(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081530
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】DCDCコンバータの制御装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
H02M3/155 P
H02M3/155 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195216
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】冨田 健児
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】上田 祐輔
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS17
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD04
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD41
5H730FF09
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】スイッチのスイッチング制御に用いられるデューティ比の算出精度を高めることができるDCDCコンバータの制御装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置50は、リアクトル30に流れる電流を検出する電流センサ42の電流検出値に基づいて、リアクトル30に流れる電流の1スイッチング周期における時間平均値である平均電流値を算出し、平均電流値の指令値に基づいて、電流不連続モードのデューティ比を算出し、算出したデューティ比に基づいて、スイッチ31のスイッチング制御を行う。制御装置50は、過去の複数のスイッチング周期において算出したデューティ比及び平均電流値に基づいて、平均電流値とデューティ比との関係情報を算出し、算出した関係情報及び指令値に基づいて、次回のスイッチング周期におけるデューティ比を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ(31)及びリアクトル(30)を備えるDCDCコンバータ(10,100)に適用され、
前記リアクトルへの磁気エネルギの蓄積及び前記リアクトルからの磁気エネルギの放出を前記スイッチのスイッチング制御によって繰り返すことにより、入力電圧を変圧して出力するDCDCコンバータの制御装置(50)において、
前記リアクトルに流れる電流を検出する電流検出部(42)の電流検出値に基づいて、前記リアクトルに流れる電流の1スイッチング周期における時間平均値である平均電流値を算出する電流算出部(60)と、
前記平均電流値の指令値に基づいて、電流不連続モードのデューティ比を算出するデューティ比算出部と、
算出した前記デューティ比に基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部(52,63)と、
を備え、
前記デューティ比算出部は、
過去の複数のスイッチング周期において算出した前記デューティ比及び前記平均電流値に基づいて、前記平均電流値と前記デューティ比との関係情報(α,β)を算出し、
算出した前記関係情報及び前記指令値に基づいて、次回のスイッチング周期における前記デューティ比を算出する、DCDCコンバータの制御装置。
【請求項2】
前記デューティ比算出部は、過去のスイッチング周期である第1周期において算出した前記デューティ比及び前記平均電流値と、過去のスイッチング周期であって前記第1周期よりも前の第2周期において算出した前記デューティ比及び前記平均電流値とに基づいて、前記関係情報を算出し、
前記関係情報は、前記デューティ比を独立変数とするとともに前記平均電流値を従属変数とする数式における前記独立変数の係数情報(α)、及び前記数式における切片情報(β)である、請求項1に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項3】
前記デューティ比算出部は、
前記DCDCコンバータの入力電圧及び出力電圧を検出する電圧検出部の入力電圧検出値及び出力電圧検出値を取得し、
前記電流検出値に基づいて、前記リアクトルの推定インダクタンス値を算出し、
現在のスイッチング周期における前記入力電圧検出値、前記出力電圧検出値及び前記推定インダクタンス値と、前記第1周期における前記入力電圧検出値、前記出力電圧検出値及び前記推定インダクタンス値とに基づいて、次回のスイッチング周期における前記デューティ比を補正する、請求項2に記載のDCDCコンバータの制御装置。
【請求項4】
スイッチ(31)、リアクトル(30)及びコンピュータ(51)を備えるDCDCコンバータ(10,100)に適用され、
前記リアクトルへの磁気エネルギの蓄積及び前記リアクトルからの磁気エネルギの放出を前記スイッチのスイッチング制御によって繰り返すことにより、前記DCDCコンバータの入力電圧を変圧して出力させるためのプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記リアクトルに流れる電流を検出する電流検出部(42)の電流検出値に基づいて、前記リアクトルに流れる電流の1スイッチング周期における時間平均値である平均電流値を算出する処理と、
