(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081548
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】果肉除去装置
(51)【国際特許分類】
D01B 1/10 20060101AFI20240611BHJP
D01B 1/20 20060101ALI20240611BHJP
D01B 1/24 20060101ALI20240611BHJP
D01B 1/28 20060101ALI20240611BHJP
D01B 1/38 20060101ALI20240611BHJP
D01C 1/00 20060101ALI20240611BHJP
D01G 1/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
D01B1/10
D01B1/20
D01B1/24
D01B1/28
D01B1/38
D01C1/00 B
D01G1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195252
(22)【出願日】2022-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】517335318
【氏名又は名称】株式会社フードリボン
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】坂元 直孝
【テーマコード(参考)】
3B151
【Fターム(参考)】
3B151AA02
3B151AC13
3B151CA01
(57)【要約】
【課題】植物から長繊維を抽出する際に、簡単に表皮を削り取って果肉を除去し、長繊維のみを抽出できるようにした果肉除去装置を提供する。
【解決手段】長繊維を有するパイナップルの葉7を挟み込んで下流側に送り出す一対のローラー21で構成された送り出し部2と、当該送り出し部2の下流側に設けられ、前記ローラー21よりも高速で回転し、外周部分に複数の羽根を有する回転部材31を備えた表皮切削部3と、当該表皮切削部3で表皮の削ぎ落とされたパイナップルの葉7に高圧ジェット水を当てて果肉を除去する果肉除去部5と、を備えて果肉除去装置1を構成する。そして、送り出し部2でパイナップルの葉7の一端側を挟持させた状態で、高速回転する回転部材31の羽根32で、表皮を削り落としていく。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維を有する植物を挟み込んで下流側に送り出す一対のローラーで構成された送り出し部と、
当該送り出し部の下流側に設けられ、前記ローラーよりも高速で回転し、前記植物の表皮を切削する回転部材で構成された表皮切削部と、
当該表皮切削部で表皮の削ぎ落とされた植物に高圧ジェット水を当てて果肉を除去する果肉除去部と、
を備えたことを特徴とする果肉除去装置。
【請求項2】
前記回転部材を、複数の羽根を設けて構成し、
当該回転部材を一対に設け、
当該一対の回転部材の羽根をオーバーラップさせて回転させるようにした請求項1に記載の果肉除去装置。
【請求項3】
前記回転部材を、先端部分に回転方向に沿って屈曲する複数の羽根を設けて構成し、
当該回転部材を一対に設け、
当該一対の回転部材の羽根をオーバーラップさせて回転させるようにした請求項1に記載の果肉除去装置。
【請求項4】
前記送り出し部と表皮切削部との間に、前記植物を当接させるカーテン部を設けるようにした請求項1に記載の果肉除去装置。
【請求項5】
前記送り出し部の上流側に、短手方向にカールした植物を扁平状にするガイド部を設けた請求項1に記載の果肉除去装置。
【請求項6】
前記表皮切削部と前記果肉除去部との間に、仕切部を設け、前記表皮切削部で削ぎ落とされた表皮を回収する第一回収部を設けるようにした請求項1に記載の果肉除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、パイナップルの葉、芭蕉、バナナの仮茎などから果肉を除去して、長繊維を抽出できるようにした果肉除去装置に関するものであり、より詳しくは、植物の葉から表皮を除去し、その後、簡単に果肉を除去できるようにした果肉除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、パイナップルの葉や、芭蕉、バナナの仮茎などから50cm以上の長い葉脈長繊維(以下「長繊維」と称する)を抽出する場合、次のような方法が用いられている。
