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特開2024-81600外部磁界を検出可能なステッピングモータの制御回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081600
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】外部磁界を検出可能なステッピングモータの制御回路
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/14 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
G04C3/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023194888
(22)【出願日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】22211700.4
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】22214282.0
(32)【優先日】2022-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ベルトゥー、 イエルク
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101BA07
2F101BH00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】外部磁界の存在を検出するステッピング型モータの電子制御回路を提供する。
【解決手段】双極性永久磁石6と、固定子4と、固定子4の磁気回路に取り付けられたコイル18とを備えるステッピング型モータ2、特に時計モータの制御回路20であって、制御回路20は、静止時の回転子の位置を決定する手段と、電気パルス発生器22と、電気パルスがトリガされた後のコイル内の電流を測定する回路26、測定された電流を基準電流と比較する回路28、電気パルスがトリガされてから次にコイルに流れる電流が基準電流に達するまでの立ち上がり時間を測定可能な時間を測定する回路32、及び測定された立ち上がり時間が、2つの峡部の整列方向14に直交する方向に従って2つの峡部を通過する所与の外部磁界の存在を示すかどうかを決定できるように構成される立ち上がり時間を処理する回路36によって形成される外部磁界を検出する回路24とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピング型モータ(2)の電子制御回路(20)において、
前記モータは回転子(3)及び固定子(4)を備えており、前記回転子(3)は、前記回転子の回転軸(7)に垂直な磁化軸を有する双極性の永久磁石(6)を備えており、前記固定子(4)は、磁気回路と、前記永久磁石のための筐体を形成する開口部(8)と、前記開口部の周囲にあって前記回転軸に垂直な第1の方向(14)において直径方向に対向する2つの峡部(12a及び12b)と、前記永久磁石が第1の方向から角度的にオフセットされた第2の方向(16)にそれぞれ両方の方向性に配向された前記回転子の2つの静止位置とを画定し、前記永久磁石は、前記2つの静止位置において、前記2つの峡部をそれぞれ両方の方向性に通過する第1の磁束(F)を生成し、第1の静止位置は、前記第1の磁束の正の方向性に対応し、第2の静止位置は、前記第1の磁束の負の方向性に対応し、前記モータは、正の電気パルス(+I(t))又は負の電気パルス(-I(t))が供給されたときに、前記正の方向性及び前記負の方向性のそれぞれにおいて、前記2つの峡部を通過する第2の磁束を生成することができるように、前記磁気回路に取り付けられるコイル(18)をさらに備え、前記電子制御回路は、前記第1及び第2の静止位置の中から前記回転子の静止位置を決定する手段と、前記コイルに正及び負の電気パルスを選択的に供給することができるように構成される電気パルス発生器(22)とを備え、
電子制御回路(20)は、電流を測定する回路(26)によって形成される外部磁界を検出する回路(24)と、測定された電流を基準電流(IRef)と比較する回路(28)と、前記電気パルスの1つがトリガされてから前記コイルを流れる電流が前記基準電流に達する次の瞬間までの立ち上がり時間(T)を測定するように構成される時間測定回路(32)と、前記立ち上がり時間を処理する回路(36)であって、測定された立ち上がり時間が前記2つの峡部を通過する外部磁界(HExt)の存在を示すかどうかを判定できるように構成される回路とを備えることを特徴とする、電子制御回路。
【請求項2】
前記モータの前記2つの峡部は、前記第1の磁束及び前記第2の磁束が、主として前記第1の方向と直交する第3の方向(40)に従って前記2つの峡部を通過するように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の電子制御回路。
【請求項3】
前記立ち上がり時間(T)を処理する前記回路(32)は、少なくとも有効な値の範囲内で近似的に、前記2つの峡部を適宜通過する前記外部磁界の強度又は前記外部磁界の前記磁束の強度を、又は前記2つの峡部を通過する前記外部磁界の強度又は前記磁束の強度が所定の最小値より大きいかどうかを決定できるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の電子制御回路。
【請求項4】
前記立ち上がり時間(T)を処理する回路は、少なくとも有効な値の範囲内で、前記2つの峡部を適宜通過する前記外部磁界の強度又は前記磁束の強度が、互いに連続する複数の特定の値の範囲のうち特定の値の範囲内にあるかどうかを判定できるように構成されることを特徴とする、請求項3に記載の電子制御回路。
【請求項5】
前記外部磁界を検出する前記回路(24)は、前記2つの峡部を適宜通過する前記外部磁界の方向性を決定できるように構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子制御回路。