前記平均電流値の指令値に基づいて、電流不連続モードのデューティ比を算出するデューティ比算出処理と、
算出した前記デューティ比に基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行う処理と、
を実行させ、
前記デューティ比算出処理は、
過去の複数のスイッチング周期において算出した前記デューティ比及び前記平均電流値に基づいて、前記平均電流値と前記デューティ比との関係情報(α,β)を算出し、
算出した前記関係情報及び前記指令値に基づいて、次回のスイッチング周期における前記デューティ比を算出する処理である、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCDCコンバータの制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチ及びリアクトルを備えるDCDCコンバータが知られている。このコンバータの制御装置としては、特許文献1に記載されているように、リアクトルに流れる電流値を検出する電流検出部の電流検出値と、リアクトルの想定インダクタンス値とに基づいて、次回のスイッチング周期における電流不連続モードのデューティ比を算出するものが知られている。
【0003】
デューティ比の算出に用いるリアクトルの想定インダクタンス値と、リアクトルの実際のインダクタンス値との間に誤差が発生し得ることに鑑み、制御装置は、デューティ比の補正値を算出する。これにより、上記誤差がデューティ比の算出精度に及ぼす影響の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電流検出部の電流検出値とリアクトルに流れる実際の電流値との間に誤差が生じ得る。この電流検出誤差に起因して、スイッチのスイッチング制御に用いられるデューティ比が適正な値からずれ得る。
【0006】
本発明は、スイッチのスイッチング制御に用いられるデューティ比の算出精度を高めることができるDCDCコンバータの制御装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スイッチ及びリアクトルを備えるDCDCコンバータに適用され、
前記リアクトルへの磁気エネルギの蓄積及び前記リアクトルからの磁気エネルギの放出を前記スイッチのスイッチング制御によって繰り返すことにより、入力電圧を変圧して出力するDCDCコンバータの制御装置において、
前記リアクトルに流れる電流を検出する電流検出部の電流検出値に基づいて、前記リアクトルに流れる電流の1スイッチング周期における時間平均値である平均電流値を算出する電流算出部と、
前記平均電流値の指令値に基づいて、電流不連続モードのデューティ比を算出するデューティ比算出部と、
算出した前記デューティ比に基づいて、前記スイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、
を備え、
前記デューティ比算出部は、
過去の複数のスイッチング周期において算出した前記デューティ比及び前記平均電流値に基づいて、前記平均電流値と前記デューティ比との関係情報を算出し、
算出した前記関係情報及び前記指令値に基づいて、次回のスイッチング周期における前記デューティ比を算出する。
【0008】
過去の複数のスイッチング周期において算出されたデューティ比及び平均電流値によれば、電流検出誤差を含む平均電流値とデューティ比との関係を把握することができる。この点に鑑み、本発明は上記デューティ比算出部を備えている。これにより、電流検出部の電流検出値に電流検出誤差が含まれる場合であっても、電流不連続モードのデューティ比の算出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るDCDCコンバータを含む制御システムの全体構成を示す図。
【
図2】電流不連続モードにおけるスイッチング態様及びリアクトル電流値の推移を示すタイムチャート。
【
図3】電流臨界モードにおけるスイッチング態様及びリアクトル電流値の推移を示すタイムチャート。
【
図4】電流連続モードにおけるスイッチング態様及びリアクトル電流値の推移を示すタイムチャート。
【
図5】リアクトル平均電流値及びデューティ比等の関係を示す図。
【
図6】制御装置が実行する電流不連続モードにおける処理のブロック図。
【
図7】DCDCコンバータの制御処理を示すフローチャート。
【
図12】第2実施形態に係るDCDCコンバータの制御処理を示すフローチャート。
【
図13】第3実施形態に係るDCDCコンバータの制御処理を示すフローチャート。
【
図14】その他の実施形態に係る制御システムの全体構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1に示すように、DCDCコンバータ10は、高電位側入力端子THi及び低電位側入力端子TLiから入力された電圧を昇圧して高電位側出力端子THo及び低電位側出力端子TLoから出力する非絶縁型の昇圧コンバータである。DCDCコンバータ10は、リアクトル30、スイッチ31、ダイオード32及びコンデンサ33を備えている。本実施形態において、スイッチ31は、NチャネルMOSFETである。なお、スイッチ31は、NチャネルMOSFETに限らず、例えば、フリーホイールダイオードが逆並列接続されたIGBTであってもよい。
