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特開2024-81598ハイブリッド部材の成形方法、ハイブリッド部材、及びアンダーカバー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081598
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ハイブリッド部材の成形方法、ハイブリッド部材、及びアンダーカバー
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/58 20060101AFI20240611BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20240611BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20240611BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20240611BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20240611BHJP
   B32B 15/14 20060101ALI20240611BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20240611BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240611BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
B29C43/58
B29C43/18
B29C70/68
B32B5/26
B32B5/28 Z
B32B15/14
B29K101:12
B29K105:08
B29L9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193043
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2022194732
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591182101
【氏名又は名称】三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】喜多 聖
【テーマコード(参考)】
4F100
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F100AB01C
4F100AB10C
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK41B
4F100AK41G
4F100AK42B
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DG00A
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100DH02A
4F100EC182
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100EJ822
4F100GB32
4F100JA04A
4F100JA05A
4F100JB16A
4F100JB16B
4F204AA11
4F204AC03
4F204AD03
4F204AD05
4F204AD08
4F204AD16
4F204AD35
4F204AG03
4F204AH17
4F204AR06
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB11
4F204FF05
4F204FG02
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F205AA11
4F205AC03
4F205AD03
4F205AD05
4F205AD08
4F205AD16
4F205AD35
4F205AG03
4F205AH17
4F205AR06
4F205HA08
4F205HA14
4F205HA25
4F205HA34
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HB11
4F205HC06
4F205HF05
4F205HK03
4F205HK04
4F205HT13
4F205HT16
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】FRPと金属のハイブリッド部材に、簡便に寸法精度を高くして欠陥を抑制できる成形方法、ハイブリッド部材、及び、寸法精度高く、欠陥を少なくしたアンダーカバーを提供する。
【解決手段】ハイブリッド部材の成形方法は、FRP10と金属30とで不織布20を挟んで成形するハイブリッド部材の成形方法である。この成形方法は、FRP10を下記式(1)を満足する温度Tまで加熱することにより、FRP10のマトリクス樹脂を溶融または軟化させ、FRP10と不織布20と金属30とを重ねて圧縮する際に、溶融または軟化するマトリクス樹脂を不織布20に含浸させる。前記繊維強化複合材料の前記マトリクス樹脂の融点Tmm(℃)またはガラス転移温度Tgm(℃)≦T(℃)<前記不織布の形状保持可能温度の上限値Th(℃)……式(1)
