(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081629
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】湿式ビーズミル
(51)【国際特許分類】
B02C 17/16 20060101AFI20240611BHJP
B01F 23/53 20220101ALI20240611BHJP
B01F 23/50 20220101ALI20240611BHJP
B01F 25/52 20220101ALI20240611BHJP
B01F 33/25 20220101ALI20240611BHJP
B01F 35/53 20220101ALI20240611BHJP
B01F 35/75 20220101ALI20240611BHJP
B01F 23/80 20220101ALI20240611BHJP
B01F 27/93 20220101ALI20240611BHJP
B01F 27/86 20220101ALI20240611BHJP
B01F 27/1151 20220101ALI20240611BHJP
B01F 27/1152 20220101ALI20240611BHJP
B01F 27/192 20220101ALI20240611BHJP
B01F 27/171 20220101ALI20240611BHJP
B04B 5/12 20060101ALI20240611BHJP
B04B 11/02 20060101ALI20240611BHJP
B03B 5/00 20060101ALI20240611BHJP
B03B 7/00 20060101ALI20240611BHJP
B03B 5/28 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
B02C17/16 B
B01F23/53
B01F23/50
B01F25/52
B01F33/25
B01F35/53
B01F35/75
B01F23/80
B01F27/93
B01F27/86
B01F27/1151
B01F27/1152
B01F27/192
B01F27/171
B04B5/12
B04B11/02
B03B5/00 Z
B03B7/00
B03B5/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023206532
(22)【出願日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2022195118
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023142624
(32)【優先日】2023-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000166557
【氏名又は名称】アイメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092761
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 邦廣
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 章裕
【テーマコード(参考)】
4D057
4D063
4D071
4G035
4G036
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4D057AC01
4D057AC06
4D057AE18
4D057BC05
4D057BC11
4D063FF14
4D063FF23
4D063FF35
4D071AA01
4D071AA52
4D071AB04
4D071AB14
4D071DA20
4G035AB44
4G035AB46
4G035AC31
4G035AE13
4G036AC70
4G037AA11
4G037EA04
4G078AA03
4G078AA13
4G078AA30
4G078AB03
4G078BA05
4G078BA09
4G078BA11
4G078CA01
4G078CA08
4G078DA17
4G078DC01
4G078EA06
4G078EA10
4G078EA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】分散処理中に粉砕媒体が処理室の外部に流出することを防止することにより、高い分散効率を維持することができる、湿式ビーズミルを提供する。
【解決手段】本発明の湿式ビーズミル1は、砕料を含有するスラリーと粉砕媒体との混合物を収容する処理室2と、処理室2内で回転することにより砕料の分散処理及び/又は解砕処理及び/又は粉砕処理を行う撹拌装置Aと、処理室2に開口部を有し、かつ、前記スラリーを前記処理室の外部に導出する、スラリー通路12を有し、撹拌装置Aによって撹拌された前記スラリーの一部が前記処理室の内部に向かう流れを生成するように、処理室2にバッフル5を設け、これにより、スラリー通路12を通って処理室Aから流出するスラリーの流れに、処理室Aの内部に向かうスラリーの流れを混合し、粉砕媒体がスラリー通路12を通って処理室Aの外部へ流出することを防止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砕料を含有するスラリーと粉砕媒体との混合物を収容する処理室と、前記処理室内で回転することにより前記混合物を撹拌し、前記砕料の分散処理及び/又は解砕処理及び/又は粉砕処理を行う撹拌装置と、前記処理室に開口部を有し、かつ、前記スラリーを前記処理室の外部に導出する、スラリー通路とを有する、湿式ビーズミルにおいて、前記撹拌装置によって撹拌された前記スラリーの一部が前記処理室の内部に向かう流れを生成するように、前記処理室にバッフルを設け、前記バッフルにより、前記スラリー通路を通って前記処理室から流出する前記スラリーの流れに、前記処理室の内部に向かう前記スラリーの流れを混合し、前記粉砕媒体が前記スラリー通路を通って前記処理室の外部へ流出することを防止することを特徴とする、湿式ビーズミル。