【0013】
リアクトル30の第1端には、高電位側入力端子THiを介して直流電源20の正極端子が接続されている。リアクトル30の第2端には、スイッチ31のドレインと、ダイオード32のアノードとが接続されている。スイッチ31のソースには、低電位側入力端子TLiを介して直流電源20の負極端子が接続されている。直流電源20は、蓄電池又は燃料電池等である。
【0014】
ダイオード32のカソードには、コンデンサ33の第1端と、高電位側出力端子THoとが接続されている。コンデンサ33の第2端には、スイッチ31のソース、低電位側入力端子TLi及び低電位側出力端子TLoが接続されている。高電位側出力端子THoには、蓄電池21の正極端子が接続され、蓄電池21の負極端子には、低電位側出力端子TLoが接続されている。蓄電池21は、充放電可能な2次電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。
【0015】
DCDCコンバータ10は、入力電圧検出部である入力電圧センサ40、出力電圧検出部である出力電圧センサ41、及び電流検出部である電流センサ42を備えている。入力電圧センサ40は、DCDCコンバータ10の入力電圧を検出し、出力電圧センサ41は、DCDCコンバータ10の出力電圧を検出する。電流センサ42は、リアクトル30に流れる電流値を検出する。各センサ40~42の検出値は、DCDCコンバータ10が備える制御装置50に入力される。
【0016】
制御装置50は、マイコン51を主体として構成され、マイコン51は、CPUを備えている。マイコン51が提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン51がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン51は、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、後述する
図7等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されたプログラムは、例えばOTA(Over The Air)等、インターネット等の通信ネットワークを介して更新可能である。
【0017】
制御装置50は、電流不連続モード及び電流連続モードの中から制御モードを選択してスイッチ31のスイッチング制御を行う。
【0018】
電流不連続モードは、
図2に示すように、スイッチ31の1スイッチング周期Tsにおいてリアクトル30に流れる電流値が0になる期間が発生する制御モードである。制御装置50は、電流不連続モードのデューティ比Dutyを算出し、算出したデューティ比Dutyに基づいてスイッチ31のスイッチング制御を行う。デューティ比Dutyは、1スイッチング周期Tsにおけるスイッチ31のオン期間Tonの比率(Ton/Ts=Duty)を定める値である。制御装置50は、1スイッチング周期Tsのうち、「Duty×Ts」の期間においてスイッチ31をオンし、「(1-Duty)×Ts」の期間においてスイッチ31をオフする。スイッチ31のオン期間においては、リアクトル30に流れる電流値が漸増し、リアクトル30に磁気エネルギが蓄積される。スイッチ31のオフ期間においては、リアクトル30に蓄積された磁気エネルギが放出され、リアクトル30に流れる電流値が減少して0になる。これにより、1スイッチング周期Tsにおいて、リアクトル30に流れる電流値の時間推移波形は、理想的には、三角波状の波形になった後、0に維持される波形となる。
【0019】
電流連続モードは、
図4に示すように、スイッチ31の1スイッチング周期Tsにおいて、リアクトル30の第1端側から第2端側へと電流が流れ続ける制御モードである。制御装置50は、電流連続モードのデューティ比Dutyを算出し、算出したデューティ比Dutyに基づいてスイッチ31のスイッチング制御を行う。なお、電流連続モードのデューティ比Dutyは、例えば下式(eq1)に基づいて算出されればよい。
【0020】
【数1】
上式(eq1)において、VLmesは、現在のスイッチング周期において入力電圧センサ40により検出された入力電圧検出値であり、VHmesは、現在のスイッチング周期において出力電圧センサ41により検出された出力電圧検出値であり、Kpはフィードバック項の比例ゲインである。また、Irefは、リアクトル30に流れる平均電流値の指令値を示す。平均電流値は、リアクトル30に流れる電流の1スイッチング周期Tsにおける時間平均値である。制御装置50に入力される指令値Irefは、例えば、1スイッチング周期Ts毎に更新される。また、Imesは、電流センサ42により検出されたリアクトル30に流れる電流値(以下、電流検出値ILmes)に基づいて算出された、リアクトル30に流れる平均電流値(以下、平均電流検出値)である。ちなみに、上式(eq1)における右辺のフィードバック項は必須ではない。
【0021】
なお、電流不連続モードと電流連続モードとの境界は、
