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特開2024-81607プラスチック溶接用導波路、導波路を用いる構成及び溶接方法並びに導波路の製造方法
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  • 特開-プラスチック溶接用導波路、導波路を用いる構成及び溶接方法並びに導波路の製造方法 図1
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  • 特開-プラスチック溶接用導波路、導波路を用いる構成及び溶接方法並びに導波路の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081607
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】プラスチック溶接用導波路、導波路を用いる構成及び溶接方法並びに導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/16 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B29C65/16
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023200751
(22)【出願日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】22211602.2
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522238491
【氏名又は名称】ブランソン ウルトラスチャル ニーデルラッスン デル エマーソン テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング アンド カンパニー オーエイチジー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジュドヴィット シュポシュ
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AG28
4F211AH17
4F211AR07
4F211TA01
4F211TC08
4F211TD07
4F211TN27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造プロセス及びコストについて最適化された導波路を提供する。
【解決手段】湾曲し片側が開放したプラスチック溶接用導波路(20)、特にレーザ透過型溶接用導波路が、レーザ光の反射を可能にするのに用いられる反射表面(26)を有する第1の反射要素を備える。反射表面(26)は、レーザ光源、特に1つ以上の導光路(10)からのレーザ光を受光することが可能である受光端部(22)と、レーザ光がレーザ光を透過する加工対象物(15)内に向けられることが可能である出光端部(24)とを定める。第1の反射要素の反射表面(26)が断面で見られるときに連続的に湾曲した凹形状を持つように、反射表面(26)は受光端部(22)と出光端部(24)との間の湾曲形状によって定められる。さらに、導波路(20)が反射表面(26)に垂直の方向に開放されるように、第1の反射要素には第2の反射要素が対向しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲し片側が開放したプラスチック溶接用導波路(20)であって、
レーザ光の反射を可能にするのに用いられる反射表面(26)を有する第1の反射要素
を備え、
前記反射表面(26)は、レーザ光源からのレーザ光を受光することが可能である受光端部(22)と、レーザ光がレーザ光を透過する加工対象物(15)内に向けられることが可能である出光端部(24)とを定め、
前記第1の反射要素の反射表面(26)が断面で見られるときに連続的に湾曲した凹形状を持つように、前記反射表面(26)は前記受光端部(22)と前記出光端部(24)との間の湾曲形状によって定められ、
前記導波路(20)が前記反射表面(26)に垂直の方向に開放されるように、前記第1の反射要素には第2の反射要素が対向しない、導波路(20)。
【請求項2】
前記湾曲形状は円、放物線、指数関数又は螺旋の1つから選択される、請求項1に記載の導波路(20)。
【請求項3】
前記受光端部(22)と前記出光端部(24)との間に30°~150°の範囲の角度が生じる、請求項1又は2に記載の導波路(20)。
