(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081542
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】医用システムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240611BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240611BHJP
【FI】
A61B6/03 330A
A61B6/00 320R
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195239
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】319011672
【氏名又は名称】ジーイー・プレシジョン・ヘルスケア・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100151286
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】貫井 正健
(72)【発明者】
【氏名】石原 陽太郎
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 夕里
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA34
4C093EE16
4C093FA13
4C093FA15
4C093FA55
4C093FC26
4C093FF41
4C093FF50
4C093FG01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】術者および/又は被検体が散乱線による被ばくをどの程度受けているのか視覚的に認識させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】X線管を含むガントリ102と、テーブル116と、および1つ以上のプロセッサを含むCTシステムであって、前記1つ以上のプロセッサは、前記ガントリ102およびテーブル116が設置されるスキャンルーム内における術者101の位置および形状を特定すること、前記術者101の位置および形状に基づいて、被検体112をスキャンすることにより発生する散乱線の分布を3次元的に表す3次元散乱線分布の中から、スキャンルーム内の術者101が存在する領域における散乱線分布を特定すること、および散乱線分布を術者101に投影することにより散乱線分布を表示すること、を含む動作を実行する、CTシステム。
【選択図】
図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管を含むガントリと、テーブルと、1つ以上のプロセッサとを含む医用システムであって、
前記1つ以上のプロセッサは、
前記ガントリおよびテーブルが設置されるスキャンルーム内における術者および/又は被検体の位置および形状を特定すること、
前記術者および/又は被検体の位置および形状に基づいて、被検体をスキャンすることにより発生する散乱線の分布を3次元的に表す3次元散乱線分布の中から、前記スキャンルーム内の前記術者および/又は被検体が存在する領域における第1の散乱線分布を特定すること、および
前記第1の散乱線分布を表示すること、
を含む動作を実行する、医用システム。
【請求項2】
所定点を中心とした円の円周に沿う経路上を回転する前記X線管を含み、
前記3次元散乱線分布は、
前記X線管が、スキャンを開始するときのX線管の角度を表す開始角度と、前記スキャンを終了するときのX線管の角度を表す終了角度との間を回転している間に、前記X線管がX線を照射することにより発生する散乱線の分布を表す、請求項1に記載の医用システム。
【請求項3】
前記1つ以上のプロセッサは記憶装置と通信可能であり、
前記記憶装置は、スキャン条件とX線管の開始角度を変更することによって測定されたn個の3次元散乱線分布を記憶し、
前記n個の3次元散乱線分布は、複数のスキャン条件に対応する複数の散乱線分布データセットに分けられており、各散乱線分布データセットは、複数の開始角度に対応する複数の3次元散乱線分布を含む、請求項2に記載の医用システム。
【請求項4】
前記スキャン条件は、
管電圧、ビーム幅、患者のサイズ、およびテーブルの高さのうちの少なくとも1つの項目を含む、請求項3に記載の医用システム。
【請求項5】
前記1つ以上のプロセッサは、
前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定することを実行し、
前記第1の散乱線分布を特定することは、前記決定された3次元散乱線分布の中から、前記第1の散乱線分布を特定することを含む、請求項3に記載の医用システム。
【請求項6】
前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定することは、
前記スキャンを開始するトリガが発生した時点における前記X線管の角度を、前記X線管の開始角度として特定すること、
前記複数のスキャン条件の中に、前記被検体のスキャン条件に一致する第1のスキャン条件が含まれている場合、前記複数のスキャン条件の中から、前記第1のスキャン条件を選択すること、
前記複数の開始角度の中に、前記特定されたX線管の開始角度に一致する第1の開始角度が含まれている場合、前記複数の開始角度の中から、前記第1の開始角度を選択すること、
前記n個の3次元散乱線分布の中から、前記第1のスキャン条件および前記第1の開始角度に対応する第1の3次元散乱線分布を選択すること
を含み、
前記選択された第1の3次元散乱線分布が、前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布として決定される、請求項5に記載の医用システム。
【請求項7】
前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定することは、
前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定することは、
前記スキャンを開始するトリガが発生した時点における前記X線管の角度を、前記X線管の開始角度として特定すること、
前記複数のスキャン条件の中に、前記被検体のスキャン条件に一致する第1のスキャン条件が含まれている場合、前記複数のスキャンの中から、前記第1のスキャン条件を選択すること、
前記複数の開始角度の中に、前記特定されたX線管の開始角度に一致する第1の開始角度が含まれていない場合、前記複数の開始角度の中から、前記特定された開始角度に最も近い第2の開始角度を選択すること、
前記n個の3次元散乱線分布の中から、前記第1のスキャン条件および前記第2の開始角度に対応する第1の3次元散乱線分布を選択すること、
前記第2の開始角度と前記特定された開始角度との間の角度差に基づいて、前記第1の3次元散乱線分布を補正すること、
を含み、
前記補正された第1の3次元散乱線分布が、前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布として決定される、請求項5に記載の医用システム。
【請求項8】
前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定することは、
前記スキャンを開始するトリガが発生した時点における前記X線管の角度を、前記X線管の開始角度として特定すること、
前記複数のスキャン条件の中に、前記被検体のスキャン条件に一致する第1のスキャン条件が含まれていない場合、前記複数のスキャン条件の中から1つのスキャン条件を選択すること、
前記複数の開始角度の中に、前記特定されたX線管の開始角度に一致する第1の開始角度が含まれている場合、前記複数の開始角度の中から、前記第1の開始角度を選択すること、
前記n個の3次元散乱線分布の中から、前記1つのスキャン条件および前記第1の開始角度に対応する第1の3次元散乱線分布を選択すること、
前記選択された1つのスキャン条件に含まれる各項目の設定値と前記被検体のスキャン条件に含まれる各項目の設定値との間の差に基づいて、前記第1の3次元散乱線分布を補正すること、
を含み、
前記補正された第1の3次元散乱線分布が、前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布として決定される、請求項5に記載の医用システム。
【請求項9】
前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定することは、
前記スキャンを開始するトリガが発生した時点における前記X線管の角度を、前記X線管の開始角度として特定すること、
前記複数のスキャン条件の中に、前記被検体のスキャン条件に一致する第1のスキャン条件が含まれていない場合、前記複数のスキャン条件の中から1つのスキャン条件を選択すること、
前記複数の開始角度の中に、前記特定されたX線管の開始角度に一致する第1の開始角度が含まれていない場合、前記複数の開始角度の中から、前記特定された開始角度に最も近い第2の開始角度を選択すること、
前記n個の3次元散乱線分布の中から、前記1つのスキャン条件および前記第2の開始角度に対応する第1の3次元散乱線分布を選択すること、
前記選択された1つのスキャン条件に含まれる各項目の設定値と前記被検体のスキャン条件に含まれる各項目の設定値との間の差と、前記第2の開始角度と前記特定された開始角度との間の角度差に基づいて、前記第1の3次元散乱線分布を補正すること、
を含み、
前記補正された第1の3次元散乱線分布が、前記被検体に対して実行されるスキャンに対応する3次元散乱線分布として決定される、請求項5に記載の医用システム。
【請求項10】
前記1つ以上のプロセッサは、
前記被検体のスキャン条件に対応する第1の複数の3次元散乱線分布を決定すること、
前記第1の複数の3次元散乱線分布の中から、前記術者および/又は被検体の散乱線による被ばくを最小限にする3次元散乱線分布を選択すること、および
前記被ばくを最小限にする3次元散乱線分布に対応する前記X線管の開始角度を特定すること、
を実行し、
前記経路上を回転しているX線管は、前記特定された開始角度に到達した時点で、X線の照射を開始する、請求項3に記載の医用システム。
【請求項11】
前記第1の散乱線分布を特定することは、
前記被ばくを最小限にする3次元散乱線分布の中から、前記第1の散乱線分布を特定することを含む、請求項10に記載の医用システム。
【請求項12】
前記第1の複数の3次元散乱線分布を決定することは、
前記複数のスキャン条件の中に、前記被検体のスキャン条件に一致する第2のスキャン条件が含まれている場合、前記複数のスキャン条件の中から、前記第2のスキャン条件を選択すること、および
前記n個の3次元散乱線分布の中から、前記第2のスキャン条件に対応する複数の3次元散乱線分布を選択することを含む、請求項10に記載の医用システム。
【請求項13】
前記第1の複数の3次元散乱線分布を決定することは、
前記複数のスキャン条件の中に、前記被検体のスキャン条件に一致する第2のスキャン条件が含まれていない場合、前記複数のスキャン条件の中から1つのスキャン条件を選択すること、
前記n個の3次元散乱線分布の中から、前記選択された1つのスキャン条件に対応する複数の3次元散乱線分布を選択すること、および
前記選択された1つのスキャン条件に含まれる各項目の設定値と前記被検体のスキャン条件に含まれる各項目の設定値との間の差に基づいて、前記選択された複数の3次元散乱線分布を補正すること
を含む、請求項10に記載の医用システム。
【請求項14】
前記術者の立ち位置を表す位置信号を入力するインターフェースであって、前記位置信号は、前記テーブルを前記ガントリ側から見たときに、前記術者が前記テーブルに対して右側に立っているか左側に立っているかを表す信号である、ユーザインターフェースを含み、
前記1つ以上のプロセッサは、
前記位置信号に基づいて、前記n個の3次元散乱線分布の中から3次元散乱線分布を選択することを実行する、請求項1に記載の医用システム。
【請求項15】
前記1つ以上のプロセッサは、
前記被検体を繰り返しスキャンすることにより前記前記術者又は被検体に累積した被ばくを表す累積散乱線分布を表示する、請求項1に記載の医用システム。
【請求項16】
前記被検体に対して実行されるスキャンは、
ハーフスキャン、又は
前記X線管が1回転する間に前記X線管から照射されるX線の線量を第1の線量から第2の線量に低下させるフルスキャンである、請求項2に記載の医用システム。
【請求項17】
