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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008156
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】分析システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/04 20060101AFI20240112BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
G01N35/04 G
G01N35/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109775
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野岳 要
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB16
2G058GA14
2G058GB08
2G058GE10
(57)【要約】
【課題】グリッパアームのグリッパの間に試料容器が存在するか否かを、分析システムの特性を考慮した最適な検出手段によって検出可能とする。
【解決手段】分析システムは、試料容器(80)を搬送するグリッパアーム(14)と、グリッパアーム(14)を制御する制御装置とを備え、グリッパアーム(14)は、試料容器(80)を挟み込んで把持する第1グリッパ(143)および第2グリッパ(143)と、第1グリッパと第2グリッパとの間の把持空間の大きさを変化させる駆動機構と、把持空間に光を照射し、把持空間からの光を検出する光電センサ(30)とを備え、制御装置は、光電センサ(30)の検出信号に基づいて、把持空間における試料容器の有無を判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を前処理する前処理装置を含む分析システムであって、
試料容器を搬送するグリッパアームと、
前記グリッパアームを制御する制御装置とを備え、
前記グリッパアームは、
前記試料容器を挟み込んで把持する第1グリッパおよび第2グリッパと、
前記第1グリッパと前記第2グリッパとの間の把持空間の大きさを変化させる駆動機構と、
前記把持空間に光を照射し、前記把持空間からの前記光を検出する光電センサとを備え、
前記制御装置は、前記光電センサの検出信号の有無に基づいて、前記把持空間における前記試料容器の有無を判定する、分析システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記グリッパアームが前記試料容器を搬送する搬送工程において、前記把持空間における前記試料容器の有無を判定する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記前処理装置の電源を立ち上げたときに、前記把持空間における前記試料容器の有無を判定する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項4】
前記前処理装置は、前記試料容器を載置する第1載置部を有し、
前記制御装置は、前記グリッパアームにより前記試料容器を前記第1載置部に搬送する前に、前記第1グリッパおよび前記第2グリッパを前記第1載置部へ移動し、前記第1載置部において、前記検出信号の有無に基づいて前記把持空間における前記試料容器の有無を判定する、請求項1に記載の分析システム。
【請求項5】
前記前処理装置は、前記試料容器を載置する第2載置部をさらに有し、
前記制御装置は、前記グリッパアームにより前記試料容器を前記第1載置部に搬送する前に、前記第1グリッパおよび前記第2グリッパを前記第1載置部および前記第2載置部の各々へ順に移動し、前記第1載置部および前記第2載置部の各々において前記把持空間における前記試料容器の有無を判定する、請求項4に記載の分析システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1載置部および前記第2載置部の各々の位置情報を格納するメモリを備え、
前記制御装置は、前記位置情報に基づいて、前記第1グリッパおよび前記第2グリッパを前記第1載置部および前記第2載置部の各々の載置面へ移動する、請求項5に記載の分析システム。
【請求項7】
前記制御装置による前記試料容器の有無の判定結果を報知する報知装置をさらに備える、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の分析システム。
【請求項8】
前記光電センサは、
前記把持空間に前記光を投光する投光ユニットと、
前記光を受光する受光ユニットとを含み、
前記グリッパアームは、
前記第1グリッパを含み、前記投光ユニットが取り付けられる第1アームと、
前記第2グリッパを含み、前記受光ユニットが取り付けられる第2アームとを有し、
前記第1グリッパおよび前記第2グリッパの各々は、前記試料容器と当接する当接面を有し、
前記投光ユニットおよび前記受光ユニットは、前記当接面とは異なる箇所に取り付けられる、請求項1または請求項2に記載の分析システム。
【請求項9】
試料容器を搬送するグリッパアームを制御する方法であって、
前記グリッパアームは、前記試料容器を挟み込んで把持する第1グリッパおよび第2グリッパを有し、
前記第1グリッパと前記第2グリッパとの間の把持空間の大きさを変化させるステップと、
前記把持空間に光を照射し、前記把持空間からの前記光を検出するステップと、
前記把持空間からの前記光の検出の有無に基づいて前記把持空間における前記試料容器の有無を判定するステップとを備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前処理装置を含む分析システムが知られている。前処理装置は、培養液などの試料に含まれる細胞に対して前処理を行う。前処理には、たとえば、遠心分離、液体除去、試薬供給、攪拌、および抽出などの各種の処理が含まれる。分析システムは、試料の入った試料容器を移動するためのグリッパアームを備える。グリッパアームは、一対のグリッパの間に挟み込んで把持した試料容器を用途に応じた場所へ移動する。前処理の完了した試料は、分析システムに含まれる液体クロマトグラフ質量分析装置などの分析装置へ供給される。
【0003】