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合材料と金属とで不織布を挟んで成形するハイブリッド部材の成形方法であって、
前記繊維強化複合材料を下記式(1)を満足する温度Tまで加熱することにより、前記繊維強化複合材料のマトリクス樹脂を溶融または軟化させ、前記繊維強化複合材料と前記不織布と前記金属とを重ねて圧縮する際に、溶融または軟化させた前記マトリクス樹脂を前記不織布に含浸させることを含む、ハイブリッド部材の成形方法。
前記繊維強化複合材料の前記マトリクス樹脂の融点Tmm(℃)またはガラス転移温度Tgm(℃)≦T(℃)<前記不織布の形状保持可能温度の上限値Th(℃)……式(1)
【請求項2】
前記繊維強化複合材料の前記マトリクス樹脂が熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載のハイブリッド部材の成形方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含む、請求項2に記載のハイブリッド部材の成形方法。
【請求項4】
前記繊維強化複合材料がガラス繊維を含む、請求項1に記載のハイブリッド部材の成形方法。
【請求項5】
前記不織布がポリエステル繊維を含む、請求項1に記載のハイブリッド部材の成形方法。
【請求項6】
前記不織布と前記金属が重ね合わされて一体化されたシートの前記不織布の面を前記繊維強化複合材料に重ね合わせた状態で、前記加熱する請求項1に記載のハイブリッド部材の成形方法。
【請求項7】
金属層、不織布層、繊維強化複合材料層を具備するハイブリッド部材であって、
前記不織布層には前記繊維強化複合材料層に含まれるマトリクス樹脂と同一の樹脂が含浸されている、ハイブリッド部材。
【請求項8】
前記金属層、前記不織布層、前記繊維強化複合材料層の順に重ね合わせられている請求項7に記載のハイブリッド部材。
【請求項9】
金属層、不織布層、繊維強化複合材料層を具備するハイブリッド部材であって、
前記金属層と前記繊維強化複合材料層の間に前記不織布層が配置されている、ハイブリッド部材。
【請求項10】
前記金属層、前記不織布層、前記繊維強化複合材料層の順に重ね合わせられている、請求項9に記載のハイブリッド部材。
【請求項11】
前記繊維強化複合材料層が熱可塑性樹脂を含む、請求項8または請求項10に記載のハイブリッド部材。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含む、請求項11に記載のハイブリッド部材。
【請求項13】
前記繊維強化複合材料層がガラス繊維を含む、請求項8または請求項10に記載のハイブリッド部材。
【請求項14】
前記不織布層がポリエステル繊維を含む、請求項8または請求項10に記載のハイブリッド部材。
【請求項15】
請求項7~10のいずれか1項に記載のハイブリッド部材を含む、アンダーカバー。
【請求項16】
樹脂材料と金属とで不織布を挟んで成形するハイブリッド部材の成形方法であって、
前記樹脂材料を下記式(1)を満足する温度Tまで加熱することにより、前記樹脂材料のマトリクス樹脂を溶融または軟化させ、前記樹脂材料と前記不織布と前記金属とを重ねて圧縮する際に、溶融または軟化させた前記マトリクス樹脂を前記不織布に含浸させることを含む、ハイブリッド部材の成形方法。
前記樹脂材料の前記マトリクス樹脂の融点Tmm(℃)またはガラス転移温度Tgm(℃)≦T(℃)<前記不織布の形状保持可能温度の上限値Th(℃)……式(1)
【請求項17】
前記樹脂材料が強化繊維を含まない樹脂からなる材料である、請求項16に記載のハイブリッド部材の成形方法。
【請求項18】
前記不織布がポリエステル繊維を含む、請求項16に記載のハイブリッド部材の成形方法。
【請求項19】
前記不織布と前記金属が重ね合わされて一体化されたシートの前記不織布の面を前記樹脂材料に重ね合わせた状態で、前記加熱する請求項16に記載のハイブリッド部材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド部材の成形方法、ハイブリッド部材、及びアンダーカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料(以下、FRPという)と金属のハイブリッド部材は、FRPが持つ優れた軽量性、高力学特性等と金属が持つ導電性等の両方を発することが可能である。FRPと金属を一体化する方法として、FRPと金属とを接着により一体化したり、ボルトなどで機械的に接合したりする方法が知られている。
【0003】
FRP材料と金属材料とを単純に重ねて成形すると金属材料が狙い通りの配置にならずにずれてしまう場合がある。
また、金属材料の中でも複雑形状である場合は、板状のものより変形しやすく配置のずれは顕著になる。この配置の精度が悪化すると、外観や他の部材との接合精度の悪化につながる。
【0004】
また、ずれ防止のために接着剤を使用する場合には、FRPの樹脂の種類と金属の種類を考慮して成分を選ばなければならないので、接着剤を金属側に塗る場合には、金属とFRPを両方それぞれ加熱する必要があった。また、接着剤を使用して金属とFRPを直接接合する場合には金属とFRPとの間を隙間なく埋めてしまうため、成形時に空気の逃げ場がないことで、接着剤層にボイドなどの欠陥ができることがある。前記欠陥は、FRP材料と金属材料からなるハイブリッド部材が部品として組み込まれて完成体となった後、外観不良や強度低下の原因となる。
【0005】
