(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081614
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】発泡積層体及びそれからなる容器
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240611BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240611BHJP
C08J 9/06 20060101ALI20240611BHJP
B29C 51/14 20060101ALI20240611BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20240611BHJP
B29C 51/10 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B5/18
C08J9/06 CES
B29C51/14
B65D1/00 110
B29C51/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204118
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2022194970
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】市野 和幸
【テーマコード(参考)】
3E033
4F074
4F100
4F208
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA16
3E033BB08
3E033CA07
3E033CA08
3E033CA16
3E033DA08
3E033FA10
4F074AA24A
4F074AA24B
4F074AA98
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4F074DA02
4F074DA20
4F074DA23
4F074DA34
4F100AK01A
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK07C
4F100AK66A
4F100AK66B
4F100AK66C
4F100AL03B
4F100BA02
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4F100DJ00B
4F100GB16
4F100JA04A
4F100JA06B
4F100JA06C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F208AA09
4F208AA11
4F208AB02
4F208AC03
4F208AG03
4F208AG07
4F208AG20
4F208AH58
4F208MA01
4F208MB01
4F208MC03
4F208MG04
4F208MG05
4F208MH06
(57)【要約】
【解決課題】
バリア性、断熱性、耐熱性および成形性に優れた発泡バリア容器を提供する。
【解決手段】
条件(A1)を満足する樹脂(A)を含むバリア層(X)と、条件(B1)~条件(B3)を満足するポリプロピレン系樹脂(B)を含み、条件(Y1)及び(Y2)を満足する発泡層(Y)とを有することを特徴とする積層体(Z)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(A1)を満足する樹脂(A)を含むバリア層(X)と、下記条件(B1)~条件(B3)を満足するポリプロピレン系樹脂(B)を含み、下記条件(Y1)及び(Y2)を満足する発泡層(Y)とを有することを特徴とする積層体(Z)。
条件(A1)
樹脂(A)は、融点が160~200℃の範囲である。
条件(B1)
ポリプロピレン系樹脂(B)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂である。
条件(B2)
ポリプロピレン系樹脂(B)は、メルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が、0.1~20g/10分の範囲である。
条件(B3)
ポリプロピレン系樹脂(B)は、溶融張力(MT、単位はgf)とメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が、以下の(式1)の関係を満足する。
log(MT)>-0.742×log(MFR)+log7.406 (式1)
条件(Y1)
発泡層(Y)は、密度(d1)が0.2~0.7g/cm3の範囲である。
条件(Y2)
容器として成型する際に、発泡層(Y)を内側に、バリア層(X)を外側に用いる際には、発泡層(Y)は、発泡層(Y)の厚さ(t1、単位はμm)と、発泡層(Y)の密度(d1)とが、以下の(式2)を満足する(ただし、LNは自然対数である)。
t1<920*LN(d1)+1722 (式2)
【請求項2】
下記の条件(C1)及び(C2)を満足するポリプロピレン系樹脂(C)を含み、下記条件(S1)を満足するスキン層(S)を更に含む、請求項1に記載の積層体(Z)。
条件(C1)
ポリプロピレン系樹脂(C)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂である。
条件(C2)
ポリプロピレン系樹脂(C)は、メルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が、1~30g/10分の範囲である。
条件(S1)
スキン層(S)は、非発泡であり、且つ厚さが1~150μmの範囲である。
【請求項3】
発泡層(Y)を複数有し、かつバリア層(X)の両側に発泡層(Y)が積層された、請求項1に記載の積層体(Z)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体(Z)を用い、下記条件(T1)を満足する発泡容器(T)。
条件(T1)
発泡容器(T)は、熱成型発泡容器である。
【請求項5】
下記条件(T2)を更に満足する請求項4に記載の発泡容器(T)。
条件(T2)
発泡容器(T)は、フランジ部を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡層を有する積層体および当該積層体を熱成形してなる容器に関し、さらに詳しくは、バリア性、耐熱性、断熱性に優れた発泡バリア積層体および容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂は、各種容器の材料として幅広く用いられている。このような容器は、熱可塑性樹脂をシート状に押出成形した後、再加熱して、真空成形、真空圧空成形等の熱成形方法を用いて、二次加工することによって得ることができる。このような熱成形方法は、生産性が高く、多層化等も容易なことから、大量生産向きの成形方法として広く普及している。
熱可塑性樹脂の中でも、プロピレン系重合体は、耐熱性、剛性、耐衝撃性、あるいは、衛生面に優れていることから、食品等の容器として好適に用いられており、特に、高い耐熱性を必要とする電子レンジでのレンジアップ容器、高温充填が必要な容器等に使用範囲が広がってきている。
【0003】
一方、賞味期限を長くするために、エチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂組成物やナイロン樹脂組成物等のバリア性樹脂を使用した多層シートを用いた熱成形容器が増えてきているが、このような容器にも、高い耐熱性や断熱性が求められており、そのような特性を有する容器に成形可能なシートの開発が求められている。
【0004】
耐熱性や断熱性を高める手法とし発泡成形があり、発泡樹脂材料は軽量で断熱性及び耐衝撃性や省資源能などに優れているので、梱包材や建材などの各種の資材に汎用されており、主としてポリスチレンとポリウレタン及びポリオレフィンの各樹脂材料が使用されている。
そのなかで、ポリオレフィン系発泡樹脂材料は、更に剛性や耐熱性及び耐薬品性などにも優れ、廃棄の際にも環境問題を生じないことから、発泡樹脂シートや発泡樹脂積層シートなどとして、自動車内装材や建材及び飲食品用容器や日用品などの各種の技術分野の用途において広く用いられ重用されている(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0005】
発泡容器にバリア性を付与する手法として、発泡シートにバリアフィルムをラミネートする手法もあるが、コストが高くなる(例えば、特許文献3を参照)。