特開2019-174369号公報(特許文献1)には、グリッパアームに相当するロボットアームを備える前処理装置が開示されている。ロボットアームは、ハンドにより把持した検体容器を前処理部に搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-174369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析システムが備える従来のグリッパアームは、一対のグリッパの間に試料容器が存在するか否かを検出する機能を具備していなかった。このため、従来の分析システムにおいては、一対のグリッパの間の試料容器の有無を判定することなく、グリッパアームを動作させていた。そこで、グリッパアームのモータ電流の変化などを検出し、グリッパの把持力を測定することによって、一対のグリッパ間に試料容器が存在するか否かを判定することも考えられる。
【0006】
しかし、グリッパアームが把持する試料容器は強く圧すると破損する可能性があるため、工業用部品などを扱う場合と比べて小さな力で把持できることがグリッパアームに求められる。そのため、グリッパアームのモータ電流の変化などを検出する手法では、モータ電流の変化量が小さ過ぎて、一対のグリッパ間に試料容器が存在するか否かを正確に判定できないおそれがある。
【0007】
本開示の目的は、グリッパアームのグリッパの間に試料容器が存在するか否かを、分析システムの特性を考慮した最適な検出手段によって検出可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の分析システムは、試料を前処理する前処理装置を含む分析システムであって、試料容器を搬送するグリッパアームと、グリッパアームを制御する制御装置とを備え、グリッパアームは、試料容器を挟み込んで把持する第1グリッパおよび第2グリッパと、第1グリッパと第2グリッパとの間の把持空間の大きさを変化させる駆動機構と、把持空間に光を照射し、把持空間からの光を検出する光電センサとを備え、制御装置は、光電センサの検出信号の有無に基づいて、把持空間における試料容器の有無を判定する。
【0009】
本開示の試料容器を搬送するグリッパアームを制御する方法において、グリッパアームは、試料容器を挟み込んで把持する第1グリッパおよび第2グリッパを有し、第1グリッパと第2グリッパとの間の把持空間の大きさを変化させるステップと、把持空間に光を照射し、把持空間からの光を検出するステップと、把持空間を通過する光の検出の有無に基づいて把持空間における試料容器の有無を判定するステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、グリッパアームのグリッパの間に試料容器が存在するか否かを、分析システムの特性を考慮した最適な検出手段によって検出可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】分析システムの概略構成を示す正面図である。
図2】前処理装置の概略構成を示す透視斜視図である。
図3】グリッパアームのグリッパ付近の構成を示す斜視図である。
図4】分析システムの構成を示すブロック図である。
図5】グリッパアームの開放状態と把持状態とを説明するための図である。
図6】モジュールの位置に存在するグリッパアームが試料容器を検出していないときの状態と試料容器を検出しているときの状態とを説明するための図である。
図7】把持空間における試料容器の有無を判定するための処理手順を示すフローチャートである。
図8】前処理装置が電断から復帰したときの前処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
図9】スタートボタンの操作を検出したときの前処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
図10】試料容器の搬送工程における前処理装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
<分析システム100の概略構成>
図1は、分析システム100の概略構成を示す正面図である。本実施の形態において、互いに直交するX、Y、Zの3軸を図示のとおりに定義する。X軸とY軸とが成すX-Y面は、分析システム100の設置面に平行な面である。
【0014】
分析システム100は、分析対象物に対する前処理および分析を自動で行うためのシステムである。本実施の形態において、分析対象物は、たとえば培養液などの液体試料に含まれる細胞であり、より具体的には菌体である。
【0015】
分析システム100は、前処理装置1と、分析装置2とを含む。分析システム100は、前処理装置1および分析装置2と通信可能に接続されるパーソナルコンピュータ3をさらに含む(図4参照)。
【0016】
前処理装置1は、遠心分離機構、液体除去機構、試薬供給機構、攪拌機構および抽出機構などの各種の前処理機構を備える。前処理装置1は、それらの機構を動作させ、液体試料に前処理を順行う。前処理が終了した液体試料を、自動的にオートサンプラ21内に搬送する機能を前処理装置1に設けてもよい。
【0017】
分析装置2は、オートサンプラ21、液体クロマトグラフ装置22、および質量分析装置23を含む。オートサンプラ21、液体クロマトグラフ装置22、および質量分析装置23は、図示しない配管および配線により接続されている。オートサンプラ21は、試料容器(ラボウェア)から液体試料をサンプリングするための装置である。前処理装置1により前処理を実行した液体試料(以下、単に「試料」とも称する。)は、オートサンプラ21を介して、液体クロマトグラフ装置22に導入される。その後、液体クロマトグラフ装置22および質量分析装置23によって試料が分析される。図1においては、分析装置2の概念にオートサンプラ21を含めているが、分析装置2の概念からオートサンプラ21を除外してもよい。液体クロマトグラフ装置22、および質量分析装置23は、分析対象物を分析するための分析装置の一例に過ぎない。分析システム100に他の分析装置を採用してもよい。
【0018】
<前処理装置1の概略構成>
図2は、前処理装置1の概略構成を示す透視斜視図である。図2に示すように、前処理装置1は、上面がX-Y面に平行なテーブル12を有する。テーブル12上の空間全体は、筐体10で囲われている。テーブル12の上には複数のモジュール16a~16lが概ね4行3列のマトリックス上に搭載されている。
【0019】
これらのモジュール16a~16lは、各々、異なる前処理機能を有する。モジュール16a~16lの各々のサイズは、様々である。ただし、本開示は、モジュール16a~16lのすべてが同じサイズである態様を除外するものではない。モジュール16a~16lには、前処理対象とされる試料が入った試料容器80が配置される。モジュール16a~16lは、試料容器80内の試料を対象として、各々の機能に応じた前処理を実行する。モジュール16a~16lは、試料容器80を載置する複数の載置部の一例である。モジュール16aは、第1載置部の一例であり、モジュール16bは、第2載置部の一例である。以下では、モジュール16a~16lをモジュール16と総称する場合がある。