前記第1の散乱線分布は、散乱線の強度に応じて色の色相、彩度、および/又は明度が異なる散乱線分布である、請求項1に記載の医用システム。
【請求項18】
前記1つ以上のプロセッサは、
投影装置を用いて、散乱線分布又は累積散乱線分布を前記術者に投影すること、又は
表示装置を用いて、前記術者と前記術者の体表面に重ねられた散乱線分布又は累積散乱線分布とを含む画像を表示すること
を実行する、請求項1に記載の医用システム。
【請求項19】
前記1つ以上のプロセッサは、前記スキャンルーム内の光学画像を取得する光学画像取得部と通信可能であり、
前記術者および/又は被検体の位置および形状を特定することは、
前記光学画像に基づいて、前記術者および/又は被検体の位置および形状を特定することを含む、請求項1に記載の医用システム。
【請求項20】
X線管を含むガントリとテーブルとを備える医用システムに備えられている1つ以上のプロセッサによって実行可能な1つ以上の命令が格納された1つ以上の非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体であって、前記1つ以上の命令は、前記1つ以上のプロセッサに、
前記ガントリおよびテーブルが設置されるスキャンルーム内における術者および/又は被検体の位置および形状を特定すること、
前記術者および/又は被検体の位置および形状に基づいて、被検体をスキャンすることにより発生する散乱線の分布を3次元的に表す3次元散乱線分布の中から、前記スキャンルーム内の前記術者および/又は被検体が存在する領域における第1の散乱線分布を特定すること、および
前記第1の散乱線分布を表示すること、
を含む動作を実行させる、記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散乱線分布を表示する医用システム、および当該医用システムを制御するための命令が記録された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の体内の画像を非侵襲的に撮影する医用装置として、CT装置が知られている。CT装置は、撮影部位を短時間で撮影することができるので、病院等の医療施設に普及している。
【0003】
一方、CT装置はX線を用いて患者の検査を行うので、CT装置の普及に伴って、検査時の患者の被ばくに関する関心が高まっている。このため、X線による患者の被ばく線量を極力低減するなどの観点から、患者の被ばく線量を管理することが重要となっている。そこで、線量を管理する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、線量管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、近年、CT画像をガイドとして用いて患者に穿刺を行うCTガイド下穿刺が利用されている。CTガイド下穿刺では、術者は、患者のCT画像を取得しながら穿刺することができるので、患者内のターゲット(腫瘍など)を正確に穿刺することができる。したがって、CTガイド下穿刺は、生検、癌治療などに有効な方法として利用されている。
【0006】
一方、術者は、CTガイド下穿刺中にX線管から照射されるX線により被ばくする。そこで、術者は防護衣を着用したり、必要に応じて遮蔽板を使用し、被ばくを低減することが行われている。また、2021年4月より、放射線診療従事者等の眼の水晶体の被ばく限度が最大で50mSv/年に引き下げられた。このため、防護メガネを着用することの重要性も高まっている。更に、術者の被ばくを低減するために、ニードルガイドを使用することも行われている。
【0007】
しかし、X線管から照射されたX線は、患者体内で散乱を繰り返し、また、CT装置のガントリ内部でも散乱を繰り返し、散乱線として、患者の体外およびCT装置の外部に放出される。ニードルガイドは直接線に対する被ばくには非常に有効であるが、ニードルガイドを使用していても、散乱線による被ばくは無視することができない。したがって、散乱線による被ばくを低減することが重要となる。
【0008】
しかし、散乱線は、直接線とは異なり、様々な方向に進行するという特性があるので、術者は、術者自身の立ち位置における散乱線強度がどの程度であるのか、視覚的に判断することはできない。したがって、術者は、現在の立ち位置と散乱線強度との関係を認識できないので、散乱線の被ばく対策が難しいという問題がある。
【0009】
また、CTガイド下穿刺中は、術者だけでなく、被検体も散乱線による被ばくを受ける。したがって、術者の被ばくだけでなく、被検体の被ばくを低減することも重要となる。しかし、上記のように、散乱線は、直接線とは異なり、様々な方向に進行するという特性があるので、施術を受けている被検体の位置において散乱線強度がどの程度であるのか、視覚的に判断することは難しいという問題もある。
【0010】
そこで、術者および/又は被検体が散乱線による被ばくをどの程度受けているのか視覚的に認識させることが可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、X線管を含むガントリと、テーブルと、1つ以上のプロセッサとを含む医用システムであって、
前記1つ以上のプロセッサは、
前記ガントリおよびテーブルが設置されるスキャンルーム内における術者および/又は被検体の位置および形状を特定すること、
前記術者および/又は被検体の位置および形状に基づいて、被検体をスキャンすることにより発生する散乱線の分布を3次元的に表す3次元散乱線分布の中から、前記スキャンルーム内の前記術者および/又は被検体が存在する領域における第1の散乱線分布を特定すること、および
前記第1の散乱線分布を表示すること、
を含む動作を実行する、医用システムである。
【0012】
また、本発明の第2の観点は、X線管を含むガントリおよびテーブルが設置されるスキャンルーム内における術者および/又は被検体の位置および形状を特定すること、
前記術者および/又は被検体の位置および形状に基づいて、被検体をスキャンすることにより発生する散乱線の分布を3次元的に表す3次元散乱線分布の中から、前記スキャンルーム内の前記術者および/又は被検体が存在する領域における第1の散乱線分布を特定すること、および
前記第1の散乱線分布を表示すること、
を含む、散乱線分布の表示方法である。
【0013】
また、本発明の第3の観点は、X線管を含むガントリとテーブルとを備える医用システムに備えられている1つ以上のプロセッサによって実行可能な1つ以上の命令が格納された1つ以上の非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体であって、前記1つ以上の命令は、前記1つ以上のプロセッサに、
前記ガントリおよびテーブルが設置されるスキャンルーム内における術者および/又は被検体の位置および形状を特定すること、
前記術者および/又は被検体の位置および形状に基づいて、被検体をスキャンすることにより発生する散乱線の分布を3次元的に表す3次元散乱線分布の中から、前記スキャンルーム内の前記術者および/又は被検体が存在する領域における第1の散乱線分布を特定すること、および
前記第1の散乱線分布を表示すること、
を含む動作を実行させる、記録媒体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、3次元散乱線分布の中から、スキャンルーム内の術者および/又は被検体が存在する領域における第1の散乱線分布を特定し、第1の散乱線分布を表示することができる。したがって、術者および/又は被検体が散乱線によってどの程度の被ばくを受けるのかを、術者および/又は被検体に視覚的に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ガントリ102およびテーブル116の斜視図である。
【
図4】3次元散乱線分布の測定時におけるX線管の動作の説明図である。
【
図5】3次元散乱線分布A0を概略的に示す図である。
【
図7】X線管1104の開始角度および終了角度を時計方向に所定の角度αだけずらした場合のハーフスキャンの説明図である。
【
図8】X線管1104が開始角度330°と終了角度210°との間を回転している間にX線を照射する場合のハーフスキャンの説明図である。
【
図9】スキャン条件X1に従ってハーフスキャンを実行した場合の3次元散乱線分布A0~A330を概略的に示す図である。
【
図10】複数のスキャン条件X1~Xmに対して得られた3次元散乱線分布を示す図である。
【
図12】CTガイド下穿刺中の術者101を示す図である。
【
図17】散乱線分布11が投影された術者101の拡大図である。
【
図18】術者101が立ち位置を変更した場合の散乱線分布11の投影位置を示す図である。
【
図19】インターベンションモニタ237に表示されたCT画像31、32、および33を概略的に示す図である。
【
図20】2回目のハーフスキャンを開始するトリガTが発生した時点におけるX線管104の角度を示す図である。
【
図24】散乱線分布12が投影された術者101の拡大図である。
【
図26】CTガイド下穿刺を開始してから終了するまでの間に術者101に累積した散乱線の被ばくを表す累積散乱線分布14を概略的に示す図である。
【
図29】第2の実施形態におけるCTシステムの動作フローを示す図である。
【
図31】術者101の被ばくを最小限にする3次元散乱線分布を選択する方法の説明図である。
【
図33】被ばくを最小限にする3次元散乱線分布A60の散乱線分布403が投影された術者101を示す図である。
【
図34】ステップST222およびST223の説明図である。
【
図35】表示装置を用いて散乱線分布を表示する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるCTシステム100のガントリ102およびテーブル116の斜視図、
図2は、CTシステム100のブロック図である。
【0018】
CTシステム100は、ガントリ102およびテーブル116を含んでいる。ガントリ102およびテーブル116はスキャンルーム122に設置されている。
【0019】
ガントリ102は開口部107を有しており、その開口部107に被検体112が搬送され、被検体112がスキャンされる。
【0020】
ガントリ102には、X線管104、フィルタ部103、前置コリメータ105、およびX線検出器108などが取り付けられている。
【0021】
図3は、ガントリ102の正面図である。
図3には、ガントリ102に設けられているX線管104が示されている。
X線管104は、陰極-陽極管に所定の電圧が印加されることにより、X線を発生させるものである。X線管104は、XY面内において、回転軸205を中心とした円の円周に沿う経路40上を回転することができるように構成されている。ここで、Z方向は体軸方向を表し、Y方向は鉛直方向(テーブル116の高さ方向)を表し、X方向は、Z方向およびY方向に対して垂直の方向を表している。尚、X線管104として、管電圧を切り替えることができるRapid kV switching方式に対応したX線管を備えてもよい。また、第1の実施形態では、CTシステム100は1つのX線管104を備えているが、2つのX線管を備えてもよい。
【0022】
図3では、X線管104の経路40上の位置は、角度で表されている。具体的には、経路40上においてY座標が最大となる位置P0を角度0°と規定し、X線管104の経路40上の位置を、0°~360°の角度で規定する。
図3では、X線管104が角度0°に位置している様子が示されている。尚、回転軸205はアイソセンタに一致するように設定してもよいし、アイソセンタからずれた位置を回転軸1205として設定してもよい。
【0023】
図2に戻って説明を続ける。
フィルタ部103は、例えば、平板フィルタおよび/又はボウタイフィルタを含んでいる。
前置コリメータ105は、不要な領域にX線が照射されないようにX線の照射範囲を絞り込むための部材である。
【0024】
X線検出器108は複数の検出器素子202を含んでいる。複数の検出器素子202は、X線管104から照射され、患者などの被検体112を通過するX線106を検出する。したがって、X線検出器108は、ビューごとに投影データを取得することができる。
【0025】
X線検出器108により検出された投影データは、DAS214で収集される。DAS214は、収集した投影データに対して、サンプリング、デジタル変換などを含む所定の処理を実行する。処理された投影データは、コンピュータ216に送信される。コンピュータ216は、DAS214からのデータを記憶装置218に記憶する。記憶装置218は、プログラムや、プロセッサで実行される命令などを記録する1つ以上の記録媒体を含むものである。記録媒体は、例えば、1つ以上の非一時的でコンピュータ読取可能な記録媒体とすることができる。記憶装置218は、例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、コンパクトディスク読み出し/書き込み(CD-R/W)ドライブ、デジタル多用途ディスク(DVD)ドライブ、フラッシュドライブ、および/またはソリッドステート記録ドライブを含むことができる。
