(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081540
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ポアチップおよび微粒子測定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 15/13 20240101AFI20240611BHJP
【FI】
G01N15/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195237
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】生沼 浩介
(72)【発明者】
【氏名】高田 武晃
(72)【発明者】
【氏名】鷲津 信栄
(57)【要約】
【課題】測定精度を改善可能なポアデバイスを提供する。
【解決手段】ポアチップ400は、ポア412を有するメンブレン410を備える。ポア412の直径をd、メンブレン410の厚さをtとするとき、1≦t/d<2の関係が満たされる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポアを有するメンブレンを備え、
前記ポアの径をd、前記メンブレンの厚さをtとするとき、1≦t/d<2の関係を満たすことを特徴とするポアチップ。
【請求項2】
前記メンブレンは多層構造を有することを特徴とする請求項1に記載のポアチップ。
【請求項3】
前記メンブレンは、異なる絶縁材料の積層構造を有することを特徴とする請求項2に記載のポアチップ。
【請求項4】
前記メンブレンは、下側のSiN層と上側のSiO2層を含むことを特徴とする請求項3に記載のポアチップ。
【請求項5】
前記メンブレンは、前記積層構造は下側の第1絶縁層と上側の第2絶縁層の2層を含み、前記第1絶縁層のヤング率は前記第2絶縁層のヤング率よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載のポアチップ。
【請求項6】
前記メンブレンを支持し、前記ポアと対応する範囲に開口を有する支持基材をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のポアチップ。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載のポアチップおよび当該ポアチップによって区画される2つのチャンバーを有するケースを含むポアデバイスと、
前記ポアデバイスに電気信号を印加し、前記ポアデバイスに発生する電気信号を測定する計測装置と、
を備えることを特徴とする微粒子測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポアチップに関する。
【背景技術】
【0002】
電気的検知帯法(コールター原理)と呼ばれる粒度分布測定法が知られている。この測定法では、粒子を含む電解液を、ナノポアと称される細孔を通過させる。粒子が細孔を通過するとき、細孔中の電解液は粒子の体積に相当する量だけ減少し、細孔の電気抵抗を増加させる。したがって細孔の電気抵抗を測定することで、粒子の体積(すなわち粒径)を測定することができる。
【0003】
図1は、電気的検知帯法を用いた微粒子測定システム1Rのブロック図である。微粒子測定システム1Rは、ポアデバイス100R、計測装置200Rおよびデータ処理装置300を備える。
【0004】
ポアデバイス100Rの内部は、検出対象の粒子4を含む電解液2が満たされる。ポアデバイス100Rの内部は、ポアチップ102によって2つの空間に隔てられており、2つの空間には電極106と電極108が設けられる。電極106と電極108の間に電位差を発生させると、電極間にイオン電流が流れ、また電気泳動によって粒子4が細孔104を経由して、一方の空間から他方の空間に移動する。
【0005】
計測装置200Rは、電極対106,108の間に電位差を発生させるとともに、電極対の間の抵抗値Rpと相関を有する情報を取得する。計測装置200Rは、トランスインピーダンスアンプ210、電圧源220、デジタイザ230を含む。電圧源220は電極対106,108の間に電位差Vbを発生させる。この電位差Vbは、電気泳動の駆動源であるとともに、抵抗値Rpを測定するためのバイアス信号となる。
【0006】
電極対106,108の間には、細孔104の抵抗に反比例する微小電流Isが流れる。
Is=Vb/Rp …(1)
【0007】
トランスインピーダンスアンプ210は、微小電流Isを電圧信号Vsに変換する。変換ゲインをrとするとき、以下の式が成り立つ。
Vs=-r×Is …(2)
式(1)を式(2)に代入すると、式(3)が得られる。
Vs=-Vb×r/Rp …(3)
デジタイザ230は、電圧信号VsをデジタルデータDsに変換する。このように計測装置200Rにより、細孔104の抵抗値Rpに反比例する電圧信号Vsを得ることができる。
【0008】