【0020】
テーブル12の上方には、搬送機構13が設けられている。搬送機構13は、X軸方向に延在するX軸ガイドレール131と、Y軸方向に延在するY軸ガイドレール132と、Z軸方向に延在するZ軸ガイド133とを含む。X軸ガイドレール131は、筐体10の上部に取り付けられる。Y軸ガイドレール132は、X軸ガイドレール131に沿ってX軸方向に移動可能となるよう、X軸ガイドレール131に取り付けられる。Z軸ガイド133は、Y軸ガイドレール132に沿ってY軸方向に移動可能となるよう、Y軸ガイドレール132に取り付けられる。Z軸ガイド133には、グリッパアーム14がZ軸方向に移動可能に取り付けられる。
【0021】
搬送機構13は、複数の駆動機構(図示省略)をさらに含む。複数の駆動機構は、Y軸ガイドレール132をX軸方向に移動させ、Z軸ガイド133をY軸方向に移動させ、グリッパアーム14をZ軸方向に移動させる。これにより、筐体10内でX軸、Y軸、およびZ軸の3軸方向にグリッパアーム14が移動する。
【0022】
グリッパアーム14は、一対のアーム141を有する。アーム141の先端には試料容器80を挟み込んで把持するグリッパ143が形成されている。グリッパアーム14は、試料の入った試料容器80をグリッパ143で把持し、複数のモジュール16a~16lのうち、予め設定された前処理を実行するためのモジュール16へ試料容器80を搬送する。
【0023】
テーブル12の上方には、待避エリア15が設けられている。グリッパアーム14は、必要に応じて、試料容器80を待避エリア15に待避させる。
【0024】
<グリッパアーム14の構成>
図3は、グリッパアーム14のグリッパ143付近の構成を示す斜視図である。図3に示されるように、一対のアーム141の各々の先端には、グリッパ143が形成されている。両方のグリッパ143には、略直方体形状の弾性部材145が設けられている。一対のグリッパ143の間には、グリッパアーム14が試料容器80を把持するための把持空間SPが存在する。グリッパアーム14は、一対のアーム141の離間間隔を変更することによって、把持空間SPの大きさを変化させ、一対のグリッパ143で試料容器80を挟み込んで把持する。このとき、略直方体形状の一対の弾性部材145の複数の面のうち、把持空間SPに対向する面が試料容器80と当接する。
【0025】
一対のグリッパ143のうち、一方のグリッパ143には投光ユニット31が設けられ、他方のグリッパ143には受光ユニット32が設けられている。一対のグリッパ143において、投光ユニット31から出力された光が受光ユニット32に入射するように、投光ユニット31と受光ユニット32とが対向する位置に取り付けられている。投光ユニット31および受光ユニット32により、光電センサ30が構成される。本実施の形態において、光電センサ30は、把持空間SPに試料容器80が存在するか否かを検出するために用いられる。一対のアーム141の一方は第1アームの一例であり、他方は第2アームの一例である。
【0026】
<前処理装置1のブロック図>
図4は、分析システム100の構成を示すブロック図である。図4に示されるように、前処理装置1は、制御装置40と、光電センサ30と、前処理部50と、搬送機構13と、グリッパアーム14と、モータ回路60と、表示装置70とを備える。
【0027】
制御装置40は、プロセッサ41とメモリ42とを含む。制御装置40は、たとえば、パーソナルコンピュータ3を介して、分析装置2と通信可能に接続される。
【0028】
プロセッサ41は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Multi-Processing Unit)などである。プロセッサ41は、メモリ42に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、前処理装置1の各種の処理を実現する。メモリ42は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、およびハードディスクなどを含んで構成される。メモリ42は、プロセッサ41が実行するプログラムの他、前処理の設定、モジュール16a~16lの位置情報(x座標、y座標、z座標)などの様々なデータを記憶する。
【0029】
光電センサ30は、発光素子310を含む投光ユニット31と、受光素子320を含む受光ユニット32とを備える。光電センサ30は、一対のグリッパ143間の把持空間SPに光を照射し、把持空間SPを通過する光を検出する。光電センサ30は、一対のグリッパ143間の把持空間SPに光を照射し、把持空間SPからの光を検出する光電センサの一例である。
【0030】
制御装置40は、たとえば、所定のパルス幅のパルス幅変調信号で投光ユニット31を駆動する。これにより、投光ユニット31からはパルス幅変調信号に同期して光が出力される。受光ユニット32は、投光ユニット31から出力された光を検出する。受光ユニット32は、光を検出すると、検出信号を制御装置40へ送信する。
【0031】
前処理部50は、予め設定されたスケジュールに基づいて、モジュール16a~16lの各々に対応する前処理を実行する。
【0032】
搬送機構13は、X軸ガイドレール131、Y軸ガイドレール132、およびZ軸ガイド133を含む。搬送機構13は、複数の駆動機構(図示省略)をさらに含む。制御装置40は、複数の駆動機構を制御することによって、Y軸ガイドレール132をX軸方向に移動させ、Z軸ガイド133をY軸方向に移動させ、グリッパアーム14をZ軸方向に移動させる。これにより、グリッパアーム14が筐体10内をX、Y、Zの3軸方向に移動する。
【0033】
モータ回路60は、グリッパアーム14の一対のアーム141を駆動する駆動機構の一例である。制御装置40は、モータ回路60を制御することによって、一対のアーム141の離間距離を変化させる。これにより、一方のアーム141の先端に形成されたグリッパ143と他方のアーム141の先端に形成されたグリッパ143との間の把持空間SPの大きさが変化する。
【0034】
表示装置70は、たとえば、液晶画面を有するタッチパネルを含む。表示装置70は、タッチパネルにより構成される入力インターフェイス71を含む。入力インターフェイス71は、ユーザのタッチ操作を受け付ける。入力インターフェイス71は、たとえば、分析条件の入力をユーザから受け付ける分析条件入力部として機能する。また、入力インターフェイス71は、前処理の実行を開始する指示、および前処理中の様々な指示を受け付ける。さらに、表示装置70は、制御装置40から出力される情報に基づいて様々なアラーム情報を表示する。表示装置70は、報知装置の一例である。