【0026】
コンピュータ216は1つ以上のプロセッサを含んでいる。コンピュータ216のプロセッサは、記憶装置218(および/又は外部記憶装置)と通信可能に構成されている。コンピュータ216は、1つ以上のプロセッサを使用して、DAS214、X線コントローラ210、および/又はガントリモータコントローラ212に、コマンドおよびパラメータを出力し、データ取得および/または処理などのシステム動作を制御する。また、コンピュータ216は、1つ以上のプロセッサを使用して、後述するフロー(
図11、
図14、
図28、および
図30参照)の各ステップにおいて、信号処理、データ処理、画像処理など、様々な処理を実行する。
【0027】
コンピュータ216には、オペレータコンソール220が結合されている。オペレータは、オペレータコンソール220を操作することにより、CTシステム100の動作に関連する所定のオペレータ入力をコンピュータ216に入力することができる。コンピュータ216は、オペレータコンソール220を介して、コマンドおよび/またはスキャンパラメータを含むオペレータ入力を受信し、そのオペレータ入力に基づいてシステム動作を制御する。オペレータコンソール220は、オペレータがコマンドおよび/またはスキャンパラメータを指定するためのキーボード(図示せず)またはタッチスクリーンを含むことができる。
【0028】
X線コントローラ210は、コンピュータ216からの命令に基づいてX線管104を制御する。また、ガントリモータコントローラ212は、コンピュータ216からの命令に基づいて、X線管104およびX線検出器108などの構成要素が回転するように、ガントリモータを制御する。
【0029】
また、CTシステム100は、フットペダル109(
図1参照)を含んでいる。第1の実施形態では、フットペダル109は、後述するCTガイド下穿刺に必要なCT画像を取得するためのハーフスキャンを実行するために設けられている。ハーフスキャンについては、後述する。
【0030】
図2は、1つのオペレータコンソール220のみを示しているが、2つ以上のオペレータコンソールをコンピュータ216に結合してもよい。
【0031】
CTシステム100は、例えば、有線ネットワークおよび/又は無線ネットワークを介して、遠隔に位置する複数のディスプレイ、プリンタ、ワークステーション、および/もしくは同様のデバイスが結合されるようにしてもよい。
【0032】
一実施形態では、例えば、CTシステム100は、画像保管通信システム(PACS)224を含んでいてもよいし、PACS224に結合されていてもよい。例示的な実施態様では、PACS224は、放射線科情報システム、病院情報システム、および/または内部もしくは外部ネットワーク(図示せず)などの遠隔システムに結合されていてもよい。
【0033】
コンピュータ216は、テーブルモータコントローラ118に、テーブル116を制御するための命令を供給する。テーブルモータコントローラ118は、受け取った命令に基づいて、テーブル116が移動するように、テーブルモータを制御することができる。例えば、テーブルモータコントローラ118は、被検体112が撮影に適した位置に位置決めされるように、テーブル116を移動させることができる。
【0034】
前述のように、DAS214は、検出器素子202によって取得された投影データをサンプリングしてデジタル変換する。その後、画像再構成器230が、サンプリングされデジタル変換されたデータを使用して画像を再構成する。画像再構成器230は1つ以上のプロセッサを含んでおり、このプロセッサが画像再構成の処理を実行することができる。
図2では、画像再構成器230は、コンピュータ216とは別個の構成要素として示されているが、画像再構成器230は、コンピュータ216の一部を形成するものであってもよい。また、コンピュータ216が、画像再構成器230の1つ以上の機能を実施してもよい。更に、画像再構成器230は、CTシステム100から離れた位置に設けられ、有線ネットワークまたは無線ネットワークを使用してCTシステム100に動作可能に接続されるようにしてもよい。
【0035】
画像再構成器230は、再構成された画像を記憶装置218に記憶することができる。また、画像再構成器230は、再構成された画像をコンピュータ216に送信してもよい。コンピュータ216は、再構成された画像および/または患者情報を、コンピュータ216および/または画像再構成器230に通信可能に結合された表示装置232に送信することができる。
【0036】
本明細書で説明される様々な方法およびプロセスは、CTシステム100内の非一時的な記録媒体に実行可能命令として記録することができる。この実行可能命令は、1つの記録媒体に記録されていてもよいし、複数の記録媒体に分散させて記録されるようにしてもよい。CTシステム100に備えられる1つ以上のプロセッサは、記録媒体に記録された命令に従って、本明細書で説明される様々な方法、ステップ、およびプロセスを実行する。
【0037】
また、スキャンルーム122の天井124には、スキャンルーム内の光学画像を取得するための光学画像取得部としてカメラ235が備えられている。コンピュータ216のプロセッサは、カメラ2325と通信することができる。光学画像取得部は、被検体などの被写体を画像化することができるものであれば、任意の機器を光学画像取得部として使用することができる。例えば、可視光を用いて被写体を画像化するカメラ、赤外線を使用して被写体を画像化するカメラ、赤外線を使用して被写体の深度データを取得し、深度データに基づいて被写体の表面を画像化する深度センサを、光学画像取得部として使用することができる。また、光学画像取得部により取得される光学画像は3D画像でもよいし、2D画像でもよい。更に、光学画像取得部は光学画像を静止画として取得してもよいし、動画として取得してもよい。コンピュータ216のプロセッサは、光学画像に基づいて、術者101および/又は被検体112の位置および形状を特定する。
【0038】
更に、スキャンルーム122の天井124には、散乱線分布を投影する投影装置236が備えられている。投影装置236については後述する。
【0039】
CTシステム100は上記のように構成されている。第1の実施形態のCTシステム100はCTガイド下穿刺を実行することができるように構成されている。CTガイド下穿刺では、術者101(
図1参照)は、被検体のCT画像を取得しながら穿刺することができるので、被検体内のターゲット(腫瘍など)を正確に穿刺することができる。したがって、CTガイド下穿刺は、生検、癌治療などに有効な方法として利用されている。
【0040】
一方、術者101は、CTガイド下穿刺中にX線管から照射されるX線により被ばくする。そこで、術者101は防護衣を着用したり、必要に応じて遮蔽板を使用し、被ばくを低減することが行われている。術者101の被ばくを低減するために、ニードルガイドなどが使用されている。
【0041】
しかし、X線管から照射されたX線は、患者体内で散乱を繰り返し、また、CT装置のガントリ内部でも散乱を繰り返し、散乱線として、患者の体外およびCT装置の外部に放出される。ニードルガイドは直接線に対する被ばくには非常に有効であるが、ニードルガイドを使用していても、散乱線による被ばくは無視することができない。したがって、散乱線による被ばくを低減することが重要となる。
【0042】
しかし、散乱線は、直接線とは異なり、様々な方向に進行するという特性があるので、術者101は、術者自身の立ち位置における散乱線強度がどの程度であるのか視覚的に判断することはできない。したがって、術者101は、現在の立ち位置と散乱線強度との関係を認識できないので、散乱線の被ばく対策が難しいという問題がある。
【0043】
そこで、第1の実施形態では、CTシステム100は、術者101が立ち位置において散乱線による被ばくをどの程度受けているのかを、術者101に視覚的に認識させることができるように動作する。以下に、CTシステム100が、術者101に散乱線の被ばくをどのようにして視覚的に認識させているかについて説明する。
【0044】
尚、第1の実施形態では、術者101に散乱線による被ばくを視覚的に認識させるために、被検体112に対してCTガイド下穿刺を行う前に、被検体をスキャンすることにより発生する散乱線の分布を3次元的に表す3次元散乱線分布を測定し、記憶装置218に記憶している。そこで、以下では、先ず、3次元散乱線分布の測定方法について説明し、その後で、CTガイド下穿刺のフローについて説明する。
【0045】
図4~
図10は、3次元散乱線分布の測定方法の説明図である。
本実施形態では、CTシステム100のガントリ102およびテーブル116(
図1参照)と同一構造のガントリ1102およびテーブル1116を使用して3次元散乱線分布を測定する。以下、ガントリ1102およびテーブル1116を使用して3次元散乱線分布を測定する方法について説明する。
【0046】
図4は、3次元散乱線分布の測定時におけるX線管の動作の説明図である。
図4の上側には、ガントリ1102の正面図が示されており、
図4の下側には、ガントリ1102およびテーブル1116の上面図が示されている。
【0047】
ガントリ1102はX線管1104を含んでいる。X線管1104は、XY面内において、回転軸1205を中心とした円の円周に沿う経路140上を回転することができるように構成されている。また、テーブル1116の上部には、散乱線を測定するための線量計300が設置されている。
【0048】
図4では、X線管1104の経路140上の位置は、角度で表されている。具体的には、経路140上においてY座標が最大となる位置を角度0°と規定し、X線管1104の経路140上の位置を、0°~360°の角度で規定する。
図4では、X線管1104が角度0°に位置している様子が示されている。尚、回転軸1205はアイソセンタに一致するように設定してもよいし、アイソセンタからずれた位置を回転軸1205として設定してもよい。
【0049】
第1の実施形態では、ハーフスキャンを実行した場合の3次元散乱線分布を測定することを考えることにする。
【0050】
ハーフスキャンは、X線管1104を180°+ファン角だけ回転させることにより、(180°+ファン角)の回転角度分の投影データを収集するスキャンである。例えば、ファン角が60°の場合、ハーフスキャンは、240°の回転角度分の投影データを収集するスキャンである。
【0051】
ハーフスキャンを実行する場合、先ず、スキャンを開始するときのX線管の角度(以下、「開始角度」と呼ぶ)と、スキャンを終了するときのX線管の角度(以下、「終了角度」と呼ぶ)を決定する。
図4では、X線管1104の開始角度は0°と決定され、X線管1104の終了角度は240°と決定されている。
【0052】
X線管1104の開始角度および終了角度を決定した後、ハーフスキャンにより発生する散乱線を測定する。散乱線を測定する場合、先ず、X線管1104を回転させ、X線管1104が所望の回転速度に到達するまで待つ。X線管1104の回転速度が安定し始めたら、X線管1104が開始角度0°に到達した時点で、X線管1104にX線の照射を開始させる。そして、X線管1104が終了角度240°に到達したら、X線管1104はX線の照射を終了する。したがって、X線管1104がX線を照射しながら開始角度0°と終了角度240°との間の角度範囲R0を回転することにより、ハーフスキャンが実行される。線量計300は、X線管1104が開始角度0°と終了角度240°との間を回転している間に、X線管1104がX線を照射することにより発生する散乱線を測定する。尚、ハーフスキャンは、以下のスキャン条件X1に従って実行される。
【0053】
管電圧:V1(kVp)
ビーム幅:W1(mm)
被検体のサイズ:身長L1(cm)、撮影部位の厚さT1(cm)
テーブルの高さ:H1(cm)
【0054】
第1の実施形態では、スキャン条件X1には、スキャン条件の項目として、管電圧、ビーム幅、被検体のサイズ、およびテーブルの高さが含まれている。そして、各項目の設定値は、管電圧がV1(kVp)、ビーム幅がW1(mm)、身長がL1(cm)、撮影部位の厚さがT1(cm)、テーブルの高さがH1(cm)である。
【0055】
