(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081524
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】モータ用配線回路基板、リニアモータおよびモータ用配線回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/26 20060101AFI20240611BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20240611BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
H02K3/26 Z
H02K41/02 A
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195206
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】井上 真弥
(72)【発明者】
【氏名】山崎 博司
(72)【発明者】
【氏名】今谷 梨乃
【テーマコード(参考)】
5H603
5H641
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB15
5H603CA02
5H603CA05
5H603CC14
5H603CD04
5H603CD25
5H641BB06
5H641GG03
5H641GG07
5H641GG10
5H641GG11
5H641GG12
5H641HH02
5H641HH07
5H641HH09
5H641HH11
5H641HH14
(57)【要約】
【課題】 小型化および軽量化を可能にしたモータ用配線回路基板およびそのモータ用配線回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 モータ用配線回路基板100は、磁性層10と、絶縁層30と、コイル40と、を備えている。絶縁層30は、磁性層10に重なる。コイル40は、磁性層10から絶縁層30に向かう方向を軸として巻回された形状を有する。また、コイル40は、絶縁層30内に配置される。磁性層10は、コイル40の最も内側で囲まれた内側領域に向かって突き出る第1の凸部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性層と、
前記磁性層に重なる絶縁層と、
前記磁性層から前記絶縁層に向かう方向を軸として巻回された形状を有し、前記絶縁層内に配置されたコイルと、を備え、
前記磁性層は、前記コイルの最も内側で囲まれた内側領域に向かって突き出る第1の凸部を有する、モータ用配線回路基板。
【請求項2】
前記絶縁層内に、一方向に所定の間隔で並んで複数の前記コイルが配置され、
前記磁性層は、前記複数のコイルにそれぞれ対応する複数の前記第1の凸部を含む、請求項1記載のモータ用配線回路基板。
【請求項3】
前記磁性層は、前記複数の第1の凸部のうち一の第1の凸部と前記一の第1の凸部と隣り合う他の第1の凸部との間に位置する第2の凸部を有する、請求項2記載のモータ用配線回路基板。
【請求項4】
前記磁性層は、電磁鋼板、ケイ素鋼板、鉄またはパーマロイのいずれかである、請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の配線回路基板と、
磁石とを備えた、リニアモータ。
【請求項6】
互いに反対を向く第1の主面および第2の主面を有する磁性層を用意する工程と、
前記磁性層の前記第1の主面の所定領域をハーフエッチングすることにより、凸部を形成する工程と、
前記第1の主面上に第1の絶縁層を形成する工程と、
平面視において前記凸部の周りで巻回された導体層である第1のコイルを前記第1の絶縁層上に形成する工程と、
前記第1の絶縁層上および前記第1のコイル上に第2の絶縁層を形成する工程とを含む、モータ用配線回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記第2の絶縁層の前記第1のコイルの端部に対応する位置に貫通穴を形成する工程と、
前記貫通穴を形成する工程の後、平面視において前記凸部の周りで巻回される導体層である第2のコイルを前記第2の絶縁層上に形成する工程をさらに含み、
前記第2のコイルを形成する工程は、前記第2の絶縁層上に導体層を形成すると同時に、前記貫通穴の内部で露出する前記第1のコイルの端部、前記貫通穴の内周面に導体層を形成することを含む、請求項6記載のモータ用配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ用配線回路基板、リニアモータおよびモータ用配線回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造に用いられる搬送装置の動力源にリニアモータが用いられる。例えば、特許文献1には、コアに絶縁被膜された銅線からなるワイヤを巻き回した可動子と固定子とからなるリニアモータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ESG(Environment Social Governance)の観点から、リニアモータの小型化及び軽量化が要求される。しかしながら、特許文献1のリニアモータにおいては、可動子がコアにワイヤを巻き付けた構成であるため、小型化および軽量化に限界がある。本発明の目的は、小型化および軽量化を可能にしたモータ用配線回路基板およびそのモータ用配線回路基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一局面に従うモータ用配線回路基板は、磁性層と、磁性層に重なる絶縁層と、磁性層から絶縁層に向かう方向を軸として巻回された形状を有し、絶縁層内に配置されたコイルと、を備え、磁性層は、コイルの最も内側で囲まれた内側領域に向かって突き出る第1の凸部を有する。