【0035】
<開放状態および把持状態>
図5は、グリッパアーム14の開放状態と把持状態とを説明するための図である。図5の(1)には、グリッパアーム14の開放状態が示され、図5の(2)には、グリッパアーム14の把持状態が示されている。
【0036】
グリッパアーム14は、一対のアーム141の離間距離を変化させることによって、把持空間SPにおいて試料容器80を把持しない開放状態と、把持空間SPにおいて試料容器80を把持する把持状態とに変化する。
【0037】
図5(1)に示されるように、開放状態において把持空間SPに試料容器80が存在しない場合、投光ユニット31から出力された光は、把持空間SPを通過し、受光ユニット32によって受光される。
【0038】
図5(2)に示されるように、把持状態においては把持空間SPに試料容器80が存在するため、投光ユニット31から出力された光が受光ユニット32に向かう光路は、試料容器80によって遮断される。このため、受光ユニット32では、投光ユニット31から出力された光が受光されない。
【0039】
グリッパアーム14が試料容器80を把持しつつ、前処理装置1内の空間を移動している最中に、予期されない振動、その他の影響を受けて、試料容器80が一対のグリッパ143から落下することがあるかもしれない。この場合、投光ユニット31から出力された光は、試料容器80によって遮断されることなく、受光ユニット32に到達する。その結果、受光ユニット32は、投光ユニット31が出力する光を検出し始める。
【0040】
制御装置40は、受光ユニット32の検出出力の有無を判定することによって、グリッパアーム14が試料容器80を把持している把持状態にあること、およびグリッパアーム14で搬送している途中の試料容器80が搬送中に存在しなくなったこと(落下したこと)などを判定する。
【0041】
このように、前処理装置1は、光電センサ30の検出出力を利用して試料容器80の有無を判定することができる。特に、本実施の形態においては、試料容器80の有無を判定するために利用するセンサとして、光電センサ30を採用している点に特徴の1つを有する。
【0042】
工業用部品などを扱う一般のロボットアームに関しては、ロボットアームが工業用部品を把持したときの把持力をモータ電流などに基づいて特定し、モータ電流の大きさに基づいてロボットアームが工業用製品を把持しているか否か、判定するように構成することが考えられる。
【0043】
しかし、グリッパアーム14が把持する物は、圧力に対する強度が高いとはいえない試料容器80である。このため、工業用部品などを扱う一般のロボットアームと比べて、グリッパアーム14には、試料容器を強く圧することのない適度な力で試料容器を把持できることが求められる。それゆえ、グリッパアーム14のモータ電流の大きさなどを検出する手法では、モータ電流の変化量が小さ過ぎて、一対のグリッパ143間に試料容器80が存在するか否かを正確に判定できないおそれがある。
【0044】
そこで、本実施の形態においては、試料容器80の有無を判定するために光電センサ30を採用している。光電センサ30によれば、グリッパアーム14が試料容器80を把持する把持力の大きさにかかわらず、しかも、センシングのために試料容器80自体に直接、接触することなく、把持空間SPに試料容器80が存在するか否かを検出することができる。本実施の形態によれば、グリッパアーム14のグリッパ143の間に試料容器80が存在するか否かを、分析システム100の特性を考慮した最適な検出手段である光電センサ30によって検出可能である。
【0045】
図5に示されるように、光電センサ30を構成する投光ユニット31および受光ユニット32は、試料容器80が当接する弾性部材145の当接面とは異なる箇所に取り付けられている。より詳しくは、投光ユニット31および受光ユニット32は、グリッパ143の把持空間SP側、かつ、Z軸方向において弾性部材145の上方に設けられる。投光ユニット31および受光ユニット32のY軸方向の厚みは、弾性部材145のY軸方向の厚みよりも薄い。
【0046】
したがって、一対のグリッパ143で試料容器80を把持したとき、投光ユニット31および受光ユニット32が試料容器80に接触しない。このため、投光ユニット31および受光ユニット32が試料容器80と弾性部材145とによって圧迫されてしまうことで投光ユニット31および受光ユニット32の機能に問題が生じることを防止できる。また、試料容器80の側面に液体試料の一部が付着している場合であっても、液体試料が投光ユニット31および受光ユニット32を濡らしてしまうことを防止できる。その結果、液体試料によって投光ユニット31および受光ユニット32の機能が損なわれてしまうおそれを防止できる。
【0047】
なお、Z軸方向において、弾性部材145の上方ではなく弾性部材145の下方に投光ユニット31および受光ユニット32を設けてもよい。
【0048】
<モジュール16上の試料容器80の有無を検出する手法>
図6は、モジュール16の位置に存在するグリッパアーム14が試料容器80を検出していないときの状態と試料容器80を検出しているときの状態とを説明するための図である。図6の(1)には、モジュール16の位置に存在するグリッパアーム14が、試料容器80を検出していないときの状態が示され、図5の(2)には、モジュール16位置に存在するグリッパアーム14が、試料容器80を検出しているときの状態が示されている。
【0049】
制御装置40は、設定されたスケジュールに従って前処理を開始し、試料容器80をモジュール16に移動する。通常、移動先として予定されているモジュール16の上には、試料容器80が置かれていない。しかしながら、ユーザが誤って前処理対象とは別の試料容器80をモジュール16に置いている可能性がある。前処理対象の試料容器80と別の試料容器80がモジュール16に置かれている場合に前処理を開始すると、2つの試料容器80が衝突し、正しく前処理を実行することができない。
【0050】
そこで、制御装置40は、前処理を開始する前に、モジュール16に試料容器80が存在しないことを特定する。
【0051】
図6(1)に示されるように、開放状態において把持空間SPに試料容器80が存在しない場合、投光ユニット31から出力された光は、把持空間SPを通過し、受光ユニット32によって受光される。制御装置40は、図6(1)に示されるように、モジュール16の上に開放状態のグリッパアーム14を配置することによって、モジュール16の上に試料容器80が存在しないことを確認する。図6に示されるモジュール16の高さHは、モジュール16a~16lによって異なる。制御装置40は、メモリ42に格納されたモジュール位置情報(x座標、y座標、z座標)に基づいて、高さH(z座標)を含むモジュール16a~16lの位置情報を特定する。制御装置40は、特定した位置情報を用いて、モジュール16上の載置面の最適な位置にグリッパアーム14のグリッパ143を配置させる。