【請求項4】
前記湾曲形状は6.0mm~14.0mmの曲率半径を持つ、請求項1又は2に記載の導波路(20)。
【請求項5】
プラスチック溶接に用いられる構成(1)であって、
レーザ光源と、
導光路(10)と、
先行する請求項1乃至4の1項に記載の導波路(20)と
を備える、構成(1)であり、
前記構成(1)の動作中、前記レーザ光は前記レーザ光源から前記導光路(10)を通り、その後、前記導波路(20)の反射要素の反射表面(26)で少なくとも1回反射される、構成(1)。
【請求項6】
前記導光路(10)と前記反射表面(26)の受光端部(22)との間の角度(α)の範囲が7°~14°である、請求項5に記載の構成(1)。
【請求項7】
請求項5又は6の1項に記載の構成(1)を用いるプラスチック溶接のための、特に、レーザ透過型溶接のための方法であって、以下の:
a.互いに溶接される2つのプラスチック部品(15,19)を据付け器に配置するステップ(A)と、
b.レーザ光源によってレーザ光を発生させるステップ(B)であって、前記レーザ光が前記導光路(10)を通り、その後、請求項1から4のいずれか1項に記載の導波路(20)の反射要素の反射表面(26)で少なくとも1回反射される、ステップ(B)と、
c.前記導波路(20)によって反射されたレーザ光を用いて、互いに溶接されるプラスチック部品(15,19)を溶接するステップ(C)と、
を備える、方法。
【請求項8】
請求項1乃至4の1項に記載の導波路(20)の製造方法であって、
a.使用中にレーザ光源からのレーザ光が受光されることになる受光端部(22)と、使用中にレーザ光がレーザ光を透過する加工対象物(15)内に向けられることになる出光端部(24)との間の湾曲形状によって定められる表面を有する第1の要素を、前記第1の要素の表面が断面で見られるときに連続的に湾曲した凹形状を持つように用意するステップ(i)と、
b.前記連続的に湾曲した凹形状を持つ前記表面に反射層が設けられることで、反射表面(26)が形成され、したがって、第1の反射要素が形成されるステップ(ii)と、
を備える、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲し片側が開放したプラスチック溶接用導波路、特にレーザ透過型溶接用導波路、導波路を備えるプラスチック溶接に用いられる構成、導波路を用いる構成を用いるプラスチック溶接方法、及び導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プラスチック溶接に用いられるレーザ光用の数種類の導波路が知られている。多くの場合、溶接される部品にレーザ光源のレーザ光が入射する前において、プラスチック溶接に用いられる構成の最後の要素を導波路と称する。したがって、導波路は、溶接される部品にレーザ光のエネルギーが可能な限り一様に投入され、焦点が各個に現れることが避けられるように、レーザ光の分布を均一にするものを特に有する。
【0003】
このため、導波路は2種類の導波路、すなわち、正の導波路と負の導波路とに区別される。正の導波路は、全内部反射の法則にしたがって内部でレーザ光を導く固体物からなる。このような正の導波路の一例がDE 10 2004 058 221 A1(独国特許出願公開第102004058221号公報)に記載されている。負の導波路には通路状空洞という特徴があり、通路状空洞は反射層で被覆され、通路状空洞内で対向して配置された2つの反射要素の間でレーザ光が導かれる。このような負の導波路の一例がDE 11 2007 002 109 T5(独国特許出願公開第112007002109号公報)に記載されている。本文献に記載されている負の導波路は、円形ではない溶接部を生成する円錐形ではない縦断面を持つ。さらに、円錐形の縦断面を持つ負の導波路も知られている。
【0004】
互いに溶接される部品の前において通常は最後にある溶接構成の要素としての導波路については、それ故に導波路によるエネルギー損失を可能な限り小さくしておくことが望ましい。
【0005】