【請求項2】
請求項1に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記バッフルは、前記スラリー通路の前記開口部を囲繞するスラリー案内面を有し、前記スラリー案内面は、前記開口部付近で、前記スラリー通路を通って前記処理室から流出する前記スラリーの流れ方向に対して逆方向に傾斜することを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項3】
請求項2に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記スラリー案内面は凹状湾曲面によって構成されていることを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項4】
請求項2に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記スラリー案内面は、前記開口部に向かって前記処理室の内部方向に傾斜した円錐面によって構成されていることを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項5】
請求項2に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記バッフルは、前記スラリー案内面に前記スラリーの入口開口部を有し、かつ、前記スラリー通路の中途部に前記スラリーの出口開口部を有する、分岐通路を有し、前記分岐通路に第2のスラリー案内面を形成し、前記第2のスラリー案内面は、前記出口開口部付近で、前記スラリー通路を通って前記処理室から流出する前記スラリーの流れ方向に対して逆方向に傾斜していることを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記撹拌装置は、前記スラリー案内面に対向するフィンディスクと、前記処理室の底面に対向するエンドディスクを有し、前記フィンディスクは、放射方向に延在し、かつ、前記スラリー案内面に向かって突出した撹拌フィンを有し、前記エンドディスクは、放射方向に延在する撹拌フィンと、軸方向に延在する複数の貫通孔を有することを特徴とする。前記湿式ビーズミル。
【請求項7】
請求項6に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記エンドディスクは前記フィンディスクよりも小径であることを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項8】
請求項7に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記エンドディスクの前記撹拌フィンは前記フィンディスクの側にのみ形成されていることを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項9】
砕料を含有するスラリーと粉砕媒体との混合物を収容する処理室と、前記処理室内で回転することにより前記混合物を撹拌し、前記砕料の分散処理及び/又は解砕処理及び/又は粉砕処理を行う撹拌装置と、前記処理室に開口部を有し、かつ、前記スラリーを前記処理室の外部に導出する、スラリー通路とを有する、湿式ビーズミルにおいて、前記処理室に緩衝室を併設し、前記処理室と前記緩衝室とを前記スラリー通路を介して連通し、前記スラリー通路は前記処理室にスラリー流入口を有し、前記スラリー通路は前記緩衝室にスラリー流出口を有し、前記緩衝室に前記スラリーから前記粉砕媒体を分離する粉砕媒体分離装置を配置したことを特徴とする、湿式ビーズミル。
【請求項10】
請求項9に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記緩衝室を前記処理室の上に配置し、前記緩衝室の内面に、円筒状の面と、前記円筒状の面の下端から前記スラリー通路の前記スラリー流出口に向かってすり鉢状に延在する裁頭円錐形の面とを形成し、前記粉砕媒体分離装置を遠心分離装置によって構成し、前記遠心分離装置を前記緩衝室の前記円筒状の面によって囲繞される位置に配置し、前記遠心分離装置の上部外径を前記遠心分離装置の下部外径よりも大径にしたことを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項11】
請求項10に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記遠心分離装置に卍型のスラリー通路を設けたことを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項12】
請求項9に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記粉砕媒体分離装置は、粉砕媒体を通過させないギャップセパレータ及び又はスクリーンによって構成されることを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項13】
砕料を含有するスラリーと粉砕媒体との混合物を収容する処理室と、前記処理室内で回転することにより前記混合物を撹拌し、前記砕料の分散処理及び/又は解砕処理及び/又は粉砕処理を行う撹拌装置と、前記処理室に開口部を有し、かつ、前記スラリーを前記処理室の外部に導出する、スラリー通路とを有する、湿式ビーズミルにおいて、前記処理室の内面を円筒状の面によって構成し、前記円筒状の面に、前記撹拌装置の回転軸の軸心方向に対して所定の角度をなして延在する複数の凹溝を所定の間隔を置いて形成したことを特徴とする、湿式ビーズミル。
【請求項14】