【0052】
図6(2)に示されるように、開放状態において把持空間SPに試料容器80が存在する場合、投光ユニット31から出力された光が受光ユニット32に向かう光路は、試料容器80によって遮断される。このため、受光ユニット32では、投光ユニット31から出力された光が受光されない。制御装置40は、モジュール16の上に開放状態のグリッパアーム14を配置したときに、受光ユニット32で光が受光されないことに基づいて、モジュール16の上に試料容器80が存在することを特定する。
【0053】
<電断復帰時の処理>
図7は、把持空間SPにおける試料容器80の有無を判定するための処理手順を示すフローチャートである。はじめに、制御装置40は、パルス変調信号を投光ユニット31に出力する(ステップS1)。ステップS1の処理によって、投光ユニット31は、パルス変調信号に応じたタイミングで光を把持空間SPに向けて出力する。把持空間SPに試料容器80が存在しない場合、把持空間SPに照射された光は、投光ユニット31に入射する。
【0054】
次に、制御装置40は、受光ユニット32から光の検出信号を受信したか否かを判定する(ステップS2)。制御装置40は、受光ユニット32から光の検出信号を受信した場合、把持空間SPに試料容器80が存在すると判定する(ステップS3)。制御装置40は、受光ユニット32から光の検出信号を受信していない場合、把持空間SPに試料容器80が存在しないと判定する(ステップS4)。その後、制御装置40は、本フローチャートに基づく処理を終了する。
【0055】
<電断復帰時の処理>
図8は、前処理装置1が電断から復帰したときの前処理装置1の処理手順を示すフローチャートである。本フローチャートに基づく処理は、前処理装置1が備える制御装置40により実行される。
【0056】
グリッパアーム14が試料容器80を搬送している途中に、停電などにより電断が発生する場合がある。この場合、グリッパ143は、試料容器80をテーブル12の上方空間に留めた状態で停止する。電断から復帰したときに、通常の初期動作と同様にグリッパアーム14を開放状態に制御すると、テーブル12の上方空間に留められていた試料容器80がテーブル12へ落下してしまう。落下した試料容器80から流出した液体試料は、周辺のモジュール16に悪影響を与えるおそれがある。また、落下した試料容器80から流出した液体試料が他の試料容器80内に混入するおそれもある。
【0057】
図8に示す処理手順に従う処理を制御装置40が実行することにより、電断復帰時に筐体10内の空間に留められていた試料容器80がテーブル12へ落下してしまうことを防止できる。以下、その処理手順を図8に基づいて説明する。
【0058】
はじめに、制御装置40は、前処理装置1の電断が復帰したことを特定する(ステップS101)。制御装置40は、前処理装置1の電断が復帰したことを特定したとき、テーブル12の上方にグリッパ143が位置している否かを判定する(ステップS102)。
【0059】
制御装置40は、たとえば、搬送機構13に含まれる駆動機構(モータを含む)のX軸、Y軸、およびZ軸別の駆動ステップ数に基づいて、筐体10の空間内におけるグリッパ143の座標位置を特定する。制御装置40は、グリッパ143の座標位置に基づいて、筐体10内のグリッパ143の位置を特定する。制御装置40は、グリッパ143の下に位置するモジュール16とグリッパ143との間に規定値以上の距離がある場合、「テーブル12の上方にグリッパ143が位置している」と判定する。制御装置40は、このような判定をすることによって、電源断の発生前にグリッパ143が試料容器80を保持しつつ筐体10内を移動中であった可能性があったか否かを特定できる。
【0060】
制御装置40は、テーブル12の上方にグリッパ143が位置していないと判定した場合、本フローチャートに基づく処理を終了する。制御装置40は、テーブル12の上方にグリッパ143が位置していると判定した場合、グリッパ143の把持空間SPに試料容器80が存在するか否かを判定する(ステップS103)。制御装置40は、受光ユニット32の検出出力の有無を特定することによって、把持空間SPに試料容器80が存在するか否かを判定する(図7参照)。
【0061】
制御装置40は、グリッパ143の把持空間SPに試料容器80が存在しないと判定した場合、グリッパアーム14を開放状態に制御する(ステップS109)。これにより、一対のグリッパ143の離間距離が広げられ、一対のグリッパアーム14が図5(1)に示されるような状態となる。
【0062】
グリッパ143の把持空間SPに試料容器80が存在する場合、グリッパアーム14は、試料容器80を把持している状態にある(図5(2)参照)。この状態からグリッパアーム14を開放状態に制御すると、試料容器80がテーブル12へ落下してしまう。そこで、制御装置40は、グリッパ143の把持空間SPに試料容器80が存在すると判定した場合、グリッパアーム14を開放状態にすることなく、表示装置70にアラーム情報を出力する(ステップS104)。
【0063】
表示装置70は、画面にアラーム情報を表示するとともに、アラーム情報を停止するアラーム停止指示を受け付けるボタン、および試料容器80を待避エリア15へ待避させる待避指示を受け付けるボタンを画面に表示する。これらのボタンは、タッチパネルにより構成される入力インターフェイス71と連携している。ユーザは、ボタンにタッチすることによって、指示の入力操作を行う。表示装置70は、ユーザがタッチしたボタンに応じた指示情報を制御装置40へ出力する。
【0064】
制御装置40は、待避指示が入力されたか否かを判定する(ステップS105)。制御装置40は、待避指示が入力されていない場合、アラーム停止指示が入力されたか否かを判定する(ステップS108)。制御装置40は、アラーム停止指示が入力されていない場合、ステップS104に処理を戻す。制御装置40は、待避指示が入力された場合、グリッパアーム14を制御して、グリッパ143によって把持されている試料容器80を待避エリア15へ移動させる(ステップS106)。その後、制御装置40は、アラーム情報の出力を停止し(ステップS107)、本フローチャートに基づく処理を終了させる。
【0065】
制御装置40は、アラーム停止指示が入力された場合、アラーム情報の出力を停止し(ステップS107)、本フローチャートに基づく処理を終了させる。制御装置40は、アラーム停止指示が入力された場合、グリッパ143によって把持されている試料容器80を待避エリア15へ移動しない。したがって、この場合には、ユーザによって、必要な措置が講じられる。ただし、アラーム停止指示が入力された場合にも、ステップS106の処理が実行されるように構成してもよい。