これについて、プラスチック溶接用導波路、プラスチック溶接に用いられる構成、溶接方法、及び導波路の製造方法がEP 3 533 589 A1(欧州特許出願公開第3533589号公報)にも記載されている。本文献では、プラスチック溶接用導波路は、レーザ光の入射面を形成する入射端部と、レーザ光の出射面を形成する出射端部と、入射端部と出射端部との間に配置され、互いに対向して配置され、レーザ光の反射を可能にするのに用いられる第1の内面及び第2の内面とを備える。入射端部と出射端部との間の第1の距離は導波路の長さを決め、第1の内面と第2の内面との間の第2の距離は導波路の厚さを決める。第1の実施形態では、出射端部が入射端部に対向して配置され、導波路の中央平面が入射端部から出射端部まで中央で延びる。第1の内面は、第1の内面と導波路の中央平面との間の第3の距離が入射端部から出射端部の方向に連続的に変化するように連続的に湾曲した凹形状を備える。他の実施形態では、第1の内面は、第1の螺旋、特に第1の自然界の螺旋の一部である連続的に湾曲した凹形状を備え、この凹形状は、第1の螺旋の原点から第1の内面までの第1の螺旋の半径が導波路に沿って連続的に変化するようになっている。
【0006】
したがって、本発明の課題は、製造プロセス及びコストについて最適化された導波路を提供することである。これと同時に、公知の導波路に対して導波路の効率が維持されるべきである。
【発明の概要】
【0007】
上記の目的は、独立請求項1に係る湾曲し片側が開放したプラスチック溶接用導波路と、独立請求項5に係るプラスチック溶接に用いられる構成と、独立請求項7に係るプラスチック溶接方法と、独立請求項8に係る導波路の製造方法とによって解決される。以下の説明、図面及び添付の請求項からさらに好ましい実施形態と発展例とがもたらされる。
【0008】
湾曲し片側が開放したプラスチック溶接用導波路、特にレーザ透過型溶接用導波路は、レーザ光の反射を可能にするのに用いられる反射表面を有する第1の反射要素を備え、反射表面は、レーザ光源、特に1つ以上の導光路からのレーザ光を受光することが可能である受光端部と、レーザ光がレーザ光を透過する加工対象物内に向けられることが可能である出光端部とを定め、第1の反射要素の反射表面が断面で見られるときに連続的に湾曲した凹形状を持つように、反射表面は受光端部と出光端部との間の湾曲形状によって定められ、導波路が反射表面に垂直の方向に開放されるように、第1の反射要素には第2の反射要素が対向しない。
【0009】
以下、本発明の導波路を、プラスチック溶接に用いられる構成、特に、レーザ透過型溶接に用いられる構成におけるその使用例の一部として説明する。レーザ透過型溶接は、溶接される部品の加熱と接合プロセスとがほぼ同時に行なわれる単一ステップのプロセスである。このプロセスでは、溶接される部品の一方がレーザ波長の範囲で大きい透過率、すなわち大きい透過の程度を持っていなければならず、他方が大きい吸収率、すなわち大きい吸収性を持っていなければならない。溶接プロセスの前に、部品の両方が所望の端部位置に配置され、接合圧力が加えられる。レーザビームが透明部品すなわち透過部品を通じて発せられ、すなわち光を放つが、激しくは加熱しない。まず吸収部品においてレーザビームが表面近傍の層で吸収され、レーザエネルギーが熱エネルギーに変換され、吸収部品がその場で溶融する。熱伝導プロセスにより、さらに接合部で透過部品が可塑化される。外側から加えられる接合力と、溶融したプラスチックの膨張から生じる内部の接合圧力とによって、2つの部品の接着結合接続が実現される。この場合、本発明の導波路を同時レーザ透過型溶接の一部として用いることが特に好ましい。以下、同時レーザ透過型溶接を同時溶接とも称する。
【0010】
同時溶接では、互いに溶接される部品の全部の溶接輪郭すなわち継ぎ目輪郭に同時に照射することが好ましい。これにより、確実にプロセス時間が大幅に短縮され、溶け出すことによって隙間が埋まることが可能になる。これに加えて、同時溶接には強く相互作用する期間があるので、継ぎ目に沿ってレーザビームが導かれる輪郭溶接よりも溶接の継ぎ目が強固になる。
【0011】
プラスチック溶接、特にレーザ透過型溶接に用いられるそれぞれの構成の動作の際、レーザ光がレーザ光源から幾度も撓むことができる導光路又は撓むことができる導光路束を通って進み、この導光路は、レーザ光源からそれる向きであって、導波路、特に導波路の受光端部の方の向きを持つ導光路の端部でカップリングする。したがって、レーザ光は導光路又は導光路束から出射し、導波路に入射し、すなわち、第1の反射要素の反射表面で反射され、これにより均一化され、その後、溶接される部品に当たる。したがって、導波路はレーザ光が透過部品に入射する前においてレーザ光の経路上の最後の部品を形成する。
【0012】
導波路の設計については、冒頭で概説されているように、正の導波路の特徴が、完全な内部反射が起こる固体によって示されるのに対して、負の導波路の特徴はレーザ光が導かれる空洞によって示される。したがって、負の導波路は通路状設計又は構成を有する。