【0003】
例えば、下記の非特許文献1には、葉や仮茎を平らな板の上に載置し、石や鉄でできたスクレーパを用いて果肉を削ぎ落して長繊維を抽出する方法が提案されており、また、下記の特許文献1には、バナナ長繊維を手で剥ぎ取る方法が提案されている。
【0004】
また、下記の非特許文献2には、パイナップルの果肉を回転ローラーで擦り取って長繊維を抽出する方法が提案されており、非特許文献3には、長繊維束をさらに爪で一本一本引き裂いて長繊維を抽出する方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらのいずれの方法においても、葉や仮茎の長繊維から完全に果肉を除去することができなかった。
【0006】
これに対して、下記の非特許文献4には、平板上に植物を載置し、その上から高圧ジェット水を当てて果肉を除去する方法が提案されている。この方法を用いれば、上記方法に比べて、効果的に果肉を除去することができるようになる。
【0007】
しかしながら、この方法を用いて果肉を除去する場合においても、パイナップルの葉などの表皮が硬いため、高圧ジェット水の水圧を高くしなければ、なかなか表皮を破って果肉を除去していくことができない。一方、高圧ジェット水の水圧を高くし過ぎると、表皮を破ることができるが、繊維が切れたり、繊維同士が絡んだりする問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Global Sci. Journals, Vol.7, Issue 1 (2019) pp.317-326
【非特許文献2】Int. J. of Polymer Science, Vol.2012 (doi.org/10.1155 /2015/950567)
【非特許文献3】http://okinoerabu-bashofu.jp/process.html(令和4年5月2日確認)
【非特許文献4】J. of Eng. Fibers and Fabrics, Vol.15, (2020) pp.1-7 (doi: 101177/1558925050940109)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、植物から長繊維を抽出する際に、簡単に表皮を削り取って果肉を除去し、長繊維のみを抽出できるようにした果肉除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明の果肉除去装置は、上記課題を解決するために、長繊維を有する植物を挟み込んで下流側に送り出す一対のローラーで構成された送り出し部と、当該送り出し部の下流側に設けられ、前記ローラーよりも高速で回転して前記植物の表皮を切削する回転部材で構成された表皮切削部と、当該表皮切削部で表皮の削ぎ落とされた植物に高圧ジェット水を当てて果肉を除去する果肉除去部と、を備えるようにしたものである。
【0012】
このように構成すれば、送り出し部のローラーで植物の一端側を挟持させた状態で、高速回転する回転部材を表皮に当てて表皮を削り落としていくことができるため、高圧ジェット水の水圧を高くしなくても、容易に果肉を除去していくことができるようになる。
【0013】
また、このような発明において、前記回転部材を、複数の羽根を設けて構成し、当該回転部材を一対設け、当該一対の回転部材の羽根をオーバーラップさせて回転させる。
【0014】
このように構成すれば、オーバーラップする羽根によって植物を交互に屈曲させることができるため、その屈曲によって表皮に亀裂を生じさせることができ、その状態から、表皮を簡単に削り落としていくことができるようになる。また、オーバーラップした羽根を植物の葉に押し当てるようにしているため、植物の葉の厚みに依存することなく、表皮を削り落としていくことができるようになる。
【0015】
さらに、前記羽根の先端部分に、羽根の回転方向の進行方向に沿って屈曲する屈曲部を設けるようにする。
【0016】
このように構成すれば、表皮に対して屈曲部を鋭角に当てることができ、より効率よく表皮を削り落としていくことができるようになる。
