(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081554
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】相撲用簡易土俵
(51)【国際特許分類】
A63C 19/00 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
A63C19/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195258
(22)【出願日】2022-12-06
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】522476646
【氏名又は名称】大越 弘光
(74)【代理人】
【識別番号】100129159
【弁理士】
【氏名又は名称】黒沼 吉行
(72)【発明者】
【氏名】大越 弘光
(57)【要約】
【課題】 土俵片と、これを設置するシートとの間に隙間を生じさせないようにし、競技者の足指の侵入を阻止できる相撲用簡易土俵を提供する。
【解決手段】 1枚又は複数枚を組み合わせて形成されるベースシート上に、長さ方向に湾曲してなる複数の土俵片を配列してなる相撲用簡易土俵であって、前記土俵片は縦断面形状が半円形状であって、その下面が、前記ベースシート上に接合部材によって固定されており、当該接合部材は厚さ又は高さを有しており、前記土俵片の下面には、少なくとも当該接合部材を収容する凹み部が設けられている相撲用簡易土俵とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚又は複数枚を組み合わせて形成されるベースシート上に、長さ方向に湾曲してなる複数の土俵片を配列してなる相撲用簡易土俵であって、
前記土俵片は縦断面形状が半円形状であって、その下面が、前記ベースシート上に接合部材によって固定されており、
当該接合部材は厚さ又は高さを有しており、前記土俵片の下面には、少なくとも当該接合部材を収容する凹み部が設けられていることを特徴とする、相撲用簡易土俵。
【請求項2】
前記接合部材は面ファスナーであって、前記ベースシートには当該接合部材と対向する位置に、当該接合部材に対応する面ファスナーが設けられており、
前記凹み部は、接合した面ファスナ―同士の厚さ分の深さに形成されている、請求項1に記載の相撲用簡易土俵。
【請求項3】
配列させた土俵片の内側縁には固定ベルトの一端側を固定すると共に、当該固定ベルトの自由端側は当該土俵片の上面を覆って当該土俵片を固定している、請求項1又は2に記載の相撲用簡易土俵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は相撲用簡易土俵に関し、特に相撲の練習時に簡易に使用する事のできる土俵に関する。
【背景技術】
【0002】
学校における体育授業や地域のイベントなどで相撲競技が行われており、当該相撲競技では土俵が使用されている。かかる土俵は土を盛って作る場合もあれば、体育館などにマットを敷設した簡易土俵を使用する場合もある。
【0003】
このような簡易土俵として、従来では特許文献1(実開平1-147867号公報)が提案されている。この文献では、断面が略かまぼこ形で、長さ方向に沿つて全体が湾曲した形状からなる多数の土俵片を、一枚のシート上において互いに連続されるべく環状に配列した土俵において、内部にゴムまたはフエルト等の軟質性芯材を充填した夫々の土俵片の下面に面フアスナーの片面を縫着し、シート上における各土俵片の所定配列位置に、前記各土俵片下面の面フアスナー片面と対応する面フアスナーの他面を環状に配列した土俵を提案している。
【0004】
また特許文献2(登録実用新案第3019439号公報)では、軟質合成樹脂製の土俵片がシート上に簡単、かつ確実に取り付けられ、競技中に土俵片に足を引っ掛けても土俵片がシートから離脱することのない児童用の簡易土俵として、徳俵を含めた土俵片の下面をシート上に面ファスナーを介して貼付け固定すると共に、シートの各土俵片配列線上の内側と外側に、夫々自由端に面ファスナーを備えた内外一対の土俵固定ベルトを設けて、この内外一対の土俵固定ベルトにより各土俵片の端部をシート上に固定することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平1-147867号公報