【0006】
本発明の他の局面に従うモータ用配線回路基板の製造方法は、互いに反対を向く第1の主面および第2の主面を有する磁性層を用意する工程と、磁性層の第1の主面の所定領域をハーフエッチングすることにより、凸部を形成する工程と、第1の主面上に第1の絶縁層を形成する工程と、平面視において凸部の周りで巻回された導体層である第1のコイルを第1の絶縁層上に形成する工程と、第1の絶縁層上および第1のコイル上に第2の絶縁層を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、小型化および軽量化を可能にしたモータ用配線回路基板およびそのモータ用配線回路基板の製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施の形態に係る配線回路基板の構成を示す模式図である。
【
図6】配線回路基板の製造方法における工程の一連の流れの一例を示す図である。
【
図7】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図8】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図9】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図10】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図11】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図12】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図13】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図14】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図15】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図16】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図17】配線回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図18】他の実施の形態に係る配線回路基板の構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係る配線回路基板およびその配線回路基板の製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
(1)一実施の形態に係る配線回路基板の構成
図1は、一実施の形態に係る配線回路基板の構成を示す模式図である。
図1の上側には、配線回路基板100の平面図(上面視)が示され、下側には、配線回路基板100のA-A線断面図が示される。
図1に示すように、配線回路基板100は、複数の磁極形成部50を含む。複数の磁極形成部50は、一方向に所定の間隔で並んで配置される。複数の磁極形成部50の構成は同じである。
【0011】
図1下側に示すように、磁極形成部50は、磁性層10および絶縁層30を含む。磁性層10は、磁性材料により構成される。磁性材料は、比透磁率が高いほどよい。磁性材料としては、軟磁性材料であることが好ましい。例えば、磁性材料は、電磁鋼板、ケイ素鋼板、鉄またはパーマロイ等を含む。
【0012】
磁性層10は、一方向に延びる平板形状を有する。磁性層10は、互いに反対を向く上面11および下面12を有する。磁性層10は、上面11から下面12と反対側に向かって突出する複数の凸部11aを有する。複数の凸部11aは、一方向に一定の間隔I1を隔てて配置される。本実施の形態において、
図1上側に示すように磁極形成部50が備える凸部11aは、上面視において各辺が互いに等しい矩形である。凸部11aの各辺の長さは、L1である。長さL1は、例えば、100μm以上1000μm以下である。なお、凸部11aの上面視における形状は、矩形に限らず、円形、楕円形または多角形の他の形状を有してもよい。
【0013】
図1下側に示すように、磁性層10の上面11には、絶縁層30が積層される。絶縁層30は、ポリイミド等の樹脂により形成される。本実施の形態において、絶縁層30の磁性層10と反対側の上面は、平坦でなく、凹凸形状である。絶縁層30の上面は、磁性層10の複数の凸部11aおよび後述するコイル40の形状に沿った形状である。また、絶縁層30の上面は、磁性層10と反対側を向く上方に開放している。絶縁層30は、アクリル樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂等の他の樹脂により形成されてもよい。絶縁層30内には、導体層であるコイル40が絶縁層30の一部を隔てて配置される。コイル40は、磁性層10に形成された凸部11aに対応して配置される。
【0014】
図1下側に示すように、コイル40は、第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43を含む。第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43がこの順に下方から上方に向かって積層されている。本実施の形態においては、第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43が3階層に積層される場合を示すが、積層する数を限定するものではなく、1階層以上であればよい。