図2は、計測装置200Rにより測定される例示的な微小電流Isの波形図である。なお本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0009】
粒子が通過する短い期間、細孔104の抵抗値Rpが増大する。したがって、粒子が通過するごとに電流Isはパルス状に減少する。個々のパルス電流の振幅は、粒径と相関を有する。データ処理装置300は、デジタルデータDsを処理し、電解液2に含まれる粒子4の個数や粒径分布などを解析する。データ処理装置300の一部は、サーバやクラウドであってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2017-016881号公報
【特許文献2】特開2014-219235号公報
【特許文献3】特開2018-054594号公報
【特許文献4】国際公開第2002/084306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来では、ポア径(開口径)dに対して厚さtが十分に小さい(t<d)ポアデバイスが使用されていた。本発明者らは、このような低アスペクト比のポアデバイスについて検討を行い、以下の課題を認識するに至った。
【0012】
低アスペクト比のポアデバイスでは、ポア内の電界強度が、直径方向に大きな依存性を有する。したがって、粒子が、ポアの中心を通過した場合と、ポアの外周を通過した場合とで、異なった信号が測定されることとなり、測定精度が低下することとなる。
【0013】
本開示は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、測定精度を改善可能なポアデバイスの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示のある態様のポアチップは、ポアを有するメンブレンを備える。ポアの径をd、メンブレンの厚さをtとするとき、1≦t/d<2の関係を満たす。
【0015】
なお、以上の構成要素を任意に組み合わせたもの、構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明あるいは本開示の態様として有効である。さらに、この項目(課題を解決するための手段)の記載は、本発明の欠くべからざるすべての特徴を説明するものではなく、したがって、記載されるこれらの特徴のサブコンビネーションも、本発明たり得る。
【発明の効果】
【0016】
本開示のある態様によれば、測定精度を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】電気的検知帯法を用いた微粒子測定システムのブロック図である。
【
図2】計測装置により測定される例示的な微小電流Isの波形図である。
【
図4】従来のポアチップを利用して標準粒子を測定したときに生成されたヒストグラムを示す図である。
【
図5】従来技術におけるヒストグラムのスプリットの原因を説明する模式図である。
【
図8】実施形態に係るポアチップの電位分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図9】従来技術に係るポアチップの電位分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図10】
図10(a)、(b)は、電界強度の径方向の電界分布のシミュレーション結果を示す図である。
【
図11】実施例1に係るポアチップの断面図である。
【
図12】実施例2に係るポアチップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0019】
一実施形態に係るポアチップは、ポアを有するメンブレンを備える。ポアの径をd、メンブレンの厚さをtとするとき、1≦t/d<2の関係を満たす。
【0020】
この構成によると、ポア内に、径方向に均一な電界を発生させることができる。これにより、ある粒子がポアを通過する際に、通過経路によらずに、同じ強度の信号を測定することができる。これにより、測定精度を改善できる。
【0021】
一実施形態において、メンブレンは多層構造を有してもよい。粒径が大きな粒子を測定するためには、ポア径dを大きくする必要があり、その場合、メンブレンの厚さtも厚くする必要がある。厚いメンブレンを同一材料の単層構造とすると、応力によってメンブレンにクラックやシワが入るなどの問題が生じうる。その場合には、メンブレンを多層構造とすることで、応力を緩和することができ、クラックやシワを抑制できる。
【0022】
一実施形態において、メンブレンは、異なる絶縁材料の積層構造を有してもよい。
【0023】
一実施形態において、メンブレンは、下側のSiN層と上側のSiO2層を含んでもよい。
【0024】
一実施形態において、メンブレンは、積層構造は下側の第1絶縁層と上側の第2絶縁層の2層を含み、第1絶縁層のヤング率は第2絶縁層のヤング率よりも大きくてもよい。
【0025】