特許文献1では、図8(a)に示すようにFRP100と金属300を接合する際に、金属300表面に不織布層200を形成して、不織布層200とFRP100との間に熱可塑性樹脂を含む不織布層200を介在させている。そして、図8(b)に示すように加熱加圧して前記不織布層200に含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることにより前記不織布層200を接着層400として変化させる。このことにより前記金属300とFRP100とを強固に接合させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-244724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、不織布層中の熱可塑性樹脂自体が、成形中に加熱により溶融する。このため、不織布によるFRPや金属に対するアンカー効果が得られず、金属とFRPとがずれて配置される虞がある。また、不織布層中の熱可塑性樹脂自体の溶融により、成形時に不織布層内の空気の逃げ場がなくなることで、不織布層200(接着層400)にボイドなどの欠陥ができる虞がある。この欠陥は、例えば、外観不良や強度低下の原因となる。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決して、FRPと金属のハイブリッド部材に、簡便に寸法精度を高くして欠陥を抑制できる成形方法、及び、寸法精度が高いとともに、欠陥を少なくしたハイブリッド部材、及びアンダーカバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題点を解決するために、本発明のハイブリッド部材の成形方法は、繊維強化複合材料と金属とで不織布を挟んで成形するハイブリッド部材の成形方法であって、前記繊維強化複合材料を下記式(1)を満足する温度Tまで加熱することにより、前記繊維強化複合材料のマトリクス樹脂を溶融または軟化させ、前記繊維強化複合材料と前記不織布と前記金属とを重ねて圧縮する際に、溶融または軟化する前記マトリクス樹脂を前記不織布に含浸させることを含む(請求項1)。
【0010】
前記繊維強化複合材料の前記マトリクス樹脂の融点Tmm(℃)またはガラス転移温度Tgm(℃)≦T(℃)<前記不織布の形状保持可能温度の上限値Th(℃)……式(1)
また、前記成形方法において、前記繊維強化複合材料の前記マトリクス樹脂が熱可塑性樹脂を含むことが好ましい(請求項2)。
【0011】
また、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含むことが好ましい(請求項3)。
また、前記繊維強化複合材料がガラス繊維を含んでいてもよい(請求項4)。
また、前記不織布がポリエステル繊維を含んでいてもよい(請求項5)。
【0012】
また、前記不織布と前記金属が重ね合わされて一体化されたシートの前記不織布の面を前記繊維強化複合材料に重ね合わせた状態で、前記加熱してもよい(請求項6)。
本発明のハイブリッド部材は、金属層、不織布層、繊維強化複合材料層を具備するハイブリッド部材であって、前記不織布層には前記繊維強化複合材料層に含まれるマトリクス樹脂と同一の樹脂が含浸されているものである(請求項7)。
【0013】
また、前記ハイブリッド部材において、前記金属層、前記不織布層、前記繊維強化複合材料層の順に重ね合わせられていることが好ましい(請求項8)。
また、本発明のハイブリッド部材は、金属層、不織布層、繊維強化複合材料層を具備するハイブリッド部材であって、前記金属層と前記繊維強化複合材料層の間に前記不織布層が配置されているものである(請求項9)。
【0014】
前記ハイブリッド部材は、前記金属層、前記不織布層、前記繊維強化複合材料層の順に重ね合わせられていることが好ましい(請求項10)。
また、前記ハイブリッド部材は、前記繊維強化複合材料層が熱可塑性樹脂を含むことが好ましい(請求項11)。
【0015】
また、前記ハイブリッド部材は、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含んでいてもよい(請求項12)。
また、前記ハイブリッド部材は、前記繊維強化複合材料層がガラス繊維を含んでいてもよい(請求項13)。
【0016】
また、前記ハイブリッド部材は、前記不織布層がポリエステル繊維を含んでいてもよい(請求項14)。
前記ハイブリッド部材を含む、アンダーカバーとしてもよい(請求項15)。
【0017】
また、本発明のハイブリッド部材の成形方法は、樹脂材料と金属とで不織布を挟んで成形するハイブリッド部材の成形方法であって、前記樹脂材料を下記式(1)を満足する温度Tまで加熱することにより、前記樹脂材料のマトリクス樹脂を溶融または軟化させ、前記樹脂材料と前記不織布と前記金属とを重ねて圧縮する際に、溶融または軟化させた前記マトリクス樹脂を前記不織布に含浸させることを含む(請求項16)。
【0018】
前記樹脂材料の前記マトリクス樹脂の融点Tmm(℃)またはガラス転移温度Tgm(℃)≦T(℃)<前記不織布の形状保持可能温度の上限値Th(℃)……式(1)
また、前記樹脂材料が強化繊維を含まない樹脂からなる材料としてもよい(請求項17)。
【0019】
また、前記不織布がポリエステル繊維を含んでいてもよい(請求項18)。
また、前記不織布と前記金属が重ね合わされて一体化されたシートの前記不織布の面を前記樹脂材料に重ね合わせた状態で、前記加熱してもよい(請求項19)。
【発明の効果】
【0020】
本発明の成形方法によれば、FRPと金属のハイブリッド部材に、簡便に寸法精度を高くして欠陥を抑制できる。
本発明のハイブリッド部材によれば、寸法精度が高く、欠陥が少ない。
【0021】