散乱線を測定した後、線量計300を別の位置に設置する。そして、X線管1104が開始角度0°と終了角度240°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線を再度測定する。
【0056】
以下同様に、線量計300を更に別の位置に設置し、X線管1104が開始角度0°と終了角度240°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線の測定を、繰り返し実行する。
【0057】
このようにして、X線管1104が開始角度0°と終了角度240°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線を測定する。そして、この測定により得られた測定データに基づいて、X線管1104が開始角度0°と終了角度240°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線の分布を3次元的に表す3次元散乱線分布を作成する。
【0058】
図5に、X線管1104が開始角度0°と終了角度240°との間を回転している間にX線を照射した場合の3次元散乱線分布A0を概略的に示す。
図5では、説明の便宜上、3次元散乱線分布A0は、単純な立方体の形状で示してある。3次元散乱線分布A0の内部は、散乱線の強度に応じたドットパターンで表示されている。
図5では、ドットパターンは、散乱線強度が高い領域ほど黒に近い色に見えるように表現され、散乱線強度が低い領域ほど白に近い色に見えるように表現されている。
図6は、
図5に示す3次元散乱線分布A0をY軸に対して垂直な面150で切ったときの断面における散乱線分布250を概略的に示す図である。尚、面150内には、ガントリおよびテーブルと散乱線分布250との位置関係を明確にするために、散乱線分布250の他に、ガントリおよびテーブルの輪郭線も示してある。
【0059】
このようにして、X線管1104が開始角度0°と終了角度240°との間を回転している間にX線管1104がX線を照射した場合の3次元散乱線分布A0が取得される。
【0060】
次に、X線管1104の開始角度および終了角度を時計方向に所定の角度αだけずらし、散乱線を測定するためのハーフスキャンが実行される(
図7参照)。
【0061】
図7は、X線管1104の開始角度および終了角度を時計方向に所定の角度αだけずらした場合のハーフスキャンの説明図である。
【0062】
図7では、X線管1104の開始角度および終了角度が、
図4に示す開始角度および終了角度に対して、時計方向に所定の角度αだけずれている。第1の実施形態では、所定の角度αは、α=30°であるとする。したがって、
図7では、X線管1104の開始角度は30°であり、終了角度は270°である。このため、X線管1104は、開始角度30°と終了角度270°との間の角度範囲R30を回転している間にX線を照射する。
【0063】
図7では、X線管1104が開始角度30°に到達した時点で、X線管1104がX線の照射を開始する。そして、X線管1104が終了角度270°に到達したら、X線管1104はX線の照射を終了する。したがって、X線管1104がX線を照射しながら開始角度30°と終了角度270°との間の角度範囲R30を回転することにより、ハーフスキャンが実行される。線量計300は、X線管1104がX線を照射することにより発生する散乱線を測定する。尚、角度範囲R30のハーフスキャンは、角度範囲R0のハーフスキャン(
図4参照)と同じスキャン条件X1で実行される。
【0064】
そして、線量計300を別の位置に設置し、再度、X線管1104が開始角度30°と終了角度270°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線を測定する。
【0065】
以下同様に、線量計300を更に別の位置に設置し、X線管1104が開始角度30°と終了角度270°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線の測定を、繰り返し実行する。
【0066】
このようにして、X線管1104が開始角度30°と終了角度270°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線を測定する。そして、この測定により得られた測定データに基づいて、X線管1104が開始角度30°と終了角度270°との間を回転している間にX線を照射したときの3次元散乱線分布を作成する。
【0067】
以下同様に、X線管1104の開始角度および終了角度を時計方向に所定の角度αづつずらしながら、散乱線を測定する(
図8参照)。
【0068】
図8は、X線管1104が開始角度330°と終了角度210°との間を回転している間にX線を照射する場合のハーフスキャンの説明図である。
【0069】
図8では、X線管1104が開始角度330°に到達した時点で、X線管1104がX線の照射を開始する。そして、X線管1104が角度210°に到達したら、X線管1104はX線の照射を終了する。したがって、X線管1104が開始角度330°と終了角度210°との間の角度範囲R330を回転することにより、ハーフスキャンが実行される。線量計300は、X線管1104がX線を照射することにより発生する散乱線を測定する。角度範囲R330のハーフスキャンは、角度範囲R0のハーフスキャン(
図4参照)と同じスキャン条件X1で実行される。
【0070】
そして、線量計300を別の位置に設置し、再度、X線管1104が開始角度330°と終了角度210°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線を測定する。
【0071】
以下同様に、線量計300を更に別の位置に設置し、X線管1104が開始角度330°と終了角度210°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線の測定を、繰り返し実行する。
【0072】
このようにして、X線管1104が開始角度330°と終了角度210°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線を測定する。そして、この測定により得られた測定データに基づいて、X線管1104が開始角度330°と終了角度210°との間を回転している間にX線を照射することにより発生する散乱線の分布を表す3次元散乱線分布を作成する。
【0073】
したがって、X線管1104の開始角度および終了角度を変更しながら、スキャン条件X1に従ってハーフスキャンを実行した場合の3次元散乱線分布を得ることができる。
図9は、スキャン条件X1に従ってハーフスキャンを実行した場合の3次元散乱線分布A0~A330を概略的に示す図である。
【0074】
図9の左半分には、X線管1104の開始角度が0°、30°、60°、90°、120°、および150°の場合に作成された3次元散乱線分布A0、A30、A60、A90、A120、およびA150の概略図が示されている。
図9の右半分には、X線管1104の開始角度が180°、210°、240°、270°、300°、および330°の場合に作成された3次元散乱線分布A180、A210、A240、A270、A300、およびA330の概略図が示されている。
尚、
図9では、紙面の制約上、3次元散乱線分布の代わりに、3次元散乱線分布をy軸に対して垂直に切った断面内の散乱線分布が示されている。また、この断面内の散乱線分布には、ガントリおよびテーブルの輪郭が示されている。
【0075】
第1の実施形態では、X線管1104の開始角度を0°から時計方向に30°ずらしながら、3次元散乱線分布を作成している。したがって、X線管104の12個の開始角度(0°、30°、60°、90°、120°、150°、180°、210°、240°、270°、300°、および330°)に対応する3次元散乱線分布A0~A330を作成することができる。
【0076】
次に、スキャン条件X1を変更し、他のスキャン条件X2に基づいて、X線管の角度範囲ごとに3次元散乱線分布を求める。スキャン条件X2は、例えば、以下の通りである。
【0077】
管電圧:V1(kVp)
ビーム幅:W1(mm)
被検体のサイズ:身長L1(cm)、撮影部位の厚さT1(cm)
テーブルの高さ:H2(cm)
【0078】
スキャン条件X2は、スキャン条件X1と比較すると、テーブルの高さがH2に設定されている点が異なるが、他の項目はスキャン条件X1と同じである。
【0079】
スキャン条件X2に対しても、スキャン条件X1と同様に、X線管1104の12個の開始角度ごとに3次元散乱線分布を作成する。
【0080】
以下同様に、スキャン条件を変更しながら、X線管1104の開始角度ごとに3次元散乱線分布を作成する。したがって、複数のスキャン条件に対して、3次元散乱線分布を得ることができる。
【0081】
図10は、複数のスキャン条件X1~Xmに対して得られた3次元散乱線分布を示す図である。
図10では、スキャン条件およびX線管の開始角度を変更することによって測定されたn個の3次元散乱線分布A0~C330が示されている。n個の3次元散乱線分布A0~C330は、複数のスキャン条件X1~Xmに対応する散乱線分布データセットDS1~DSmに分けられている。散乱線分布データセットDS1~DSmは、それぞれ、スキャン条件X1~Xmによって得られた散乱線分布のデータセットを表している。各散乱線分布データセットは、開始角度0°~330°に対応する複数の3次元散乱線分布を含んでいる。尚、
図10では、紙面の制約上、3次元散乱線分布を表す分布図は図示省略し、「A0」~「C330」の符号のみが示されている。例えば、スキャン条件X1に対応する散乱線分布データセットDS1では、X線管1104の開始角度が0°~330°の場合に作成された3次元散乱線分布を表す文字「A0」~「A330」が示されている。スキャン条件X2に対応する散乱線分布データセットDS2では、X線管1104の開始角度0°~330°の場合に作成された3次元散乱線分布を表す文字「B0」~「B330」が示されている。また、スキャン条件Xmに対応する散乱線分布データセットDSmでは、X線管1104の開始角度が0°~330°の場合に作成された3次元散乱線分布を表す文字「C0」~「C330」が示されている。
【0082】
これらの3次元散乱線分布A0~C330は、CTシステム100(
図1又は
図2参照)でハーフスキャンを実行した場合の3次元散乱線分布として、記憶装置218、又はCTシステム100がアクセス可能な外部記憶装置に記憶される。各3次元散乱線分布は、スキャン条件とX線管の開始角度に対応付けて記憶される。例えば、3次元散乱線分布A180は、スキャン条件X1とX線管の開始角度180°とに対応付けて記憶される。
【0083】
CTシステム100は、上記のようにして準備された3次元散乱線分布A0~C330を利用して、CTガイド下穿刺中の術者101に、術者101の立ち位置において散乱線強度がどの程度であるかを認識させている。以下に、CTガイド下穿刺中の術者101に散乱線強度を認識させるためのフローについて説明する。
【0084】
図11は、CTガイド下穿刺のフロー図である。
ステップST1では、被検体112の撮影部位のCT画像を取得するための診断スキャンが実行される。コンピュータ216又は画像再構成器230のプロセッサは、診断スキャンにより取得されたデータに基づいて、撮影部位のCT画像を取得する。CT画像を取得した後、ステップST2に進む。
【0085】
ステップST2では、CTガイド下穿刺を行う術者が、CT画像に基づいて、ターゲット(例えば、病変)の位置を確認し、穿刺位置や、針を穿刺する経路などを決定する。穿刺経路などを決定したら、ステップST3に進む。
【0086】
ステップST3では、CTガイド下穿刺を開始する。
図12は、CTシステム100を用いてCTガイド下穿刺を実行する術者101を示す図である。
術者101は、穿刺を行っている間、針301の先端とターゲット(例えば、病変)との位置関係や針301の先端の向きを確認する必要がある。術者101は、この確認作業を行うために、穿刺の途中で、穿刺部位のCT画像を取得する。術者101は、CT画像を取得するためのスキャンの準備を行い、スキャンを実行してもよいことを確認する。スキャンの準備ができたら、術者101は、スキャンを実行してもよいことが確認できたことをCTシステム100に認識させるために、ステップST4において、ハンドコントローラ(図示せず)を操作して、ハンドコントローラのコンファームボタンを押す。
【0087】
コンファームボタンが押されると、ハンドコントローラは、穿刺部位のスキャンを実行してもよいことが確認できたことを表す確認信号を、CTシステム100に出力する。
【0088】