請求項13に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記複数の凹溝は、それぞれ、凹状に滑らかに湾曲した断面形状を有することを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記複数の凹溝を、それぞれ、前記撹拌装置の回転軸の軸心に平行に延在する平行溝によって構成したことを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項16】
請求項15に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記平行溝は、それぞれ、上部平行溝と下部平行溝に区分され、前記上部平行溝と前記下部平行溝は、それぞれ、位相をずらして配置されていることを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項17】
請求項13又は14に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記複数の凹溝を、それぞれ、前記撹拌装置の回転軸の軸心方向に関して傾斜して延在する傾斜溝によって構成し、前記傾斜溝は、前記撹拌装置の回転方向に沿って前記傾斜溝の下部の位相が前記傾斜溝の上部の位相よりも進んだ位置にあることを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【請求項18】
請求項13又は14に記載の湿式ビーズミルにおいて、前記凹溝を、前記撹拌装置の回転軸を中心に巻回する螺旋溝によって構成し、前記螺旋溝は、前記撹拌装置の回転方向に沿って前記処理室の内面を上部から下部に向かって延在することを特徴とする、前記湿式ビーズミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた分散性能を備えた湿式ビーズミルに関するものである。
【0002】
本発明は、また、粉砕機又は解砕機としても使用することができる湿式ビーズミルに関するものである。
【背景技術】
【0003】
縦型の湿式ビーズミルにおいて、単純な円筒形の分散室内で撹拌装置を回転させると、撹拌によるボルテックスによって粉砕媒体であるビーズがスラリー中で容易に舞い上がり、分散室内の撹拌装置の上方に配置された遠心分離装置の周辺にまで到達する。これらの舞い上がった多数のビーズが、条件によっては、分散室の上部に滞留し、所謂、ビーズパッキング現象を惹起し、ついには遠心分離装置の正常な回転運動を阻害し、異常発熱や異常負荷を生じるおそれがある。
【0004】
特開2013-39508号公報は、安定した粉砕処理が可能でナノサイズの微粒子が分散したスラリーが得られ、固形粒子の凝集を起こさないメディア撹拌型粉砕機を開示する。
【0005】
特開2007-125454号公報は、液体と液体又は粉体と液体を混合撹拌し、成分を微粒化して乳化、分散させるための高速撹拌装置を開示する。この高速撹拌装置は、内周面に凹凸を有する円筒形の撹拌槽と、この撹拌槽と同心にて外径が撹拌槽内径より僅かに小さい回転羽根と、この回転羽根を端部に有する正逆高速回転可能なシャフトとを備え、上記シャフトを高速回転させて上記回転羽根を高速回転させることにより、上記撹拌槽に導入された被処理液を、上記撹拌槽の凹凸を有する内周面に沿って薄膜円筒状に高速回転させながら撹拌する高速撹拌装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-39508号公報
【特許文献2】特開2007-125454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、分散処理中に粉砕媒体が処理室の外部に流出することを防止し、高い分散効率を維持することにより、優れた分散性能を有する、湿式ビーズミルを提供することにある。
本発明の他の目的は、粉砕機又は解砕機としても使用することができる湿式ビーズミルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の湿式ビーズミルは、砕料を含有するスラリーと粉砕媒体との混合物を収容する処理室と、前記処理室内で回転することにより前記混合物を撹拌し、前記砕料の分散処理及び/又は解砕処理及び/又は粉砕処理を行う撹拌装置と、前記処理室に開口部を有し、かつ、前記スラリーを前記処理室の外部に導出する、スラリー通路とを有する、湿式ビーズミルにおいて、前記撹拌装置によって撹拌された前記スラリーの一部が前記処理室の内部に向かう流れを生成するように、前記処理室にバッフルを設け、前記バッフルにより、前記スラリー通路を通って前記処理室から流出する前記スラリーの流れに、前記処理室の内部に向かう前記スラリーの流れを混合し、前記粉砕媒体が前記スラリー通路を通って前記処理室の外部へ流出することを防止することを特徴とする。
【0009】
本発明の湿式ビーズミルのバッフルは、スラリー通路の開口部を囲繞するスラリー案内面を有し、このスラリー案内面は、前記開口部付近で、前記スラリー通路を通って前記処理室から流出するスラリーの流れ方向に対して逆方向に傾斜していることを特徴とする。
【0010】
本発明の湿式ビーズミルのスラリー案内面は凹状湾曲面によって構成されることができる。
【0011】
本発明の湿式ビーズミルのスラリー案内面は、また、前記開口部に向かって前記処理室の内部方向に傾斜した円錐面によって構成されることができる。
【0012】
本発明の湿式ビーズミルのバッフルは、スラリー案内面にスラリーの入口開口部を有し、かつ、スラリー通路の中途部にスラリーの出口開口部を有する、分岐通路を有し、この分岐通路に第2のスラリー案内面を形成し、この第2のスラリー案内面は、前記出口開口部付近で、前記スラリー通路を通って前記処理室から流出する前記スラリーの流れ方向に対して逆方向に傾斜していることができる。
【0013】