【特許文献2】登録実用新案第3019439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1や2では、シート上に土俵片を環状に配置した土俵は、何れも面ファスナーで固定する事が提案されている。しかしながら、当該面ファスナー自体が厚さを有していることから、少なからず、土俵の下面とシート面との間には、面ファスナーの厚さ分の隙間が生じてしまう。一方で相撲競技では、土俵際の踏ん張りが勝敗を分かつこともあり、それ故に土俵においては隙間などが生じてはならない。仮に隙間が生じている場合には、その隙間に足指などが入り込んでしまうことも考えられる為である。そこで本発明では、土俵片と、これを設置するシートとの間に隙間を生じさせないようにした相撲用簡易土俵を提供することを課題の1つとする。
【0007】
また、面ファスナーの接合は、縁部からの引き剥がしには弱いことから、力が一点、特に縁部分に集中することを避けるのが望ましい。そこで本発明では、競技者(「練習者」を含む。以下同じ)の力が作用したとしても面ファスナー全体に分散するようにして、一点に力が作用することを阻止できる相撲用簡易土俵を提供することも別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題の少なくとも何れかを解決するべく、本発明では勝負俵や徳俵を構成する土俵片におけるベースシートに対する固定構造を改良した相撲用簡易土俵を提供する。
【0009】
即ち本発明では、1枚又は複数枚を組み合わせて形成されるベースシート上に、長さ方向に湾曲してなる複数の土俵片を配列してなる相撲用簡易土俵であって、前記土俵片は縦断面形状が半円形状であって、その下面が、接合部材によって前記ベースシート上に固定されており、当該接合部材は厚さ又は高さを有しており、前記土俵片の下面には、少なくとも当該接合部材を収容する凹み部が設けられている相撲用簡易土俵を提供する。
【0010】
前記土俵俵は、勝負俵や徳俵等からなる土俵片によって構成することができ、これら土俵片を前記ベースシートに固定するための接合部材は、両者を着脱自在に固定できる各種の部材や構造を使用することができる。例えば面ファスナーやホックの他、嵌入または圧入による固定部材、或いは磁力による接合部材を用いることができる。但し、固定強度や取扱い容易性を考慮すれば、面ファスナーを用いることが望ましい。よって、当該相撲用簡易土俵は、前記接合部材として面ファスナーを使用し、前記ベースシートには当該接合部材と対向する位置に、当該接合部材に対応する面ファスナーが設けられており、前記凹み部は、接合した面ファスナ―同士の厚さ分の深さに形成することが望ましい。
【0011】
更に本発明の相撲用簡易土俵では、ベースシートに載せてある各土俵片を、当該ベースシートに固定してある固定ベルトで固定することが望ましい。そして当該固定ベルトはベースシートに対して一体化されており、前記ベースシートと土俵片との隙間を塞ぐように設けることが望ましい。例えば、配列させた土俵片の内側縁には固定ベルトの一端側を固定すると共に、当該固定ベルトの自由端側は当該土俵片の上面を覆って当該土俵片を固定することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の相撲用簡易土俵では、複数の土俵片は縦断面形状が半円形状であって、その下面を前記ベースシート上に接合部材によって固定しており、当該接合部材は厚さ又は高さを有しており、前記土俵片の下面には、少なくとも当該接合部材を収容する凹み部を設けている。この為、前記接合部材の厚さ又は高さは当該凹み部によって解消され、その結果、土俵片における前記凹み部以外の下面、特に内周縁や外周縁は、前記ベースシートと密着し、隙間を生じさせることはない。よってベースシートと土俵片との間に、競技者の足指などが入り込んでしまうこともなくなり、土俵際の踏ん張りを果たすことができる。
【0013】
また、前記接合部材として面ファスナーを用いた場合であっても、前記凹み部は、接合した面ファスナ―同士の厚さ分の深さに形成することにより、重ね合わせて接合させた面ファスナーの厚さは、当該凹み部によって吸収され、土俵片とベースシートとの間の隙間を無くすことができる。その結果、縁部からの引き剥がしに弱い面ファスナーであっても、競技者の力が一点、特に縁部分に集中することを避けて、面ファスナー全体に力を分散させることのできる相撲用簡易土俵とすることができる。
【0014】
