液体を排出するための負の圧力を加える負圧ポンプと、
コントローラと、を備えており、
上記コントローラは、第1液体の初期導入を指示する第1コマンドを受け付けたことを条件として第1初期導入処理を実行し、
上記第1初期導入処理は、
上記負圧ポンプを停止した状態で上記正圧ポンプを駆動する第1ステップと、
上記第1ステップの後、上記正圧ポンプおよび上記負圧ポンプを駆動する第2ステップと、を含み、
上記第1初期導入処理において上記タンクに貯留される上記第1液体の表面張力は、30mN/m以上である液体吐出装置。
【請求項2】
上記ヘッドにおいてノズルが開口するノズル面に対して相対移動するワイパをさらに備えており、
上記第1初期導入処理は、上記第1ステップの後であって上記第2ステップの前に、上記ワイパを上記ノズル面に対して相対移動する第3ステップをさらに含む請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
上記コントローラは、起動を指示する第2コマンドを受け付けたことを条件として、上記第2ステップを実行し、
上記第1ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の第1値は、上記第2ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の第2値より大きい請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
上記第2ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の絶対値は、上記第2ステップにおいて上記負圧ポンプにより付与される負圧の絶対値より小さい請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
上記コントローラは、上記第1液体とは異なる第2液体の初期導入を指示する第3コマンドを受け付けたことを条件として第2初期導入処理を実行し、
上記第2初期導入処理は、
上記負圧ポンプを停止した状態で上記正圧ポンプを駆動する第4ステップと、
上記第4ステップの後、上記正圧ポンプおよび上記負圧ポンプを駆動する第5ステップと、を含み、
上記第2初期導入処理において上記タンクに貯留される上記第2液体の表面張力は、上記第1液体よりも小さい請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
画像記録においてヘッドのノズルから吐出されるインクよりも表面張力が大きい検査液を貯留するタンクから、上記ノズルと連通するヘッド流路、当該ヘッド流路と連通する供給マニホールド、および当該ヘッド流路と連通する帰還マニホールドへ液体供給路を通じて上記検査液を供給して、帰還マニホールドから液体帰還路を通じて上記タンクへ検査液を帰還し、上記ヘッドから上記検査液を吐出して上記ヘッドを検査するヘッドの検査方法であって、
負圧ポンプを停止した状態で正圧ポンプを駆動して、上記液体供給路を通じて上記タンクから上記ヘッドへ検査液を供給するための正の圧力を加える第1ステップと、
上記第1ステップの後、上記正圧ポンプおよび上記負圧ポンプを駆動して、上記正の圧力と、上記液体帰還路を通じて上記ヘッドから上記タンクへ液体を排出するための負の圧力と、を加える第2ステップと、を含むヘッドの検査方法。
【請求項7】
上記検査液の表面張力は、30mN/m以上である請求項6に記載のヘッドの検査方法。
【請求項8】
上記第1ステップの後であって上記第2ステップの前に、ワイパを上記ヘッドのノズル面に対して相対移動する第3ステップをさらに含む請求項6に記載のヘッドの検査方法。
【請求項9】
上記第1ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の第1値は、上記第2ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の第2値より大きい請求項6から8のいずれかに記載のヘッドの検査方法。
【請求項10】
上記第2ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の絶対値は、上記第2ステップにおいて上記負圧ポンプにより付与される負圧の絶対値より小さい請求項9に記載のヘッドの検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出するヘッドを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドからインクを吐出する液体吐出装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1の液体吐出装置は、流入流路および流出流路を有する液体吐出ヘッドを備える。流入流路には正圧ポンプにより正圧が付与される。流出流路には負圧ポンプにより負圧が付与される。正圧ポンプおよび負圧ポンプが駆動されることにより、吐出ヘッドとインクタンクとの間でインクが循環する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-44704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体吐出装置は、例えば、工場において組み立てられた後、検査のために吐出ヘッドから検査液を吐出させることがある。検査液の組成はインクの組成とは異なる。検査液の表面張力がインクの表面張力より大きい場合には、検査液に気泡が生じやすい。インクタンクから吐出ヘッドへ検査液を導入するために正圧ポンプおよび負圧ポンプを駆動すると、ノズルから吐出ヘッド内へ進入した空気によって検査液に気泡が生じる。