【0013】
本例では、導波路が片側で開放され、すなわち、第1の反射要素の反射表面に垂直の方向に開放されているために、第2の反射要素が対向しないので、通路状設計又は構成が存在しない。これについて、安全上の理由から、使用中のレーザ光が少なくともハウジングや筐体から出ることができないように本構成をハウジングによって囲わなければならない。このようにすることによって、本構成を使用する作業者が本構成の使用時にレーザ光により不都合を被ることが防止される。結果として、レーザ光が固体を通らないので、本発明の導波路は正の導波路を示すものではなく、その一方で、第1の反射表面に対向する第2の反射要素すなわち第2の反射表面が欠落しているので、狭い意味での負の導波路を示すものでもない。
【0014】
本発明の導波路については、出光端部は、溶接される部品の所望の継ぎ目輪郭に合せて構成されることが好ましい。たとえば、長手方向に延びる2つの部品が互いに溶接される場合、導波路は導波路を通るレーザ光の方向に対して交差する長手方向の形状を持つ。この方向の導波路の広さが幅としても定義される。これに応じて、導波路を通るレーザ光の方向の導波路の広さ、すなわち、受光端部から出光端部までの広さが長さとして定義される。当該長さは反射表面に沿って測定されることが好ましい。さらに別の例に係れば、環状に成形された2つの部品が互いに溶接されなければならない場合、出光端部も環状である。
【0015】
本発明に係れば、反射表面は連続的に湾曲した凹形状を持つ。それ故、第1の反射要素の断面内で反射表面は内側に湾曲している。反射表面のこの設計すなわち成形により、導波路の受光端部と出光端部との間に角度が生じる。したがって、導波路の受光端部は明らかに出光端部に対向して配置されない。反射表面が連続的に湾曲した凹形状を持つことは明らかである。
【0016】
好ましい実施形態では、本発明の導波路は導波路部の一部や導波路の不可欠な部分である。たとえば、受光端部よりも前かつ/又は出光端部よりも後に、一般的なまっすぐな形状の負の導波路が存在する。この場合、受光端部は、反射表面が凹形状を持ち始めるところから始まる。したがって、出光端部は、反射表面が凹形状を持つことを終えるところに存在する。
【0017】
上記の説明について、言い換えると、本発明の導波路は、通路状空洞を有する負の導波路に関して、第1の反射要素の反射表面の法線方向の対向する反射面を有さない部分導波路を示すものである。この設計の効果は、部品点数が削減され、この結果、使用される材料と、反射層を設けることすなわち金表面処理を含む必要な製造プロセスと、導波路の組立てとに関する経費節減によりコスト効率が向上することである。さらに、導波路のクリーニングがより容易になる。しかし上記に反して、欠点として、作業者が溶接の際にレーザ光による不都合を被らないように、安全上の理由で本発明の導波路を用いる構成を対応するハウジング内に配置しなければならない。
【0018】
本構成の固有の効果は、本発明の導波路を用いることで、既知の導波路と比較して少なくとも出光端部で同じパワーを用いてレーザ光をレーザ光束にすることができることである。さらに、本発明の導波路を用いることで溶接の継ぎ目で均一なパワー密度分布を実現することができる。このようにして、導波路と溶接される部品との間における大きい許容誤差を補償することができ、これにより、本発明の導波路を用いる構成の使用の容易さが増す。
【0019】
導波路の好ましい実施形態に係れば、湾曲形状は円、放物線、指数関数又は螺旋の1つから選択される。したがって、湾曲した凹形状は円、放物線、指数関数又は螺旋の一部であってもよい。それ故、導波路をきわめて有効な仕方で所望の用途に合せて構成することができる。
【0020】
さらに、上記の湾曲形状の1つの、一部すなわち区間を用いることにより、特にまっすぐな形状の導波路と比較してレーザビームと導波路の反射表面との相互作用が減少する。
【0021】
以下、湾曲形状が螺旋の一部である好ましい実施形態について説明するが、その場合、さらに以下に留意しなければならない。2次元形状としての螺旋は、螺旋のその原点からの半径が連続的に変化するということで定義される。これにより、螺旋は、たとえば、半径が常に一定である円と区別される。螺旋の半径はその原点から反射表面までについて反射表面の設計により異なったり導波路に沿って連続的に変化したりするが、これについては好ましい実施形態の詳細な説明中で後述されている。
【0022】