しかし、従来のバリア容器に用いられているシートを発泡しても、バリア層の薄肉化によるバリア性の低下や、発泡倍率の低下による耐熱性や断熱性が低下するという問題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-227930号公報
【特許文献2】特開2004-330461号公報
【特許文献3】特開2001-113585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、バリア性、断熱性、耐熱性に優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、特定の原材料を組み合わせ、特定の物性を有するものとすることにより、バリア性、断熱性、耐熱性に優れた積層体を得られることを見出し、さらに積層体を熱成形することにより、バリア性、断熱性、耐熱性に優れた容器が得られることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の構成を有するものである。
[1]下記条件(A1)を満足する樹脂(A)を含むバリア層(X)と、下記条件(B1)~条件(B3)を満足するポリプロピレン系樹脂(B)を含み、下記条件(Y1)及び(Y2)を満足する発泡層(Y)とを有することを特徴とする積層体(Z)。
条件(A1)
樹脂(A)は、融点が160~200℃の範囲である。
条件(B1)
ポリプロピレン系樹脂(B)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂である。
条件(B2)
ポリプロピレン系樹脂(B)は、メルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が、0.1~20g/10分の範囲である。
条件(B3)
ポリプロピレン系樹脂(B)は、溶融張力(MT、単位はgf)とメルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が、以下の(式1)の関係を満足する。
log(MT)>-0.742×log(MFR)+log7.406 (式1)
条件(Y1)
発泡層(Y)は、密度(d1)が0.2~0.7g/cm3の範囲である。
条件(Y2)
容器として成型する際に、発泡層(Y)を内側に、バリア層(X)を外側に用いる際には、発泡層(Y)は、発泡層(Y)の厚さ(t1、単位はμm)と、発泡層(Y)の密度(d1)とが、以下の(式2)を満足する(ただし、LNは自然対数である)。
t1<920*LN(d1)+1722 (式2)
[2]下記の条件(C1)及び(C2)を満足するポリプロピレン系樹脂(C)を含み、下記条件(S1)を満足するスキン層(S)を更に含む、[1]に記載の積層体(Z)。
条件(C1)
ポリプロピレン系樹脂(C)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂である。
条件(C2)
ポリプロピレン系樹脂(C)は、メルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が、1~30g/10分の範囲である。
条件(S1)
スキン層(S)は、非発泡であり、且つ厚さが1~150μmの範囲である。
[3]発泡層(Y)を複数有し、かつバリア層(X)の両側に発泡層(Y)が積層された、[1]に記載の積層体(Z)。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載の積層体(Z)を用い、下記条件(T1)を満足する発泡容器(T)。
条件(T1)
発泡容器(T)は、熱成型発泡容器である。
[5]下記条件(T2)を更に満足する[4]に記載の発泡容器(T)。
条件(T2)
発泡容器(T)は、フランジ部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、バリア性、断熱性、耐熱性に優れたものである。そのため、長期保存および加熱調理が必要な食品容器分野において、特に有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の積層体および容器は、特定の原材料を組み合わせることにより得られることと、積層体および容器として特定の物性を有することを特徴とするものである。以下、項目毎に、順次説明する。
【0012】
本発明の1つの実施態様は、条件(A1)を満足する樹脂(A)を含むバリア層(X)と、条件(B1)~条件(B3)を満足するポリプロピレン系樹脂(B)を含み、条件(Y1)及び(Y2)を満足する発泡層(Y)とを有する積層体(Z)である(以下「本発明の積層体」とも言う)。
1.バリア層(X)
本発明の積層体を構成するバリア層(X)は樹脂(A)を含むが、樹脂(A)の融点が160~200℃であることが重要である(条件(A1))。融点が160℃未満では、積層体成形時の樹脂粘度が低下し、バリア層の厚みムラが発生する。融点が200℃を超えると、積層体成形時に樹脂圧力が高くなり成形が困難になる。
バリア層(X)の厚さは特に限定されないが、バリア性及びコストの観点から、1~200μmが好ましく、5~100μmがより好ましく、10~60μmがさらに好ましい。
バリア層に用いる樹脂(A)としては、バリア性に優れ、融点が低いエチレン-ビニルエステル共重合体ケン化物樹脂が好ましい。
【0013】
2.接着層(H)
本発明の積層体は、バリア層(X)の片側又は両側に接着層(H)を配することができる。
本発明の積層体(Z)に接着層(H)を配する場合は、融点が140℃以上、且つ、発泡層(Y)の融点と15℃以内であることが好ましい。2種以上の材料を混合したものを接着層(H)とした場合はそれらの融点を平均したもの(平均融点)を接着層(H)の融点とした。融点が140℃未満では、積層体成形時の樹脂粘度が低下し、バリア層の厚みムラが発生する。接着層(H)の融点が発泡層(Y)の融点より15℃を超えて高くなると、樹脂圧が上がり押出しが困難になる。接着層(H)の融点が発泡層(Y)の融点より15℃を超えて低くなると、バリア層の厚みムラが発生する。
【0014】
平均融点は、接着層(H)に使用する接着樹脂を接着樹脂(h1)、接着樹脂(h2)、接着樹脂(h3)、・・・・・・接着樹脂(hn)(nは接着樹脂の種類に応じた整数)としたとき、下記の(式2)を用いる
平均融点=(接着樹脂(h1)の添加量(質量%)×接着樹脂(h1)の融点+接着樹脂(h2)の添加量(質量%)×接着樹脂(h2)の融点+接着樹脂(h3)の添加量(質量%)×接着樹脂(h3)の融点+・・・接着樹脂(hn))×1/100 (式2)
【0015】
接着層(H)は、ポリプロピレン樹脂(B)を含む発泡層(Y)とバリア層(X)とを十分な強度で接着する役割を有する。接着層(H)に使用される接着性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂を酸変性した熱可塑性樹脂が、PP層との接着性の面から用いられる。例えば、ポリプロピレン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
接着層(H)の厚さは特に限定されないが、接着性及びコストの観点から、1~200μmが好ましく、5~100μmがより好ましく、5~50μmがさらに好ましい。
【0016】
3.発泡層(Y)
(1)ポリプロピレン系樹脂(B)
本発明の積層体を構成する発泡層(Y)は、条件(B1)~条件(B3)を満足するポリプロピレン系樹脂(B)を含む。
ポリプロピレン樹脂(B)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂である(条件(B1))。
ここで、ポリプロピレン樹脂(B)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体から選択される1種類単独であってもよいし、これらから選択される2種以上であってもよい。また、2種以上のプロピレン単独重合体、2種以上のプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、2種以上のプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体、あるいはこれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0017】
ポリプロピレン系樹脂(B)として使用される、ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定はしないが、ポリプロピレンにメタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いて長鎖分岐を付与したり(例えば、特開2009-57542号公報)、電子線照射し長鎖分岐を付与したり、パーオキサイドと架橋モノマーの存在下押出機内で変性することによって長鎖分岐を付与したり、多段重合により高分子量の成分を付与して溶融張力を向上させるプロピレン単独重合体またはプロピレン-α-オレフィン共重合体などが挙げられる。