本発明のアンダーカバーは、寸法精度が高く、欠陥が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態の成形方法の説明図である。
図2】一実施形態の成形方法の説明図である。
図3】(a)、及び(b)は一実施例の成形方法の断面図、(c)は金型にFRPと金属シート(金属板)を載置した状態の説明図である。
図4】他の実施形態の成形方法の説明図である。
図5】他の実施形態の成形方法の説明図である。
図6】他の実施形態の成形方法の説明図である。
図7】一実施例のアンダーカバーの斜視図である。
図8】(a)、及び(b)は従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態の成形方法、及びアンダーカバーを図1図7を参照して説明する。
【0024】
以下では、説明の便宜上、繊維強化複合材料に含まれる不織布には、符号Aを付与するとともに、繊維強化複合材料と金属とで挟む不織布には符号Bを付与する。便宜的に繊維強化複合材料を一例として説明するが、繊維強化複合材料は、樹脂材料に置き換えて適用することもできる。樹脂材料は、繊維強化複合材料であってもよく、強化繊維を含まない樹脂からなる材料であってもよい。
【0025】
不織布Bの形状保持可能温度の上限値Thは、不織布Bが加熱された際、その形状を保持できる温度域の上限値である。
すなわち、形状を保持できる温度域の上限値は、不織布Bを構成する後述する複数の繊維内の1種が選択された場合は、その繊維の形状が加熱温度にのみ起因して変形が生じない温度の上限値である。または2種以上の組合せの場合には、その2種以上の組合せの各繊維の形状が加熱温度にのみ起因してともに変形が生じない温度の上限値である。
【0026】
ここでいう、変形は、固体からガラス状への変形、或いは固体から液状への変形、或いは、熱分解、或いは、燃焼することを含む。ただし、この変形には、加圧による変形は、除くものとする。
【0027】
<1.繊維強化複合材料>
繊維強化複合材料(以下、FRPという)は、強化繊維基材にマトリクス樹脂を含浸させて形成されている。FRPのマトリクス樹脂は、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を含んでいてもよい。スタピング成形に用いる観点では、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。強化繊維基材は、強化繊維が一方向に引き揃えられたシート、短尺繊維がランダムに配向したマット、不織布Aの繊維マットなどであってもよい。不織布Aの繊維マットを例に挙げて説明する。
【0028】
<2.不織布A>
不織布Aの繊維マットは、ガラス繊維のみ(無機繊維)から構成されることが好ましいが、これに限定されるものではない。不織布Aは、ガラス繊維以外の例としては、カーボン繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維、プラスチック繊維、天然繊維、金属繊維、パルプ繊維等の1種のみから構成されていてもよく、或いは選択した2種以上を組合せて構成されていてもよい。
【0029】
これらの繊維の温度特性は、下記の通りである。
ガラス繊維の軟化点は、不織布Aの形状保持可能温度の上限値Thであって、840℃である。
【0030】
カーボン繊維の熱分解温度は、不織布Aの形状保持可能温度の上限値Thであって、3650℃である。
アラミド繊維の融点は、不織布Aの形状保持可能温度の上限値Thであって、450~500℃である。
【0031】
玄武岩繊維の耐熱温度は、不織布Aの形状保持可能温度の上限値Thであって、約600~700℃である。
以下のプラスチック繊維、天然繊維の数値は、日本化学協会の「毛繊維に関するデータ集」(https://www.jcfa.gr.jp/about_kasen/knowledge/data/index.html)によるものである。
【0032】
天然繊維である植物繊維(綿)の熱分解温度は、不織布Aの形状保持可能温度の上限値Thであって、235℃である。
金属繊維の耐熱性は、その金属の特性(耐熱性)に依存する。金属繊維が、金属繊維のみで構成されている場合、その金属の融点となる。例えば、ステンレス繊維の場合は、その融点が、不織布Aの形状保持可能温度の上限値Thであって、1400~1450℃である。
【0033】
パルプ繊維の場合、ガラス転移温度または熱分解温度が不織布Aの形状保持可能温度の上限値Thであって、300℃である。
<3.熱可塑性樹脂>
前記熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂等を挙げることができる。
【0034】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgm、及び融点Tmmは、下記の通りである。なお、この数値は、グレードによって異なることもあるため、代表的な数値であることを理解されたい。
【0035】
ポリプロピレン樹脂のガラス転移温度Tgmは、0℃であり、その融点Tmmは、166~173℃である。
ポリエチレン樹脂のガラス転移温度Tgmは、-21℃であり、その融点Tmmは、125~135℃である。
【0036】
ポリアミド樹脂は、種々あるが、この中で、ポリアミド6のガラス転移温度Tgmは、50~60℃であり、その融点Tmmは、225℃である。また、ポリアミド66のガラス転移温度Tgmは、50℃であり、その融点Tmmは、265℃である。
【0037】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgmは、70~90℃であり、その融点Tmmは、250~260℃である。