導波路の好ましい実施形態では、螺旋の半径は第1の螺旋の原点から反射表面までについて受光端部から出光端部まで導波路に沿って連続的に増加したり減少したりする。このようにして、それぞれの適用例に合せて構成された導波路の反射表面の曲率を得ることができる。
【0023】
螺旋の一部である凹形の連続的に湾曲した形状が双曲線型、アルキメデス型、対数型という螺旋類型の1つから選択されたりフィボナッチ数列に基づく螺旋から選択されたりすることが特に好ましい。フィボナッチ数列は、F=F=1かつFn+2=F+Fn+1の数列
【数1】
である。フィボナッチ数列に基づく螺旋は対数螺旋の部分集合である。この構成によって、導波路によってレーザ光を、損失を格段に小さくしつつ溶接される部品の特にアンダーカットに導くことができる。
【0024】
原点Oを起点とするすべてのビームと、同じ角度αで交差する湾曲形状が対数螺旋として定義されている。対数螺旋の場合において、螺旋の部分区間が存在するとき、角度αが分かれば原点を決定することができる。螺旋は2次元形状であるので、本例では導波路は断面で見たものでなければならない。直線の方向ベクトルは、この場合、反射表面に垂直である方向、すなわち反射表面と直交する方向に反射表面から延びる。
【0025】
導波路のさらに好ましい実施形態では、受光端部と出光端部との間に30°~150°の範囲の角度が生じる。それぞれの適用例に必要となる角度、たとえば溶接される部品にアンダーカットが存在することによって必要となる角度と、利用可能な設置空間とに基づいて、反射表面の凹形状を実現する所望の湾曲形状を選択することができる。
【0026】
導波路のさらに好ましい実施形態では、湾曲形状は6.0mm~14.0mmの曲率半径を持ち、好ましくは6.0mm~10.0mmの曲率半径を持ち、特に8.0mmの曲率半径が好ましい。特に曲率半径の上記範囲によって、導波路の効率を所望の用途に見合うものにすることができ、すなわち、互いに溶接される部品に見合うものにすることができる。
【0027】
プラスチック溶接に用いられる本発明の構成、特にレーザ透過型溶接に用いられる本発明の構成は、レーザ光源と、導光路、好ましくは複数の導光路と、本発明の導波路とを備え、本構成の動作中、レーザ光はレーザ光源から導光路を通り、その後、導波路の反射要素の反射表面で少なくとも1回反射される。本発明の構成は本発明の導波路を用いるので、技術的効果と利点に関しては重複を避けるため、上記の説明を参照する。
【0028】
本構成の好ましい実施形態では、導光路と反射表面の受光端部との間の角度の範囲が7°~14°であり、好ましくは8°~12°であり、特に約10°が好ましい。特に、この角度範囲が、導光路を出射したレーザ光の導波路の反射表面での有効な反射を実現することが分かっている。したがって、2つの部品の相互溶接をさらに改善することができる。
【0029】
本発明の構成を用いる本発明のプラスチック溶接方法、特に、レーザ透過型溶接方法は、互いに溶接される2つのプラスチック部品を据付け器に配置するステップと、レーザ光源によってレーザ光を発生させるステップであって、レーザ光が導光路、好ましくは複数の導光路を通り、その後、本発明の導波路の第1の反射要素の反射表面で少なくとも1回反射される、ステップと、本発明の導波路によって反射されたレーザ光を用いて、互いに溶接されるプラスチック部品を溶接するステップとを備える。本発明の方法を用いることで、2つのプラスチック部品が互いに溶接される。プラスチック溶接方法は本発明の構成を用い、したがって、本発明の導波路を用いるので、技術的効果と利点に関してはこの場合も上記の説明を参照する。したがって、それぞれでの重複が避けられる。
【0030】
本発明の導波路の本発明の製造方法は、使用中にレーザ光源、特に1つ以上の導光路からのレーザ光が受光されることになる受光端部と、使用中にレーザ光がレーザ光を透過する加工対象物内に向けられることになる出光端部との間の湾曲形状によって定められる表面を有する第1の要素を、第1の要素の表面が断面で見られるときに連続的に湾曲した凹形状を持つように用意するステップと、連続的に湾曲した凹形状を持つ表面に反射層が設けられることで、反射表面が形成され、したがって、第1の反射要素が形成されるステップとを備える。本方法は本発明の導波路の製造に資する。本発明の導波路の技術効果と、対応する利点とに関しては、重複を避けるため、上記の説明を参照する。