【請求項6】
外部磁界の存在を検出するために、前記回転子の静止位置と逆位相の電気パルス、すなわち、前記回転子が前記正の静止位置にあるときは負の電気パルス、前記回転子が前記負の静止位置にあるときは正の電気パルスを生成し、それによって前記外部磁界の検出により前記回転子が1ステップ前進しないように構成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子制御回路。
【請求項7】
外部磁界の存在を検出するために、前記回転子の前記静止位置と同相の電気パルス、すなわち、前記回転子が前記正の静止位置にあるときは正の電気パルス、前記回転子が前記負の静止位置にあるときは負の電気パルスを生成するように構成され、
前記同相のパルスは、前記外部磁界の検出を可能にするように選択される持続時間を有し、選択された持続時間は前記ステッピング型モータを1ステップ前進させないことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の電子制御回路。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに1項に記載の電子制御回路(20)及びステッピング型モータ(2)を備える時計ムーブメントにおいて、
前記モータは回転子(3)及び固定子(4)を備えており、前記回転子(3)は、前記回転子の回転軸(7)に垂直な磁化軸を有する双極性の永久磁石(6)を備えており、前記固定子(4)は、磁気回路と、前記永久磁石のための筐体を形成する開口部(8)と、前記開口部の周囲にあって前記回転軸に垂直な第1の方向(14)において直径方向に対向する2つの峡部(12a及び12b)と、前記永久磁石が前記第1の方向から角度的にオフセットされた第2の方向(16)にそれぞれ両方の方向性に配向された前記回転子の2つの静止位置とを画定し、前記永久磁石は、前記2つの静止位置において、前記2つの峡部をそれぞれ両方の方向性に通過する第1の磁束(F)を生成し、第1の静止位置は、前記第1の磁束の正の方向性に対応し、第2の静止位置は、前記第1の磁束の負の方向性に対応し、前記モータは、正の電気パルス(+I(t))又は負の電気パルス(-I(t))が供給されたときに、前記正の方向性及び前記負の方向性のそれぞれにおいて、前記2つの峡部を通過する第2の磁束を生成することができるように、前記磁気回路に取り付けられるコイル(18)をさらに備える、時計ムーブメント。
【請求項9】
請求項8に記載の時計ムーブメントを備えることを特徴とする、腕時計。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子制御回路(20)によって制御されるステッピング型モータ(2)、特に時計モータが配置される外部磁界を検出する方法において、
前記回転子(3)の静止位置、すなわち、前記回転子が正の静止位置にあるか又は負の静止位置にあるかを決定するステップと、
電気検出パルス(I(t))を生成するステップと、
前記電気パルスの極性が前記回転子の前記静止位置と同相である場合、前記立ち上がり時間が第1の基準時間より長いかどうかを判定し、前記電気検出パルスの極性が前記回転子の前記静止位置と逆位相である場合、前記立ち上がり時間が第2の基準持続時間より短いかどうかを判定するステップと、
前記電気パルスの前記極性が負であり、かつ前記立ち上がり時間が前のステップの2つの条件の1つを満たす場合、正の方向性を有しかつ所定の第1の最小値よりも高い強度を有する外部磁界(HExt)の存在を決定し、前記回転子の前記静止位置が正であり、かつ前記立ち上がり時間が前のステップの2つの条件の1つを満たす場合、負の方向性を有しかつ所与の所定の第2の最小値よりも高い強度を有する外部磁界の存在を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記回転子が正又は負の静止位置にあるときに前述のステップが実行される第1のフェーズと、前記モータが1つのモータステップを実行した後に行われ、かつ前記回転子がそれぞれ負又は正の静止位置にある間に前述のステップが再び実行される第2のフェーズとを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの外部にあってこのモータの環境中に存在する磁界を検出するように構成されるステッピングモータの制御回路に関する。
【0002】
特に、ステッピングモータは時計用モータであり、特にラベット型モータであり、電気機械式ムーブメントに組み込まれてアナログ表示を備えた電子時計を形成する。
【背景技術】
【0003】
米国特許第11,176,632号明細書には、ラベット型ステッピングモータを含む電気機械式時計が記載されており、これは、双極性永久磁石を備えた回転子と、固定子によって形成された磁気回路上に取り付けられたコイルとを有する。この固定子は、磁石のための円形開口部を備え、開口部の周辺に直径方向に対向する2つの峡部(isthmi)を規定し、これらの2つの峡部は、固定子の2つの極を分離し、コイルによって生成された磁束を開口部全体に導く。
【0004】
モータは、コイルの電力供給を管理する制御回路に関連しており、回転子を回転駆動するために、一連の電気パルスをこのコイルに供給する。一連の各々は、同じ極性を有する電気パルスを有し、1つのモータステップを実行することが意図されており、一連の各々は、交互に反対の第1の極性及び第2の極性を有する。各モータステップを実行するために必要なトルク、回転子に適用される他の制約、又はモータに加えられている外乱に応じて、電気パルスは、一連の中の及び/又は一連同士の間で可変の持続時間を有する。この技術は、パルス幅変調(PWM;Pulse Width Modulation)と呼ばれており、周知のものである。モータステップを実行するための一連の中の電気パルスの数は、前述の物理的事象に従って変化することを観察することができる。
【0005】