図3に示す電流臨界モードとなる。電流臨界モードは、リアクトル30に流れる電流値が低下して0になるタイミングにおいてスイッチ31がオンに切り替えられる制御モードである。
【0022】
ところで、電流不連続モードにおけるデューティ比Dutyの算出には、電流検出値ILmesが用いられる。電流検出値ILmesには電流検出誤差が含まれる。この電流検出誤差がDCDCコンバータ10の制御に及ぼす影響を抑制するように、制御装置50は、電流不連続モードのデューティ比Dutyを算出する。以下、このデューティ比Dutyの算出方法について説明する。
【0023】
電流不連続モードのデューティ比Dutyの基本的な算出式は、下式(eq2)で表される。下式(eq2)において、Lsはリアクトル30のインダクタンス値を示し、fswはスイッチ31のスイッチング周波数(=1/Ts)を示す。
【0024】
【数2】
ここで、上式(eq2)を電流値について解き、電流検出誤差があることを考慮すると、下式(eq3)が導かれる。下式(eq3)において、Ierrは、
図5の平均電流値及びデューティ比Dutyの関係に示すように、デューティ比Dutyが0の場合における平均電流検出値Imesと指令値Irefとのオフセット電流誤差である。
【0025】
【数3】
上式(eq3)の右辺において、デューティ比Dutyに乗算される係数には、VHre,VLre,Lsreが含まれている。VHreは実際の出力電圧を示し、VLreは実際の入力電圧を示し、Lsreはリアクトル30の実際のインダクタンス値を示す。
【0026】
図5には、指令値Irefを一定速度で漸増させた場合における指令値Iref及び平均電流検出値の関係を示す。
図5に示す例では、指令値Irefの上昇速度と平均電流検出値の上昇速度とが相違しており、具体的には、指令値Irefの上昇速度よりも平均電流検出値の上昇速度の方が高い。これは、平均電流検出値の算出に用いられた電流検出値ILmesにゲイン誤差が含まれるためである。
【0027】
上式(eq3)を下式(eq4)のように表す。下式(eq4)は、デューティ比Dutyを独立変数とするとともに平均電流検出値Imesを従属変数とする関係情報である。下式(eq4)において、独立変数の係数情報であるαは補正係数であり、切片情報であるβはオフセット補正値である。
【0028】
【数4】
図5に示すように、あるスイッチング周期である第1周期における平均電流検出値Imes_a及びデューティ比Dutyaと、第1周期とは異なるスイッチング周期である第2周期における平均電流検出値Imes_b及びデューティ比Dutybとの関係と、上式(eq4)とから、下式(eq5)が導かれる。なお、
図5には、デューティ比Dutyaに対応する指令値をIref_aで示し、デューティ比Dutybに対応する指令値をIref_bで示す。
【0029】
【数5】
上式(eq5)を補正係数α及びオフセット補正値βについて解くと、下式(eq6)が導かれる。
【0030】
【数6】
つまり、異なる2つの第1,第2周期における平均電流検出値及びデューティ比に基づいて、補正係数α及びオフセット補正値βを算出することができる。
【0031】
本実施形態において、制御装置50は、現在のスイッチング周期よりも1つ前のスイッチング周期(以下、前回のスイッチング周期。「第1周期」に相当)において算出した平均電流検出値Imes1及びデューティ比Duty1と、現在のスイッチング周期よりも2つ前のスイッチング周期(以下、前々回のスイッチング周期。「第2周期」に相当)において算出した平均電流検出値Imes2及びデューティ比Duty2と、上式(eq6)とに基づいて、補正係数α及びオフセット補正値βを算出する。平均電流検出値Imes1は、前回のスイッチング周期において検出された複数の電流検出値ILmesに基づいて算出され、平均電流検出値Imes2は、前々回のスイッチング周期において検出された複数の電流検出値ILmesに基づいて算出される。
【0032】
ここで、補正係数αは、上式(eq3)に示すように、出力電圧VHre、入力電圧VLre及びインダクタンス値Lsreに依存する。前回のスイッチング周期から現在のスイッチング周期に至るまでに各電圧VHre,VLre及びインダクタンス値Lsreが変化すると、補正係数αの算出精度が低下し得る。インダクタンス値Lsreは、リアクトル30に流れる電流値に応じて変化し得る。
【0033】
そこで、各電圧VHre,VLre及びインダクタンス値Lsreの変化が補正係数αの算出精度に及ぼす影響を抑制するために、下式(eq7)に示す現在のスイッチング周期における補正パラメータγと、下式(eq8)に示す前回のスイッチング周期における補正パラメータγ1とを算出する。「γ/γ1」により示される補正係数は、各電圧VHre,VLre及びインダクタンス値Lsreの変化が補正係数αの算出精度に及ぼす影響を抑制するためのパラメータである。そして、補正係数α、オフセット補正値β、補正係数「γ/γ1」及び下式(eq9)に基づいて、電流不連続モードのデューティ比Dutyを算出する。
【0034】