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度Tgmは、140~150℃であり、その融点Tmmは、約230~260℃である。
【0038】
ポリ塩化ビニル樹脂のガラス転移温度Tgmは、70~80℃であり、その融点Tmmは、約170℃である。
ポリスチレン樹脂のガラス転移温度Tgmは、100℃であり、その融点Tmmは、約230℃である。
【0039】
ABS樹脂のガラス転移温度Tgmは、グレードによって幅があるが、おおよそ80~110℃の範囲である。すなわち、ABS樹脂の軟化は、加熱されたときにこの温度域から軟化する。なお、ABS樹脂は、非結晶性であるため、融点はない。
【0040】
特に、本成形方法において、熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
また、本成形方法において、前記FRPがガラス繊維を含むことが好ましい。
ここで、FRPに含まれるマトリクス樹脂(熱可塑性樹脂)が、融点を有する場合は、この融点以上の温度Tに加熱されることにより、不織布Aの繊維マットから、不織布Bの空隙に流動し、不織布Bがマトリクス樹脂で含浸される。この場合、前記温度Tは、後述する不織布B、並びに前記不織布Aの形状保持可能温度の上限値Thの未満としているため、不織布A,Bはその形状が保持される。
【0041】
また、選択されたFRPに含まれるマトリクス樹脂(熱可塑性樹脂)に融点がなく、ガラス転移温度Tgmを有する場合、ガラス転移温度Tgm以上の温度Tに加熱されることにより、不織布Aの繊維マットから、不織布Bの空隙に含浸される。この例としては、ABS樹脂がある。ABS樹脂の場合は、ガラス転移温度Tgmが軟化温度(軟化点)である。この場合、前記温度Tは、ガラス転移温度Tgm以上であって、後述する不織布B、並びに前記不織布Aの形状保持可能温度の上限値Thの未満とすることにより、不織布A,Bはその形状が保持される。
【0042】
<4.不織布B>
FRPと金属とで挟まれる不織布Bは、プラスチック繊維のみから構成されることが好ましい。しかし、これに限定されるものではない。不織布Bは、プラスチック繊維以外を選択した場合の例としては、不織布Aの欄で前述したカーボン繊維、アラミド繊維、玄武岩繊維、天然繊維、金属繊維、パルプ繊維等の1種のみから構成されていてもよく、或いは2種以上の組合せから構成されていてもよい。不織布Bは、不織布Aと同じ構成としてもよい。
【0043】
そして、不織布Bを構成する繊維として、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgm、或いは融点Tmmより高い形状保持可能温度の上限値Thを有する繊維を選択してもよい。
【0044】
本実施形態では、不織布Aの欄では説明していないプラスチック繊維の具体例について説明する。
不織布Bを構成するプラスチック繊維としては、ポリエステル繊維、ポリカーボネート繊維、エポキシ繊維、ビニルエステル繊維、フェノール繊維等を挙げることができる。不織布Bは、これらのものから選択した一つの樹脂により形成されていてもよい。
【0045】
ここで、不織布Bは、プラスチック繊維としてポリエステル繊維を含んでいてもよい。不織布B全質量に対してポリエステル繊維を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。
【0046】
ポリエステル繊維は、ステープルが好ましいが、フィラメントであってもよい。
ポリエステル繊維は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等がある。
【0047】
PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維の形状保持可能温度の上限値Thは、融点の260℃である。
PEN(ポリエチレンナフタレート)繊維の形状保持可能温度の上限値Thは、融点の265℃である。
【0048】
PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)繊維の形状保持可能温度の上限値Thは、融点の230℃である。
また、PBT(ポリブチレンテレフタレート)繊維の形状保持可能温度の上限値Thは、融点Tmnの220~230℃である。
【0049】
また、繊維が含有していてもよい熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂においても、前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgm、或いは融点Tmmよりも高い形状保持可能温度の上限値Thとすればよい。
【0050】
<5.金属>
金属は、前記温度Tで加熱される際に、当該温度Tで溶融しないものであれば、いずれのものであってもよい。例えば、鉄(融点1536℃)及びその合金、アルミニウム(融点660℃)及びその合金、銅(融点1084.5℃)及びその合金、ニッケル(1455℃)及びその合金等を挙げることができる。
【0051】
また、金属の表面に、皮膜が形成されていてもよい。この皮膜は、前記温度Tで加熱される際に、当該温度Tで溶融、或いは熱分解しないものであればよい。金属は、不織布Bに接着剤等を用いて貼り合わされていてもよい。
【0052】
<6.一実施形態の成形方法>
一実施形態の成形方法について、説明する。