【0066】
以上、説明したように、図8に示されるフローチャートにおいて、制御装置40は、前処理装置1の電源を立ち上げたときに、把持空間SPにおける試料容器80の有無を判定する。
【0067】
ここでは、停電などの発生によって電断が復帰するケースを電断復帰の場面の一例として説明した。しかし、本フローチャートは、前処理装置1を用いて前処理を行うために、ユーザが前処理装置1の電源を入れる場面にも適用される。したがって、制御装置40は、ユーザが電源を投入してから前処理のためのスタートボタンを押すまでの間にも本フローチャートに基づく処理を実行する。
【0068】
<前処理開始時の処理>
図9は、スタートボタンの操作を検出したときの前処理装置1の処理手順を示すフローチャートである。本フローチャートに基づく処理は、前処理装置1が備える制御装置40により実行される。
【0069】
制御装置40は、スタートボタンの操作を検出したときに、予め設定されたスケジュールに従って前処理を開始し、試料容器80をモジュール16に移動する。既に説明したとおり、移動先として予定されているモジュール16の上に、ユーザが誤って試料容器80置いている可能性がある。この状態で前処理を開始すると、試料容器80同士が衝突し、正しく前処理を実行することができないという問題が発生する。図9に示す処理手順に従う処理を制御装置40が実行することにより、このような問題が発生することを防止できる。以下、その処理手順を図9に基づいて説明する。
【0070】
はじめに、制御装置40は、スタートボタンの操作を検出するまで待機する(ステップS110)。スタートボタンは、タッチパネルを含む表示装置70の画面に表示される。ユーザがスタートボタンにタッチすることによって検出信号が表示装置70から制御装置40へ出力される。制御装置40は、スタートボタンの操作を検出したときに、各モジュール16a~16lの位置情報をメモリ42から読み込む(ステップS111)。
【0071】
次に、制御装置40は、グリッパアーム14を開放状態に制御する(ステップS112)。これにより、グリッパ143の把持空間SPが広げられる。次に、チェック対象のモジュール16を特定するための「n」が1に設定される(ステップS113)。このフローチャートでは、モジュール16a~モジュール16lが、それぞれ、第1モジュール~第12モジュールと対応する。次に、制御装置40は、第nモジュールの位置へグリッパ143を移動する(ステップS114)。
【0072】
たとえば、n=1の場合、制御装置40は、モジュール16aの位置へグリッパ143を移動する。その結果、グリッパ143とモジュール16aとの位置関係が図6に示される状態とされる。ステップS112において、グリッパアーム14を開放状態に制御している。このため、仮に、モジュール16aに試料容器80が置かれている場合であっても、グリッパ143と試料容器80との位置関係は図6(2)に示される位置関係となる。その結果、移動してきたグリッパ143が試料容器80に衝突することがない。
【0073】
次に、制御装置40は、グリッパ143の把持空間SPに試料容器80が存在するか否かを判定する(ステップS115)。具体的には、制御装置40は、受光ユニット32の検出出力の有無を特定することによって、把持空間SPに試料容器80が存在するか否かを判定する(図7参照)。図6(1)には、把持空間SPに試料容器80が存在しない例が示されている。図6(2)には、把持空間SPに試料容器80が存在する例が示されている。
【0074】
制御装置40は、グリッパ143の把持空間SPに試料容器80が存在すると判定した場合、表示装置70にアラーム情報を出力し(ステップS119)、アラーム停止指示または待避指示を待つ(ステップS120,ステップS123)。制御装置40は、アラーム停止指示があれば、アラーム情報の出力を停止する(ステップS124)。制御装置40は、待避指示があれば、モジュール16上に置かれている試料容器80を待避エリア15へ移動し(ステップS121)、アラーム情報の出力を停止する(ステップS122)。
【0075】
ステップS119~ステップS123の処理は、図8を用いて既に説明したステップS104~ステップS108と同じである。ステップS124の処理は、ステップS122と同じである。したがって、ここでは、各ステップの詳細な説明を繰り返さない。
【0076】
制御装置40は、アラーム停止指示に基づいてアラーム情報の出力を停止した場合(ステップS124)、スタートボタン操作を検出するステップS110に処理を戻す。その後、制御装置40は、スタートボタン操作の検出待ち状態となる。たとえば、ユーザは、モジュール16上に誤って置かれている試料容器80を取り除いた後、再度、スタートボタンを操作する。
【0077】
制御装置40は、ステップS122においてアラーム情報の出力を停止した後、すべてのモジュール16a~16lをチェック済みか否かを判定する(ステップS116)。制御装置40は、すべてのモジュール16a~16lをチェック済みでない場合、「n」を更新し(ステップS118)、次のモジュール16の位置へグリッパ143を移動させる(ステップS114)。その後、制御装置40は、ステップS115以降の処理を繰り返す。
【0078】
制御装置40は、すべてのモジュール16a~16lをチェック済みである場合、すなわち、モジュール16a~16l上に試料容器80が置かれていないと判定した場合、予め設定されたスケジュールに従う前処理を開始する(ステップS117)。その後、制御装置40は、本フローチャートに基づく処理を終了する。
【0079】
以上、説明した図9のフローチャートにおいて、制御装置40は、モジュール16上に試料容器80が置かれていると判定する毎に、アラーム情報を出力する。しかしながら、制御装置40は、モジュール16a~16lをチェックする毎にチェック結果(試料容器80有無)を記憶し、すべてのモジュール16のチェックを終えた後に、チェック結果に応じたアラーム情報を出力してもよい。たとえば、制御装置40は、モジュール16a,16dに試料容器80が置かれていた場合、モジュール16a,16dに試料容器80が置かれていることを表示装置70の画面に表示してもよい。
【0080】
<搬送工程における処理>
図10は、試料容器の搬送工程における前処理装置1の処理手順を示すフローチャートである。本フローチャートに基づく処理は、前処理装置1が備える制御装置40により実行される。
【0081】