CTシステム100が確認信号を受け取ると、ガントリモータコントローラ212が、コンピュータ216のプロセッサからの命令に従って、X線管104や検出器108を回転させる。
【0089】
ステップST5では、術者101は、1回目のハーフスキャンを開始するために、フットペダル109を踏む。フットペダル109が踏まれると、ステップST6に進む。
【0090】
ステップST6では、1回目のハーフスキャンが実行される。
図13は、1回目のハーフスキャンの説明図である。
図13の上側には、CTシステム100のガントリ102の正面図が示されており、
図13の下側には、ガントリ102およびテーブル116の上面図が示されている。
【0091】
フットペダルが踏まれると、コンピュータ216は、フットペダルが踏まれたことを表す信号をX線コントローラ210(
図2参照)に出力する。X線コントローラ210は、フットペダルが踏まれたことを表す信号を受け取ると、被検体112のハーフスキャンを開始するトリガが発生したと判断し、ハーフスキャンが開始されるように、X線管104を制御する。
【0092】
図13には、1回目のハーフスキャンにおいてX線管104からX線の照射が開始された時点におけるX線管104の位置が示されている。ここでは、X線管104が角度30°に到達したときにX線管104からX線の照射が開始されたとする。
したがって、コンピュータ216のプロセッサは、角度30°を、ハーフスキャンを開始するときのX線管の角度を表す開始角度と決定する。
【0093】
開始角度30°においてX線の照射が開始されると、開始角度30°から180°+ファン角だけ回転するまで、ハーフスキャンが実行される。第1の実施形態では、ファン角は60°であるので、X線管104が開始角度30°から180°+60°=240°回転するまで、ハーフスキャンが実行される。したがって、コンピュータ216のプロセッサは、角度270°を、ハーフスキャンを終了するときのX線管の角度を表す終了角度と決定する。
【0094】
X線管104は終了角度270°に到達した時点で、X線の照射を終了する。このようにして1回目のハーフスキャンが終了する。
【0095】
一方、ステップST4においてコンファームボタンが押されると、コンピュータ216のプロセッサは、ステップST7において、コンファームボタンが押された時点においてカメラ235により得られたカメラ画像(光学画像)に基づいて、スキャンルーム内における術者101の位置および形状を特定する。術者101の位置および形状を特定した後、ステップST8に進む。
【0096】
ステップST8では、コンピュータ216のプロセッサは、記憶装置に記憶されている3次元散乱線分布A0~C330(
図10参照)に基づいて、ステップST6において実行されるハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定する。以下に、ステップST8において3次元散乱線分布を決定する方法について説明する。
【0097】
図14は、ステップST8の説明図である。
ステップST81では、コンピュータ216のプロセッサは、被検体112のスキャン条件Bを確認する。第1の実施形態では、被検体112のスキャン条件Bは、例えば、以下の通りであるとする。
【0098】
管電圧:V1(kVp)
ビーム幅:W1(mm)
被検体のサイズ:身長L1(cm)、撮影部位の厚さT1(cm)
テーブルの高さ:H1(cm)
【0099】
管電圧は、被検体112の撮影に使用されるCTシステムによって決まる値である。ビーム幅およびテーブルの高さは、被検体112の穿刺の準備が完了した時点で決定される値である。被検体112のサイズは、診断スキャン前に被検体の体格を計測することや、病院情報システム(HIS)から患者情報を取得することなどにより求められる値である。したがって、被検体112をハーフスキャンする前に、被検体112のスキャン条件Bの各項目の設定値は決定されているので、プロセッサは、被検体112のスキャン条件Bを確認することができる。スキャン条件Bを確認した後、ステップST82に進む。
【0100】
ステップST82では、コンピュータ216のプロセッサは、ステップST6のハーフスキャン実行時におけるX線管104の開始角度を特定する。第1の実施形態では、プロセッサは、ステップST5においてフットペダルが踏まれたことによりハーフスキャンを開始するトリガTが発生した時点におけるX線管104の角度を、X線管104の開始角度として特定する。ここでは、
図13に示すように、トリガTが発生した時点におけるX線管104の角度は30°である。したがって、プロセッサは、X線管104の開始角度は30°であると特定する。尚、フットペダルを踏むアクションとは別のアクションによりトリガが発生した時点を、X線管の開始角度としてもよい。X線管104の開始角度を特定した後、ステップST83に進む。
【0101】
ステップST83では、コンピュータ216のプロセッサは、スキャン条件X1~Xm(
図10参照)の中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれているか否かを判定する。ここでは、被検体のスキャン条件Bはスキャン条件X1に一致しているとする。したがって、プロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件X1が含まれていると判定する。この場合、プロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中から、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件X1を選択する。
【0102】
ステップST84では、コンピュータ216のプロセッサは、開始角度0°~330°の中に、ステップST82で特定された開始角度に一致する開始角度が含まれているか否かを判定する。ステップST82では、開始角度は30°と特定されている。したがって、開始角度0°~330°の中に、ステップST82で特定された開始角度30°が含まれていると判定する。この場合、プロセッサは、複数の開始角度0°~330°の中から、開始角度30°を選択する。
【0103】
ステップST85では、コンピュータ216のプロセッサは、ステップST83およびST84の判定結果および選択結果に基づいて、ハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定する。この決定は、以下のように実行する。
プロセッサは、n個の3次元散乱線分布A0~C330(
図10参照)の中から、ステップST83で選択されたスキャン条件X1およびステップST84で選択された開始角度30°に対応する3次元散乱線分布を選択する。
図10を参照すると、3次元散乱線分布A30が、スキャン条件X1と開始角度30°に対応付けられている。したがって、コンピュータ216のプロセッサは、3次元散乱線分布A0~C330の中から、スキャン条件X1と開始角度30°に対応する3次元散乱線分布として、3次元散乱線分布A30を選択する。
このようにして選択された3次元散乱線分布A30が、ステップST6において実行されるハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布として決定され、ステップST8のフローを終了する。
【0104】
図11に戻って説明を続ける。
ステップST8において3次元散乱線分布A30を選択した後、ステップST9に進む。
【0105】
図15は、ステップST9の説明図である。
ステップST9では、コンピュータ216のプロセッサは、術者101の位置および形状に基づいて、ステップST8で選択した3次元散乱線分布A30の中から、術者101が存在する領域における散乱線分布11を特定する。
図15では、術者101が存在する領域における散乱線分布11を、楕円形で囲まれた部分で示してある。3次元散乱線分布A30の中から散乱線分布11を特定した後、ステップST10に進む。
【0106】
ステップST10では、3次元散乱線分布A30の中から特定された散乱線分布11の表示を行う。
図16は、ステップST10の説明図である。
コンピュータ216のプロセッサは、投影装置236を用いて、3次元散乱線分布A30の中から特定された散乱線分布11を術者101に投影する。したがって、術者101の体表面に散乱線分布11を表示することができる。
図17は、散乱線分布11が投影された術者101の拡大図である。第1の実施形態では、散乱線分布11は、散乱線の強度に応じたドットパターンで表示されている。
図17では、ドットパターンは、散乱線強度が高い領域ほど黒に近い色に見えるように設定され、散乱線強度が低い領域ほど白に近い色に見えるように設定されている。
【0107】
術者101は、術者自身の体表面に散乱線分布11が投影されているので、穿刺中に、1回目のハーフスキャンで発生する散乱線による被ばくがどの程度であるのかを、視覚的に認識することができる。尚、
図16および
図17では、散乱線分布11は、散乱線の強度に応じたドットパターンで表示されているが、散乱線の強度の違いを表示することができるのであれば、任意の手段を使用することができる。例えば、散乱線の強度に応じて色の色相、彩度、および/又は明度が異なる散乱線分布を表示してもよい。
【0108】
また、術者101は、ハーフスキャンが終了した後、必要に応じて、立ち位置を変更することがある。術者101が立ち位置を変更した場合、プロセッサは、散乱線分布11の投影される位置にズレが生じ無いように、術者101の立ち位置に応じて、散乱線分布11の投影位置を調整する(
図18参照)。
【0109】
図18は、術者101が立ち位置を変更した場合の散乱線分布11の投影位置を示す図である。
プロセッサは、立ち位置を変更した術者101に散乱線分布11を投影する。したがって、ハーフスキャンが終了した後に術者101が立ち位置を変更しても、術者101に対して散乱線分布11を正しい位置に投影することができる。このため、術者101は、穿刺中に立ち位置を変更しても、ハーフスキャンによる術者101の各部位の被ばく量を正しく認識することができる。
ステップST6においてハーフスキャンが実行された後、ステップST11に進む。
【0110】
ステップST11では、画像再構成器230のプロセッサが、ハーフスキャンにより得られたデータに基づいて、穿刺部分のCT画像を再構成する。そして、プロセッサは、インターベンションモニタ237に、再構成されたCT画像を表示させる。
図19は、インターベンションモニタ237に表示されたCT画像31、32、および33を概略的に示す図である。CT画像31、32、および33を表示した後、ステップST12に進む。
【0111】
ステップST12では、術者101は、CT画像31、32、および33を見ながら針301の位置を確認し、針301の先端が所望の位置に到達したか否かを判断する。針301が所望の位置に到達している場合は、ステップST13に進み、組織を採取し、フローを終了する。一方、針301の先端が所望の位置に到達していない場合は、ステップST4に戻る。ここでは、針301の先端はまだ所望の位置に到達していないと判断する。したがって、ステップST4に戻る。
【0112】
ステップST4では、術者101は、進めた針301の先端とターゲットとの位置関係や、針301の先端の向きを確認するために、穿刺の途中で、穿刺部位のCT画像を取得する。術者101は、CT画像を取得するためのスキャンの準備を行い、スキャンを実行してもよいことを確認する。スキャンの準備ができたら、術者101は、スキャンを実行してもよいことが確認できたことをCTシステム100に認識させるために、ハンドコントローラ(図示せず)を操作して、ハンドコントローラのコンファームボタンを押す。
【0113】
コンファームボタンが押されると、ハンドコントローラは、穿刺部位のスキャンを実行してもよいことが確認できたことを表す確認信号を、CTシステム100に出力する。コンファームボタンが押された後、ステップST5に進む。
【0114】
ステップST5では、術者101は、2回目のハーフスキャンを開始するために、フットペダル109を踏む。フットペダル109が踏まれると、ステップST6に進む。
【0115】
ステップST6では、2回目のハーフスキャンが実行される。
図20は、2回目のハーフスキャンの説明図である。
フットペダルが踏まれると、X線コントローラは、ハーフスキャンを開始するトリガTが発生したと判断し、ハーフスキャンが開始されるようにX線管104を制御する。
【0116】
図20には、2回目のハーフスキャンを開始するトリガTが発生した時点におけるX線管104の角度が示されている。ここでは、トリガTが発生した時点においてX線管104が角度160°に到達している。したがって、X線管104が角度160°に到達したときにX線管104からX線の照射が開始される。