検査液に生じた気泡は、吐出ヘッドの内面に付着しやすく、インクタンクと吐出ヘッドとの間で検査液が循環しても、気泡が吐出ヘッド内から排出されないことがある。吐出ヘッド内に気泡が存在すると、吐出ヘッドのノズルから検査液が適切に吐出されないことがある。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タンクからヘッドへ表面張力が高い液体が導入されるときに、ヘッド内に気泡が残存し難い手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る液体吐出装置は、液体を貯留するタンクと、上記タンクから供給された液体を吐出するノズル、当該ノズルと連通するヘッド流路、当該ヘッド流路と連通する供給マニホールド、および当該ヘッド流路と連通する帰還マニホールドを有するヘッドと、上記タンクと上記供給マニホールドとを繋ぐ液体供給路と、上記タンクと上記帰還マニホールドとを繋ぐ液体帰還路と、上記液体供給路を通じて上記タンクから上記ヘッドへ液体を供給するための正の圧力を加える正圧ポンプと、上記液体帰還路を通じて上記ヘッドから上記タンクへ液体を排出するための負の圧力を加える負圧ポンプと、コントローラと、を備える。上記コントローラは、第1液体の初期導入を指示する第1コマンドを受け付けたことを条件として第1初期導入処理を実行する。上記第1初期導入処理は、上記負圧ポンプを停止した状態で上記正圧ポンプを駆動する第1ステップと、上記第1ステップの後、上記正圧ポンプおよび上記負圧ポンプを駆動する第2ステップと、を含む。上記第1初期導入処理において上記タンクに貯留される上記第1液体の表面張力は、30mN/m以上である液体吐出装置。
【0007】
表面張力が30mN/m以上の第1液体に気泡が発生すると、ヘッド流路や帰還マニホールドの内面に気泡が付着して、ヘッド流路や帰還マニホールドに第1液体が流通しても、内面に付着した気泡がタンクまで流れないことがある。第1ステップにおいて、負圧ポンプを停止して正圧ポンプを駆動するので、液体供給路から供給マニホールド、ヘッド流路、帰還マニホールド、液体帰還路へと順に第1液体が流れ、第1液体の流れに伴って気体が液体帰還路を通じてタンクへ排出される。第1ステップにおいて負圧ポンプが停止されているので、ノズルからヘッド流路へ気体が進入せず、ヘッド流路において気泡が生じ難い。第1ステップにおいて、ヘッド流路、帰還マニホールド、液体帰還路に第1液体が満たされた後、第2ステップにおいて、正圧ポンプおよび負圧ポンプが駆動されるので、タンクとヘッドとの間で第1液体が循環される。
【0008】
(2) 本液体吐出装置は、上記ヘッドにおいてノズルが開口するノズル面に対して相対移動するワイパをさらに備えており、上記第1初期導入処理は、上記第1ステップの後であって上記第2ステップの前に、上記ワイパを上記ノズル面に対して相対移動する第3ステップをさらに含んでもよい。
【0009】
第3ステップにおいて、ワイパがノズル面に摺動することにより、ノズルに液体のメニスカスが形成される。メニスカスの形成により、第2ステップにおいてノズルからヘッド流路へ気体が進入することを抑制できる。
【0010】
(3) 上記コントローラは、起動を指示する第2コマンドを受け付けたことを条件として、上記第2ステップを実行し、上記第1ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の第1値は、上記第2ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の第2値より大きくてもよい。
【0011】
(4) 上記第2ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の絶対値は、上記第2ステップにおいて上記負圧ポンプにより付与される負圧の絶対値より小さくてもよい。
【0012】
ヘッド流路において液体が負圧となるので、ノズルのメニスカスが維持される。
【0013】
(5) 上記コントローラは、上記第1液体とは異なる第2液体の初期導入を指示する第3コマンドを受け付けたことを条件として第2初期導入処理を実行し、上記第2初期導入処理は、上記負圧ポンプを停止した状態で上記正圧ポンプを駆動する第4ステップと、上記第4ステップの後、上記正圧ポンプおよび上記負圧ポンプを駆動する第5ステップと、を含み、上記第2初期導入処理において上記タンクに貯留される上記第2液体の表面張力は、上記第1液体よりも小さくてもよい。
【0014】
第2液体が初期導入されるときにおいても、第4ステップにおいて負圧ポンプが停止されているので、ノズルからヘッド流路へ気体が進入せず、ヘッド流路において気泡が生じ難い。第4ステップにおいて、ヘッド流路、帰還マニホールド、液体帰還路に第2液体が満たされた後、第5ステップにおいて、正圧ポンプおよび負圧ポンプが駆動されるので、タンクとヘッドとの間で第2液体が循環される。
【0015】
(6) 本発明は、画像記録においてヘッドのノズルから吐出されるインクよりも表面張力が大きい検査液を貯留するタンクから、上記ノズルと連通するヘッド流路、当該ヘッド流路と連通する供給マニホールド、および当該ヘッド流路と連通する帰還マニホールドへ液体供給路を通じて上記検査液を供給して、帰還マニホールドから液体帰還路を通じて上記タンクへ検査液を帰還し、上記ヘッドから上記検査液を吐出して上記ヘッドを検査するヘッドの検査方法であって、負圧ポンプを停止した状態で正圧ポンプを駆動して、上記液体供給路を通じて上記タンクから上記ヘッドへ検査液を供給するための正の圧力を加える第1ステップと、上記第1ステップの後、上記正圧ポンプおよび上記負圧ポンプを駆動して、上記正の圧力と、上記液体帰還路を通じて上記ヘッドから上記タンクへ液体を排出するための負の圧力と、を加える第2ステップと、を含むヘッドの検査方法として捉えられてもよい。