制御装置40は、図9のステップS117において、予め設定されたスケジュールに従う前処理を開始する。前処理には、グリッパアーム14が目的のモジュール16へ試料容器80を搬送する搬送工程が含まれる。搬送工程において、予期されない振動などの影響を受けて、試料容器80がグリッパアーム14から落下することがあるかもしれない。その場合には、緊急時の対応が必要となるため、試料容器80の落下を早期に検出することが重要である。図10に示す処理手順に従う処理を制御装置40が実行することにより、搬送工程において、試料容器80がグリッパアーム14から落下したことを報知することができる。以下、その処理手順を図10に基づいて説明する。
【0082】
はじめに、制御装置40は、前処理の工程が試料容器の搬送工程であるか否かを判定する(ステップS130)。制御装置40は、前処理の工程が試料容器の搬送工程でないと判定した場合、本フローチャートに基づく処理を終了する。制御装置40は、前処理の工程が試料容器の搬送工程であると判定した場合、グリッパアーム14を把持状態に制御する(ステップS131)。これにより、一対のグリッパ143の離間距離が狭められ、試料容器80が一対のグリッパ143によって把持される状態となる。
【0083】
次に、制御装置40は、グリッパ143の把持空間SPに試料容器80が存在するか否かを判定する(ステップS132)。制御装置40は、受光ユニット32の検出出力の有無を特定することによって、把持空間SPに試料容器80が存在するか否かを判定する(図7参照)。把持空間SPに試料容器80が存在する場合、グリッパアーム14は試料容器80を把持した状態で目的のモジュール16に向けて移動していることになる。この場合、制御装置40は、処理をステップS130に戻す。
【0084】
グリッパ143の把持空間SPに試料容器80が存在しない場合、グリッパアーム14で把持されていた試料容器80がグリッパアーム14から外れ、落下したと判断できる。この場合、制御装置40は、表示装置70にアラーム情報を出力し(ステップS133)、アラーム停止指示の入力を待って(ステップS134)、アラーム情報の出力を停止する(ステップS135)。その後、制御装置40は、本フローチャートに基づく処理を終了する。
【0085】
ステップS133~ステップS135の処理は、図8を用いて既に説明したステップS104、ステップS108、およびステップS107と同じである。したがって、ここでは、各ステップの詳細な説明を繰り返さない。ユーザは、表示装置70に表示されたアラーム情報を見ることによって、搬送工程において試料容器80が落下したことを把握することできる。これにより、ユーザは、試料容器80の落下に対して即座に適切な措置を採ることができる。このように、図10に示されるフローチャートにおいて、制御装置40は、搬送工程において、把持空間SPにおける試料容器80の有無を判定する。
【0086】
<変形例>
次に、本実施の形態に関わる変形例を列挙する。
【0087】
制御装置40は、グリッパアーム14を制御して、前処理済みの試料が入った試料容器80を分析装置2に搬送してもよい。すなわち、グリッパアーム14は、前処理装置1内において試料容器80を搬送する機能のみでなく、前処理装置1から分析装置2へ試料容器80を搬送する機能を備えていてもよい。たとえば、前処理装置1の壁面とオートサンプラ21の壁面とが対向する位置に設けた開口部を介して、グリッパアーム14が試料容器80を前処理装置1からオートサンプラ21へと搬送してもよい。制御装置40は、前処理装置1から分析装置2へ試料容器80を搬送する工程において、図8および図10を用いて説明した処理手順に基づく処理を実行してもよい。
【0088】
本実施の形態は、前処理装置1に配置されるグリッパアーム14の他、分析装置2に配置されるグリッパアームにも適用可能である。試料容器80を目的の位置へ搬送するグリッパアームであれば、試料容器80内の試料が前処理済みの試料であるか、前処理を完了して分析対象とされる試料であるかに関わらず、本実施の形態を適用可能である。また、試料容器80内の試料も液体試料に限定されるものではない。たとえば、ゲル状、あるいは固形状の試料が試料容器80に格納されていてもよい。
【0089】
一対のグリッパ143間の把持空間SPに光を照射し、把持空間SPを通過する光を検出することができさえすれば、グリッパ143とは異なる箇所に光電センサ30を取り付けてもよい。たとえば、投光ユニット31を一方のアーム141のグリッパ143よりも上部に設け、受光ユニット32を他方のアーム141のグリッパ143の弾性部材145下方に設けてもよい。この場合、投光ユニット31から出力された光が把持空間SPを通過し、Z軸方向の下方に位置する受光ユニット32に入射するように、投光ユニット31からの光の照射角度を調整すればよい。
【0090】
本実施の形態においては、一対のグリッパ143間の把持空間SPに光を照射し、把持空間SPからの光を検出する光電センサの一例として、透過型の光電センサ30を挙げた。しかし、透過型の光電センサ30に代えて、回帰反射型、および拡散反射型のいずれの光電センサを用いてもよい。
【0091】
回帰反射型または拡散反射型の光電センサを用いる場合、発光素子310および受光素子320を一対のグリッパ143のうちの一方に設ける。この場合、単一のユニット内に発光素子310および受光素子320を装置させてもよい。回帰反射形の光電センサを用いる場合には、他方のグリッパ143に回帰反射板を設ける。発光素子310は、把持空間SPを通過するように、回帰反射板へ光を照射する。制御装置40は、回帰反射板からの反射光が受光素子320で検出された場合に、把持空間SPに試料容器80が存在しないと判定する。制御装置40は、回帰反射板からの反射光が受光素子320で検出されない場合に、把持空間SPに試料容器80が存在すると判定する。
【0092】
拡散反射型の光電センサを用いる場合、発光素子310は、把持空間SPに向けて光を照射する。把持空間SPに試料容器80が存在する場合、発光素子310から照射された光は、試料容器80で反射される。受光素子320は、発光素子310の照射光に対する反射光を検出する。制御装置40は、反射光が受光素子320で検出される場合に、把持空間SPに試料容器80が存在すると判定する。制御装置40は、反射光が受光素子320で検出されない場合に、把持空間SPに試料容器80が存在しないと判定する。
【0093】
以上のように、制御装置40は、透過型、回帰反射型、および拡散反射型のいずれの光電センサを用いた場合であっても、その光電センサの検出信号の有無に基づいて、把持空間SPにおける試料容器80の有無を判定することができる。
【0094】
制御装置40から出力されるアラーム情報に基づいてアラーム音を出力するスピーカを分析装置2に設けてもよい。この場合、スピーカは、表示装置70と併せて、報知装置の一例となる。