プロピレン-αオレフィン共重合体は、プロピレン単位を50重量%以上含有するプロピレンとエチレン又は炭素数4~12のαオレフィンとのプロピレン-α-オレフィン共重合体が好ましく、より好ましくはプロピレン-エチレン共重合体、さらに好ましくはプロピレン-エチレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレンブロック共重合体である。
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(B)がプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体である場合、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられる。プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体(成分(A-1))とプロピレン-α-オレフィン共重合体(成分(A-2))との反応混合物である。これは、結晶性プロピレン重合体部分であるプロピレン単独重合体(成分(A-1))の重合(前段)と、この後に続く、プロピレン-α-オレフィン共重合体(成分(A-2))の重合(後段)を含む製造工程により得られる。
また、前段のプロピレン単独重合体(成分(A-1))の製造方法に準じれば、プロピレン単独重合体の製造も可能である。
上記の重合に用いられる触媒としては、高立体規則性触媒であれば特に限定されるものではなく、前記したように、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒(例えば、ポリプロピレンハンドブック(1998年5月15日初版第1刷発行)等に記載)、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5-295022号公報参照。)が使用できる。
【0018】
本発明の1つの好ましい態様においては、ポリプロピレン系樹脂(B)は、(1)ポリプロピレンにメタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いて長鎖分岐を付与したプロピレン単独重合体(「プロピレン系重合体(1)」とも言う)、及び、(2)プロピレン単独重合体とプロピレン-α-オレフィン共重合体との多段重合による反応混合物であるプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(「プロピレン系組成物(2)」とも言う)の混合物である。
プロピレン系重合体(1)とプロピレン系組成物(2)の混合物が好ましい。
【0019】
ここで、ポリプロピレン系樹脂(B)におけるプロピレン系重合体(1)とプロピレン系組成物(2)の含有量の割合は、プロピレン系重合体(1)が、好ましくは20~80重量%、更に好ましくは 30~70重量%であり、プロピレン系組成物(2)が、好ましくは80~20重量%、更に好ましくは 70~30重量%である(プロピレン系重合体(1)とプロピレン系組成物(2)の含有量の合計を100重量%とする)。
プロピレン系重合体(1)とプロピレン系組成物(2)の含有量の割合が上記の範囲であると、積層体の発泡層の密度、厚さのコントロールが容易な為、当該積層体の製造が容易で、また、積層体の表面の平滑性が良好なため、容器に成形してバリア容器として使用する場合に、トップシールをカップシーラーでの融着した際の、融着強度が良好で、バリア性が良好である。
【0020】
本発明における発泡層(Y)を構成する樹脂成分としては、ポリプロピレン系樹脂(B)のみであってもよく、それ以外の希釈材成分として、本願発明の効果を損なわない範囲で樹脂成分を含有することもできる。
このような樹脂としては、ポリエチレン系樹脂や、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂(但し、当該ポリプロピレン系樹脂は、以下の条件(B2)、条件(B3)のいずれか1つを満たさない)等が挙げられる。これらの中でも、その発泡性能の調整等でプロピレン系樹脂を希釈ポリプロピレン系樹脂(K)として用いるのが、性能調整の容易さから好ましい。
これらの中でも、MFRが10~60g/10分(230℃、2.16kg荷重)であるプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体が好ましい。このような樹脂を発泡層材として含有使用することにより、発泡性能を低下させることなく、良好な外観が得られる。
【0021】
本発明の積層体を構成する発泡層(Y)に使用するポリプロピレン樹脂(B)は、MFRが0.1~20g/10分であり(条件(B2))、好ましくは0.5~10g/10分である。
MFRが0.1未満では押出機の負荷が上昇し成形が困難になり、MFRが20を超えるとドローダウンが大きくなりシート成形が困難になる。
ここで、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠し、試験条件M:230℃、2.16kg荷重で測定される値である。
ポリマーのMFRを調整するには、例えば、重合温度、触媒量、分子量調節剤としての水素の供給量などを適宜調節する方法、あるいは重合終了後に過酸化物の添加により調整する方法が周知である。
【0022】
また、本発明で使用するポリプロピレン系樹脂(B)は、溶融張力(MT)とメルトフローレート(MFR)の間に下記関係が成立することを特徴とする(条件(B3))。
logMT>-0.742×logMFR+log7.406 (式1)
上記の関係式は溶融張力と流動性のバランスを表すものであり、上式を満足することは、高い溶融張力を発現しながら流動性、押出特性が良好であることに相当する。
すなわち、本発明のポリプロピレン系樹脂(B)は、発泡成形、熱成形等の加工特性と、押出特性とのバランスが良好であることを意味するものである。
尚、溶融張力(MT)は、東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、下記の条件で測定した値である。
加熱炉:長さ:350mm、試料挿入孔:9.55mmφ
ピストン:外径:9.474mm、先端:90°円錐
ダイ:長さ:8.0mm、内径:2.095mm
試験温度:230℃
予熱:230℃、5min
ピストン移動速度:1.0cm/min
引き取り速度:3.9m/min
また、MFR(メルトフローレート)の測定方法は、条件(B2)で説明した通りである。
【0023】
(2)発泡層(Y)の密度(d1)
本発明の積層体を構成する発泡層(Y)は、密度が0.2~0.7(単位:g/cm3)が重要である(条件(Y1))。密度が0.7より大きいと断熱性が低下し、0.2未満になると熱成形時に気泡が破泡し成形体の剛性、バリア性が低下する。
発泡層の密度は、発泡剤(炭酸ガス、化学発泡剤等)の量によって調整することができる。
【0024】
(3)発泡層(Y)の厚さ(t1)
発泡層(Y)の厚さ(t1)は、断熱性の観点から、700μm以上が好ましく、1200μm以上がより好ましく、2000μm以上3000μm未満がさらに好ましい。3000μm以上では、積層体の成形性が低下し、外観の良い積層体を得るのが難しい。ただし、後述する条件(Y2)で記載するように、発泡層(Y)を内側に、バリア層(X)を外側に用いる場合は、発泡層(Y)の厚さ(t1)は式2を満たさなければならない。なお、発泡層(Y)が複数の場合は、厚さ(t1)はそれぞれの層厚さの合計値とする。ただし、後述するように、発泡層を2以上有する場合で、その内の少なくとも1つの発泡層の位置がバリア層よりも内容物を充填する側にある場合においては、「発泡層(Y)の厚さ(t1)」は、バリア層よりも内容物を充填する側にある発泡層の厚さを意味する。
【0025】
本発明の積層体を構成する発泡層(Y)は、容器として成型する際に、発泡層(Y)を内側に、バリア層(X)を外側に用いる際には、発泡層(Y)は、発泡層(Y)の厚さ(t1、単位はμm)と、発泡層(Y)の密度(d1)とが、以下の(式2)を満足する(ただし、LNは自然対数である)(条件(Y2))。
t1<920*LN(d1)+1722 (式2)
【0026】
条件(Y2)の前提である「容器として成型する際に、発泡層(Y)を内側に、バリア層(X)を外側に用いる際」とは、発泡層の位置がバリア層よりも内容物を充填する側にあることを意味する。ここで、本発明の積層体が発泡層を2以上有する時は、その内少なくとも1つの発泡層の位置がバリア層よりも内容物を充填する側にある場合は、条件(Y2)の前提である「容器として成型する際に、発泡層(Y)を内側に、バリア層(X)を外側に用いる際」に該当する。