本発明の湿式ビーズミルの前記撹拌装置は、前記スラリー案内面に対向するフィンディスクと、前記処理室の底面に対向するエンドディスクを有し、前記フィンディスクは、放射方向に延在し、かつ、前記スラリー案内面に向かって突出した撹拌フィンを有し、前記エンドディスクは、放射方向に延在する撹拌フィンと、軸方向に延在する複数の貫通孔を有することができる。
【0014】
本発明の湿式ビーズミルの前記エンドディスクは、前記フィンディスクよりも小径であることができる。
【0015】
本発明の湿式ビーズミルの前記エンドディスクの前記撹拌フィンは、前記フィンディスクの側にのみ形成されることができる。
【0016】
本発明の湿式ビーズミルは、また、砕料を含有するスラリーと粉砕媒体との混合物を収容する処理室と、前記処理室内で回転することにより前記混合物を撹拌し、前記砕料の分散処理及び/又は解砕処理及び/又は粉砕処理を行う撹拌装置と、前記処理室に開口部を有し、かつ、前記スラリーを前記処理室の外部に導出する、スラリー通路とを有する、湿式ビーズミルにおいて、前記処理室に緩衝室を併設し、前記処理室と前記緩衝室とを前記スラリー通路を介して連通し、前記スラリー通路は前記処理室にスラリー流入口を有し、前記スラリー通路は前記緩衝室にスラリー流出口を有し、前記緩衝室に前記スラリーから前記粉砕媒体を分離する粉砕媒体分離装置を配置したことを特徴とする。
【0017】
本発明の湿式ビーズミルでは、前記緩衝室を前記処理室の上に配置し、前記緩衝室の内面に、円筒状の面と、前記円筒状の面の下端から前記スラリー通路の前記スラリー流出口に向かってすり鉢状に延在する裁頭円錐形の面とを形成し、前記粉砕媒体分離装置を遠心分離装置によって構成し、前記遠心分離装置を前記緩衝室の前記円筒状の面によって囲繞される位置に配置し、前記遠心分離装置の上部外径を前記遠心分離装置の下部外径よりも大径にすることができる。
【0018】
本発明の湿式ビーズミルでは、前記遠心分離装置に卍型のスラリー通路を設けることができる。
【0019】
本発明の湿式ビーズミルでは、前記粉砕媒体分離装置は、粉砕媒体を通過させないギャップセパレータ及び又はスクリーンによって構成することができる。
【0020】
本発明の湿式ビーズミルは、また、砕料を含有するスラリーと粉砕媒体との混合物を収容する処理室と、前記処理室内で回転することにより前記混合物を撹拌し、前記砕料の分散処理及び/又は解砕処理及び/又は粉砕処理を行う撹拌装置と、前記処理室に開口部を有し、かつ、前記スラリーを前記処理室の外部に導出する、スラリー通路とを有する、湿式ビーズミルにおいて、前記処理室の内面を円筒状の面によって構成し、前記円筒状の面に、前記撹拌装置の回転軸の軸心方向に対して所定の角度をなして延在する複数の凹溝を所定の間隔を置いて形成したことを特徴とする。
【0021】
本発明の湿式ビーズミルの前記処理室の内面の前記複数の凹溝は、それぞれ、凹状に滑らかに湾曲した断面形状を有することができる。
【0022】
本発明の湿式ビーズミルの前記処理室の内面の前記複数の凹溝を、それぞれ、前記撹拌装置の回転軸の軸心に平行に延在する平行溝によって構成することができる。
【0023】
本発明の湿式ビーズミルの前記処理室の内面の前記平行溝を、それぞれ、上部平行溝と下部平行溝に区分し、前記上部平行溝と前記下部平行溝を、それぞれ、位相をずらして配置することができる。
【0024】
本発明の湿式ビーズミルの前記処理室の内面の前記複数の凹溝を、それぞれ、前記撹拌装置の回転軸の軸心方向に関して傾斜して延在する傾斜溝によって構成し、前記傾斜溝は、前記撹拌装置の回転方向に沿って前記傾斜溝の下部の位相が前記傾斜溝の上部の位相よりも進んだ位置にあることができる。
【0025】
本発明の湿式ビーズミルの前記処理室の内面の前記凹溝を、前記撹拌装置の回転軸を中心に巻回する螺旋溝によって構成し、前記螺旋溝は、前記撹拌装置の回転方向に沿って前記処理室の内面を上部から下部に向かって延在させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の湿式ビーズミルによれば、処理室内における粉砕媒体の挙動を制御することができると共に、処理室から緩衝室に流入する粉砕媒体の量を減ずることができるから、優れた分散結果を得ることができる。
また、本発明の湿式ビーズミルによれば、緩衝室でスラリーから分離された粉砕媒体が、再度、遠心分離装置等の粉砕媒体分離装置に流入する可能性を低減させることができるから、スラリーの処理能力を向上させることができる。
なお、本発明の湿式ビーズミルは、粉砕機や解砕機としても使用することもできる。
【0027】
本発明の湿式ビーズミルのその他の特徴及び作用効果は、図面を参照して説明する以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の湿式ビーズミルの一実施例の全体構成図である。(実施例1)
【
図2】
図2は、
図1の湿式ビーズミルの要部の縦断面図である。
【
図4】
図4(A)は
図2の湿式ビーズミルのボトムプレートの平面図、
図4(B)は同ボトムプレートの断面図である。
【
図5】
図5(A)は処理室の内壁部材の断面図、
図5(B)は同内壁部材の内面を構成する円筒状の面の斜視図、
図5(C)は同内壁部材の底面図である。
【
図6】
図6(A)は撹拌装置のフィンディスクの上面図、
図6(B)は同フィンディスクの一部断面を含む側面図、
図6(C)は同フィンディスクの底面図である。
【
図7】
図7(A)は撹拌装置のエンドディスクの上面図、
図7(B)は同エンドディスクの縦断面図、(C)は同エンドディスクの底面図である。
【
図8】
図8(A)はカラー(大)の縦断面図、
図8(B)は同カラー(大)の底面図である。
【
図9】
図9(A)はバッフルの上面図、
図9(B)は同バッフルの縦断面図、(C)は同バッフルの底面図である。
【
図11】
図11(A)は緩衝室の内壁部材の縦断面図、
図11(B)は同内壁部材の底面図である。
【
図12】
図12(A)は緩衝室のトッププレートの平面図、
図12(B)は同トッププレートの断面図である。