【0117】
X線管104は、開始角度160°においてX線の照射を開始すると、開始角度160°から180°+ファン角だけ回転するまで、ハーフスキャンが実行される。第1の実施形態では、ファン角は60°であるので、X線管104が開始角度160°から180°+60°=240°回転するまで、ハーフスキャンが実行される。X線管104は終了角度40°に到達した時点で、X線の照射を終了する。このようにして2回目のハーフスキャンが終了する。
【0118】
一方、ステップST4においてコンファームボタンが押されると、コンピュータ216のプロセッサは、ステップST7において、コンファームボタンが押された時点においてカメラ235が取得したカメラ画像に基づいて、スキャンルーム内における術者101の位置および形状を特定する。術者101の位置および形状を特定した後、ステップST8に進む。
【0119】
ステップST8では、コンピュータ216のプロセッサは、記憶装置に記憶されている3次元散乱線分布A0~C330(
図10参照)に基づいて、ステップST6において実行される2回目のハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定する。以下に、ステップST8において3次元散乱線分布を決定する方法について、
図14のフローを参照しながら説明する。
【0120】
ステップST81では、コンピュータ216のプロセッサは、被検体112のスキャン条件Bを確認する。そして、ステップST82において、コンピュータ216のプロセッサは、2回目のハーフスキャン実行時におけるX線管104の開始角度を特定する。プロセッサは、2回目のハーフスキャンを開始するトリガTが発生した時点におけるX線管104の角度160°(
図20参照)を、X線管104の開始角度として特定する。X線管104の開始角度を特定した後、ステップST83に進む。
【0121】
ステップST83では、コンピュータ216のプロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれているか否かを判定する。上記のように、被検体112のスキャン条件Bはスキャン条件X1に一致している。したがって、プロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中から、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件X1を選択する。
【0122】
ステップST84では、コンピュータ216のプロセッサは、開始角度0°~330°の中に、ステップST82で特定された開始角度に一致する開始角度が含まれているか否かを判定する。ステップST82では、開始角度は160°と特定されている。したがって、開始角度0°~330°の中に、ステップST82で特定された開始角度160°が含まれていないと判定する。この場合、プロセッサは、複数の開始角度0°~330°の中から、開始角度160°に最も近い開始角度150°を選択する。
【0123】
ステップST85では、コンピュータ216のプロセッサは、ステップST83およびST84の判定結果および選択結果に基づいて、2回目のハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定する。この決定は、以下のように実行する。
【0124】
図21は、ステップST85の説明図である。
プロセッサは、n個の3次元散乱線分布A0~C330の中から、ステップST83で選択されたスキャン条件X1およびステップST84で選択された開始角度150°に対応する3次元散乱線分布A150を選択する。しかし、3次元散乱線分布A150に対応する開始角度150°は、ステップST82で特定された開始角度160°とは異なっている。そこで、プロセッサは、開始角度150°と開始角度160°との間の角度差に基づいて、3次元散乱線分布A150を補正する。
図21では、3次元散乱線分布A150を補正することにより得られた3次元散乱線分布が符号「A160」で示されている。
【0125】
尚、
図21では、3次元散乱線分布A150を補正することにより、3次元散乱線分布A160を得ている。しかし、3次元散乱線分布A150とは別の3次元散乱線分布(例えば、3次元散乱線分布A180)を補正することにより、3次元散乱線分布A160を得てもよい。
【0126】
このようにして得られた3次元散乱線分布A160が、ステップST6において実行される2回目のハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布として決定される。3次元散乱線分布A160が得られたら、ステップST8のフローを終了する。
【0127】
図11に戻って説明を続ける。
3次元散乱線分布A160を得た後、ステップST9に進む。
【0128】
図22は、ステップST9の説明図である。
ステップST9では、コンピュータ216のプロセッサは、術者101の位置および形状に基づいて、ステップST8で得られた3次元散乱線分布A160の中から、術者101が存在する領域における散乱線分布12を特定する。
図22では、術者101が存在する領域における散乱線分布12を、楕円形で囲まれた部分で示してある。散乱線分布12を特定した後、ステップST10に進む。
【0129】
ステップST10では、3次元散乱線分布A160の中から特定された散乱線分布12の表示を行う。
図23は、ステップST10の説明図である。
コンピュータ216のプロセッサは、投影装置236を用いて、3次元散乱線分布A160の中から特定された散乱線分布12を術者101に投影する。したがって、術者101の体表面に散乱線分布12を表示することができる。
図24は、散乱線分布12が投影された術者101の拡大図である。術者101は、術者自身の体表面に散乱線分布12が投影されているので、穿刺中に、2回目のハーフスキャンで発生する散乱線による被ばくがどの程度であるのかを、視覚的に認識することができる。
【0130】
尚、
図23および
図24では、2回目のハーフスキャンによる散乱線分布12が示されている。しかし、第1の実施形態では、術者101は、1回目のハーフスキャンを実行した場合、
図17に示す散乱線分布11で表される被ばくを受けている。そこで、1回目のハーフスキャンと2回目のハーフスキャンを実行することにより術者101に累積される被ばくを、術者101に視覚的に認識してもらうために、術者101に累積散乱線分布を投影してもよい(
図25参照)。
【0131】
図25は、累積散乱線分布の説明図である。
累積散乱線分布13は、1回目のハーフスキャンによる散乱線分布11(
図16および
図17参照)に、2回目のハーフスキャンによる散乱線分布12(
図23および
図24参照)が重ねられたものを表している。術者自身に累積散乱線分布13を投影することによって、術者101は、現時点で、散乱線によりどの程度の被ばくが累積されているかを、視覚的に認識することができる。
【0132】
また、2回目のハーフスキャンが終了した後、術者101が立ち位置を変更した場合、プロセッサは、累積散乱線分布13の投影される位置にズレが生じ無いように、術者101の立ち位置に応じて、累積散乱線分布13の投影位置を調整してもよい。術者101の立ち位置に応じて、累積散乱線分布13の投影位置を調整することによって、術者101は、穿刺中に立ち位置を変更しても、術者101の各部位に累積した被ばく量を正しく認識することができる。
ステップST6においてハーフスキャンが実行された後、ステップST11に進む。
【0133】
ステップST11では、画像再構成器230のプロセッサが、ハーフスキャンにより得られたデータに基づいて、穿刺部分のCT画像を再構成する。そして、プロセッサは、インターベンションモニタ237に、再構成されたCT画像を表示させる。
【0134】
ステップST12では、術者101は、インターベンションモニタ237に表示されたCT画像を見ながら針301の位置を確認し、針301の先端が所望の位置に到達したか否かを判断する。針301が所望の位置に到達している場合は、ステップST13に進み、組織を採取し、フローを終了する。一方、針301の先端が所望の位置に到達していない場合は、ステップST4に戻る。ここでは、針301の先端はまだ所望の位置に到達していないと判断する。したがって、ステップST4に戻る。
【0135】
以下同様に、ステップST12において、針301の先端が所望の位置であると判断されるまで、ステップST4~ST12が繰り返し実行される。したがって、ハーフスキャンを実行するたびに、ステップST10において散乱線分布(
図17、
図24参照)又は累積散乱線分布(
図25参照)を術者101に投影することにより、散乱線による被ばくがどの程度であるのかを、術者101に視覚的に認識させることができる。
図26は、CTガイド下穿刺を開始してから終了するまでの間に術者101に累積した散乱線の被ばくを表す累積散乱線分布14を概略的に示す図である。術者101に累積散乱線分布14を投影することによって、術者101は、1回のCTガイド下穿刺を実行することによりどの程度の散乱線が累積するのかを、視覚的に認識することができる。尚、1回のCTガイド下穿刺で術者101の各部位が受けた被ばく量を計算し、術者の各部位の被ばく量の計算値を表示装置に表示するようにしてもよい。
【0136】
ステップST12において、針301の先端が所望の位置であると判断されたら、ステップST13で組織を採取し、フローが終了する。
【0137】
第1の実施形態では、ステップST12において、針301の先端が所望の位置であると判断されるまで、ステップST4~ST12が繰り返し実行される。そして、ハーフスキャンが実行されるたびに、ステップST8において、実行されたハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布が決定される。ステップST8において、3次元散乱線分布が決定された後、ステップST9において、決定された3次元散乱線分布の中から、術者が存在する領域における散乱線分布が特定される。そして、ステップST10において、特定された散乱線分布が表示される。したがって、散乱線により術者101がどの程度の被ばくを受けるのかを術者101に視覚的に認識させることができる。
【0138】
また、第1の実施形態では、ハーフスキャンが実行されるたびに、術者101にどの程度の被ばくが累積されたかを表す累積散乱線分布を、術者101に投影することもできる。したがって、術者101は、今回行った1回のCTガイド下穿刺によって、どの程度の被ばくが累積されたのかを、視覚的に認識することもできる。
【0139】
尚、第1の実施形態では、ステップST8においてハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定する場合、
図14に示すフローに従って3次元散乱線分布が決定されている。そして、第1の実施形態では、
図14に示すフローのステップST83において、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体112のスキャン条件Bに一致しているスキャン条件が含まれていると判定された場合について説明されている。しかし、被検体112のスキャン条件Bの設定値によっては、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体112のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれていないことがある。そこで、以下に、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体112のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれていない場合の
図14のフローについて説明する。
【0140】
ステップST81において、コンピュータ216のプロセッサは、被検体112のスキャン条件Bを確認する。ここでは、被検体112のスキャン条件Bは、以下の通りとする。
【0141】
管電圧:V1(kVp)
ビーム幅:W1(mm)
被検体のサイズ:身長L1(cm)、撮影部位の厚さT1(cm)
テーブルの高さ:H3(cm)
【0142】
そして、ステップST82において、コンピュータ216のプロセッサは、ハーフスキャン実行時におけるX線管104の開始角度を特定する。ここでは、X線管の開始角度は「30°」であるとする。X線管104の開始角度を特定した後、ステップST83に進む。
【0143】