図1に示すように、熱圧成形プレス用の下金型50に対して、温度Tまで加熱したFRP10を載置し、その後、不織布20及び金属30を順に載置して重ね合わせる。不織布20は、前記不織布Bである。FRP10、不織布20及び金属30は、シート状に形成されている。不織布20は、接着剤等を用いて金属30やFRP10と貼り合わせてもよい。
【0053】
本実施形態では、FRP10は、ガラス繊維からなる不織布Aと、熱可塑性樹脂であるポリプロピレン樹脂からなる。また、不織布20(不織布B)は、ポリエステル繊維であるPET、PEN、PTT、PBT等のうち、いずれか1種が選択されている。
【0054】
この状態で、図2に示すように、下金型50に載置されている積層状態のFRP10、不織布20及び金属30に対して、上金型60を上面から加圧して圧縮する。この圧縮時には、温度Tは保持されている。
【0055】
ここで、温度Tは、FRP10のマトリクス樹脂(熱可塑性樹脂)であるポリプロピレン樹脂の融点Tmm(℃)以上の値としている。なお、FRP10のマトリクス樹脂(熱可塑性樹脂)として、例えば、ABS樹脂が選択されている場合には、温度Tは、ガラス転移温度Tgm以上の値とする。
【0056】
また、温度Tは、不織布Bの形状保持可能温度の上限値Th(℃)未満の温度としている。本実施形態では、不織布Bは、ポリエステル繊維であるため、ポリエステル繊維の上限値Th未満の値としている。なお、不織布Aは、ガラス繊維であるため、その形状保持可能温度の上限値Thは、840℃である。
【0057】
この加熱により、FRP10のポリプロピレン樹脂が、溶融(または軟化)する。また、圧縮により溶融(または軟化)した不織布20(不織布B)の空隙内に含浸する。不織布20(不織布B)の空隙内に含浸した熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)は、その後、自然冷却により固化する。このポリプロピレン樹脂の自然冷却による固化により、FRP10、不織布20及び金属30は、下金型50及び上金型60のプレス面の形状に沿った形状に成形される。この成形されたFRP10の層は、繊維強化複合材料層に相当する。この成形された不織布20の層は不織布層に相当する。
【0058】
また、FRP10の不織布A及び不織布20(不織布B)は、温度Tよりも高い形状保持可能温度の上限値Thを有する。このため、加圧されても、その形状が安定化している。また、金属30は、不織布20(不織布B)によるアンカー効果により、ずれることなく精度良く配置される。加熱加圧後のFRP10及び不織布20(不織布B)の厚みは、加熱加圧前の厚みよりも小さくなる。
【0059】
さらに、金属30とFRP10間に配置された不織布20(不織布B)の空隙内にある空気は、前記加圧及び前記含浸する熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)により追い出されて外部に逃げることができる。このため、ボイドによる欠陥を抑制できる。
【0060】
上記の成形方法は、例えば、車両のアンダーカバーの成形方法として利用できる。しかし、アンダーカバーに限定するものではなく、アンダーカバー以外の成形方法に具体化してもよい。
【0061】
<7.他の実施形態による成形方法>
他の実施形態の成形方法について、説明する。
図4に示すように、熱圧成形プレス用の下金型50に対して、温度Tまで加熱したシート状のFRP10を載置する。
【0062】
次に、図5に示すように、シート状の不織布20(不織布B)とシート状の金属30を予め接着した積層シートを、不織布20側がFRP10と接触するように載置して重ね合わせる。金属30と不織布20を予め貼り合わせたシートとしておくことで、シートを加熱しなくてもFRP10を加温することでFRP10中の溶融したマトリクス樹脂と不織布20とが接着できる。
【0063】
不織布20と金属30を接着する接着剤は、熱可塑性が好ましいが、熱硬化性であってもよい。
熱可塑性接着剤としては、酢酸ビニル系、ポリビニルアセタール系、酢酸ビニル共重合系、エチレン酢酸ビニル系、塩化ビニル系、アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、セルロース系、オレフィン系、スチレン系を挙げることができる。熱硬化性接着剤としては、エポキシ系、アクリル系等を挙げることができる。
【0064】
また、これらの接着剤の形態が変化する温度(軟化点、溶融温度、熱分解温度)は、成形温度より高いことが好ましい。
本実施形態におけるFRP10、不織布20及び金属30は、前述した一実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0065】
この状態で、図6に示すように、下金型50に載置されている積層状態のFRP10、不織布20及び金属30に対して、上金型60を上面から温度Tで加熱加圧する。
このように、不織布20(不織布B)とシート状の金属30を予め接着して一体化した積層シートを形成した後、一体化したシートの不織布20(不織布B)とFRP10を重ね合わせた状態で加熱加圧成形する。
【0066】
この加熱加圧により、FRP10のポリプロピレン樹脂が、溶融(または軟化)して、不織布20(不織布B)の空隙内に含浸する。不織布20(不織布B)の空隙内に含浸した熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)は、その後、自然冷却により固化する。このポリプロピレン樹脂の自然冷却による固化により、FRP10、不織布20及び金属30は、下金型50及び上金型60のプレス面の形状に沿った形状に成形される。
【0067】