【0016】
(7) 上記検査液の表面張力は、30mN/m以上であってもよい。
【0017】
(8) 本ヘッドの検査方法は、上記第1ステップの後であって上記第2ステップの前に、ワイパを上記ヘッドのノズル面に対して相対移動する第3ステップをさらに含んでもよい。
【0018】
(9) 上記第1ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の第1値は、上記第2ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の第2値より大きくてもよい。
【0019】
(10) 上記第2ステップにおいて上記正圧ポンプにより付与される正圧の絶対値は、上記第2ステップにおいて上記負圧ポンプにより付与される負圧の絶対値より小さくてもよい。
【0020】
ヘッド流路において液体が負圧となるので、ノズルのメニスカスが維持される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タンクからヘッドへ表面張力が高い液体が導入されるときに、ヘッド内に気泡が残存し難い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の実施形態に係る画像記録装置100の外観斜視図である。
図2図2は、図1のII-II断面を示す断面図である。
図3図3は、インクサブタンク47とヘッドモジュール49との間の流路を示す模式図である。
図4図4は、コントローラ130を示すブロック図である。
図5図5は、検査液の初期導入のフローチャートである。
図6図6は、インクの初期導入のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。なお、本実施形態は本発明の一実施態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様を変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明においては、画像記録装置100が使用可能に設置された状態(図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、排出口33が設けられている側を手前側(前面)として前後方向8が定義され、画像記録装置100を手前側(前面)から見て左右方向9が定義される。
【0024】
[画像記録装置100の外観構成]
図1に示される画像記録装置100は、インクジェット記録方式でロール体37(図2参照)から延びるシートSに画像を記録する。画像記録装置100は、液体吐出装置の一例である。
【0025】
図1に示されるように、画像記録装置100は、筐体30を備える。筐体30は、上筐体31及び下筐体32を備える。上筐体31及び下筐体32は、全体として概ね直方体形状であって、卓上に載置可能な大きさである。すなわち、画像記録装置100は、卓上に載置されて使用されるのに適している。もちろん、画像記録装置100は、床面やラックに載置されて使用されてもよい。なお、筐体30の内部には、各部材を支持するためのフレームが適宜設けられてもよい。
【0026】
図2に示されるように、上筐体31は、下筐体32によって回動可能に支持されている。上筐体31は、後下端部に設けられ且つ左右方向9に延びる回動軸15周りに、図2に示される閉位置と、開位置とに回動可能である。なお、上筐体31が回動する構成は、回動軸15によるものに限らず、例えば蝶番などによって回動してもよい。
【0027】
図2に示されるように、上筐体31が閉位置のとき、上筐体31の内部空間31Aと下筐体32の内部空間32Aとが、外部に対して遮蔽される。上筐体31が開位置のとき、上筐体31の内部空間31Aと下筐体32の内部空間32Aとが、外部に対して露出される。
【0028】
図1に示されるように、下筐体32の前面32Fには、左右方向9に長いスリット状の排出口33が形成されている。排出口33からは、画像記録済みのシートS(図2参照)が排出される。
【0029】
上筐体31の前面31Fには、操作パネル44が設けられている。ユーザは、操作パネル44に、画像記録装置100を動作させたり各種設定を確定したりするための入力を行う。
【0030】
図1に示されるように、下筐体32の右面32Rには、右カバー35Aが位置する。右カバー35Aの開閉により、シート収容空間32Cに位置するホルダ35等(図2参照)が露出したり遮蔽されたりする。
【0031】
図1に示されるように、下筐体32の前面32Fには、前カバー39が位置する。前カバー39は、下端付近において左右方向9に沿って延びる回動軸(不図示)周りに、上端側が前方へ倒れるように開くことができる。前カバー39の開閉により、下筐体32の内部空間32Aに位置する装着ケース110等(図2参照)が露出されたり遮蔽されたりする。
【0032】
[画像記録装置100の内部構成]
図2に示されるように、内部空間31A,32Aには、ホルダ35、テンショナ45、搬送ローラ対36、搬送ローラ対40、ヘッドユニット38、プラテン51、インクタンク34、装着ケース110、およびインクサブタンク47、メンテナンスユニット70などが配置されている。なお、図示されていないが、内部空間32Aには、定着ユニット、画像センサ、カッタ等が位置してもよい。ヘッドユニット38は、ヘッドの一例である。インクサブタンク47は、タンクの一例である。