【
図13】
図13(A)は遠心分離装置の上部材の上面図、
図13(B)は同上部材の縦断面図、
図13(C)は同上部材の底面図である。
【
図14】
図14(A)は遠心分離装置の下部材の上面図、
図14(B)は同下部材の縦断面図、
図14(C)は同下部材の底面図である。
【
図15】
図15(A)はカラー(小)の上面図、
図15(B)は同カラー(小)の縦断面図、
図15(C)は同カラー(小)の上面に卍型の溝を形成し、遠心分離装置の下部材との位置関係を示す平面図である。
【
図16】
図16は、遠心分離装置に形成されるスラリー流路の形態を示す遠心分離羽根の模式図である。
【
図17】
図17は、
図2の湿式ビーズミルのトッププレートから下方に延在する回転軸を撮影した写真である。
【
図18】
図18は、
図17の回転軸に撹拌装置とカラー(大)と遠心分離装置とカラー(小)を取り付けた状態を撮影した写真である。カラー(小)は遠心分離装置の内部に位置するため目視できない。
【
図19】
図19(A)は処理室の内壁部材の他の実施例の断面図、
図19(B)は同内壁部材の内面を構成する円筒状の面の斜視図、
図19(C)は同内壁部材の底面図である。
【
図20】
図20は、処理室の内壁部材の更に他の実施例の断面図である。
【
図21】
図21は、らせん状の凹溝が形成された処理室の内壁部材の円筒状の面の斜視図である。
【
図22】
図22は、バッフルの他の実施例を示す処理室の縦断面図である。
【
図23】
図23は、バッフルの更に他の実施例を示す処理室の縦断面図である。
【
図25】
図25は、バッフルの更に他の実施例を示す処理室の縦断面図である。
【
図26】
図26は、バッフルの更に他の実施例を示す処理室の縦断面図である。
【
図27】
図27は、バッフルの更に他の実施例を示す処理室の縦断面図である。
【
図28】
図28は、小径のエンドディスクを装着した撹拌装置を示す処理室の縦断面図である。
【
図29】
図29(A)は小径のエンドディスクの上面図、
図29(B)は小径のエンドディスクの断面図、
図29(C)は小径のエンドディスクの底面図である。
【
図30】
図30は、チタン酸バリウムの分散(一次粒子径:約150nm)を本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで行ったときの分散結果を示す表である。
【
図31】
図31は、チタン酸バリウムの分散(一次粒子径:約150nm)を本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで行ったときの沈降速度分布結果を示す表である。
【
図32】
図32は、チタン酸バリウムの分散(バインダーあり)を本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで行ったときのD50と滞留時間の関係及び粘度と滞留時間の関係を示す表である。
【
図33】
図33は、酸化チタンの分散(一次粒子径:15nm)を本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで行ったときのD50と滞留時間の関係を示す表である。
【
図34】
図34は、酸化チタンの分散(一次粒子径:15nm)を本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで行ったときのD50と滞留時間の関係を示す表である。
【
図35】
図35は、本発明のビーズミルの仕様の一例の概略を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
優れた分散機能を発揮する湿式ビーズミルについて説明する。
【実施例0030】
湿式ビーズミル1は、処理室2と、処理室2の上方に配置された緩衝室3と、処理室2と緩衝室3の間に配置され、かつ、円形の中央孔4を有する、バッフル5を有する。湿式ビーズミル1は、処理室2を上下方向に貫通し、かつ、中央孔4を通って緩衝室2の内部に延在する、回転軸6を有し、回転軸6はプーリ7、ベルト8、プーリ9を介して、電気モータ(図示せず。)の回転軸10に連結されている。バッフル5の中央孔4とカラー(大)11の外周面の間には、環状のスラリー通路12が画成される。処理室2と緩衝室3は環状のスラリー通路12を介して連通する。回転軸6の緩衝室3よりも上方に延在する部分は、円形断面を有する円形断面部分6aによって構成され、回転軸6の円形断面部分6aはラジアル・ベアリング13、14、15によって回転自在に支持されている。回転軸6の円形断面部分6aには、また、回転軸6の軸封を行うメカニカルシール16が嵌合する。メカニカルシール16は、緩衝室3と処理室2を密封する。回転軸6の円形断面部分6aよりも下方の部位は、角形断面を有する角形断面部分6bによって構成され、角形断面部分6bは4つの長辺と4つの短辺からなる八角形の断面形状を有する。
図17は、回転軸6の角形断面部分6bの写真である。角形断面部分6bには、回転軸6の半径方向に延びる4つのスラリー流入口6cが開口し、これらのスラリー流入口6cは、回転軸6の軸心に沿って形成されたスラリー流路6dに連通する。スラリー流路6dは回転軸6の上端部6eまで延在し、外部配管17、ポンプ18、外部配管19、サニタリー式チャッキ弁20を経て、処理室2に連通する。
【0031】
湿式ビーズミル1の処理室2は、バッフル5と内壁部材21とボトムプレート22によって画成される。バッフル5は、
図9に示すように、中央孔4を有する全体として円盤状の部材である。バッフル5の上面5aの中央部には、中央孔4に連続する裁頭円錐形の環状テーパ面5bが形成され、環状テーパ面5bの側方には、被処理物等の投入孔5cが形成されている。裁頭円錐形の環状テーパ面5bは、