米国特許第11,176,632号は、固定子の2つの極によって規定される方向に従って方向付けられた外部磁界が、これらの一連の極性に従って変化する一連の電気パルスの2つのパラメータに影響を与えることを教示している。より具体的には、一連の各々の電気パルスの数と共にこれらの電気パルスの最大持続時間が、前記磁界の存在下での極性に従って変化することを観察することができる(この磁界は、少なくとも所定のモード、特に回転子の高速駆動モードにおいて、モータの動作に外乱を発生させることができる強度を有することが理解される)。したがって、反対の極性、すなわち正及び負の極性を有する一連の間のこれらのパルスの最大持続時間又はパルス数のいずれかの比較に基づいて、外乱をもたらす外部磁界の存在を検出することが示唆される。
【0006】
この技術は、前述の米国文献の説明に示されているように、実装するのが比較的複雑であり、パルス幅変調技術を用いたモータの制御の場合にのみ可能である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、連続型のモータの駆動パルスを、すなわち、このモータの回転子の各駆動パルスの持続時間にわたって定電圧で(したがって、「PWM」なしで)、生成するモータの制御に適合された外部磁界を検出する回路を備えるステッピングモータの電子制御回路を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、従来技術で教示されたものとは異なりかつ本発明に至るまでの開発を通じて示された物理現象を利用することによって、効果的で比較的複雑でないステッピングモータの発展的制御回路を介して外部磁界を検出する方法を提供することにある。
【0009】
本発明は、ステッピングモータの電子制御回路に関し、このモータは、回転子の回転軸に垂直な磁化軸を有する双極性永久磁石を備えた回転子と、磁気回路及び永久磁石の筐体を形成する開口部を画定する固定子とを備える。また、固定子は、開口部の周囲において回転軸に垂直な第1の方向に直径方向に対向する2つの峡部と、永久磁石が第1の方向から両方向にそれぞれ角度的にオフセットされた第2の方向に配向される回転子の2つの静止位置とを規定する。永久磁石は、2つの静止位置において、2つの峡部をそれぞれ両方の方向性に通過する第1の磁束を生成し、定義によれば、第1の静止位置は、第1の磁束の正の方向性に対応し、第2の静止位置は、第1の磁束の負の方向性に対応する。モータは、正の電気パルス又は負の電気パルスが供給されたときに、正の方向性及び負の方向性のそれぞれにおいて、2つの峡部を通過する第2の磁束を生成することができるように、磁気回路に取り付けられるコイルをさらに備える。電気制御回路は、第1及び第2の静止位置の中から静止中の回転子の位置を決定する手段と、電力供給源に関連付けられ、かつ、正の電気パルス及び負の電気パルスをコイルに選択的に供給することができるように構成される電気パルス発生器とを備える。さらに、電子制御回路は、電流を測定する回路によって形成される外部磁界を検出する回路と、測定された電流を基準電流と比較する回路と、電気パルスの1つがトリガされてからコイルを流れる電流が基準電流に達する次の瞬間までの立ち上がり時間を測定するように構成される時間測定回路と、立ち上がり時間を処理する回路であって、測定された立ち上がり時間が2つの峡部を通過する所与の外部磁界の存在を示すかどうかを判定できるように構成される回路とを備える。
【0010】
2つの主要な変形例によれば、立ち上がり時間を処理する回路は、少なくとも有効な値の範囲内で近似的に、2つの峡部を適宜通過する外部磁界の強度又はその磁束の強度を、又は2つの峡部を通過する外部磁界の強度又は磁束の強度が基準値より大きいかどうかを決定できるように構成される。
【0011】
特定の変形例によれば、立ち上がり時間を処理する回路は、少なくとも有効な値の範囲内で、2つの峡部を適宜通過する外部磁界又はその磁束の強度が、互いに連続する複数の所定の値の特定の範囲うち特定の値の範囲内にあるかどうかを判定できるように構成される。
【0012】
有利な実施形態によれば、立ち上がり時間を処理する回路は、2つの峡部を適宜通過する外部磁界の方向性を判定できるように構成される。
【0013】
好ましい実施形態によれば、制御回路は、所与の外部磁界の存在を検出するために、回転子の静止位置と逆位相の電気パルス、すなわち、回転子が正の静止位置にあるときは負の電気パルス、回転子が負の静止位置にあるときは正の電気パルスを生成し、それによって外部磁界の検出により回転子が1ステップ前進しないように構成される。
【0014】
本発明の特徴により、比較的短い可能性がある電気パルス(検出パルス)がトリガされた後で、所定の基準時間までのモータのコイルにおける電流の立ち上がり時間に基づいて、外部磁界の存在を検出することが可能になる。この検出の条件は、検出パルスがトリガされたときの回転子の静止位置と、固定子に対する外部磁界の方向及び方向性に関するものであるが、これは発明の詳細な説明においてより明確になる。
【0015】
本発明は、本発明に従って配置されるステッピング型モータと、このモータの制御回路とを含む電気機械式ムーブメントに関し、このモータは、この回転子の回転軸に垂直な磁化軸を有する双極性永久磁石(次に、「永久磁石」又は「磁石」とも呼ばれる)を備える回転子と、磁気回路及び永久磁石の筐体を形成する開口部を画定する固定子とを備える。固定子は、開口部の周囲において回転軸に垂直な第1の方向に直径方向に対向する2つの峡部と、永久磁石が第1の方向から両方向にそれぞれ角度的にオフセットされた第2の方向に配向される回転子の2つの静止位置とを規定する。永久磁石は、両方の静止位置において、2つの峡部をそれぞれ両方の方向性に通過する第1の磁束を生成し、定義によれば、第1の静止位置は、第1の磁束の正の方向性に対応し、第2の静止位置は、第1の磁束の負の方向性に対応する。モータは、正の電気パルス又は負の電気パルスが供給されたときに、正の方向性及び負の方向性のそれぞれにおいて、2つの峡部を通過する第2の磁束を生成することができるように、磁気回路に取り付けられるコイルをさらに備える。本発明は、本発明による電気機械式ムーブメントを組み込んだ腕時計にも関する。
【0016】