ステップST83では、コンピュータ216のプロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれているか否かを判定する。ここでは、上記のように、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件X1は含まれていないとする。この場合、プロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中から、1つのスキャン条件を選択する。プロセッサは、例えば、スキャン条件X1を選択する。
【0144】
ステップST84では、コンピュータ216のプロセッサは、開始角度0°~330°の中に、ステップST82で特定された開始角度に一致する開始角度が含まれているか否かを判定する。ステップST82では、開始角度は30°と特定されている。したがって、開始角度0°~330°の中に、ステップST82で特定された開始角度30°が含まれている判定する。この場合、プロセッサは、複数の開始角度0°~330°の中から、開始角度30°を選択する。
【0145】
ステップST85では、コンピュータ216のプロセッサは、ステップST83およびST84の判定結果および選択結果に基づいて、2回目のハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定する。この決定は、以下のように実行する。
【0146】
図27は、ステップST85の説明図である。
プロセッサは、n個の3次元散乱線分布A0~C330の中から、ステップST83で選択されたスキャン条件X1およびステップST84で選択された開始角度30°に対応する3次元散乱線分布A30を選択する。しかし、3次元散乱線分布A30に対応するスキャン条件X1は、被検体のスキャン条件Bとは異なっている。そこで、プロセッサは、スキャン条件X1と、被検体のスキャン条件Bとを比較し、これらの2つのスキャン条件の各項目の設定値の差を計算する。スキャン条件X1および被検体112のスキャン条件Bは以下の通りである。
【0147】
(1)スキャン条件X1
管電圧:V1(kVp)
ビーム幅:W1(mm)
被検体のサイズ:身長L1(cm)、撮影部位の厚さT1(cm)
テーブルの高さ:H1(cm)
(2)被検体112のスキャン条件B
管電圧:V1(kVp)
ビーム幅:W1(mm)
被検体のサイズ:身長L1(cm)、撮影部位の厚さT1(cm)
テーブルの高さ:H3(cm)
【0148】
スキャン条件X1と、被検体のスキャン条件Bとを比較すると、管電圧、ビーム幅、および被検体のサイズは同じである。しかし、テーブルの高さが異なっている。そこで、プロセッサは、テーブルの高さの差ΔH(=H
3-H
1)を計算する。そして、プロセッサは、差ΔHに基づいて、3次元散乱線分布A30を補正する。
図27では、3次元散乱線分布A30を補正することにより得られた3次元散乱線分布が符号「ZA30」で示されている。
【0149】
このようにして得られた3次元散乱線分布ZA30が、ハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布として決定され、ステップST8のフローを終了する。したがって、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれていなくても、3次元散乱線分布を補正することにより、被検体のスキャン条件Bに対応する3次元散乱線分布ZA30を得ることができる。尚、上記の説明では、テーブルの高さのみが異なっている例について説明されている。しかし、テーブルの高さの他に、別の項目(例えば、ビーム幅)の設定値が異なっている場合は、テーブルの高さの差ΔHの他に、ビーム幅の差ΔWも計算し、ΔHとΔWとに基づいて、3次元散乱線分布A30を補正すればよい。
【0150】
尚、
図27では、ステップST82で特定した開始角度が「30°」の場合について説明されている。次に、別の例として、ステップST82で特定した開始角度が「160°」の場合について説明する。この場合、
図14のフローは、以下のように説明される。
【0151】
先ず、ステップST81において、コンピュータ216のプロセッサは、被検体112のスキャン条件Bを確認する。そして、ステップST82において、コンピュータ216のプロセッサは、ハーフスキャン実行時におけるX線管104の開始角度を特定する。ここでは、X線管の開始角度は「160°」であるとする。X線管104の開始角度を特定した後、ステップST83に進む。
【0152】
ステップST83では、コンピュータ216のプロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれているか否かを判定する。ここでは、上記のように、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件X1は含まれていないとする。この場合、プロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中から、1つのスキャン条件を選択する。プロセッサは、例えば、スキャン条件X1を選択する。
【0153】
ステップST84では、コンピュータ216のプロセッサは、開始角度0°~330°の中に、ステップST82で特定された開始角度に一致する開始角度が含まれているか否かを判定する。ステップST82では、開始角度は160°と特定されている。したがって、開始角度0°~330°の中に、ステップST82で特定された開始角度160°が含まれていないと判定する。この場合、プロセッサは、複数の開始角度0°~330°の中から、開始角度160°に最も近い開始角度150°を選択する。
【0154】
ステップST85では、コンピュータ216のプロセッサは、ステップST83およびST84の判定結果および選択結果に基づいて、2回目のハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布を決定する。この決定は、以下のように実行する。
図28は、ステップST85の説明図である。
プロセッサは、n個の3次元散乱線分布A0~C330の中から、ステップST83で選択されたスキャン条件X1およびステップST84で選択された開始角度150°に対応する3次元散乱線分布A150を選択する。しかし、3次元散乱線分布A150に対応するスキャン条件X1は、被検体のスキャン条件Bとは異なっている。そこで、プロセッサは、スキャン条件X1と、被検体のスキャン条件Bとを比較し、これらの2つのスキャン条件の各項目の設定値の差を計算する。
図27を参照しながら説明したように、スキャン条件X1と、被検体のスキャン条件Bとを比較すると、テーブルの高さが異なっている。そこで、プロセッサは、テーブルの高さの差ΔH(=H
3-H
1)を計算する。そして、プロセッサは、差ΔHに基づいて、3次元散乱線分布A150を補正する。
図28では、3次元散乱線分布A150を補正することにより得られた3次元散乱線分布が符号「ZA150」で示されている。
また、3次元散乱線分布A150に対応する開始角度150°は、ステップST82で特定された開始角度160°とは異なっている。そこで、プロセッサは、開始角度150°と開始角度160°との間の角度差に基づいて、3次元散乱線分布ZA150を補正する。
図28では、3次元散乱線分布ZA150を補正することにより得られた3次元散乱線分布が符号「ZA160」で示されている。
【0155】
このようにして得られた3次元散乱線分布ZA160が、ハーフスキャンに対応する3次元散乱線分布として決定され、ステップST8のフローを終了する。したがって、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれていなくても、被検体のスキャン条件Bに対応する3次元散乱線分布ZA160を得ることができる。
【0156】
尚、
図27および
図28では、スキャン条件X1が選択される例が示されている。しかし、スキャン条件X1とは別のスキャン条件(例えば、スキャン条件Xm)を選択してもよい。更に、各スキャン条件(X1~Xm)と被検体112のスキャン条件Bとの類似度を評価し、スキャン条件X1~Xmの中から、被検体112のスキャン条件Bに最も類似するスキャン条件を選択してもよい。類似度に基づいてスキャン条件を選択することにより、信頼性の高い3次元散乱線分布を得ることが可能となる。
【0157】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、フットペダルが踏まれた時点でハーフスキャンが実行される例について説明した。第2の実施形態では、散乱線による術者の被ばくが最小限に抑えられるようにハーフスキャンが実行される例について説明する。
【0158】
図29は、第2の実施形態におけるCTシステムの動作フローを示す図である。
ステップST1~ST4は、第1の実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0159】
ステップST4において、術者101がコンファームボタンを押すと、穿刺部位のスキャンを実行してもよいことが確認できたことを表す確認信号が、CTシステム100に出力される。
【0160】
CTシステム100が確認信号を受け取ると、ガントリモータコントローラ212が、コンピュータ216のプロセッサからの命令に従って、X線管104や検出器108を回転させる。コンファームボタンが押されると、ステップST20に進む。
【0161】
ステップST20では、コンピュータ216のプロセッサは、ハーフスキャンの実行を開始するときのX線管の角度(開始角度)を決定する。以下に、X線管の開始角度の決定方法について説明する。
【0162】
ステップST21では、コンピュータ216のプロセッサは、コンファームボタンが押された時点においてカメラ235が取得したカメラ画像に基づいて、スキャンルーム内における術者101の位置および形状を特定する。術者101の位置および形状を特定した後、ステップST22に進む。
【0163】
ステップST22では、コンピュータ216のプロセッサは、被検体112のスキャン条件に対応する複数の3次元散乱線分布を決定する。以下に、この決定方法について、
図30を参照しながら説明する。
【0164】
図30は、ステップST22のフロー図である。
ステップST221では、コンピュータ216のプロセッサは、被検体112のスキャン条件Bを確認する。第1の実施形態では、被検体112のスキャン条件Bは、例えば、以下の通りであるとする。
【0165】
管電圧:V1(kVp)
ビーム幅:W1(mm)
被検体のサイズ:身長L1(cm)、撮影部位の厚さT1(cm)
テーブルの高さ:H1(cm)
【0166】
被検体112のスキャン条件を確認した後、ステップST222に進む。
ステップST222では、コンピュータ216のプロセッサは、スキャン条件X1~Xm(
図10参照)の中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれているか否かを判定する。ここでは、被検体のスキャン条件Bはスキャン条件X1に一致しているとする。したがって、プロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件X1が含まれていると判定する。この場合、プロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中から、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件X1を選択する。
【0167】
ステップST223では、コンピュータ216のプロセッサは、n個の3次元散乱線分布A0~C330(
図10参照)の中から、スキャン条件X1に対応する3次元散乱線分布A0~A330(散乱線分布データセットDS1)を選択する。
このようにして選択された3次元散乱線分布A0~A330を、被検体112のスキャン条件Bに対応する複数の3次元散乱線分布として決定することができる。3次元散乱線分布A0~A330を選択したら、
図30に示すフローを終了する。そして、ステップST23(
図29参照)に進む。
【0168】
ステップST23では、コンピュータ216のプロセッサは、ステップST22で選択した3次元散乱線分布A0~A330の中から、散乱線による術者101の被ばくを最小限にする3次元散乱線分布を選択する。
【0169】
図31は、ステップST23において術者101の被ばくを最小限にする3次元散乱線分布を選択する方法の説明図である。
先ず、プロセッサは、3次元散乱線分布ごとに、術者101が存在する領域における散乱線分布を特定する。