【0033】
内部空間32Aには、隔壁41が設けられている。隔壁41は、内部空間32Aの後下部を仕切って、シート収容空間32Cを区画する。シート収容空間32Cは、隔壁41、下筐体32により包囲され、ヘッドユニット38などから隔離された空間である。
【0034】
テンショナ45は、内部空間32Aの後部において隔壁41よりも上方に位置する。テンショナ45は、下筐体32の外側を向いている外周面45Aを有している。外周面45Aは、左右方向9においてシートの最大幅以上の大きさであり、通紙中心(シートSの左右方向9における中心)に対して互いに対称な形状を有している。外周面45Aの上端は、上下方向7において搬送ローラ対36のニップ位置と概ね同じ位置にある。
【0035】
外周面45Aには、ロール体37から引き出されたシートSが掛けられ当接する。シートSは、外周面45Aに沿って前方に湾曲して、搬送向き8Aに延びて搬送ローラ対36に案内される。搬送向き8Aは、前後方向8に沿う前向きである。テンショナ45は、周知の手法により、シートSにテンションを与える。
【0036】
テンショナ45の前方には、搬送ローラ対36が位置する。搬送ローラ対36は、搬送ローラ36Bとピンチローラ36Aとを有する。搬送ローラ36B、及びピンチローラ36Aのニップ位置は、上下方向7において外周面45Aの上端と概ね同じ位置である。
【0037】
搬送ローラ対36の前方には、搬送ローラ対40が位置する。搬送ローラ対40は、搬送ローラ40Bとピンチローラ40Aとを有する。搬送ローラ40B、及びピンチローラ40Aのニップ位置は、上下方向7において外周面45Aの上端と概ね同じ位置である。
【0038】
搬送ローラ36B,40Bは、モータ53(図4参照)から駆動力が伝達されて回転する。搬送ローラ対36は、テンショナ45から搬送向き8Aに延びるシートSをニップしつつ回転することにより、搬送向き8AにシートSを送り出す。搬送ローラ対40は、搬送ローラ対36から送り出されたシートSをニップしつつ回転することにより搬送向き8AにシートSを送り出す。搬送ローラ対36,40の回転により、シートSは、シート収容空間32Cから隙間42を通ってテンショナ45に向けて引き出される。
【0039】
図2に示されるように、内部空間32Aには、外周面45Aの上端から排出口33に至る搬送路43が形成されている。搬送路43は、搬送向き8Aに沿ってほぼ直線的に延びており、シートSが通過可能な空間である。搬送路43は、搬送向き8A及び左右方向9に拡がり且つ搬送向き8Aに長い搬送面43Aに沿っている。なお、図2では、搬送面43Aは、搬送路43を示す二点鎖線で示されている。搬送路43は、上下方向7に離れて位置するガイド部材(不図示)や、ヘッドユニット38、プラテン51などによって区画されている。
【0040】
ヘッドユニット38は、搬送路43の上方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流に位置する。ヘッドユニット38は、複数のノズル38Aを有するヘッドモジュール49を有する。
【0041】
図3に示されるように、ヘッドモジュール49は、供給マニホールド55、帰還マニホールド56、ヘッド流路57、ノズル38Aを有する。供給マニホールド55は、液体供給路61と連続する空間である。帰還マニホールド56は、液体帰還路62と連続する空間である。ヘッド流路57は、供給マニホールド55と帰還マニホールド56と連続する流路である。ヘッド流路57にノズル38Aが位置する。ノズル38Aは、ヘッドモジュール49の下面であるノズル面50に開口する。
【0042】
インクサブタンク47から液体供給路61を通じて供給マニホールド55へ供給されたインクは、ヘッド流路57を通じて帰還マニホールド56へ流れる。帰還マニホールド56から液体帰還路62を通じてインクサブタンク47へインクが流れる。したがって、インクサブタンク47とノズル38Aとの間には、液体供給路61、供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、および液体帰還路62による循環流路が形成されている。同図には示されていないが、ノズル38Aに対応して圧電素子が配置されており、圧電素子が駆動することにより、ノズル38Aからインク滴が搬送ベルト101へ向けて下方へ吐出される。これにより、シートSに画像が記録される。インクは、第2液体の一例である。
【0043】
プラテン51は、搬送路43の下方において搬送ローラ対36よりも搬送向き8Aの下流に位置する。プラテン51は、ヘッドユニット38の下方に位置しており、ヘッドユニット38と対向している。プラテン51は、搬送ベルト101と支持部104を有する。搬送ベルト101は、搬送ローラ対36によって搬送向き8Aに搬送されてヘッドユニット38の直下に位置するシートSを支持する。搬送ベルト101は、支持しているシートSを搬送向き8Aに搬送する。
【0044】
装着ケース110は、下筐体32の前端および下端付近に位置しており、前方を向いて開口する箱形状である。装着ケース110には、後向きへインクタンク34が挿入される。装着ケース110の後向きの終面111には、前方へ向かって延びるインクニードル112が位置する。インクニードル112の前端は開口しており、後端はインクチューブ113に連結されている。インクチューブ113は、インクニードル112の内部空間とインクサブタンク47の内部空間47Aとをインクが流通可能に連結している。装着ケース110にインクタンク34が装着されると、インクニードル112がインクタンク34の流出口(図示せず)に挿入される。これにより、インクタンク34に貯留されたインクが、インクニードル112およびインクチューブ113を通じてインクサブタンク47に供給される。インクチューブ113には、インクチューブ113の流路を開閉可能なインク補給バルブ114が配置されている。インク補給バルブ114の開閉は、コントローラ130によって制御される。