下式(eq7)において、VHmesは現在のスイッチング周期における出力電圧検出値であり、VLmesは現在のスイッチング周期における入力電圧検出値であり、Lsは現在のスイッチング周期におけるリアクトル30の推定インダクタンス値である。下式(eq8)において、VHmes1は前回のスイッチング周期における出力電圧検出値であり、VLmes1は前回のスイッチング周期における入力電圧検出値であり、Ls1は1つ前のスイッチング周期におけるリアクトル30の推定インダクタンス値である。
【0035】
【0036】
【0037】
【数9】
図6に、制御装置50により実行される電流不連続モードの制御ブロック図を示す。
【0038】
制御装置50において、平均電流算出部60は、電流検出値ILmesに基づいて、現在のスイッチング周期Tsにおける平均電流検出値Imesを算出する。リアクトル30に流れる電流値は、1スイッチング周期Tsにおいて電流センサ42により複数(例えば十数個)回サンプリングされる。平均電流検出値Imesは、スイッチング周期毎に算出され、制御装置50が備える記憶部(メモリ)に記憶される。
【0039】
補正値算出部61は、前回のスイッチング周期において算出した平均電流検出値Imes1及びデューティ比Duty1と、前々回のスイッチング周期において算出した平均電流検出値Imes2及びデューティ比Duty2と、上式(eq6)とに基づいて、補正係数α及びオフセット補正値βを算出する。補正係数α及びオフセット補正値βは、スイッチング周期毎に算出され、更新される。
【0040】
算出部62は、現在のスイッチング周期における出力電圧検出値VHmes及び入力電圧検出値VLmesと、現在のスイッチング周期におけるリアクトル30の推定インダクタンス値Lsと、上式(eq7)とに基づいて、補正パラメータγを算出する。ここで、現在のスイッチング周期における推定インダクタンス値Lsは、例えば、平均電流検出値及び推定インダクタンス値が紐付けられたインダクタンスマップ情報又は数式情報と、現在のスイッチング周期における平均電流検出値Imesとに基づいて算出されればよい。
【0041】
算出部62は、前回のスイッチング周期における出力電圧検出値VHmes1及び入力電圧検出値VLmes1と、前回のスイッチング周期におけるリアクトル30の推定インダクタンス値Ls1と、上式(eq8)とに基づいて、補正パラメータγ1を算出する。ここで、前回のスイッチング周期における推定インダクタンス値Ls1は、例えば、上記インダクタンスマップ情報又は数式情報と、前回のスイッチング周期における平均電流検出値Imes1とに基づいて算出されればよい。
【0042】
算出部62は、算出したγ,γ1と、算出した補正係数α及びオフセット補正値βと、指令値Irefと、上式(eq9)とに基づいて、現在のスイッチング周期におけるデューティ比Dutyを算出する。このデューティ比Dutyは、次回のスイッチング周期におけるスイッチ31のオン期間を定める値となる。
【0043】
電流制御部63は、算出されたデューティ比Dutyに基づいて、スイッチ31の駆動指令Sgを算出し、算出した駆動指令Sgを駆動回路52に出力する。駆動指令Sgは、スイッチ31のオン指令及びオフ指令からなる。駆動回路52は、駆動指令Sgに基づいて、スイッチ31のスイッチング制御を行う。
【0044】
ちなみに、本実施形態において、駆動回路52及び電流制御部63が「スイッチ制御部」に相当し、補正値算出部61及び算出部62が「デューティ比算出部」に相当する。
【0045】
図7に、制御装置50により実行されるリアクトル電流制御の手順を示す。
【0046】
ステップS10では、現在のスイッチング周期における指令値Irefを取得する。
【0047】
ステップS11では、平均電流算出部60により、1スイッチング周期Tsにおいて取得した複数の電流検出値ILmesに基づいて、現在のスイッチング周期Tsにおける平均電流検出値Imesを算出する。また、現在のスイッチング周期における出力電圧検出値VHmes及び入力電圧検出値VLmesを取得する。
【0048】
ステップS12では、次回のスイッチング周期における制御モードが電流不連続モード又は電流連続モードのどちらであるかを判定する。具体的には例えば、現在のスイッチング周期における平均電流検出値Imesが判定値以下であると判定した場合、電流不連続モードであると判定し、平均電流検出値Imesが判定値を超えたと判定した場合、電流連続モードであると判定すればよい。
【0049】
ステップS12において電流連続モードであると判定した場合には、ステップS13に進み、電流連続モードのデューティ比Dutyを算出する。例えば、現在のスイッチング周期における出力電圧検出値VHmes及び入力電圧検出値VLmesと、上式(eq1)とに基づいて電流連続モードのデューティ比Dutyを算出すればよい。
【0050】
ステップS14では、ステップS13において算出したデューティ比Dutyに基づいて、駆動指令Sgを算出し、駆動回路52に出力する。これにより、制御モードが電流連続モードとなるように、ステップS13において算出されたデューティ比Dutyに基づいてスイッチ31のスイッチング制御が実行される。
【0051】
ステップS15では、DCDCコンバータ10の駆動停止指示がなされたか否かを判定する。駆動停止指示がなされていないと判定した場合には、ステップS10に進む。
【0052】
ステップS12において電流不連続モードであると判定した場合には、ステップS16に進み、現在のスイッチング周期における推定インダクタンス値Lsを算出する。また、現在のスイッチング周期における補正パラメータγ,γ1を算出する。