【0027】
本発明の積層体においては、発泡層の位置はバリア層よりも内容物側の内面側でも、内容物を充填しない外面側とすることも可能ではある。ここで、本発明の積層体は、容器として成型されて、当該容器に中身(内容物)を充填して、通常は容器にバリアフィルムをトップシールして、バリア包材として使用されるが、発泡層を内面側に設けた場合は、発泡層の密度と層の厚さによって、トップシールした際のバリア性が良好な場合とそうでない場合があることを本発明者らは見出した。即ち、発泡層を内面側に設けた場合には、式2を満たす場合は、酸素バリア性能を得ることができるが、式2を満たさない場合は酸素バリア性が著しく低下する。
【0028】
なお、本発明の積層体において、「容器として成型する際に、発泡層(Y)を内側に、バリア層(X)を外側に用いる」という構成としない場合、即ち、全ての発泡層の位置がバリア層よりも外側にある場合は、式2を満足する必要はない。この場合には、発泡層の密度や厚さには特別な規定は必要なく、バリア性に影響しないことが確認されている。
【0029】
4.スキン層(S)
本発明の積層体にはスキン層(表層)(S)を設けることができる。スキン層(S)は、厚みが1μm以上150μm以下であることが好ましい。厚みが1μm未満では、発泡層からのガスが抜けて、発泡倍率が低下する。
150μm以上は、積層体の発泡倍率が低下し、軽量性、断熱性が低下する。
また、スキン層(S)は、非発泡であることが好ましい。これにより、積層体表面の平滑性が得られ、外観の美しい積層体が得られる。
【0030】
(1)ポリプロピレン系樹脂(C)
本発明の積層体を構成するスキン層(S)は、以下の条件(C1)及び(C2)を満足するポリプロピレン系樹脂(C)を含むことが好ましい。
条件(C1)
ポリプロピレン系樹脂(C)は、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種のポリプロピレン系樹脂である。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂(C)は、ポリプロピレン系樹脂(B)と同様な製造法で製造することができる。
ポリプロピレン系樹脂(C)として使用される、ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定はしないが、ポリプロピレンにメタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法を用いて長鎖分岐を付与したり(例えば、特開2009-57542号公報)、電子線照射し長鎖分岐を付与したり、パーオキサイドと架橋モノマーの存在下押出機内で変性することによって長鎖分岐を付与したり、多段重合により高分子量の成分を付与して溶融張力を向上させるプロピレン単独重合体またはプロピレン-α-オレフィン共重合体などが挙げられる。
プロピレン-αオレフィン共重合体は、プロピレン単位を50重量%以上含有するプロピレンとエチレン又は炭素数4~12のαオレフィンとのプロピレン-α-オレフィン共重合体が好ましく、より好ましくはプロピレン-エチレン共重合体、さらに好ましくはプロピレン-エチレンランダム共重合体又はプロピレン-エチレンブロック共重合体である。
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(C)がプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体である場合、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられる。プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体(成分(A-1))とプロピレン-α-オレフィン共重合体(成分(A-2))との反応混合物である。これは、結晶性プロピレン重合体部分であるプロピレン単独重合体(成分(A-1))の重合(前段)と、この後に続く、プロピレン-α-オレフィン共重合体(成分(A-2))の重合(後段)を含む製造工程により得られる。
また、前段のプロピレン単独重合体(成分(A-1))の製造方法に準じれば、プロピレン単独重合体の製造も可能である。
上記の重合に用いられる触媒としては、高立体規則性触媒であれば特に限定されるものではなく、前記したように、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒(例えば、ポリプロピレンハンドブック(1998年5月15日初版第1刷発行)等に記載)、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5-295022号公報参照。)が使用できる。
【0032】
本発明の積層体を構成するスキン層(S)に含まれるポリプロピレン系樹脂(C)は、メルトフローレート(MFR、230℃、2.16kg荷重)が1~30g/10分であることが好ましい(条件(C2))。MFRが1未満では主層との界面荒れが発生しやすく、MFRが30を超えると、肉厚ムラが生じやすい。
【0033】
本発明の積層体を構成するスキン層(S)に含まれるポリプロピレン系樹脂(C)がプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体の場合、融点が140℃以下または融点が観測されないエチレン-プロピレン共重合体を5~60重量%含むことが好ましい。
【0034】
(i)付加的成分
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(B)および(C)には、他の付加的成分(任意成分)を、本発明の効果を著しく損なわない範囲で配合することもできる。
この付加的成分としては、通常のポリオレフィン樹脂用配合剤として使用される造核剤、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、ヒンダードアミン系の安定剤、アンチブロッキング剤、滑剤、帯電防止剤、分散剤、無機顔料、有機顔料、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、及び、本発明に使用する以外の樹脂、エチレン・プロピレン系ゴム、エチレン・ブテン系ゴム、エチレン・ヘキセン系ゴム、エチレン・オクテン系ゴム等を挙げることができるが、これら添加剤において、本発明の主用途である飲料食品容器分野における要求を満足させるものを選択することが好ましい。
【0035】
造核剤の具体例としては、2,2-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトールなどのソルビトール系化合物、ヒドロキシ-ジ(t-ブチル安息香酸アルミニウム、2,2-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)燐酸と炭素数8~20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物(旭電化(株)製 商品名NA21)、N,N’-ジフェニルヘキサンジアミドや、N,N’-ジシクロヘキシルテレフタルアミド、N,N’-ジシクロヘキシル-2,6-ナフタレンジカルボキサミドなどを挙げることができる。
【0036】
酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられるが、フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸などを挙げることができる。
【0037】
燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、4,4´-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシル)ホスファイト、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4´-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4´-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイトなどを挙げることができる。
【0038】
硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ-ステアリル-チオ-ジ-プロピオネート、ジ-ミリスチル-チオ-ジ-プロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(3-ラウリル-チオ-プロピオネート)などを挙げることができる。
【0039】
中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイトなどを挙げることができる。