一実施形態において、ポアチップは、メンブレンを支持し、ポアと対応する範囲に開口を有する支持基材をさらに備えてもよい。
【0026】
一実施形態に係る微粒子測定システムは、上述のいずれかのポアチップおよび当該ポアチップによって区画される2つのチャンバーを有するケースを含むポアデバイスと、ポアデバイスに電気信号を印加し、前記ポアデバイスに発生する電気信号を測定する計測装置と、を備える。
【0027】
(実施形態)
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0028】
また図面に記載される各部材の寸法(厚み、長さ、幅など)は、理解の容易化のために適宜、拡大縮小されている場合がある。さらには複数の部材の寸法は、必ずしもそれらの大小関係を表しているとは限らず、図面上で、ある部材Aが、別の部材Bよりも厚く描かれていても、部材Aが部材Bよりも薄いこともあり得る。
【0029】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0030】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に接続された(設けられた)状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0031】
また本明細書において、電圧信号、電流信号などの電気信号、あるいは抵抗、キャパシタ、インダクタなどの回路素子に付された符号は、必要に応じてそれぞれの電圧値、電流値、あるいは回路定数(抵抗値、容量値、インダクタンス)を表すものとする。
【0032】
実施形態に係るポアチップ400について説明する前に、従来のポアチップおよびそれに関連して発生する問題を説明する。
【0033】
図3は、従来のポアチップ800の断面図である。ポアチップ800はメンブレン810を備え、メンブレン810には、ポア(開口)812が形成される。従来のポアチップ800では、メンブレン810の膜厚tは数十nmのものが利用されていた。これは、(i)膜厚tを小さくすることで、結晶性の高い膜が形成でき、また成膜時間が短くて済むこと、(ii)調達性が良いこと、すなわち、薄膜の方が低コストであり、納期が短いこと、(iii)膜加工性が良いこと、すなわちドライエッチングなどにより後から加工する際に都合がよいことが理由として挙げられる。
【0034】
このように数十nmの膜厚tのメンブレン810を利用すると、ポア812の直径(ポア径という)dと、メンブレン810の膜厚tの間には、
d>t
の関係が成り立つこととなる。ポアのアスペクト比をt/dとして定義すると、従来のポアチップ800は、低アスペクトであったと言える。
【0035】
図4は、従来のポアチップ800を利用して標準粒子を測定したときに生成されたヒストグラムを示す図である。実験に使用したポアチップ800は、d=3μm、アスペクト比0.017(t=0.050μm)である。標準粒子の直径は0.9μmである。ヒストグラムの横軸は、粒子がポアを通過するときに測定された電流から推定される粒径であり、縦軸は粒子の個数を表す。
【0036】
同一径を有する標準粒子を測定しているため、理想的にはヒストグラムは単峰であるべきであるが、測定結果ではヒストグラムは2つにスプリットし、強い二峰性を示している。ヒストグラムが二峰性を有すると、粒子の径を推定することが難しくなり、測定精度が低下する。
【0037】
本発明者らは、従来のポアチップ800を利用した際に二峰性が発生した理由として、ポア812内の電界強度に着目した。
【0038】
図5は、従来技術におけるヒストグラムのスプリットの原因を説明する模式図である。ポアチップ800は、ケース900に収容される。ケース900は、ポアチップ800によって、2つのチャンバー902,904に区画される。チャンバー902,904内は、粒子4を含む電解液2で満たされている。粒子4は、ポア812を通過する際に、異なる経路を取ることができる。
図5には、2つの経路(i)(ii)が代表的に示される。ポア812内の電界強度が均一であれば、通過経路によらずに、同じ強度の信号が測定されることとなる。しかしながら、ポア812内の電界強度が不均一であると、通過する経路によって、同じ粒径を持つ粒子4が通過したときに、異なる強度の信号が測定されることとなる。これにより、ヒストグラムがスプリットする。
【0039】
以上が従来技術において発生する問題である。以下では、この問題を解決可能な実施形態に係るポアチップ400を説明する。
【0040】
図6は、実施形態に係るポアチップ400の斜視図である。ポアチップ400は、メンブレン410を備える。このポアチップ400は、
図5のケース900に、ポアチップ800に替えて組み込むことができる。メンブレン410には、貫通するポア(開口)412が設けられている。
【0041】
図7は、
図6のポアチップ400の断面図である。本実施形態では、ポア412のアスペクト比t/dが、
1≦t/d<2
の関係を満たしている。
【0042】