この成形方法においても、FRP10の不織布A及び不織布20(不織布B)は、温度Tよりも高い形状保持可能温度の上限値Thを有する。このため、加圧されても、その形状が安定化している。また、金属30は、不織布20(不織布B)によるアンカー効果により、ずれることなく精度良く配置される。加熱加圧後のFRP10及び不織布20(不織布B)の厚みは、加熱加圧前の厚みよりも小さくなる。
【0068】
さらに、金属30とFRP10間に配置された不織布20(不織布B)の空隙内にある空気は、前記加圧及び前記含浸する熱可塑性樹脂(ポリプロピレン樹脂)により追い出されて外部に逃げることができる。このため、ボイドによる欠陥を抑制できる。
【0069】
上記の成形方法は、例えば、車両のアンダーカバーの成形方法として利用できるが、アンダーカバー以外の成形方法に具体化してもよい。
<8.金属としてアルミニウム(以下、アルミという)を使用する実施形態>
図7は、上記成形方法を、金属30をアルミに具体化して、アンダーカバーを成形した場合のアンダーカバー70の斜視図である。
【0070】
図7に示すアンダーカバー70において、平面視した状態で半分の領域は、三層構造であり、残りの半分の領域は二層構造である。
前記三層構造の領域は、FRP10から形成されたFRP層14を最下層とし、不織布20から形成された不織布層24を中間層とし、金属30から形成された金属層34を最上層としている。二層構造の領域は、FRP層14を最下層とし、前記不織布層24を最上層としている。二層構造の領域の不織布層24は、配置しないようにして、FRP層14を最上層とすることもできる。なお、図7において、各層の厚みは、説明の便宜上、誇張して厚く描かれている。
【0071】
上記の三層構造の領域では、前記成形方法により成形できる。また、二層構造領域では、前記三層構造の金属層34が省略された状態で、三層構造と同時に金型により成形される。この成形により、二層構造の領域では、下方へ向かって形成された有底の凹部70aを有するものとなっている。また、三層構造の領域では、下方へ向かって形成された有底の凹部70bを有するものとなっている。また、凹部70bは、一側端の端部が横方向(図7において、左方)及び下方向に開放されるように形成されている。なお、図7の例のアンダーカバー70の形状は、一例であって、この形状に限定するものではない。
【0072】
<9.実施例>
次に実施例及び比較例を図3(a)~(c)を参照して説明する。
[実施例1]
300mm平板金型を用いて、下記の条件及び成形手順で厚さt=2.5mm板厚の成形品を成形した。
【0073】
(9.1.条件)
(1)使用プレス機 :800トンプレス
プレス面52(図3(c)参照):300mm×300mm
(2)FRP12の大きさ:287mm×287mm×3.8mm
(3)FRP12の材質 :ガラス繊維マット、ポリプロピレン樹脂を含む。
【0074】
(三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ社製:P4038-BK31)
(4)不織布22(図3(a)参照):ポリエステル繊維(PET繊維、結晶融点251℃、厚さ0.15mm、目付35g/m2)
(5)加熱温度:遠赤外加熱炉を用いて、炉内温度250℃に設定。
【0075】
(6)加熱時間 :240秒(温度Tが200℃となるように)
(7)金型温度 :40℃
(8)加圧力 :200トン
(9.2.成形手順)
(1)図3(c)に示すように、前記遠赤外加熱炉で温度Tまで加熱したFRP12をプレス面52に載置する。
【0076】
(2)図3(c)に示すように、FRP12上に、不織布22(不織布B)とアルミシートとをポリエステル系接着剤で接着したアルミシート32を載置する。
(3)プレス機で、上記加圧力で加熱加圧した後、自然冷却する。
【0077】
上記の成形手順で行った結果、図3(a)に示す加熱加圧前の不織布22に、FRP12のポリプロピレン樹脂が含浸されていることが確認できた。
アルミシート32は、不織布22(不織布B)によるアンカー効果により、ずれることなく精度良く配置されていること、及びボイドによる欠陥が抑制されていることが確認できた。加熱して圧縮後のFRP12及び不織布22(不織布B)の厚みは、加熱加圧前の厚みよりも小さい2.5mmに成形されていることも確認できた。
【0078】
得られた成形品を25mm幅にカットしてテストピースを作成し、せん断接着強さを測定した。最大荷重(5回測定の平均値)は187.5Nであり、FRP12とアルミシート32は、十分な強度で接着されていた。なお、せん断接着強さは、島津製作所製AUTOGRAPH AG-10TAを用い、JIS K6854-2に基づき180°剥離試験を行うことで測定した。
【0079】
なお、図3(b)は、説明の便宜上、図3(a)と同様の厚みを有するように図示している。
[比較例1]
実施例1において、不織布22を用いなかった以外は、実施例1と同様の方法で成形品を成形した。
【0080】
得られた成形品において、FRP12とアルミシート32は全く接着されていなかった。
[比較例2]
実施例1において、不織布22の代わりに接着フィルム(クラボウ製ホットメルトフィルムP-6700)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で成形品を成形した。
【0081】
得られた成形品において、FRP12とアルミシート32は一部しか接着されていなかった。
[実施例2]
実施例において、FRP12を樹脂材料(ポリプロピレン樹脂)に置き換えた以外は、実施例1と同様の方法で成形品を成形した。なお、以降では、前記樹脂材料に対してFRP12と同一の符号12を付して説明する。