【0040】
ヒンダードアミン系の安定剤の具体例としては、琥珀酸ジメチルと1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、N,N-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル}イミノ]、ポリ[(6-モルホリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル)[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]などを挙げることができる。
【0041】
アンチブロッキング剤の具体例としては、たとえば無機系としては、合成または天然のシリカ(二酸化珪素)、ケイ酸マグネシウム、アルミノシリケート、タルク、ゼオライト、硼酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム等が使用される。
【0042】
滑剤の具体例としては、飽和脂肪酸モノアマイドとして、ラウリン酸アマイド、パルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘニン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド等が挙げられる。
また、不飽和脂肪酸モノアマイドとして、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド、リシノール酸アマイド等が挙げられる。
置換アマイドの具体例としては、N-ステアリルステアリン酸アマイド、N-オレイルオレイン酸アマイド、N-ステアリルオレイン酸アマイド、N-オレイルステアリン酸アマイド、N-ステアリルエルカ酸アマイド、N-オレイルパルチミン酸アマイド等が挙げられる。
飽和脂肪酸ビスアマイドとして、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスカプリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アマイド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アマイド、N,N’-ジステアリルセパシン酸アマイド等が挙げられる。
不飽和脂肪酸ビスアマイドとして、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド、N,N’-ジオレイルアジピン酸アマイド、N,N’-ジオレイルセパシン酸アマイド等が挙げられる。
芳香族系ビスアマイドとして、m-キシリレンビスステアリン酸アマイド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アマイド等が挙げられる。
【0043】
(ii)添加剤の配合方法
上記添加剤成分の配合方法としては、重合で得られたポリプロピレン系樹脂(B)、ポリプロピレン系樹脂(C)の組成物のパウダーに、直接添加剤を予備混合して溶融混練混合する方法、また予め添加剤を高濃度にしたマスターバッチをブレンドする方法等で、配合物を得ることができる。
【0044】
上記混合或いは溶融混練に用いられる混合機或いは混練機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、ブラベンダープラストグラフ、ロール、一軸スクリュー押出造粒機、二軸スクリュー押出造粒機等を挙げることができる。また、溶融混練温度は、一般に100~300℃で行われる。
【0045】
5.積層体
(1)積層体の成形方法
本発明の積層体は、前述の添加剤配合方法により得られた配合物(各層を構成する材料)を用いて、公知の成形方法、例えば、押出成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法、注型成形法等により製造することができる。
中でも押出成形法が好ましく、具体的にはTダイ法、インフレーション法等を用いた押出法が挙げられる。
押出されたシートは、ポリッシング法、エアーナイフ法、金属鏡面ベルト法、等の公知の方法で冷却固化される。
【0046】
(2)積層体の層構成
本発明の積層体は、容器として成形する際に、発泡層(Y)を内側に、バリア層(X)を外側に用いる構成とすることが好ましい。このような構成とすることにより、内容物を保存する容器として使用した際に、バリア層に用いる材料の酸素バリア性の低下を防ぐことができる為、容器の酸素バリア性を向上させることができる。
【0047】
また、本発明の積層体は、発泡層(Y)を複数有し、かつバリア層(X)の両側に発泡層(Y)が積層された構成を有することが好ましい。このような構成とすることにより、例えば、容器として成形して、容器内面側が(条件2)を満たし、さらに、バリア層よりも容器外面側に発泡層を積層することにより、容器断熱性を向上させることができ、バリア性と断熱性の両方を向上させることができる。
【0048】
本発明の積層体として、ガスバリア性を付加すべく、ガスバリア樹脂を含むバリア層(X)(ガスバリア樹脂層とも言う)の両面に発泡層(Y)、及び好ましくは接着層(H)を配した多層シートを挙げることができる。
層構成として、例えば発泡層(Y)/接着層(H)/ガスバリア樹脂層/接着層(H)/発泡層(Y)の3種5層構成があげられ、さらに発泡層(Y)の外側にスキン層(S)を配した4種7層が好適な層構成として挙げられ、他にも、発泡層(Y)/接着層(H)/ガスバリア樹脂層/接着層(H)/スキン層(S)の4種5層構成、さらに発泡層(Y)の外側に表層を配した4種6層も好適な層構成として挙げられる。
各層を積層する方法は、前記した各層を形成する樹脂材料を溶融状態で積層する方法が層間接着性の点で好ましい。一般的には、各材料をそれぞれの押出機で溶融混練した後にダイス内で積層するマルチマニホールド方式や、ダイスに流入させる前に積層するフィードブロック方式(コンバイニングアダプター方式)等が好ましい。
【0049】
(2)積層体の物性
本発明の積層体は、バリア層の肉厚の変化が小さく、バリア性が良好である。
また、本発明の積層体は、密度が0.3~0.6g/cm3であることが好ましく、 0.4~0.6g/cm3であることがより好ましい。積層体の密度をこの範囲にすることにより、積層体表面の平滑性がより良好で外観が向上し、また生産性が向上する。
【0050】
6.発泡容器
本発明のもう1つの実施態様は、積層体(Z)を用い、条件(T1)を満足する発泡容器(T)である(以下「本発明の発泡容器」とも言う)。
条件(T1)
発泡容器(T)は、熱成型発泡容器である。
【0051】
(1)発泡容器の成形方法
本発明の発泡容器は、本発明の積層体を熱成形することにより得られる。具体的には、シートを熱成形することにより、各種容器、カップ等に賦形される。
【0052】
熱成形は、一般に、プラスチックシートを加熱軟化して、所望の型に押し当て、型と材料の間隙にある空気を排除し大気圧により型に密着させて成形する真空成形、及び、大気圧以上の圧縮エアーか、あるいは真空を併用して成形する圧空成形等が用いられ、その方法としては、真空あるいは圧空を用い、必要により、更にプラグを併せて用いて金型形状に成形する方法(ストレート法、ドレープ法、エアスリップ法、スナップバック法、プラグアシスト法、プラグアシストリバースドロー成形法、マッチモールド成形法など)があり、また、固相プレス成形、スタンピング成形が挙げられる。
これらの熱成形法の組み合わせ等による成形法であれば、特に限定されないが、本発明の容器には、オス、メス金型によりシートを挟み込み、その両金型と材料の隙間にある空気を真空引きにより排除し、材料を両金型に密着させて成形する、いわゆる両面真空成形が好適である。熱成形温度や真空度、または成形速度等の各種条件は、金型形状やシートの性質等により、適宜設定される。
【0053】
本発明の発泡容器は、下記条件(T2)を更に満足することが好ましい。
条件(T2)
発泡容器(T)は、フランジ部を有する。
【0054】
本発明の発泡容器はフランジ部を有することにより、バリア容器として使用する際の、バリアフィルムをトップシールすることを容易にする。
ここで、フランジ部は、発泡容器の開口部に設けることができる。
【0055】
フランジ部の発泡層(Y)の厚み(t2)は、300μm~1000μmであることが好ましく、300~700μmであることが更に好ましい。
また、フランジ部の発泡層(Y)の厚み(t2)は、発泡容器(T)の最大厚みの70%以下であることが好ましい。これにより、バリア性が向上する。
【0056】
(2)熱成形容器の物性
本発明で用いられる多層発泡容器は、優れた発泡倍率を持ち、断熱性に優れており、バリア層近傍の発泡形態が良好でバリア層の肉厚変化が小さく、バリア性が良好である。
【実施例0057】