【0045】
インクタンク34は、インクを貯留している。インクの詳細は後述される。インクタンク34は、インクが消費されると装着ケース110から取り外され、インクを貯留している新しいインクタンク34と交換される。
【0046】
インクサブタンク47は、インクタンク34の上方に位置している。インクサブタンク47は、インクタンク34から供給されたインクを貯留している。インクサブタンク47には、液体供給路61、液体帰還路62、及び大気連通路64が接続されている。液体供給路61および液体帰還路62は、インクサブタンク47とヘッドユニット38とをインクが流通可能に連結している。大気連通路64の一端は、インクサブタンク47の内部空間47Aの上部に開口しており、他端は、上筐体31の内部空間31Aに開口している。
【0047】
液体供給路61には正圧ポンプ63が配置されている。正圧ポンプ63は、液体供給路61においてヘッドユニット38へ向かう向きにインクに圧力を付与する。正圧ポンプ63としては、例えば、ダイヤフラムポンプを挙げることができる。正圧ポンプ63の駆動は、コントローラ130によって制御される。
【0048】
液体供給路61には圧力センサ48が配置されている。圧力センサ48は、液体供給路61内の空気の圧力を検知して、検知信号をコントローラ130に出力する。
【0049】
大気連通路64には負圧ポンプ65が配置されている。負圧ポンプ65は、インクサブタンク47の内部空間47Aの空気を吸引することにより、インクサブタンク47の内部空間47Aを減圧する。負圧ポンプ65としては、例えば、ダイヤフラムポンプを挙げることができる。負圧ポンプ65によって吸引された空気は大気連通路64を通して大気に放出される。負圧ポンプ65の駆動は、コントローラ130によって制御される。
【0050】
液体供給路61にはフィルタ66が配置されている。フィルタ66は、正圧ポンプ63とヘッドユニット38との間に位置している。なお、図2においては、液体供給路61の流路形状やフィルタ66の配置は簡略化されて示されている。フィルタ66は、流出ポートおよび流入ポートを有するハウジングの内部空間に、例えば、所定の内径の複数の孔を有するメッシュタイプのフィルタ部材が収容されたものである。流入ポートからハウジングの内部空間に流入したインクがフィルタ部材を通過するときに、インクに含まれる固体であって、フィルタ部材の孔の内径よりも大きなものがフィルタ部材に捕捉される。これにより、インクに含まれる固体がヘッドユニット38に流れることを抑制している。
【0051】
メンテナンスユニット70は、ヘッドユニット38のメンテナンスを行うためのものである。図2に示されるように、メンテナンスユニット70は、移動可能に構成されており、ヘッドユニット38のメンテナンスが行われるときにヘッドユニット38の直下に移動される。メンテナンスユニット70は、モータ54(図6参照)から駆動が伝達されることにより、ヘッドユニット38の直下へ移動したり、各処理の動作をしたりする。メンテナンスユニット70は、キャップ71およびワイパ72を有する。各図には示されていないが、キャップ71の内部空間は、洗浄液タンクおよび廃液タンクと接続されている。ワイパ72は、洗浄液を含浸する吸水体であって平板形状である。なお、ワイパ72は、ゴム製のブレード形状などであってもよい。
【0052】
ヘッドユニット38のメンテナンスは、パージ処理、キャップ洗浄処理、及びワイピング処理などである。パージ処理は、メンテナンスユニット70のキャップ71によって、ノズル38Aが開口するヘッドモジュール49のノズル面50を被覆した上で吸引ポンプによってノズル38Aからインクを吸引する処理である。キャップ洗浄処理は、キャップ71によってヘッドモジュール49のノズル面50を被覆した状態でキャップ71の内部空間に送り込んだ洗浄液によってヘッドモジュール49のノズル面50を洗浄する処理である。ワイピング処理は、メンテナンスユニット70のワイパ72が、ヘッドモジュール49に対して相対的に移動することによって、ヘッドモジュール49のノズル面50を払拭する処理である。
【0053】
[コントローラ130]
図6に示されるように、コントローラ130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、およびASIC135を備えており、これらは内部バス137によって接続されている。ROM132には、CPU131の各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
【0054】
ASIC135には、モータ53,54、正圧ポンプ63、負圧ポンプ65、インク補給バルブ114が接続されている。なお、これらは、必要に応じてこれらを駆動するための駆動回路を介してASIC135と接続されている。ASIC135は、モータ53,54を回転させるための駆動信号を生成し、この駆動信号によりモータ53,54を制御する。コントローラ130は、正圧ポンプ63および負圧ポンプ65の駆動を制御する。コントローラ130は、インク補給バルブ114の開閉を制御する。
【0055】
ASIC35には、操作パネル44、およびヘッドユニット38が接続されている。操作パネル44は、ユーザによる操作に応じた操作信号をコントローラ130に出力する。操作パネル44は、例えば、押ボタンを有していてもよいし、ディスプレイに重畳されたタッチセンサを有していてもよい。コントローラ130は、ヘッドユニット38の圧電素子への給電を制御し、複数のノズル38Aから選択的にインク滴を吐出させる。