【0031】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。図面中、同じ参照符号が同じ要素及び/又は部品を示す。以下、説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る導波路の実施形態を用いるプラスチック溶接に用いられる構成の実施形態の第1の斜視図。
図2】レーザビームのそれぞれの経路を含む本発明に係る導波路の実施形態を用いるプラスチック溶接に用いられる構成の実施形態の第2の斜視図を示す。
図3】本発明に係る溶接方法の実施形態のフローチャートを例解する。
図4】本発明に係る導波路の製造方法の実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図1及び図2に関して、本発明の導波路20の実施形態を備えるプラスチック溶接に用いられる本発明の構成1の実施形態を説明する。プラスチック溶接に用いられる構成1を、たとえば、自動車産業の溶接光に用いてもよい。最終的に、透過部品15が吸収部品19に溶接されることになる。図では、容易に理解するために、吸収部品19が接続平面にだけある様子が示されている。さらに、溶接の出来を良くするために、透過部品15は溶接リブ17を備える。
【0034】
構成1はレーザ光源(図示せず)と、導光路10、好ましくは複数の導光路10と、本発明の導波路20の実施形態とを備える。構成1の動作中、図2から分かるように、レーザ光はレーザ光源から導光路10を通り、その後、導波路20の反射要素の反射表面26で少なくとも1回反射される。したがって、導波路20はレーザ光が透過部品15に入射する前においてレーザ光の経路上の最後の部品を形成する。
【0035】
導光路10と導波路20の反射表面の受光端部22との間の角度αの範囲は7°~14°であり、好ましくは8°~12°であり、特に約10°が好ましい。特に、この角度範囲が、導光路10を出射したレーザ光の導波路20の反射表面26での有効な反射を実現することが分かっている。
【0036】
導波路20の出光端部24は、溶接される部品の所望の継ぎ目輪郭に合せて構成されている。
【0037】
導波路の設計については、冒頭で概説されているように、正の導波路の特徴が、完全な内部反射が起こる固体によって示されるのに対して、負の導波路の特徴はレーザ光が導かれる空洞によって示される。したがって、負の導波路は通路状設計又は構成を有する。
【0038】
本事例では、導波路が片側で開放され、すなわち、第1の反射要素の反射表面26に垂直の方向に開放されているために、第2の反射要素が対向しないので、通路状設計又は構成が存在しない。これについて、安全上の理由から、使用中のレーザ光が少なくともハウジングや筐体から出ることができないように構成1をハウジング(図示せず)によって囲わなければならない。このようにすることによって、構成1を使用する作業者が構成1の使用の際にレーザ光の存在により不都合を被ることが防止される。結果として、レーザ光が固体を通らないので、導波路1は正の導波路を示すものではなく、その一方で、反射表面26に対向する第2の反射要素すなわち第2の反射表面が欠落しているので、狭い意味での負の導波路を示すものでもない。
【0039】
反射表面26は連続的に湾曲した凹形状を持つことが分かる。それ故、第1の反射要素の断面内で反射表面26は内側に湾曲している。反射表面26のこの設計すなわち成形により、導波路20の受光端部22と出光端部24との間に角度が生じる。したがって、導波路20の受光端部22は明らかに出光端部24に対向して配置されない。反射表面26が連続的に湾曲した凹形状を持つことは明らかである。以上から、受光端部22と出光端部24との間に好ましくは30°~150°の範囲の角度が生じる。それぞれの適用例に必要となる角度、たとえば溶接される部品15,19にアンダーカットが存在することによって必要となる角度と、利用可能な設置空間とに基づいて、反射表面26の凹形状を実現する所望の湾曲形状を選択することができる。
【0040】
湾曲形状は円、放物線、指数関数又は螺旋の1つから選択される。したがって、湾曲した凹形状は円、放物線、指数関数又は螺旋の一部であってもよい。それ故、導波路をきわめて有効な仕方で所望の用途に合せて構成することができる。本例では、湾曲形状は円の一部であり、したがって、一定の曲率半径を持つ。
【0041】
さらに、湾曲形状について、特に、湾曲形状が6.0mm~14.0mmの曲率半径を持つことがよく、好ましくは6.0mm~10.0mmの曲率半径を持ち、特に8.0mmの曲率半径が好ましい。曲率半径の上記範囲によって、導波路20の効率を所望の用途に見合うものにすることができ、すなわち、互いに溶接される部品に見合うものにすることができる。