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例における物性測定、分析等は、下記の評価方法に従ったものである。
【0058】
[評価方法]
1.メルトフローレート(MFR)
JIS K7210(ISO 1133)「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法の試験条件Mに従い、以下の条件で測定した。
試験温度:230℃
公称荷重:2.16kg
ダイ形状:直径2.095mm、長さ8.00mm
【0059】
2.溶融張力(MT)
東洋精機社製キャピラリーレオーメータを用い、バレル温度230℃、ダイ内径2.095mm、長さ8mmを用い、ピストン速度10mm/分(剪断速度13.22sec-1、ストランドの引取速度4m/分、予熱10分にて、ストランドを押出し、引き取っているストランドにかかる荷重を測定の平均値を求めて溶融張力値とした。
【0060】
3.連続気泡率と独立気泡率
ASTM D2856-87に準拠して測定した。測定装置としてエアーピクノメーター(東芝ベックマン製、型式930)を用いた。
【0061】
4.発泡倍率
発泡倍率は下式により計算した。
発泡倍率=(未発泡時の密度)÷(発泡時の密度)
【0062】
4-1.積層体の密度
積層体から5点、重量と厚さを測定した結果から算出した密度を平均し、積層体の密度とした。
【0063】
4-2.発泡層の密度
発泡層の密度は、発泡層以外の各層の厚さと密度、積層体の密度から算出した。
【0064】
5.融点
示差操作熱量計(DSC)を用い、一旦200℃まで温度を上げて熱履歴を消去した後、10℃/分の降温速度で40℃まで温度を降下させ、再び昇温速度10℃/分にて測定した際の、吸熱ピークトップの温度を融点とした。
【0065】
6.各層の厚み測定
積層体の断面サンプルをミクロトーム(エルマー製ESM-100L)で切り出し、顕微鏡で観察し、各層の厚みを測定した。
【0066】
7.バリア性の評価方法
トップシール用バリアフィルム(PET//EVOH/Ny/PP用シーラント62μm、EVOH層厚さ35μm)を、カップシール機(株式会社シンワ機械製半自動シール機SN-1)を使用して、容器にヒートシールして、バリア性評価用のサンプルを作製した。
酸素ガス透過量測定装置(モコン社製、OX-TRAN 2/21)を用いて、酸素透過度(23℃、外側湿度50%/内側湿度90%)を測定した。
バリア性評価結果の判定は、◎○△が合格、×は不合格。○が好ましく、◎が更に好ましい。
・バリア性評価結果の判定
酸素透過度 0.010 CC/package/24h未満:◎
酸素透過度 0.01CC~0.10CC/package/24h未満:○
酸素透過度 0.10CC~0.30CC/package/24h未満:△
酸素透過度 0.30CC以上:×
【0067】
8.多層発泡容器の断熱性
多層発泡容器に95℃の湯を注ぎ入れ、容器底面外側(湯の無い側)の温度を粘着式熱電対を装備した温度測定装置で測定し、その温度の最大値が低いほど断熱性が高いと評価した。○と△が合格、×は不合格。△よりも○の方が好ましい。
70℃未満:○
70℃以上85℃未満:△
85℃以上:×
【0068】
[実施例1]
I.ポリプロピレン系樹脂(B)を構成する樹脂の製造
1.プロピレン系重合体(1)、及びプロピレン系重合体(2)の製造
(1)プロピレン系重合体(1)の作製
【0069】
[製造例1(PP-1Aの製造)]
[触媒成分[A-1]の合成例1]
(1)ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムの合成:(成分[A-1](錯体1)の合成):
(1-1)4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの合成:
500mlのガラス製反応容器に、4-i-プロピルフェニルボロン酸15g(91mmol)、ジメトキシエタン(DME)200mlを加え、炭酸セシウム90g(0.28mol)と水100mlの溶液を加え、4-ブロモインデン13g(67mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム5g(4mmol)を順に加え、80℃で6時間加熱した。
放冷後、反応液を蒸留水500ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで抽出した。エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの無色液体15.4g(収率99%)を得た。
【0070】
(1-2)2-ブロモ-4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの合成:
500mlのガラス製反応容器に4-(4-i-プロピルフェニル)インデン15.4g(67mmol)、蒸留水7.2ml、DMSO200mlを加え、ここにN-ブロモスクシンイミド17g(93mmol)を徐々に加えた。そのまま室温で2時間撹拌し、反応液を氷水500ml中に注ぎ入れ、トルエン100mlで3回抽出した。トルエン層を飽和食塩水で洗浄し、p-トルエンスルホン酸2g(11mmol)を加え、水分を除去しながら3時間加熱還流した。反応液を放冷後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2-ブロモ-4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの黄色液体19.8g(収率96%)を得た。
【0071】
(1-3)2-(2-メチル-5-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの合成:
500mlのガラス製反応容器に、2-メチルフラン6.7g(82m1mol)、DME100mlを加え、ドライアイス-メタノール浴で-70℃まで冷却した。ここに1.59mol/Lのn-ブチルリチウム-n-ヘキサン溶液51ml(81mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。-70℃に冷却し、そこにトリイソプロピルボレート20ml(87mmol)とDME50mlの溶液を滴下した。滴下後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水50mlを加え加水分解した後、炭酸カリウム223gと水100mlの溶液、2-ブロモ-4-(4-i-プロピルフェニル)インデン19.8g(63mmol)を順に加え、80℃で加熱し、低沸分を除去しながら3時間反応させた。放冷後、反応液を蒸留水300ml中に注ぎ、分液ロートに移しジイソプロピルエーテルで3回抽出した、エーテル層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、2-(2-メチル-5-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデンの無色液体19.6g(収率99%)を得た。
【0072】
(1-4)ジメチルビス(2-(2-メチル-5-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル)シランの合成:
500mlのガラス製反応容器に、2-(2-メチル-5-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデン9.1g(29mmol)、THF200mlを加え、ドライアイス-メタノール浴で-70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn-ブチルリチウム-ヘキサン溶液17ml(28mmol)を滴下し、そのまま3時間撹拌した。-70℃に冷却し、1-メチルイミダゾール0.1ml(2mmol)、ジメチルジクロロシラン1.8g(14mmol)を順に加え、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
反応液に蒸留水を加え、分液ロートに移し食塩水で中性になるまで洗浄し、硫酸ナトリウムを加え反応液を乾燥させた。硫酸ナトリウムを濾過し、溶媒を減圧留去して、シリカゲルカラムで精製し、ジメチルビス(2-(2-メチル-5-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル)シランの淡黄色固体8.6g(収率88%)を得た。
【0073】
(1-5)ジメチルシリレンビス(2-(2-メチル-5-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル)ハフニウムジクロライドの合成:
500mlのガラス製反応容器に、ジメチルビス(2-(2-メチル-5-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル)シラン8.6g(13mmol)、ジエチルエーテル300mlを加え、ドライアイス-メタノール浴で-70℃まで冷却した。ここに1.66mol/Lのn-ブチルリチウム-n-ヘキサン溶液15ml(25mmol)を滴下し、3時間撹拌した。反応液の溶媒を減圧で留去し、トルエン400ml、ジエチルエーテル40mlを加え、ドライアイス-メタノール浴で-70℃まで冷却した。そこに、四塩化ハフニウム4.0g(13mmol)を加えた。その後、徐々に室温に戻しながら一夜撹拌した。
溶媒を減圧留去し、ジクロロメタン-ヘキサンで再結晶を行い、ジメチルシリレンビス(2-(2-メチル-5-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル)ハフニウムジクロライドのラセミ体を黄色結晶として7.6g(収率65%)得た。
得られたラセミ体についての1H-NMRによる同定値を以下に記す。
1H-NMR(C6D6)同定結果
ラセミ体:δ0.95(s,6H),δ1.10(d,12H),δ2.08(s,6H),δ2.67(m,2H),δ5.80(d,2H),δ6.37(d,2H),δ6.74(dd,2H),δ7.07(d,2H),δ7.13(d,4H),δ7.28(s,2H),δ7.30(d,2H),δ7.83(d,4H)。
【0074】
[触媒成分[A-2]の合成例2]:
(1)rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成:(成分[A-2](錯体2)の合成):
rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウムの合成は、特開平11―240909号公報の実施例1に記載の方法と同様に、実施した。
【0075】
[触媒成分[B]の合成例]
イオン交換性層状珪酸塩の化学処理:
セパラブルフラスコ中で蒸留水2264gに96%硫酸(668g)を加えその後、層状珪酸塩としてモンモリロナイト(水沢化学社製ベンクレイSL:平均粒径19μm)4Lを加えた。このスラリーを90℃で210分加熱した。この反応スラリーを蒸留水4000g加えた後にろ過したところケーキ状固体810gを得た。
次に、セパラブルフラスコ中に、硫酸リチウム432g、蒸留水1924gを加え硫酸リチウム水溶液としたところへ、上記ケーキ状固体を全量投入した。このスラリーを室温で120分反応させた。このスラリーに蒸留水4L加えた後にろ過し、更に蒸留水でpH5~6まで洗浄し、ろ過を行ったところ、ケーキ状固体760gを得た。
得られた固体を窒素気流下100℃で一昼夜予備乾燥後、53μm以上の粗大粒子を除去し、更に200℃、2時間、減圧乾燥することにより、化学処理モンモリロナイト220gを得た。
この化学処理モンモリロナイトの組成は、Al:6.45重量%、Si:38.30重量%、Mg:0.98重量%、Fe:1.88重量%、Li:0.16重量%であり、Al/Si=0.175[mol/mol]であった。
【0076】
[触媒調製及び予備重合]
3つ口フラスコ(容積1L)中に、上で得られた化学処理モンモリロナイト20gを入れ、ヘプタン(132mL)を加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム(25mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を68.0mL)を加えて1時間攪拌後、ヘプタンで残液率が1/100になるまで洗浄し、全容量を100mLとした。
また、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分[A-1]の合成例1で作製したrac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム(210μmol)をトルエン(42mL)に溶解し(溶液1)、更に、別のフラスコ(容積200mL)中で、前記触媒成分[A-2]の合成例2で作製したrac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウム(90μmol)をトルエン(18mL)に溶解した(溶液2)。
【0077】
先ほどの化学処理モンモリロナイトが入った1Lフラスコにトリイソブチルアルミニウム(0.84mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を1.2mL)を加えた後、上記溶液1を加えて20分間室温で撹拌した。
その後、更にトリイソブチルアルミニウム(0.36mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を0.50mL)を加えた後上記溶液2を加えて、1時間室温で攪拌した。
その後、ヘプタンを338mL追加し、このスラリーを1Lオートクレーブに導入した。
オートクレーブの内部温度を40℃にしたのちプロピレンを10g/時の速度でフィードし、4時間40℃を保ちつつ予備重合を行った。その後、プロピレンフィードを止めて、1時間残重合を行った。得られた触媒スラリーの上澄みをデカンテーションで除去した後、残った部分に、トリイソブチルアルミニウム(12mmol:濃度143mg/mLのヘプタン溶液を17.0mL)を加えて5分攪拌した。
この固体を1時間減圧乾燥することにより、乾燥予備重合触媒56.4gを得た。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は1.82であった(予備重合触媒1)。
【0078】
[重合例1]
内容積200リットルの撹拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分に置換した後、十分に脱水した液化プロピレン40Kgを導入した。これに水素9.2NL(0.82g)、トリイソブチルアルミニウム(0.12mol:濃度50g/Lのヘプタン溶液を0.47L)を加えた後、内温を70℃まで昇温した。次いで予備重合触媒1を2.1g(予備重合ポリマーを除いた重量で)、アルゴンで圧入して重合を開始させ、内部温度を70℃に維持した。2時間経過後に、エタノールを100ml圧入し、未反応のプロピレンをパージし、オートクレーブ内を窒素置換することにより重合を停止した。
得られたポリマーを90℃窒素気流化で1時間乾燥し、18.8kgの重合体(プロピレン系重合体(1))を得た。
触媒活性は9000gPP/g触媒であった。MFRは7.5g/10分であった。
【0079】
(2)プロピレン系重合体(2)の作製
(2-1)触媒1の製造
撹拌装置を備えた容量10リットルのオートクレーブを充分に窒素で置換し、精製したトルエンを2リットル導入した。ここに、室温で、ジエトキシマグネシウムMg(OEt)2を200g、四塩化チタンを1リットル添加した。温度を90℃に上げて、フタル酸-n-ブチルを50ml導入した。その後、温度を110℃に上げて3時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。
次いで、精製したトルエンを導入して全体の液量を2Lに調整した。室温で四塩化チタンを1リットル添加し、温度を110℃に上げて2時間反応を行った。反応生成物を精製したトルエンで充分に洗浄した。更に、精製したn-ヘプタンを用いて、トルエンをn-ヘプタンで置換し、固体触媒成分(触媒1-1)のスラリーを得た。
このスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体触媒成分のチタン含有量は2.7重量%、マグネシウム含有量は18重量%であった。また、固体触媒成分の平均粒径は33μmであった。
【0080】
次に、攪拌装置を備えた容量20リットルのオートクレーブを充分に窒素で置換し、上記固体触媒成分(触媒1-1)のスラリーを固体触媒成分(触媒1-1)として100g導入した。精製したn-ヘプタンを導入して、固体触媒成分(触媒1-1)の濃度が25g/リットルとなるように調整した。四塩化珪素SiCl4を50mL加え、90℃で1時間反応を行った。反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄した。
その後、精製したn-ヘプタンを導入して液レベルを4リットルに調整した。ここに、ジメチルジビニルシランを30ml、t-ブチルメチルジメトキシシラン(t-C4H9)(CH3)Si(OCH3)2を30ml、トリエチルアルミニウムEt3Alのn-ヘプタン希釈液をEt3Alとして80g添加し、40℃で2時間反応を行った。反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄し、得られたスラリーの一部をサンプリングして乾燥した。分析したところ、固体成分には、チタンが1.2重量%、(t-C4H9)(CH3)Si(OCH3)2が8.8重量%含まれていた。