【0056】
[インク]
インクは、樹脂微粒子、色材、有機溶剤、界面活性剤、及び水を有する。インクは、樹脂微粒子、色材、及び有機溶剤が水に溶けた水性インクである。インクは、第2液体の一例である。
【0057】
インクは、コート紙、プラスチック、フィルム、OHPシート等の疎水性の記録媒体への濡れ性があるが、これに限定されるものではなく、例えば、普通紙、光沢紙、マット紙等の疎水性の記録媒体以外の画像記録に好適なものであってもよい。「コート紙」とは、例えば、上級印刷紙、中級印刷紙等のパルプを主要な構成要素とした普通紙に、平滑性、白色度、光沢度等の向上を目的として、コート剤を塗布したものを言い、具体的には、上級コート紙、中級コート紙等があげられる。
【0058】
インクの表面張力は、28mN/m未満であることが好ましく、さらに好ましくは、27mN/m未満であり、特に好ましくは、26mN/m未満である。インクの表面張力は、例えばWilhelmy法やリング法により測定できる。
【0059】
[検査液]
画像記録装置100の製造後であって出荷前に、ヘッドモジュール49の動作を検査するために検査液が用いられる。ヘッドモジュール49の検査は、例えば、ヘッドモジュール49の各ノズル38Aが正確に液体が吐出されるかを判定することなどである。
【0060】
検査液は、赤色の染料と、グリセリンと、浸透剤と、水とを含有する。検査液は、完成品検査工程での印字検査を目的としてヘッドモジュール49内に導入される液体である。具体的には、ヘッドモジュール49の全ノズル38Aが吐出可能であることの確認などを目的として検査液が使用される。検査液は、第1液体の一例である。
【0061】
検査液の表面張力は、28mN/m以上であることが好ましく、さらに好ましくは、29mN/m以上であり、特に好ましくは、30mN/m以上である。インクの表面張力は、前述と同様に測定できる。
【0062】
[検査液の初期導入(第1初期導入処理)]
画像記録装置100の製造後であって出荷前にヘッドモジュール49の動作を検査するために、ヘッドモジュール49に検査液が初期導入される。ヘッドモジュール49の供給マニホールド55、帰還マニホールド56、ヘッド流路57、ノズル38Aは、液体が存在しない状態であったり、乾燥を防止する目的で一部に保存液が導入された状態であったりする。なお、保存液が導入された状態であっても、ノズル面50においてノズル38Aには液体のメニスカスは形成されていない。また、メンテナンスユニット70は、ヘッドモジュール49の下方に位置している。
【0063】
検査のために、装着ケース110に検査液を貯留するインクタンク34が装着される。その後、操作パネル44において、検査液の初期導入が選択されて、実行が入力されることにより、コントローラ130に第1コマンドが送信される。
【0064】
コントローラ130は、第1コマンドを受け付けたことに応じて(S10)、インク補給バルブ114を開いて負圧ポンプ65を駆動する(S11)。これにより、インクサブタンク47の気体層が減圧され、インクサブタンク47内の圧力とインクタンク34内の圧力との間の圧力差により、インクタンク34内の検査液がインクチューブ113を通ってインクサブタンク47に供給される。負圧ポンプ65が、一定時間駆動されることにより、所定量の検査液がインクタンク34からインクサブタンク47へ供給される。検査液の補給が完了すると、インク補給バルブ114は閉じられる。
【0065】
次いで、コントローラ130は、正圧ポンプ63が第1圧力値を発生するように駆動する(S12)。例えば、圧力センサ48により検出される圧力値に応じて、ダイヤフラムポンプのダイヤフラムの単位時間当たりの往復動数や往復動の距離が制御されることにより、正圧ポンプ63により液体供給路61に加わる正圧が調整される。このとき、コントローラ130は、負圧ポンプ65は駆動しない。ステップS12は、第1ステップの一例である。
【0066】
正圧ポンプ63が駆動されることにより、インクタンク34からインクサブタンク47へ検査液が導入される。さらに、インクサブタンク47から液体供給路61を通じて、供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、液体帰還路62へ検査液が導入される。検査液の導入に伴って、液体供給路61を通じて、供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、液体帰還路62の気体がインクサブタンク47へ排出される。
【0067】
負圧ポンプ65が駆動していないので、ノズル38Aに液体が存在しない状態であったり、メニスカスが形成されていない状態であっても、ノズル38Aを通じてヘッド流路57や帰還マニホールド56へ気体が進入することがない。したがって、ヘッド流路57に検査液が満たされると、ヘッド流路57からノズル38Aに検査液が流れる。ノズル38Aに検査液のメニスカスが形成されなければ、ノズル38Aから検査液が流出するが、流出した検査液はキャップ71に貯留される。
【0068】
また、ノズル38Aを通じてヘッド流路57や帰還マニホールド56へ気体が進入しないので、ヘッド流路57や帰還マニホールド56に気泡が生じない。なお、正圧ポンプ63を駆動する時間は、すべてのノズル38Aに検査液が流入し、液体供給路61、供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、および液体帰還路62の気体がインクサブタンク47へ排出されるまでの時間として予め設定されている。