さらに、本発明は、本発明による電子制御回路によって制御されるステッピング型モータ、特に時計モータが位置する外部磁界を検出する方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、非限定的な例として与えられる添付図面を参照して、以下により詳細に説明される。
図1】ステッピング及び単相型の時計モータ、及び本発明によるこのモータを制御するための回路の一般的な実施形態の概略図である。
図2】固定子の2つの峡部における回転子の磁石の磁束を概略的に示す図1の時計モータの概略図である。
図3】磁石の角度位置の関数として、固定子の2つの峡部における回転子の磁石の磁束の曲線を示すグラフである。
図4】正の電気パルスの間にコイルによって生成される磁束を概略的に示す図1の時計用モータの概略図である。
図5】固定子の2つの峡部及びコイルのコアにおいてそれぞれ負及び正のコイル内の電流によって生成される磁束の2つの曲線を示すグラフである。
図6】固定子内の外部磁界の循環を概略的に示す図1の時計用モータの概略図であり、この外部磁界は、固定子の平面内に位置し、かつ2つの峡部の整列方向に直交する略方向に従って、正の方向性に伝播する。
図7図6と同様の図1の時計用モータの概略図であるが、前述の略方向に従った外部磁界の負の方向性に関する図である。
図8】他の磁束が存在しない場合の外部磁界の強度の関数として、固定子の2つの峡部内を通過する外部磁束の曲線を示すグラフである。
図9図9A図9Dは、外部磁界が存在しない場合の、磁石の静止位置及び電気パルスの極性に関する様々な条件の関数として、電気パルスがトリガされた後のコイル内の電流の発展の4つの曲線を示す。
図10図10A図10Dはそれぞれ、図6に示すように、正の方向性の外部磁界が存在する場合の、磁石の静止位置及び電気パルスの極性に関する様々な条件の関数として、電気パルスがトリガされた後のコイル内の電流の発展の4つの曲線を示す。
図11図11A及び11Bは、この外部磁界の様々な強度に依存して、図6及び7による外部磁界の負及び正の2つの方向性について、それぞれ正の静止位置にある磁石及び同相電気パルス(正の極性)について、電気パルスがトリガされた後のコイル内の電流の発展の曲線を示す2つのグラフである。
図12図12A及び12Bは、この外部磁界の様々な強度に依存して、図6及び7による外部磁界の負及び正の2つの方向性について、それぞれ正の静止位置にある磁石及び逆位相電気パルス(負の極性)について、電気パルスがトリガされた後のコイル内の電流の発展の曲線を示す2つのグラフである。
図13】ゼロ又は弱い外部磁界及び比較的強い外部磁界について、固定子の2つの峡部における様々な可能な磁気構成において、電気パルスがトリガされた後のコイルにおける経時的な電流の立ち上がりの発展を示す表である。
図14】磁石の静止位置、電気パルスの極性及び両方向性の外部磁束の様々な強度の関数として、電気パルスのトリガ時に、基準強度までの電流の立ち上がり時間の持続時間を示す表である。
図15】同相電気パルスについて所与の外部磁界を検出する方法を開示する図である。
図16】逆位相電気パルスについて所与の外部磁界を検出する方法を開示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して、ステッピング型モータ2、特に時計モータの電子制御回路20を説明する。電子制御回路に組み込まれた検出回路であってモータ周囲の外部磁界を検出するように構成される検出回路24によって使用される物理現象、及びこの検出回路によって実現される外部磁界を検出する方法を詳細に説明する。
【0019】
モータ2は、この回転子の回転軸7に垂直な磁化軸を有する双極性永久磁石6を備えた回転子3と、磁気回路及び永久磁石6の筐体を形成する開口部8を規定する固定子4を備える。固定子は、さらに、回転軸7に垂直な第1の方向14に直径方向に対向する2つの峡部12a及び12bと、永久磁石、すなわちその磁化軸が第1の方向14から両方向にそれぞれ角度的にオフセットされた第2の方向16に配向される回転子の2つの安定した静止位置とを規定する。2つの静止位置は、従来、開口部8の端部に設けられた2つの直径方向に対向するノッチ10a及び10bによって決定されている。永久磁石6は、その2つの静止位置のそれぞれにおいて、両方向にそれぞれ2つの峡部を通過する第1の磁束Fを生成する。峡部12a及び12bは、いずれかの峡部を通過する磁束が、第1の方向14に直交する第3の方向40(図2に示す)に従って主にこの峡部を通過するように配置される。正の静止位置とも呼ばれる第1の静止位置は、+F図2を参照)として示された2つの峡部における第1の磁束Fの正の方向に対応し、負の静止位置とも呼ばれる第2の静止位置は、‐Fとして示された2つの峡部における第1の磁束Fの負の方向に対応する。図3は、永久磁石6の角度位置(反時計回り方向)の関数としての磁束Fの曲線42を示すグラフである。永久磁石、したがって回転子の正の静止位置PR1は0°であり、負の静止位置PR2は180°である。永久磁石の磁束は、両方の静止位置において固定子の2つの峡部をある程度飽和させることを観察することができる。磁気飽和がない場合、曲線は実質的に正弦波である。
【0020】
モータ2は、正の電気パルス+I(t)又は負の電気パルス-I(t)が供給されたときに、前記正の方向性である+F図4)及び前記負の方向性である-Fのそれぞれにおいて、主に第3の方向40に従って2つの峡部を通過する第2の磁束Fを生成することができるように、磁気回路に取り付けられたコイル18をさらに備える。図5は、回転子の磁石の磁束及び他の磁束が存在しない場合に、コイル内の電流I(t)の強度の関数として、2つの峡部12a及び12bにおいてコイル18によって生成される磁束F(t)の曲線46、及びコイルのコア内を伝播する対応する磁束の曲線48を示す。コア内の磁束は、電流の強度の増加に応じて実質的に直線的に増加し、一方で、峡部における磁束は急速に、すでに約0.05mAで飽和することが観察できる。図3及び図5から理解されるように、固定子内のコイルによって生成される磁束は、永久磁石によって生成される磁束よりも急速に高くなる。この結果、コイル16の磁束Fは、電気パルスがトリガされてから一定の遅延が経過した後に、2つの峡部における磁束の方向性を与え、これは、磁石Fの磁束が2つの峡部におけるコイルの方向性とは逆方向性であっても、急速に飽和に達する(所与の例では約100nWbの値)。