そして配列させた土俵片の内側縁には固定ベルトの一端側を固定すると共に、当該固定ベルトの自由端側は当該土俵片の上面を覆って当該土俵片を固定した場合には、土俵片の内周面側の隙間は当該固定ベルトで塞ぐことができることから、より確実に、これら土俵片とベースシートとの間の隙間に足指などが入り込む虞を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施の形態にかかる簡易土俵の組立段階における平面図
【
図3】土俵片とベースシートの接合状態を示す縦断面図
【
図4】第2の実施の形態にかかる簡易土俵の組立工程を示す平面図
【
図5】第2の実施の形態にかかる簡易土俵の組立工程を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本実施の形態にかかる相撲用簡易土俵30を具体的に説明する。特に本実施の形態は相撲の練習の他、競技大会でも使用可能な相撲用簡易土俵30の具体例を示している。
【0017】
図1に示す様に、本実施の形態にかかる相撲用簡易土俵30は、相撲の練習場または競技場に敷設されるベースシート10の上に、勝負俵21や徳俵22などの土俵片20を設けて形成している。ベースシート10は、厚さや約1mm程度のシート部材を用いる他、厚さが約10mm程度のマットを用いて形成することができる。かかるベースシート10は、望ましくは競技者が滑る事のない程度の表面粗さや摩擦抵抗を有する表面で形成されることが望ましく、更に競技または練習中にシワが寄ることの無いように形成されるのが望ましい。より具体的には、当該ベースシート10は、ポリ塩化ビニル樹脂などの樹脂材料で形成する他、不織布や織物等の布で形成することができる。
【0018】
上記ベースシート10が十分な厚さを有するマット上である場合には、競技中におけるクッション性を確保可能であるが、クッション性に乏しい厚さである場合には、当該ベースシート10の下には、レスリング用マット、体操用マット、畳などのクッション性を有する材料からなる保護マットを敷設するのが望ましい。相撲の競技や練習を安全に実施すると共に、競技者への負担を軽減するためである。特に当該保護マットの表面が布帛で形成されている場合には、前記ベースシート10の下面には、布帛に接着できる面ファスナーを設けることで、ベースシート10と保護マットとの一体性を高めることができる。例えば表面が布帛で形成されているレスリング用マットを保護マットとして使用する場合には、これを敷設した状態における四辺の内側寄り部分に対向するベースシート10の下面には、当該レスリングマットに係止する面ファスナーを設けることが望ましい。
【0019】
上記ベースシート10には、勝負俵21や徳俵22が設けられる位置に、これらの土俵片20を固定する為の接合部材を設けている。本実施の形態では、当該接合部材として、着脱自在な面ファスナー26を使用しており、これを略環状にベースシート10上に固定している。
図1ではベースシート10上に設けた接合部材(面ファスナー26)の上に、土俵片20を配置している状態を示しており、各土俵片20は長さ方向に湾曲すると共に、上面が膨らんだ半円形状に形成されている。
【0020】
図2は上記土俵片20を示す下方斜視図である。この図に示す様に、勝負俵21や徳俵22を構成する土俵片20の下面には、その長さ方向に延伸する凹み部40を形成しており、当該凹み部40内には、前記ベースシート10の上に設けた接合部材(面ファスナー26)と接合する面ファスナー25を設けている。この
図2では前記凹み部40は土俵片20の下面の長さ方向全体に亘って形成しており、前記接合部材(面ファスナー25等)は所定の間隔で散点状に設けているが、当該接合部材(面ファスナー25等)は凹み部40の長さ方向全体に設けることも可能である。また前記凹み部40は、土俵片20の下面を所定の間隔で矩形に凹ませて設けることもでき、この場合には前記ベースシート10の上に設けた接合部材(面ファスナー26)は、土俵片20の下面に設けた凹み部40に正対するように配置することができる。更に、土俵片20の下面に設けた凹み部40の全体に接合部材(面ファスナー25)を設けると共に、前記ベースシート10の上に接合部材(面ファスナー26)を散点状に設けることもできる。
【0021】
図3は土俵片20とベースシート10の接合状態を示す縦断面図であり、(A1)は本実施の形態にかかる相撲用簡易土俵30における両者の接合前の状態、(A2)は本実施の形態にかかる相撲用簡易土俵30における両者の接合後の状態を夫々示している。一方で(B1)は土俵片20の下面に凹み部40を設けていない場合における両者の接合前の状態、(B2)は土俵片20の下面に凹み部40を設けていない場合における両者の接合後の状態を夫々示している。この