【0053】
ステップS17では、第1条件及び第2条件の双方が成立しているか否かを判定する。
【0054】
第1条件は、前回のスイッチング周期において算出したデューティ比Duty1又は前々回のスイッチング周期において算出したデューティ比Duty2が0ではないとの条件である。第1条件は、上式(eq6)の右辺の行列式の分母が0になり、補正係数α及びオフセット補正値βが算出できなくなることを回避するための条件である。
【0055】
第2条件は、前回のスイッチング周期における補正パラメータγ1が正の値であるとの条件である。第2条件は、上式(eq9)の右辺において負の値の平方根となり、デューティ比Dutyが算出できなくなることを回避するための条件である。
【0056】
ステップS17において第1条件及び第2条件の双方が成立していると判定した場合には、ステップS18に進み、補正値算出部61により補正係数α及びオフセット補正値βを算出し更新する。
【0057】
ステップS19では、第3条件及び第4条件の双方が成立しているか否かを判定する。
【0058】
第3条件は、ステップS10において取得した指令値Irefが、ステップS18において算出したオフセット補正値βよりも大きいとの条件である。第4条件は、ステップS18において算出した補正係数αが0よりも大きいとの条件である。第3,第4条件は、上式(eq9)の右辺において負の値の平方根となり、デューティ比Dutyが算出できなくなることを回避するための条件である。
【0059】
ステップS19において第3条件及び第4条件の双方が成立していると判定した場合には、ステップS20に進み、算出部62により電流不連続モードのデューティ比Dutyを算出する。続くステップS21では、ステップS20において算出したデューティ比Dutyに基づいて、駆動指令Sgを算出し、駆動回路52に出力する。これにより、制御モードが電流不連続モードとなるように、ステップS20において算出されたデューティ比Dutyに基づいてスイッチ31のスイッチング制御が実行される。
【0060】
ステップS17において第1条件又は第2条件の少なくとも一方が成立していないと判定した場合には、ステップS22に進み、前回のスイッチング周期において算出したオフセット補正値β1がステップS10において取得した指令値Iref以上であるか否かを判定する。
【0061】
ステップS22において指令値Irefがオフセット補正値β1よりも大きいと判定した場合、又はステップS19において第3条件及び第4条件の少なくとも一方が成立していないと判定した場合には、ステップS23に進む。ステップS23では、算出部62において、前回のスイッチング周期において算出した補正係数α1及びオフセット補正値β1をデューティ比Dutyの算出に用いる。続くステップS21では、ステップS23において算出したデューティ比Dutyに基づいて、駆動指令Sgを算出し、駆動回路52に出力する。これにより、制御モードが電流不連続モードとなるように、ステップS23において算出されたデューティ比Dutyに基づいてスイッチ31のスイッチング制御が実行される。
【0062】
ステップS22においてオフセット補正値β1が指令値Iref以上であると判定した場合には、ステップS24に進み、電流不連続モードのデューティ比Dutyを0とする。このため、続くステップS21において駆動指令Sgがオフ指令に維持される。これにより、次回のスイッチング周期においてスイッチ31がオフに維持される。
【0063】
図8~
図11に示す計算結果を用いて、比較例と対比しつつ、本実施形態の構成について説明する。
図8~
図11に示す計算例では、指令値Irefを一定速度で漸増させた場合の平均電流検出値の推移を示している。
図8~
図11に示す比較例は、特許文献1に記載の方法を用いた場合の電流不連続モードの結果である。
【0064】
図8は、リアクトル30の実際のインダクタンス値が制御で用いられるインダクタンス値よりも小さく、また、リアクトル30に実際に流れる電流値よりも電流検出値ILmesが大きくなる場合を示す。
【0065】
図8に示すように、本実施形態によれば、漸増する指令値Irefに対して平均電流検出値Imesが迅速に追従し、指令値Irefと平均電流検出値Imesとの誤差が非常に小さくなっている。これに対し、比較例では、指令値Irefに対して平均電流検出値Imesが迅速に追従することができず、電流制御の開始初期において指令値Irefと平均電流検出値Imesとの誤差が非常に大きくなってしまう。なお、
図8に示す本実施形態の例において、電流制御の開始時に平均電流検出値Imesが一定値になっているのは、オフセット誤差Ierrが含まれる電流検出値ILmesが指令値Iref以上となる場合において、スイッチ31がオフされるためである。
【0066】
図9に示す計算結果の計算条件は、
図8に示す計算結果の計算条件に対して、リアクトル30に実際に流れる電流値よりも電流検出値ILmesが小さくなる点で異なっている。
【0067】
図9に示すように、本実施形態によれば、漸増する指令値Irefに対して平均電流検出値Imesが迅速に追従し、指令値Irefと平均電流検出値Imesとの誤差が非常に小さくなっている。これに対し、比較例では、指令値Irefに対して平均電流検出値Imesが迅速に追従することができず、指令値Irefと平均電流検出値Imesとの誤差が非常に大きくなってしまう。