【0015】
第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43それぞれは、シード層40aおよびめっき層40bを含む。シード層40aの上にめっき層40bが積層される。シード層40aは、クロムにより形成される第1シード層および銅により形成される第2シード層を含む(図示せず)。第2シード層は、第1シード層の上に形成される。なお、シード層40aおよびめっき層40bは、銅、金、銀、白金、鉛、錫、ニッケル、コバルト、インジウム、ロジウム、クロム、タングステンおよびルテニウム等のうち1種または複数種を含む金属または合金により形成されてもよい。
【0016】
図1上側に示すように、上面視において、第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43それぞれは、コイル内側領域SPの内側に凸部11aが収まる位置に配置される。コイル内側領域SPは、第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43の最も内側で囲まれた領域である。
【0017】
図1下側に示すように、第1層コイル41と第2層コイル42とは上下方向において絶縁層30の一部を介して配置され、第2層コイル42と第3層コイル43とは上下方向において絶縁層30の一部を介して配置される。第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43は、上下方向において間隔i1を隔てて積層される。間隔i1は、例えば、200μm以上2000μm以下である。
【0018】
上下方向において、コイル内側領域SPは、凸部11aとの相対位置が予め定められた位置に配置される。本実施の形態においては、凸部11aの一部がコイル内側領域SPの内部に存在する相対位置となる例が示される。具体的には、上下方向において、第1層コイル41と第2層コイル42とが凸部11aと重なり、第3層コイル43が凸部11aと重ならない。
【0019】
また、上下方向において、コイル内側領域SPのすべてが凸部11aと重なる位置に凸部11aとコイル内側領域SPとの相対位置が定められてもよい。この場合、上下方向において、第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43のすべてが凸部11aと重なる。
【0020】
さらに、上下方向において、コイル内側領域SPと凸部11aとが重ならない位置に、凸部11aとコイル内側領域SPとの相対位置が定められてもよい。この場合、凸部11aは、第1層コイル41よりも下方に位置する。なお、コイル内側領域SPと凸部11aとの間の上下方向の距離は、コイル40により発生する磁界の強さにより定められる。
【0021】
図2および
図3は、コイル40の構成を示す模式的断面図である。
図2の左側には、上面視における第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43それぞれが形成される層の平面図が示される。
図2の右側には、上面視において第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43上の絶縁層30それぞれの平面図が示される。
図3には、コイル40を代表して第1層コイル41の拡大図が示される。
【0022】
第1層コイル41は、始端部41Aおよび終端部41Bを含む。第1層コイル41は、軸AXを中心とする渦巻き形状であり、始端部41Aが最も外方に位置し、終端部41Bが最も内方に位置する。第1層コイル41において、始端部41Aから終端部41Bに向かう方向は、反時計周りである。第1層コイル41は、軸AXを中心として周回数が3のコイルである。なお、周回数はこれに限定されることなく、周回数は1以上であればよい。第1層コイル41は、凸部11aから間隔I2をあけて離間する。間隔I2は、例えば50μm以上200μm以下である。
【0023】
図3において、第1層コイル41は、凸部11aの外周を構成する各辺111~114にそれぞれ平行な複数の部分を有する。複数の部分は、同一面に形成される。具体的には、第1層コイル41は、凸部11aの辺111に平行で凸部11aの辺111の外側に位置する部分配線41a,41b,41cと、凸部11aの辺112に平行で凸部11aの辺112の外側に位置する部分配線41d,41e,41fと、凸部11aの辺113に平行で凸部11aの辺113の外側に位置する部分配線41g,41h,41iと、凸部11aの辺114に平行で凸部11aの辺114の外側に位置する部分配線41j,41kと、を含む。部分配線41a,41b,41cそれぞれの間隔は、I3に設定される。なお、部分配線41a,41b,41cそれぞれの間隔が異なるように設定されてもよい。部分配線41d,41e,41fそれぞれの間隔は、I4に設定される。なお、部分配線41d,41e,41fそれぞれの間隔が異なるように設定されてもよい。部分配線41g,41h,41iそれぞれの間隔は、I5に設定される。なお、部分配線41g,41h,41iそれぞれの間隔が異なるように設定されてもよい。部分配線41j,41kの間隔は、I6に設定される。
【0024】
間隔I3~I6は、互いに異なる長さに設定される例が示されているが、間隔I3~I6が等しい距離に設定されてもよい。間隔I3~I6は、例えば10μm以上100μm以下の範囲で設定されことが好ましい。第1層コイル41の幅は、一定の幅W1に設定されている。第1層コイル41の幅W1は、例えば10μm以上200μm以下の範囲で設定されることが好ましい。
【0025】