図2に示すように、後述する緩衝室3の内壁部材23の裁頭円錐形の環状テーパ面23aに連続し、緩衝室3の下部にスラリー通路12に連続する裁頭円錐形の環状テーパ面24を形成する。バッフル5の裏面5dには、中央孔4を囲繞する位置に環状の凹状湾曲面5eが形成されている。この環状の凹状湾曲面5eは、処理室2の内部で回転する撹拌装置Aによって撹拌されたスラリーの一部が、
図2の矢印で示すように、処理室2の内部に向かうスラリーの流れを生成するスラリー案内面である。このスラリー案内面、すなわち、環状の凹状湾曲面5eは、環状のスラリー通路12を通って処理室2から緩衝室3に流出するスラリーの流れに、
図2の矢印で示すような、処理室2の内部に向かうスラリーの流れを混合し、処理室2の内部のジルコニアビーズ等の粉砕媒体(図示せず。)がスラリー通路12を通って緩衝室3に流出することを防止する。この目的を達成するため、スラリー案内面、すなわち、凹状湾曲面5eは、中央孔4付近で、スラリー通路12を通って処理室2から緩衝室3へ流出するスラリーの流れ方向に対して、逆方向に傾斜している必要がある。したがって、このスラリー案内面は、バッフル5の開口部を構成する中央孔4に向かって処理室2の内部方向に傾斜した円錐面によって構成することができる。
【0032】
図10は、バッフルの変更態様の断面図である。
図10のバッフル5は一つの部材によって構成されているが、
図10のバッフル50は、下部材50aと上部材50bを、シール材50cを挟んで一体化することにより構成されている。下部材50aは中央孔50dとスラリー案内面50eを有し、スラリー案内面を構成する環状の凹状湾曲面50eは、連続的にその断面形状を変化させている。これにより、処理室2の内部に向かうスラリー流れとスラリー通路12を通って処理室2から緩衝室3に流出するスラリー流れとの混合位置を中央孔50dの軸心方向に連続的に変化させ、中央孔50dの軸心方向に延在するスラリー混合域を生成することができる。バッフル50の上部材50bは、下部材50aの中央孔50dに連続する裁頭円錐形の環状テーパ面50eを有する。裁頭円錐形の環状テーパ面50bは、
図2に示すように、後述する緩衝室3の内壁部材23の裁頭円錐形の環状テーパ面23aに連続し、緩衝室3の下部にスラリー通路12に連続する裁頭円錐形の環状テーパ面24を形成する。バッフル50の下部材50aと上部材50bを別の部材によって構成することにより、下部材50aと上部材50bの加工が容易になり、特に、スラリー案内面50eの形態を種々に変化させることができる。
【0033】
処理室2の内壁部材21は、
図5に示すように、全体として円筒状の部材である。内壁部材21の内面21aも、同様に、円筒状の面によって構成され、内面21aには、上下方向に延在する10本の凹溝21bが一定の間隔を置いて形成されている。これらの凹溝21bは、それぞれ、回転軸6の回転軸心に平行に延在する平行溝である。また、これらの凹溝21bは、それぞれ、凹状に滑らかに湾曲した断面形状を有する。処理室2のボトムプレート22は、
図4に示すように、円形の板である。ボトムプレート22の中央部には円形のスラリー還流孔22aが形成され、このスラリー還流孔22aにサニタリー式チャッキ弁20を介して外部配管19が連結される。処理室2の内壁部材21の外側は、
図2に示すように、冷却用のウォータージャケット21cによって覆われている。なお、
図3は、湿式ビーズミル1の底板1aを湿式ビーズミル1の下方から見た図である。
【0034】
処理室2の上方には緩衝室3が併設される。緩衝室3は、内壁部材23と、トッププレート25と、バッフル5の上面5aによって画成される。内壁部材23の内面には、
図11に示すように、裁頭円錐形の環状テーパ面23aと円筒状の面23bを有し、裁頭円錐形の環状テーパ面23aの下端部には円形開口23cが形成されている。内壁部材23の裁頭円錐型の環状テーパ面23aは、前述のように、バッフル5、50bの裁頭円錐形の環状テーパ面5b、50bに滑らかに連続して、緩衝室3の下部にスラリー通路12に連続する裁頭円錐形の環状テーパ面24を形成する(
図1及び2参照)。トッププレート25は、
図12に示すように、全体として円盤状の部材で構成され、その中央部には円形の貫通孔25aが形成されている。円形の貫通孔25aには、
図2及び17に示すように、メカニカルシール16の下端部が位置し、メカニカルシール16の中央部から回転軸6の角形断面部分6bが下方に突出している。
【0035】
撹拌装置Aは、フィンディスク26とエンドディスク27によって構成される。フィンディスク26とエンドディスク27は回転軸6の角形断面部分6bに嵌合して、処理室2に配置される。フィンディスク26は、
図6に示すように、全体として円盤状の形態を成し、フィンディスク26の上面26aには4枚の撹拌フィン26bが形成されている。これらの撹拌フィン26bは、それぞれ、フィンディスク26の放射方向に延在し、バッフル5のスラリー案内面5e、50eに向かって傾斜しつつ突出している。フィンディスク26の中央部には、回転軸6の角形断面部分6bとの嵌合孔26cが形成され、フィンディスク26の上面25aには、また、嵌合孔26cを囲繞する位置にОリング装着溝25dが形成されている。エンドディスク27は、
図7に示すように、その上面27aと下面27bに、それぞれ、放射方向に延在する4枚の撹拌フィン27cが形成されている。更に、エンドディスク27の撹拌フィン27cの間の領域には、エンドディスク27の上面27aと下面27bに開口する複数の貫通孔27dが形成されている。エンドディスク27の中央部には、回転軸6の角形断面部分6bとの嵌合孔27eが形成され、エンドディスク27の上面27aには、嵌合孔27eを囲繞する位置にОリング装着溝27fが形成されている。参照番号27gは、回転軸6の角形断面部6bの下端面に形成されたねじ穴に螺合する固定ボルト28の挿通孔を示す。この固定ボルト28により、撹拌装置Aとカラー(大)11と遠心分離装置Bは回転軸6の角形断面部分6bに固定される。
【0036】