【0042】
上記の湾曲形状の1つの、一部すなわち区間を用いることにより、特にまっすぐな形状の導波路と比較してレーザビームと導波路20の反射表面26との相互作用が減少する。これについては、図2を参照する。
【0043】
完全を期すために、湾曲形状が螺旋の一部である場合、さらに以下に留意しなければならない。2次元形状としての螺旋は、螺旋のその原点からの半径が連続的に変化するということで定義される。これにより、螺旋は、たとえば、半径が常に一定である円と区別される。螺旋の半径はその原点から反射表面までについて反射表面の設計により異なったり導波路に沿って連続的に変化したりする。したがって、螺旋の半径は第1の螺旋の原点から反射表面までについて受光端部22から出光端部24まで導波路に沿って連続的に増加したり減少したりする。このようにして、それぞれの適用例に合せて構成された導波路20の反射表面26の曲率を得ることができる。
【0044】
特に、螺旋の一部である凹形の連続的に湾曲した形状は双曲線型、アルキメデス型、対数型という螺旋類型の1つから選択されたりフィボナッチ数列に基づく螺旋から選択されたりする。フィボナッチ数列は、F=F=1かつFn+2=F+Fn+1の数列
【数2】
である。フィボナッチ数列に基づく螺旋は対数螺旋の部分集合である。この構成によって、導波路20によってレーザ光を、損失を格段に小さくしつつ溶接される部品15,19の特にアンダーカットに導くことができる。
【0045】
原点Oを起点とするすべてのビームと、同じ角度βで交差する湾曲形状が対数螺旋として定義されている。対数螺旋の場合において、螺旋の部分区間が存在するとき、角度βが分かれば原点を決定することができる。螺旋は2次元形状であるので、本例では導波路20は断面で見たものでなければならない。直線の方向ベクトルは、この場合、反射表面26に垂直である方向、すなわち反射表面26と直交する方向に反射表面26から延びる。
【0046】
完全を期すために、導波路20が導波路部の一部であってもよいし導波路の不可欠な部分であってもよいことを留意事項として挙げておく。たとえば、受光端部22よりも前かつ/又は出光端部24よりも後に、一般的なまっすぐな形状の負の導波路が存在してもよい。この場合、受光端部22は、反射表面26が凹形状を持ち始めるところから始まる。したがって、出光端部24は、反射表面26が凹形状を持つことを終えるところに存在する。
【0047】
上記について、言い換えると、導波路20は、通路状空洞を有する負の導波路に関して、第1の反射要素の反射表面26の法線方向の対向する反射表面を有さない部分導波路を示すものである。この設計の効果は、部品点数が削減され、この結果、使用される材料と、反射層を設けることすなわち金表面処理を含む必要な製造プロセスと、導波路の組立てとに関する経費節減によりコスト効率が向上することである。さらに、導波路20のクリーニングがより容易になる。しかし上記に反して、欠点として、作業者が溶接の際にレーザ光による不都合を被らないように、安全上の理由でこのような導波路20を用いる構成1を対応するハウジング内に配置しなければならない。
【0048】
本構成のさらに別の固有の効果は、導波路20を用いることで、既知の導波路と比較して少なくとも出光端部24で同じパワーを用いてレーザ光をレーザ光束にすることができることである。さらに、導波路20を用いることで溶接の継ぎ目で均一なパワー密度分布を実現することができる。このようにして、導波路20と溶接される部品15,19との間における大きい許容誤差を補償することができ、これにより、導波路20を用いる構成1の使用の容易さが増す。
【0049】
以下、図3を参照して、本発明の構成を用いる本発明のプラスチック溶接方法、特に、レーザ透過型溶接方法の実施形態を説明する。第1のステップAで、互いに溶接される2つのプラスチック部品を据付け器に配置する。次に、ステップBで、続けて、レーザ光源によるレーザ光の発生を行なう。ステップBでは、レーザ光が導光路、好ましくは複数の導光路を通り、その後、本発明の導波路の第1の反射要素の反射表面で少なくとも1回反射される。最後に、ステップDで、本発明の導波路によって反射されたレーザ光を用いて、互いに溶接されるプラスチック部品の溶接が行なわれる。このようにして、本発明の方法を用いることで2つのプラスチック部品が互いに溶接される。プラスチック溶接方法では本発明の構成が用いられ、したがって、本発明の導波路が用いられるので、技術的効果と利点に関しては上記の説明を参照する。
【0050】