【0021】
電子制御回路20は、第1及び第2の静止位置の中から静止中の回転子の位置を決定する手段と、電源に関連付けられ、かつ、特に約1Vから3Vの間の電圧で、正の電気パルス+I(t)及び負の電気パルス-I(t)をコイルに選択的に供給することができるように構成される電気パルス発生器22とを備える。発生器22は、以下により詳細に説明するように、回転子を回転させるための電気パルス(駆動パルス)と共に外部磁界HExtを検出するための電気検出パルス(検出パルス)を供給することができるように構成される。特に、管理回路38は、コイルに供給される電気パルスの生成を管理する。電気駆動パルスは、合同で電気検出パルスも形成し得ることに留意されたい。他の修飾語に関連しない場合、用語「電気パルス」は、本明細書では電気検出パルス(検出パルス)を意味するものと理解される。回転子の正又は負の静止位置を決定する手段は、当業者に既知であり、典型的には、時計用ステッピングモータの制御回路に設けられる。電子制御回路20は、管理回路38に関連付けられた外部磁界HExtを検出するための回路24をさらに含み、これは、コイルに流れる電流の強度I(t)を測定する回路26と、測定された電流の強度I(t)を基準電流IRefと比較する回路28と、各電気検出パルスのトリガからコイルに流れる電流の強度I(t)が基準電流IRefに達する次の瞬間までの立ち上がり時間Tの測定を可能にする時間測定回路32と、測定された立ち上がり時間Tが、考慮された電気検出パルスの間に、第3の方向40に従って峡部12a及び12bを通過する所与の外部磁界HExtの存在を示すかどうかを決定することができるように構成される立ち上がり時間を処理するための回路36(これは、固定子内の磁束に対して2つの狭小部を画定する峡部の形状から生じ、これらは略円形である開口8に接線方向を向いている)とによって形成される。
【0022】
特に、比較回路28は、電気検出パルスがトリガされた後に、測定回路26から供給されるコイル電流の強度I(t)と、メモリ30から供給される基準電流IRefとを入力として受信し、強度I(t)が基準値IRefより高いかどうかを示す比較信号Sを出力する比較器29を備えている。検出回路24は、測定された電流の強度I(t)を略リアルタイムで監視することができる一方で、測定回路32(タイマ32)によって立ち上がり時間Tを正確に判定するように、比較的高いクロック信号、例えば、約500kHz以上のクロック信号を供給するタイムベース34を備える。
【0023】
図6及び図7は、外部磁界HExtを示す図であり、その主成分は、方向40、すなわち、2つの峡部12a及び12bの整列方向14に直交する方向に従って固定子の略平面において伝搬し、正の方向性では、それぞれ2つの峡部において磁束+Fを生成し、負の方向性では、2つの峡部において磁束-Fを生成する。なお、外部磁界HExtの検出方法において重要なのは、2つの峡部内を通過する磁束、すなわち、固定子4の2つの極部4A、4B間の2つの峡部を通過する磁束Fであり、これを「外部磁束」と呼ぶ。図8は、他の磁界が存在しない場合の、負の方向性及び正の方向性における外部磁界HExtの強度の関数として、固定子の2つの峡部における磁束Fの曲線50を示している。外部磁界の強度が増加したとき、外部磁束が2つの峡部を飽和することが観察できる。本明細書で説明する実施形態において考慮される外部磁界HExtの強度は、1,000A/mから、すなわち約2,000A/mまでの範囲である。しかしながら、本発明による検出方法は、この2,000A/m以下の外部磁界に限定されるものではない。
【0024】
図9A図9Dは、峡部内の外部磁界が存在しない場合の、回転子の正の静止位置及び負の静止位置、及びこれら2つの静止位置のそれぞれについて、正の電気パルス及び負の電気パルスについて、電気検出パルスがトリガされた後のコイルにおける電流の経時的な発展の4つの曲線を示す。本発明に至ったステッピング型モータの電子制御回路の開発に関連して、発明者は以下に述べる観察を行った。2つの峡部における永久磁石の磁束Fが、これら2つの峡部におけるコイルの磁束Fと同じ方向性、すなわち正の静止位置及び正の電流(図9A)、又は負の静止位置及び負の電流(図9B)のいずれかを有する場合、電流I(t)は、電気パルスがトリガされた後、比較的急速に増加する(電流の急速な増加及び速い基準電流IRefへの立ち上がり時間Tについて述べる)。反対に、2つの峡部における永久磁石の磁束Fが、これら2つの峡部におけるコイルの磁束Fと反対の方向性、すなわち正の静止位置及び負の電流(図9C)、又は負の静止位置及び正の電流(図9D)のいずれかを有する場合、電流は、電気パルスがトリガされた後、比較的ゆっくり増加する(電流の緩やかな増加及び遅い基準電流IRefへの立ち上がり時間Tについて述べる)。
【0025】
検出パルスがトリガされた後のコイルにおける電流I(t)の経時的な発展の4つの曲線が、図9A図9Dの4つの構成、及び2つの峡部における比較的強い正の外部磁束、すなわち+Fを生成する比較的正の外部磁界HExt、すなわち+HExt=+1,600A/mについてそれぞれ図10A図10Dに示される。電流と外部磁界が同じ符号を有する場合、すなわち、コイルの磁束F及び外部磁束Fが同じ方向性(ここでは正)を有する場合、電流I(t)は、永久磁石6が正又は負の静止位置にあるという事実に関係なく、電気パルスがトリガされた後で、比較的急速に増加することを観察することができる。反対に、電流及び外部磁界が反対の符号を有する場合、すなわち、コイルの磁束F(ここでは負)及び外部磁束F(ここでは正)が反対の方向性を有する場合、電流I(t)は、永久磁石が正又は負の静止位置にあるという事実に関係なく、電気パルスがトリガされた後で、比較的緩やかに増加する。
【0026】