図2に戻って、第2層コイル42は、始端部42Aおよび終端部42Bを含む。第2層コイル42は、軸AXを中心とする渦巻き形状であり、始端部42Aが最も内方に位置し、終端部42Bが最も外方に位置する。第2層コイル42において、始端部42Aから終端部42Bに向かう方向は、反時計周りである。第2層コイル42は、凸部11aの外周を構成する各辺にそれぞれ平行な複数の部分を有する。なお、第2層コイル42の具体的な構成については、
図3に示す第1層コイル41を表裏反転した形状であるため、ここでは説明を繰り返さない。第1層コイル41の終端部41Bと第2層コイル42の始端部42Aとは、第1層コイル41と第2層コイル42との間に位置する絶縁層30内に形成されたスルーホールTH1を介して、電気的に接続される。
【0026】
第3層コイル43は、始端部43Aおよび終端部43Bを含む。第3層コイル43は、軸AXを中心とする渦巻き形状であり、始端部43Aが最も外方に位置し、終端部43Bが最も内方に位置する。第3層コイル43において、始端部43Aから終端部43Bに向かう方向は、反時計周りである。第3層コイル43は、凸部11aの外周を構成する各辺にそれぞれ平行な複数の部分を有する。なお、第3層コイル43の具体的な構成については、
図3に示す第1層コイル41の構成と同様であるため、ここでは説明を繰り返さない。第2層コイル42の終端部42Bと第3層コイル43の始端部43Aとは、第2層コイル42と第3層コイル43との間に位置する絶縁層30内に形成されたスルーホールTH2を介して、電気的に接続される。
【0027】
配線回路基板100の上面視における第1層コイル41の始端部41Aに対応する位置には、第1層コイル41と第2層コイル42との間に位置する絶縁層30、第2層コイル42と第3層コイル43との間に位置する絶縁層30および第3層コイル43上に位置する絶縁層30を貫通するスルーホールTH3が形成される。また、配線回路基板100の上面視における第3層コイル43の終端部43Bに対応する位置に、第3層コイル43上に位置する絶縁層30を貫通するスルーホールTH4が形成される。
【0028】
図1に戻って、第1層コイル41の始端部41Aには、スルーホールTH3を介して導電性を有する導線C1が接続される。また、導線C1は、配線回路基板100の外部端子ITに接続される。第3層コイル43の終端部43Bには、スルーホールTH4を介して導電性を有する導線C2が接続される。導線C2は、配線回路基板100の外部端子OTに接続される。外部端子IT,OTは、図示しない配線回路基板100の外部の電流供給装置に接続される。
【0029】
外部端子ITと外部端子OTとの間に電圧が印加されると、第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43に電流が流れる。ここでは、外部端子ITの電位が外部端子OTの電位より高い電圧が印加される場合を例に説明する。この場合、
図2の下段に矢印で示すように、第1層コイル41を、始端部41Aから終端部41Bに向かって電流が流れる。換言すれば、上面視で凸部11aの周りを反時計回りで電流が流れる。
【0030】
同様に、
図2の中段に矢印で示すように、第2層コイル42を、始端部42Aから終端部42Bに向かって電流が流れる。換言すれば、上面視で凸部11aの周りを反時計回りで電流が流れる。
【0031】
さらに、
図2の上段に矢印で示すように、第3層コイル43を、始端部43Aから終端部43Bに向かって電流が流れる。換言すれば、上面視で凸部11aの周りを反時計回りで電流が流れる。
【0032】
このように、第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43には、軸AXを中心に反時計回りに電流が流れる。それにより、コイル40により取り囲まれるコイル内側領域SPに、下方から上方に向かう磁束Bが発生する。また、平面視においてコイル内側領域SP内に凸部11aの一部が位置するので、凸部11aに磁束が集中する。この場合、磁性層10の凸部11aが形成されている部分に磁極が形成される。具体的には、凸部11aの上面がN極となり、磁性層10の下面12であって凸部11aに対向する部分がS極となる。
【0033】
外部端子ITの電位が外部端子OTの電位より低い電圧が印加される場合、
図2示す各矢印とは逆の向きに電流が流れる。それにより、第1層コイル41、第2層コイル42および第3層コイル43において、上面視で時計回りに電流が流れる。換言すれば、上面視で凸部11aの周りを時計回りで電流が流れる。コイル40により取り囲まれるコイル内側領域SPに上方から下方に向かう磁束Bが発生する。この場合、磁性層10の凸部11aが形成されている部分に磁極が形成される。具体的には、凸部11aの上面がS極となり、磁性層10の下面12であって凸部11aに対向する部分がN極となる。
【0034】
図1の中央の磁極形成部50においては、外部端子ITの電位が外部端子OTの電位より高い例が示される。この場合、一点鎖線で示すように、中央の磁極形成部50の凸部11aに下方から上方に向かう磁束Bが発生する。一方、中央の磁極形成部50と隣り合う各磁極形成部50においては、外部端子ITの電位が外部端子OTの電位より低い例が示される。この場合、一点鎖線で示すように、中央の磁極形成部50と隣り合う各磁極形成部50の凸部11aに上方から下方に向かう磁束Bが発生する。
【0035】
このように、配線回路基板100においては、コイル40に流れる電流の方向に応じて、凸部11aに発生させる磁束の向きが変動する。換言すれば、コイル40に流れる電流の方向を制御することにより、凸部11aに発生させる磁極の極性を変換することができる。なお、配線回路基板100においては、隣り合う凸部11aが互いに異なる方向の磁界を発生するように、各コイル40に電圧が印加される例が記載されるが、隣り合う凸部11aが同じ方向の磁界を発生するように、各コイル40に電圧が印加されてもよい。