【0017】
また、前記送り出し部と表皮切削部との間に、前記植物を当接させるカーテン部を設けるようにする。
【0018】
このように構成すれば、植物を挟持する送り出し部から植物が抜けて、高速回転する回転部材から飛び抜けた場合であっても、カーテン部にその植物を当てることができるため、植物の後端側が果肉除去部を飛び越してしまうようなことがなくなる。
【0019】
また、前記送り出し部の上流側に、短手方向にカールした植物を扁平状にするガイド部を設けるようにする。
【0020】
このように構成すれば、植物の葉の根本付近から送り出し部に挿入させていく場合であっても、ガイド部によって、根本付近のカール状の部分を扁平状にして、送り出し部のローラーの間に挟み込ませることができるようになる。
【0021】
また、前記表皮切削部と前記果肉除去部との間に、仕切部を設け、前記表皮切削部で削ぎ落とされた表皮を回収する第一回収部を設けるようにする。
【0022】
このように構成すれば、削ぎ落とされた表皮や、高圧ジェット水によって除去された果肉を分離して回収することができるため、それぞれの部位の材料を有効活用することができるようになる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、長繊維を有する植物を挟み込んで下流側に送り出す一対のローラーで構成された送り出し部と、当該送り出し部の下流側に設けられ、前記ローラーよりも高速で回転し、前記植物の表皮を切削する回転部材で構成された表皮切削部と、当該表皮切削部で表皮の削ぎ落とされた植物に高圧ジェット水を当てて果肉を除去する果肉除去部と、を備えるようにしたので、送り出し部のローラーで植物の一端側を挟持させた状態で、高速回転する回転部材を表皮に当てて表皮を削り落としていくことができ、高圧ジェット水の水圧を高くしなくても、容易に果肉を除去していくことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施の形態による果肉除去装置の概観斜視図
【
図2】同形態における送り込み部とガイド部を示す図
【
図4】同形態におけるパイナップルの葉の亀裂を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
この実施の形態における果肉除去装置1は、表皮や果肉で覆われた長繊維を有する植物の葉や仮茎などから表皮や果肉を除去し、長繊維のみを抽出できるようにしたものであって、
図1に示すように、植物の葉を送り出す送り出し部2と、この送り出し部2の下流側に設けられ、植物の葉から表皮を削り落とす表皮切削部3と、この表皮切削部3で表皮の削ぎ落とされた植物の葉から果肉を除去していく果肉除去部5などを備えるようにしたものである。そして、送り出し部2によって植物の葉の一端側を挟持させた状態で、高速回転する表皮切削部3の回転部材31によって表皮を削り落とし、その後、高圧ジェット水によって果肉を除去して長繊維のみを抽出できるようにしたものである。以下、本実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
まず、この実施の形態において使用される長繊維を有する植物としては、複数本の長繊維の間に、水分を多く含んだ柔らかい果肉で覆われる植物が用いられ、例えば、キジカクシ科のサイザルアサ、バナナ科のバナナ、アサ科の芭蕉マニラアサ、亜麻、苧麻などが挙げられる。なお、この実施の形態では、パイナップルの葉7を例として説明する。
【0028】
このようなパイナップルの葉7としては、食用に供される果実を採取した後、本来、廃棄されるパイナップルの葉7を葉元近傍から切除したものが用いられる。一般的に、パイナップルの果実の収穫時期である5月から7月頃には、パイナップルの葉7の長さが50cmから100cm程度の長さになり、厚みも、2mm程度となる。そこで、このように育成した長いパイナップルの葉7を用いるようにする。ここで、使用されるパイナップルの葉7としては、採取後、水分を50%以上含有している新鮮なものを用いる。このように水分の多く含有しているパイナップルの葉7を用いると、そのパイナップルの葉7を屈曲させた場合に、果肉の表裏に亀裂71を生じやすくなり、その亀裂71に高圧ジェット水を当てて、果肉を除去させやすくすることができる。一方、長期間保管したパイナップルの葉7を使用する場合は、そのパイナップルの葉7を一定期間水中に浸漬させ、水分含有率が50%以上となるようにする。ただし、余り水分含有率が高くなった場合は、屈曲によって果肉に亀裂71を生じさせることができないため、水分含有率を50%から70%程度にしておく。