【0068】
図10は、リアクトル30の実際のインダクタンス値が制御で用いられるインダクタンス値よりも大きく、また、リアクトル30に実際に流れる電流値よりも電流検出値ILmesが大きくなる場合を示す。
【0069】
図10に示すように、本実施形態によれば、漸増する指令値Irefに対して平均電流検出値Imesが迅速に追従し、指令値Irefと平均電流検出値Imesとの誤差が非常に小さくなっている。これに対し、比較例では、指令値Irefに対して平均電流検出値Imesが迅速に追従することができず、指令値Irefと平均電流検出値Imesとの誤差が非常に大きくなってしまう。
【0070】
図11に示す計算結果の計算条件は、
図10に示す計算結果の計算条件に対して、リアクトル30に実際に流れる電流値よりも電流検出値ILmesが小さくなる点で異なっている。
【0071】
図11に示すように、本実施形態によれば、漸増する指令値Irefに対して平均電流検出値Imesが迅速に追従し、指令値Irefと平均電流検出値Imesとの誤差が非常に小さくなっている。これに対し、比較例では、指令値Irefに対して平均電流検出値Imesが迅速に追従することができず、指令値Irefと平均電流検出値Imesとの誤差が非常に大きくなってしまう。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、電流検出値ILmesに電流検出誤差が含まれる場合であっても、電流不連続モードのデューティ比Dutyの算出精度を高めることができる。これにより、平均電流検出値Imesを指令値Irefに迅速に追従させることができ、電流不連続モードにおける電流制御性を高めることができる。
【0073】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、次回のスイッチング周期における制御モードが電流不連続モード又は電流連続モードのどちらであるかの判定方法が変更されている。
【0074】
図12に、制御装置50により実行されるリアクトル電流制御の手順を示す。なお、
図12において、先の
図7に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0075】
ステップS11の処理の完了後、ステップS16に進む。
【0076】
ステップS20,S23又はS24の処理の完了後、ステップS30に進み、デューティ閾値Dthを算出する。デューティ閾値Dthは、制御モードが電流不連続モードであるか電流連続モードであるかを判定するための閾値である。デューティ閾値Dthは、例えば、電流不連続モードで取り得るデューティ比Dutyの上限値として算出されればよい。
【0077】
続くステップS31では、ステップS20,S23又はS24で算出したデューティ比Dutyがデューティ閾値Dthよりも大きいか否かを判定する。ステップS31においてデューティ比Dutyがデューティ閾値Dth以下であると判定した場合には、次回のスイッチング周期における制御モードが電流不連続モードであると判定し、ステップS21に進む。一方、ステップS31においてデューティ比Dutyがデューティ閾値Dthよりも大きいと判定した場合には、次回のスイッチング周期における制御モードが電流連続モードであると判定し、ステップS13に進む。この場合、電流不連続モードから電流連続モードへの切り替え判定に、電流不連続モードのデューティ比が用いられることとなる。
【0078】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、電流不連続モードにおいて、前回のスイッチング周期で算出されたDuty1に対して現在のスイッチング周期で算出されたデューティ比Dutyが大きく変化する場合、その変化を抑制する処理が実行される。
【0079】
図13に、制御装置50により実行されるリアクトル電流制御の手順を示す。なお、
図13において、先の
図7に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0080】
ステップS20,S23又はS24の処理の完了後、ステップS40に進み、変動許容値ΔDを算出する。変動許容値ΔDは、上式(eq2)により定まるデューティ比の前回のスイッチング周期からの変化量に基づいて定められる。具体的には例えば、変動許容値ΔDは、下式(eq10)により算出することができる。下式(eq10)の係数Kc(>0)は、例えば、3~5の間の値に設定されていればよい。なお、下式(eq10)の右辺において、Iref1は前回のスイッチング周期における指令値Irefである。
【0081】
【数10】
続くステップS41では、現在のスイッチング周期において算出したデューティ比Dutyと前回のスイッチング周期において算出したデューティ比Duty1との差の絶対値が変動許容値ΔDよりも大きいか否かを判定する。
【0082】
ステップS41において否定判定した場合には、ステップS21に進む。一方、ステップS41において肯定判定した場合には、ステップS421に進み、前回のスイッチング周期において算出したデューティ比Duty1に変動許容値ΔDを加算した値を、現在のスイッチング周期において算出したデューティ比Dutyとみなす。その後、ステップS21に進む。