【0036】
(2)配線回路基板100の適用例
図4は、配線回路基板100の適用例を示す図である。
図4においては、配線回路基板100の詳細な構成が省略されている。例えば、配線回路基板100は、リニアモータにおける可動子として用いられる。リニアモータ500aは、可動子200aおよび固定子300aを含む。
【0037】
可動子200aは、三つの磁極形成部50を含む配線回路基板100および電流供給装置を含む。固定子300aには、例えば永久磁石MGが用いられる。固定子300aには、電磁石が用いられてもよい。
図4の永久磁石MGにおいては、一方向に向かって極性が交互に異なるように配置されている。例えば、磁極形成部50が、磁極がN極の永久磁石MGの上方に位置する状態で、外部端子ITの電位が外部端子OTの電位より高い電圧が外部端子IT,OT間に印加されると、磁極形成部50の磁性層10の凸部11aの上面の磁極がN極となる。この場合、磁極形成部50と固定子300aの永久磁石MGのN極とが反発し合うので、可動子200aが固定子300aに沿って、太い矢印F1またはF2の方向に移動する。これとは逆に、磁極形成部50が、磁極がS極の永久磁石MGの上方に位置する状態で、外部端子ITの電位が外部端子OTの電位より低い電圧が外部端子IT,OT間に印加されると磁極形成部50の磁性層10の上面の磁極がS極となる。この場合、磁極形成部50と固定子300aの永久磁石MGのS極とが反発し合うので、可動子200aが固定子300aに沿って、太い矢印F1またはF2の方向に移動する。
【0038】
このように、コイル40に流れる電流の方向を繰り返し変化させることにより、固定子300aに対して非接触で可動子200aを移動させることが可能になる。また、コイル40に供給される電流の大きさを変化させることにより、磁界の磁力が変化するので、固定子300aと可動子200aとの間で発生する力の大きさを変化させることが可能になる。
【0039】
図4に示される例では、配線回路基板100が三つの磁極形成部50を含む例が記載されるが、配線回路基板100が含む磁極形成部50の数は、これに限定されるものではない。配線回路基板100には、複数の数の磁極形成部50を含んでもよい。磁極形成部50の数が多いほど、大きな駆動力を持つリニアモータ500aを実現することが可能になる。また、配線回路基板100を可動子とするので、可動子を小型および軽量化できる。
【0040】
このように、配線回路基板100は、モータの可動子200aとして用いられる場合、絶縁層30(
図1)の上面が固定子300aに対向する。このため、絶縁層30の上面が平坦である必要がなく、配線回路基板100を容易に製造することが可能になる。また、配線回路基板100は、絶縁層30の上面が開放している。このため、配線回路基板100と固定子300aとの間の距離を短くできるので、絶縁層30の上面に他の構造物が存在する場合と比較して固定子300aに対して配線回路基板100において発生した磁束をより効率的に作用させることが可能になる。
【0041】
図5は、配線回路基板100の他の適用例を示す図である。
図5においては、
図1で示される配線回路基板100の詳細な構成の図示が省略されている。例えば、配線回路基板100は、リニアモータにおける固定子として用いられる。リニアモータ500bは、可動子200bおよび固定子300bを含む。固定子300bは、四つの磁極形成部50を含む配線回路基板100および電流供給装置を含む。
【0042】
配線回路基板100は、厚さが比較的薄く、一方向における形状が固定されておらず、ある程度の柔軟性を有する。このため、固定子300bの形状に合わせて配線回路基板100の形状を変化させることができる。このため、固定子300bの設計の自由度が広がる。
【0043】
図5に示されるリニアモータ500bにおいては、固定子300bは、円環形状に変形した配線回路基板100を含む。配線回路基板100は、その磁性層10が内方を向く円環形状である。可動子200bは、固定子300bの回転対象軸と平行な回転軸と、回転軸を中心とする円周の周方向に配列された複数の磁石により構成される。複数の磁石それぞれは、周方向に隣り合う他の磁石と磁極が異なる。
【0044】
この場合、例えば、
図1の外部端子ITの電位が外部端子OTの電位より高い電圧が外部端子IT,OT間に印加されると、円環状の配線回路基板100の内方に位置する磁極形成部50の表層(上面側)の磁極がN極となる。この場合、磁極形成部50と固定子300bの永久磁石MGのN極とが反発し合うので、可動子200bが太い矢印F1またはF2の方向に回転する。同様に、
図1の外部端子ITの電位が外部端子OTの電位より低い電圧が外部端子IT,OT間に印加されると、円環状の配線回路基板100の内方に位置する磁極形成部50の表層(上面側)の磁極がS極となる。この場合、磁極形成部50と固定子300bの永久磁石MGのS極とが反発し合うので、可動子200bが太い矢印F1またはF2の方向に回転する。このように、
図1のコイル40に流れる電流の方向を繰り返し変化させることにより、固定子300b(配線回路基板100を含む)に対して非接触で可動子200bを回転させることが可能になる。また、
図1のコイル40を流れる電流の大きさを変化させることにより、磁界の磁力が変化するので、固定子300bに対する可動子200bの回転力を変化させることが可能になる。
【0045】
図5の例では、配線回路基板100が四つの磁極形成部50を含む例が記載されるが、配線回路基板100が含む磁極形成部50の数は、これに限定されるものではない。配線回路基板100には、複数の磁極形成部50を含んでもよい。この場合、磁極形成部50の数が多いほど大きな駆動力を持つリニアモータ500bを実現することが可能になる。