図8は、実施形態に係るポアチップ400の電位分布のシミュレーション結果を示す図である。濃淡階調は電位を、矢印は電界ベクトルを表す。d=300nm、t=300nmとしており、アスペクト比はt/d=1である。メンブレン410の材料としては、SiNを用いている。
【0043】
図9は、従来技術に係るポアチップ800の電位分布のシミュレーション結果を示す図である。d=300nm、t=50nmとしており、アスペクト比はt/d=0.17である。メンブレン810の材料としては、SiNを用いている。
【0044】
図8と
図9を対比すると、アスペクト比が小さい従来技術(
図9)では、電界ベクトルの紙面横方向(すなわちポアの径方向)の成分が大きいのに対して、アスペクト比が1に近い実施形態(
図8)では、電界ベクトルの紙面横方向(すなわちポアの径方向)の成分が小さくなっており、ポア内に均一な電界が形成されることが分かる。
【0045】
図10(a)、(b)は、電界強度の径方向の電界分布のシミュレーション結果を示す図である。横軸は中心からの距離を、縦軸は相対的な電界強度を示す。
【0046】
シミュレーションでは、d=300nmに固定して、厚さtを50nm,120nm,240nm,300nm,360nm,450nm,600nmと変化させた。それぞれのアスペクト比は、0.17,0.4,0.8,1.1,1.2,1.5,2である。
図10(b)は、
図10(a)の縦軸の90%~100%の範囲を拡大したものである。
【0047】
このシミュレーション結果から、1≦t/d<2の範囲において、ポア面内電界ばらつきを97.0~99.7%の範囲に収めることができ、均一性を著しく改善できることがわかる。言い換えると、アスペクト比t/dは、電界強度の平坦性が95%以上、好ましくは97%以上となるように設計するとよい。
【0048】
本実施形態によれば、アスペクト比t/dを大きくすることにより、ポア812内の電界強度を均一化することができる。これにより、粒子の通過経路によらずに、同じ強度の信号が測定されることとなる。これにより、ヒストグラムがスプリットするのを防止でき、単峰性の高いヒストグラムを得ることができる。その結果、粒子径や粒子の種類の検出精度を改善することができる。
【0049】
続いてポアチップ400の具体的な構成例を説明する。
【0050】
図11は、実施例1に係るポアチップ400Aの断面図である。ポアチップ400Aは、メンブレン410および支持基材420が積層された構造を有する。支持基材420は、メンブレン410を支持している。支持基材420は、メンブレン410のポア412に対応する部分に、開口422を有している。メンブレン410としては、SiNが好適であるがAlO、SiO
2などを用いてもよい。支持基材420は、ガラスが好適である。
【0051】
図12は、実施例2に係るポアチップ400Bの断面図である。ポアチップ400Bは、メンブレン410Bおよび支持基材420が積層された構造を有する。メンブレン410Bは、異なる絶縁材料の積層構造を有してもよい。この例では、メンブレン410は、下側の第1絶縁層414と、上側の第2絶縁層416の2層構造を有している。
【0052】
ポア412の径dが大きいポアチップ400Bでは、それにともなってメンブレン410Bの厚さtが大きくなる。
図11の構成では、支持基材420の上に、厚さtが数十ミクロンを超える単層のメンブレン410を半導体プロセスによって成長することは容易ではない。この場合に、
図12の多層構造を採用することで、数十ミクロンを超える厚さtのメンブレン410Bを形成することが可能となる。
【0053】
そして、第1絶縁層414と第2絶縁層416の材料の組み合わせを適切に選ぶことにより、第1絶縁層414と第2絶縁層416の応力の差によって、メンブレン410Bが撓んだり、メンブレン410Bにシワを入るの防止できる。
【0054】
たとえば、第1絶縁層414のヤング率は第2絶縁層416のヤング率よりも大きくてもよい。これにより、支持基材420と第1絶縁層414の積層構造の上に、第2絶縁層416を追加で形成したときに、第1絶縁層414にしわや撓みが生ずるのを防止できる。下側の層414は、たとえばSiN層であり、第2絶縁層416は、SiO2層である。SiNのヤング率は300GPa、SiO2のヤング率は4~10GPaであり、上の関係を満たしている。
【0055】
その他、第1絶縁層414と第2絶縁層416の材料の組み合わせとしてはAlOとSiN、AlOとSiO2などが例示される。
【0056】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0057】
1 微粒子測定システム
2 電解液
4 粒子
200 計測装置
210 トランスインピーダンスアンプ
220 電圧源
230 デジタイザ
240 インタフェース回路
250 メモリインタフェース
100 ポアデバイス
102 ポアチップ
104 細孔
106,108 電極
400 ポアチップ
410 メンブレン
412 ポア
414 第1絶縁層
416 第2絶縁層
420 支持基材
422 開口