図31には、3次元散乱線分布A0~A330に対して、それぞれ、術者101が存在する領域における散乱線分布401~412が特定されている様子が示されている。プロセッサは、3次元散乱線分布A0~A330に対して特定された散乱線分布401~412を互いに比較し、3次元散乱線分布A0~A330の中から、散乱線による術者101の被ばくを最小限にする3次元散乱線分布を選択する。ここでは、3次元散乱線分布A60が、術者101の被ばくを最小限にする3次元散乱線分布であるとする。したがって、プロセッサは、3次元散乱線分布A0~A330の中から、3次元散乱線分布A60を、術者101の被ばくを最小限にする3次元散乱線分布として選択する。3次元散乱線分布A60を選択した後、ステップST24に進む。
【0170】
ステップST24では、コンピュータ216のプロセッサは、ステップST23において選択された3次元散乱線分布A60に対応するX線管104の開始角度を特定する。3次元散乱線分布A60は開始角度60°に対応しているので、プロセッサは、3次元散乱線分布A60に対応するX線管104の開始角度は60°であると特定する。
【0171】
このようにして、X線管104の開始角度(60°)を決定することができる。X線管104の開始角度を決定したら、ステップST30に進む。
【0172】
ステップST30では、コンピュータのプロセッサは、フットペダルが踏まれたか否かを判定する。フットペダルが踏まれたと判定されたら、ステップST31に進む。
ステップST31では、1回目のハーフスキャンが実行される。
【0173】
図32は、1回目のハーフスキャンの説明図である。
ステップST30においてフットペダルが踏まれたと判定されると、コンピュータ216のプロセッサは、経路40上を回転しているX線管104が、ステップST20において決定された開始角度(60°)に到達したか否かを判定する。そして、X線管104が角度60°に到達した時点で、X線管104がX線の照射を開始する。
【0174】
X線の照射が開始されると、X線管104が開始角度60°から180°+60°=240°だけ回転するまで、ハーフスキャンが実行される。そして、X線管104が角度300°に到達したら、X線管104はX線の照射を終了する。このようにしてハーフスキャンが終了する。
【0175】
一方、ステップST23において、被ばくを最小限にする3次元散乱線分布A60が選択されると、ステップST25が実行される。ステップST25では、コンピュータ216のプロセッサは、
図33に示すように、投影装置236を用いて、被ばくを最小限にする3次元散乱線分布A60の散乱線分布403(
図31参照)を、術者101に投影する。したがって、術者101は、穿刺中に、散乱線による被ばくがどの程度であるのかを視覚的に認識することができる。
【0176】
また、ステップST31において、ハーフスキャンが実行されると、ステップST32に進む。
ステップST32では、コンピュータ216のプロセッサが、ハーフスキャンにより得られたデータに基づいて、穿刺部分のCT画像を再構成する。そして、プロセッサは、インターベンションモニタ237に、再構成されたCT画像を表示させる。
【0177】
ステップST33では、術者101は、インターベンションモニタ237に表示されたCT画像を見ながら針301の位置を確認し、針301の先端が所望の位置に到達したか否かを判断する。針301が所望の位置に到達している場合は、ステップST34に進み、組織を採取し、フローを終了する。一方、針301の先端が所望の位置に到達していない場合は、ステップST4に戻る。ここでは、針301の先端はまだ所望の位置に到達していないと判断する。したがって、ステップST4に戻る。
【0178】
以下同様に、ステップST33において、針301の先端が所望の位置であると判断されるまで、ステップST4~ST33が繰り返し実行される。したがって、ハーフスキャンを実行するたびに、ステップST25において散乱線分布(
図33参照)又は累積散乱線分布(
図25参照)を術者101に投影する。このため、術者101は、散乱線による被ばくがどの程度であるのかを、視覚的に認識することができる。そして、ステップST33において、針の先端が所望の位置であると判断されたら、ステップST34で組織を採取し、フローが終了する。
【0179】
第2の実施形態では、X線管104が術者101の被ばくを最小限にする角度に到達した時点で、ハーフスキャンが開始される。したがって、散乱線により術者が受ける被ばくを最小限にすることができる。
【0180】
尚、術者101が、タッチパネルなどのユーザインターフェースを使用して、術者の立ち位置を表す位置信号を入力し、この位置信号に基づいて、複数の3次元散乱線分布A0~A330の中から、3次元散乱線分布を選択してもよい。術者101の立ち位置を表す位置信号としては、例えば、テーブル116をガントリ102側から見たときに、術者101がテーブル116に対して右側に立っているか左側に立っているかを表す信号とすることができる。
【0181】
尚、第2の実施形態では、ステップST222(
図30参照)において、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体112のスキャン条件Bに一致しているスキャン条件が含まれていると判定された場合について説明されている。しかし、被検体112のスキャン条件Bの設定値によっては、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体112のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれていないことがある。そこで、以下に、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体112のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれていない場合の
図30のフローについて説明する。
【0182】
ステップST221において、コンピュータ216のプロセッサは、被検体112のスキャン条件Bを確認する。スキャン条件Bを確認した後、ステップST222に進む。
図34は、ステップST222およびST223の説明図である。
ステップST222では、コンピュータ216のプロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれているか否かを判定する。ここでは、上記のように、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件X1は含まれていないとする。この場合、プロセッサは、スキャン条件X1~Xmの中から、1つのスキャン条件を選択する。
図34では、スキャン条件X1~Xmの中から、スキャン条件X1が選択された例が示されている。スキャン条件X1を選択した後、n個の3次元散乱線分布A0~C330(
図10参照)の中から、選択されたスキャン条件X1に対応する3次元散乱線分布A0~A330を選択する。そして、ステップST223において、選択されたスキャン条件X1の設定値と被検体112のスキャン条件Bの設定値との差に基づいて、スキャン条件X1に対応する3次元散乱線分布A0~A330を補正する。これによって、被検体112のスキャン条件Bに対応する3次元散乱線分布ZA0~ZA300を決定することができる。例えば、被検体のスキャン条件Bのテーブルの高さがH
3であり、スキャン条件X1のテーブルの高さがH
1の場合、テーブルの高さの差ΔH(=H
3-H
1)に基づいて、スキャン条件X1に対応する3次元散乱線分布A0~A330を補正することにより、被検体112のスキャン条件Bに対応する3次元散乱線分布ZA0~ZA300を得ることができる。また、テーブルの高さの他に、別の項目(例えば、ビーム幅)が異なっている場合は、テーブルの高さの差ΔHの他に、ビーム幅の差ΔWも計算し、ΔHとΔWとに基づいて、スキャン条件X1に対応する3次元散乱線分布A0~A330を補正することにより、3次元散乱線分布ZA0~ZA300を得ることができる。したがって、スキャン条件X1~Xmの中に、被検体のスキャン条件Bに一致するスキャン条件が含まれていなくても、被検体のスキャン条件Bに対応する3次元散乱線分布ZA0~ZA300を得ることができる。
【0183】
尚、第1および第2の実施形態では、投影装置を用いて散乱線分布を術者に投影することにより、散乱線分布を表示する例が示されている。しかし、本発明は、散乱線分布を表示することができるのであれば、投影装置を用いる例に限定されることはない。プロセッサは、例えば、表示装置を用いて、散乱線分布を表示してもよい(
図35参照)。
【0184】
図35は、表示装置を用いて散乱線分布を表示する例を示す図である。
図35では、表示装置の一例として、インターベンションモニタ237が示されている。
インターベンションモニタ237には、画像61が表示されている。
図35の上側に、画像61の拡大図が示されている。画像61は、術者101と術者101の体表面に重ねられた散乱線分布又は累積散乱線分布17とを含む画像である。術者101は、画像61を見ることにより、ハーフスキャンを1回実行した場合、散乱線による被ばくがどの程度であるのか、又はハーフスキャンが繰り返し実行された場合、散乱線による被ばくがどの程度累積しているのかを、視覚的に認識することができる。
【0185】
尚、第1および第2の実施形態ではハーフスキャンを実行する例について説明されているが、本発明は、フルスキャンを実行する場合にも適用することができる。例えば、ODM(Organ Dose Modulation)のように、X線管が1回転する間に、X線管から照射されるX線の線量を第1の線量から第2の線量に低下させるフルスキャンを実行する場合、フルスキャンを開始するときのX線管の開始角度に応じて3次元散乱線分布が変化する。したがって、被検体をフルスキャンする場合であっても、被検体のX線管の開始角度ごとに3次元散乱線分布を用意しておくことにより、3次元散乱線分布の中から、術者が存在する領域における散乱線分布を特定し、特定した散乱線分布を術者101に投影することができる。このため、術者101に被ばくの程度を視覚的に認識させることができる。
【0186】
また、本発明は、X線の線量を変調しない通常のフルスキャンにも適用することができる。通常のフルスキャンの場合、X線の線量が変調されずにX線管が1回転するので、X線管の開始角度を変更しても3次元散乱線分布は同じである。したがって、記憶装置に、スキャン条件X1~Xmの各々に対して1つの3次元散乱線分布を記憶しておくことによって、スキャンに対応した散乱線分布又は累積散乱線分布を、術者に投影する又は表示装置に表示することができる。
【0187】
第1および第2の実施形態では、散乱線分布又は蓄積散乱線分布を術者に投影する場合について説明されている。しかし、スキャンにより被検体112が受ける散乱線分布を特定し、特定した散乱線分布を被検体112に投影する、又は累積散乱線分布を被検体112に投影してもよい。被検体112に散乱線分布又は累積散乱線分布を投影することにより、被検体自身だけでなく、術者101も、被検体112が散乱線により受ける被ばくを認識することができるので、被検体112が受ける被ばくができるだけ低くなるように、術者101に意識付けすることができる。また、被検体の散乱線分布又は累積散乱線分布を表示装置に表示してもよい。
【0188】
尚、第1および第2の実施形態では、医用システムとしてCTシステムを使用した例が示されている。しかし、本発明は、CTシステムに限定されることはなく、X線源を被検体に照射する医用システムであれば、CTシステム以外の他のシステム(例えば、IVR-CTシステム)にも適用することができる。
【符号の説明】
【0189】
11、12、250、401~412 散乱線分布
13、14 累積散乱線分布
17 散乱線分布又は累積散乱線分布
31、32、33 CT画像
40、140 経路
61 画像
100 CTシステム
101 術者
102、1102 ガントリ
103 フィルタ部
104、1104 X線管
105 前置コリメータ
106 X線
107 開口部
108 X線検出器
109 フットペダル
112 被検体
116、1116 テーブル
118 テーブルモータコントローラ
122 スキャンルーム
124 天井
150 面
202 検出器素子
205、1205 回転軸
210 X線コントローラ
212 ガントリモータコントローラ
214 DAS
216 コンピュータ
218 記憶装置
220 オペレータコンソール
224 PACS
230 画像再構成器
232 表示装置
235 カメラ
236 投影装置
237 インターベンションモニタ
300 線量計
301 針