【0046】
このように、配線回路基板100は、モータの固定子300bとして用いられる場合、絶縁層30(
図1)の上面が可動子200bに対向する。このため、絶縁層30の上面が平坦である必要がなく、配線回路基板100を容易に製造することが可能になる。また、配線回路基板100は、絶縁層30の上面が開放している。このため、配線回路基板100と可動子200bとの間の距離を短くできるので、絶縁層30の上面に他の構造物が存在する場合と比較して可動子200bに対して配線回路基板100において発生した磁束をより効率的に作用させることが可能になる。
【0047】
(3)配線回路基板100の製造方法
配線回路基板100は、複数の磁極形成部50を有する。複数の磁極形成部50は同一の製造方法で形成される。ここでは、配線回路基板100の製造方法について、1つの磁極形成部50を例にその製造方法を説明する。
図6は、配線回路基板の製造方法における工程の一連の流れの一例を示す図である。
図7~
図17は、配線回路基板100の製造方法の一例を示す断面図である。
図7~
図17は、
図1の配線回路基板100のA-A線断面図のうち、単一の凸部11aのみが図示される。配線回路基板100は、ロール・ツー・ロール方式により製造される。
【0048】
まず、
図7に示すように、強磁性材料からなるシート状の磁性層10を準備する(
図6の工程P1)。ここでは、長尺状の磁性層10が巻回されたロール(以下、繰り出しロールと呼ぶ。)を用意し、用意した繰り出しロールから磁性層10を繰り出す。繰り出しロールから繰り出された磁性層10は、他のロール(以下、巻き取りロールと呼ぶ。)に巻き取られる。
図7では、繰り出しロールから繰り出された磁性層10の一部の断面が示される。ロール・ツー・ロール方式によれば、長尺状の磁性層10が長手方向に移動しつつ磁性層10の各領域に順次以下の処理が行われる。
【0049】
次に、
図8に示すように、磁性層10の上面11に対して、例えば、塩化第二鉄液等のエッチング液を用いて所定領域にハーフエッチングを行う。それにより、上面11に凸部11aが形成される(工程P2)。
【0050】
続いて、
図9に示すように、磁性層10の上面11全体を覆うように感光性樹脂前駆体PIを塗布する。この状態で、
図10に示すように、感光性樹脂前駆体PIに対して、紫外線を用いて感光性樹脂前駆体を部分的に露光することにより第1絶縁層30Aを形成する(工程P3)。感光性樹脂前駆体PIの材料は、ポリイミドが用いられる。また、感光性樹脂前駆体PIは、エポキシ等の他の樹脂であってもよい。第1絶縁層30A上には、スパッタ法によりシード層40aが形成される(工程P4)。なお、シード層40aには、クロムで形成された膜および銅で形成された膜がこの順に積層される。なお、シード層40aをスパッタ法により形成する例が示されるが、シード層40aは、無電解めっきにより形成されてもよい。
【0051】
この状態で、シード層40aの表面にフォトレジストが塗布された後、露光処理および現像処理が行われることにより、
図11に示すように、シード層40a上に所定のパターンを有するレジスト膜RFが形成される(工程P5)。なお、ここでの所定のパターンは、第1層コイル41の外枠である。この状態で、シード層40a上のレジスト膜RFが形成されない領域に電解めっきによりめっき層40bが形成される(工程P6)。電解めっきとしては、例えば銅が用いられる。その後、
図12に示すように、レジスト膜RFが除去される(工程P7)。その後、
図13に示すように、めっき層40b上にエッチングレジスト(図示せず)が塗布された後に、エッチングが行われる。これにより、めっき層40bが形成されていない領域のシード層40aが除去される(工程P8)。エッチングとしては、ウェットエッチングまたはドライエッチング等が用いられる。それにより、磁性層10の上面11上に第1絶縁層30Aが形成され、第1絶縁層30A上に第1層コイル41が形成される。ここで、
図14に示すように、工程P3と同様の工程が行われることにより第1絶縁層30Aおよび第1層コイル41上に第2絶縁層31が形成される(工程P9)。
【0052】
この状態で、
図6の工程P4~工程P9の動作(
図10~
図12に図示される動作)が繰り返されることにより、
図15に示すように第1層コイル41の上方に第2絶縁層31を介して第2層コイル42および第3絶縁層32が形成される。
【0053】
さらに、
図6の工程P4~工程P9の動作(
図10~
図12に図示される動作)が繰り返されることにより、
図17に示すように、第3層コイル43および第3層コイル43上に第4絶縁層33が形成される。これらの一連の工程を経て配線回路基板100が完成する。
【0054】
ここで、
図2のスルーホールTH1の形成方法について説明する。
図16に順に示すように、まず、第1層コイル41上に第2絶縁層31が形成される。次に、第1層コイル41上の第2絶縁層31の第1層コイル41の終端部41Bに対応する位置に貫通穴Hを形成する。それにより、貫通穴H内でめっき層40bの第1層コイル41の終端部41Bに対応する部分が露出する。貫通穴Hは、感光性樹脂前駆体PIを塗布して、階調露光により貫通穴Hの部分だけ露光しないことにより形成される。それにより、
図6の工程P9と同時に貫通穴Hを形成することが可能になる。
【0055】
第2絶縁層31に貫通穴Hを形成する方法は、これに限定するものではない。貫通穴Hは、レーザ露光等により形成されてもよい。続いて、第2絶縁層31の上面、貫通穴Hの内面および貫通穴H内で露出するめっき層40bの上面に対してシード層40aが形成される。なお、この工程は