図8は、撹拌装置Aと遠心分離装置Bの間に介装されるカラー(大)11を示す。カラー(大)11は、全体として円筒状の部材から成り、その軸心に沿って断面円形の貫通孔11aが形成されている。カラー(大)11の下端面11bには、貫通孔11aを囲繞する位置にОリング装着溝11cが形成されている。断面円形の貫通孔11aには、回転軸6の角形断面部分6bが挿通される。
【0037】
図13乃至16は、緩衝室3に配置される遠心分離装置Bの構成部品を示す。遠心分離装置Bは、カラー(大)11の上方に位置し、緩衝室3の内壁部材23の内面のうち、円筒状の面23bに対向する位置に配置される。遠心分離装置Bは上部材29と下部材30とカラー(小)31によって構成される。
図13に示すように、上部材29の中心部には回転軸6の角形断面部分6bが嵌合する中央孔29aが形成され、上部材20の上面29bには、中央孔29aを囲繞する環状凸部29cが形成されている。上部材29の下面29dには、中央孔29aを囲繞する環状凸部29eが形成され、環状凸部29eには、回転軸6の4つのスラリー流入口6cにそれぞれ対応する位置に、4つの切欠き部29fが形成されている。上部材29の下面29dには、環状凸部29eから一定の距離を置いて12枚の遠心羽根29gが形成されている。
図14に示すように、下部材30の中央部には回転軸6の角形断面部分6bが嵌合する中央孔30aが形成され、下部材30の上面30bには、中央孔30aを囲繞するようにОリング装着溝30cが形成されている。下部材30の上面30bには、また、Оリング装着溝30cから一定の距離を置いて12枚の遠心羽根30dが形成されている。下部材30の下面30eは裁頭円錐形の環状テーパ面30fと上面30bに平行な平面部30gから成る。上部材29の遠心羽根29gと下部材30の遠心羽根30dは、
図16に示すように、これらの部材29、30の内部に想定した基準円S上の点Rを中心に一定の半径rで円弧aを描き、この円弧aに沿って隣り合う遠心羽根29g、30dの間に遠心分離通路Pを形成するように配置される。上部材29と下部材30は、
図18に示すように、上部材29の遠心羽根29gと下部材30の遠心部材30dが一対一に当接するように組み合わされ、隣り合う二つの遠心羽根29gと隣り合う二つの遠心羽根30dの間に、遠心分離通路Pを画成する。
図15(A)、(B)は、上部材29と下部材30の間に配置されるカラー(小)31を示す。カラー(小)31は、全体として円筒状の部材から成り、中央部に回転軸6の角形断面部分6bが挿通される円形断面の貫通孔31aが形成されている。貫通孔31aにはОリング装着溝31bが形成されている。カラー(小)31の上面31cは平面で構成され、カラー(小)31の下面31dも同様に平面で構成されている。
図15(C)は、カラー(小)32の平坦な上面32aに、回転軸6の4つのスラリー流入口6cに対応するように、卍型の溝32cを形成した実施例を示し、更に、カラー(小)32の卍型の溝32cと下部材30の遠心羽根30dとの配置関係を示す図である。卍型の溝32cの存在により、遠心分離通路Pで遠心分離されずにカラー(小)32付近まで到達したジルコニアビーズ等の粉砕媒体(図示せず。)が回転軸6のスラリー流入口6cからスラリー流路6dに侵入することを防止する。
【0038】
遠心分離装置Bの上部材29の外径が下部材30の外径よりも大きい理由は、上部材29と緩衝室3の円筒状の面23bとの間隔を小さくすることにより、緩衝室3の上部の撹拌力を増大させ、緩衝室3に流入した粉砕媒体が緩衝室3の上部に滞留しないようにするためである。
また、緩衝室3の下部にスラリー通路12に連続する裁頭円錐形の環状テーパ面24を形成する理由は、次のとおりである。スラリー通路12を通って処理室2から緩衝室3に上昇するスラリー流は、カラー(大)11の周面に沿う旋回流であるが、この旋回流は、上方が拡開した環状テーパ面24に沿って上昇するにつれて次第に低速になると共にその圧力を上昇させる。このため、旋回流中の粉砕媒体はその自重と環状テーパ面24の上部と下部との圧力差により沈降し、スラリー通路12に向かって移動する。したがって、湿式ビーズミル1を停止させると、粉砕媒体は環状テーパ面24に沿ってスラリー通路12に至り、緩衝室3に滞留することなく、その自重によって処理室2に戻ることが期待されるからである。
また、処理室2の内面に複数の凹溝を形成する理由は、凹溝付近に乱流が発生し、この乱流によって粉砕媒体間の相互作用が増大し、粉砕効率が向上するためである。特に、この凹溝をそれぞれ凹状に滑らかに湾曲した断面形状にすることにより、周方向の速度を大きく減速させることなく、流れの向きを変えることができるから、凹溝の出口付近で周方向の流れと衝突し、粉砕媒体間の相互作用を増加させることができる。また、凹溝付近における流れの衝突によって、粉砕媒体の速度が減少するから、粉砕媒体の舞い上がりを防止することができる。更に、凹溝の存在によって処理室の内面の面積が増大するから、粉砕媒体と処理室の内面との間で行われる仕事量が増大し、粉砕効率が向上する。更に、凹状に滑らかに湾曲した断面形状は、セラミックス等の難加工性材料に加工することも困難ではなく、処理室の内壁部材に難加工性材料を使用することを可能にする。更に、凹状に滑らかに湾曲した断面形状は、角部の洗浄性、摩耗し難さ、加工し易さにおいて他の形状よりも優れている。
【0039】
図19乃至21は、処理室2の内壁部材21の他の実施例を示す。
図19は、内壁部材21Aの内面21Aaの凹溝を上部の凹溝21Abと下部の凹溝21Acに区分し、これらの凹溝の位相をずらしたことを特徴とする実施例である。
図20は、内壁部材21Bの内面21Baの凹溝21Bbを傾斜させ、これらの傾斜した凹溝21Baは、撹拌装置Aの回転方向に沿って下部の位相が上部の位相よりも進んだ位置にあることを特徴とする。これにより、粉砕媒体を処理室2の下方へ誘導することができる。
図21は、内壁部材の内面21Caに凹溝21Cbをらせん状に形成し、らせん状の凹溝21Cbは、撹拌装置Aの回転方向に沿って内面21Caを処理室2の上部から下部に向かって延在することを特徴とする。これによって、処理室2の下方へ誘導することができる。