【0081】
上記で得られた固体成分を用いて、以下の手順により予備重合を行った。
上記のスラリーに精製したn-ヘプタンを導入して、固体成分の濃度が20g/リットルとなるように調整した。スラリーを10℃に冷却した後、トリエチルアルミニウムEt3Alのn-ヘプタン希釈液をEt3Alとして10g添加し、280gのプロピレンを4時間かけて供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に30分間反応を継続した。
次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn-ヘプタンで充分に洗浄した。得られたスラリーをオートクレーブから抜き出し、真空乾燥を行って固体触媒成分(触媒1)を得た。この固体触媒成分(触媒1)は、固体成分1gあたり2.5gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、固体触媒成分(触媒1)のポリプロピレンを除いた部分には、チタンが1.0重量%、(t-C4H9)(CH3)Si(OCH3)2が8.2重量%含まれていた。
【0082】
2.プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造
内容積2000リットルの流動床式反応器を二個連結してなる連続反応装置を用いて、重合を行った。
まず、第一反応器で、重合温65℃、プロピレン分圧1.8MPa(絶対圧)、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.015となるように、連続的に供給するとともに、トリエチルアルミニウムを4.0g/hrで、上記の触媒1をポリマー重合速度が16kg/hrになるように供給した。第一反応器で重合したパウダー(結晶性プロピレン重合体)を、反応器内のパウダー保有量が40kgとなるように16kg/hrの抜出し速度で連続的に抜き出し、第二反応器に連続的に移送した(第一段目重合工程)。
【0083】
次に、第二反応器で、重合温度70℃で、モノマー圧力1.5MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.29となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.0008となるように、連続的に供給すると共に、エチルアルコールを、第一反応器に供給するトリエチルアルミニウムに対して1.17倍モルになるように、供給した。
第二反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダー保有量を60kgとなるように連続的にベッセルに抜き出し、水分を含んだ窒素ガスを供給して反応を停止させ、プロピレン・エチレンブロック共重合体を得た(第二段目重合工程)。
第一段目重合工程で得られた結晶性プロピレン重合体であるプロピレン(共)重合体(A)及び第二段目重合工程で得られたプロピレン・エチレン共重合体(B)、並びに当該重合体(A)と当該共重合体(B)の反応混合物であるプロピレン・エチレンブロック共重合体の組成、性状を表1に示した
【0084】
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体のパウダー100重量部に対して、酸化防止剤として「IRGASTAB FS 301 FF」(BASF社製)0.2重量部、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-ターシャルブチルベンゾイル)イソシアネート(ソンウォン社製、商品名:SONGNOX1790)0.1重量部、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製、商品名:PEP-36)0.05重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム0.03重量部を添加し、スーパーミキサー(川田製作所製)で5分間混合した。
【0085】
得られたブレンド物を用いて、以下の装置、条件下で水中カット造粒法により、プロピレン系組成物(2)を得た。
・2軸押出機(テクノベル社製KZW25TW-45MG-NH)
・口径30mm、L/D=25(アイ・ケー・ジー社製PMS30-25)
・スクリュー:フルフライトCR2.0、Feed部溝深さ4mm+ダルメージ
・スクリュー回転数:60rpm
・設定温度:ホッパー下水冷、C1~C4各220、200、200、200℃
・ダイ:ストランドダイ
・造粒体の処理レート:200kg/hr
・冷却水温度:43℃
・スクリーンメッシュ:BMT140ZZ(石川金網(株)より入手、特殊綾畳織)
【0086】
【0087】
ポリプロピレン系樹脂(B)の製造と、希釈ポリプロピレン系樹脂(K)(希釈材)や発泡剤とのドライブレンド
II.ポリプロピレン系樹脂(B)及び発泡層材の作製
前記プロピレン系重合体(1)パウダー70重量部と、プロピレン系組成物(2)30重量部との混合物100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤として、ペンタエリスチル-テトラキス[3-(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバスペシャルティケミカルズ(株)社製;イルガノックス1010)0.015重量部、トリス―(2,4―ジ―t―ブチルフエニル)フオスフアイト(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製;イルガフォス168)0.03重量部、中和剤として、ハイドロタルサイト(協和化学工業(株)社製;DHT-4A)0.015重量部を、スーパーミキサーに添加し、窒素シール後、3分間混合した。その後、スクリュー径50mmDの単軸押出機を用いホッパーを窒素シールしながら230℃で溶融混練し造粒(ペレット化)し、ポリプロピレン系樹脂(B)とした(PP-b1)。このペレット空気循環型乾燥機に入れ80℃、2hr乾燥した。このペレットは、MFR=6g/10分であった。次いで、ポリプロピレン系樹脂(B)を60重量%、希釈ポリプロピレン系樹脂(K)として日本ポリプロ(株)製ノバテック(PPランダムグレード グレード名:MG03BD)を40重量%、発泡剤としてクラリアント製ハイドロセロール(グレード名:CF40E-J)0.5重量部を添加し、ドライブレンドし、発泡層材とした。
【0088】
III.積層体(Z)の作製
口径115mmφの押出機で発泡剤としてCO2を供給しながら上記で得られたポリプロピレン系樹脂(B)と希釈ポリプロピレン系樹脂(K)を用いた発泡層材を可塑化ゾーン230℃、メータリングゾーン180℃で発泡層(Y)用に、口径90mmφの押出機でポリプロピレン系樹脂(C)としてBC3BRFA(日本ポリプロ製、商品名:ノバテック、MFRが13g/10分)を180℃でスキン層(S)用に、1台目の口径65mmφ押出機でP674V(三菱ケミカル(株)製、商品名:モディック)を50wt%とP502(三菱ケミカル(株)製、商品名:モディック)を50wt%をドライブレンドした接着性樹脂を200℃で接着層(H)用に、2台目の口径65mmφ押出機で樹脂(A)としてDC3203RB(日本合成化学(株)製、商品名:ソアノール)を200℃でバリア層(X)用にそれぞれ押し出し、フィードブロック、ダイを介して、スキン層(S)/接着層(H)/バリア層(X)/接着層(H)/発泡層(Y)/スキン層(S)の4種6層構造(比較例3は4種7層構造)の積層体(Z)を製造した。各層の厚みは、(μm)(実施例の表の通り記載する)とした。
【0089】
IV.熱成形容器の作製
次いで、容器成形機中で加熱された容器成形直前の積層体(Z)を非接触式放射温度計で測定し、該積層体が155℃に達した時に、FKS真空圧空成形機(浅野製作所社製)を用いて、縦170mm、横130mm、高さ30mmの容器を成形した。
なお、実施例及び比較例において、積層体、容器又はその構成成分についての諸物性は、上記の評価方法に従って測定、評価した。
【0090】
【0091】
【表3】
表3において、非発泡層としてはプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体であるEC9GD(日本ポリプロ製、商品名:ノバテック)を使用した。
【0092】
表1、2及び3から明らかなように、本発明の例示である実施例の容器は、断熱性に優れ、バリア性に優れていることがわかり、断熱性とバリア性の両方を同時に満たすことができる。一方、例示の比較例の容器は、断熱性とバリア性のどちらかが損なわれ、バリア性と断熱性を同時に満たすことができない。