図6の工程P4と同時に行われる。次に、所定のパターンを有するレジスト膜RFが形成され、シード層40a上に対して電解めっきにより、めっき層40bが形成される。これにより、貫通穴Hの内周面にシード層40aおよびめっき層40bが形成され、スルーホールTH1が形成される。なお、この工程は
図6の工程P5およびP6と同時に行われる。これにより、スルーホールTH1と第2層コイル42とが同時に形成される。また、スルーホールTH1が形成されることにより、第1層コイル41および第2層コイル42が電気的に接続される。
【0056】
なお、スルーホールTH2、TH3、TH4の形成方法については、
図16のスルーホールTH1の形成方法と同様である。したがって、ここでは説明を繰り返さない。
【0057】
(4)実施の形態の効果
上記実施の形態の配線回路基板100によれば、コイル40のコイル内側領域SPに向かって凸部11aが突き出る。それにより、コイル40に電流が流れると凸部11aに磁束が集中するので、効率的に磁力を発生させることが可能になる。また、凸部11aがコイル内側領域SPの内部に存在する場合は、凸部11aにさらに効率的に磁束を集中させることができるので、磁束密度を大きくすることができる。また、モータの駆動源の一部を配線回路基板で構成することができるので、モータを小型化および軽量化することが可能になる。
【0058】
また、配線回路基板100は、複数のコイル40およびそれぞれに対応する複数の凸部11aを有する。それにより、複数の凸部11aそれぞれに磁束を集中させることが可能になる。また、複数のコイル40が一方向に所定間隔で並んで配置されるので、一方向に並ぶ複数の箇所で力を発生させることができる。したがって、大きな駆動力が必要なモータに配線回路基板100を用いることができる。さらに、磁性層10として比透磁率の比較的高い材料が用いられるので、凸部11aに集中する磁束の密度を大きくすることが可能になる。
【0059】
また、上記実施の形態のリニアモータ500a,500bによれば、リニアモータ500a,500bの可動子または固定子に配線回路基板100を用いることにより、リニアモータ500a,500bを小型化及び軽量化することが可能になる。また、少ない消費電力で可動子を駆動することが可能になる。
【0060】
上記実施の形態の配線回路基板100の製造方法によれば、磁性層10をハーフエッチングすることにより凸部11aが生成され、磁性層10の第1の主面上に平面視で凸部11aの周りを巻き回された第1層コイル41が第1絶縁層30Aを介して形成される。このため、小型および軽量な電磁石を容易に形成することができる。また、第1絶縁層30Aの厚みを凸部11aの高さより小さくすれば、第1層コイル41の最も内側のコイル内側領域SPの内部に凸部11aを位置させることができる。その結果、小型および軽量なモータに用いられるモータ用配線回路基板の製造方法を提供することができる。
【0061】
また、配線回路基板100の積層工程において、第2層コイル42の形成と同時に、第2層コイル42と第1層コイル41とを電気的に接続させることが可能になる。それにより、配線回路基板100の製造効率が向上する。また、第1層コイル41と第2層コイル42とが積層されるとともに、これらが電気的に接続されるので、凸部11aにより大きな磁力を発生可能な電磁石を製造することが可能になる。
【0062】
(5)他の実施の形態
上記実施の形態において、凸部11aは、コイル40に対応して設けられるが、本発明はこれに限定されない。
図18は、他の実施の形態に係る配線回路基板の構成を説明するための模式図である。配線回路基板100aの隣り合う2つの凸部11aの間には、補助凸部11bが形成される。上面視において、補助凸部11bは、隣り合う凸部11aと一方向に一定の間隔I10隔てて配置される。間隔I10は、例えば100μm以上900μm以下である。
【0063】
この場合、隣り合う各磁極形成部50の凸部11aに対して同じ極性が発生するように、コイル40に電流が流れた場合、各凸部11aに同じ極性の磁極(
図18の例では、N極)が発生するとともに、補助凸部11bに凸部11aとは逆の極性の磁極(
図17の例では、S極)が発生する。このため、補助凸部11bを設けない場合と比較して、凸部11aと補助凸部11bとで磁極が異なるので、一方向で異なる磁極が並ぶ距離を短くすることができる。また、補助凸部11bが形成されない場合と比較して、平面視における磁性層10の厚い部分の面積が多くなるので、配線回路基板100の強度が向上する。
【0064】
(6)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明する。上記実施の形態では、配線回路基板100がモータ用配線回路基板の例であり、凸部11aが第1の凸部および凸部の例であり、コイル内側領域SPが内側領域の例であり、補助凸部11bが第2の凸部の例であり、上面11が第1の主面の例であり、下面12が第2の主面の例である。また、第1絶縁層30Aが第1の絶縁層の例であり、第1層コイル41が第1のコイルの例であり、第2絶縁層31が第2の絶縁層の例であり、第2層コイル42が第2のコイルの例であり、シード層40aおよびめっき層40bが導体層の例である。
【0065】
(7)実施の形態の総括
(第1項)本発明の一態様に係るモータ用配線回路基板は、
磁性層と、
前記磁性層に重なる絶縁層と、
前記磁性層から前記絶縁層に向かう方向を軸として巻回された形状を有し、前記絶縁層内に配置されたコイルと、を備え、
前記磁性層は、前記コイルの最も内側で囲まれた内側領域に向かって突き出る第1の凸部を有する。
【0066】