したがって、このコイルに供給される電気パルスがトリガされた後、固定子4の2つの峡部を通過しかつ回転子3の永久磁石6によって生成される磁束Fとは反対の方向性を有する比較的強い外部磁束Fの存在下で、したがって外部磁界が正であり、永久磁石/回転子が負の静止位置にあるとき(図10B及び10D)、又は外部磁界が負であり、永久磁石/回転子が正の静止位置にあるとき、コイルに流れる電流I(t)の発展に変化があることが分かるであろう。より詳細には、回転子の永久磁石が電気検出パルスと同相のとき(コイルによって生成される磁束Fと同じ方向性/符号の磁石の磁束Fに対応する場合)、電流の強度I(t)は、外部磁界HExtが存在しない場合には急速に増加するが、回転子の磁石とは逆方向性/符号の比較的強い外部磁束Fを生成する外部磁界の存在下では緩やかに増加する。したがって、このように、上記条件における電流I(t)の立ち上がりは「速い」から「遅い」に変化するため、上記条件における比較的強い外部磁界HExtの存在下では、電流I(t)の立ち上がり時間Tは長くなる。
【0027】
逆に、回転子の永久磁石が電気検出パルスと逆位相のとき(コイルによって生成される磁束Fとは逆方向性/符号の磁石の磁束Fに対応する場合)、電流の強度I(t)は、外部磁界HExtが存在しない場合には緩やかに増加するが、回転子の磁石とは逆方向/符号の比較的強い外部磁束Fを生成する外部磁界の存在下では急速に増加する。したがって、このように、上記条件における比較的強い外部磁界HExtの存在下では、電流I(t)の立ち上がりは「遅い」から「速い」に変化するため、電流I(t)の立ち上がり時間Tは短くなる。本発明による外部磁界検出方法は、この物理現象に基づいたものであり、電気検出パルスがトリガされたときの回転子の静止位置(電気駆動パルスを供給するために必要な情報)を知って、その極性が明らかな状態で立ち上がり時間Tを測定することに基づいたものである(すなわち、それが正の電気パルスであるか負の電気パルスであるかに関わらず、この情報は電気パルスの発生時に与えられる)。
【0028】
図11A及び11Bは、永久磁石が同相の電気パルス、したがって正のパルスに対して正の静止位置にあり、外部磁界の様々な強度に対してそれぞれ負及び正の外部磁界がある場合の、コイルにおける電流I(t)の経時的な発展の曲線を示す。図11Aは、負の外部磁界について説明した物理現象を示している。図11Bは、外部磁界が永久磁石の静止位置と同じ方向性/符号を有するとき、すなわち、2つの峡部において外部磁束Fと磁石の磁束Fとが同じ方向性を有し、したがって同じ符号を有するとき、コイル内の電流は経時的にほとんど変化せず、速いままであることを示す。図12A及び12Bは、永久磁石が逆位相の電気パルス、したがって負のパルスに対して同様に正の静止位置にあり、外部磁界の様々な強度に対してそれぞれ負及び正の外部磁界がある場合の、コイルにおける電流I(t)の経時的な発展を示す曲線を示す。図12Aは、上述した物理現象を示す。図12Bは、外部磁界が永久磁石の静止位置と同じ符号を有するとき、コイル内の電流I(t)が経時的にほとんど変化せず、遅いままであることを再び示す。
【0029】
図13の表は、電気検出パルスがトリガされたときに、コイル18における電流I(t)の立ち上がり、及び基準電流IRefに到達するための立ち上がり時間Tに関して行われた観察及び特定の知見を要約している。図14の表は、外部磁界の様々な値を用いて、図13の知見を別の形態で及び数値的に再現する。比較的強い外部磁界の存在下又は非存在下での永久磁石の静止位置及び電気検出パルスの極性に関する初期条件に応じた立ち上がり時間Tの変動又は非変動の場合、及びより一般的には、この外部磁界の強度が徐々に増加する場合の物理的な説明が示され得る。固定子によって形成された磁気回路上に取り付けられるコイルに印加される電圧Vの関数としてのコイル内の電流I(t)の方程式は、電流の変動によって誘起される電圧に関連する第2項を含む。第1の近似として、電流について次の方程式がある。
=RI(t)+LdI(t)/dt
ここで、Vはコイルに印加される定電圧、Rはコイルの電気抵抗、Lはコイルのインダクタンスである。
【0030】
コイルのインダクタンスLは、固定子によって規定され、かつコイルが取り付けられるコアを備える磁気回路の透磁率(磁気リラクタンスの逆数)に関係する。しかし、コイルの固定子によって形成される磁気回路の透磁率は、2つの峡部12a及び12bの磁気飽和度によって変化する。したがって、コイルのインダクタンスLも、2つの峡部の磁気飽和度によって変化する。より詳細には、2つの峡部が飽和していないか又はほとんど飽和していないとき、インダクタンスLは相対的に高く、2つの峡部が十分に飽和しているか又は完全に飽和しているとき、このインダクタンスLは相対的に低くなる。この結果、前述の電圧の方程式は次のようになる。所与の電源電圧Vに対して、インダクタンスLが高いとき、電流の時間に対する変化dI(t)/dtは遅く、インダクタンスLが相対的に低いとき、電流の時間に対する変化dI(t)/dtは比較的速い。したがって、インダクタンスLが高い場合、所定の基準電流IRefに対する電流I(t)の立ち上がり時間Tは相対的に長くなる。逆に、インダクタンスLが低い場合、所定の基準電流IRefに対する電流I(t)の立ち上がり時間Tが相対的に短くなる。
【0031】
前述の物理現象は、前述のように、外部磁界HExtを検出するために本発明の文脈において使用される。図13及び図14の表に与えられた結果を理解するために、まず、峡部12a及び12bの磁石磁束Fは、その両方の静止位置において、これらの2つの峡部を有意なレベルで磁気的に飽和させるはずであることが指摘される。これは、双極性永久磁石を備えた時計モータ、特にラベット型(図示されかつ上述したものに対応する)の場合に一般的にあてはまる。その後、検出された外部磁界HExtは、永久磁石の磁束Fと少なくとも同程度の大きさ、好ましくはFよりも高い強度を有する外部磁束Fを2つの峡部において生成するはずであり、これにより、これらの2つの磁束の重ね合わせは、それらが反対の方向性を有する場合、磁気回路のリラクタンスを著しく減少させるか、又は磁束Fに対して反転された2つの峡部に結果として生じる磁束の方向性を有する(この第2の場合が好ましい)。最後に、コイルは、少なくとも電気検出パルスの持続時間よりも短い時間間隔の後に、少なくとも磁石の磁束Fと同程度の大きさ、好ましくはFよりも高い2つの峡部の磁束F(t)を供給するように構成される。実際には、双極性永久磁石を備えた時計モータでは、回転子を回転駆動することができるように、図5の曲線46に示されるように、磁束F(t)だけが所定の初期時間間隔の後に2つの峡部を強く飽和させる。