上記に基づけば、導波路20はレーザ透過型溶接に用いられる構成1に用いられる。レーザ透過型溶接は、溶接される部品の加熱と接合プロセスとが同時に行なわれる単一ステップのプロセスである。このプロセスでは、溶接される部品15,19の一方がレーザ波長の範囲で大きい透過率、すなわち大きい透過の程度を持っていなければならず、他方が大きい吸収率、すなわち大きい吸収性を持っていなければならない。溶接プロセスの前に、部品15,19の両方が所望の端部位置に配置され、接合圧力が加えられる。レーザビームが透過部品15を通じて発せられ、すなわち光を放つが、激しくは加熱しない。まず吸収部品19においてレーザビームが表面近傍の層で吸収され、レーザエネルギーが熱エネルギーに変換され、吸収部品19がその場で溶融する。熱伝導プロセスにより、さらに接合部で透過部品15が可塑化される。外側から加えられる接合力と、溶融したプラスチックの膨張から生じる内部の接合圧力とによって、2つの部品15,19の接着結合接続が実現される。この場合、導波路20を同時レーザ透過型溶接の一部として用いることが特に好ましい。以下、同時レーザ透過型溶接を同時溶接とも称する。
【0051】
同時溶接では、互いに溶接される部品の全部の溶接輪郭すなわち継ぎ目輪郭に同時に照射することが好ましい。これにより、確実にプロセス時間が大幅に短縮され、溶け出すことによって隙間が埋まることが可能になる。これに加えて、同時溶接には強く相互作用する期間があるので、継ぎ目に沿ってレーザビームが導かれる輪郭溶接よりも溶接の継ぎ目が強固になる。
【0052】
最後に、図4に関して本発明の導波路の本発明の製造方法を説明する。使用中にレーザ光源、特に1つ以上の導光路からのレーザ光が受光されることになる受光端部と、使用中にレーザ光がレーザ光を透過する加工対象物内に向けられることになる出光端部との間の湾曲形状によって定められる表面を有する第1の要素を、第1の要素の表面が断面で見られるときに連続的に湾曲した凹形状を持つように用意することがステップiで行なわれる。その後、ステップiiで、連続的に湾曲した凹形状を持つ表面に反射層が設けられることで、反射表面が形成され、したがって、第1の反射要素が形成される。この結果、本発明の導波路が製造される。
【符号の説明】
【0053】
1 プラスチック溶接に用いられる構成
10 導光路
13 光の経路
15 透過部品
17 溶接リブ
19 吸収部品
20 導波路
22 受光端部
24 出光端部
26 反射表面
α 導光路10と導波路20の受光端部22との角度

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-12-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
本事例では、導波路が片側で開放され、すなわち、第1の反射要素の反射表面26に垂直の方向に開放されているために、第2の反射要素が対向しないので、通路状設計又は構成が存在しない。これについて、安全上の理由から、使用中のレーザ光が少なくともハウジングや筐体から出ることができないように構成1をハウジング(図示せず)によって囲わなければならない。このようにすることによって、構成1を使用する作業者が構成1の使用の際にレーザ光の存在により不都合を被ることが防止される。結果として、レーザ光が固体を通らないので、導波路20は正の導波路を示すものではなく、その一方で、反射表面26に対向する第2の反射要素すなわち第2の反射表面が欠落しているので、狭い意味での負の導波路を示すものでもない。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
以下、図3を参照して、本発明の構成を用いる本発明のプラスチック溶接方法、特に、レーザ透過型溶接方法の実施形態を説明する。第1のステップAで、互いに溶接される2つのプラスチック部品を据付け器に配置する。次に、ステップBで、続けて、レーザ光源によるレーザ光の発生を行なう。ステップBでは、レーザ光が導光路、好ましくは複数の導光路を通り、その後、本発明の導波路の第1の反射要素の反射表面で少なくとも1回反射される。最後に、ステップで、本発明の導波路によって反射されたレーザ光を用いて、互いに溶接されるプラスチック部品の溶接が行なわれる。このようにして、本発明の方法を用いることで2つのプラスチック部品が互いに溶接される。プラスチック溶接方法では本発明の構成が用いられ、したがって、本発明の導波路が用いられるので、技術的効果と利点に関しては上記の説明を参照する。
【外国語明細書】