第1項に記載のモータ用配線回路基板によれば、コイルの内側領域に向かって第1の凸部が突き出る。それにより、コイルに電流が流れると第1の凸部に磁束が集中するので、効率的に磁力を発生させることが可能になる。また、凸部が内側領域の内部に存在する場合は、凸部にさらに効率的に磁束を集中させることができるので、磁束密度を大きくすることができる。また、モータの駆動源の一部を配線回路基板で形成することができるので、モータを小型化および軽量化することが可能になる。その結果、モータを小型化及び軽量化することが可能なモータ用配線回路基板を提供することができる。
【0067】
(第2項) 第1項に記載のモータ用配線回路基板においては、
前記絶縁層内に一方向に所定の間隔で並んで複数の前記コイルが配置され、
前記磁性層は、前記複数のコイルにそれぞれ対応する複数の前記第1の凸部を含んでもよい。
【0068】
第2項に記載のモータ用配線回路基板によれば、複数のコイルそれぞれに対応する第1の凸部を有する。それにより、複数の第1の凸部それぞれに磁束を集中させることが可能になる。また、複数のコイルが一方向に所定間隔で並んで配置されるので、一方向に対する力を発生させることができる。したがって、大きな駆動力が必要なモータにモータ用配線回路基板を用いることができる。
【0069】
(第3項)第2項に記載のモータ用配線回路基板において、
前記磁性層は、前記複数の第1の凸部のうち一の第1の凸部と前記一の第1の凸部と隣り合う他の第1の凸部との間に位置する第2の凸部を有してもよい。
【0070】
第3項に記載のモータ用配線回路基板によれば、一の第1の凸部と他の第1の凸部との間に第2の凸部が形成される。第2の凸部が形成されない場合に比較して磁性層の厚い部分が多くなるので、強度が向上する。また、一の第1の凸部に生じる磁極と他の第1の凸部に生じる磁極とが同じ場合、第2の凸部に異なる磁極が生じる。この場合、一の第1の凸部に生じる磁極と他の第1の凸部に生じる磁極とが異なる場合に比較して、小さい電力で大きい駆動力を実現することが可能になる。
【0071】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に記載の配線回路基板において、
前記磁性層は、電磁鋼板、ケイ素鋼板、鉄またはパーマロイのいずれかであってもよい。
【0072】
第4項に記載のモータ用配線回路基板によれば、磁性層として比透磁率の比較的高い材料が用いられるので、第1の凸部に集中する磁束の密度を大きくすることが可能になる。
【0073】
(第5項)本発明の他の態様に係るリニアモータは、
第1項~第4項のいずれか一項に記載の配線回路基板と、
磁石とを備える。
【0074】
第5項に記載のリニアモータによれば、リニアモータの可動子にモータ用配線回路基板を用いれば、可動子を小型化及び軽量化することが可能になる。また、少ない消費電力で可動子を駆動することが可能になる。
【0075】
(第6項) 本発明の他の態様に係るモータ用配線回路基板の製造方法は、
互いに反対を向く第1の主面および第2の主面を有する磁性層を用意する工程と、
前記磁性層の前記第1の主面の所定領域をハーフエッチングすることにより、凸部を形成する工程と、
前記第1の主面上に第1の絶縁層を形成する工程と、
平面視において前記凸部の周りで巻回された導体層である第1のコイルを前記第1の絶縁層上に形成する工程と、
前記第1の絶縁層上および前記第1のコイル上に第2の絶縁層を形成する工程とを含む。
【0076】
第6項に記載のモータ用配線回路基板の製造方法によれば、磁性層をハーフエッチングすることにより凸部が生成され、磁性層の第1の主面上に平面視で凸部の周りを巻き回された第1のコイルが第1の絶縁層を介して形成される。このため、小型および軽量な電磁石を容易に形成することができる。また、第1の絶縁層の厚みを凸部の高さより小さくすれば、第1のコイルの最も内側の内側領域の内部に凸部を位置させることができる。その結果、小型および軽量なモータに用いられるモータ用配線回路基板の製造方法を提供することができる。
【0077】
(第7項) 第6項に記載のモータ用配線回路基板の製造方法は、
前記第2の絶縁層の前記第1のコイルの端部に対応する位置に貫通穴を形成する工程と、
前記貫通穴を形成する工程の後、平面視において前記凸部の周りで巻回される導体層である第2のコイルを前記第2の絶縁層上に形成する工程をさらに含み、
前記第2のコイルを形成する工程は、前記第2の絶縁層上に導体層を形成すると同時に、前記貫通穴の内部で露出する前記第1のコイルの端部、前記貫通穴の内周面に導体層を形成することを含んでもよい。
【0078】
第7項に記載のモータ用配線回路基板の製造方法によれば、配線回路基板の製造の積層工程において、第2のコイルの形成と同時に、第2コイルと第1のコイルとを電気的に接続させることが可能になる。それにより、モータ用配線回路基板の製造効率が向上する。また、第1のコイルと第2のコイルとが積層されるとともに、これらが電気的に接続されるので、凸部により大きな磁力を発生可能な電磁石を製造することが可能になる。
【符号の説明】
【0079】
10…磁性層,11…上面,11a…凸部,11b…補助凸部,12…下面,30…絶縁層,30A…第1絶縁層,31…第2絶縁層,32…第3絶縁層,33…第4絶縁層,40…コイル,40a…シード層,40b…めっき層,41…第1層コイル,42…第2層コイル,43…第3層コイル,41A,42A,43A…始端部,41B,42B,43B…終端部,41a~41l…部分配線,50…磁極形成部,100,100a…配線回路基板,111~114…辺,200a,200b…可動子,300a,300b…固定子,500a,500b…リニアモータ,C1,C2…導線,IT…外部端子,MG…永久磁石,OT…外部端子,PI…感光性樹脂前駆体,RF…レジスト膜,SP…コイル内側領域,TH1~TH4…スルーホール