図3からも明らかなように本実施の形態にかかる相撲用簡易土俵30では、土俵片20の下面に、接合部材(面ファスナー25)を収容する深さの凹み部40を設けていることから、当該土俵片20の長さ方向に沿う縁部は、前記ベースシート10の上に隙間なく密着させることができる。一方で
図3(B)に示す様に当該凹み部40を設けない場合には、土俵片20の下面とベースシート10との間には、当該接合部材(面ファスナー25)の厚さ分の隙間が生じてしまう。この隙間は、当該土俵片20の短手方向に力が作用すると、接合部材(面ファスナー25,26)を支点として傾くことから、大きく開いてしまい、その結果、当該隙間に競技者の足指が入り込む虞がある他、開いた方の縁部に剥離の力が作用してしまい、両者が剥がれてしまうことも危惧される。よって、土俵片20の下面に接合部材(面ファスナー25,26)を収容する凹み部40を設ける効果は、実際の相撲競技においては重要となる。
【0022】
図4は第2の実施の形態にかかる相撲用簡易土俵30を示す平面図である。特にこの実施の形態にかかる相撲用簡易土俵30では、前記の様に面ファスナー25,26で固定している土俵片20を、更に固定ベルト50a,bで固定する様に形成している。その結果、一層確実に土俵片20をベースシート10に固定することができると共に、土俵片20とベースシート10との間の隙間を埋めることができる。
【0023】
即ち、この実施の形態にかかる相撲用簡易土俵30では、
図4(A)に示す様に、ベースシート10の上に環状に配置した土俵片20、特に勝負俵21を構成する土俵片20の内側に、端部を当該土俵片20の内縁側に固定した内側固定ベルト50aを複数配置すると共に、土俵片20の外側には、端部を当該土俵片20の外縁側に固定した外側固定ベルト50bを、前記内側固定ベルト50aに対応させて複数配置している。かかる固定ベルト50a,bは、整列させた土俵片20を保持できる分だけ、複数設けることができ、望ましくは土俵片同士の接合部分に存在するように設けている。そして
図5(A)に示すように、ベースシート10上に設けた接合部材(面ファスナー26)に対向配置させた各土俵片20を、
図5(B)に示す様にベースシート10上の接合部材(面ファスナー26)に固定し、その後において、
図5(C)に示す様に外側固定ベルト50bを引き起こして土俵片20の周面に沿わせると共に、内側固定ベルト50aの自由端側を土俵片20の外縁側に捲り返して、前記外側固定ベルト50bに面ファスナーなどによって接合する。その結果、
図4(B)に示す様に、内側固定ベルト50aは土俵片20の上面を覆って外縁側に至り、その自由端を外側固定ベルト50bに固定することにより、土俵片20の内縁面側を覆うことができる。なお、外側固定ベルト50bを省略した場合には、内側固定ベルト50aの自由端は、土俵片20またはベースシート10に固定することもできる。そして当該固定ベルト50a,bは、前記ベースシート10に一体化されていることから、土俵片20とベースシート10との間の隙間は塞がれて、競技者の足指の侵入などの問題を回避することができる。
【0024】
更に本実施の形態においては、整列させて配置する土俵片20の長さ方向端部側に連結構造を設けて、隣り合う土俵片20同士を連結するように構成しても良い。具体的には隣り合う土俵片20における長さ方向端部に相補的に嵌合ないしは継合する係合部を設け、相互に土俵片20同士を接続することができる。また各土俵片20の中心部に長さ方向に沿う芯部材を配置し、当該芯部材同士の係合によって隣り合う土俵片20同士を連結することもできる。
【0025】
その他、本実施の形態にかかる相撲用簡易土俵30の趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更を行う事も勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の相撲用簡易土俵は、相撲の協議や練習の為に利用することができ、オリンピックなどの国際大会での利用の他、体育の授業で使用する相撲用簡易土俵として利用可能である。
【符号の説明】
【0027】
10 ベースシート
20 土俵片
21 勝負俵
22 徳俵
25,26 接合部材(面ファスナー)
30 相撲用簡易土俵
40 凹み部
50a 内側固定ベルト
50b 外側固定ベルト