【0083】
以上説明した本実施形態によれば、ノイズ等の不正な影響が電流不連続モードのデューティ比Dutyの算出精度に及ぼす影響を抑制することができる。
【0084】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0085】
・上式(eq9)において補正係数「γ/γ1」が用いられなくてもよい。この場合、制御装置は、下式(eq11)に基づいてデューティ比Dutyを算出すればよい。
【0086】
【数11】
・
図1に示す構成において、蓄電池21に代えて、電気負荷が出力端子THo,TLoに接続されていてもよい。この場合、DCDCコンバータは、電流制御型のDCDCコンバータに代えて、制御装置の電流制御において電流マイナーループ制御が付加された電圧制御型のDCDCコンバータであってもよい。
【0087】
・制御システムとしては、
図1に示した構成に限らず、例えば
図14に示す構成であってもよい。
図14に示す構成は、燃料電池90を備える電気自動車のモータ駆動システムである。このシステムは、昇圧コンバータ100、蓄電池91、インバータ110及びモータ120を備えている。昇圧コンバータ100は、燃料電池90の出力電圧を昇圧してインバータ110に供給する。インバータ110は、昇圧コンバータ100又は蓄電池91の少なくとも一方から供給された直流電力を交流電力に変換してモータ120の電機子巻線に供給する。この構成において、本発明を昇圧コンバータ100の電流制御に適用してもよい。
【0088】
・上式(eq6)に基づく算出処理において用いられるデューティ比及び平均電流検出値が、前回のスイッチング周期における値と、前々回のスイッチング周期における値とであったがこれに限らない。例えば、現在のスイッチング周期よりも10個前までのスイッチング周期から、前回のスイッチング周期までのスイッチング周期の中から選択された過去の2つのスイッチング周期における値が用いられてもよい。例えば、前回のスイッチング周期における値と3つ前のスイッチング周期における値とが用いられたり、前々回のスイッチング周期における値と5つ前のスイッチング周期における値とが用いられたりしてもよい。ただし、過去の2つのスイッチング周期の間の長さが、過去の1つ目のスイッチング周期における平均電流値及びデューティ比の関係と、過去の2つ目のスイッチング周期における平均電流値及びデューティ比の関係とが大きく異ならないような長さになるように、過去の2つのスイッチング周期が選択されることが望ましい。
【0089】
・本発明が適用されるDCDCコンバータとしては、昇圧コンバータに限らず、入力電圧を降圧して出力する降圧コンバータや、昇圧機能及び降圧機能を有する昇降圧コンバータであってもよい。この場合であっても、昇圧コンバータに対応する上式(eq4)のように、降圧コンバータや昇降圧コンバータについて、デューティ比を独立変数とするとともに平均電流値を従属変数とする数式における独立変数の係数情報(具体的には、補正係数)、及び数式における切片情報(具体的には、オフセット補正値)を定めることができる。このため、降圧コンバータや昇降圧コンバータにおいても、過去の2つのスイッチング周期におけるデューティ比及び平均電流検出値に基づいて、係数情報及び切片情報を算出することができる。
【0090】
また、本発明が適用されるDCDCコンバータとしては、非絶縁型のものに限らず、トランスを備える絶縁型のものであってもよい。トランスは、入力側の1次側リアクトル及び出力側の2次側リアクトルを有している。絶縁型のDCDCコンバータは、例えば、フライバックコンバータ、フォワードコンバータ、プッシュプル方式のコンバータ又はフルブリッジ方式のコンバータであり、1次側にスイッチを備えている。
【0091】
例えば、フォワードコンバータの場合、2次側に、トランスの2次側リアクトルとは別のリアクトル(以下、特定リアクトル)が設けられる。フォワードコンバータにおいて、1次側のスイッチのオン期間において2次側の特定リアクトルに流れる電流値が漸増し、特定リアクトルに磁気エネルギが蓄積される。また、1次側のスイッチのオフ期間において特定リアクトルに流れる電流値が漸減して0になる。これにより、1スイッチング周期において、特定リアクトルに流れる電流値の時間推移波形が、三角波状の波形になった後、0に維持される波形となる。
【0092】
また例えば、フライバックコンバータの場合、1次側のスイッチのオン期間において、トランスを構成する1次側のリアクトルに流れる電流値が漸増し、1次側のリアクトル及びトランスのコアに磁気エネルギが蓄積される。また、1次側のスイッチのオフ期間において、蓄積されたエネルギが放出され、1次側のリアクトルに流れる電流値が漸減して0になる。これにより、1スイッチング周期において、1次側のリアクトルに流れる電流値の時間推移波形が、三角波状の波形になった後、0に維持される波形となる。
【0093】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0094】
10…DCDCコンバータ、30…リアクトル、31…スイッチ、42…電流センサ、50…制御装置。