【0095】
制御装置40の処理手順として説明した図8図10に示される処理を、パーソナルコンピュータ3が実行してもよい。
【0096】
制御装置40は、図9のステップS110においてスタートボタンの操作を検出したときに、図8に示されるステップS102~ステップS109の処理を実行してもよい。制御装置40は、図9のステップS112においてグリッパアーム14を開放状態に制御する前に図8に示されるステップS102~ステップS109の処理を実行してもよい。
【0097】
前処理装置1の筐体10と分析装置2の筐体とが、共通の一つの筐体によって構成されていてもよい。
【0098】
[態様]
上記した実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0099】
(第1項)一態様に係る分析システムは、試料を前処理する前処理装置を含む分析システムであって、試料容器を搬送するグリッパアームと、グリッパアームを制御する制御装置とを備え、グリッパアームは、試料容器を挟み込んで把持する第1グリッパおよび第2グリッパと、第1グリッパと第2グリッパとの間の把持空間の大きさを変化させる駆動機構と、把持空間に光を照射し、把持空間からの光を検出する光電センサとを備え、制御装置は、光電センサの検出信号の有無に基づいて、把持空間における試料容器の有無を判定する。
【0100】
第1項に記載の分析システムによれば、グリッパアームのグリッパの間に試料容器が存在するか否かを、分析システムの特性を考慮した最適な検出手段によって検出可能とされる。
【0101】
(第2項)第1項に記載の分析システムにおいて、制御装置は、グリッパアームが試料容器を搬送する搬送工程において、把持空間における試料容器の有無を判定する。
【0102】
第2項に記載の分析システムによれば、搬送工程において試料容器がグリッパアームから外れたことを特定できる。
【0103】
(第3項)第1項または第2項に記載の分析システムにおいて、制御装置は、前処理装置の電源を立ち上げたときに、把持空間における試料容器の有無を判定する。
【0104】
第3項に記載の分析システムによれば、電源を立ち上げた段階でグリッパアームが試料容器を把持しているか否かを特定できる。
【0105】
(第4項)第1項~第3項のいずれか1項に記載の分析システムにおいて、前処理装置は、試料容器を載置する第1載置部を有し、制御装置は、グリッパアームにより試料容器を第1載置部に搬送する前に、第1グリッパおよび第2グリッパを第1載置部へ移動し、第1載置部において、検出信号の有無に基づいて把持空間における試料容器の有無を判定する。
【0106】
第4項に記載の分析システムによれば、試料容器を第1載置部に移動する前に、既に第1載置部に試料容器が存在しているか否かを特定できる。
【0107】
(第5項)第4項に記載の分析システムにおいて、前処理装置は、試料容器を載置する第2載置部をさらに有し、制御装置は、グリッパアームにより試料容器を第1載置部に搬送する前に、第1グリッパおよび第2グリッパを第1載置部および第2載置部の各々へ順に移動し、第1載置部および第2載置部の各々において把持空間における試料容器の有無を判定する。
【0108】
第5項に記載の分析システムによれば、試料容器を第1載置部に移動する前に、既に第1載置部または第2載置部に試料容器が存在しているか否かを特定できる。
【0109】
(第6項)第5項に記載の分析システムにおいて、制御装置は、第1載置部および第2載置部の各々の位置情報を格納するメモリをさらに備え、制御装置は、位置情報に基づいて、第1グリッパおよび第2グリッパを第1載置部および第2載置部の各々の載置面へ移動する。
【0110】
第6項に記載の分析システムによれば、第1載置部および第2載置部の各々のサイズを考慮して適切な位置に第1グリッパおよび第2グリッパを移動させることができる。
【0111】
(第7項)第1項~第6項のいずれか1項に記載の分析システムにおいて、制御装置による試料容器の有無の判定結果を報知する報知装置をさらに備える。
【0112】
第7項に記載の分析システムによれば、ユーザは、試料容器の有無の判定結果を把握でき、状況に応じた適切な措置を早期に実施することができる。
【0113】
(第8項)第1項~第7項のいずれか1項に記載の分析システムにおいて、光電センサは、把持空間に光を投光する投光ユニットと、光を受光する受光ユニットとを含み、グリッパアームは、第1グリッパを含み、投光ユニットが取り付けられる第1アームと、第2グリッパを含み、受光ユニットが取り付けられる第2アームとを有し、第1グリッパおよび第2グリッパの各々は、試料容器と当接する当接面を有し、投光ユニットおよび受光ユニットは、当接面とは異なる箇所に取り付けられる。
【0114】
第8項に記載の分析システムによれば、投光ユニットおよび受光ユニットが試料容器おおよび当接面に圧迫され、投光ユニットおよび受光ユニットの機能が損なわれてしまうことを防止できる。
【0115】
(第9項)第9項に記載の試料容器を搬送するグリッパアームを制御する方法において、グリッパアームは、試料容器を挟み込んで把持する第1グリッパおよび第2グリッパを有し、第1グリッパと第2グリッパとの間の把持空間の大きさを変化させるステップと、把持空間に光を照射し、把持空間からの光を検出するステップと、把持空間からの光の検出の有無に基づいて把持空間における試料容器の有無を判定するステップとを備える。
【0116】
第9項に記載の方法によれば、グリッパアームのグリッパの間に試料容器が存在するか否かを、分析システムの特性を考慮した最適な検出手段によって検出可能とされる。
【0117】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
1 前処理装置、2 分析装置、3 パーソナルコンピュータ、10 筐体、12 テーブル、13 搬送機構、14 グリッパアーム14、15 待避エリア、16,16a~16l モジュール、21 オートサンプラ、22 液体クロマトグラフ(LC)装置、23 質量分析(MS)装置、30 光電センサ、31 投光ユニット、32 受光ユニット、40 制御装置、41 プロセッサ、42 メモリ、43 ストレージ、50 前処理部、60 モータ回路、70 表示装置、61 入力インターフェイス、80 試料容器(ラボウェア)、100 分析システム、131 X軸ガイドレール、132 Y軸ガイドレール、133 Z軸ガイド、141 アーム、143 グリッパ、145 弾性部材、310 発光素子、320 受光素子、SP 把持空間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10