【0029】
このようなパイナップルの葉7から長繊維を抽出する場合、まず、表面の硬い表皮を削り落とし、その後、果肉を除去して長繊維のみを抽出できるようにする。
【0030】
パイナップルの葉7から表皮を取り除く場合、パイナップルの葉7を送り出し部2に挟み込ませて、下流側に搬送させる。この送り出し部2は、パイナップルの葉7を上下から挟持する上下一対のローラー21で構成されるもので、上下方向に強くパイナップルの葉7を挟持させるように、バネなどでローラー21を押圧し、パイナップルの葉7を挟持させた状態で搬送させるようにしている。このとき、上下一対のローラー21のうち、一方側はモーターなどを介して回転駆動させるようになっており、他方側は、バネなどを介して駆動側のローラー21に押圧させて従動させるようになっている。
【0031】
なお、このように構成された送り出し部2にパイナップルの葉7を挿入させる場合、表皮の硬いパイナップルの葉7の付け根側からローラー21の間に挿入させるようにする。しかしながら、パイナップの葉の付け根側は、
図2に示すように、短手方向に大きくカールしているため、ローラー21の間に挟み込ませることが難しくなる場合がある。そこで、このような場合は、
図2に示すように、上流側を尖らせたテーパー状のガイド部22を設けておき、そこにパイナップルの葉7の付け根側から入れて、カールを徐々に広げ、根本付近を扁平状にして上下のローラー21の間に挟み込ませるようにする。
【0032】
一方、この送り出し部2の下流側には、送り出し部2に挟持された状態で表皮を削り落とす表皮切削部3が設けられる。
【0033】
この表皮切削部3は、刈り取られたパイナップルの葉7の平均的な長さよりも短い距離の範囲内に送り出し部2の下流側に設けられるものであって、
図3に示すように、外周部分に複数の羽根32を起立させた一対の回転部材31を設けて構成される。そして、これらの回転部材31の羽根32を互いに所定の隙間を空けてオーバーラップさせ、パイナップルの葉7を屈曲させて表皮に亀裂71(
図4参照)を生じさせながら、送り出し部2のローラー21の回転速度よりも高速回転させて表皮を削り落とせるようにしている。
【0034】
このとき、羽根32の先端部分で硬い表皮を削り落とすことができるが、羽根32の先端部分がパイナップルの葉7に当たる角度が鈍いと、効率よく表皮を削り落とすことができない。このため、羽根32の先端部分に、回転方向に沿って屈曲する屈曲部33を設けるようにしておき、この屈曲部33を、パイナップルの葉7の表面に対して鋭角に当てて、表皮を効率よく削り落とせるようにする。
【0035】
なお、このように表皮切削部3で表皮を削り落としていく場合、送り出し部2によってパイナップルの葉7の一端側を挟持させた状態で高速回転させて表皮を削り落としていくことができるが、パイナップルの葉7が送り出し部2から抜けた場合、高速回転する表皮切削部3によって、パイナップルの葉7が下流側に飛び抜けることになる。そのため、表皮切削部3の下流側に、その飛び抜けたパイナップルの葉7を受け止めるためのカーテン部4を設けるようにしている。このカーテン部4は、揺動可能な金属板や、可撓性の布や樹脂などで構成されるもので、送り出し部2から抜けて表皮切削部3で高速に飛び抜けたパイナップルの葉7を受け止めるようにしている。
【0036】
果肉除去部5は、カーテン部4の下流側に設けられるものであって、表皮の削り落とされたパイナップルの葉7から果肉を除去できるように構成される。具体的には、
図1に示すように、パイナップルの葉7を搬送させる搬送部51と、パイナップルの葉7を搬送部51上に固定しておく固定手段54と、この固定手段54によって固定されたパイナップルの葉7から果肉を除去する高圧ジェット器55などを備えて構成される。
【0037】
このうち、搬送部51は、パイナップルの葉7を載置させて搬送させる無端ベルト53などで構成されるものであって、前後一対のローラー52に無端ベルト53を周回させてパイナップルの葉7を搬送させるように構成される。