【0032】
表13及び表14の結果は、次のように説明される。外部磁束Fが存在しない場合、電流I(t)が永久磁石の静止位置と同相(2つの峡部内の磁束の同じ方向性、したがって同じ符号)であるとき、この電流は、最初に比較的高いレベルで飽和していた2つの峡部の磁気飽和を増加させるだけである。したがって、インダクタンスL(t)は電気的検出パルスの間中低いままであり、立ち上がり時間Tは短い。逆に、電流I(t)が永久磁石の静止位置と逆位相(2つの峡部の磁束の反対の方向性、したがって反対の符号)の場合、コイルの磁束F(t)は、電気検出パルスの初期時間間隔において、少なくとも瞬間的に減少し、2つの峡部において磁気飽和する(飽和は、一般的には、初期時間間隔後に再び高くなり、磁束F(t)によって生じる2つの峡部における磁束の方向性が反転するとさらに高くなることに留意すべきである)。したがって、初期時間間隔の間、コイルのインダクタンスL(t)は増加し、さらに短時間高くなり、それにより電流の立ち上がり時間Tが長くなる。したがって、得られた結果を理解するためには、電気パルス終了時の終了状況だけでなく、インダクタンスの経時的な発展も考慮する必要がある。
【0033】
外部磁界HExtが存在する場合、外部磁束Fが永久磁石の磁束Fと同じ方向性/符号を有するとき、外部磁界はすでに比較的高い磁石による初期磁気飽和をわずかに増加させるため、実際には前の段落で説明された状況と実質的に同様の状況になる。したがって、外部磁界HExtは電気検出パルス中のインダクタンスL(t)の変化を大きく変えることはなく、永久磁石及び電気検出パルスが逆位相のときに一時的なインダクタンスL(t)の増加にわずかな遅延(時間オフセット)をもたらすだけであり、これはコイルの電流I(t)のわずかな初期増加に反映される。逆に、外部磁束Fが永久磁石の磁束Fと反対の方向性を有するとき、この外部磁束Fは、2つの峡部における磁気飽和に関する初期条件及び/又はこれらの2つの峡部における初期全磁束の初期方向性を変化させ、それにより、外部磁界HExtの強度が十分に高くなると、電気検出パルスの2つの極性について、インダクタンスL(t)の経時的な発展は大きく変化し、それは少なくとも外部磁界の強度に対して有効な値の範囲内である。
【0034】
特に、電気パルスが回転子の静止位置と同相のとき、永久磁石の磁束Fと反対の方向性を有する2つの峡部における磁束Fを生成する外部磁界は、コイルの磁束F(t)が少なくとも瞬間的に磁気飽和を減少させ、それによってインダクタンスL(t)を増加させるため、立ち上がり時間Tが増加し、それは少なくともゼロ値から決定された最大値の間におけるこの強度に対して与えられた値の範囲内で、外部磁束Fの強度の増加に伴って徐々に増加する。図14の例では、考慮される最大値は約2,000A/mに等しい。電気パルスが回転子の静止位置と逆位相であるとき、永久磁石の磁束Fとは逆方向の2つの峡部において外部磁束Fを生成する外部磁界は、コイルの磁束F(t)を少なくとも減少させ、さらには、外部磁束Fが十分に高い強度を有するとき、外部磁束Fが存在しない場合に生じる峡部の磁気飽和の減少を相殺して、電気的検出パルスの間に少なくとも瞬間的にインダクタンスL(t)を減少させるので、立ち上がり時間Tは減少し、これは、少なくともこの強度の所与の値の範囲内で外部磁束Fの強度が増加するにつれて徐々に減少する。
【0035】
上記の開示から重要なことが観察される。すなわち、回転子/永久磁石が負の静止位置にあるとき、その強度の有効な値の範囲内で、正の外部磁束F(+F)を生成する外部磁界のみが立ち上がり時間Tに基づいて容易に検出され、回転子/永久磁石が正の静止位置にあるとき、その強度の有効な値の範囲内で、負の外部磁束F(-F)を生成する外部磁界のみが立ち上がり時間Tに基づいて容易に検出され得る。
【0036】
先に与えられた結果及び知見を活用するために、ステッピングモータの制御回路20、特に外部磁界を検出するための回路24、より具体的には、測定された立ち上がり時間を処理するための回路36は、主要な実施形態において、外部磁界を検出するための方法の実装を可能にするように配置され、その2つの主要なモードが図15及び図16にそれぞれ図示されている。
【0037】
図15は、電気的検出パルスが回転子の静止位置と同相である、外部磁界を検出するための方法の第1の実施形態の変形例のステップを示し、図16は、電気的検出パルスが回転子の静止位置と逆位相である、本発明による検出方法の第2の実施形態の変形例のステップを示している。
【0038】
第1の「同相」検出モードでは、検出方法は最初に永久磁石の静止位置を決定する。電気的駆動パルスは永久磁石の静止位置と同相であるべきであるため、この情報は、双極性磁石ステッピングモータの制御回路において一般に知られている。その後、例えば1.5msから2.0msの間の同相電気検出パルス(検出パルス)が生成される。検出パルスの開始時点では、電流I(t)を測定する回路がアクティブであり、基準電流IRefの値(所定の絶対基準値)に実質的に等しい値まで電流I(t)の立ち上がり時間Tを測定することができるように、検出パルスの開始時にタイマ32がトリガされる。上述の変形例では、基準電流は、0.10mA~0.30mA、好ましくは0.15mA~0.25mAの間で選択される絶対基準値、例えば0.20mAを有する。一旦立ち上がり時間が測定されると、この情報は、所定の外部磁界HExt、より具体的には、所定の方向性、すなわち、検出パルスが負の極性を有する場合には正の方向性を有し、検出パルスの極性が正の場合には負の方向性を有する所定の外部磁束Fを峡部内に生成する(したがって、これは、峡部を通過する)外部磁界の存在を検出するように処理されなければならない。