【0040】
図22乃至27は、バッフル5の変更態様を示す図である。
図22のバッフル5Aは、緩衝室3側の面が平面で構成され、緩衝室3の内面が上下にわたって円筒状であることとも相まって、緩衝室3に流入した粉砕媒体が緩衝室3の内部に滞留するおそれがある。しかし、スラリー通路12Aをギャップセパレータとして使用すれば、粉砕媒体が緩衝室3に流入するのを阻止することができる。また、スラリー通路12Aの緩衝室3側の出口部にスクリーンを設置し、粉砕媒体の流出を防止することも可能である。その他の構成は、
図2の湿式ビーズミル1と同様である。
図23のバッフル5Bは、スラリー通路12Bをギャップセパレータとして使用する実施例である。その他の構成は、
図2の湿式ビーズミル1と同様である。
図24のバッフル5Cは、スラリー案内面にスラリーの入口開口部О1を有し、スラリー通路12Cにスラリーの出口開口部О2を有する、分岐通路BRを形成し、この分岐通路BRに第2のスラリー案内面を形成し、この第2のスラリー案内面は、スラリー通路12を通って処理室2から流出するスラリーの流れ方向に対して逆方向に傾斜していることを特徴とする。その他の構成は、
図2の湿式ビーズミル1と同様である。
図25のバッフル5Dは、同図のバッフル5Dの断面においてスラリー案内面がスラリー通路12Dに向かって直線状に延びていることを特徴とする。その他の構成は、
図2の湿式ビーズミル1と同様である。
図26のバッフル5Eの特徴は、スラリー通路12Eの中途部にもう一つの粉砕ディスクEXを設け、粉砕ディスクEXを収容する処理室2Eにもスラリー案内面を設けたことである。この実施例では、処理室2のスラリー案内面も、処理室2Eのスラリー案内面もスラリー通路12Eに向かって直線状に延在している。その他の構成は、
図2の湿式ビーズミル1と同様である。
図27のバッフル5Fの特徴は、処理室2Eのスラリー案内面の上方にスラリー流入空間SPを形成し、このスラリー流入空間SPにもスラリー通路12Eに向かって直線状に延在するスラリー案内面を設けたことである。その他の構成は、
図2の湿式ビーズミル1と同様である。
【0041】
図28は、湿式ビーズミル1の撹拌装置Aの変更態様を示す図である。この図に示した撹拌装置Aaのフィンディスク26Aは、
図6のフィンディスク26と同様であるが、エンドディスク27Aをフィンディスク26Aよりも小径にし、更に、エンドディスク27Aの撹拌フィン27Acをフィンディスク26Aの側にのみ形成したことに特徴がある。これにより、粉砕媒体が処理室2の上部に巻き上げられることを効果的に抑えることができる。その他の構成は、
図2の湿式ビーズミル1と同様である。
【0042】
図30は、チタン酸バリウムの分散(一次粒子径:約150nm)を本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで行ったときの分散結果を示す表である。D50に関しては、DAM―1の方が進捗が遅いが、従来機と同等レベルまで微粒子化されることが示されている。シャープさ(D99-D1)/D50では、DAM―1の方が粒度分布がシャープであることが示されている。そして、粘度推移では、DAM―1の方が粘度上昇が穏やかであることが示されている。総じて、DAM―1は、粒度分布がシャープであり、これは微粒子の発生が抑制され、粗粒が減少していることを意味する。また、DAM―1は、粘度上昇が穏やかであり、これは微粒子の発生が抑制されていることを示唆している。これにより、DAM―1は、微粒子の発生が抑制され、均一な分散が可能であるということができる。
【0043】
図31は、チタン酸バリウムの分散(一次粒子径:約150nm)を、本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで行ったときの沈降速度分布結果を示す表である。この沈降速度分布結果から、従来機では、粗大粒子(未処理粒子と凝集粒子の両方である可能性がある。)がいつまでも残留するが、DAM―1では、17分でシャープな分布になり、その後、再凝集が発生している。適切な条件設定が必要ではあるが、DAM―1の方が均一に分散されているということができる。
【0044】
図32は、チタン酸バリウムの分散(バインダーあり)を本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで行ったときのD50と滞留時間の関係及び粘度と滞留時間の関係を示す表である。同図中の両表から、DAM―1の方が微粒子化の進捗が早いこと、及び、粘度上昇することなく処理されていることが理解される。また、従来機は11m/sに変更すると顕著な増粘が発生するが、DAM―1では11m/sでも増粘しないことがわかる。これにより、DAM―1によれは、微小粒子の発生が抑制された高品質な分散を行うことができる。
【0045】
図33は、酸化チタンの分散(一次粒子径:15nm)を本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで行ったときのD50と滞留時間の関係を示す表である。同表から、従来機では凝集する周速域であっても、DAM―1では凝集することなく分散が可能であることがわかる。したがって、DAM―1によれば、微小粒子の発生が抑制された高品質な分散が可能になった。
【0046】
図34は、本発明のビーズミルDAM―1と従来機とで炭酸カルシウムの粉砕を行ったときの粉砕性能を比較した表である。本発明の主目的は高品質な分散を可能とするビーズミルを提供することであるが、同図の各表から、本発明のビーズミルにおいても、その周速の設定次第で、従来機と同等の粉砕性能を得ることができることがわかる。
【0047】
図35は、本発明のビーズミルDAM―1の仕様の一例の概略を示す表である。
本発明のビーズミルは高品質な分散を可能とするビーズミルであるが、その周速の設定次第で、本発明のビーズミルにおいても従来機と同等の粉砕性能を得ることができる。