【0038】
一方、固定手段54は、高圧ジェット器55によってパイナップルの葉7に高圧ジェット水を当てた際に、パイナップルの葉7が飛び跳ねないようにするものであって、ここでは、ベルトの表面に複数の針状の突起54a(
図1および
図5参照)を設け、この突起54aにパイナップルの葉7を突き刺して固定できるようにしている。なお、この突起54aにパイナップルの葉7を突き刺す場合、搬送部51の上流側のローラー52の上方に押圧ローラー54bを設けておき、この押圧ローラー54bでパイナップルの葉7を下方側に押圧して、パイナップルの葉7を突起54aに突き刺せるようにしておく。
【0039】
あるいは、別の態様として、
図7に示すように、搬送部51の上方に、パイナップルの葉7を押圧する網目状の部材やワイヤーなどで構成された無端ベルト53cを設けておき、この無端ベルト53cによってパイナップルの葉7を挟み込んで固定するようにしてもよい。
【0040】
高圧ジェット器55は、搬送部51に載置されたパイナップルの葉7に高圧ジェット水を当てて果肉を除去できるようにしたものであって、パイナップルの幅方向に高圧ジェット水を当てて、果肉を除去できるように構成される。この高圧ジェット器55から高圧ジェット水を噴射する場合、搬送方向に沿って斜め上流側に向けて高圧ジェット水を当てるようにして、高圧ジェット水の跳ね返りによる水圧の低減を防止させるようにする。なお、ここでは、
図5に示すように、高圧ジェット水を幅方向に広げて噴射させるようにしているが、線状の高圧ジェット水を回転させながら噴射させてもよく、あるいは、複数の角度から高圧ジェット水を噴射させるようにしてもよい。
【0041】
ところで、このように高圧ジェット水を当てて果肉を除去する場合、高圧ジェット水が無端ベルト53の下方に抜けないと、パイナップルの葉7の下面側の果肉を除去することが難しくなる。このため、好ましくは、
図5に示すように、無端ベルト53を網状部材やワイヤーなどで構成する方法や、あるいは、
図6に示すように、無端ベルト53の表面に複数の凹部53bを設ける方法を用いるとよい。そして、網状部材やワイヤーで構成された無端ベルト53の隙間53aを介して果肉を下方に貫通させ、あるいは、無端ベルト53の表面に形成された溝状の凹部53bに高圧ジェット水を貫通させて、裏面側の果肉も除去する。なお、この無端ベルト53に凹部53bを設ける場合、搬送方向に沿って凹部53bを設けておくと、果肉の除去された繊維が、凹部53bの間に入り込むようになるため、高圧ジェット水によって繊維が暴れることがなくなり、繊維同士の絡まりもなくなる。
【0042】
そして、このように果肉除去部5で果肉の除去された繊維を、分離部6を介して、搬送部51から分離する。この分離部6を介して繊維を分離する場合において、搬送部51に突起54aが設けられている場合は、その突起54aの間に入り込む櫛歯状のプレートを設けておき、このプレートを搬送部51の下流側のローラー52付近に当接させて繊維のみを分離させるようにしておき、また、搬送部51に筋状の凹部53bを設けている場合は、その凹部53bに入り込む櫛歯状のプレートを設けておき、このプレートに繊維を載置させて、繊維のみを取り出せるようにする。
【0043】
次に、このように構成された果肉除去装置1を用いて、パイナップルの葉7から表皮と果肉を除去する方法について説明する。
【0044】
パイナップルの葉7を果肉抽出装置に挿入して繊維を抽出する際、まず、
図2に示すように、表皮の硬い根本付近を先にガイド部22に差し込み、ガイド部22のテーパー状の部分によって、カール部分を扁平状に広げて、送り出し部2のローラー21の間に挟み込ませる。
【0045】
そして、このローラー21によってパイナップルの葉7を強く挟み込ませた状態で、下流側の表皮切削部3に搬送させる。
【0046】
表皮切削部3に入ったパイナップルの葉7は、上下方向の交互に屈曲され(
図3参照)、表面に亀裂71(
図4参照)が形成されるとともに、送り出し部2のローラー21よりも高速に回転する回転部材31の羽根32によって、パイナップルの葉7から表皮が削り取られるようになる。
【0047】
次に、このように表皮の削り落とされたパイナップルの葉7を下流側に搬送させ、カーテン部4を退避させて、果肉除去部5へと移送させる。