【0039】
処理回路36による立ち上がり時間Tの処理については、様々な変形例が可能である。図15に示す変形例では、処理回路は、固定子4の峡部12a及び12b内に、少なくとも1つの所定の強度を有する磁束Fを生成する外部磁界を検出することが意図されている。
【0040】
図14の表では、外部磁界HExtの値は、固定子の平面に平行に、かつ2つの峡部の整列方向に概ね垂直に伝搬する外部磁界の特定の場合に与えられている。この特定の場合において、本発明による検出方法にとって決定的である対応する磁束Fを決定するために、図8の曲線50は、検討された例についてのこれらの2つの物理的変数の間の関係を示す。図14の表の値に関して、1,000A/mより大きい、より具体的には少なくとも1,200A/mの値を有する前述の特定の場合による外部磁界に峡部内の磁束を考慮した場合に等しい比較的高い強度の外部磁界を検出するために、処理回路36は、立ち上がり時間Tが第1の基準持続時間、すなわち検討された例では0.9msより長いかどうかを判断する。そうである場合、この第1の検出モードは、正の静止位置については、固定子の2つの峡部で発生する外部磁束に関して等しい外部磁界に対して、若しくは第1の最小値よりも高い強度、すなわち前述の特定の場合に対して少なくとも1,200A/mの強度を有するを有する負の外部磁界が存在することを、又は、負の静止位置については、同等の外部磁界に対して、若しくは第2の最小値よりも高い強度、すなわち前述の特定の場合に少なくとも1,200A/mの強度を有する正の外部磁界が存在することを決定する。そうでない場合、この第1の検出モードは、正の静止位置及び負の静止位置について、逆に決定する。
【0041】
第2の「逆位相」検出モードにおいても、検出方法は、最初に永久磁石の/回転子の静止位置を決定する。その後、例えば1.5msから2.0msの間の持続時間を有する検出パルスを逆位相で生成する。基準電流IRefまでの電流I(t)の立ち上がり時間Tを測定する。立ち上がり時間が測定されると、この情報は、所与の外部磁界HExt、より正確には、所与の方向性、すなわち検出パルスが負の極性を有する場合に正の方向性及び検出パルスの極性が正の場合に負の方向性を有する外部磁束Fを峡部に生成する外部磁界を検出するように処理される(第1の「同相」検出モードと同様)。図16に示す変形例では、処理回路は、第1の検出モードで選択されたものと実質的に等しい少なくとも所与の強度を有する磁束Fを固定子4の峡部12a及び12bに生成する外部磁界を検出しようとする。この目的のために、処理回路36は、立ち上がり時間Tが第2の基準持続時間、すなわち検討例では0.55msよりも短いかどうかを判断する。そうである場合、この第2の検出は、第1の検出モードと同様に、正の静止位置については、前述の場合について1,200A/mの強度に等しいか、若しくは固定子の2つの峡部で発生する外部磁束に関して同等の外部磁界に対して、第1の最小値よりも高い強度を有する負の外部磁界の存在、又は負の静止位置については、同等の外部磁界に対して、若しくは前述の特定の場合について1,200A/mの強度に等しい第2の最小値よりも高い強度を有する正の外部磁界の存在を決定する。そうでない場合、この第2の検出モードは、正の静止位置及び負の静止位置について、逆に決定する。
【0042】
したがって、既に述べたように、固定子の峡部における外部磁束の方向性に関する情報がない場合に、所与の強度を有する外部磁束を峡部で発生させる外部磁界を検出する方法は、これらの峡部における方向性にかかわらず、この外部磁界の検出を可能にするために、第1の検出モード又は第2の検出モードに従って、回転子が正又は負の静止位置にある第1の位相と、同様に第1の検出モード又は第2の検出モードに従って、回転子がそれぞれ負又は正の静止位置にある第2の位相とを含むことが好ましい。
【0043】
一般に、立ち上がり時間Tを処理するための回路36は、少なくとも有効な値の範囲内で、固定子の2つの峡部の整列方向に垂直な方向に従って、適切な場合にこれらの2つの峡部を通過する外部磁界又はその磁束の値/強度、又は、前記方向に従って、適切な場合にこれらの2つの峡部を通過する前記外部磁界又はその磁束の値/強度が基準値よりも高いかどうかを決定できるように構成される。図15及び図16に示す変形例は、前述の第2の場合に関するものである。前述の第1のケースに関して、図14の表は、表の2つの値の間で線形近似を行って中間値を定義することによって、又は、立ち上がり時間Tの関数として外部磁界HExtの値を与える関数又は曲線を決定することによって使用されてもよい。
【0044】
特定の変形例では、立ち上がり時間を処理する回路は、少なくとも有効な値の範囲内で、前述の方向に従って2つの峡部を適宜通過する前記外部磁界又はその磁束の値が、互いに連続する複数の所定の値の特定の範囲うち特定の値の範囲内にあるかどうかを判定できるように構成される。
【0045】
前述の検出モードでは、立ち上がり時間を処理する回路は、前述の方向に従って2つの峡部を適宜通過する外部磁界の方向も判定できるように構成されている。
【0046】
第1の有利な変形例では、外部磁界を検出する回路は、回転子の静止位置と逆位相の1つ以上の検出パルス、すなわち、回転子が正の静止位置にあるときは負の電気パルス、及び回転子が負の静止位置にあるときは正の電気パルスを生成するように構成されており、それにより、逆位相の電気パルスは駆動パルスではないため、外部磁界の検出によって回転子が1ステップ前進することはない。
【0047】
第2の有利な変形例では、外部磁界を検出する回路は、回転子の静止位置と同相の1つ以上の検出パルス、すなわち、回転子が正の静止位置にあるときは正の電気パルス、及び回転子が負の静止位置にあるときは負の電気パルスを生成するように構成される。同相の電気パルスが外部磁界の検出を可能にするように選択された持続時間を有するように構成されており、この選択された持続時間は、ステッピングモータが1ステップ前進するには短すぎる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【外国語明細書】