【0082】
その結果、図3(a)に示す加熱加圧前の不織布22に、ポリプロピレン樹脂が含浸されていることが確認できた。
アルミシート32は、不織布22(不織布B)によるアンカー効果により、ずれることなく精度良く配置されていること、及びボイドによる欠陥が抑制されていることが確認できた。加熱して圧縮後の樹脂材料12及び不織布22(不織布B)の厚みは、加熱加圧前の厚みよりも小さい2.5mmに成形されていることも確認できた。
【0083】
得られた成形品を25mm幅にカットしてテストピースを作成し、せん断接着強さ測定を行った。最大荷重(5回測定の平均値)は504.3Nであり、樹脂材料12とアルミシート32は十分な強度で接着されていた。なお、せん断接着強さは、島津製作所製AUTOGRAPH AG-10TAを用い、JIS K6850に基づき引張せん断接着強さ試験を行うことで測定した。
【0084】
[比較例3]
実施例2において、不織布22を用いなかった以外は、実施例2と同様の方法で成形品を成形した。
【0085】
得られた成形品において、樹脂材料12とアルミシート32は全く接着されていなかった。
[比較例4]
実施例2において、不織布22の代わりに接着フィルム(クラボウ製ホットメルトフィルムP-6700)を用いた以外は、実施例2と同様の方法で成形品を成形した。
【0086】
得られた成形品において、樹脂材料12とアルミシート32は全く接着されていなかった。
上記実施形態によれば下記の特徴を有する。なお、FRP10(繊維強化複合材料)を樹脂材料に置き換えた場合も同様の特徴を有する。
【0087】
(1)前記一実施形態のハイブリッド部材の成形方法は、FRP10(繊維強化複合材料)と金属30とで不織布20(不織布B)を挟んで成形するハイブリッド部材の成形方法である。この方法は、FRP10を式(1)を満足する温度Tまで加熱することにより、FRP10のマトリクス樹脂を溶融または軟化させ、FRP10と不織布20と金属30とを重ねて圧縮する際に、溶融または軟化するマトリクス樹脂を前記不織布20に含浸させる。
【0088】
FRP10(繊維強化複合材料)のマトリクス樹脂の融点Tmm(℃)またはガラス転移温度Tgm(℃)≦T(℃)<不織布20の形状保持可能温度の上限値Th(℃)……式(1)
金属30は、不織布20によるアンカー効果により、ずれることなく精度良く配置されるとともに、加熱加圧後のFRP10及び不織布20の厚みは、加熱加圧前の厚みよりも小さくなる。さらに、金属30とFRP10間に配置された不織布20の空隙内にある空気は、前記加圧及び前記含浸する熱可塑性樹脂により追い出されて外部に逃げることができる。このため、ボイドによる欠陥を抑制できる。この結果、FRP10と金属30のハイブリッド部材に、簡便に寸法精度を高くして欠陥を抑制できる。この結果、前記欠陥に起因した外観不良や強度低下等を抑制できる。
【0089】
(2)前記一実施形態のハイブリッド部材の成形方法では、FRP10(繊維強化複合材料)のマトリクス樹脂が熱可塑性樹脂を含むことにより、上記(1)の効果を容易に実現できる。
【0090】
(3)前記一実施形態のハイブリッド部材の成形方法では、熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含むことにより、上記(1)の効果を容易に実現できる。
(4)前記一実施形態のハイブリッド部材の成形方法では、前記FRP10(繊維強化複合材料)がガラス繊維を含むことにより、上記(1)の効果を容易に実現できる。
【0091】
(5)前記一実施形態のハイブリッド部材の成形方法では、前記不織布20がポリエステル繊維を含むことにより、上記(1)の効果を容易に実現できる。
(6)前記他の実施形態による成形方法では、不織布20と金属30が重ね合わされて一体化された積層シートを形成し、積層シートの不織布20に対して前記FRP10を重ね合わせた状態で、前記加熱することにより、上記(1)の効果を容易に実現できる。
【0092】
(7)前記実施形態のアンダーカバー70は、金属層34、不織布層24、FRP層14(繊維強化複合材料層)を具備する。アンダーカバー70は、不織布層24にはFRP層14に含まれるマトリクス樹脂と同一の樹脂が含浸されている。
【0093】
また、アンダーカバー70は、金属層34、不織布層24、FRP層14(繊維強化複合材料層)の順に重ね合わせられている。
また、アンダーカバー70は、金属層34とFRP層14(繊維強化複合材料層)の間に不織布層24が配置されている。
【0094】
また、アンダーカバー70において、FRP層14(繊維強化複合材料層)が熱可塑性樹脂を含む。
また、アンダーカバー70は、前記熱可塑性樹脂がポリプロピレン樹脂を含む。
【0095】
また、アンダーカバー70は、FRP層14(繊維強化複合材料層)がガラス繊維を含む。
また、アンダーカバー70は、不織布層24がポリエステル繊維を含む。
【0096】
この結果、アンダーカバー70は、寸法精度が高いとともにボイドによる欠陥が抑制された効果を有する。また、前記欠陥に起因した外観不良や強度低下等を抑制できる。
【符号の説明】
【0097】
10…FRP
12…FRP(樹脂材料)
14…FRP層
20、22…不織布
24…不織布層
30…金属
32…アルミシート
34…金属層
50…金型(雌)
60…金型(雄)
70…アンダーカバー
100…FRP
200…不織布層
300…金属
400…接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8