【0069】
コントローラ130は、予め定められた時間だけ正圧ポンプ63を駆動した後、ワイパ72をヘッドモジュール49のノズル面50に対して相対移動する(S13)。これにより、ワイパ72の先端部によりノズル面50が払拭される。ワイパ72がノズル面50を払拭することにより、ノズル38Aに検査液のメニスカスが形成される。また、ノズル面50に付着した検査液が除去される。ステップS13は、第3ステップの一例である。なお、ワイピング(S13)の後に、パージ処理やキャップ洗浄処理が実行されてもよい。
【0070】
コントローラ130は、ワイピング(S13)の後に、正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を駆動する(S14)。コントローラ130は、正圧ポンプ63を第1圧力値より小さい第2圧力値を発生するように駆動する。コントローラ130は、圧力センサ48により検出される圧力値に応じて、負圧ポンプ65の駆動を制御する。通常、ノズル38Aにおける液他のメスカスを維持するために、負圧ポンプ65により付与される負圧の絶対値は、正圧ポンプ63により付与される正圧の絶対値よりも、例えば1kPa程度大きい。つまり、正圧ポンプ63により付与される正圧の絶対値は、負圧ポンプ65により付与される負圧の絶対値より小さい。これにより、第2圧力値で、インクサブタンク47とヘッドモジュール49との間で検査液が循環する。ステップS14が、第2ステップの一例である。
【0071】
前述のようにして検査液の初期導入が終了する。初期導入が終了した後、インクサブタンク47とヘッドモジュール49との間で検査液が循環されつつ、ノズル38Aからテストパターンデータに基づく画像に応じたインク滴が吐出されることによって、ヘッドモジュール49の検査が実行される。
【0072】
[インクの初期導入(第2初期導入処理)]
ユーザが画像記録装置100を初めて使用するときに、ヘッドモジュール49にインクが初期導入される。ヘッドモジュール49の供給マニホールド55、帰還マニホールド56、ヘッド流路57、ノズル38Aは、液体が存在しない状態であったり、乾燥を防止する目的で一部に保存液が導入された状態であったりする。なお、保存液が導入された状態であっても、ノズル面50においてノズル38Aには液体のメニスカスは形成されていない。また、メンテナンスユニット70は、ヘッドモジュール49の下方に位置している。
【0073】
装着ケース110にインクを貯留するインクタンク34が装着される。その後、操作パネル44において、インクの初期導入が選択されて、実行が入力されることにより、コントローラ130に第2コマンドが送信される。
【0074】
コントローラ130は、第2コマンドを受け付けたことに応じて(S20)、インク補給バルブ114を開いて負圧ポンプ65を駆動する(S21)。これにより、インクサブタンク47の気体層が減圧され、インクサブタンク47内の圧力とインクタンク34内の圧力との間の圧力差により、インクタンク34内のインクがインクチューブ113を通ってインクサブタンク47に供給される。負圧ポンプ65が、一定時間駆動されることにより、所定量のインクがインクタンク34からインクサブタンク47へ供給される。インクの補給が完了すると、インク補給バルブ114は閉じられる。
【0075】
次いで、コントローラ130は、正圧ポンプ63が第1圧力値を発生するように駆動する(S22)。例えば、圧力センサ48により検出される圧力値に応じて、ダイヤフラムポンプのダイヤフラムの単位時間当たりの往復動数や往復動の距離が制御されることにより、正圧ポンプ63により液体供給路61に加わる正圧が調整される。このとき、コントローラ130は、負圧ポンプ65は駆動しない。ステップS22は、第4ステップの一例である。
【0076】
正圧ポンプ63が駆動されることにより、インクタンク34からインクサブタンク47へインクが導入される。さらに、インクサブタンク47から液体供給路61を通じて、供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、液体帰還路62へインクが導入される。インクの導入に伴って、液体供給路61を通じて、供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、液体帰還路62の気体がインクサブタンク47へ排出される。
【0077】
負圧ポンプ65が駆動していないので、ノズル38Aに液体が存在しない状態であったり、メニスカスが形成されていない状態であっても、ノズル38Aを通じてヘッド流路57や帰還マニホールド56へ気体が進入することがない。したがって、ヘッド流路57にインクが満たされると、ヘッド流路57からノズル38Aにインクが流れる。ノズル38Aにインクのメニスカスが形成されなければ、ノズル38Aからインクが流出するが、流出したインクはキャップ71に貯留される。
【0078】
また、ノズル38Aを通じてヘッド流路57や帰還マニホールド56へ気体が進入しないので、ヘッド流路57や帰還マニホールド56に気泡が生じない。なお、正圧ポンプ63を駆動する時間は、すべてのノズル38Aにインクが流入し、液体供給路61、供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、および液体帰還路62の気体がインクサブタンク47へ排出されるまでの時間として予め設定されている。
【0079】