【0048】
ところで、このように表皮切削部3で表皮を除去する際において、パイナップルの葉7の後端側が送り出し部2から抜けた場合、高速回転する表皮切削部3によって、一気に表皮切削部3から飛び抜けてしまう。このため、羽根32の屈曲部33によって、表皮を削り落とすことができなくなるが、回転部材31の羽根32でパイナップルの葉7を交互に屈曲させて、亀裂71だけを生じさせておく。そして、このように亀裂71の生じさせたパイナップルの葉7を、カーテン部4に当てて、飛び越しを防止する。
【0049】
次に、果肉除去部5でパイナップルの葉7から果肉を除去する。このとき、果肉除去部5に搬送されたパイナップルの葉7は、まず、押圧ローラー54bとの間に挟み込まれ、無端ベルト53の突起54aに突き刺された状態で無端ベルト53上に固定される。
【0050】
そして、搬送部51上に固定された状態で搬送されたパイナップルの葉7に対して、斜め上方から高圧ジェット水を当てて果肉を除去する。そして、その除去された果肉を無端ベルト53の隙間から下方に貫通させるか、あるいは、無端ベルト53の凹部53bの下方に貫通させる。
【0051】
なお、このように果肉を除去する場合において、送り出し部2から抜けたパイナップルの葉7の葉先部分については、表皮が削ぎ落とされていない状態となるが、パイナップルの葉先部分は、表皮が相対的に柔らかく、また、オーバーラップする羽根32によって亀裂71を生じさせているため、高圧ジェット水によってのみ、表皮と果肉を同時に除去することができるようになる。
【0052】
そして、このように表皮や果肉の除去した繊維を、分離部6を介して取り出し、その後、洗浄や乾燥などを行って、繊維のみを利用できるようにする。
【0053】
このように上記実施の形態によれば、長繊維を有するパイナップルの葉7を挟み込んで下流側に送り出す一対のローラー21で構成された送り出し部2と、当該送り出し部2の下流側に設けられ、前記ローラー21よりも高速で回転し、前記植物の表皮を切削する回転部材31で構成された表皮切削部3と、当該表皮切削部3で表皮の削ぎ落とされたパイナップルの葉7に高圧ジェット水を当てて果肉を除去する果肉除去部5と、を備えるようにしたので、送り出し部2のローラー21で植物の一端側を挟持させた状態で、高速回転する回転部材31を表皮に当てて表皮を削り落としていくことができ、高圧ジェット水の水圧を高くしなくても、容易に果肉を除去していくことができるようになる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0055】
例えば、上記実施の形態では、表皮切削部3で表皮を削り落としていくとともに、下流側で果肉を除去するようにしたが、それぞれの部位を有効活用できるように、表皮切削部3と果肉除去部5との間に仕切部8(
図1参照)を設け、第一回収部81で表皮を回収するとともに、第二回収部82で果肉を回収できるようにしてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態では、表皮切削部3に設けられた羽根32によって表皮を削り落としていくようにしたが、回転部材31の表面を粗面状に構成し、この回転部材31をパイナップルの葉7に押し当てて表皮を削り落としていくようにしてもよい。
【0057】
さらに、上記実施の形態では、表皮切削部3に一対の回転部材31を設けて構成するようにしたが、それぞれのローラー21の間隔を調整できるようにした調整機構を設けるようにしてもよい。そして、パイナップルの葉7の屈曲角度や、削り落としの面積を調整できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1・・・果肉除去装置
2・・・送り出し部
21・・・ローラー
22・・・ガイド部
3・・・表皮切削部
31・・・回転部材
32・・・羽根
33・・・屈曲部
4・・・カーテン部
5・・・果肉除去部
51・・・搬送部
52・・・ローラー
53・・・無端ベルト
53a・・・隙間
53b・・・凹部
54・・・固定手段
54a・・・突起
54b・・・押圧ローラー
54c・・・無端ベルト
55・・・高圧ジェット器
6・・・分離部
7・・・パイナップルの葉
71・・・亀裂
8・・・仕切部
81・・・第一回収部
82・・・第二回収部