コントローラ130は、予め定められた時間だけ正圧ポンプ63を駆動した後、ワイパ72をヘッドモジュール49のノズル面50に対して相対移動する(S23)。これにより、ワイパ72の先端部によりノズル面50が払拭される。ワイパ72がノズル面50を払拭することにより、ノズル38Aにインクのメニスカスが形成される。また、ノズル面50に付着したインクが除去される。なお、ワイピング(S23)の後に、パージ処理やキャップ洗浄処理が実行されてもよい。
【0080】
次いで、コントローラ130は、正圧ポンプ63および負圧ポンプ65を駆動する(S24)。コントローラ130は、正圧ポンプ63を第1圧力値より小さい第2圧力値を発生するように駆動する。コントローラ130は、圧力センサ48により検出される圧力値に応じて、負圧ポンプ65の駆動を制御する。通常、ノズル38Aにおける液他のメスカスを維持するために、負圧ポンプ65により付与される負圧の絶対値は、正圧ポンプ63により付与される正圧の絶対値よりも、例えば1kPa程度大きい。つまり、正圧ポンプ63により付与される正圧の絶対値は、負圧ポンプ65により付与される負圧の絶対値より小さい。これにより、第2圧力値で、インクサブタンク47とヘッドモジュール49との間でインクが循環する。ステップS24は、第5ステップの一例である。
【0081】
正圧ポンプ63および負圧ポンプ65が駆動されることにより、インクタンク34からインクサブタンク47へインクが導入される。さらに、インクサブタンク47から液体供給路61を通じて、供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、液体帰還路62へインクが導入される。インクの導入に伴って、液体供給路61を通じて、供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、液体帰還路62の気体がインクサブタンク47へ排出される。
【0082】
ヘッド流路57にインクが満たされると、ヘッド流路57からノズル38Aにインクが流れる。ノズル38Aにインクのメニスカスが形成されなければ、ノズル38Aからインクが流出するが、流出したインクはキャップ71に貯留される。前述のようにしてインクの初期導入が終了する。初期導入が終了した後、画像記録装置100は、通常の画像記録が実行可能な状態となる。
【0083】
[実施形態の作用効果]
表面張力が30mN/m以上の検査液に気泡が発生すると、ヘッド流路57や帰還マニホールド56の内面に気泡が付着して、ヘッド流路57や帰還マニホールド56に検査液が流通しても、内面に付着した気泡がインクサブタンク47まで流れないことがある。検査液の初期導入のステップS12において、負圧ポンプ65を停止して正圧ポンプ63を駆動するので、液体供給路61から供給マニホールド55、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、液体帰還路62へと順に検査液が流れ、検査液の流れに伴って気体が液体帰還路62を通じてインクサブタンク47へ排出される。ステップS12において負圧ポンプ65が停止されているので、ノズル38Aからヘッド流路57へ気体が進入せず、ヘッド流路57において気泡が生じ難い。ステップS12において、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、液体帰還路62に検査液が満たされた後、ステップS14において、正圧ポンプ63および負圧ポンプ65が駆動されるので、インクサブタンク47とヘッドモジュール49との間で検査液が循環される。
【0084】
また、ステップS13において、ワイパ72がノズル面50に摺動することにより、ノズル38Aに検査液のメニスカスが形成される。ノズル38Aに検査液のメニスカスが形成されることにより、ステップ14において、ノズル38Aからヘッド流路57へ気体が進入することが抑制される。
【0085】
また、インクの初期導入されるときにおいても、ステップ22において負圧ポンプ65が停止されているので、ノズル38Aからヘッド流路57へ気体が進入せず、ヘッド流路57において気泡が生じ難い。ステップS22において、ヘッド流路57、帰還マニホールド56、液体帰還路62にインクが満たされた後、ステップS24において、正圧ポンプ63および負圧ポンプ65が駆動されるので、インクサブタンク47とヘッドモジュール49との間でインクが循環される。
【0086】
また、ステップS14およびステップS24において、正圧ポンプ63により付与される正圧の絶対値は、負圧ポンプ65により付与される負圧の絶対値より小さいので、ヘッド流路57において液体が負圧となるので、ノズル38Aのメニスカスが維持される。
【0087】
[変形例]
なお、前述された実施形態では、ステップS12における正圧ポンプ63の第1圧力値よりも、ステップS13における正圧ポンプ63の第2圧力値が小さいが、これに限らない。ステップS12,S13における正圧ポンプ63の圧力値は同じであってもよいし、第1圧力値が第2圧力値よりも小さくてもよい。
【0088】
また、ステップS14およびステップS24において、正圧ポンプ63により付与される正圧の絶対値は、負圧ポンプ65により付与される負圧の絶対値と同程度であってもよい。
【符号の説明】
【0089】
38A・・・ノズル
47・・・インクサブタンク(タンク)
49・・・ヘッドモジュール(ヘッド)
55・・・供給マニホールド
56・・・帰還マニホールド
57・・・ヘッド流路
61・・・液体供給路
62・・・液体帰還路
63・・・正圧ポンプ
65・・・負圧ポンプ
72・・・ワイパ
100・・・画像記録装置(液体吐出装置)
130・・・コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6